説明

亜鉛系電極の粒子形態

【課題】良好な機械的安定性および優れた性能を有する一次電池を提供する。
【解決手段】流動性媒体に懸濁された亜鉛系粒子を含むアノード(20)を有する。亜鉛系粒子は、少なくとも1重量%の微細粉(大きさが−200メッシュの粒子)またはダスト(大きさが−325メッシュの粒子)を含む。亜鉛系粒子は、比較的小さな平均粒径を有し、インジウムおよび/またはビスマスとの合金である。形状は、球状、針状またはフレークである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学電池、特に、亜鉛系粒子を含んでなる負極を有する電池(例えば、アルカリ電池など)における改善に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池(すなわち、ガルバーニ電池)は下記の基本的な構成要素を有する:負極(これはアノードと呼ばれることがある)、正極(これはカソードと呼ばれることがある)、および外部負荷を介して連結されたときにこれらの2つの電極の間で荷電イオンが移動するための経路を提供するイオン伝導性溶液(これは電解質と呼ばれることがある)。
【0003】
アルカリ電池の中には、活成分として亜鉛を用いたアノード、および活成分として二酸化マンガン(MnO)を用いたカソードを有するものがある。アノードは固体である必要はない。実際、従来のアルカリ電池はゲル状の亜鉛アノード混合物を有する。この混合物は、ゲル化剤、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ電解質、およびインジウムまたはビスマス(水素ガスが電池内で発生する望ましくない傾向を減少させるためのガス化阻害剤)などの少量の他の添加物を含有する濃化液またはゲルに懸濁された個々の亜鉛系粒子を含有する。亜鉛系粒子は、粒子が通過する標準的な網目(メッシュ)の大きさによって一般に示される特定のサイズ範囲によって特徴付けられる。典型的には、平均的なアノード粒子の大きさは、約−50/+200メッシュの範囲内である:これは、50メッシュの篩いを通り抜けるが、200メッシュの篩いを通り抜けない粒子を示す(メッシュの数字が大きいほど、篩いのすき間の大きさは小さくなる)。
【0004】
アノードにおいて使用されている一般的なゲル化剤には、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸(例えば、B.F.Goodrich社(Brecksville、Ohio)のカルボポル(Carbopol)940TM、または3V社(Bergamo、イタリア)のポリゲル(POLYGEL)−4PTM)、ポリアクリル酸ナトリウム(例えば、Allied Colloids社(Yorkshire、英国)のCL−15TM)、および塩が含まれる。ガス化阻害剤の非限定的な例には、インジウム、ビスマス、スズおよび鉛などの無機添加物、ならびにホスフェートエステルなどの有機阻害剤、ならびにアニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が含まれる。様々なアノード混合物の例に関しては、米国特許第5,283,139号、同第5,168,018号、同第4,939,048号、同第4,500,614号、同第3,963,520号、同第4,963,447号、同第4,455,358号、および同第4,195,120号を参照のこと。
【0005】
ゲル状アノードは、典型的には、アノードとカソードとの間の電子伝導を妨げるが、イオンが電極の間を通過することができる不織材料または紙の薄い層などのセパレーターによってカソードから隔てられている。
【0006】
Zn/MnO型アルカリ電池は30年以上にわたって市販されている。その間、その性能特性は、国際的なサイズ標準(例えば、AAAA型(単五型)、AAA型(単四型)、AA型(単三型)、C型(単二型)、D型(単一型)の円筒型のサイズ、および9V角柱型のサイズ)によって強いられる容積制約の中で「できる限り長く持続する」電池(すなわち、アンペア−時間で測定される総容量ができる限り大きい電池)を得ようとすることにおいて電池産業によってますます最適化されている。そのような標準的な電池において、活物質が充填される容積は、多かれ少なかれ限られている。ある大きさの任意の電池から取り出すことができるエネルギー量(これは電池内の活成分総量の関数である)は、内部の電池容積および用いられている活成分の実際の密度によって規定される理論的な上限を有する。
【0007】
