説明

亜塩素酸塩及び過酸化水素を含有する相乗効果を備えた抗菌性の眼科用及び皮膚科用調製物

生物の治療用に提供される抗菌組成物。該組成物は、約0.001重量%乃至約0.20重量%の亜塩素酸塩化合物と、約0.001重量%乃至約0.05重量%のペルオキシ化合物とを含む。本発明の抗菌組成物は、ほぼ室温にて保存される間、分解されて二酸化塩素が発生することなく不活性のまま維持されるように構成される。本発明の抗菌組成物は約6.0乃至約8.8のpH範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して医療用組成物及び方法に関し、より詳細には、ある種の殺菌/抗菌性調製物及び、該調製物を、i)物品又は表面を殺菌或いは保存するために、ii)身体の部分へ適用される局所的な消毒剤として、iii)傷痕の形成を回避又は阻止するために、iv)創傷、火傷、潰瘍、乾癬、座瘡及びその他の傷痕を形成する外傷のような皮膚疾患を治療するために、v)感染、炎症、ドライアイ、創傷治癒及びアレルギー性結膜炎のような眼科疾患を治療するために、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
A.創傷、火傷、擦り傷及び感染の殺菌/消毒及び局所治療のために使用される抗菌剤及び殺菌/消毒剤
【0003】
従来技術は種々の抗菌剤を含み、それらは種々の物品の殺菌、及び/又は治癒を助けるために微生物の成長を回避又は阻止することが望ましい生体の消毒及び/又は皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、擦り傷及び感染)の治療における局所投与のために意図的に使用されてきた。そのような局所抗菌剤は、ヨウ素、マーキュロクロム、過酸化水素及び二酸化塩素のような種々の活性抗菌成分を含んでいた。
【0004】
i.従来の二酸化塩素調製物
二酸化塩素の前駆体である亜塩素酸塩は、飲料水の殺菌剤として、そしてコンタクトレンズケア溶液の保存剤として使用可能であることが周知である。しかしながら、亜塩素酸塩は皮膚に対する局所適用に対して許容可能かつ安全である濃度範囲(例えば、50乃至1000ppm)内ではわずかに弱い抗菌活性を示すのみである。従って、亜塩素酸塩は皮膚に対する局所適用のための調製物における活性抗菌成分として日常的には使用されてこなかった。
【0005】
消毒用又は局所用殺菌剤としての亜塩素酸塩の有用性が制限されることから、亜塩素酸塩の殺菌作用を活性化又は高めるための種々の組成物及び方法が提唱されてきた。亜塩素酸塩の殺菌作用を活性化又は高めるためのそのような組成物及び方法の例は、米国特許第4997616号(一般的な活性化を記載する)、第5279673号(酸活性化を記載する)及び第5246662号(遷移金属活性化を記載する)に記載されている。
【0006】
二酸化塩素(ClO)及び「安定化された亜塩素酸塩」は、消毒剤として使用可能であることが知られている。化学的には、二酸化塩素は強力な抗菌活性を有する酸化剤である。二酸化塩素は一般的には、藻及びその他の有機材料を除去する及び/又はにおい及び味を除去するために使用されるある種の水処理の適用においては気体塩素より優れていると考えられている。二酸化塩素はまた、細菌、ウィルス及び微生物の胞子を除去するための殺菌剤として有効である。
【0007】
殺菌剤としての使用に加え、二酸化塩素は、化学的及び生化学的なその他多くの適用において酸化剤として使用可能である非常に反応性に富む不安定なラジカルである。例えば、米国特許第4855135号に記載されているように、二酸化塩素は、(a)二つの炭素原子間の二重結合の酸化のために、(b)二つの炭素原子の間の二重結合を介した不飽和脂肪酸(脂質)の酸化のために、(c)無水カルボン酸の加水分解の加速化剤として、(d)対応するカルボン酸に対するアルデヒドの酸化のために、(e)アルコールの酸化のために、(f)アミンの酸化のために、(g)フェノール、フェノール性誘導体及びチオフェノール性化合物の酸化のために、(h)ヒドロキノン類の適度な酸化のために、(i)アミノ酸、タンパク質及びポリアミドの酸化のために、(j)硝酸塩及び硫化物の酸化のために、及び(k)カルボン酸官能性を生成するために炭化水素のCHO及びCHOHラジカルの変性のために、使用され得る。
【0008】
液体又は気体の濃縮された二酸化塩素は非常に爆発性であるとともに毒性を有する。その結果、濃縮された二酸化塩素は非常に注意深く取り扱ったり輸送したりする必要がある。このため、局所用の抗菌剤又は殺菌剤として使用するために純粋な二酸化塩素を分散することは実施可能ではない。代わりに、二酸化塩素の「酸発生」を提供するために幾らかの抗菌剤又は殺菌剤調製物が処方化されてきた。そのような酸発生溶液は金属亜塩素酸塩を含む(即ち、粉末又は液体にて利用可能な二酸化塩素の前駆体)とともに、二酸化塩素を自由にする又は放出するために亜塩素酸塩と反応する酸と組み合わせられている。一般的に、二酸化塩素の酸発生のために任意の酸が使用され得、塩酸及び硫酸のような強酸や、クエン酸及び酒石酸のような比較的弱い酸を含む。これら従来の二酸化塩素発生システムに関連した欠点又は問題点には、a)二つの別々の容器又は化学成分を取り扱う不便さ、b)意図された適用部位へそのような二成分システムを送達する困難性、c)これらの従来技術のシステムが中性のpHよりむしろ酸性であるという点が含まれる。更に、二酸化塩素の発生を誘導する酸を使用する従来の二酸化塩素発生システムは、それが制御されない場合、非常に迅速に二酸化塩素を発生するために、溶液の殺菌又は抗菌能力の持続する期間が非常に短くなる。溶液内の亜塩素酸塩及び酸の濃度の増大は、その殺菌剤又は抗菌剤の貯蔵期限を延長するが、これらの化学物質のそのような濃度の増大は、毒性又は(局所適用における)皮膚の刺激を生ずる。そのような濃度の増大はまた必要以上に二酸化塩素の発生を引き起こすかもしれない。
【0009】
「酸発生」溶液中にて二酸化塩素が生成される速度を制限又は制御するための種々の方法が記載されている。例えば、米国再発行特許第31779号(Alliger)は亜塩素酸ナトリウムのような水溶性亜塩素酸塩と乳酸との組み合わせからなる殺菌用組成物を記載している。特殊な組成物は改善された殺菌特性を有し、同一の組成物であるが乳酸を、リン酸、酢酸、ソルビン酸、フマル酸、スルファミン酸、コハク酸、ホウ酸、タンニン酸及びクエン酸のようなその他の酸に置き換えることによっては得られない特性を有している。殺菌組成物は少なくとも15重量%の乳酸を含む酸性材料を水性媒体中の亜塩素酸ナトリウムと接触させることにより生成される。皮膚のような基質を保持する病原菌を殺菌及び消毒することが開示された方法は、インシチュ(in situ)での生成を提供するために殺菌組成物の適用又は反応物の適用のいずれかを含む。また、米国特許第5384134号(クロス(Kross))は金属亜塩素酸塩からの二酸化塩素の酸誘導発生を記載しており、亜塩素酸塩の濃度は利用可能な亜塩素酸の量により制限されている。特に、クロスの特許は、皮膚疾患を治療するための方法を記載しており、金属亜塩素酸塩からなる第一のゲルがプロトン酸からなる第2のゲルと混合される。亜塩素酸としてそのような溶液に存在する亜塩素酸イオンは、意図的に組成物中において亜塩素酸イオンの全濃度の約15重量%未満からなり、二つのゲルの混合物は意図的に、24時間までの長時間にわたり二酸化塩素を発生する。
【0010】
その他のこれまでの特許は、二酸化塩素発生手段として「安定化された」二酸化塩素の使用を記載している。安定化された二酸化塩素なる用語は二酸化塩素が不安定な複合体の形態にて溶液中に保持されると考えられる種々の組成物を参照する。過ホウ酸塩の使用による二酸化塩素の安定化は米国特許第2701781号(デゲバラ(de Guevara))に開示されている。デゲバラの特許によれば、安定化された二酸化塩素の消毒液は二酸化塩素と無機ホウ素化合物の水溶液から形成されており、ホウ素化合物及び二酸化塩素は不安定な複合体として溶液中に存在する。この安定な条件にて固定された二酸化塩素は消毒液の不可欠な成分である。デゲバラの特許は、二酸化塩素がインシチュでの発生により組成物中に導入されるか、あるいは外部にて生成されて、二酸化塩素ガスの水溶液中への曝気により溶液中に導入されるかのいずれかであると開示している。二酸化塩素を外部にて生成するために種々の方法が使用され、例えば硫酸と塩素酸カリウムとの反応、塩素酸塩と湿気を含んだシュウ酸の反応等がある。代替的に、二酸化塩素は塩素酸カリウムと硫酸との反応によりインシチュにて生成され得る。二酸化塩素がインシチュにて生成されても外部にて生成されても、塩素酸カリウムからの二酸化塩素の酸誘導放出が基本的であることを明記する。
【0011】
米国特許第4317814号(ラソ(Laso))はヒトの火傷の治療のための安定化された二酸化塩素調製物を開示している。二酸化塩素のような塩素酸化物の過ホウ酸塩安定溶液の水性混合物は、グリセリンとの組み合わせによる火傷を負った領域への局所適用に関して記載されており、また、火傷の治療のための経口投与による適用も開示されている。過ホウ酸塩で安定化された二酸化塩素の水溶液は、水と、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩酸、硫酸、無機過ホウ酸塩、及び過ホウ酸ナトリウムのようなペルオキシ化合物とを混合することにより調製されるものとして開示されている。従って、ラソの特許に従って調製された溶液は、二酸化塩素、次亜塩素酸塩及び強力な酸化剤としてのペルオキシ化合物を含んでおり、二酸化塩素の酸活性化を利用するものと考えられる。ラソの特許は、該特許に開示された方法により多くの場合火傷に関連した痛みの即時の鎮静化が得られ、治癒が早く、感染及び収縮を伴うことなく、かつ火傷による傷痕が滑らかであるとともに通常の組織に類似し、よって幾らかの場合においては美容整形手術の必要性を回避できることにより特徴付けられる。しかしながら、上述のラソの特許に記載された水溶液では長期間にわたる保存性及び安定性が問題である。その理由は、そのような混合物は非常に迅速に二酸化塩素を発生する傾向にあり、よって該混合物の長期間にわたる安定性を低減するからである。
