説明

二重遮水シートの破損特定システム

【課題】廃棄物海面処分場に敷設される二重遮水シートの破損特定システムを提供する。
【解決手段】廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シート1の破損特定システムを、二重遮水シート1の略内部全体に配備されている中間保護層2と海水側の遮水シート1aとの間であって海面下に位置する部分に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極3及び/又は中間保護層2と護岸斜面側の遮水シート1aとの間であって海面下に位置する部分に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極3に接続されている各配線を二重遮水シート1外部へと引き出し、所定電圧が印加可能な電源部5aと通電電流値が測定可能な測定部5bとを備えた電源供給装置5に海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極4の配線を接続し、且つ電源供給装置5に各内部電極3の配線を内部電極3毎に通電可能に接続することにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物海面処分場に敷設される二重遮水シートの破損特定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、陸上での廃棄物処分場の確保が困難となりつつあり、廃棄物海面処分場が注目されている。このような廃棄物海面処分場では、汚水が地面からしみ込んで環境破壊等が発生することがないように、十分な遮水工を施すことが求められているため、予め遮水性の高い二重遮水シートが護岸斜面に敷設され、また海底が遮水性の高い自然堆積粘土地盤でないような場合には海底にも二重遮水シートが敷設される。
【0003】
また、陸上の廃棄物処分場においても、廃棄物で汚染された雨水等が地中にしみ込まないように廃棄物処分場となる凹所に二重遮水シートを敷設する遮水工事が行われている。このような陸上や海上で使用される二重遮水シートは堆積した廃棄物によって破損する可能性があるため、その維持管理が非常に重要となっている。特に廃棄物海面処分場では潮汐、波浪等の時々刻々変化する厳しい外的作用を受け劣化し易い上に、その維持管理が非常に困難である。
【0004】
このような廃棄物処分場に敷設される二重遮水シートの漏水検知システムとしては、複数の区画に区分された二重遮水シートと、前記複数の区画それぞれの内部に設置されたシート内基準電極と、地盤に設置される複数の下部検知電極と、凹所に設置される少なくとも1つの上部検知電極とを備える漏水検知システムがある(例えば、特許文献1参照。)。
この漏水検知システムは、内部が複数の区画に区分された特殊な二重遮水シートを使用するものであり、二重遮水シートが破損した際にその破損した区画のみが浸水するので、その区画内のシート内基準電極と外部の上部検知電極とを水を介して通電させることによって、漏水箇所が検知できるシステムである。そのため、漏水箇所を的確に検知するためには内部を細かく区画した非常に特殊な二重遮水シートが必要となるだけでなく、各区画に設置されるシート内基準電極も非常に多く必要となり、管理が煩雑である欠点がある。
【0005】
また、遮水シート内部を区画する必要がない破損検出方法としては、遮水シート状材料の上部に設けられた電極と、遮水シート状材料内の導電性膜との間に通電して、通電の変化を測定することを特徴とする廃棄物堆積場における遮水シート状材料破損の検出方法がある(例えば、特許文献2(請求項5)参照。)。しかしながら、この検出方法では、遮水シート状材料内部に遮水シート状材料と略同形の金属箔等の導電性膜を配置しなければならず(図2〜5)、導電性膜は遮水シート状材料と略同形をなす1つの大きな電極となるため、遮水シート状材料が破損して導電性膜と外部電極とが通電可能となった際に、破損位置を大まかにも特定することもできない欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−55017号公報
【特許文献2】特開2002−301443号公報
【0007】
またこれらのシステムや方法は、陸上の廃棄物処分場で行われるものであり、潮汐、波浪等の時々刻々変化する厳しい外的作用を受ける廃棄物海面処分場では、これらのシステムや方法を安易に導入することは難しい。従って、廃棄物海面処分場では、多くの測定作業によって膨大なデータを取得して損傷孔の位置等を特定するより、少数のデータを解析して損傷孔の位置等を特定するシステムの方がより適しているのである。
【0008】
また廃棄物海面処分場では、補修作業も非常に困難であるため、損傷の程度によって様々な対応策が取れるように、損傷孔の大きさを特定することができるシステムも望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の問題に鑑み、廃棄物海面処分場に敷設される二重遮水シートの破損特定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線を、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とを、陸上で引き出されている場合には絶縁性をそれぞれ確保した状態で二重遮水シート外部へと引き出し、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線を接続し、且つこの電源供給装置に前記各内部電極の配線を内部電極毎に通電可能にそれぞれ接続した二重遮水シートの破損特定システムとすれば、固定外部電極と任意の1つの内部電極との間で通電ができるか否かによって容易に二重遮水シートの損傷の有無が確認でき、また損傷孔があることを確認した後に各内部電極毎に固定外部電極との間で通電することによって、通電電流値の値が大きい内部電極ほど損傷孔の近くにあると考えられるので、各通電電流値を比較することによって損傷孔が二重遮水シートのどこにできているかを簡便に推定することができ、
