交通信号設備
【課題】アンテナの数が増えても、外観上煩雑となるのを抑えることができる新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】交通信号灯器1は、LED7を有し前方に投光する光学ユニット2、光学ユニット2を組み込んでいる筐体3、及び、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する庇30を有している。交通信号灯器1は道路上の所定位置に取り付け体Rによって取り付けられている。前記庇30に第一アンテナ104が組み込まれ、前記光学ユニット2に、第二アンテナ4が格納されている。
【解決手段】交通信号灯器1は、LED7を有し前方に投光する光学ユニット2、光学ユニット2を組み込んでいる筐体3、及び、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する庇30を有している。交通信号灯器1は道路上の所定位置に取り付け体Rによって取り付けられている。前記庇30に第一アンテナ104が組み込まれ、前記光学ユニット2に、第二アンテナ4が格納されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等に設置される交通信号設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に路側通信装置(インフラ装置)が設置されていて、この路側通信装置から発せられた無線情報を、道路を走行する車両に搭載した車載通信装置が受信し、車載通信装置が無線情報に含まれている各種情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
このような路側通信装置と車載通信装置との間の通信(路車間通信)を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に路側通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱に路側通信装置のアンテナを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のとおり、路側通信装置のアンテナを道路の所定位置に設けるために、道路に設置した支柱にアンテナを取り付けることができる。しかし、前記所定位置に設ける必要のあるアンテナの数が、二つとなる場合、アンテナそれぞれのための専用の支柱を二本設けることは経済的でないため、二つのアンテナを同じ支柱に設置する構成が考えられる。しかし、この場合、外観上煩雑となり、道路の美観の点で好ましくない。
そこで、アンテナの数が増えても、外観上煩雑となるのを抑えることができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の交通信号設備は、発光体を有し前方に投光する光学ユニット、前記光学ユニットを組み込んでいる筐体、及び、前記光学ユニットに対する太陽光の入射を制限する庇を有している交通信号灯器と、前記交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体とを備え、前記筐体、前記庇及び前記取り付け体の内の少なくとも一つに、第一アンテナが組み込まれ、前記光学ユニットに、第二アンテナが格納されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第一アンテナは、交通信号灯器の筐体、交通信号灯器の庇、及び、交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体の内の少なくとも一つに組み込まれていて、第二アンテナが、交通信号灯器の光学ユニットに格納されている。このように、二つのアンテナを備えていても、一つのアンテナ(第二アンテナ)を交通信号灯器の光学ユニットに格納することで、当該一つのアンテナを目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
【0008】
(2)また、前記第一アンテナと前記第二アンテナとは、共振周波数が相互で異なるように構成されているのが好ましい。この構成によれば、二つのアンテナにより、異なる複数の周波数帯をカバーすることができる。
【0009】
(3)また、前記第一アンテナは、第一の共振周波数に設定され、前記第二アンテナは前記第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数に設定されているのが好ましい。
共振周波数が異なると、アンテナは(特にアンテナの種類が同一であると)大きさがそれぞれで異なるように構成され、共振周波数が高いアンテナが小さく構成され、共振周波数が低いアンテナが大きく構成される。そこで、共振周波数が低い方のアンテナを、第二アンテナとすることで、当該第二アンテナは第一アンテナよりも大きくなるが、この大きい第二アンテナは光学ユニットに格納されるので、目立たなくなる。
【0010】
(4)また、前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の一方を、前記道路上に存在している移動通信装置と通信するためのアンテナとし、前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の他方を、前記道路に設置されている別の路側通信装置と通信するためのアンテナとすることにより、移動通信装置及び別の路側通信装置との通信が可能となる。
【0011】
(5)また、第二アンテナが光学ユニットに格納されている前記交通信号設備において、前記光学ユニットは、前記発光体を前方から覆うカバー部材を有し、前記第二アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ可視光透過性を有しているアンテナ素子を有している構成とすることができる。
この構成によれば、カバー部材から発光体の前端までの範囲に、第二アンテナのアンテナ素子を設けることができる。アンテナ素子が発光体の前端よりも前方にあっても、当該アンテナ素子は可視光透過性を有しているため、アンテナ素子が、発光体による前方への投光の妨げになることを防止することができる。
【0012】
(6)この場合において、前記第二アンテナは、前記アンテナ素子としてのパッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、前記グランド素子は、前記基板よりも前方に設けられているのが好ましい。
この場合、発光体が前面に実装された基板よりも前方に、パッチ素子及びグランド素子が設けられた構成となるため、基板が第二アンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0013】
(7)又は、第二アンテナが光学ユニットに格納されている前記交通信号設備において、前記第二アンテナは、前記発光体の前端よりも後方に設けられている構成とすることができる。
この構成によれば、第二アンテナが、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0014】
(8)この場合において、前記第二アンテナは、パッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、前記パッチ素子及び前記グランド素子は、前記発光体の前端よりも後方でかつ前記基板よりも前方に設けられているのが好ましい。
この場合、パッチ素子及びグランド素子は、発光体の前端よりも後方に設けられているため、パッチ素子及びグランド素子が、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。そして、パッチ素子及びグランド素子は、基板よりも前方に設けられているので、基板が第二アンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二つのアンテナを備えていても、一つのアンテナを交通信号灯器の光学ユニットに格納することで、当該一つのアンテナを目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の交通信号設備の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】信号灯器の正面図である。
【図3】信号灯器が有している一つの光学ユニットの斜視図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】光学ユニットの内部の拡大断面図である。
【図6】第二の実施形態の信号灯器の光学ユニットの斜視図である。
【図7】光学ユニットの断面図である。
【図8】第三の実施形態の信号灯器の光学ユニットの斜視図である。
【図9】光学ユニットの断面図である。
【図10】信号灯器の光学ユニットの断面図ある。
【図11】庇に第一アンテナが取り付けられた信号灯器の側面図である。
【図12】第一アンテナが取り付けられた庇を正面の斜め上方から見た斜視図である。
【図13】給電部を説明する説明図である。
【図14】庇及びダイポールアンテナを正面から見た図である。
【図15】筐体に第一アンテナが取り付けられた信号灯器の側面図である。
【図16】庇の上方に設けられたダイポールアンテナを正面の斜め上方から見た斜視図である。
【図17】庇に第一アンテナが格納された信号灯器の側面図である。
【図18】信号灯器の正面図である。
【図19】本発明の交通信号設備の他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の交通信号設備の実施の一形態を示す正面図である。本発明の交通信号設備は、交通信号灯器1(以下、単に信号灯器1ともいう)と、この交通信号灯器1を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体Rとを備えている。
信号灯器1は、交通に関する情報として停止又は進行可能について示す灯色を前方へ投光する。なお、図1の信号灯器1は主として車両用であり、赤青黄いずれか一つの灯色を投光し、道路を走行する車両の運転者に対して、停止又は進行可能についての情報を報知する。
【0018】
信号灯器1は、前記取り付け体Rによって例えば交差点近傍等の道路上の所定位置に取り付けられる。図1の実施形態では、前記取り付け体Rは、歩道等の路側に立設された支柱40及びこの支柱40から車道側に延びているアーム41である。すなわち、支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
なお、信号灯器1の設置構造は図示したもの以外であってもよい。例えば、図示しないが、前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1は歩道橋に設置されていてもよく、この場合、前記取り付け体Rは、信号灯器1を歩道橋に設置するための取り付け金具となる。
【0019】
図2は、信号灯器1の正面図である。信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。さらに、信号灯器1は、各光学ユニット2の上側に取り付けられた庇30を有している。
【0020】
図1において、前記支柱40には、制御装置5aが取り付けられていて、この制御装置5aは、信号灯器1の点灯を制御する。なお、制御装置5aは、信号灯器1の筐体3内に設けられていてもよい。
この制御装置5aの他に、後述する第一アンテナ104及び第二アンテナ4を用いた無線通信の制御を行なう制御装置5bも設けられている。両制御装置5a,5bは別のものであってもよいが、一方の制御装置が他方の制御装置を兼ねていてもよい。また、両制御装置5a,5bが別々である場合であっても、両制御装置を同一の筐体に内蔵させることができる。又は、筐体をそれぞれ別々とし、無線通信用の制御装置5bを点灯用の制御装置5aの近傍(同一の支柱40)に設置してもよい。
【0021】
庇30は、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する機能を有している。庇30は、正面視円形である光学ユニット2のほぼ上半分の範囲を上及び左右から覆うように、正面視円弧状に形成されていて、筐体3から前方に延伸している。つまり、庇30は、ほぼ下半分が開口している円筒形状である。庇30は、筐体3の前部にネジ等の留め具33(図11参照)によって着脱可能として取り付けられている。
【0022】
図3は信号灯器1が有している一つの光学ユニット2の斜視図であり、図4は光学ユニット2の断面図であり、図5は、光学ユニット2の内部の拡大断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下、LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装されたLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。なお、この実施形態の信号灯器1は、反射防止部材10を備えている。
【0023】
LED基板8は、その裏面に配線パターンが形成されていて、LED7のリード線(端子)7cと繋がっている(図5参照)。LED基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED基板8は、前記制御装置5aから延びている給電線(図示せず)と繋がっている。LED7はレンズ部(モールド部)7eを有し、このレンズ部7e内にLED素子7bが設けられている。
【0024】