【0012】
米国特許第3271242号(マックニコラス(McNicholas)ら)は、安定化された二酸化塩素溶液を開示しており、該溶液は、二酸化塩素ガスをペルオキシ化合物含有水溶液と結合させる工程と、引き続き該溶液を全てのフリーな過酸化物が蒸発するのに十分に高い温度でありながら、かつ二酸化塩素を破壊しない程度に十分低い温度まで加熱する工程とにより形成される。マックニコラスらは、70℃より「はるかに低い」温度は溶液中のフリーの過酸化物を蒸発させるのには不十分であるが、92℃を超えるべきではなく、なぜならば、92℃を超える温度により二酸化塩素が蒸発するであろうと述べている。マックニコラスは更に、「完全には理解」していないが、溶液をフリーな過酸化物が蒸発するまで加熱することは、溶液中に残ったいかなるフリーの過酸化水素も溶液から二酸化塩素を放出するための浸出剤として作用することから必要であると述べている。
【0013】
ii.抗生物質調製物
抗生物質化合物もまた、火傷、創傷並びに皮膚及び眼の感染の治療のために一般的に使用されてきた。抗生物質は治療の効果的な形態を提供するが、臨床の環境にて抗生物質を使用することに伴う幾らかの危険性が多くの場合存在する。これらの危険性は、(1)体内の常在菌に変化をもたらし、耐性菌の過剰な成長による「混合感染」を生ずること、(2)抗生物質の直接的な毒性、特に抗生物質のタイプによっては長期間の使用により腎臓、肝臓及び神経組織に対して損傷を与えること、(3)抗生物質に耐性を有する微生物個体群の成長により該抗生物質による更なる治療が不可能になることを含むが、それらに限定されるものではない。
【0014】
B.創傷、火傷、擦り傷及び感染を除く、治療が困難な皮膚疾患
小さな創傷及び膿瘍はある種の患者及び/又はある種の条件下において治療が困難ではあるが、治療を成功させることが特に困難である乾癬及び皮膚の潰瘍化のような周知の皮膚疾患が存在する。
【0015】
i.乾癬
乾癬は、銀白色の燐屑で覆われ、炎症を起こして腫れ上がった皮膚疾患として最も一般的に認められる非伝染性の皮膚疾患である。この最も一般的なタイプの乾癬は「尋常性乾癬」と称される。乾癬は多くの異なる種類と重症度の程度にて出現する。異なるタイプの乾癬は、膿様の水ぶくれ(膿疱性乾癬)、皮膚の重度の腐肉の形成(紅斑性乾癬(erythrodermic psoriasis))、滴状の斑点(滴状乾癬)及び滑らかな炎症性の病変(反転型(inverse)乾癬)のような特徴を示す。
【0016】
乾癬の原因は、遺伝的要因であると一般的に考えられているが、現在のところ分かっておらず、最近では、自己免疫皮膚疾患であるとの考えが確立されてきた。約三人に一人の割合にて乾癬の家族歴が報告されているが、遺伝的形質のパターンは存在していない。この疾患に対する家族歴がまったく存在しない子供が乾癬を発症するという多くの例が存在する。
【0017】
任意の個人において乾癬が起こりうるということは、幾らかの促進(precipitating)事象即ち「誘発因子」に依存する。乾癬の発生に影響を与えると考えられる「誘発因子」の例は、連鎖球菌性咽頭炎、皮膚の損傷(ケブナー現象)、ワクチン接種、ある種の投薬処置及び筋肉内注射若しくは経口ステロイド剤投与のような全身に及ぶ感染を含む。何かが個人の遺伝的傾向を誘発して乾癬を発症させると、今度は免疫系が過剰な皮膚細胞の再生を誘発すると考えられる。
【0018】
皮膚細胞は二つの可能なプログラム、即ち正常な成長又は創傷の治癒に従ってプログラムされる。正常な成長パターンの場合、皮膚細胞は基底細胞層に形成され、表皮を介して角質層即ち皮膚の最外層へと移動する。壊死細胞は新たな細胞が生成されるのとほぼ同じ速度にて皮膚からはがれ、バランスが維持される。この正常の過程は、細胞の発生から壊死まで約28日かかる。皮膚が損傷した場合、再生成熟として知られている創傷治癒プログラムが誘発される。細胞がかなり速い速度にて生成され、理論的には創傷が置き換えられ、かつ修復される。血液供給の増大と局所的な炎症も伴う。多くの場合、乾癬疾患の皮膚は創傷からの皮膚の治癒、又は感染のような刺激に対する反応に類似する。
【0019】
病変性の乾癬は、代わりの成長プログラムにおける細胞の成長により特徴付けられる。乾癬の病変には創傷は存在していないが、皮膚細胞(ケラチン生成細胞)は創傷が存在するかのようにふるまう。これらのケラチン細胞は正常成長プログラムから再生成熟プログラムへと切り替える。細胞が創製され、24日という短さで表面に押し出され、しかも皮膚は細胞を十分に早くはがすことができない。過剰な皮膚細胞が蓄積され、隆起した鱗屑状の病変を形成する。病変を通常覆う白色の鱗屑(「プラーク」と称する)は、壊死した皮膚細胞から構成され、病変の赤みは皮膚細胞を迅速に分割する領域への血流の増大に起因する。
【0020】
乾癬に対する治療法は知られていないが、幾らかの患者において、種々の処置は一時的な症状の緩和を提供することが示されている。しかしながら、乾癬に対して現在受け入れられている処置の効果は、かなり個人差を受ける。結果として、患者や医師は、最も効果的な処方計画を見つけるために治療法を試行錯誤する及び/又は組み合わせる必要がある。乾癬に対して現在利用可能な治療法は、多くの場合段階的な様式にて実施される。段階1の治療は、a)局所的な薬物適用(例えば、局所用ステロイド、局所用レチノイド)、b)全身用ステロイド、c)コールタール、d)アンスラリン、e)ビタミンD3及び日光、を含む。段階2の治療は、a)光線療法(例えば、紫外線照射)、b)光化学療法(例えば、放射線活性化剤の局所的な適用と、該活性化剤を活性化させるための照射との組み合わせ)、及びc)組み合わせ療法、を含む。段階3の治療は、a)メトトレキサート、経口レチノイド及びシクロスポリンのような全身性薬物療法及びb)ローテーション治療、を含む。
【0021】
ii.皮膚潰瘍化
皮膚潰瘍化は、圧迫、衣類又は一次的/二次的な血管疾患の結果として起こることが知られている。皮膚潰瘍化は一般的には、以下のようにその病因に従って分類される。
a.褥瘡/圧迫潰瘍−褥瘡による潰瘍又は圧迫痛は取り除くことのできない圧迫力に起因する病変であり、下側にある組織の損傷を生ずる。褥瘡潰瘍は通常、肘又は臀部のような骨ばった隆起部に発達する。取り除くことのできない圧迫力は、種々の原因とともに皮膚の破壊と持続的な潰瘍化とを伴う。
【0022】
b.静脈性潰瘍−静脈性潰瘍は、外傷に起因し、或いは慢性静脈不全(CVI)の後に発症する。CVIにおいて、静脈弁が完全に閉じず、血液は深静脈系から貫通静脈を介して浅静脈系へと逆流する。時間が経過すると、この血液柱の重みが流体及び蛋白質を周囲の組織へと押し出し、浮腫、足関節の色素沈着、組織の破壊及び潰瘍化を生ずる。静脈性潰瘍は浅いものであり得るか、又は筋肉まで深く延びる。
【0023】
c.動脈性潰瘍−脚部の潰瘍はまた、動脈血管の圧縮若しくは閉塞、血管壁の変化、又は慢性血管収縮により起こる動脈不全を伴う患者に発現する。喫煙者は動脈疾患に罹患する危険性が特に高く、その理由は、ニコチンが動脈を収縮し、アテローム動脈硬化性プラークの堆積を促進し、かつ炎症性動脈疾患(バーガー病)及び血管収縮疾患(レーノー病又はレーノー症)を悪化させることによる。虚血肢に対する外傷に起因する動脈性潰瘍は強い痛みを伴う。
【0024】
d.糖尿病性潰瘍−動脈不全は、糖尿病患者において治癒不能な潰瘍の原因となり得る。しかしながら、大部分の糖尿病性潰瘍は糖尿病性神経障害により起こる。その理由は、患者が脚部の痛みを感じず、外傷、きつすぎる靴による圧迫又は皮膚の破壊を引き起こすような反復的な押圧力を意識しないからである。
【0025】
当該技術分野において、創傷、火傷、擦り傷、感染、潰瘍化、乾癬及び座瘡のような皮膚疾患の治療に対する新たな殺菌剤および局所用調製物の製剤化及び開発の必要性が存在する。
【0026】
C.コンタクトレンズ用浸漬剤及び殺菌剤
コンタクトレンズは眼から取り外された時には必ず、再び使用するまで浸漬及び殺菌剤中に収納しておくべきである。浸漬及び殺菌剤は以下の機能を有する:
1.レンズを眼から取り外した後に、眼の分泌物をレンズから取り除くことを補助すること;
【0027】
2.細菌汚染されたレンズによる眼の感染を防ぐこと;及び
3.装着時にレンズが達成すべき水和平衡状態を維持すること。
D.コンタクトレンズの洗浄
レンズの装着時、粘膜物質、脂質及び蛋白質がコンタクトレンズに堆積し、刺激、灼熱感及び発赤によりレンズの装着が不快になる。それにより視界がぼやけてくる。この不快感の問題を軽減するために、ソフト又はハードコンタクトレンズは、酵素洗浄剤及び殺菌液を用いて定期的に洗浄及び殺菌されるために、眼から取り外されるべきである。ソフトコンタクトレンズに伴う重度の合併症の一つは、巨大乳頭結膜炎(GPC)である。巨大乳頭結膜炎の発症は、ソフトコンタクトレンズ合併症と関連した炎症反応に主に起因すると考えられる。主要な原因は、コンタクトレンズ上への蛋白質の沈着である。PGCは、無症状の場合から、痛み、上瞼の浮腫、眼の充血、粘液の流出、進行性のコンタクトレンズ装着不能までの範囲にわたる症状を生ずる。本発明の点眼用洗浄剤は、蛋白質の沈着を効果的に洗浄し、角膜表面への細菌の感染を回避するとともに酸素分子を供給することにより角膜上皮細胞を健全に維持する。従って、ソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズの両方の装着者に対して利便性と利益とを提供する。
【0028】
E.眼科疾患の治療
i.ドライアイ
ドライアイは、涙液の生成が不十分であるか、又は涙液の組成が角膜及び結膜を適切に湿潤させるには不十分であるという症状である。眼の涙液の種々の疾患は、眼の乾燥した感覚、眼内に異物が存在することによる不快感に起因する。ほとんどの場合、涙液膜が正常な持続性を失い、迅速に破壊し、自然発生的な瞬きの間隙時にその構造が維持できなくなる。これら涙腺異常の全ては複数の原因を有する。ドライアイの最も一般的な形態は、涙液内の水性成分の減少による。ドライアイを治療しないとさらに悪化して、より重度である上皮びらん、上皮細胞のストランド及び角膜上の局所的な乾燥部分を生成し、更なる細菌感染を併発する。しかしながら、その緩やかな症状において、眼の乾燥及び刺激という感覚は人工的な涙液により解決される。従って、角膜の潤滑特性を備えた広域抗菌活性を備えた人工涙液は、快適性を提供するのみならず、損傷を受けた角膜表面の回復に優れた効果を与える。