またこの二重遮水シートの破損特定システムにおいて固定外部電極を海中又は護岸斜面上の一方に設置する代わりに、固定外部電極を海中及び護岸斜面上の両側に設置すれば、同じ内部電極に対して海中側の固定外部電極と護岸斜面上の固定外部電極とをそれぞれ通電し通電電流値を比較することで、損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定することが容易にでき、
損傷孔の位置を厳密に特定したい場合には、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線を、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とを、陸上で引き出されている場合には絶縁性をそれぞれ確保した状態で二重遮水シート外部へと引き出し、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線を通電可能又は遮断可能に接続し、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線を内部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極間で通電可能にそれぞれ接続した二重遮水シートの破損特定システムとすれば、二重遮水シート内部に3以上の内部電極が配置されていて固定外部電極や各内部電極の通電や遮断が自在に行えるので、固定外部電極と各内部電極と間の通電に加えて、内部電極間の通電も可能となり、その結果、二重遮水シート内の各内部電極の抵抗値や損傷孔と各内部電極との間の内部抵抗値が算出でき、これらの内部抵抗値は損傷孔から二重遮水シート内部の各内部電極までの距離と比例することから、各内部抵抗値から損傷孔と各内部電極との間の距離を算出することで損傷孔の位置を厳密に算定することができ、
またこの二重遮水シートの破損特定システムにおいて固定外部電極を海中又は護岸斜面上の一方に設置する代わりに、固定外部電極を海中及び護岸斜面上の両側に設置すれば、同じ内部電極に対して海中側の固定外部電極と護岸斜面上の固定外部電極とをそれぞれ通電し通電電流値を比較することで、損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定することが容易にでき、
また、前記した4つの二重遮水シートの破損特定システムの後者の2つの二重遮水シートの破損特定システムにおいて、二重遮水シートの内部と外部とは損傷孔を通して通電されるのであるが、その際に損傷孔が小さいほど大きな電気抵抗となるので、この損傷孔の抵抗値を算出すれば損傷孔の大きさが算定できるから、算定された損傷孔の位置の略鉛直線上において所定の海中深さまで電極部を可動できる3以上の可動式外部電極を更に設け、電源供給装置に可動式外部電極の配線が可動式外部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は可動式外部電極間で通電可能にそれぞれ接続すれば、固定外部電極等と内部電極との間の通電及び内部電極間の通電に加えて、固定外部電極や可動式外部電極による外部電極間の通電を行うことができ、新たに海中の抵抗値等が得られ、直接算出することが難しい損傷孔の抵抗値を除いて全ての各抵抗値をそれぞれ算出することが可能となるので、二重遮水シートの内部と外部とで通電して別途算出された全抵抗値の合計から損傷孔の抵抗値以外の各抵抗値を差し引くことによって損傷孔の抵抗値を算出して、この損傷孔の抵抗値に応じて損傷孔の大きさも算定することができることを究明して本発明を完成したのである。
【0011】
即ち本発明は、長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔の位置を推定可能な二重遮水シートの破損特定システムと、
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中及び護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が固定外部電極毎に通電可能に接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定可能及び損傷孔の位置を推定可能な二重遮水シートの破損特定システムと、
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が通電可能又は遮断可能に接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極間で通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔の位置を算定可能な二重遮水シートの破損特定システムと、
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中及び護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が固定外部電極毎に通電可能又は全てが遮断可能に接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極間で通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定可能及び損傷孔の位置を算定可能な二重遮水シートの破損特定システムと、