図4において、収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。収容部材6は、鋼板、アルミ又は樹脂製である。その開口側である前部に、カバー部材9が取り付けられている。収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されていて、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。LED基板8を、前記反射防止部材10を介して収容部材6に取り付けることができる。
【0025】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。この光学ユニット2(信号灯器1)において、前方とはLED7の光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bが凸曲面である。カバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。カバー部材9は、ガラス又は樹脂製である。
【0026】
本発明の信号灯器1は、屋外に設置されていることから、LED基板8やLED7に照りつけた西日や朝日が地上へ反射し、その反射光によって、灯器が見づらくなったり、点灯していない灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりする。
そこで、前記反射防止部材10は、光学ユニット2の外部から入射する光(太陽光)がLED基板8及びLED7の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有している。これにより、信号灯器1が見づらくなったり擬似点灯が生じたりするのを防止することができる。反射防止部材10は収容部材6に取り付けられている。
【0027】
反射防止部材10は、絶縁部材である合成樹脂材により形成され、LED基板8よりも前方に配置されている。反射防止部材10は、円形の板状(面状)に形成された板状部10aを備え、この板状部10aは、LED7の前端39よりも後方に配置されている。板状部10aには、LED7の配置に対応して、LED7を挿通させるための複数の挿通孔10bが形成されている。
なお、反射防止部材10を省略してもよく、この場合、LED基板8は、収容部材6に取り付けられる。
【0028】
そして、以上のように構成された信号灯器1の筐体3、信号灯器1の庇30、及び、支柱40及びアーム41からなる取り付け体Rの内の少なくとも一つに、第一アンテナ104が組み込まれている。そして、この信号灯器1の光学ユニット2に、第二アンテナ4が格納されている。図2の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有していて、それぞれの光学ユニット2に第二アンテナ4が格納されていて、この信号灯器1の左部、中央部及び右部それぞれに、第一アンテナ104が組み込まれている。
【0029】
前記第一アンテナ104、前記第二アンテナ4、及び、前記制御装置5b(図1参照)を路側通信装置とすることで、当該路側通信装置と、当該路側通信装置が設置されている道路を走行する車両に搭載した車載通信装置及び別の路側通信装置等との間で無線通信(路車間通信及び路路間通信)が行われ、交通安全の促進や交通事故の防止を目的とする高度道路交通システム(ITS)を実現することができる。このシステムで使用される無線周波数は、例えば、720MHz帯、2.4GHz帯がある。
【0030】
第一アンテナ104と第二アンテナ4とは、共振周波数が相互で異なるように構成されている。例えば、前記高度道路交通システムを実現するために、第一アンテナ104は、共振周波数が2.4GHz帯(第一の共振周波数)となるように設定されていて、第二アンテナ4は、共振周波数が第一の共振周波数よりも低い720MHz帯(第二の共振周波数)となるように設定されている。
【0031】
そして、第一アンテナ104は、信号灯器1が設けられている道路に設置された別の路側通信装置と通信(路路間通信)するためのアンテナであり、第二アンテナ4は、例えば、当該信号灯器1が設けられている道路を走行している車両に搭載された車載通信装置(移動通信装置)と通信するためのアンテナである。この構成によれば、二つのアンテナ4,104を有している図1の交通信号設備は、異なる複数の周波数帯(2.4GHz帯、720MHz帯)をカバーすることができ、さらに、通信エリア内の移動通信装置及び別の路側通信装置との無線通信が可能となる。
なお、本発明において、周波数の値はこの実施形態に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0032】
〔第二アンテナ4について(第一実施形態)〕
先ず、第二アンテナ4について説明する。
図3と図4とにおいて、信号灯器1の光学ユニット2に格納されている第二アンテナ4は、パッチアンテナ4aであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、パッチ素子11とグランド素子12とが、光学ユニット2内に格納されている。
【0033】
パッチ素子11は、矩形又は円形(図例では円形)の平面状(平板状)に形成されている。パッチ素子11は、LED基板8から前方へ離れて設けられているが、LED7の前端39(レンズ部7eの前端39:図5参照)よりも後方に位置している。グランド素子12は、円形又は矩形(図例では円形)の平面状(平板状)に形成されている。グランド素子12は、LED基板8の前方でかつパッチ素子11よりも後方に設けられている。すなわち、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED7の前端39よりも後方で、かつ、LED基板8よりも前方に設けられている。パッチ素子11及びグランド素子12は、例えば、図4に示しているように、反射防止部材10によって支持される。
【0034】
そして、収容部材6(底部6a)には、パッチアンテナ4a用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられていて、この端子部19に、図1の制御装置5bから延びる同軸ケーブル15が接続されている。そして、この端子部19から前方へ延びる同軸ケーブル15aが、パッチアンテナ4aと接続される。この同軸ケーブル15aは、中心導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有していて、中心導体15bがパッチ素子11に接続され、外導体15dがグランド素子12に接続される。これにより、制御装置5bからパッチアンテナ4aへ給電が行われる。
また、図1の制御装置5aから延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED基板8と接続されている。これにより、制御装置5aから複数のLED7へ給電が行われる。
【0035】
パッチ素子11及びグランド素子12は金属板から形成することができる。パッチ素子11及びグランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、樹脂製等の不導体の板部材からなるアンテナ用基板に、金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい。
【0036】
さらに、パッチ素子11とLED7とは前後方向の位置について重複していることから、図5に示しているように、パッチ素子11には、LED7を挿通させる開口部として複数の孔11bが形成されている。
またグランド素子12とLED7とも前後方向の位置について重複していることから、グランド素子12には、LED7を挿通させる開口部として複数の孔12bが形成されている。これら孔11b,12bの配置は、LED7の配置と一致している。
【0037】
したがって、パッチ素子11及びグランド素子12は網目構造となる。このため、LED7をパッチ素子11の孔11bに挿し入れることで、パッチ素子11がLED7に干渉することなく、パッチ素子11を所定の位置に設置することができ、また、LED7をグランド素子12の孔12bに挿し入れることで、グランド素子12がLED7に干渉することなく、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。
【0038】
また、パッチ素子11、グランド素子12を、導線(金属ワイヤ)によって(導線を編んで)形成したメッシュ構造としてもよい。この場合、導線間を前記孔11b,12bとし、この孔11b,12bにLED7を位置させるように構成することができる。
【0039】
以上より、パッチアンテナ4aのパッチ素子11とグランド素子12とが、収容空間部Sであって、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲に設けられている。そして、パッチ素子11とグランド素子12とが、前後方向に対向した配置となり、このパッチアンテナ4aの指向性は、信号灯器1から前方へ向かう方向となる。
【0040】
そして、パッチアンテナ4aは前方への指向性を有していることから、この指向性と、光学ユニット2の投光方向とを一致させることができる。これにより、信号灯器1は、当該信号灯器1が設置されている道路を走行する車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ4の指向性によって、前記車両に搭載した車載通信装置(図示せず)との間で、良好な通信状態が得られる。
【0041】
なお、パッチアンテナ4aにおいて、所望の性能を得るためには、パッチ素子11とグランド素子12との前後方向の間隔E1(図5参照)を所定の値とする必要がある。このために、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの間に、大きな前後方向の範囲(距離)が必要となる場合がある。このために、図示しないが、通常よりも、LED7の発光部(レンズ部7e)を長くしたり、リード線7cを長くしたり、リード線7cにコネクタ(図示せず)を付け足したりすればよい。
【0042】
また、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED基板8と平行になるように配置されている。信号灯器1はドライバへの視認性に鑑みて、通常、LED基板8自体を少し下方に傾けて設置してある。このため、パッチ素子11及びグランド素子12をLED基板8に平行に取り付けることによって、アンテナの指向性も自然に下方に向く。
なお、無線通信の領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、パッチアンテナ4aを、LED基板8に対して上下方向又は左右方向に傾けるようにしてもよい。
【0043】
また、パッチアンテナ4aが光学ユニット2に格納されていても、パッチ素子11及びその後方にあるグランド素子12は、LED7の前端39よりも後方に設けられているため、パッチ素子11及びグランド素子12が、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。また、パッチ素子11及びグランド素子12はLED基板8の前方に設けられていることから、LED基板8がパッチアンテナ4aによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0044】
なお、パッチ素子11及びグランド素子12が、前方への発光(灯光)の妨げになることを防止するために、パッチ素子をLED7の前端39よりも後方に設けているが、この「前端39よりも後方」には、パッチ素子11の前面とLED7の前端39との前後方向の位置が、略一致している場合を含む。なお、この略一致とは、LED7の前端39の前後方向の位置が、パッチ素子11の厚さ方向の範囲内に存在している場合である。
【0045】
また、図4では、パッチ素子11は反射防止部材10の前方に設けられている。このために、パッチ素子11を反射防止部材10の前面に貼り付けたり、止めネジによって取り付けたりすることができる。この場合、パッチ素子11を反射防止部材10と同一色(黒色)に塗装するのが好ましい。これにより、パッチ素子11が目立たなくなる。さらに、反射防止部材10の前面には、太陽光を乱反射させるため(太陽光を鏡のように一定の方向へ反射させないため)、梨地処理等の微細な凹凸を付けた表面処理を施している。そこで、パッチ素子11にも、同じ表面処理(粗さが同じ処理)を施すのが好ましく、これにより、パッチ素子11をより一層目立たなくすることができる。
なお、図示しないが、パッチ素子11を反射防止部材10の後方に設けてもよい。この場合、反射防止部材10は、パッチ素子11及びグランド素子12を隠すことができ、前方から見えなくすることができる。
【0046】
〔第二アンテナ4について(第二実施形態)〕
図6は、信号灯器1の光学ユニット2の斜視図であり、図7は、その断面図である。この実施形態における第二アンテナ4も、第一の実施形態と同じく、パッチアンテナ4aであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、パッチ素子11とグランド素子12とが、光学ユニット2内に格納されている。光学ユニット2及びグランド素子12については、第一の実施形態と同じであり、その説明を省略する。
【0047】
パッチ素子11に関して、第二の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、光学ユニット2内における前後方向の取り付け位置、LED7を挿通させる孔11b(図5参照)が形成されていない点、可視光透過性を有している点であり、これら異なる点を主に説明する。
【0048】