【0029】
ii.アレルギー性結膜炎
空気中に浮遊する、又は手に付着して運ばれるアレルゲンは通常、IgE媒介過敏反応によりアレルギー性結膜炎を発症する。瞼のはれ、結膜充血、乳頭反応、結膜浮腫及び粘性のムコイドの流出を含む、痛み、流涙、ドライアイ及びやに眼を伴う。人工涙液製剤中に含まれる涙液中のヒアルロン酸の存在は、角膜表面をアレルゲンの接触から保護する。本発明の広域抗菌剤は、角膜表面を細菌の感染から保護するとともに酸素分子を供給することにより角膜上皮細胞の健全性を維持する。従って、アレルゲンに感受性の高い眼に優れた効果を与える。
【0030】
iii.細菌の侵入
細菌性角膜炎は、全世界における失明の主たる原因の一つである。米国において、毎年約30,000の症例が発生しており、先進国においてはコンタクトレンズ装着の流行がこの発生率の上昇に寄与している。統計的な調査によると、米国においては毎年、コンタクトレンズを装着する10万人のうち約30人の割合にて潰瘍性角膜炎を発症しており、起こりうる失明の可能性からこの疾患が重大な公衆衛生上の問題となっている。瞼、瞬き、及び角膜及び結膜上皮細胞が細菌の侵入に対するバリアを提供する一方、これらの防御機構の一つ以上が危険になり得る。そのような危険性は、瞼の異常、角膜表面の露出、涙液の生成が少ないこと、上皮の問題、投薬の毒性、外傷及び切開手術を含む。細菌性角膜炎の眼における兆候は、時間の経過とともに穿孔に通じる深刻な侵入及び壊死を引き起こす傾向にあるブドウ球菌及び連鎖球菌において認められる。緑膿菌性角膜炎は迅速に進行する傾向にある。これらの微生物は、プロテアーゼ、リパーゼ、及びエラスターゼのような破壊酵素、並びに壊死による潰瘍化及び穿孔を引き起こす外毒素を生成する。セラチア菌による角膜炎は、外毒素及びプロテアーゼの分泌を伴う表在性傍中心性潰瘍として発症し、進行性の潰瘍及び穿孔を生ずる。細菌性角膜炎が発症するためには、細菌の接着部がホスト細胞レセプタに結合する必要がある。この接着が起こると、炎症、壊死及び血管形成の破壊的な過程が結果として起こる。
【0031】
細菌性角膜炎の現在の治療は、広域スペクトルを有する抗生物質療法の使用に主として依存している。そのような抗生物質は、スルフォナミド、トリメタプリン、及びキノロンを含む。また、ベータラクタム、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール及びエリスロマイシンも含まれる。そのような抗生物質は広範囲において使用される一方、抗生物質抵抗性の病原菌が出現するという誤った使用となり得る。加えて、抗生物質は細菌の繁殖を食い止めるのみであり、プロテアーゼ酵素、内毒素又は外毒素の活性を阻害しない。従って、明らかなように、細菌の繁殖のみならず、プロテアーゼ酵素、内毒素及び外毒素を扱う抗菌剤の重要な必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、物品若しくは表面(例えば、コンタクトレンズ、カウンタートップ等)の殺菌、皮膚又はその他の身体の部分の消毒、傷痕の防止若しくは最小化、及び/又は真皮(例えば、皮膚及び粘膜)疾患(例えば、創傷、火傷、感染、ヘルペス、潰瘍化、乾癬、傷痕形成病変、座瘡)の治療若しくは予防、及び眼科疾患(例えば、感染、炎症、ドライアイ、アレルギー性結膜炎及び創傷の治癒)のための治療を目的とする抗菌調製物(例えば、溶液、ゲル、軟膏、クリーム等)を提供する。本発明の抗菌調製物は一般的には、約0.001乃至約0.20重量%の金属亜塩素酸塩と、0.001乃至0.05重量%の過酸化水素のようなペルオキシ化合物との組み合わせからなる。加えて、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物の調製物はポリマー性潤滑剤及び界面活性剤のような更なる成分を含み、及び/又はポリマー性の薬物送達システム又はリポソーム調製物に製剤化され得る。本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物は、例えばグラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母及び真菌類に対する活性を含んだ広い抗菌活性を有する。更に、皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、感染、潰瘍化、座瘡及び乾癬)の治療に対して適用又は投与される場合、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物は細菌の感染を阻止する又は低減するのみならず、付随的に作用組織へ酸素を供給し、治癒を助けるとともに傷痕の形成を阻止する。
【0034】
更に、本発明に従って、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物を適用又は投与して、物品(例えば、コンタクトレンズ)を殺菌する方法及び皮膚疾患(例えば、創傷、火傷、感染、潰瘍化、及び乾癬)を治療する方法が提供される。コンタクトレンズ殺菌液に関しては、洗浄のために眼からレンズを取り外すことなく眼に装着された状態にてコンタクトレンズを洗浄する製剤と同様に、金属亜塩素酸塩の濃度は約0.002%乃至約0.20%である。眼内への適用に関して、本発明の殺菌製品は、無菌の、等張の、緩衝化した、無色透明溶液であり、ポリマー性潤滑剤及び界面活性剤を更に含む。製品は室温にて、亜塩素酸塩と過酸化物の安定化されたペルオキシクロラール複合体として容器(例えば、白色不透明なプラスチックボトル)内に保存された場合、二年間の貯蔵寿命を有する。
【0035】
加えて、本発明はドライアイの治療、創傷の治癒及びアレルギー性結膜炎の治療に効果を有することが示されている製剤を含む。
更に本発明に従って、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物を適用又は投与することにより傷痕の形成を阻止する方法が提供される。
【0036】
更に本発明に従って、広範囲の抗菌活性において相乗効果を有することが示されている製剤を提供する。
更に、本発明に従って、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物を適用又は投与することにより眼の感染、眼の穿孔及び炎症を阻止する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
更に本発明の態様及び目的は、以下に記載された詳細な説明及び実施例を熟読して理解することにより当業者には明らかになるであろう。
【0038】
以下の詳細な説明及び実施例は、本発明のある種の例示的な実施形態を記載する目的のみにおいて提供されたものであり、本発明の範囲をいかなる様式においても制限することを意図していない。
【0039】
本発明は、中性の水溶液(pH6.0−8.8、好ましくはpH7.0,7.8であり、より好ましくはpH7.0,7.4である)中において少量の過酸化水素と組み合わせて亜塩素酸塩(例えば、亜塩素酸ナトリウムのような金属亜塩素酸塩)を含む調製物を提供する。これらの調製物は、室温での保存時には二酸化塩素を生成することなく、かつ相乗的な抗菌活性を示し、これらの水溶液の安定性が製薬上における使用を可能にする。例えば、400ppmの亜塩素酸塩と100ppmの過酸化水素を含む水溶液は室温にて18ヶ月を超えても安定であり、該溶液の個々の成分を同一の濃度にてカンジダ・アルビカンスの活性を低減する目的にて別々に適用した場合には効果のなかったものが、6時間のチャレンジ内において、1.0ログ(log)だけ該活性の低減に有効であった。加えて、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液中に存在する過酸化水素は、組織及び/又は生体内の幾らかの流体に存在するパーオキシダーゼ及びカタラーゼ酵素との接触により容易に酸素分子及び水に分解する。そのようなインシチュにおける酸素分子の生成は細胞の活性に寄与するとともに創傷の治癒力を高める。
【0040】
本発明の亜塩素酸塩/H溶液は、ポリマー性潤滑剤(例えば、HPMC、メトセル(Methocel)、CMC、ヒアルロン酸等のような非イオン性及び/又はアニオン性)及び/又はブロックポリマーベースの界面活性剤(例えば、プルロニック)と組み合わせて製剤化されるのに十分安定である。例えば、水性の亜塩素酸塩/過酸化物系は潤滑剤としてのメトセル又はヒアルロン酸と、眼科用に許容可能な等張性(例えば、少なくとも約200mOsmol/kgの浸透圧)であるコンタクトレンズ用殺菌液(25℃において50mPa・s(50cps)までの粘度)のための界面活性剤としてのプルロニックと、許容可能な生理学的範囲内での製剤のpHを維持するための緩衝剤とともに製剤化され得る。コンタクトレンズ殺菌液、人工涙液、及び点眼洗浄液の処方は、好ましくは約0.005乃至約0.06重量/容量%の亜塩素酸塩と、好ましくは約0.0002乃至約0.05重量/容量%の過酸化水素とを含む。繰り返し述べるが、過酸化水素の存在は、涙液中のカタラーゼとの接触により角膜に有用な酸素分子を提供する。
【0041】
A.処方
本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物は、液剤、ゲル、軟膏、クリーム、スプレー等を含む種々の様式にて製剤化される。以下の記載は、本発明に従って調製され得る特殊な処方のタイプの幾らかの例である。
【0042】
i.安定な亜塩素酸塩/過酸化物液状溶液
以下の処方1は、本発明の液状の亜塩素酸塩/過酸化物溶液の第一の好ましい処方である。
処方1
亜塩素酸ナトリウム 0.005% 0.10%
過酸化水素 0.005% 0.05%
メトセルA 0.05% 0.2%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム 0.75%
プルロニックF68/F−127 0.1%