電池製造者はまた、「できる限り長く持続する」電池を製造しようとすることに加えて、電池電圧が最小値よりも低く降下することなく、一定の負荷条件下で電池から取り出すことができる電流の最大瞬間率を大きくしようと努めている。このような「最大放電率」の能力を増大させようとすることには、大きな電流が小さな容器から要求される携帯電話などの電子製品の現在行われている開発が含まれる。このような新しい機器の中にはその電池の電圧レベルを自動的に調べるものがあり、従って、大きな電流が取り出されているときに、検知された電圧が過度に低下した場合には、総容量の一部が残存する電池は予定よりも早く廃棄されることがある。
【0008】
大きな電流が電池から取り出されているとき、電池電圧は、亜鉛系粒子表面の「不動態化」のために、あるいは電池の化学反応を持続させるのに十分な水酸化物イオンの局所的な欠乏を示し得るアノード分極のために低下し得る。ある量の多孔度が、電解質に由来するOHイオンの自由な供給のために、そしてZn(OH)、Zn(OH)またはZnOの反応生成物を自由に除去して、電解質に戻すために必要であると考えられている。亜鉛系粒子の充填密度が大きすぎる場合、あるいは反応生成物が集積するためにその表面が利用できない場合、反応は、電流の取り出し速度に追随することができない。亜鉛系粒子がアノードにおいて高密度に充填されている電池は、連続した低電流を供給しながら、非常に安定した電圧レベルで満足できる程度に作動するが、大きな電流が取り出される場合、(「チョーキング(choking)」または「電解質枯渇」と言われることがある)亜鉛集積化により許容できない非常に低い電圧に低下し得る。
【0009】
さらに、電解質が少なすぎると、電解質からの水が放電の間に連続的に消費されているために、電池の全体的な化学反応は非常に起こりにくくなり、すなわち電池の「ドライアウト」をもたらし得る。電池の内部での正味の反応は下記の通りである:
Zn + 2MnO + HO −> ZnO + 2MnOOH
従って、利用できるアノード容積の中にできる限り多くの亜鉛系材料を充填しようとする要求と競合して、「寿命を長くする」ために総容量を大きくすることは、大きな放電率の期間中の「チョーキング」を避けるのに十分な量の電解質を供給することを必要とする。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、アルカリ電気化学電池のアノードの亜鉛系粒子に非常に小さな亜鉛系粒子(すなわち、微細粉またはダスト)を含めることによって、良好な電池性能特性、特に、大きな放電率性能に関連するそのような特性を得ることができるという発見に基づくものである。
【0011】
本明細書中で使用されている「微細粉」は、通常の篩い分け操作(すなわち、篩いを手でゆすること)で標準的な200メッシュの篩いを通り抜けるのに十分に小さい粒子である。「ダスト」は、通常の篩い分け操作で標準的な325メッシュの篩いを通り抜けるのに十分に小さい粒子である。
【0012】
亜鉛系粒子は、例えば、亜鉛または亜鉛合金から得ることができる。亜鉛系粒子を得るために亜鉛との合金にされ得る材料には、インジウムおよび/またはビスマスなどのガス化阻害剤が含まれる。一般に、亜鉛合金から得られる亜鉛系粒子は、主として亜鉛である。亜鉛系粒子は、回転成形または空気によるブロー成形することができる。
【0013】
亜鉛系粒子は、インジウムおよび/またはビスマスなどのメッキ(plating)材料を含むことができる。
【0014】
本明細書中で使用されている「亜鉛系粒子」は、亜鉛系材料の2個以上の粒子の塊というよりも、亜鉛系材料の個々の粒子または一次性(primary)粒子をいう。アノードは、亜鉛系材料の一次性粒子および/または亜鉛系材料の一次性粒子の塊状物を含有し得る。
【0015】
本発明の1つの側面によれば、電気化学電池用の負極は、流動性媒体に懸濁され、少なくとも約1重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである亜鉛系粒子を含有する。重量比でさらにより大きな割合(例えば、6%、10%、25%、50%、80%、90%または100%)の亜鉛系微細粉が好ましいと考えられる。
【0016】
特定の実施形態において、亜鉛系粒子はまた、約20メッシュ〜200メッシュの間の大きさまたはそれよりも大きな大きさの粒子を、少なくとも約25重量%(例えば、少なくとも約50重量%、75重量%、90重量%、または99重量%)で含む。
【0017】