パッチ素子11の前後方向の取り付け位置は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲となっている(図7参照)。つまり、パッチ素子11は、カバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられていて、かつ、LED7の前端39より前方に設けられている。このため、パッチ素子11は、LED7と干渉しないので、LED7挿通用の前記孔11bが不要となる。
パッチ素子11は、平面状(平板状)に形成されており、反射防止部材10から前方へ立設されたスペーサ22によって支持され、固定されている。なお、図示しないが、この第二の実施形態でも、反射防止部材10を省略することができ、この場合、パッチ素子11(及びグランド素子12)は、LED基板8にスペーサを介して取り付けられる。
【0049】
第二の実施形態においても、パッチ素子11とグランド素子12とが、前後方向に対向した配置となり、パッチアンテナ4aの指向性は、信号灯器1から前方へ向かう方向となる。したがって、光学ユニット2による投光方向とパッチアンテナ4aの指向性とを略一致させることができる。
【0050】
また、この第二の実施形態では、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの距離が小さくても(つまり、LED7が短くても)、パッチ素子11をLED7の前端39よりも前方に配置していることで、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔E1(図7参照)を所望の値に設定しやすくなる。
【0051】
そして、LED7の前端39よりも前方にあるパッチ素子11は、このLED7の前方への投光を阻害しないように、パッチ素子11の厚さ方向(前後方向)に、可視光透過性を有している(可視光に対して透明である)。なお、ここにいうパッチ素子11における可視光透過性とは、パッチ素子11の導電体部分(導体部分)が透明又は半透明である場合のみならず、パッチ素子11を構成する導電体部分は可視光を遮断するが、パッチ素子11の導電体部分が設けられていない部分を可視光がすり抜けて、パッチ素子11の後方において発光された可視光がパッチ素子の前方に到達する状態をも含む。
【0052】
パッチ素子11に可視光透過性を備えさせるために、パッチ素子11を、可視光透過性を有する薄膜導電体(透明導電体)から形成すればよい。この場合、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる透明導電体を、ガラス等の板部材(誘電体)からなるアンテナ用基板16の表面又は裏面に形成すればよい。この場合、パッチ素子11を薄く、しかも、所定の形状に形成することができる。なお、前記アンテナ用基板16は、透明であり可視光透過性を備えている。
なお、透明導電体としては、金属薄膜(Au,Ag,Pt,Cu,Rh,Pd,Al,Cr)、酸化物半導体薄膜(In2O3、SnO2、ZnO、CdO、TiO2、CdIn2O4、Cd2SnO4、Zn2SnO4、In2O3−ZnO系)、スピネル形化合物(MgInO4、CaGaO4)、導電性窒化物薄膜(TiN、ZrN、HfN)、導電性ホウ化物薄膜(LaB6)、導電性高分子膜等を採用することができる。この透明導電体は、アンテナ用基板16にスパッタリングや真空蒸着等を行なうことにより得られる。
【0053】
又は、パッチ素子11に可視光透過性を備えさせるために、パッチ素子11を、可視光透過用の開口が形成された導電体から形成してもよい。つまり、パッチ素子をメッシュ構造による導電体とすることにより、パッチ素子は可視光透過性を有する。パッチ素子をメッシュ構造とするために、例えばパッチ素子を導線によって(導線を編んで)形成すればよい。
【0054】
可視光透過性を備えさせるために、メッシュ構造とするパッチ素子11についてさらに説明すると、パッチ素子11を、例えば、径(幅)が1mmである導線を編み目状に配置してメッシュ構造とする。すなわち、導線のピッチ(メッシュの間隔)を所定の値として、導線を上下方向及び左右方向に編み、網目状金属素子とする。なお、パッチ素子のメッシュ数(メッシュ粗さ)は変更自在であり、一面を四分割した網目状金属素子としたり、一面を二分割したもの、三分割したもの等であってもよい。
【0055】
又は、パッチ素子11をメッシュ構造とするため、前記のような導線を利用する以外に、可視光透過性のあるガラス等のアンテナ用基板16に金属膜(金属薄膜)によって網目を形成してもよい。つまり、アンテナ用基板16の表面又は裏面に網目状の金属層を設け、メッシュ構造とする。そして、この金属メッシュ層が形成されたアンテナ用基板16が、カバー部材9とLED7の前端39との間に設けられ、パッチ素子11を構成する。
【0056】
以上の構成によれば、グランド素子12からパッチ素子11までの前後方向の間隔E1が所定の値となるようにして、パッチ素子11をLED7よりも前方に配置することができる。そして、パッチ素子11はLED7の前端39よりも前方に設けられているが、パッチ素子11は可視光透過性を有しているため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
さらに、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED基板8よりも前方に設けられた構成であるため、LED基板8が、パッチアンテナ4aによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0057】
〔第二アンテナ4について(第三実施形態)〕
図8は、信号灯器1の光学ユニット2の斜視図であり、図9は、その断面図である。この実施形態における第二アンテナ4は、ダイポールアンテナ4bである。光学ユニット2については、第一の実施形態と同じであり、その説明を省略する。なお、この第三の実施形態では、前記反射防止部材10が省略されているが、反射防止部材10を備えていてもよい。
【0058】
このダイポールアンテナ4bは、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲に設けられている。ダイポールアンテナ4bは、LED7の前端39よりも前方に設けられていることから、可視光透過性を有している。このため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0059】
具体的な構成を説明する。光学ユニット2内には、ガラス等の可視光透過性を有しているアンテナ用基板16が、カバー部材9とLED7の前端との間に設けられている。そして、アンテナ用基板16は、LED基板8と平行となる配置である。そして、このアンテナ用基板16の一面側に、アンテナ素子25a,25bを有しているダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している短絡部28とが形成されている。そして、アンテナ用基板16の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。
【0060】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板16の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。
ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27bの裏側となる位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部25のアンテナ素子25a,25b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27aの裏側となる位置で直線的に延びて形成されている。このストリップ線路26、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28によって、バルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。このダイポールアンテナ4bは、ダイポールアンテナ4b及びバルンが一つのアンテナ用基板16に形成されたバルン一体型のアンテナである。
【0061】
ダイポールアンテナ4bに可視光透過性を備えさせるために、一面側及び他面側の前記薄膜導電体は、可視光透過性を有する透明導電体であり、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる。
透明導電体としては、前記のとおり、金属薄膜や酸化物半導体薄膜等がある。この透明導電体は、アンテナ用基板16にスパッタリングや真空蒸着等を行なうことにより得られる。
又は、一面側及び他面側の前記薄膜導電体は、可視光透過用の微細な開口を有するように、微細なメッシュとしてもよい。
【0062】
ダイポールアンテナ4bは平衡型であり、平衡二線で給電される。また、ダイポールアンテナ4bの変形例としては、図示しないが、バルンがアンテナ用基板16とは別の部分に設けられていてもよく、バルン別体型であってもよい。
【0063】
〔第二アンテナ4について(第四実施形態)〕
図10は、信号灯器1の光学ユニット2の断面図ある。この第四の実施形態は、第三の実施形態の変形例であり、反射防止部材10が設けられている点、及び、ダイポールアンテナ4bの形態に関する点が異なるが、その他は同様である。
図10の実施形態では、グランド素子12がLED基板8に平行となる配置として設けられていて、このグランド素子12にアンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられている。つまり、アンテナ用基板16の向きが、第三の実施形態と異なる。
【0064】
そして、このアンテナ用基板16に、アンテナ素子25a,25b、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26が形成されている。すなわち、アンテナ素子25a,25b、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26が、アンテナ用基板16の板面と同様に、前後方向に沿うように(前後方向に沿った面(仮想面)と平行に)配置された構成となる。
【0065】
そして、このダイポールアンテナ4bは、複数のLED7間に対応して配置されている。これにより、LED7とダイポール部25とが前方(正面)から見て重複しない状態が得られ、LED7の光がアンテナ素子25a,25bによって遮られるのを防止することができる。
さらに、ダイポール部25は、LED7の前端39よりも前方に位置しているため、LED7が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮させることができる。
したがって、この第四の実施形態のダイポールアンテナ4bは、光透過性を有している必要はないが、LED7からの斜め前方への投光を妨げないように、光透過性を有しているのが好ましい。ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミ等による金属箔が好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属箔とすることもできる。
【0066】
〔第一アンテナ104について(第一実施形態)〕
次に、第一アンテナ104について説明する。
図2の信号灯器1の中央にある中央ユニットU1において、第一アンテナ104は、信号灯器1の庇30に取り付けられている。なお、前記中央ユニット1は、中央の単一の光学ユニット2、当該光学ユニット2の上に設けられた庇30及び当該光学ユニット2を組み込んでいる筐体3の中央部からなる。
【0067】
図11は、庇30に第一アンテナ104が取り付けられた信号灯器1の側面図であり、図12は第一アンテナ104が取り付けられた庇30を正面の斜め上方から見た斜視図である。この第一アンテナ104は、ダイポールアンテナ104aであり、庇30の上面30aに沿って取り付けられている。なお、図12の下が前方であり、光学ユニット2の投光方向となる。
ダイポールアンテナ104aを庇30に取り付ける場合、庇30の材質は樹脂製等の誘電体であり、例えば、強度面、加工の容易性から、FRP、ポリカーボネート、アクリルが好ましい。
【0068】
図12において、ダイポールアンテナ104aは、樹脂等の誘電体からなるアンテナ用基板116と、このアンテナ用基板116の一面側に形成されたダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び短絡部28を有している。平衡給電線部27a,27bは前後方向に延びて形成されていて、ダイポール部25が有しているアンテナ素子25a,25bは左右方向に延びている(左右に展開している)。短絡部28は一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している。
さらに、アンテナ用基板116の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。平衡給電線部27a,27b及び短絡部28が、ストリップ線路26のグランドを兼ねている。
【0069】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板116の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板116の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。前記薄膜導電体は金属箔パターンにより得ることができ、これをフィルム状のアンテナ用基板116に貼り付ければよい。また、庇30の形状に沿って十分に曲げることができる程度に、両面を金属箔(銅箔)としたプリント基板が薄い場合、当該プリント基板を用いてエッチングにより作成してもよい。例えば、厚さ0.1mm程度の樹脂製の基板に金属箔がプリントされたプリント基板であれば、曲面状に曲げることが可能である。第一アンテナ104としてのこのダイポールアンテナ104aは、例えば図7の第二アンテナ4のアンテナ素子(パッチ素子11)のように、可視光透過性を有している必要はない。