HCl又はNaOH pH7.4に調整
精製水 全量となるまで適量
以下の処方2は、本発明の液状の亜塩素酸塩/過酸化物溶液の第二の好ましい処方である。
【0043】
処方2
亜塩素酸ナトリウム 0.05%
過酸化水素 0.02%
カルボキシメチルセルロース 0.01%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム 0.75%
プルロニックF68/F−127 0.1%
HCl又はNaOH pH7.3に調整
精製水 全量となるまで適量
上述の好ましい処方の溶液のような本発明の亜塩素酸塩/過酸化物溶液は、種々の医療用又は非医療用の用途に使用され、該用途は非限定的ではあるが、a)コンタクトレンズ、医療用/歯科用機器、カウンタートップ、処置テーブル、櫛及びブラシのような物品及び表面の殺菌;皮膚又は身体の部分の消毒(例えば、殺菌用ハンドウォッシュ剤、消毒用スクラブ洗顔料等)、及びb)創傷、火傷、感染、潰瘍化、ヘルペス、乾癬、座瘡のような表皮(例えば、皮膚又は粘膜)疾患の治療又は予防、及びc)傷痕形成の阻止又は回避、及びd)眼科用疾患(例えば細菌性角膜炎により起こる感染又は炎症)の治療を含む。
【0044】
既に指摘したように、本発明の亜塩素酸塩/過酸化水素系は、高分子ゲルの形態又はペーストの形態にて処方化されるのに十分安定である。更に、そのような高分子ゲル又はペーストの処方は、亜塩素酸塩/過酸化水素の放出を遅らせる又は制御するポリマーを含む(例えば、徐放性送達システム)。そのような徐放性製剤は、創傷部位にて長期間にわたり亜塩素酸塩/過酸化水素の効果的な濃度を維持することにより、創傷部位を覆うシールを形成することにより該創傷部位を外的な微生物の汚染から防御することにより、そして創傷を受けた組織に酸素分子を供給することにより、治療指数を増大することができるという優れた利点を提供する。従来の軟膏と異なり、高分子ゲルは、適用することにより、創傷部位に乾燥した、清潔かつ快適なコーティングを提供する。そのようなゲル処方はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(メトセル)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロース(CMC)等のような高分子薬物送達担体を含む。
【0045】
ii.安定な亜塩素酸塩/過酸化物ゲル
以下の処方3は本発明の亜塩素酸塩/過酸化物ゲルの現在の好適な処方である。
処方3
亜塩素酸ナトリウム 0.02%、0.10%
過酸化水素 0.005%、0.05%
メトセルA 2.0%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム 0.75%
プルロニックF68/F−127 0.1%
HCl又はNaOH pH7.4に調整
精製水 全量となるまで適量
本発明の任意の調製物は公知のリポソーム形成技術に従って該調製物のリポソームを形成することにより、及び/又はポリマーマトリックス又は以下に示した一つ以上のような徐放性成分の製薬的に許容可能かつ効果的な量を処方に加えることにより(例えば、典型的には1乃至20重量%)、活性成分が徐放性にて放出されるべく処方化され得る。該徐放性成分は、セルロースエステル、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエステル塩、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリン酸−メチルメタクリレートコポリマー、メタクリン酸−酢酸エチルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、リン脂質、コレステロール、中性電荷を有するリン脂質、陰性電荷を有するリン脂質、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルセリン、及びそのナトリウム塩である。
【0046】
iii.安定な亜塩素酸塩/過酸化物眼科用溶液
以下の処方4は、眼に装着した状態又は外した状態にてコンタクトレンズを洗浄するために使用される亜塩素酸塩/過酸化物コンタクトレンズ殺菌液の現在好ましい処方である。該処方は更にドライアイの患者に潤滑性を提供する涙液製品としても機能する。
【0047】
処方4
亜塩素酸ナトリウム 0.002%−0.20%
過酸化水素 0.005%−0.05%
ヒアルロン酸 0.001%−0.50%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム 0.75%
プルロニック127 0.05%−2.0%
HCl又はNaOH pH7.4に調整
精製水 全量となるまで適量
既に述べたように、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物は、それが液剤、ゲル、軟膏、クリーム、スプレー等の形態であるかどうかに関わらず、室温にて保存する間、二酸化塩素を発生させることなくpH6.0−8.8の範囲にて活性成分として亜塩素酸ナトリウムのような亜塩素酸塩と過酸化水素とを維持するべく特に構成されている。例示のために、特定の範囲内における異なるpHレベルにて処方2に従う液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液の種々の実験を実施した。しかしながら、本明細書において、そのような実験は液体の形態のみに制限するものではなく、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物の種々の形態において、異なるpHレベルであっても二酸化塩素を生成しないことを例示するために実施されたものである。
【0048】
以下の実験は、中性、塩基性及び酸性のpHレベルにて亜塩素酸ナトリウムのような亜塩素酸塩及び過酸化水素からなる抗菌処方の安定性を示すためにデザインされた。より詳細には、亜塩素酸ナトリウムの定量的なレベル及び二酸化塩素の発生は、7.3、8.0、8.8、7.0、6.44及び6.0のpHレベルにて決定された。0.1Nの塩酸溶液及び0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を実験においてpHレベルを調整するために適用した。殺菌した0.9%の塩化ナトリウム殺菌溶液もまた使用した。以下の処方であるプラセボ溶液も分光光度計(例えば、Lambda20モデルUV−可視分光光度計)に適用され、種々のpHレベルにおける亜塩素酸ナトリウムのレベル及び二酸化塩素の発生を検出及び測定した:
【0049】
プラセボ溶液
過酸化水素 0.02%
カルボキシメチルセルロース 0.01%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム 0.75%
プルロニックF68/F−127 0.1%
HCl又はNaOH pH7.3に調整
精製水 全量となるまで適量
実験1:7.3のpHレベル
実験:第一のキュベットにプラセボ溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図1に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0050】
結果:液状溶液は、pH7.3のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH7.3のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
【0051】
過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、図1に見られるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。
【0052】
200nm乃至400nmの間にてpH7.3を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0053】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。
このことは、pH7.3において、液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH7.3において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸ナトリウムは分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0054】
実験2:8.0のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、プラセボ溶液及び液状溶液をいずれも8.0のpHレベルに調整した。
【0055】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図2に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0056】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH8.0のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH8.0のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
【0057】
既に述べたように、過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、図2に見られるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。また、上記したように、亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。
【0058】