特定の実施形態において、亜鉛系粒子の実質的な割合(例えば、10重量%、45重量%、80重量%、90重量%、または100重量%)は、(上記に定義されているように、大きさが−325メッシュまたはそれよりも小さい)ダストであることが好ましい。しかし、別の実施形態においては、亜鉛系粒子の10重量%未満(例えば、約1重量%〜約10重量%、例えば、約6重量%など)は−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさであり得る。
【0018】
負極は界面活性剤を含むことができる。流動性媒体は、好ましくは、電解質および増粘剤の両方を含む。
【0019】
亜鉛系粒子は、形状が球状または非球状であり得る。非球状粒子は、針状の形状(主軸に沿った長さが最小軸に沿った長さの少なくとも2倍である)であり得るか、あるいはフレーク形態(厚さがその最大長さの約20%以下である)であり得る。
【0020】
別の側面によれば、電気化学電池用の負極混合物は、流動性媒体に懸濁され、電極混合物の約68重量%未満(例えば、約64重量%未満、60重量%未満、55重量%未満、または45重量%未満でさえ)を含む亜鉛系粒子を含有する。亜鉛系粒子は、約0.2オーム・センチメートル未満の電極抵抗率を得るのに十分な割合で約−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさの粒子を含む。好ましくは、亜鉛系粒子の少なくとも1重量%は約−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである(より好ましくは、−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである)。
【0021】
別の側面によれば、本発明は、カソードと、流動性媒体に懸濁され、少なくとも1重量%が約200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである亜鉛系粒子を有するアノードと、およびカソードとアノードとの間のセパレーターとを有する一次電気化学電池を特徴とする。
【0022】
この電気化学電池のアノードは、上記の亜鉛系粒子などの他の特徴を含み得る。
【0023】
さらなる側面によれば、電気化学電池用の負極スラリーは、電解質を含む流動性媒体に懸濁された亜鉛系粒子を含有する。このスラリーは約0.2オーム・センチメートル未満の抵抗率を有し、そして亜鉛系粒子はスラリーの約68重量%未満を含む。このスラリーは、亜鉛系粒子を、約64重量%未満、60重量%未満、または55重量%未満で含有することができ、あるいは45重量%未満でさえも含有することができる。
【0024】
本発明の別の側面によれば、電流を発生させる方法は、電解質を含有する流動性媒体に懸濁され、少なくとも1重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである亜鉛系粒子の表面にイオンを集積させることを含む。
【0025】
1つの側面によれば、本発明は、流動性媒体、およびこの流動性媒体に含有される亜鉛系粒子を含む組成物を特徴とする。この亜鉛系粒子は、約175ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0026】
別の側面によれば、本発明は、アノードと、カソードと、アノードおよびカソードの間に配置されたセパレーターとを含んでなる電池であることを特徴とする。このアノードは、流動性媒体、およびこの流動性媒体に含有される亜鉛系粒子を含む。この亜鉛系粒子は、約175ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0027】
さらなる側面によれば、本発明は、アノードと、カソードと、アノードおよびカソードの間に配置されたセパレーターとを含んでなる電池であることを特徴とする。このアノードは、活物質を、亜鉛系粒子の形態で含む。この亜鉛系粒子はすべて、−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである。
【0028】
本発明に従って組み立てられる電池は、機械的衝撃に関して大きな耐性を示す。本発明による電池はまた、大きな割合で取り出されるときの大きな使用電圧、負荷条件下での低い内部インピーダンス、および脈動する様々な割合の放電負荷条件下での良好な全体的な性能を示す。
【0029】