【0070】
ストリップ線路26は、アンテナ用基板116の他面側であって給電線部27bの裏側となる位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部25のアンテナ素子25a,25b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板116の他面側であって給電線部27aの裏側となる位置で直線的に延びて形成されている。このストリップ線路26、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28によって、バルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。この第一の実施形態の第一アンテナ104は、ダイポールアンテナ104a及びバルンが一つのアンテナ用基板116に形成されたバルン一体型のアンテナである。
【0071】
そして、このアンテナ用基板116が、庇30の上面30aにダイポール部25が前となって取り付けられている。第一の実施形態のダイポールアンテナ104aは、アンテナ用基板116が円弧形状に形成されていて、アンテナ全体も円弧形状となっている。つまり、ダイポールアンテナ104aは、庇30の上面30aに沿った形状となっている。そして、図11に示しているように、このダイポールアンテナ104aは、樹脂製等の誘電体からなるカバー部材19aによって、上から被覆されている。
また、信号灯器1の筐体3を金属製とし、ダイポールアンテナ104aをこの筐体3の前に設置することで、この筐体3の前面3aが反射板としての機能を奏することが可能となり、前方への指向性を有することができる。
【0072】
ダイポールアンテナ104aは平衡型であり、平衡二線で給電される。ダイポールアンテナ104aは、コネクタ17を介して給電用の同軸ケーブル115(給電線)が接続されている。同軸ケーブル115は筐体3内を通ってコネクタ17に接続されている。同軸ケーブル115には、図1の前記制御装置5bから給電される。
図13(a)は給電部を説明する説明図である。コネクタ17は、内導体17aと外導体17bとを有している。さらに、外導体17bには金属部材18が接続されている。同軸ケーブル115は、内導体115a、絶縁体、外導体115b及び被覆部を有していて、同軸ケーブル115の内導体115aがコネクタ17の内導体17aを介して前記ストリップ線路26に接続され、同軸ケーブル15の外導体115bがコネクタ17の外導体17b及び金属部材18を介してグランド(前記短絡部28)に接続されている。
【0073】
図13(b)は給電部の変形例を示している。この変形例では、アンテナ用基板116に貫通孔17cが形成されていて、同軸ケーブル115の中心導体115aが接続された状態にある端子17aの中心導体18aが、前記貫通孔17cを挿通した状態となり、ストリップ線路26に接続されている。そして、同軸ケーブル115の外導体15bが端子17aを介してグランド(短絡部28)に接続されている。
【0074】
このような各給電部も、樹脂製等の誘電体からなるカバー部材(図示せず)によって、覆われている。なお、図示しないが、前記バルンは、アンテナ用基板116とは別の部分に設けられていてもよい。例えば、バルンは信号灯器1の筐体3内に設けられていて、このバルンと平衡給電線部27a,27bとがリード線を介して繋がっていてもよい。
また、ダイポールアンテナ104aの形態に関して、図12の二点鎖線で示しているように、短絡部28側で左右に延長した延長部28bが形成されていてもよい。この場合、延長部28bが反射器としての機能を有することができる。
【0075】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
そして、信号灯器1は、当該信号灯器1の前方の領域に対して、見通しが良い位置に設置される。したがって、このダイポールアンテナ104aの指向性によって、この信号灯器1の前方の領域に設置されている他の路側通信装置(図示せず)との間で、良好な通信状態が自然と得られる。
【0076】
このように、信号灯器1の庇30に組み込まれたダイポールアンテナ104a及び前記制御装置5b(図1参照)を路側通信装置とすることで、当該路側通信装置と前記他の路側通信装置との間で無線通信(路路間通信)が行われ、交通安全の促進や交通事故の防止を目的とする高度道路交通システム(ITS)を実現することができる。
このシステムで使用される無線周波数は、前記のとおり、例えば、720MHz帯、2.4GHz帯があり、第一アンテナ104(ダイポールアンテナ104a)の共振周波数を2.4GHz帯に設定することができる。なお、周囲に設置されている他の路側通信装置についても、前記第一及び第二のアンテナが組み込まれている信号灯器を有しているものとすることができる。
【0077】
信号灯器1における庇30の大きさとダイポールアンテナ104aの大きさとの関係を図12及び図14により説明する。なお、図14は庇30及びダイポールアンテナ104aを正面から見た図である。
図14において、庇30は、光学ユニット2の左端2aから上端2bを経て右端2cまでを覆う形状であり、光学ユニット2の中心C周りに180°(以上)の範囲(光学ユニット2の上半分)にわたって設けられている形状である。庇30の内面30bの半径rは約160mmであり、庇30の前後方向寸法Lは約340mmである。
【0078】
ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯に設定すると、図12の左右方向の寸法A(円弧面に沿った寸法)を46mm〜61mm(0.38λ〜0.5λ:λは入力される高周波信号の波長)とすることができ、前後方向の寸法Bを30mm程度(約λ/4)とすることができる。
【0079】
このダイポールアンテナ104aを、前記上端2bを周方向の中心として、庇30の上面30aに沿って設けると、当該ダイポールアンテナ104aは、周方向にθ=18°〜24°の範囲を占めることとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aは、庇30が存在している180°の範囲よりも狭くなっており、また、ダイポールアンテナ104aの前後方向の寸法Bも、庇30の前後方向寸法Lよりも小さくなっている。
すなわち、ダイポールアンテナ104aは、庇30の下方からの投影面の範囲で庇30に取り付けられた構成となる。この構成によれば、信号灯器1を下から見た際に、ダイポールアンテナ104aは庇30に隠れた状態にあり、ダイポールアンテナ104aを目立たなくすることができる。
【0080】
また、この実施形態では、ダイポールアンテナ104aが取り付けられている庇30は、信号灯器1の筐体3に対してネジ等の留め具33(図11参照)によって取り外しが可能となっている。このため、例えばダイポールアンテナ104aを取り替える場合、庇30を交換すればよく、信号灯器1全体を取り替える必要がなく、経済的である。
また、ダイポールアンテナ104aを庇30に直接取り付けてもよいが、ダイポールアンテナ104aを誘電体からなるアンテナ筐体に収納した状態として、ダイポールアンテナ104aをアンテナ筐体を介して庇30に取り付けてもよい。なお、この場合、アンテナ筐体の全体(又はアンテナ筐体の少なくとも下面)は、庇30の上面30aの形状に沿った湾曲形状とする。
【0081】
〔第一アンテナ104について(第二実施形態)〕
図2の信号灯器1の左側にある左側ユニットU2において、第一アンテナ104は、信号灯器1の筐体3に取り付けられている。そして、図15は、筐体3に第一アンテナ104が取り付けられた信号灯器1の側面図である。この第一アンテナ104は、前記第一の実施形態と同様のダイポールアンテナ104aであるが、庇30の上方で信号灯器1の筐体3に取り付けられている。この形態においても、庇30の材質は樹脂製等の誘電体であるのが好ましい。
【0082】
このダイポールアンテナ104aは、樹脂などの誘電体からなるアンテナ筐体20を介して信号灯器1の筐体3に取り付けられている。すなわち、ダイポールアンテナ104aはアンテナ筐体20に格納されていて、このアンテナ筐体20が、ネジ等の留め具(図示せず)によって、信号灯器1の筐体3に取り付けられている。なお、アンテナ筐体20は庇30にも固定されていてもよい。
図16は、庇30の上方に設けられたダイポールアンテナ104aを正面の斜め上方から見た斜視図である。なお、図16では、アンテナ筐体20を二点鎖線で示している。ダイポールアンテナ104aの基本的な構成は前記第一の実施形態(図12)と同様であるが、この第二実施形態ではダイポールアンテナ104aを湾曲させていない。
【0083】
具体的な構成を図16により説明すると、ダイポールアンテナ104aは、平坦状の樹脂板からなるアンテナ用基板116と、このアンテナ用基板116の一面側に形成されたダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び短絡部28とを有している。平衡給電線部27a,27bは前後方向に延びて形成されていて、ダイポール部25が有しているアンテナ素子25a,25bが左右方向に延びている(左右に展開している)。短絡部28は一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している。
さらに、アンテナ用基板116の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。
【0084】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板116の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。
【0085】
そして、このアンテナ用基板116がアンテナ筐体20内に格納された状態となり、アンテナ筐体20の後部が、信号灯器1の筐体3の前面3aに固定されている(図15参照)。信号灯器1の筐体3に対するアンテナ筐体20の固定は、庇30を筐体3に固定するためのネジの留め具33(図15参照)を用いてもよい。つまり、留め具33によって、信号灯器1の筐体3に、アンテナ筐体20及び庇30を共締めしてもよい。
【0086】
アンテナ筐体20は、上下方向に偏平した形状であり、左右方向及び前後方向に比べて、上下方向に薄い直方体であり、庇30の上面30aの頂部と信号灯器1の筐体3の上端との間の上下方向の空間よりも、薄く構成されている。そして、このアンテナ筐体20内に、アンテナ用基板116は、そのアンテナ形成面が水平(投光方向に平行)となるようにして設けられている。
このダイポールアンテナ104aの給電部の構造は、前記第一の実施形態と同様の構成(図13参照)であり、説明を省略する。
【0087】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、水平偏波となり、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
【0088】
この第二の実施形態においても、ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯とすることができ、図16の左右方向の寸法A(左右直線方向の寸法)を46mm〜61mm(0.38λ〜0.5λ:λは入力される高周波信号の波長)とすることができ、前後方向の寸法Bを30mm程度(約λ/4)とすることができる。
これにより、ダイポールアンテナ104aは、庇30が存在している180°の範囲よりも狭くなっており、また、ダイポールアンテナ104aの前後方向の寸法Bも、庇30の前後方向寸法Lよりも小さくなっている。
すなわち、ダイポールアンテナ104aは、庇30の下方からの投影面の範囲で筐体3に取り付けられた構成となる。この構成によれば、信号灯器1を下から見た際に、ダイポールアンテナ104aは庇30に隠れた状態にあり、ダイポールアンテナ104aを目立たなくすることができる。
【0089】
〔第一アンテナ104について(第三実施形態)〕
図2の信号灯器1の右側にある右側ユニットU3において、第一アンテナ104は庇30の内部に格納されている。すなわち、庇30の内部に空間部Kが形成されていて、この空間部Kに第一アンテナ104が格納されている。なお、信号灯器1の筐体3は、中央ユニットU1、左側ユニットU2及び右側ユニットU3で分離可能であってもよく、分離不能の一体ものであってもよい。
【0090】
図17は、庇30に第一アンテナ104が格納された信号灯器1の側面図であり、庇30部分を断面により示している。この第三の実施形態の第一アンテナ104も、ダイポールアンテナ104aであるが、このダイポールアンテナ104aは庇30の内の上部に格納されている。
【0091】
庇30は、光学ユニット2のほぼ上半分の範囲を覆う正面視円弧形状の主庇部35と、主庇部35の上部に前記空間部Kを形成するための前壁31a、後壁31b、左右の側壁31c(図2参照)、上壁31dを有していて、主庇部35の一部(上部)が空間部Kを形成するための底壁となる。そして、これら壁で囲まれた範囲が、ダイポールアンテナ104aを収納する前記空間部Kとなる。空間部Kは、庇30の上部に形成されている。そして、庇30の上面30aは、信号灯器1の筐体3の上端よりも低く構成されている。この形態では、庇30の材質は樹脂製等の誘電体である。
【0092】
