二重床
【課題】単に制振シートを用いたり、パーティクルボードを二重貼りすることでは達成し得ない、さらに高い遮音性能を有する二重床を開発する。
【解決手段】下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設ける。金属製根太材を設置することで二重床の剛性が増し、騒音発生時の二重床の振幅が小さくなり、遮音性能が向上する。
【解決手段】下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設ける。金属製根太材を設置することで二重床の剛性が増し、騒音発生時の二重床の振幅が小さくなり、遮音性能が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブなどの下床の上に上床を施工する二重床で、特に遮音性能に優れる二重床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートスラブなどの下床の上に床支持具を配置し、その上にパーティクルボードなどのベース板を貼付する二重床が知られている(特許文献1〜5参照)。
図15は従来の遮音性能を重視した二重床の例を示す断面図説明である。コンクリートスラブなどの下床13上に床支持具1(図3、4参照)を適宜間隔で配置し、これらの上にベース板2(上床の荷重を受け止めて床支持具に伝達する構造材)であるパーティクルボードを貼付し、その上に順次弾性板材10(制振シート(骨材をアスファルト又はゴムで固めたもの)等)、捨貼板4(合板等)、床仕上材5(フローリング等)を貼付している。
【0003】
上記のように、二重床の遮音性能を高め、二重床の上床上の騒音が階下の部屋に伝達しないようにする場合、ベース板(パーティクルボード)の上に制振シートを貼付し、さらにその上に仕上げ材を貼付するための合板を貼付することが行われていた。このような二重床は、制振シートの弾性及び遮音性によって、上床上の騒音が階下の部屋に伝わるのを防ぎ、遮音性能に優れたものとなる。なお、遮音性能を重視しない場合は、パーティクルボード1の上に直接フローリング9などの仕上げ材を貼付することが可能である。
【0004】
また、下記特許文献6には、ベース板であるパーティクルボードを二重貼りして、制振シートを用いることなく遮音性能を高める技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭57−119055号公報
【特許文献2】特開平10−245964号公報
【特許文献3】特開2001−98747号公報
【特許文献4】実開昭56−155042号公報
【特許文献5】実開昭56−174636号公報
【特許文献6】特開2005−97902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マンションなどの騒音被害をなくすため、より高い遮音性能を有する二重床が望まれている。
本発明は、単に制振シートを用いたり、パーティクルボードを二重貼りすることでは達成し得ない、さらに高い遮音性能を有する二重床を開発することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設けることを特徴とする二重床である。
金属製根太材を設置することで二重床の剛性が増し、騒音発生時の二重床の振幅が小さくなり、遮音性能が向上するものと考えられる。
【0007】
金属製根太材として、例えば断面二次モーメントが0.5cm4のものを用いた場合、金属製根太材の間隔を30cm程度にすることで充分な効果を得られることから、幅1m当たりに存在する金属製根太材の断面二次モーメントの和が1.66cm4以上であることが望ましい。
【0008】
本発明において、ベース板はパーティクルボードや合板を用いることができるが、パーティクルボードが好適である。金属製根太材は、ベース板の長手方向と直角方向に設置することが望ましい。パーティクルボードは長方形のパネル状をなし、その大きさは一般的には450mm×1800mm、600mm×1800mm、900mm×1800mm、厚さは20mm又は25mmである。ここで「長手方向」とは、貼付したときの、切断していないいわゆる「真物(まもの)」の状態における長辺の方向をいう。金属製根太材を、ベース板の長手方向と直角方向に設置することで、金属製根太材の位置が、強度的弱点となるベース板の継目に重なりにくくなり、局部的に剛性が小さな部分ができるのを防ぐことができる。
【0009】
捨貼板としては、合板などを用いることができる。捨貼板は、その長手方向が金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付するのが望ましい。合板の大きさは、通常、606mm×1820mm、910mm×1820mmである。捨貼板を、その長手方向が金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付することで、強度的弱点となる、金属製根太材に直接支持されていない捨貼板の端部の長さが短くなり、局部的に剛性が小さな部分ができるのを防ぐことができる。
【0010】