さらに、亜鉛系微細粉またはダストの割合が高いことにより、実用的な取り出し総容量を維持しながら、そして亜鉛負荷量の減少に通常伴う機械的安定性が典型的に失われることなく、亜鉛の総量を減少させることができる(すなわち、電池は、亜鉛の「負荷量」を少なくすることができる)。これは、部分的には、亜鉛の使用効率が大きいこと、および粒子同士の良好な接触性のためであると考えられる。
【0030】
一定の性能レベルを達成するために必要とされる亜鉛の総負荷量を減少させることによって、アノードのチョーキングの危険性を低下させることができる水およびアルカリ電解質を加えることができる。
【0031】
いくつかの実施形態においては、アノードが比較的低い抵抗率を有することが望ましい。このような実施形態において、アノードは、約0.2オーム・センチメートル以下の抵抗率を有する。
【0032】
他の利点および特徴は、下記の説明および請求項から明らかである。
【0033】
図1を参照すると、円筒型電池10は、所定の位置に圧着されているシール材14によってその開放端で閉じられた外被12を有する。カソード16は、電池の正極外部端子として役立つ外被の内側表面と電気的に接触している外側表面を有する環状構造である。カソード16は、図示されているように、多数のカソードペレット16aを積み重ねることによって形成される。各カソードペレットは、MnO、導電剤、および電解質の混合物から作製される。あるいは、カソードは、個々のペレットを積み重ねることなく、加圧圧縮によって外被内に直接成形することができる。
【0034】
セパレーター18は、環状のカソード16の内側表面を覆い、カソードをアノード20から電気的に隔てている。セパレーター18は、セルロースまたはレーヨンなどの多数の周知なセパレーター材料のいずれかであり得る。
【0035】
アノード20はゲル状の形態であり、所望量の亜鉛系粒子が、特定の形態で、アルカリ電解質とゲル化剤との混合物に懸濁されている。ガス化阻害剤、例えば、上記に記載されているガス化阻害剤などが、好ましくは、アノードゲルに加えられ、あるいは亜鉛系粒子のコーティング剤として加えられている。一般に、亜鉛系粒子およびアルカリ電解質は、合わせて、アノードの約96重量%を構成し、より好ましくは約98重量%を構成する。
【0036】
アノードコレクター22はシール材14を突き抜けて、アノード20の中にまで伸びている。アノードコレクター20の上端は、電池の負極外部端子として役立つ負極端キャップ24と電気的に接触している。組み立て時において、さらなる液状のアルカリ電解質を電池に加えて、アノード、カソードおよびセパレーターの全体に行き渡るようにされる。
【0037】
アノード20内の亜鉛系粒子は、1重量%もの少ない量から10重量%までの微細粉を含むことができる。あるいは、アノード20内の亜鉛系粒子は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%を含むことができる。いくつかの実施形態においては、アノード20内の亜鉛系粒子の100重量%が微細粉であり得る。高い性能はまた、下記においてより詳しく記載されているように、ダストの形態の亜鉛系粒子が大きな割合でアノード内に存在するときに認められている。
【0038】
亜鉛系粒子の平均サイズは比較的小さくすることができる。好ましくは、亜鉛系粒子は、平均サイズが約175ミクロン未満であり、より好ましくは約150ミクロン未満であり、最も好ましくは約120ミクロン未満である。亜鉛系粒子の平均粒径の測定法は下記に記載されている。
【0039】
粒径の所望する分布は、いくつかのプロセスにより得ることができる。例えば、標準的な網目の篩いを用いて、遠心微粒子化、ガス微粒子化、または任意の他の知られている方法によって製造された亜鉛系粒子を分けることができる。ふるい分けまたは空気分級によって分けられると、例えば、様々なサイズ範囲の粒子は、所望するサイズ分布を得るために適切な割合で混合することができる。あるいは、粒子の平均サイズは、製造時に、大きな割合の微細粉およびダストを有する統計学的分布を得るために、平均値に近い粒径の分布とともに制御することができる。粒子が一旦形成されると、粒子は、界面活性剤、ガス化阻害剤、ゲル化剤、電解質、および他の添加物と標準的なプロセスによって混合することができる。
【0040】