ダイポールアンテナ104aの具体的な構成は、図16に示したものと同じであり、その説明を省略する。また、このダイポールアンテナ104aの給電構造は、前記第一及び第二の実施形態と同様の構成(図13参照)であるが、図17の実施形態では、前記コネクタ17は、前記後壁31bに設けられている。これにより、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の金属製の筐体3の前に配置された構成となる。この形態では、後壁31bのみ金属製とすることができ、この場合、後壁31bと、前記ストリップ線路26a及び前記コネクタ17の内導体17a(図13(a)参照)との間は、絶縁されている必要がある。
【0093】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
【0094】
この第三の実施形態においても、ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯とすることができる。そして、ダイポールアンテナ104aの大きさは、前記のとおり、庇30の左右方向の幅よりも小さく、かつ、庇30の前後方向よりも小さい。したがって、前記空間部Kは、庇30の左右方向の幅よりも小さく、かつ、庇30の前後方向よりも小さい形状でよい。
また、この第三の実施形態の構造によれば、ダイポールアンテナ104aは庇30に格納されているので、当該ダイポールアンテナ104aを見えなくすることができる。また、下から見てアンテナ104aを格納する空間部Kが見えない庇30となっている。
【0095】
なお、第一アンテナ104の種類は、前記のようなダイポールアンテナ104a以外に、折り返しダイポールアンテナ等であってもよい。この場合、不平衡電流が流れにくいことからバルンを省略して、直接的に同軸ケーブルを平衡給電線部に接続してもアンテナ性能を確保し易いという利点がある。
【0096】
以上の第一アンテナ104についての第一、第二及び第三実施形態では、当該第一アンテナ104を信号灯器1の庇30に取り付ける場合を説明したが、第一アンテナ104を、この他に、信号灯器1の筐体3、若しくは、図19に示した道路に設置され信号灯器1を取り付けるための支柱40又はアーム41(取り付け体R)に、組み込ませることができる。
【0097】
そこで、第一アンテナ104を、信号灯器1の筐体3に組み込ませる場合を説明する。
〔第一アンテナ104について(第四実施形態)〕
第四の実施形態の第一アンテナ104は、パッチアンテナ104bである。このパッチアンテナ104bは、図18の右側ユニットU3に示しているように、信号灯器1の筐体3の前面3aに取り付けられていて、光学ユニット2の投光方向と同一方向の指向性を有するように構成されている。
【0098】
パッチアンテナ104bは、投光方向の前方のパッチ素子11と、パッチ素子11の後方のグランド素子12とを有している。なお、信号灯器1の筐体3が金属製である場合、この筐体3の前面3aをグランド素子12として機能させることができる。
パッチアンテナ104bの共振周波数を2.4GHz帯に設定した場合、パッチ素子11の大きさを(パッチ素子11を矩形とした場合)60mm程度とすることができる。
【0099】
そこで、このパッチ素子11を図18に示しているように、筐体3の前面の上半分の領域に取り付けている。この取り付け位置をさらに説明する。信号灯器1の筐体3の内の、中央ユニットU1の前面3d、左側ユニットU2の前面3e及び右側ユニットU3の前面3fそれぞれは、正面視ほぼ矩形であるのに対して、光学ユニット2は円形であり、庇30も正面視円弧形状である。このため、代表として右側ユニットU3について説明すると、前面3fの四隅には、前方に面した正面板部37aが形成されている。この四隅の正面板部37aの内の上二つのいずれかに、パッチアンテナ104bが設けられている。この場合、下方から信号灯器1を見ると、パッチ素子11は庇30によって隠れた状態となる。
【0100】
さらに、右側ユニットU3の前面3fにおいて、上二つの正面板部37aの内の、隣の他のユニット(中央ユニットU1)が存在している側の正面板部37aに、パッチアンテナ104を設けると(図18に示している形態)、右側ユニットU3及び中央ユニットU1の庇30によって、パッチ素子11は隠れた状態となる。
なお、筐体3の前面3aに取り付けられる第一アンテナ104は、パッチアンテナ以外であってもよく、ダイポールアンテナであってもよい。
また、各実施形態において、庇に取り付けたアンテナを、水平偏波として説明したが、垂直偏波となるように構成してもよい。さらに、各実施形態において、パッチアンテナの場合、偏波は水平偏波にこだわらず、垂直偏波、円偏波など色々な偏波のアンテナを実現することができる。
【0101】
以上の第一アンテナ104の実施形態において、当該第一アンテナ104を庇30又は筐体3に組み込む場合、例えば、第一アンテナ104としてのパッチアンテナ104bが右側ユニットU3に組み込まれていて、第二アンテナ4としてのダイポールアンテナ4(第二アンテナ)が左側ユニットU2の光学ユニット2に格納されていてもよい。すなわち、庇30等に組み込まれる第一アンテナ104、及び、光学ユニット2に格納される第二アンテナ4は、ユニットU1,U2,U3の内、異なるユニットに分かれて組み込まれていてもよい(図18)。又は、第一アンテナ104及び第二アンテナ4は、同一のユニットに組み込まれていてもよい(図示せず)。また、全てのユニットU1,U2,U3それぞれに、第一アンテナ104及び第二アンテナ4を組み込んでもよく、又は、任意のユニットに第一アンテナ104及び第二アンテナ4を適宜組み込んでもよい。
【0102】
また、図19に示しているように、第一アンテナ104を、道路に設置された支柱40又はアーム41(取り付け体R)に組み込ませる場合を説明する。
〔第一アンテナ104について(第五実施形態)〕
第五の実施形態の第一アンテナ104は、例えばパッチアンテナ104bであり、このパッチアンテナ104bは、図19の支柱40に取り付けられていて、信号灯器1の光学ユニット2の投光方向と同一方向の指向性を有するように構成されている。このパッチアンテナ104bは、図示しないが、投光方向の前方のパッチ素子と、パッチ素子11の後方のグランド素子とを有している。
また、第五の実施形態の第一アンテナ104は、支柱40ではなくアーム41に取り付けられていてもよい。さらに、第一アンテナ104は、パッチアンテナ以外であってもよく、ダイポールアンテナ等であってもよい。
【0103】
以上の各実施形態のようにして構成された第一アンテナ104及び第二アンテナ4を備えている、本発明の交通信号設備について、さらに説明する。
交通信号設備は、第一アンテナ104について、前記複数の実施形態から選択される一つを採用することができ、かつ、第二アンテナ4について、前記複数の実施形態から選択される一つを採用することができる。すなわち、選択された実施形態の第一アンテナ104は、信号灯器1の筐体3、信号灯器1の庇30、及び、信号灯器1を取り付けている支柱40又はアーム41(取り付け体R)の内の少なくとも一つに組み込まれていて、選択された実施形態の第二アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に格納されている。
【0104】
この交通信号設備によれば、第一アンテナ104及び第二アンテナ4の二つを備えていても、第二アンテナ4を信号灯器1の光学ユニット2に格納することで、当該第二アンテナ4を目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
また、第一アンテナ104は、第一の共振周波数(2.4GHz帯)に設定され、第二アンテナ4は第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数(720MHz帯)に設定されている。特に、第一アンテナ104と第二アンテナ4とを同じ種類のアンテナとした場合、前記のように、共振周波数が低い方のアンテナを、第二アンテナ4とすることで、当該第二アンテナ4は第一アンテナ104よりも大きくなるが、この大きい第二アンテナ4は信号灯器1の光学ユニット2に格納されるので、目立たなくなる。
さらに、第一アンテナ104が、庇30の下方からの投影面の範囲で信号灯器1に取り付けられている場合、信号灯器1を下から見た際に、当該第一アンテナ104は庇30に隠れ、当該第一アンテナ104を目立たなくすることができる。
【0105】
また、信号灯器1は、赤青黄いずれか一つの灯色を前方の道路上のある領域に対して投光するという機能を発揮させるために、当該領域に存在している車両(運転者)に対して、見通しが良い位置に設置されている。すなわち、交通用の信号灯器1は、車両の運転者による視認性を考慮して道路に設置されている。そして、このような信号灯器1の光学ユニット2に第二アンテナ4が格納され、当該第二アンテナ4は、信号灯器1の投光方向と同一方向に電波を放射する指向性アンテナである。したがって、信号灯器1の第二アンテナ4と車両の車載通信装置との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態を自然と得ることができる。
【0106】
さらに、このような信号灯器1の筐体3又は庇30に第一アンテナ104を組み込ませ、当該第一アンテナ104を、信号灯器1の投光方向と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとした場合、信号灯器1の第一アンテナ104と、その前方にある別の路側通信装置との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態を自然と得ることができる。
このような第一アンテナ104及び第二アンテナ4によれば、これらアンテナを、路車通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、良好な通信状態が得られる。
【0107】
また、信号灯器1は、赤、黄、青の灯光色を有する光学ユニット2以外に、車両等の進行可能を意味する矢印を点灯させる光学ユニットを更に備えた矢印式信号灯器であってもよい。この矢印式信号灯器の光学ユニットも、赤、黄、青の光学ユニット2と同様に、内部に発光体(LED)及びカバー部材等を有していて、この光学ユニットに第二アンテナ4が格納されていてもよい。
【0108】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前記実施形態では、複数のアンテナに関して、共振周波数が相互で異なる場合を説明したが、複数のアンテナは、共振周波数が同一であってもよい。
この場合、複数のアンテナは、相互の距離をできるだけ離隔して配置するのが好ましい。このように、共振周波数を同一とした複数のアンテナ同士を離して配置することにより、当該複数のアンテナによってダイバシティ制御を実施することが可能となる。
【0109】
また、本発明の交通信号設備が備えている信号灯器1は、車両用以外にも、歩行者用の信号灯器であってもよい。この歩行者用信号灯器も、車両用と同様に、LEDを有する光学ユニットを有していて、この光学ユニットに第二アンテナが格納されている。この場合、無線通信の相手は、車両に搭載された車載機以外に、歩行者が携帯している携帯通信端末であってもよい。
また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 交通信号灯器
2 光学ユニット
3 筐体
4 第二アンテナ
4a パッチアンテナ
4b ダイポールアンテナ(アンテナ素子)
104 第一アンテナ
104a ダイポールアンテナ
104b パッチアンテナ
7 発光ダイオード(発光体)
8 基板
9 カバー部材
11 パッチ素子(アンテナ素子)
12 グランド素子
30 庇
39 前端
40 支柱
41 アーム
R 取り付け体
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等に設置される交通信号設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に路側通信装置(インフラ装置)が設置されていて、この路側通信装置から発せられた無線情報を、道路を走行する車両に搭載した車載通信装置が受信し、車載通信装置が無線情報に含まれている各種情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
このような路側通信装置と車載通信装置との間の通信(路車間通信)を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に路側通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱に路側通信装置のアンテナを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のとおり、路側通信装置のアンテナを道路の所定位置に設けるために、道路に設置した支柱にアンテナを取り付けることができる。しかし、前記所定位置に設ける必要のあるアンテナの数が、二つとなる場合、アンテナそれぞれのための専用の支柱を二本設けることは経済的でないため、二つのアンテナを同じ支柱に設置する構成が考えられる。しかし、この場合、外観上煩雑となり、道路の美観の点で好ましくない。