200nm乃至400nmの間にてpH8.0を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0059】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。このことは、pH8.0において、液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH8.0において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸塩は分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0060】
実験3:8.8のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、プラセボ溶液及び液状溶液をいずれも8.8のpHレベルに調整した。
【0061】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図3に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0062】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH8.8のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH8.8のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
【0063】
既に述べたように、過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、図3に見られるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。また、上記したように、亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。
【0064】
200nm乃至400nmの間にてpH8.8を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0065】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。このことは、pH8.8において、液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH8.8において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸塩は分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0066】
実験4:7.0のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの塩酸溶液を加え、プラセボ溶液及び液状溶液をいずれも7.0のpHレベルに調整した。
【0067】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図4に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0068】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH7.0のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH7.0のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、図4に見られるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0069】
亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。200nm乃至400nmの間にてpH7.0を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0070】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。このことは、pH7.0において、液状溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH7.0において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸塩は分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0071】
実験5:6.44のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの塩酸溶液を加え、プラセボ溶液及び液状溶液をいずれも6.44のpHレベルに調整した。
【0072】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図5に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0073】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH6.44のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
【0074】
プラセボ溶液は、pH6.44のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。
【0075】
200nm乃至400nmの間にてpH6.44を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0076】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。このことは、pH6.44において、液状溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH6.44において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸塩は分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0077】
実験6:6.0のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの塩酸溶液を加え、プラセボ溶液及び液状溶液をいずれも6.0のpHレベルに調整した。
【0078】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図6に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0079】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH6.0のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH6.0のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、図6に見られるように、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0080】
亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。200nm乃至400nmの間にてpH6.0を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0081】
解釈:亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示すが、355nm−358nmでは二酸化塩素のピークは示さなかった。このことは、pH6.0において、液状溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを有し、いかなる量の二酸化塩素をも含んでいないことを示している。このことは、pH6.0において、亜塩素酸ナトリウムは安定であり、かつ亜塩素酸塩は分解されないし、二酸化塩素を形成しないことを明らかに示している。
【0082】
実験7:1.5のpHレベル
実験:25mLのプラセボ溶液及び25mLの液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を二つの清潔な容器に分配した。各容器に0.1Nの塩酸溶液を加え、プラセボ溶液及び抗菌溶液をいずれも1.5のpHレベルに調整した。
【0083】
キュベットの一つをプラセボ溶液で満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計の標準用ビーム経路中に配置した。第二のキュベットに液状溶液を満たし、該キュベットを清潔に拭き取り、分光光度計のサンプル用ビーム経路中に配置した。該溶液を200nm乃至400nmにてスキャンし、結果を記録した。図7に示されるグラフに図示されるように、結果をプロットして印刷した。
【0084】
結果:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pH1.5のレベルにて、活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。プラセボ溶液は、pH1.5のレベルにて、活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。既に説明したように、過酸化水素は200nm乃至400nmの範囲にて吸収していない。従って、過酸化水素の吸収ピークは検出されなかった。
【0085】
また既に説明したように、亜塩素酸ナトリウムは260nmに最大吸収を有し、一方、亜塩素酸ナトリウムの分解産物である二酸化塩素は355nm−358nmに最大吸収を有する。200nm乃至400nmの間にてpH1.5を有する溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られるであろう。
【0086】