図2は、アノード20において試験された亜鉛系粒子の分布をいくつか例示する。分布は、下記に記載されている粒子直径測定技術を用いて測定された有効粒子直径の関数として示されている。網目サイズと有効粒子直径との間に大雑把な対応が存在するように、例えば、直径が74ミクロンの球状粒子は200メッシュの篩いをちょうど通り抜け、そして直径が44ミクロンの粒子は325ミクロンの篩いをちょうど通り抜けることに注意しなければならない。このような対応は、他の形状の粒子に関してはあまり正確ではない。分布32は、325メッシュの篩いを通り抜けた遠心微粒子化による亜鉛系粒子(すなわち、ダスト)の分布であり、有効粒子直径が約57ミクロンのところに最大値を有する。分布34は、ガス微粒子化による粒子の分布である。分布36および分布38は、それぞれ、大きさが−20/+200メッシュおよび−200メッシュである遠心微粒子化による粒子の分布である。分布40は、分布34の亜鉛系ダストの50重量%と、分布36の粒子の50重量%との組合せである。
【0041】
非常に小さな亜鉛系粒子を大きな割合で含む効果の1つは、アノード内の亜鉛系粒子の全体的な表面積(すなわち、総表面積)の増大である。これは、粒子表面積と体積との固有的な関係によるものである。すなわち、形状が類似する粒子の場合、粒径が減少することにより、粒子の表面積対体積の比は増大する。一定重量の粒子の全体的な表面積が大きいことが、亜鉛系粒子が微細粉形状である電池によって示される高性能を部分的に説明し得るものとして得られる。
【0042】
粒子の表面積は、亜鉛系粒子の製造またはその後の加工処理を制御して、フレークまたは針状粒子などの伸びた非球状の形状の粒子を製造することによってさらに大きくすることができる。主軸に沿った長さLが最小軸に沿った長さLの少なくとも2倍である針状形状(例えば、図3の粒子42を参照のこと)が適すると考えられる。図4の粒子44などのフレークは、(ウエーハーまたはポテトチップなどの)薄い横断面および2つの広い対向する面を有する。好ましくは、そのようなフレーク形態の粒子は、その広い面との間の厚さが粒子の最大長さの約20%以下であり、そして体積対表面積の比が非常に小さい。
【0043】
亜鉛系ダストまたは微細粉を大きな割合で有するアノードを伴う電池の良好な性能特性をもたらす機構に関する1つの妥当と考えられる理論は、粒子同士の接触性に関する。この理論は、観測された結果を説明し得るものとして示されるだけであり、従って本発明の範囲を限定することを目的としない。実際、さらなる微細粉により、特に、電気的負荷のもとで、亜鉛負荷量が低い場合、機械的な網目構造が形成されると考えられる。この理論は、図5に示されているように、様々な亜鉛負荷量で得られたスラリーの抵抗率測定によって支持される。図5において、実線は、亜鉛系粒子が−20/+200メッシュの大きさであるアノード混合物を示し、破線は、亜鉛系粒子が−200メッシュの大きさであるアノード混合物を示す。大きな粒子、微細粉およびダストの間での改善された接触性により、50%以下にまで下げた負荷量で、より大きな導電率が得られている。結果として、より多くの電解質を混合物に加えて、低いアノード抵抗率を維持しながら亜鉛の利用を増大させることができる(すなわち、亜鉛の容量使用効率を増大させることができる)。接触性のこのような改善はまた、上記の理論が正しい場合には、微細粉およびダストの割合が大きいアノードの機械的な衝撃に関する良好な耐性(例えば、下記に記載されているように、打撃(tap)負荷電圧安定性および降下電圧安定性)と同様に、大きなスラリー粘度を説明するのに役立つ。
【0044】
連続負荷試験
この試験は、いくつかのおもちゃなどの場合において中程度の電流が取り出される適用での一定した放電をシミュレーションする。一定の負荷(例えば、AAAA型電池には30オーム、そしてAA型電池には3.9オーム)を電池の端子間に置いて、負荷を介して電池を連続的に放電させる。負荷をかけたときから、電池電圧が限界電圧に降下するときまでの時間を記録する。
【0045】
連続負荷試験
この試験では、電池電圧の変化に対応して負荷を自動的に調節しながら、電力を、(例えば、AAAA型電池には0.25ワット、あるいはAA型電池には1ワットの)一定した割合で電池から放電させる。この試験は、特に、電池電圧が限界値に近づいたときの試験終了時頃においては、連続的な負荷(すなわち、抵抗)試験よりも過酷な試験であると一般に見なされている。負荷をかけたときから、電池電圧が限界電圧に降下するときまでの時間を記録する。
【0046】
脈動インピーダンス試験