そこで、アンテナの数が増えても、外観上煩雑となるのを抑えることができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の交通信号設備は、発光体を有し前方に投光する光学ユニット、前記光学ユニットを組み込んでいる筐体、及び、前記光学ユニットに対する太陽光の入射を制限する庇を有している交通信号灯器と、前記交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体とを備え、前記筐体、前記庇及び前記取り付け体の内の少なくとも一つに、第一アンテナが組み込まれ、前記光学ユニットに、第二アンテナが格納されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第一アンテナは、交通信号灯器の筐体、交通信号灯器の庇、及び、交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体の内の少なくとも一つに組み込まれていて、第二アンテナが、交通信号灯器の光学ユニットに格納されている。このように、二つのアンテナを備えていても、一つのアンテナ(第二アンテナ)を交通信号灯器の光学ユニットに格納することで、当該一つのアンテナを目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
【0008】
(2)また、前記第一アンテナと前記第二アンテナとは、共振周波数が相互で異なるように構成されているのが好ましい。この構成によれば、二つのアンテナにより、異なる複数の周波数帯をカバーすることができる。
【0009】
(3)また、前記第一アンテナは、第一の共振周波数に設定され、前記第二アンテナは前記第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数に設定されているのが好ましい。
共振周波数が異なると、アンテナは(特にアンテナの種類が同一であると)大きさがそれぞれで異なるように構成され、共振周波数が高いアンテナが小さく構成され、共振周波数が低いアンテナが大きく構成される。そこで、共振周波数が低い方のアンテナを、第二アンテナとすることで、当該第二アンテナは第一アンテナよりも大きくなるが、この大きい第二アンテナは光学ユニットに格納されるので、目立たなくなる。
【0010】
(4)また、前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の一方を、前記道路上に存在している移動通信装置と通信するためのアンテナとし、前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の他方を、前記道路に設置されている別の路側通信装置と通信するためのアンテナとすることにより、移動通信装置及び別の路側通信装置との通信が可能となる。
【0011】
(5)また、第二アンテナが光学ユニットに格納されている前記交通信号設備において、前記光学ユニットは、前記発光体を前方から覆うカバー部材を有し、前記第二アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ可視光透過性を有しているアンテナ素子を有している構成とすることができる。
この構成によれば、カバー部材から発光体の前端までの範囲に、第二アンテナのアンテナ素子を設けることができる。アンテナ素子が発光体の前端よりも前方にあっても、当該アンテナ素子は可視光透過性を有しているため、アンテナ素子が、発光体による前方への投光の妨げになることを防止することができる。
【0012】
(6)この場合において、前記第二アンテナは、前記アンテナ素子としてのパッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、前記グランド素子は、前記基板よりも前方に設けられているのが好ましい。
この場合、発光体が前面に実装された基板よりも前方に、パッチ素子及びグランド素子が設けられた構成となるため、基板が第二アンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0013】
(7)又は、第二アンテナが光学ユニットに格納されている前記交通信号設備において、前記第二アンテナは、前記発光体の前端よりも後方に設けられている構成とすることができる。
この構成によれば、第二アンテナが、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0014】
(8)この場合において、前記第二アンテナは、パッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、前記パッチ素子及び前記グランド素子は、前記発光体の前端よりも後方でかつ前記基板よりも前方に設けられているのが好ましい。
この場合、パッチ素子及びグランド素子は、発光体の前端よりも後方に設けられているため、パッチ素子及びグランド素子が、発光体による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。そして、パッチ素子及びグランド素子は、基板よりも前方に設けられているので、基板が第二アンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二つのアンテナを備えていても、一つのアンテナを交通信号灯器の光学ユニットに格納することで、当該一つのアンテナを目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の交通信号設備の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】信号灯器の正面図である。
【図3】信号灯器が有している一つの光学ユニットの斜視図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】光学ユニットの内部の拡大断面図である。
【図6】第二の実施形態の信号灯器の光学ユニットの斜視図である。
【図7】光学ユニットの断面図である。
【図8】第三の実施形態の信号灯器の光学ユニットの斜視図である。
【図9】光学ユニットの断面図である。
【図10】信号灯器の光学ユニットの断面図ある。
【図11】庇に第一アンテナが取り付けられた信号灯器の側面図である。
【図12】第一アンテナが取り付けられた庇を正面の斜め上方から見た斜視図である。
【図13】給電部を説明する説明図である。
【図14】庇及びダイポールアンテナを正面から見た図である。
【図15】筐体に第一アンテナが取り付けられた信号灯器の側面図である。
【図16】庇の上方に設けられたダイポールアンテナを正面の斜め上方から見た斜視図である。
【図17】庇に第一アンテナが格納された信号灯器の側面図である。
【図18】信号灯器の正面図である。
【図19】本発明の交通信号設備の他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の交通信号設備の実施の一形態を示す正面図である。本発明の交通信号設備は、交通信号灯器1(以下、単に信号灯器1ともいう)と、この交通信号灯器1を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体Rとを備えている。
信号灯器1は、交通に関する情報として停止又は進行可能について示す灯色を前方へ投光する。なお、図1の信号灯器1は主として車両用であり、赤青黄いずれか一つの灯色を投光し、道路を走行する車両の運転者に対して、停止又は進行可能についての情報を報知する。
【0018】
信号灯器1は、前記取り付け体Rによって例えば交差点近傍等の道路上の所定位置に取り付けられる。図1の実施形態では、前記取り付け体Rは、歩道等の路側に立設された支柱40及びこの支柱40から車道側に延びているアーム41である。すなわち、支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
なお、信号灯器1の設置構造は図示したもの以外であってもよい。例えば、図示しないが、前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1は歩道橋に設置されていてもよく、この場合、前記取り付け体Rは、信号灯器1を歩道橋に設置するための取り付け金具となる。
【0019】
図2は、信号灯器1の正面図である。信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。さらに、信号灯器1は、各光学ユニット2の上側に取り付けられた庇30を有している。
【0020】
図1において、前記支柱40には、制御装置5aが取り付けられていて、この制御装置5aは、信号灯器1の点灯を制御する。なお、制御装置5aは、信号灯器1の筐体3内に設けられていてもよい。
この制御装置5aの他に、後述する第一アンテナ104及び第二アンテナ4を用いた無線通信の制御を行なう制御装置5bも設けられている。両制御装置5a,5bは別のものであってもよいが、一方の制御装置が他方の制御装置を兼ねていてもよい。また、両制御装置5a,5bが別々である場合であっても、両制御装置を同一の筐体に内蔵させることができる。又は、筐体をそれぞれ別々とし、無線通信用の制御装置5bを点灯用の制御装置5aの近傍(同一の支柱40)に設置してもよい。
【0021】
庇30は、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する機能を有している。庇30は、正面視円形である光学ユニット2のほぼ上半分の範囲を上及び左右から覆うように、正面視円弧状に形成されていて、筐体3から前方に延伸している。つまり、庇30は、ほぼ下半分が開口している円筒形状である。庇30は、筐体3の前部にネジ等の留め具33(図11参照)によって着脱可能として取り付けられている。
【0022】
図3は信号灯器1が有している一つの光学ユニット2の斜視図であり、図4は光学ユニット2の断面図であり、図5は、光学ユニット2の内部の拡大断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下、LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装されたLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。なお、この実施形態の信号灯器1は、反射防止部材10を備えている。
【0023】
LED基板8は、その裏面に配線パターンが形成されていて、LED7のリード線(端子)7cと繋がっている(図5参照)。LED基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED基板8は、前記制御装置5aから延びている給電線(図示せず)と繋がっている。LED7はレンズ部(モールド部)7eを有し、このレンズ部7e内にLED素子7bが設けられている。
【0024】
図4において、収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。収容部材6は、鋼板、アルミ又は樹脂製である。その開口側である前部に、カバー部材9が取り付けられている。収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されていて、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。LED基板8を、前記反射防止部材10を介して収容部材6に取り付けることができる。
【0025】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。この光学ユニット2(信号灯器1)において、前方とはLED7の光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bが凸曲面である。カバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。カバー部材9は、ガラス又は樹脂製である。
【0026】
本発明の信号灯器1は、屋外に設置されていることから、LED基板8やLED7に照りつけた西日や朝日が地上へ反射し、その反射光によって、灯器が見づらくなったり、点灯していない灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりする。
そこで、前記反射防止部材10は、光学ユニット2の外部から入射する光(太陽光)がLED基板8及びLED7の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有している。これにより、信号灯器1が見づらくなったり擬似点灯が生じたりするのを防止することができる。反射防止部材10は収容部材6に取り付けられている。
【0027】
反射防止部材10は、絶縁部材である合成樹脂材により形成され、LED基板8よりも前方に配置されている。反射防止部材10は、円形の板状(面状)に形成された板状部10aを備え、この板状部10aは、LED7の前端39よりも後方に配置されている。板状部10aには、LED7の配置に対応して、LED7を挿通させるための複数の挿通孔10bが形成されている。
なお、反射防止部材10を省略してもよく、この場合、LED基板8は、収容部材6に取り付けられる。
【0028】
そして、以上のように構成された信号灯器1の筐体3、信号灯器1の庇30、及び、支柱40及びアーム41からなる取り付け体Rの内の少なくとも一つに、第一アンテナ104が組み込まれている。そして、この信号灯器1の光学ユニット2に、第二アンテナ4が格納されている。図2の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有していて、それぞれの光学ユニット2に第二アンテナ4が格納されていて、この信号灯器1の左部、中央部及び右部それぞれに、第一アンテナ104が組み込まれている。
【0029】
前記第一アンテナ104、前記第二アンテナ4、及び、前記制御装置5b(図1参照)を路側通信装置とすることで、当該路側通信装置と、当該路側通信装置が設置されている道路を走行する車両に搭載した車載通信装置及び別の路側通信装置等との間で無線通信(路車間通信及び路路間通信)が行われ、交通安全の促進や交通事故の防止を目的とする高度道路交通システム(ITS)を実現することができる。このシステムで使用される無線周波数は、例えば、720MHz帯、2.4GHz帯がある。