本発明において、金属製根太材の間に弾性板材を充填することが望ましい。弾性板材としては、アスファルト又はゴムに鉄粉などの骨材を練り込んだ制振シート、グラスウール、発泡プラスチックなどを用いることができる。弾性板材を充填することで、捨貼板の振動がベース板に伝達するのを低減し、遮音性能がさらに向上する。弾性板材は1枚に限らず、複数枚を重ねて充填しても良い。
【0011】
金属製根太材としては、概略四角形断面を有する鋼製パイプ材を用いることができる。具体的には、通常の鋼製角パイプや、いわゆる角スタッドなどである。角スタッドは厚さ0.4〜0.5mm程度の薄肉の鋼板を加工して断面を概略四角形とし、断面2次モーメントを向上するために複数のリブを設けたものである。
【0012】
また、金属製根太材としては、四角形断面の鋼製棒材、いわゆるフラットバーを用いることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二重床は、ベース板の上に金属製根太材を設置することで剛性が大きくなり、遮音性能が大幅に向上される。
【実施例】
【0014】
図1、2は実施例の二重床の断面図である。図1において、床支持具1の上にベース板2が貼付され、その上に金属製根太材3が所定間隔で平行に設置され、根太材3の上に捨貼板4が貼付され、その上に床仕上材5が貼付されている。図2の二重床は、基本的には図1の二重床と同じであるが、金属製根太材3の間に2枚の弾性板材10を重ねて充填している点で異なる。
【0015】
本発明において、床支持具は上床を下床から浮かせて支持できるものであればよく、特に限定されないが、脚部に防振ゴムを有するものを用いることが望ましい。防振ゴムによって上床の騒音が吸収され、遮音性能が向上するからである。図3、4は防振ゴムを有する床支持具の例を示している。図3は単足の床支持具1の例で、支持板部6、受金具8、ボルト7、脚部9からなる。支持板部6は木質の板でボルト孔(貫通孔)を有し、下面に受金具8が固定されている。受金具8は金属製又は樹脂製の板状のもので、雌ねじ孔にボルト7が螺着される。脚部9は防振ゴムでボルト7の下端が挿入されている。ボルト7の上面には直径方向の溝があり、上からドライバーで回転して高さ調整が可能である。図4は複足の床支持具1で、図3と同じ機能の部材に同じ符号を付している。床支持具としては、図3の単足床支持具、図4の複足の床支持具、これらの組み合わせ、又古来の大引・根太など種々のものを用いることができる。なお、図3、4は上段に平面図、下段に断面図を示している。
【0016】
図5〜9は、種々の金属製根太材3の例、及びその設置方法の例を示している。図5の金属製根太材3は、いわゆる角スタッドで、断面が概略四角形をなし、上面、下面及び側面にリブ3aが形成されている。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。ビス11をねじ込む部分には、金属製根太材3の上面にドライバーを差し込む穴があけられている。
【0017】
図6の金属製根太材は、いわゆる角スタッドの下部両側にフランジ部3bが突出形成されているものである。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。ビス11はフランジ部3bからねじ込まれるので、図5の場合に較べてビスのねじ込み作業が容易である。
【0018】
図7の金属製根太材3は鋼製角パイプである。ビス11によりベース板2に固定されている。捨貼板4はビス12によりベース板2に固定されている。
【0019】
図8の金属製根太材3は鋼板を折り曲げたもので、下面が開放した概略四角形断面を有し、両側下部が外側に折り曲げられたフランジ部3cとなっている。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。
【0020】
図9の金属製根太材3は鋼製フラットバーである。ビス11によりベース板2に固定されている。捨貼板4はビス12によりベース板2に固定されている。
【0021】
図5〜9において、金属製根太材3はビスによりベース板に固定されているが、両面テープや接着剤により固定することもできる。
【0022】
図10は、実施例の二重床の組立状態を示す説明図、図11は図10におけるA−A’線断面図、図12は図10におけるB−B’線断面図である。
図10〜12において、コンクリートスラブの下床13の上に、図4に示す床支持具1を450mmピッチで並べ、その上にベース板2として600mm×1800mmのパーティクルボードを貼付し、その上に金属製根太材3として25mm×40mmの角スタッドを300mmピッチで平行に設置し、その上に捨貼板4として910mm×1820mmの合板を貼付している。ベース板及び捨貼板の長手方向は金属製根太材の方向と直角方向である。なお、図示はしていないが、捨貼板の上にはフローリングなどの床仕上材5を貼付する。
【0023】
実施例及び比較例の二重床について遮音性能を測定した。遮音性能は、JIS−A−1440に準拠し、建設省告示第1654号8−1(3)のロ2fに記載されている実験室で測定した。実施例及び比較例の仕様は次の通りである。
〔実施例〕
床支持具: 図4のものを図10のように450mmピッチで設置
ベース板: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
金属製根太材: 角スタッド40×25(断面2次モーメント0.64cm4)を300mmピッチで設置