解釈:液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmに亜塩素酸ナトリウムのピークを示さないが、355nm−358nmでは二酸化塩素の大きなピークを示す。このことは、pH1.5のレベルにおいて、液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液はいかなる亜塩素酸ナトリウムをも含んでいないことを示している。むしろ、亜塩素酸ナトリウムは分解されて、二酸化塩素に変換されたことを明らかに示している。このことは、pH1.5において、亜塩素酸ナトリウムは非常に不安定であり、液状溶液中に存在する全ての亜塩素酸塩が二酸化塩素に変換したことを明らかに示している。
【0087】
実験1−7の結果
液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、pHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0及び8.8において活性物質としての亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
【0088】
プラセボ溶液は、pHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0及び8.8において活性物質としての過酸化水素並びに緩衝剤及び等張化剤を含んでいた。
過酸化水素は、200nm乃至400nmの範囲においては吸収しない。
亜塩素酸ナトリウムは、260nmに最大吸収を有する一方、二酸化塩素は355nm乃至358nmに最大吸収を有する。
【0089】
200nm乃至400nmの間にて溶液をスキャンすることにより、亜塩素酸ナトリウムの定量値と同一のスキャンにおける二酸化塩素の定量値が得られた。
実験1−7の結果の解釈
pHレベル6.0、6.44、7.0、7.3、8.0及び8.8における液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmにて亜塩素酸ナトリウムのピークの存在を示したが、355nm乃至358nmにおいて二酸化塩素のピークの存在を示さなかった。
【0090】
これに対し、pH1.5における液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、260nmにて亜塩素酸ナトリウムのピークの存在を示さなかったが、355nm乃至358nmにおいて二酸化塩素のピークの存在を示した。
【0091】
実験1−7の結果からの結論
pHレベル1.5、6.0、6.44、7.0、7.3、8.0及び8.8における液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液中に存在する亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素のレベルを定量的に決定することが可能であることを結果が示している。
【0092】
室温にて液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液を保存する(例えば、室温にて空気にさらされた白色不透明のボトル中にて保存する)と、355nm乃至358nmにいかなる吸収をも認めないことにより二酸化塩素が存在していないことも結果から明らかである。
【0093】
要するに、液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は亜塩素酸ナトリウムのみを含んでいる。製造時には二酸化塩素は含んでおらず、また、pH6.0、6.44、7.0、7.3、8.0及び8.8においては、ほぼ室温にて保存後も溶液が分解されて二酸化塩素が生成することはなかった。しかしながら、液状溶液をpH1.5まで酸性化すると分解して二酸化塩素を生成した。
【0094】
本発明の液状の亜塩素酸ナトリウム/過酸化水素溶液は、亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素により抗菌特性を有することが明らかとなった。これは、出発物質として亜塩素酸ナトリウムを有する従来のその他の発明とは非常に異なり、亜塩素酸ナトリウムの酸性化により生成する二酸化塩素が活性殺菌剤である。
【0095】
B.治療への応用例
以下は、本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物の治療への応用の特殊な例である。
【実施例1】
【0096】
乾癬の治療−非交叉(No−Crossover)
両腕に乾癬のプラークを有するヒト患者を以下のように治療した。
以下の処方を有する亜塩素酸塩/過酸化物溶液を左腕のプラークのみに一日2回適用した:
【0097】
亜塩素酸ナトリウム 0.06%
過酸化水素 0.01%
HPMC 2.0%
ホウ酸 0.15%
HCl又はNaOH pH7.4に調整
精製水 全量となるまで適量
市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームを右腕のプラークのみに一日2回適用した。
亜塩素酸塩/過酸化物で治療した右腕における乾癬のプラークは治療を始めてから24時間以内において症状が緩和し始め、治療を始めてから3日以内にほぼ消失した。しかしながら、トリアムシノロンアセトニドで治療した左腕に存在する乾癬のプラークは変化せず、2週間の治療期間の間炎症を呈していた。
【実施例2】
【0098】
乾癬の治療−交叉
両腕に乾癬のプラークを有するヒト患者を2週間の間、以下のように治療した。
以下の処方を有する亜塩素酸塩/過酸化物溶液を左腕のプラークのみに一日2回適用した:
【0099】
亜塩素酸ナトリウム 0.06%
過酸化水素 0.01%
HPMC 2.0%
ホウ酸 0.15%
HCl又はNaOH pH7.4に調整
精製水 全量となるまで適量/100%
市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームを右腕のプラークのみに一日2回適用した。
亜塩素酸塩/過酸化物で治療した右腕における乾癬のプラークは治療を始めてから24時間以内において症状が緩和し始め、治療を始めてから1週間以内にほぼ消失した。しかしながら、トリアムシノロンアセトニドで治療した左腕に存在する乾癬のプラークは変化せず、2週間の治療期間の間炎症を起こしていた。
【0100】
最初の2週間の治療期間の終了後の日から始まり、続く2回目の2週間の治療期間において、患者は以下のように治療された:
本実施例の上述の市販の0.1%トリアムシノロンアセトニドクリームと同一のものを左腕のプラークのみに一日2回適用した。
【0101】
本実施例の上述の亜塩素酸塩/過酸化物徐放性ゲルと同一のものを右腕のプラークのみに一日2回適用した。
2回目の治療期間が始まってから24時間以内に、右腕の乾癬の病変が治癒し始めた。3日目から始まり2回目の2週間の治療期間の終了時までに右腕の乾癬の病変はほぼ消失した。
【実施例3】
【0102】
ヘルペスの治療
唇に、疼痛を伴い液体を含有するヘルペス(例えば、下疳潰瘍(chancre sore))を患う患者について、上述の処方1に従って調製された亜塩素酸塩/過酸化物調製物を唇に一日2回適用して治療した。
【0103】
亜塩素酸塩/過酸化物調製物を最初に適用してから6乃至12時間以内に、痛みが緩和したと患者から報告があった。亜塩素酸塩/過酸化物調製物を最初に適用してから24時間以内に、ヘルペス内に含まれる流体はほぼ消散し、ヘルペスは乾燥してきた。亜塩素酸塩/過酸化物調製物を最初に適用してから6日以内に、ヘルペスはほぼ消失し、唇は正常になる一方、一般的には6日以上を必要とする重症のヘルペスも完全に消失して治癒した。
【実施例4】
【0104】
静脈性潰瘍の治療
右足の3乃至4cmの直径の静脈性潰瘍が9乃至12ヶ月間存在した状態である患者に対して、上述の処方1に従って調製された亜塩素酸塩/過酸化物液状溶液を浸漬したガーゼを該潰瘍に一日2回適用して治療した。
【0105】
治療を始めてから3日以内に潰瘍は清潔かつ乾燥してきた。治療を始めてから14日以内に該潰瘍はその大きさが減少し始め、健康かつ新しい組織がその周辺部に観察された。治療を始めてから35日で潰瘍は傷痕を残すことなく完全に治癒し、該潰瘍が存在していた領域は痛みもなくなった。
【実施例5】
【0106】
糖尿病性褥瘡性潰瘍の治療
両足及び幾らかのつま先部に褥瘡性潰瘍が12乃至18ヶ月間存在した状態である歩行不能な糖尿病患者に対して、上述の処方1に従って調製された亜塩素酸塩/過酸化物液状溶液を浸漬した清潔かつ滅菌されたガーゼを潰瘍及び飽和部(saturation)に一日3回適用して治療した。亜塩素酸塩/過酸化水素の治療を始めてから4乃至7日以内において、潰瘍は、炎症がおさまり始めるとともに清潔かつ乾燥し始めた。亜塩素酸塩/過酸化水素の治療を始めてから約7乃至10日において、潰瘍内に顆粒組織が形成し始めた。12乃至14日以内において、特に症状が重度であるつま先の潰瘍であって、該つま先の骨にまで浸透している一つの潰瘍を除いては、潰瘍領域内において、再上皮化が始まったことが観察された。治療を始めてから30乃至45日以内において、重症であるつま先の潰瘍を除く全ての潰瘍が、不規則な傷痕の形成もなく完全に治癒し、再上皮化した。また、治療を開始してから30乃至45日にてつま先の潰瘍も実質的に小さくなり(また、完全には治癒していないが)、患者は歩行可能になった。上述の処方1及び2のような本発明の液状又はゲル処方物は、創傷、火傷、座瘡、感染、外傷、外科的切開部又は任意のその他の傷痕が形成される病変若しくは疾患による傷痕形成を回避するために局所的に適用可能であり得る。
【実施例6】
【0107】
a.ドライアイ状態の治療
ドライアイ状態を有する被検者は、眼のかゆみ及びチクチク感を伴う。極端な場合、該被検者は健康を維持する上にも障害となるようなより深刻な問題を抱えることになる。被検者は以下の処方である好ましい涙液製品で治療された:
【0108】
亜塩素酸ナトリウム 0.005%−0.02%
過酸化水素 0.01%
メチルセルロースA4M 0.075%