【0030】
第一アンテナ104と第二アンテナ4とは、共振周波数が相互で異なるように構成されている。例えば、前記高度道路交通システムを実現するために、第一アンテナ104は、共振周波数が2.4GHz帯(第一の共振周波数)となるように設定されていて、第二アンテナ4は、共振周波数が第一の共振周波数よりも低い720MHz帯(第二の共振周波数)となるように設定されている。
【0031】
そして、第一アンテナ104は、信号灯器1が設けられている道路に設置された別の路側通信装置と通信(路路間通信)するためのアンテナであり、第二アンテナ4は、例えば、当該信号灯器1が設けられている道路を走行している車両に搭載された車載通信装置(移動通信装置)と通信するためのアンテナである。この構成によれば、二つのアンテナ4,104を有している図1の交通信号設備は、異なる複数の周波数帯(2.4GHz帯、720MHz帯)をカバーすることができ、さらに、通信エリア内の移動通信装置及び別の路側通信装置との無線通信が可能となる。
なお、本発明において、周波数の値はこの実施形態に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0032】
〔第二アンテナ4について(第一実施形態)〕
先ず、第二アンテナ4について説明する。
図3と図4とにおいて、信号灯器1の光学ユニット2に格納されている第二アンテナ4は、パッチアンテナ4aであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、パッチ素子11とグランド素子12とが、光学ユニット2内に格納されている。
【0033】
パッチ素子11は、矩形又は円形(図例では円形)の平面状(平板状)に形成されている。パッチ素子11は、LED基板8から前方へ離れて設けられているが、LED7の前端39(レンズ部7eの前端39:図5参照)よりも後方に位置している。グランド素子12は、円形又は矩形(図例では円形)の平面状(平板状)に形成されている。グランド素子12は、LED基板8の前方でかつパッチ素子11よりも後方に設けられている。すなわち、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED7の前端39よりも後方で、かつ、LED基板8よりも前方に設けられている。パッチ素子11及びグランド素子12は、例えば、図4に示しているように、反射防止部材10によって支持される。
【0034】
そして、収容部材6(底部6a)には、パッチアンテナ4a用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられていて、この端子部19に、図1の制御装置5bから延びる同軸ケーブル15が接続されている。そして、この端子部19から前方へ延びる同軸ケーブル15aが、パッチアンテナ4aと接続される。この同軸ケーブル15aは、中心導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有していて、中心導体15bがパッチ素子11に接続され、外導体15dがグランド素子12に接続される。これにより、制御装置5bからパッチアンテナ4aへ給電が行われる。
また、図1の制御装置5aから延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED基板8と接続されている。これにより、制御装置5aから複数のLED7へ給電が行われる。
【0035】
パッチ素子11及びグランド素子12は金属板から形成することができる。パッチ素子11及びグランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、樹脂製等の不導体の板部材からなるアンテナ用基板に、金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい。
【0036】
さらに、パッチ素子11とLED7とは前後方向の位置について重複していることから、図5に示しているように、パッチ素子11には、LED7を挿通させる開口部として複数の孔11bが形成されている。
またグランド素子12とLED7とも前後方向の位置について重複していることから、グランド素子12には、LED7を挿通させる開口部として複数の孔12bが形成されている。これら孔11b,12bの配置は、LED7の配置と一致している。
【0037】
したがって、パッチ素子11及びグランド素子12は網目構造となる。このため、LED7をパッチ素子11の孔11bに挿し入れることで、パッチ素子11がLED7に干渉することなく、パッチ素子11を所定の位置に設置することができ、また、LED7をグランド素子12の孔12bに挿し入れることで、グランド素子12がLED7に干渉することなく、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。
【0038】
また、パッチ素子11、グランド素子12を、導線(金属ワイヤ)によって(導線を編んで)形成したメッシュ構造としてもよい。この場合、導線間を前記孔11b,12bとし、この孔11b,12bにLED7を位置させるように構成することができる。
【0039】
以上より、パッチアンテナ4aのパッチ素子11とグランド素子12とが、収容空間部Sであって、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲に設けられている。そして、パッチ素子11とグランド素子12とが、前後方向に対向した配置となり、このパッチアンテナ4aの指向性は、信号灯器1から前方へ向かう方向となる。
【0040】
そして、パッチアンテナ4aは前方への指向性を有していることから、この指向性と、光学ユニット2の投光方向とを一致させることができる。これにより、信号灯器1は、当該信号灯器1が設置されている道路を走行する車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ4の指向性によって、前記車両に搭載した車載通信装置(図示せず)との間で、良好な通信状態が得られる。
【0041】
なお、パッチアンテナ4aにおいて、所望の性能を得るためには、パッチ素子11とグランド素子12との前後方向の間隔E1(図5参照)を所定の値とする必要がある。このために、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの間に、大きな前後方向の範囲(距離)が必要となる場合がある。このために、図示しないが、通常よりも、LED7の発光部(レンズ部7e)を長くしたり、リード線7cを長くしたり、リード線7cにコネクタ(図示せず)を付け足したりすればよい。
【0042】
また、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED基板8と平行になるように配置されている。信号灯器1はドライバへの視認性に鑑みて、通常、LED基板8自体を少し下方に傾けて設置してある。このため、パッチ素子11及びグランド素子12をLED基板8に平行に取り付けることによって、アンテナの指向性も自然に下方に向く。
なお、無線通信の領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、パッチアンテナ4aを、LED基板8に対して上下方向又は左右方向に傾けるようにしてもよい。
【0043】
また、パッチアンテナ4aが光学ユニット2に格納されていても、パッチ素子11及びその後方にあるグランド素子12は、LED7の前端39よりも後方に設けられているため、パッチ素子11及びグランド素子12が、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。また、パッチ素子11及びグランド素子12はLED基板8の前方に設けられていることから、LED基板8がパッチアンテナ4aによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0044】
なお、パッチ素子11及びグランド素子12が、前方への発光(灯光)の妨げになることを防止するために、パッチ素子をLED7の前端39よりも後方に設けているが、この「前端39よりも後方」には、パッチ素子11の前面とLED7の前端39との前後方向の位置が、略一致している場合を含む。なお、この略一致とは、LED7の前端39の前後方向の位置が、パッチ素子11の厚さ方向の範囲内に存在している場合である。
【0045】
また、図4では、パッチ素子11は反射防止部材10の前方に設けられている。このために、パッチ素子11を反射防止部材10の前面に貼り付けたり、止めネジによって取り付けたりすることができる。この場合、パッチ素子11を反射防止部材10と同一色(黒色)に塗装するのが好ましい。これにより、パッチ素子11が目立たなくなる。さらに、反射防止部材10の前面には、太陽光を乱反射させるため(太陽光を鏡のように一定の方向へ反射させないため)、梨地処理等の微細な凹凸を付けた表面処理を施している。そこで、パッチ素子11にも、同じ表面処理(粗さが同じ処理)を施すのが好ましく、これにより、パッチ素子11をより一層目立たなくすることができる。
なお、図示しないが、パッチ素子11を反射防止部材10の後方に設けてもよい。この場合、反射防止部材10は、パッチ素子11及びグランド素子12を隠すことができ、前方から見えなくすることができる。
【0046】
〔第二アンテナ4について(第二実施形態)〕
図6は、信号灯器1の光学ユニット2の斜視図であり、図7は、その断面図である。この実施形態における第二アンテナ4も、第一の実施形態と同じく、パッチアンテナ4aであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、パッチ素子11とグランド素子12とが、光学ユニット2内に格納されている。光学ユニット2及びグランド素子12については、第一の実施形態と同じであり、その説明を省略する。
【0047】
パッチ素子11に関して、第二の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、光学ユニット2内における前後方向の取り付け位置、LED7を挿通させる孔11b(図5参照)が形成されていない点、可視光透過性を有している点であり、これら異なる点を主に説明する。
【0048】
パッチ素子11の前後方向の取り付け位置は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲となっている(図7参照)。つまり、パッチ素子11は、カバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられていて、かつ、LED7の前端39より前方に設けられている。このため、パッチ素子11は、LED7と干渉しないので、LED7挿通用の前記孔11bが不要となる。
パッチ素子11は、平面状(平板状)に形成されており、反射防止部材10から前方へ立設されたスペーサ22によって支持され、固定されている。なお、図示しないが、この第二の実施形態でも、反射防止部材10を省略することができ、この場合、パッチ素子11(及びグランド素子12)は、LED基板8にスペーサを介して取り付けられる。
【0049】
第二の実施形態においても、パッチ素子11とグランド素子12とが、前後方向に対向した配置となり、パッチアンテナ4aの指向性は、信号灯器1から前方へ向かう方向となる。したがって、光学ユニット2による投光方向とパッチアンテナ4aの指向性とを略一致させることができる。
【0050】
また、この第二の実施形態では、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの距離が小さくても(つまり、LED7が短くても)、パッチ素子11をLED7の前端39よりも前方に配置していることで、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔E1(図7参照)を所望の値に設定しやすくなる。
【0051】
そして、LED7の前端39よりも前方にあるパッチ素子11は、このLED7の前方への投光を阻害しないように、パッチ素子11の厚さ方向(前後方向)に、可視光透過性を有している(可視光に対して透明である)。なお、ここにいうパッチ素子11における可視光透過性とは、パッチ素子11の導電体部分(導体部分)が透明又は半透明である場合のみならず、パッチ素子11を構成する導電体部分は可視光を遮断するが、パッチ素子11の導電体部分が設けられていない部分を可視光がすり抜けて、パッチ素子11の後方において発光された可視光がパッチ素子の前方に到達する状態をも含む。
【0052】
パッチ素子11に可視光透過性を備えさせるために、パッチ素子11を、可視光透過性を有する薄膜導電体(透明導電体)から形成すればよい。この場合、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる透明導電体を、ガラス等の板部材(誘電体)からなるアンテナ用基板16の表面又は裏面に形成すればよい。この場合、パッチ素子11を薄く、しかも、所定の形状に形成することができる。なお、前記アンテナ用基板16は、透明であり可視光透過性を備えている。
なお、透明導電体としては、金属薄膜(Au,Ag,Pt,Cu,Rh,Pd,Al,Cr)、酸化物半導体薄膜(In2O3、SnO2、ZnO、CdO、TiO2、CdIn2O4、Cd2SnO4、Zn2SnO4、In2O3−ZnO系)、スピネル形化合物(MgInO4、CaGaO4)、導電性窒化物薄膜(TiN、ZrN、HfN)、導電性ホウ化物薄膜(LaB6)、導電性高分子膜等を採用することができる。この透明導電体は、アンテナ用基板16にスパッタリングや真空蒸着等を行なうことにより得られる。