弾性板材: 厚さ12mmの制振シート2枚重ね
捨貼板: 910mm×1820mm×15mmの合板
床仕上材: 厚さ16mmのフローリング
〔比較例〕
床支持具: 図4のものを図10のように450mmピッチで設置
ベース板: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
弾性板材: 厚さ12mmの制振シート2枚重ね
捨貼板: 910mm×1820mm×15mmの合板
床仕上材: 厚さ16mmのフローリング
【0024】
実施例は、図2に示すように、ベース板と捨貼板の間に金属製根太材を設置し、金属製根太材どうしの間に制振シートを充填したのに対し、比較例は、図2から金属製根太材を除去し、ベース板と捨貼板の間に制振シートのみを充填している。したがって、実施例と比較例の相違は、金属製根太材が有るか無いかのみであり、その他は全く同じである。
【0025】
実施例と比較例について、重量床衝撃音低減量と軽量床衝撃音低減量を測定した。ここで「低減量」とは、二重床を施工せずに階上の実験室で衝撃音を発生させ階下の受音室で測定した音圧レベルに対して、二重床を施工後に同様に測定した音圧レベルの低減量である。
重量床衝撃音は子供の走り回る音、物を落としたときに生じる音など、特別な行動によって生じる衝撃音で、実験室に設置したバングマシーンで発生させる。軽量床衝撃音は主に通常の生活音を基準とした衝撃音で、実験室に設置したタッピングマシーンで発生させる。
【0026】
表1に実施例及び比較例の重量床衝撃音低減量を、表2に実施例及び比較例の軽量床衝撃音低減量を示す。また、図13は表1を、図14は表2をグラフにしたものである。
表1、2及び図13、14から明らかなように、重量床衝撃音において、実施例は比較例よりも平均2.78dB低減量が多く、軽量床衝撃音において、実施例は比較例よりも2.44dB低減量が多い。
これにより、本発明の二重床が遮音性能に優れるものであることが実証された。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の二重床の断面図である。
【図2】実施例の二重床の断面図である。
【図3】床支持具の説明図である。
【図4】床支持具の説明図である。
【図5】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図6】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図7】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図8】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図9】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図10】実施例の二重床の組立状態の説明図である。
【図11】図10におけるA−A’線断面図である。
【図12】図10におけるB−B’線断面図である。
【図13】重量床衝撃音低減量測定結果の説明図である。
【図14】軽量床衝撃音低減量測定結果の説明図である。
【図15】従来の二重床の断面説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 床支持具
2 ベース板
3 金属製根太材
4 捨貼板
5 床仕上材
6 支持板部
7 ボルト
8 受金具
9 脚部
10 弾性板材
11 ビス
12 ビス
13 下床
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブなどの下床の上に上床を施工する二重床で、特に遮音性能に優れる二重床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートスラブなどの下床の上に床支持具を配置し、その上にパーティクルボードなどのベース板を貼付する二重床が知られている(特許文献1〜5参照)。
図15は従来の遮音性能を重視した二重床の例を示す断面図説明である。コンクリートスラブなどの下床13上に床支持具1(図3、4参照)を適宜間隔で配置し、これらの上にベース板2(上床の荷重を受け止めて床支持具に伝達する構造材)であるパーティクルボードを貼付し、その上に順次弾性板材10(制振シート(骨材をアスファルト又はゴムで固めたもの)等)、捨貼板4(合板等)、床仕上材5(フローリング等)を貼付している。
【0003】
上記のように、二重床の遮音性能を高め、二重床の上床上の騒音が階下の部屋に伝達しないようにする場合、ベース板(パーティクルボード)の上に制振シートを貼付し、さらにその上に仕上げ材を貼付するための合板を貼付することが行われていた。このような二重床は、制振シートの弾性及び遮音性によって、上床上の騒音が階下の部屋に伝わるのを防ぎ、遮音性能に優れたものとなる。なお、遮音性能を重視しない場合は、パーティクルボード1の上に直接フローリング9などの仕上げ材を貼付することが可能である。
【0004】
また、下記特許文献6には、ベース板であるパーティクルボードを二重貼りして、制振シートを用いることなく遮音性能を高める技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭57−119055号公報