ヒアルロン酸 0.10%−0.125%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム,USP 0.75%
プルロニック127 0.10%
HCl又はNaOH pH7.4に調整する
精製水 適量を加え全量とする。
ローズベンガル染色又はフルオレセインを用いたドライアイ被検者の実験は、角膜上皮の健康状態に関して良好な指標を与え、一方、ローズベンガル染色は角膜並びに結膜上の死滅した上皮細胞の数の良好な指標を提供する。
【0109】
ドライアイ状態の二人の被検者にローズベンガル染色を用いて実験し、角膜及び結膜への量的な染色を写真により記録した。被検者は、一回2滴の投与量で一日3回の投与を上述の好ましい涙液製品を用いて開始した。2週間後、二人の被検者にローズベンガル染色を用いて試験し、染色のレベルは写真により定量的に記録した。結果はローズベンガル染色において50乃至70%の減少を示し、好ましい涙液処方物が角膜及び結膜細胞の死滅を改善することを明らかに示している。
【0110】
上皮細胞の健康状態の客観的な判定に加え、二人の被検者は好ましい涙液製品の安全性及び効果に関して主観的に試験された。最初に、2週間の処置期間の間、被検者の細隙灯生体顕微鏡検査により、如何なる発赤、刺激、炎症又はその他不快な兆候も示されなかった。第2に、被検者は、涙液製品の適用により、ドライアイによる発赤、かゆみ、チクチク感、痛み及び乾燥の症状を完全に取り除くことができる一方で、数時間持続可能な潤滑性を提供することを指摘した。従って、涙液製品がドライアイの治療において安全かつ有効であることは明らかである。そのような組成物の上述の抗菌活性に関して更に認識されるように、涙液製品はまた、細菌感染が避けられるべきである手術後の眼において創傷治癒を促進する効果も有するであろう。
【0111】
b.アレルギー性結膜炎の治療
上述の好ましい涙液製品を用いたドライアイ状態の治療に加えて、該製品にてアレルギー性結膜炎による状態の治療に関しても試験した。特に、一定の涙液とともに眼のかゆみ及びチクチク感を伴うアレルギー性結膜炎に苦しむ二人の被検者に該製品を一回2滴の投与量で一日3回投与した。この投与量により症状が消失した。
【0112】
c.コンタクトレンズ洗浄液の例
i.例1:浸漬、洗浄及び殺菌剤
以下の処方は、従来の浸漬によりコンタクトレンズを洗浄するのに適用可能な好ましい殺菌液である。
亜塩素酸ナトリウム 0.05%
過酸化水素 0.01%
メチルセルロースA4M 0.075%
ヒアルロン酸 0.05%−0.10%
ホウ酸 0.15%
プルロニック127 0.25%−0.50%
塩化ナトリウム,USP 0.75%
HCl又はNaOH pH7.4に調整する
精製水 適量を加え全量とする。
親水性のソフトコンタクトレンズを用いる六人の被検者は上述の殺菌液にレンズを浸漬し、その後、該レンズを眼に直接装着した。浸漬は、一晩又は必要な基準に応じて実施した。六人の被検者の全てが、レンズが非常に快適なものに感じ、かつ如何なる有害な効果(例えば、灼熱感、刺痛、発赤、疼痛)を経験しなかったと報告している。加えて、該溶液はレンズの快適性及び清潔な状態を数週間の間にわたって延長し、そのような延長期間はその他市販の殺菌液にて経験する期間を超えるものであった。
【0113】
殺菌液は、種々の水分含有量(例えば、38%乃至75%)を有する親水性のソフトコンタクトレンズ並びにシリコンアクリレートのガス透過性ハードレンズに対しても使用可能であった。30日の間、毎日、溶液中にソフトコンタクトレンズを浸漬するという繰り返し試験は、レンズの物理的及び化学的特性に如何なる損傷も変化も与えなかったことを示した。既に述べたように、眼の快適感は、ソフトレンズ又はガス透過型のハードレンズにおける保存剤と結合及び蓄積することなく達成されるが、一方そのような結合及び蓄積は、市販製剤においては刺激及び不快感の原因となることが見出されている。
【0114】
ii.例2:装着しながらの洗浄
以下の処方は好ましい点眼殺菌液であり、該殺菌液を眼に導入することによりコンタクトレンズを装着した状態にて洗浄可能なものである。
亜塩素酸ナトリウム 0.02%
過酸化水素 0.01%
メチルセルロースA4M 0.075%
ヒアルロン酸 0.075%−0.10%
ホウ酸 0.15%
塩化ナトリウム,USP 0.75%
プルロニック127 0.75%
HCl又はNaOH pH7.4に調整する
精製水 適量を加え全量とする。
四人の被検者に上述の点眼溶液を一回2滴の投与量で一日3回、30日間、コンタクトレンズを装着した状態にて投与した。全ての被検者における試験において、いかなる種類の刺激、灼熱感、刺痛、又は有害な効果も示さなかった。これらの被検者は更に、溶液が無痛化及び潤滑性を与えると報告した。
【0115】
二人の被検者は比較試験を行い、最初に、該被検者はACUVUE使い捨てレンズを2週間連続して装着し、時々はずして、市販の洗浄液にて洗浄後、生理食塩水にて洗浄した。14日後、レンズは非常にざらざらし、不快な状態となったために廃棄した。第2に、二人の被検者は新たなACUVUEレンズの装着を開始し、レンズを取り外したり、触ったりすることなく、1日3回、本発明の点眼液を毎日適用した。これらの被検者は、取り替える前に3乃至4週間レンズを装着することが可能であった。加えて、レンズの損失、裂傷、又は汚染の危険性を伴う、レンズを眼から外して洗浄するという不便さが完全に解消できた。従って、本発明の点眼溶液が洗浄効果並びに利便性を提供することは明らかである。
【0116】
d.インビトロ及びインビボ抗菌効果
i.相乗効果
表I及びIIは、(a)400ppmの亜塩素酸ナトリウムのみ、(b)200ppmの過酸化水素のみ、及び(c)400ppmの亜塩素酸ナトリウム及び200ppmの過酸化水素の組み合わせの、スタフィロコッカスヘモリティカス(staphylococcus haemolyticus)(表I)及び緑膿菌(pseudomonas aeruginisa)(表II)(いずれもヒトの感染した眼から単離されたもの)である抗生物質耐性菌に対する抗菌効果を比較した。表I及びIIは、試験溶液導入後、1時間及び2時間の時点において観察された抗菌効果を要約したものである。
【0117】
【表1】

【表2】

表Iに要約された実験において、亜塩素酸ナトリウムのみは、スタフィロコッカスヘモリティカス菌において1時間にて0.11、2時間にて1.01の対数減少を誘起した。過酸化水素のみは、スタフィロコッカスヘモリティカス菌において1時間にて0.20、2時間にて0.23の対数減少を誘起し、亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素の組み合わせは、スタフィロコッカスヘモリティカス菌において1時間にて0.69、2時間にて2.43の対数減少を誘起した。従って、この実験において、亜塩素酸ナトリウム−過酸化水素の組み合わせの抗菌効果は、少なくとも2時間の時点において、亜塩素酸ナトリウムのみと過酸化水素のみとの効果の合計よりかなり大きくなった。従って、亜塩素酸ナトリウム−過酸化水素の組み合わせは、本実験において使用されたスタフィロコッカスヘモリティカスの菌株に対して相乗効果を示すことが結論づけられる。
【0118】
表IIに要約された実験において、亜塩素酸ナトリウムのみは、緑膿菌において1時間にて0.35、2時間にて1.35の対数減少を誘起した。過酸化水素のみは、緑膿菌において1時間にて0.01、2時間にて0.54の対数減少を誘起し、亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素の組み合わせは、緑膿菌において1時間にて0.04、2時間にて6.35の対数減少を誘起した。従って、この実験において、亜塩素酸ナトリウム−過酸化水素の組み合わせの抗菌効果は、少なくとも2時間の時点において、亜塩素酸ナトリウムのみと過酸化水素のみとの効果の合計よりかなり大きくなった。従って、亜塩素酸ナトリウム−過酸化水素の組み合わせは、本実験において使用された緑膿菌の菌株に対して相乗効果を示すことが結論づけられる。
【0119】
ii.動物試験
S.ヘモリティカスによる角膜炎は12匹のウサギの右目に対して、これらのウサギの摩擦された角膜上にS.ヘモリティカスの50,000CFU/mlを含む培養液を滴下することにより誘導した。24時間後、全ての角膜が同様に感染し、ウサギを無作為に3つの群に分けた。I群のウサギ(5匹)は、コンタクトレンズを装着しながら洗浄する上述の亜塩素酸塩/過酸化物処方物(ここでは「殺菌剤」と定義する)で処置し、II群のウサギ(5匹)は市販の0.3%オフロキサシン抗生物質眼科用溶液にて処置し、かつIII群のウサギ(2匹)は処置せず、対照とした。
【0120】
感染後24時間及び48時間において、ウサギの眼の視覚試験、写真撮影及び生体顕微鏡試験を実施した。処置の24時間後、I群及びII群の各々の3匹の動物及びIII群の1匹の動物をと殺した。眼を摘出し、8mm円形の角膜をホモジナイズし、微生物の単離及び定量化のために培養基に配置した。処置の48時間後、同様の手順を残りの動物に対しても実施した。
【0121】
表III、IV及びVはこの実験の結果を要約したものである。これらから明らかのように、本発明の「殺菌剤」は、比較する市販の処方と比較して総合的に優れた結果を示した。従って、結果は「殺菌剤」の臨床効果が抗生物質処置より優れていることを確証する。優れた殺菌特性に加えて、殺菌剤の優越性は、細菌の蛋白質分解酵素の不活性化(従って、細菌の病原性の低減)、並びに炎症及び充血を引き起こす細菌毒素の不活性化に起因するものであろうということが示された。
【0122】
【表3】

【表4】

【表5】