上記4つの二重遮水シートの破損特定システムのうち後者の2つの二重遮水シートの破損特定システムにおいて、算定された損傷孔の位置の略鉛直線上において所定の海中深さまで電極部を可動できる3以上の可動式外部電極を更に備えていて、電源供給装置に可動式外部電極の配線が可動式外部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は可動式外部電極間で通電可能にそれぞれ接続されていて損傷孔の大きさも算定可能な二重遮水シートの破損特定システムとである。
【0012】
更に各内部電極が二重遮水シート内の中間保護層の幅方向中央部に設置されていれば、損傷孔が二重遮水シートの幅方向のどちら側に生じても、測定の精度に大きな偏りが生じ難いので好ましく、また、中間保護層との間に各内部電極が配置されるように通水性シートが二重遮水シート内に更に設けられていれば、内部電極の汚れや損傷を減少させることができて好ましいのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る二重遮水シートの破損特定システムは、長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能にそれぞれ接続されているから、固定外部電極と任意の1つの内部電極との間で通電ができるか否かによって容易に二重遮水シートの損傷の有無が確認でき、また損傷孔があることを確認した後に各内部電極毎に固定外部電極との間で通電することによって、通電電流値の値が大きい内部電極ほど損傷孔の近くにあると考えられるので、各通電電流値を比較することによって損傷孔が二重遮水シートのどこにできているかを簡便に推定することができる。
【0014】
また損傷孔の位置を厳密に特定したい場合には、長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シートの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートの破損特定システムであって、二重遮水シートの略内部全体に配備されている中間保護層と海水側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層と護岸斜面側の遮水シートとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シートの該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シートの遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート外部へと引き出されており、所定電圧が印加可能な電源部と通電電流値が測定可能な測定部とを備えた電源供給装置に二重遮水シートが敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極の配線が通電可能又は遮断可能に接続されており、且つ電源供給装置に前記各内部電極の配線が内部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極間で通電可能にそれぞれ接続されているから、二重遮水シート内部の3以上の内部電極間の通電も可能となり、従って、これらの多数の通電により得られる結果に基づいて未知数であった二重遮水シート内の各内部電極の抵抗値や損傷孔と各内部電極との間の内部抵抗値が算出でき、この内部抵抗値は損傷孔から二重遮水シート内部の各内部電極までの距離と比例することから、各内部抵抗値から損傷孔と各内部電極との間の距離を算出することで損傷孔の位置を厳密に算定できるのである。
【0015】
これらの効果に加えて、固定外部電極が海中及び護岸斜面上に設置されている場合には、同じ内部電極に対する海中側の固定外部電極との通電と護岸斜面上の固定外部電極との通電とを行ってそれぞれの通電電流値を測定して比較することで、大きな通電電流値が測定された固定外部電極側の遮水シートに損傷孔が生じていることが容易に判別できるのである。
【0016】
更に、上記の3以上の内部電極が設けられていて電源供給装置に固定外部電極の配線が通電可能又は遮断可能に接続されている場合において、算定された損傷孔の位置の略鉛直線上において所定の海中深さまで電極部を可動できる3以上の可動式外部電極を更に備えていて、電源供給装置に可動式外部電極の配線が可動式外部電極毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は可動式外部電極間で通電可能にそれぞれ接続されていると、固定外部電極等と内部電極との間の通電及び内部電極間の通電に加えて、固定外部電極や可動式外部電極による外部電極間の通電を行うことができ、新たに海中の抵抗値等が得られ、直接算出することが難しい損傷孔の抵抗値を除いて全ての各抵抗値をそれぞれ算出することが可能となるので、二重遮水シートの内部と外部とで通電して別途算出された全抵抗値の合計から損傷孔の抵抗値以外の各抵抗値を差し引き損傷孔の抵抗値を算出して、この損傷孔の抵抗値に応じて損傷孔の大きさも算定することができるのである。
【0017】
また各内部電極が二重遮水シート内の中間保護層の幅方向中央部に設置されている場合には、損傷孔が二重遮水シートの幅方向のどちら側に生じても、測定の精度に大きな偏りが生じ難く、また中間保護層との間に各内部電極が配置されるように通水性シートが二重遮水シート内に更に設けられている場合には、内部電極の汚れや損傷を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明に係る二重遮水シートの破損特定システムについて詳細に説明する。