【特許文献2】特開平10−245964号公報
【特許文献3】特開2001−98747号公報
【特許文献4】実開昭56−155042号公報
【特許文献5】実開昭56−174636号公報
【特許文献6】特開2005−97902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マンションなどの騒音被害をなくすため、より高い遮音性能を有する二重床が望まれている。
本発明は、単に制振シートを用いたり、パーティクルボードを二重貼りすることでは達成し得ない、さらに高い遮音性能を有する二重床を開発することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設けることを特徴とする二重床である。
金属製根太材を設置することで二重床の剛性が増し、騒音発生時の二重床の振幅が小さくなり、遮音性能が向上するものと考えられる。
【0007】
金属製根太材として、例えば断面二次モーメントが0.5cm4のものを用いた場合、金属製根太材の間隔を30cm程度にすることで充分な効果を得られることから、幅1m当たりに存在する金属製根太材の断面二次モーメントの和が1.66cm4以上であることが望ましい。
【0008】
本発明において、ベース板はパーティクルボードや合板を用いることができるが、パーティクルボードが好適である。金属製根太材は、ベース板の長手方向と直角方向に設置することが望ましい。パーティクルボードは長方形のパネル状をなし、その大きさは一般的には450mm×1800mm、600mm×1800mm、900mm×1800mm、厚さは20mm又は25mmである。ここで「長手方向」とは、貼付したときの、切断していないいわゆる「真物(まもの)」の状態における長辺の方向をいう。金属製根太材を、ベース板の長手方向と直角方向に設置することで、金属製根太材の位置が、強度的弱点となるベース板の継目に重なりにくくなり、局部的に剛性が小さな部分ができるのを防ぐことができる。
【0009】
捨貼板としては、合板などを用いることができる。捨貼板は、その長手方向が金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付するのが望ましい。合板の大きさは、通常、606mm×1820mm、910mm×1820mmである。捨貼板を、その長手方向が金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付することで、強度的弱点となる、金属製根太材に直接支持されていない捨貼板の端部の長さが短くなり、局部的に剛性が小さな部分ができるのを防ぐことができる。
【0010】
本発明において、金属製根太材の間に弾性板材を充填することが望ましい。弾性板材としては、アスファルト又はゴムに鉄粉などの骨材を練り込んだ制振シート、グラスウール、発泡プラスチックなどを用いることができる。弾性板材を充填することで、捨貼板の振動がベース板に伝達するのを低減し、遮音性能がさらに向上する。弾性板材は1枚に限らず、複数枚を重ねて充填しても良い。
【0011】
金属製根太材としては、概略四角形断面を有する鋼製パイプ材を用いることができる。具体的には、通常の鋼製角パイプや、いわゆる角スタッドなどである。角スタッドは厚さ0.4〜0.5mm程度の薄肉の鋼板を加工して断面を概略四角形とし、断面2次モーメントを向上するために複数のリブを設けたものである。
【0012】
また、金属製根太材としては、四角形断面の鋼製棒材、いわゆるフラットバーを用いることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二重床は、ベース板の上に金属製根太材を設置することで剛性が大きくなり、遮音性能が大幅に向上される。
【実施例】
【0014】
図1、2は実施例の二重床の断面図である。図1において、床支持具1の上にベース板2が貼付され、その上に金属製根太材3が所定間隔で平行に設置され、根太材3の上に捨貼板4が貼付され、その上に床仕上材5が貼付されている。図2の二重床は、基本的には図1の二重床と同じであるが、金属製根太材3の間に2枚の弾性板材10を重ねて充填している点で異なる。
【0015】
本発明において、床支持具は上床を下床から浮かせて支持できるものであればよく、特に限定されないが、脚部に防振ゴムを有するものを用いることが望ましい。防振ゴムによって上床の騒音が吸収され、遮音性能が向上するからである。図3、4は防振ゴムを有する床支持具の例を示している。図3は単足の床支持具1の例で、支持板部6、受金具8、ボルト7、脚部9からなる。支持板部6は木質の板でボルト孔(貫通孔)を有し、下面に受金具8が固定されている。受金具8は金属製又は樹脂製の板状のもので、雌ねじ孔にボルト7が螺着される。脚部9は防振ゴムでボルト7の下端が挿入されている。ボルト7の上面には直径方向の溝があり、上からドライバーで回転して高さ調整が可能である。図4は複足の床支持具1で、図3と同じ機能の部材に同じ符号を付している。床支持具としては、図3の単足床支持具、図4の複足の床支持具、これらの組み合わせ、又古来の大引・根太など種々のものを用いることができる。なお、図3、4は上段に平面図、下段に断面図を示している。
【0016】