この試験により、一定の負荷が電池に急激に加えられたときに生じる電圧の最大降下が測定され、そして有機腐食阻害剤を使用してガス化を減少させることによって悪化し得る電圧と電流との間のずれが表される。継続時間は短いが、電圧の瞬間的な降下は、電池電圧、および低い電圧が測定された場合には電池を交換しなければならないというシグナルをその都度モニターしている装置の場合のように、重大な結果をもたらし得る。3.9オームの負荷を、高速リレーを介して電池に加えて、電池電圧をオシロスコープでモニターする。負荷を400ミリ秒間維持する。負荷を加えたときに生じる試験中の最小電圧を測定する。
【0047】
高電流パルス試験
AA型電池
この試験は、カメラ適用における電池性能をシミュレーションするために考案された。各パルスが10秒間続き、そして各パルスの間隔が50秒である一連のパルスで、1.1Aの制御された電流がAA型電池から断続的に取り出される。AA型電池の電圧が所定の限界レベルに降下するまで、このパルス列を毎日1時間続けて、所定の限界レベルに達したときでのパルス総数を記録する。この試験はまた、高温での保管は高放電率性能にどの程度影響するかを明らかにするために、55℃で2週間保管されたAA型電池に対して行われる。
【0048】
AAAA型電池
この試験は、写真用フラッシュの性能をシミュレーションするために考案された。5.1オームの抵抗を、一連のパルスでAAAA型電池に断続的に負荷した。AAAA型電池の電圧が所定の限界レベルに降下するまで、抵抗を使用期限までの毎日において8時間について1時間あたり4分間負荷して、所定の限界レベルに達したときでの総使用時間数を記録する。
【0049】
アノードAC体積(bulk)抵抗率
この試験は、アノードが電気導体としてどのくらい良好に機能するかを測定する。小さな交流(約1000Hzの周波数)を、(電気化学電池において使用される亜鉛系粒子、ゲル化剤、電解質、および添加物の適正な割合で)調製された一定体積のアノード混合物に加えて、混合物の体積抵抗率を測定する。
【0050】
打撃負荷による電圧の不安定性
この試験は、物理的な衝撃が加えられているときのアノードの機械的安定性を測定する。電池電圧が、(堅い表面に打ちつけたときなどの)衝撃を受けているときの負荷条件下で降下することは一般的である。この試験は、そのような望ましくない電圧降下の大きさを測定する。3.9オームの一定した負荷を電池に加え、そして電池電圧をモニターしながら、60秒毎に1回、電池を、自動ハンマーを用いて(大きな減衰により約20〜50km/秒/秒の有効最大加速度が誘導される約50ポンド〜60ポンドの力で)1回たたく。一般に、電池が約25%放電したときに、電圧降下の大きさは最大値に達し、電池の放電が続くに従って減少する。最大電圧降下の大きさは、電池性能の指標として使用される。
【0051】
粒子直径の測定
図2の結果は、乾燥した亜鉛系粒子を塊で分析することによって得られた。分析され得るサンプル粉末を代表する量を、Sympatec社から得られるRODOS−VIBRITMのサンプル分散ユニットの炉に入れた:これは粉末を空気流中に分散させてエアロゾルを形成させた。次いで、粉末形態の亜鉛系粒子のエアロゾルは、回転する粒子のエアロゾルによって拡散された光の強度および分布を測定するHELOSTM粒径分析器(これもまたはSympatec社から入手できる)を通過する。異なる焦点距離の様々な光学レンズを、異なるサイズ範囲の粒子について、製造者の指示に従って使用する。
【0052】
亜鉛系粒子の所与サンプルについて、平均粒径は、下記の式を使用して計算される:
【数1】

ただし、dは亜鉛系粒子の直径を表す。
【実施例】
【0053】
実施例1
AA型の円筒型アルカリ電池を、下記の2つの組成物を有するゲル状アノードを用いて組み立てて、微細粉形態の亜鉛系粒子の効果を調べた(列記されている組成値は重量%である)。
【表1】

【0054】
上記の組成物を、酢酸インジウム粉末を乾燥亜鉛合金粒子と最初に混合することによって調製した。次に、酢酸およびホスフェートエステルを加え、その後、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸ナトリウムを加えた。混合し、そして塊を粉砕した後に、電解質溶液を加えて、混合物を均一になるまで混合した。1Aおよび1Bにおける亜鉛合金粒子は、150ppmのInおよび200ppmのBiを含んだ。
【0055】
下記の試験のそれぞれにおいて、4つの個々の電池を試験した。
【0056】
【表2】

【0057】
脈動インピーダンス試験において、形成物1Aの最大電圧降下50(図6A)は、形成物1Bの電圧降下52(図6B)よりも一層顕著であることに注意すること。
【0058】
実施例2
AA型の円筒型アルカリ電池を、下記の3つの組成物を有するゲル状アノードを用いて組み立てた(列記されている組成値は重量%である)。