図1は内部電極が2つ設置されている本発明に係る二重遮水シートの破損特定システムの1実施例の斜視説明図、図2は図1に示した二重遮水シートの構造を示す断面説明図、
図3は本発明に係る二重遮水シートの1実施例の正面説明図、図4は図3における二重遮水シートの内部電極間の回路説明図、図5は図3における二重遮水シートの内部電極と固定外部電極との間の回路説明図、図6は図3における二重遮水シートの可動外部電極間の回路説明図、図7は図3における二重遮水シートの内部電極と可動外部電極との間の回路説明図、図8は損傷孔の大きさと損傷孔抵抗との関係を示す概略説明図である。
【0019】
図面中、1は長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シート1aの周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シートである。二重遮水シート1の遮水シート1aとしては、略長方形状のものや、略二等辺三角形状のもの、略等脚台形状のもの等が使用できる。
【0020】
2は二重遮水シート1の略内部全体に配備されている中間保護層であり、この中間保護層2としては、単体で構成されていたり、不織布、ウレタンシート、粘性土(ベントナイト)等を様々に組み合わせたもの等であってもよく、特にその構成は限定されないが、二重遮水シート1は浮力の高い海中に設置されるので、比較的比重の高いものが好ましく利用できる。
【0021】
3は中間保護層2と海水側の遮水シート1aとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート1の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極及び/又は中間保護層2と護岸斜面側の遮水シート1aとの間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート1の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極であり、この内部電極3に接続されている各配線は、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シート1の遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート1外部へと引き出されていて、後述する電源供給装置5に接続されている。また各内部電極3が二重遮水シート1内の中間保護層2の幅方向中央部に設置されている場合、損傷孔が二重遮水シート1の幅方向のどちら側に生じても、測定の精度に大きな偏りが生じ難くて好ましい。
【0022】
4は二重遮水シート1が敷設される海中及び/又は護岸斜面上に設置される固定外部電極であり、この固定外部電極4の配線は後述する電源供給装置5に接続されている。
【0023】
5は所定電圧が印加可能な電源部5aと通電電流値が測定可能な測定部5bとを備えた電源供給装置であり、各内部電極3の配線や固定外部電極4の配線がそれぞれ接続される。この電源供給装置5には多数の電極の配線が接続されているが、通電電流値は2つの電極間を通電してその通電電流値が測定されるので、どの電極が通電や遮断されているかが重要となる。
そのため、固定外部電極4と内部電極3との間でのみ通電して通電電流値の大きさによって簡便に損傷孔の位置を推定するシステムの場合(請求項1及び請求項2)、全ての内部電極3が遮断されたり、全ての固定外部電極4が遮断されたりすることはない。これに対して、損傷孔の位置を厳密に算定するシステムの場合(請求項3及び請求項4)、内部電極3,3間や外部電極4,4間での通電が必要となるため、全ての外部電極4又は全ての内部電極3が遮断可能となっている。
【0024】
6は算定された損傷孔の位置の略鉛直線上において所定の海中深さまで電極部を可動できる可動式外部電極であり、この可動式外部電極6の配線は可動式外部電極6毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は可動式外部電極6間で通電可能に電源供給装置5にそれぞれ接続されている。この可動式外部電極6は損傷孔の位置を厳密に算定した後に使用する外部電極であり、常時設置されていてもよいが、損傷孔が生じた二重遮水シート1上へと移動させることができるものであるのが好ましい。
【0025】
7は中間保護層2との間に各内部電極3が配置されるように通水性シートであり、この通水性シート7は二重遮水シート1内に設けられている。この通水性シート7が更に設けられていれば、各内部電極3の汚れや損傷を減少させることができてより好ましい。
【0026】
本発明には、内部電極3と固定外部電極4との間を通電してその通電電流値の大小によって、損傷孔の位置を簡便に推定するシステム(請求項1及び2)と、内部電極3と固定外部電極4との間の通電に加えて内部電極3,3間も通電して各種の抵抗値を算出して損傷孔の位置を厳密に算定するシステム(請求項3及び4)とがある。
損傷孔の位置を簡便に推定するシステム(請求項1及び2)は、二重遮水シート1の内部に設置された各内部電極3と二重遮水シート1の外部に設置された固定外部電極4との間で通電してそれらの通電電流値を測定して比較するだけであり、非常に簡便に損傷孔の位置を推定することができる。先ずこの損傷孔の位置を簡便に推定するシステム(請求項1及び2)の実施例を実施例1として以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