図5〜9は、種々の金属製根太材3の例、及びその設置方法の例を示している。図5の金属製根太材3は、いわゆる角スタッドで、断面が概略四角形をなし、上面、下面及び側面にリブ3aが形成されている。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。ビス11をねじ込む部分には、金属製根太材3の上面にドライバーを差し込む穴があけられている。
【0017】
図6の金属製根太材は、いわゆる角スタッドの下部両側にフランジ部3bが突出形成されているものである。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。ビス11はフランジ部3bからねじ込まれるので、図5の場合に較べてビスのねじ込み作業が容易である。
【0018】
図7の金属製根太材3は鋼製角パイプである。ビス11によりベース板2に固定されている。捨貼板4はビス12によりベース板2に固定されている。
【0019】
図8の金属製根太材3は鋼板を折り曲げたもので、下面が開放した概略四角形断面を有し、両側下部が外側に折り曲げられたフランジ部3cとなっている。ビス11によりベース板2に固定され、ビス12により捨貼板4が金属製根太材3に固定されている。
【0020】
図9の金属製根太材3は鋼製フラットバーである。ビス11によりベース板2に固定されている。捨貼板4はビス12によりベース板2に固定されている。
【0021】
図5〜9において、金属製根太材3はビスによりベース板に固定されているが、両面テープや接着剤により固定することもできる。
【0022】
図10は、実施例の二重床の組立状態を示す説明図、図11は図10におけるA−A’線断面図、図12は図10におけるB−B’線断面図である。
図10〜12において、コンクリートスラブの下床13の上に、図4に示す床支持具1を450mmピッチで並べ、その上にベース板2として600mm×1800mmのパーティクルボードを貼付し、その上に金属製根太材3として25mm×40mmの角スタッドを300mmピッチで平行に設置し、その上に捨貼板4として910mm×1820mmの合板を貼付している。ベース板及び捨貼板の長手方向は金属製根太材の方向と直角方向である。なお、図示はしていないが、捨貼板の上にはフローリングなどの床仕上材5を貼付する。
【0023】
実施例及び比較例の二重床について遮音性能を測定した。遮音性能は、JIS−A−1440に準拠し、建設省告示第1654号8−1(3)のロ2fに記載されている実験室で測定した。実施例及び比較例の仕様は次の通りである。
〔実施例〕
床支持具: 図4のものを図10のように450mmピッチで設置
ベース板: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
金属製根太材: 角スタッド40×25(断面2次モーメント0.64cm4)を300mmピッチで設置
弾性板材: 厚さ12mmの制振シート2枚重ね
捨貼板: 910mm×1820mm×15mmの合板
床仕上材: 厚さ16mmのフローリング
〔比較例〕
床支持具: 図4のものを図10のように450mmピッチで設置
ベース板: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
弾性板材: 厚さ12mmの制振シート2枚重ね
捨貼板: 910mm×1820mm×15mmの合板
床仕上材: 厚さ16mmのフローリング
【0024】
実施例は、図2に示すように、ベース板と捨貼板の間に金属製根太材を設置し、金属製根太材どうしの間に制振シートを充填したのに対し、比較例は、図2から金属製根太材を除去し、ベース板と捨貼板の間に制振シートのみを充填している。したがって、実施例と比較例の相違は、金属製根太材が有るか無いかのみであり、その他は全く同じである。
【0025】
実施例と比較例について、重量床衝撃音低減量と軽量床衝撃音低減量を測定した。ここで「低減量」とは、二重床を施工せずに階上の実験室で衝撃音を発生させ階下の受音室で測定した音圧レベルに対して、二重床を施工後に同様に測定した音圧レベルの低減量である。
重量床衝撃音は子供の走り回る音、物を落としたときに生じる音など、特別な行動によって生じる衝撃音で、実験室に設置したバングマシーンで発生させる。軽量床衝撃音は主に通常の生活音を基準とした衝撃音で、実験室に設置したタッピングマシーンで発生させる。
【0026】
表1に実施例及び比較例の重量床衝撃音低減量を、表2に実施例及び比較例の軽量床衝撃音低減量を示す。また、図13は表1を、図14は表2をグラフにしたものである。
表1、2及び図13、14から明らかなように、重量床衝撃音において、実施例は比較例よりも平均2.78dB低減量が多く、軽量床衝撃音において、実施例は比較例よりも2.44dB低減量が多い。
これにより、本発明の二重床が遮音性能に優れるものであることが実証された。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の二重床の断面図である。
【図2】実施例の二重床の断面図である。
【図3】床支持具の説明図である。
【図4】床支持具の説明図である。
【図5】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図6】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図7】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図8】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図9】金属製根太材及び固定方法の説明図である。