【表3】

【0059】
合金は、150ppmのIn、200ppmのBiを含み;粒子を−20/+200メッシュの大きさに篩い分けした(平均粒径:354ミクロン;分布36、図2)。
【0060】
合金は、150ppmのIn、200ppmのBiを含み;粒子を−325メッシュの大きさに篩い分けした(平均粒径:57ミクロン;分布32、図2)。
【0061】
形成物2Aの粒子と、500ppmのInおよび500ppmのBiによる合金をガス微粒子化した亜鉛粒子との等重量混合物。ガス微粒子化による粒子は、平均粒径が約41ミクロンであった(分布34、図2)。粒子混合物は分布40に対応する。混合物の平均粒径は184ミクロンであった。
【0062】
下記の試験のそれぞれにおいて、各組成物の少なくとも4つの個々の電池を試験した。個々の電池の結果を平均する。
【0063】
【表4】

【0064】
実施例3
AA型の円筒型アルカリ電池を、下記の2つの組成物を有するゲル状アノードを用いて組み立てて、微細粉形態の亜鉛系粒子の効果を調べた(列記されている組成値は重量%である)。
【表5】

【0065】
上記の組成物を、酢酸インジウム粉末を乾燥亜鉛合金粒子と最初に混合することによって調製した。電解質溶液をポリアクリル酸と混合して、ゲルを得た。混合し、そして塊を粉砕した後に、ゲルを酢酸インジウム/亜鉛合金の組合せ物に加え、得られた混合物を均一になるまで混合した。
【0066】
3Aの亜鉛合金は、150ppmのInおよび200ppmのBiを含んだ。
【0067】
3Bは、大きさが−200メッシュ以下のガス微粒子化による亜鉛合金粒子(500ppmのInおよび500ppmのBi)の6重量%と、大きさが150メッシュ〜200メッシュの間であるガス微粒子化による亜鉛合金粒子(300ppmのInおよび530ppmのBi)の94重量%との混合物であった。
【0068】
下記の試験のそれぞれにおいて、4つの個々の電池を試験した。
【0069】
【表6】

【0070】
実施例4
AAAA型の円筒型アルカリ電池を、下記の2つの組成物を有するゲル状アノードを用いて組み立てて、微細粉形態の亜鉛系粒子の効果を調べた(列記されている組成値は重量%である)。
【表7】

【0071】
上記の組成物を、酢酸インジウム粉末を乾燥亜鉛合金粒子と最初に混合することによって調製した。次に、ホスフェートエステルを加え、その後、ポリアクリル酸を加えた。混合し、そして塊を粉砕した後に、電解質溶液を加え、そして混合物を均一になるまで混合した。4Aおよび4Bにおける亜鉛合金粒子は、150ppmのInおよび200ppmのBiを含んだ。
【0072】
下記の試験のそれぞれにおいて、4つの個々の電池を試験した。
【0073】
【表8】

【0074】
微細粉およびダストなどの大きさが非常に小さい粒子は、酸素が多い環境において、より大きな粒子よりも不安定である傾向を有し、従って、十分に注意して処理しなければならない。そのような問題は、粉末および微細粉の物理的な取り扱いとともに、アノード製造に関する実用的な絶対的最小粒径を決定するときに検討することが必要になることがある。
【0075】
他の実施形態もまた、添付した請求項の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、アルカリ電池の横断面図である。
【図2】図2は、亜鉛系粒子のサイズ分布を例示する。
【図3】図3は、針状粒子を示す。
【図4】図4は、フレーク状粒子を示す。
【図5】図5は、亜鉛系粒子の異なるサイズ分布を使用した場合における、アノード固体負荷量がアノード抵抗率に及ぼす影響を示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、実施例1の電池の脈動インピーダンス試験を行っていることきに得られた電池電圧の経時変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性媒体に懸濁された亜鉛合金粒子を含んでなり、前記粒子の少なくとも10重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、電気化学電池用負極。
【請求項2】
前記粒子の少なくとも25重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記粒子の少なくとも50重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項2に記載の負極。