一般に二重遮水シート1は長手方向の長さが数十メートル、幅方向の長さが数メートル程度のものがしばしば利用されるが、この大きさの二重遮水シート1を使用して損傷孔の位置を変えながら試験を繰り返すことは非常に困難であるため、比較的小規模な長手方向の長さが3m、幅方向の長さが0.8mの二重遮水シート1を製作して実験を行った。
図3のように、4つの内部電極3を中間保護層2の海面側に配置し、二重遮水シート1が海中に設置された際に最も海底側に位置する内部電極3(以下、第一内部電極と呼ぶ)を下端部から長手方向に0.2mの位置に配置し、その第一内部電極3から0.7m間隔で第二内部電極3、第三内部電極3及び第四内部電極3を配置すると共に、第一内部電極3と第二内部電極3との中間地点、即ち第一内部電極3と第二内部電極3とからそれぞれ0.35m離れた地点に1cm四方の正方形の損傷孔を設け、海面上に位置する上端部側から各内部電極3の配線を引き出した二重遮水シート1を使用して実験を行った。
【0028】
このような二重遮水シート1を使用し、内部電極3と固定外部電極4との間に規定電圧として5ボルトの直流電圧を印可し通電してその通電電流値を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
上記の実験結果から、損傷孔が第一内部電極3及び第二内部電極3の近傍に存在していること、及び第一内部電極3と第二内部電極3とから略等距離であることが分かり、図3のような位置に損傷孔があることが分かる。
【0031】
次に、損傷孔の位置を厳密に算定するシステム(請求項3及び4)では、内部電極3と固定外部電極4との間の通電電流値、及び内部電極3,3間の通電電流値を測定した後に、各種の抵抗値を算出するなどの処理が必要となる。そこで測定された各通電電流値から各種の抵抗値を算出して(実施例2)、損傷孔の位置を厳密に算定する過程(実施例3)を以下のように実施例と共に示す。またこの実施例を使用して損傷孔の大きさを算定する過程も示す(実施例4)。
【実施例2】
【0032】
先ず、上記実施例1と同じ二重遮水シート1を使用して、図4のように二重遮水シート1の内部電極3,3間に規定電圧として5ボルトの直流電圧を印可し通電してその通電電流値を測定した。ここで第一内部電極3と第二内部電極3との間で通電した際にできる電気回路をオームの法則に従って数式で表すと以下のようになる。
【0033】
V(5ボルト)/I(測定値)=Re1+Re2+0.7・rd ……(1)
【0034】
なお規定電圧Vは既知の値であり、通電電流値Iは測定値として得られるから既知の値となり、Re1及びRe2は、それぞれ第一内部電極3の抵抗値と第二内部電極3の抵抗値であり未知である。rdは損傷孔が生じて海水が浸入した二重遮水シート1の内部の単位長さ当たりの抵抗値であり、このrdに第一内部電極3と第二内部電極3との間の距離(0.7m)を乗じた0.7・rdは第一内部電極3と第二内部電極3との間の内部抵抗値Rdである。このように上記式(1)ではRe1,Re2及びrdの3つが未知数となっている。
上記のような2つの内部電極3,3間の式(1)は、内部電極3が4つある場合、2つの内部電極3の組合せが6通りあることから上記式(1)の如き式は6つ立てられる。またその際の未知数は各内部電極3の抵抗値Re1〜Re4と二重遮水シート1内部の単位長さ当たりの抵抗値rdの5つが未知数であるから、6つの式の中から5つの式を利用することで、これらを解くことができる。
【0035】
なお、本実験によって実際に算定した内部電極3の各抵抗値Re1〜Re4は略同様な値となったため、これらをまとめて平均値とその標準偏差として以下に示し、また二重遮水シート1内部の単位長さ当たりの抵抗値rdについても、同様にその平均値と標準偏差とを以下に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
以上のように内部電極3,3間で通電し、その通電電流値を上記式(1)の如き式に代入して連立方程式を解くことにより、各内部電極3の抵抗値Re(Re1〜Re4)や二重遮水シート1内部の単位長さ当たりの抵抗値rdを算出することができるのである。なお上記のように各内部電極3の抵抗値Reはその平均値(11.4Ω)に比べて標準偏差(1.51Ω)が小さく、バラツキが少ないので、各内部電極3の各抵抗値Re1〜Re4を独立した未知数とするのではなく、単一の変数Reとして解けば、更に容易に解くこともできる。
【実施例3】
【0038】
次に、内部電極3と固定外部電極4との間で通電し、その際の電気回路を上記式(1)のような式で表し、上記実施例2で得られた内部電極3の各抵抗値Re1〜Re4(Re)等を代入して解くことで、損傷孔と各内部電極3との間の内部抵抗値を算出することを試みた。また、算出された各内部抵抗値は損傷孔から二重遮水シート1内部の各内部電極3までの距離と比例することから、損傷孔と各内部電極3との間の距離を算出し、損傷孔の位置を厳密に算定した。
先ず上記二重遮水シート1を利用して、内部電極3,3間の通電の場合と同様に、図5のように内部電極3と固定外部電極4との間に規定電圧として5ボルトの直流電圧を印可した。ここで第一内部電極3と固定外部電極4との間で通電してできる電気回路をオームの法則に従って数式で表すと以下のようになる。
【0039】
V(5ボルト)/I(測定値)=Re1+Rd1+R ……(2)
【0040】