【図10】実施例の二重床の組立状態の説明図である。
【図11】図10におけるA−A’線断面図である。
【図12】図10におけるB−B’線断面図である。
【図13】重量床衝撃音低減量測定結果の説明図である。
【図14】軽量床衝撃音低減量測定結果の説明図である。
【図15】従来の二重床の断面説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 床支持具
2 ベース板
3 金属製根太材
4 捨貼板
5 床仕上材
6 支持板部
7 ボルト
8 受金具
9 脚部
10 弾性板材
11 ビス
12 ビス
13 下床
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設けることを特徴とする二重床。
【請求項2】
請求項1の二重床において、前記ベース板がパーティクルボードであることを特徴とする二重床。
【請求項3】
請求項1又は2の二重床において、前記金属製根太材を、前記ベース板の長手方向と直角方向に設置することを特徴とする二重床。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの二重床において、前記捨貼板が合板であることを特徴とする二重床。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの二重床において、前記捨貼板を、その長手方向が前記金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付したことを特徴とする二重床。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの二重床において、前記金属製根太材の間に弾性板材を充填したことを特徴とする二重床。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの二重床において、前記金属製根太材が、概略四角形断面を有する鋼製パイプ材であることを特徴とする二重床。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの二重床において、前記金属製根太材が、四角形断面の鋼製棒材であることを特徴とする二重床。
【請求項1】
下床上に設置した床支持具上にベース板を貼付し、該ベース板の上に金属製根太材を所定間隔で平行に設置し、該根太材の上に捨貼板を貼付し、該捨貼板の上に床仕上材を設けることを特徴とする二重床。
【請求項2】
請求項1の二重床において、前記ベース板がパーティクルボードであることを特徴とする二重床。
【請求項3】
請求項1又は2の二重床において、前記金属製根太材を、前記ベース板の長手方向と直角方向に設置することを特徴とする二重床。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの二重床において、前記捨貼板が合板であることを特徴とする二重床。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの二重床において、前記捨貼板を、その長手方向が前記金属製根太材の方向と直角方向になるように貼付したことを特徴とする二重床。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの二重床において、前記金属製根太材の間に弾性板材を充填したことを特徴とする二重床。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの二重床において、前記金属製根太材が、概略四角形断面を有する鋼製パイプ材であることを特徴とする二重床。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの二重床において、前記金属製根太材が、四角形断面の鋼製棒材であることを特徴とする二重床。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−127248(P2009−127248A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302039(P2007−302039)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(507385143)株式会社トップ工業 (1)
【出願人】(000221786)東邦亜鉛株式会社 (14)
【出願人】(397011177)石井商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(507385143)株式会社トップ工業 (1)
【出願人】(000221786)東邦亜鉛株式会社 (14)
【出願人】(397011177)石井商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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