【請求項4】
前記粒子の少なくとも80重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項3に記載の負極。
【請求項5】
前記粒子の少なくとも10重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項1に記載の負極。
【請求項6】
前記粒子の少なくとも45重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項5に記載の負極。
【請求項7】
前記粒子の少なくとも80重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項6に記載の負極。
【請求項8】
界面活性剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の負極。
【請求項9】
前記流動性媒体が電解質および増粘剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の負極。
【請求項10】
前記粒子が、インジウムおよびビスマスからなる群から得られるメッキ(plating)材料を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の負極。
【請求項11】
前記粒子の少なくとも25重量%が20メッシュ〜200メッシュの間の大きさである、請求項1に記載の負極。
【請求項12】
前記粒子の少なくとも50重量%が20メッシュ〜200メッシュの間の大きさである、請求項11に記載の負極。
【請求項13】
前記粒子が一般には針状であり、主軸に沿った長さが最小軸に沿った長さの少なくとも2倍である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の負極。
【請求項14】
前記粒子は一般にはフレークであり、各フレークの厚さが一般には粒子の最大長さの20%以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の負極。
【請求項15】
カソードと、
流動性媒体に懸濁された亜鉛合金粒子を含んでなり、前記粒子の少なくとも10重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさであるアノードと、
前記カソードと前記アノードとの間のセパレーターと
を有する一次電気化学電池。
【請求項16】
前記粒子の少なくとも25重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項15に記載の一次電気化学電池。
【請求項17】
前記粒子の少なくとも50重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項16に記載の一次電気化学電池。
【請求項18】
前記粒子の少なくとも80重量%が−200メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項17に記載の一次電気化学電池。
【請求項19】
前記粒子の少なくとも10重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項15に記載の一次電気化学電池。
【請求項20】
前記粒子の少なくとも45重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項19に記載の一次電気化学電池。
【請求項21】
前記粒子の少なくとも80重量%が−325メッシュまたはそれよりも小さい大きさである、請求項20に記載の一次電気化学電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−302904(P2006−302904A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131731(P2006−131731)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【分割の表示】特願2000−505661(P2000−505661)の分割
【原出願日】平成10年7月28日(1998.7.28)
【出願人】(591125201)デュラセル インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】DURACELL INCORPORATED
【Fターム(参考)】