本発明はある実施例及び特殊な実施形態を参照して上述のように記載されてきたことを当業者は理解するであろう。しかしながら、これらは本発明を実施可能とする実施例及び実施形態のみである。実際に、種々の変更例が本発明の意図された精神及び範囲を逸脱することなく、上述の実施例及び実施形態においてなされ、かつそのような変更例の全てが以下に記載の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが7.3であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図2】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが8.0であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図3】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが8.8であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図4】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが7.0であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図5】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが6.44であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図6】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが6.0であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成しないことを示すグラフである。
【図7】本発明の亜塩素酸塩/過酸化物調製物について、pHが1.5であり、かつ室温にて二酸化塩素が生成することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物を治療するための抗菌組成物であって、前記組成物は、約0.001重量%乃至約0.20重量%の亜塩素酸塩化合物と、約0.001重量%乃至約0.05重量%のペルオキシ化合物とを含み、前記組成物は、ほぼ室温にて保存する間は前記亜塩素酸塩化合物を二酸化塩素に分解することなく不活性の状態にて維持し、かつ前記組成物は約6.0乃至約8.8のpH範囲にある抗菌組成物。
【請求項2】
前記亜塩素酸塩化合物は金属亜塩素酸塩である請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
前記亜塩素酸塩化合物の金属はナトリウムである請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
前記亜塩素酸塩化合物の金属は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選択される請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
前記ペルオキシ化合物は過酸化水素である請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の抗菌組成物は、非イオン性ポリマー潤滑剤、アニオン性ポリマー潤滑剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される潤滑剤を更に含む抗菌組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の抗菌組成物は、ブロックポリマーベースの界面活性剤を更に含む抗菌組成物。
【請求項8】
0.05重量%乃至0.2重量%の潤滑剤と、0.15重量%のホウ酸と、0.75重量%の塩化ナトリウムと、0.05重量%乃至0.2重量%の界面活性剤と、pHを調整するためのHCl又はNaOHと、適量の精製水とを含んで全量とする、請求項7に記載の抗菌組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の抗菌組成物は、約0.001重量%乃至約0.50重量%のヒアルロン酸を更に含む抗菌組成物。
【請求項10】
前記組成物は、生物の眼を治療するために提供される液状眼科用組成物である請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
前記液状眼科用組成物はドライアイを治療するために生物の眼に適用される請求項10に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
前記液状眼科用組成物は眼の感染を治療するために生物の眼に直接適用される請求項10に記載の抗菌組成物。
【請求項13】
前記感染は、細菌性角膜炎に起因する請求項10に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
前記組成物はコンタクトレンズを洗浄するために生物の眼に装着されたコンタクトレンズに直接適用するための液状眼科用組成物である請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項15】
前記組成物は、生物の皮膚を治療するためのゲル組成物である請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項16】
前記ゲル組成物は、皮膚疾患を治療するために生物の皮膚に適用される請求項15に記載の抗菌組成物。
【請求項17】
前記皮膚疾患は、創傷、火傷、感染、潰瘍化、ヘルペス、乾癬、座瘡、傷痕及びそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項16に記載の抗菌組成物。
【請求項18】
前記ゲル組成物は皮膚を殺菌するために生物の皮膚に適用される請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
生物を治療するための方法であって、前記方法は、
生物に抗菌組成物を適用する工程からなり、
前記組成物は、約0.001重量%乃至約0.20重量%の亜塩素酸塩化合物と、約0.001重量%乃至約0.05重量%のペルオキシ化合物とを含み、前記組成物は、ほぼ室温にて保存する間は前記亜塩素酸塩化合物を二酸化塩素に分解することなく不活性の状態にて維持し、かつ前記組成物は約6.0乃至約8.8のpH範囲にある方法。
【請求項20】
前記抗菌性組成物の亜塩素酸塩化合物は金属亜塩素酸塩である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗菌性組成物の亜塩素酸塩化合物の金属は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗菌性組成物のペルオキシ化合物は過酸化水素である請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記抗菌性組成物は、非イオン性ポリマー潤滑剤、アニオン性ポリマー潤滑剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される潤滑剤を更に含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記抗菌組成物は、ブロックポリマーベースの界面活性剤を更に含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗菌組成物は、0.05重量%乃至0.2重量%の潤滑剤と、0.15重量%のホウ酸と、0.75重量%の塩化ナトリウムと、0.05重量%乃至0.2重量%の界面活性剤と、pHを調整するためのHCl又はNaOHと、適量の精製水とを含んで全量とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗菌組成物は、約0.001重量%乃至約0.05重量%のヒアルロン酸を更に含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗菌組成物は、生物の眼を治療するために提供される液状眼科用組成物である請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記液状眼科用組成物はドライアイを治療するために生物の眼に適用される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記液状眼科用組成物は眼の感染を治療するために生物の眼に直接適用される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記感染は、細菌性角膜炎に起因する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗菌性組成物はコンタクトレンズを洗浄するために生物の眼に装着されたコンタクトレンズに直接適用するための液状眼科用組成物である請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記抗菌組成物は、生物の皮膚を治療するためのゲル組成物である請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記ゲル組成物は、皮膚疾患を治療するために生物の皮膚に適用される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記皮膚疾患は、創傷、火傷、感染、潰瘍化、ヘルペス、乾癬、座瘡、傷痕及びそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ゲル組成物は皮膚を殺菌するために生物の皮膚に適用される請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−527390(P2007−527390A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518689(P2006−518689)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020626
【国際公開番号】WO2005/007174
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(501141091)
【氏名又は名称原語表記】KARAGEOZIAN,Hampar L.
【Fターム(参考)】