なお規定電圧Vは既知の値であり、通電電流値Iは測定値として得られるから既知の値となり、また第1内部電極3の抵抗値Re1も前記内部電極3,3間の通電結果から得られているため既知の値である。一方、損傷孔から第一内部電極3までの内部抵抗値 Rd1は未知である。また、二重遮水シート1の外部で生じる抵抗値としては固定外部電極4の抵抗値Ra,二重遮水シート1外部(海水等)の抵抗値Rb及び損傷孔の抵抗値Rcがあり、これらの合計値であるR(=Ra+Rb+Rc)も未知である。
次に本実施例のように4つの内部電極3を使用した場合、上記式(2)のような式は各内部電極3毎に立てられるので、上記式(2)のような式が4つ立てられ、未知数は損傷孔から各内部電極3までの内部抵抗値Rd1〜Rd4と二重遮水シート1の外部の抵抗値の合計値Rとの5つとなる。
ここで図3の如く第一内部電極3から損傷孔までの距離と、損傷孔から第四内部電極3までの距離との和は、直接第一内部電極3と第四内部電極3とを結んだ距離と等しい。このような関係は、二重遮水シート1内部の距離に比例する内部抵抗値についても同様に成り立ち、第一内部電極3までの内部抵抗値Rd1と、損傷孔から第四内部電極3までの内部抵抗値Rd4との和は、直接第一内部電極3と第四内部電極3とを結んだ二重遮水シート1内部の内部抵抗値、即ち0.7m×3×rdと等しく、rdは前記実施例2から得られているので0.7m×3×rdは既知であり、このRd1及びRd4についての関係式は以下のように表すことができる。
【0041】
Rd1+Rd4=0.7×3×rd ……(3)
【0042】
以上のように内部電極3と固定外部電極4との間で通電して通電電流値を測定すれば、上記式(2)及び式(3)のように式が5つ立てられ、未知数も内部抵抗値Rd1〜Rd4と二重遮水シート1外部の全抵抗値Rの5つであることから、容易に解くことができる。各内部電極3の内部抵抗値Rd1〜Rd4を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
このようにして得られた損傷孔から各内部電極3までの内部抵抗値Rd1〜Rd4を、上記表2の単位長さ当たりの抵抗値rdで除すれば、損傷孔から各内部電極3までの距離が得られ、損傷孔の位置を厳密に算定することができるのである。その結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
上記結果では第一内部電極3、第二内部電極3、第三内部電極3及び第四内部電極3の実験値との誤差が小さく、これらの実験値から、損傷孔が第一内部電極3及び第二内部電極3の近傍に存在していること、及び内部電極3との略距離が分かり、図3のような位置に損傷孔があることが厳密に算定できた。
【実施例4】
【0047】
次に、損傷孔の大きさを算定する場合、損傷孔が小さいほど、大きな電気抵抗となることを利用して、損傷孔の抵抗値Rcを算出して損傷孔の大きさを算定する(請求項5)。その際、損傷孔の抵抗値Rcを直接測定したり直接算出したりすることは非常に困難であるため、損傷孔の抵抗値Rcを間接的に算出する。
先ず、図5のように固定外部電極4と内部電極3とを通電した場合、下記のような式(4)で表されるので、この右辺の全抵抗値(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)を左辺の規定電圧V及び測定した通電電流値Iから算出し、次に、右辺の損傷孔の抵抗値Rc以外の全ての抵抗値(Ra,Rb,Rd,Re)をそれぞれ個々に算出して、全抵抗値から損傷孔の抵抗値Rc以外の各抵抗値を差し引くことで損傷孔の抵抗値Rcを算定する。
【0048】
V(5ボルト)/I(測定値)=Ra+Rb+Rc+Rd+Re ……(4)
【0049】
ここで、二重遮水シート1内部の抵抗値Rd及び内部電極3の抵抗値Reは、内部電極3,3間の通電及び内部電極3と固定外部電極4との間の通電によってできる各電気回路を表す式を連立させて解くことによって、実施例2及び実施例3で既に得られている。二重遮水シート1外部の抵抗値である固定外部電極4の抵抗値Ra及び二重遮水シート1外部(海水等)の抵抗値Rbも同様にして、二重遮水シート1外部に複数の可動式外部電極6を並べて、可動式外部電極6,6間を通電すると共に、実施例3のように内部電極3と外部電極(4又は6)との間で通電して、上記実施例2及び実施例3のように計算すれば得られる。その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
以上のように、全抵抗値(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)の内、損傷孔の抵抗値Rc以外の抵抗値(Ra,Rb,Rd,Re)がそれぞれ表2,表3及び表5のように得られたので、式(4)の右辺の全抵抗値(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)を左辺の規定電圧V及び測定した通電電流値Iから算出し、この全抵抗値から損傷孔の抵抗値Rc以外の抵抗値(Ra,Rb,Rd,Re)を差し引けば損傷孔の抵抗値Rcを算定することができる。そこで、本実施例では更に、様々な大きさの損傷孔を設けて、各損傷孔についてその抵抗値Rcを算出して、損傷孔が小さいほど、抵抗値Rcが大きく算出されること及び算出された抵抗値Rcから補修の有無が的確に判断できることを示す。
【0052】
第一内部電極3と第二内部電極3との中間地点に、1cm四方の正方形の損傷孔の他に、0.1cm四方、0.3cm四方、0.5cm四方、2cm四方、3cm四方、5cm四方、10cm四方、20cm四方、30cm四方の各正方形状の損傷孔を順次設けてその抵抗値Rcを算出した。その実験結果を図8に示す。
【0053】
この図8から損傷孔の抵抗値Rcと損傷孔の大きさとが反比例することが明確となった。
また損傷孔面積が1cm2未満(0.1cm四方、0.3cm四方、0.5cm四方の各損傷孔)の場合、損傷孔の抵抗値Rcは非常に大きな値として表れ、また綺麗な曲線とならないことから誤差が大きいことが分かる。このような大きさの場合、誤差が比較的大きいが、損傷孔の抵抗値Rc自体の値が非常に大きな値で算出されるので損傷孔が非常に小さいことは容易に判断できる。このように小さい損傷孔であることを把握した上で補修の必要性が判断できることは非常に大きな意味がある。
次に、1〜10cm2程度の損傷孔(1cm四方、2cm四方、3cm四方の各損傷孔)では補修を行うか否かの判断が必要となるため、できるだけ正確に大きさを算定する必要がある。図8のようにこのような大きさの損傷孔では20〜40Ω程度の値が表れ、図8のように綺麗な曲線を示しており誤差も少ないと考えられ、損傷孔の大きさを比較的的確に判断でき、適切な補修方法の選択が可能となることは非常に大きな意味がある。
また、損傷孔の大きさが10cm2超える場合(5cm四方、10cm四方、20cm四方、30cm四方の各損傷孔)は、通常、補修を行う必要があるが、このような大きさの損傷孔では損傷孔の抵抗値Rcは非常に小さく表れる。損傷孔の抵抗値Rcがこのように非常に小さい値で算出された場合、損傷孔が生じていない時の誤差とも考えられるが、損傷孔の大きさの算定は、内部電極3と固定外部電極4との間で通電して損傷孔が生じていることを確認した後に行うので、損傷孔が生じていない時の誤差である可能性はない。従って算出した損傷孔の抵抗値Rcの値が零に近い値となっていれば、大きな損傷孔が生じていて補修が必要であることが容易に分かるのである。
【0054】
以上のように、本発明は少数のデータを解析して損傷孔の位置等を算定することができるため、潮汐、波浪等の時々刻々変化する厳しい外的作用を受ける廃棄物海面処分場に特に適しており、また損傷孔の位置を簡便に推定できるだけでなく(請求項1及び2)、内部電極3と固定外部電極4との間の通電に加えて内部電極3,3間も通電して各種の抵抗値を算出して損傷孔の位置を厳密に算定することができ(請求項3及び4)、更にはその損傷孔の大きさも算定することができるのである(請求項5)。
なお、実施例に示した解析方法はあくまでも一例に過ぎず、本発明は必ずしもこの解析方法に限定される発明ではなく、同様な解析方法であればどのような解析方法を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】内部電極が2つ設置されている本発明に係る二重遮水シートの破損特定システムの1実施例の斜視説明図である。
【図2】図1に示した二重遮水シートの構造を示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る二重遮水シートの1実施例の正面説明図である。
【図4】図3における二重遮水シートの内部電極間の回路説明図である。
【図5】図3における二重遮水シートの内部電極と固定外部電極との間の回路説明図である。
【図6】図3における二重遮水シートの可動外部電極間の回路説明図である。
【図7】図3における二重遮水シートの内部電極と可動外部電極との間の回路説明図である。
【図8】損傷孔の大きさと損傷孔抵抗との関係を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 二重遮水シート
1a 遮水シート
2 中間保護層
3 内部電極
4 固定外部電極
5 電源供給装置
5a 電源部
5b 測定部
6 可動式外部電極
7 通水性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シート(1a)の周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シート(1)の破損特定システムであって、
二重遮水シート(1)の略内部全体に配備されている中間保護層(2)と海水側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)及び/又は中間保護層(2)と護岸斜面側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シート(1)の遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート(1)外部へと引き出されており、
所定電圧が印加可能な電源部(5a)と通電電流値が測定可能な測定部(5b)とを備えた電源供給装置(5)に二重遮水シート(1)が敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極(4)の配線が接続されており、且つ電源供給装置(5)に前記各内部電極(3)の配線が内部電極(3)毎に通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔の位置を推定可能な二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項2】
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シート(1a)の周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シート(1)の破損特定システムであって、
二重遮水シート(1)の略内部全体に配備されている中間保護層(2)と海水側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)及び/又は中間保護層(2)と護岸斜面側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シート(1)の遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート(1)外部へと引き出されており、
所定電圧が印加可能な電源部(5a)と通電電流値が測定可能な測定部(5b)とを備えた電源供給装置(5)に二重遮水シート(1)が敷設される海中及び護岸斜面上に設置される固定外部電極(4)の配線が固定外部電極(4)毎に通電可能に接続されており、且つ電源供給装置(5)に前記各内部電極(3)の配線が内部電極(3)毎に通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定可能及び損傷孔の位置を推定可能な二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項3】
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シート(1a)の周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シート(1)の破損特定システムであって、
二重遮水シート(1)の略内部全体に配備されている中間保護層(2)と海水側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)及び/又は中間保護層(2)と護岸斜面側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シート(1)の遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート(1)外部へと引き出されており、
所定電圧が印加可能な電源部(5a)と通電電流値が測定可能な測定部(5b)とを備えた電源供給装置(5)に二重遮水シート(1)が敷設される海中又は護岸斜面上に設置される固定外部電極(4)の配線が通電可能又は遮断可能に接続されており、且つ電源供給装置(5)に前記各内部電極(3)の配線が内部電極(3)毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極(3)間で通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔の位置を算定可能な二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項4】
長手方向と平行な線に対して略対称な形状の対向する一対の遮水シート(1a)の周囲の少なくとも海水と接する部分の端縁が密着されて袋状を成し廃棄物海面処分場の少なくとも護岸斜面の傾斜方向に沿って敷設される二重遮水シート(1)の破損特定システムであって、
二重遮水シート(1)の略内部全体に配備されている中間保護層(2)と海水側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)及び/又は中間保護層(2)と護岸斜面側の遮水シート(1a)との間であって海面下に位置する部分における二重遮水シート(1)の該長手方向に所定間隔毎に設置されている2以上の各内部電極(3)に接続されている各配線が、海中で引き出されている場合には絶縁性と二重遮水シート(1)の遮水性とが、陸上で引き出されている場合には絶縁性がそれぞれ確保されて二重遮水シート(1)外部へと引き出されており、
所定電圧が印加可能な電源部(5a)と通電電流値が測定可能な測定部(5b)とを備えた電源供給装置(5)に二重遮水シート(1)が敷設される海中及び護岸斜面上に設置される固定外部電極(4)の配線が固定外部電極(4)毎に通電可能又は全てが遮断可能に接続されており、且つ電源供給装置(5)に前記各内部電極(3)の配線が内部電極(3)毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は内部電極(3)間で通電可能にそれぞれ接続されていることを特徴とする損傷孔が海水側か護岸斜面側かを特定可能及び損傷孔の位置を推定可能な二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項5】
算定された損傷孔の位置の略鉛直線上において所定の海中深さまで電極部を可動できる3以上の可動式外部電極(6)を更に備えていて、電源供給装置(5)に可動式外部電極(6)の配線が可動式外部電極(6)毎に通電可能若しくは全てを遮断可能又は可動式外部電極(6)間で通電可能にそれぞれ接続されていて損傷孔の大きさも算定可能な請求項3又は4に記載の二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項6】
各内部電極(3)が二重遮水シート(1)内の中間保護層(2)の幅方向中央部に設置されている請求項1から5までのいずれか1項に記載の二重遮水シートの破損特定システム。
【請求項7】
中間保護層(2)との間に各内部電極(3)が配置されるように通水性シート(7)が二重遮水シート(1)内に更に設けられている請求項1から6までのいずれか1項に記載の二重遮水シートの破損特定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−76355(P2008−76355A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259170(P2006−259170)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【出願人】(593116272)東ソー・ニッケミ株式会社 (5)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】