【0053】
又は、パッチ素子11に可視光透過性を備えさせるために、パッチ素子11を、可視光透過用の開口が形成された導電体から形成してもよい。つまり、パッチ素子をメッシュ構造による導電体とすることにより、パッチ素子は可視光透過性を有する。パッチ素子をメッシュ構造とするために、例えばパッチ素子を導線によって(導線を編んで)形成すればよい。
【0054】
可視光透過性を備えさせるために、メッシュ構造とするパッチ素子11についてさらに説明すると、パッチ素子11を、例えば、径(幅)が1mmである導線を編み目状に配置してメッシュ構造とする。すなわち、導線のピッチ(メッシュの間隔)を所定の値として、導線を上下方向及び左右方向に編み、網目状金属素子とする。なお、パッチ素子のメッシュ数(メッシュ粗さ)は変更自在であり、一面を四分割した網目状金属素子としたり、一面を二分割したもの、三分割したもの等であってもよい。
【0055】
又は、パッチ素子11をメッシュ構造とするため、前記のような導線を利用する以外に、可視光透過性のあるガラス等のアンテナ用基板16に金属膜(金属薄膜)によって網目を形成してもよい。つまり、アンテナ用基板16の表面又は裏面に網目状の金属層を設け、メッシュ構造とする。そして、この金属メッシュ層が形成されたアンテナ用基板16が、カバー部材9とLED7の前端39との間に設けられ、パッチ素子11を構成する。
【0056】
以上の構成によれば、グランド素子12からパッチ素子11までの前後方向の間隔E1が所定の値となるようにして、パッチ素子11をLED7よりも前方に配置することができる。そして、パッチ素子11はLED7の前端39よりも前方に設けられているが、パッチ素子11は可視光透過性を有しているため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
さらに、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED基板8よりも前方に設けられた構成であるため、LED基板8が、パッチアンテナ4aによる電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0057】
〔第二アンテナ4について(第三実施形態)〕
図8は、信号灯器1の光学ユニット2の斜視図であり、図9は、その断面図である。この実施形態における第二アンテナ4は、ダイポールアンテナ4bである。光学ユニット2については、第一の実施形態と同じであり、その説明を省略する。なお、この第三の実施形態では、前記反射防止部材10が省略されているが、反射防止部材10を備えていてもよい。
【0058】
このダイポールアンテナ4bは、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲に設けられている。ダイポールアンテナ4bは、LED7の前端39よりも前方に設けられていることから、可視光透過性を有している。このため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0059】
具体的な構成を説明する。光学ユニット2内には、ガラス等の可視光透過性を有しているアンテナ用基板16が、カバー部材9とLED7の前端との間に設けられている。そして、アンテナ用基板16は、LED基板8と平行となる配置である。そして、このアンテナ用基板16の一面側に、アンテナ素子25a,25bを有しているダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している短絡部28とが形成されている。そして、アンテナ用基板16の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。
【0060】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板16の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。
ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27bの裏側となる位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部25のアンテナ素子25a,25b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板16の他面側であって給電線部27aの裏側となる位置で直線的に延びて形成されている。このストリップ線路26、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28によって、バルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。このダイポールアンテナ4bは、ダイポールアンテナ4b及びバルンが一つのアンテナ用基板16に形成されたバルン一体型のアンテナである。
【0061】
ダイポールアンテナ4bに可視光透過性を備えさせるために、一面側及び他面側の前記薄膜導電体は、可視光透過性を有する透明導電体であり、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる。
透明導電体としては、前記のとおり、金属薄膜や酸化物半導体薄膜等がある。この透明導電体は、アンテナ用基板16にスパッタリングや真空蒸着等を行なうことにより得られる。
又は、一面側及び他面側の前記薄膜導電体は、可視光透過用の微細な開口を有するように、微細なメッシュとしてもよい。
【0062】
ダイポールアンテナ4bは平衡型であり、平衡二線で給電される。また、ダイポールアンテナ4bの変形例としては、図示しないが、バルンがアンテナ用基板16とは別の部分に設けられていてもよく、バルン別体型であってもよい。
【0063】
〔第二アンテナ4について(第四実施形態)〕
図10は、信号灯器1の光学ユニット2の断面図ある。この第四の実施形態は、第三の実施形態の変形例であり、反射防止部材10が設けられている点、及び、ダイポールアンテナ4bの形態に関する点が異なるが、その他は同様である。
図10の実施形態では、グランド素子12がLED基板8に平行となる配置として設けられていて、このグランド素子12にアンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられている。つまり、アンテナ用基板16の向きが、第三の実施形態と異なる。
【0064】
そして、このアンテナ用基板16に、アンテナ素子25a,25b、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26が形成されている。すなわち、アンテナ素子25a,25b、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26が、アンテナ用基板16の板面と同様に、前後方向に沿うように(前後方向に沿った面(仮想面)と平行に)配置された構成となる。
【0065】
そして、このダイポールアンテナ4bは、複数のLED7間に対応して配置されている。これにより、LED7とダイポール部25とが前方(正面)から見て重複しない状態が得られ、LED7の光がアンテナ素子25a,25bによって遮られるのを防止することができる。
さらに、ダイポール部25は、LED7の前端39よりも前方に位置しているため、LED7が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮させることができる。
したがって、この第四の実施形態のダイポールアンテナ4bは、光透過性を有している必要はないが、LED7からの斜め前方への投光を妨げないように、光透過性を有しているのが好ましい。ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路26の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミ等による金属箔が好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属箔とすることもできる。
【0066】
〔第一アンテナ104について(第一実施形態)〕
次に、第一アンテナ104について説明する。
図2の信号灯器1の中央にある中央ユニットU1において、第一アンテナ104は、信号灯器1の庇30に取り付けられている。なお、前記中央ユニット1は、中央の単一の光学ユニット2、当該光学ユニット2の上に設けられた庇30及び当該光学ユニット2を組み込んでいる筐体3の中央部からなる。
【0067】
図11は、庇30に第一アンテナ104が取り付けられた信号灯器1の側面図であり、図12は第一アンテナ104が取り付けられた庇30を正面の斜め上方から見た斜視図である。この第一アンテナ104は、ダイポールアンテナ104aであり、庇30の上面30aに沿って取り付けられている。なお、図12の下が前方であり、光学ユニット2の投光方向となる。
ダイポールアンテナ104aを庇30に取り付ける場合、庇30の材質は樹脂製等の誘電体であり、例えば、強度面、加工の容易性から、FRP、ポリカーボネート、アクリルが好ましい。
【0068】
図12において、ダイポールアンテナ104aは、樹脂等の誘電体からなるアンテナ用基板116と、このアンテナ用基板116の一面側に形成されたダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び短絡部28を有している。平衡給電線部27a,27bは前後方向に延びて形成されていて、ダイポール部25が有しているアンテナ素子25a,25bは左右方向に延びている(左右に展開している)。短絡部28は一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している。
さらに、アンテナ用基板116の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。平衡給電線部27a,27b及び短絡部28が、ストリップ線路26のグランドを兼ねている。
【0069】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板116の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板116の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。前記薄膜導電体は金属箔パターンにより得ることができ、これをフィルム状のアンテナ用基板116に貼り付ければよい。また、庇30の形状に沿って十分に曲げることができる程度に、両面を金属箔(銅箔)としたプリント基板が薄い場合、当該プリント基板を用いてエッチングにより作成してもよい。例えば、厚さ0.1mm程度の樹脂製の基板に金属箔がプリントされたプリント基板であれば、曲面状に曲げることが可能である。第一アンテナ104としてのこのダイポールアンテナ104aは、例えば図7の第二アンテナ4のアンテナ素子(パッチ素子11)のように、可視光透過性を有している必要はない。
【0070】
ストリップ線路26は、アンテナ用基板116の他面側であって給電線部27bの裏側となる位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部25のアンテナ素子25a,25b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板116の他面側であって給電線部27aの裏側となる位置で直線的に延びて形成されている。このストリップ線路26、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28によって、バルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。この第一の実施形態の第一アンテナ104は、ダイポールアンテナ104a及びバルンが一つのアンテナ用基板116に形成されたバルン一体型のアンテナである。
【0071】
そして、このアンテナ用基板116が、庇30の上面30aにダイポール部25が前となって取り付けられている。第一の実施形態のダイポールアンテナ104aは、アンテナ用基板116が円弧形状に形成されていて、アンテナ全体も円弧形状となっている。つまり、ダイポールアンテナ104aは、庇30の上面30aに沿った形状となっている。そして、図11に示しているように、このダイポールアンテナ104aは、樹脂製等の誘電体からなるカバー部材19aによって、上から被覆されている。
また、信号灯器1の筐体3を金属製とし、ダイポールアンテナ104aをこの筐体3の前に設置することで、この筐体3の前面3aが反射板としての機能を奏することが可能となり、前方への指向性を有することができる。
【0072】
ダイポールアンテナ104aは平衡型であり、平衡二線で給電される。ダイポールアンテナ104aは、コネクタ17を介して給電用の同軸ケーブル115(給電線)が接続されている。同軸ケーブル115は筐体3内を通ってコネクタ17に接続されている。同軸ケーブル115には、図1の前記制御装置5bから給電される。
図13(a)は給電部を説明する説明図である。コネクタ17は、内導体17aと外導体17bとを有している。さらに、外導体17bには金属部材18が接続されている。同軸ケーブル115は、内導体115a、絶縁体、外導体115b及び被覆部を有していて、同軸ケーブル115の内導体115aがコネクタ17の内導体17aを介して前記ストリップ線路26に接続され、同軸ケーブル15の外導体115bがコネクタ17の外導体17b及び金属部材18を介してグランド(前記短絡部28)に接続されている。
【0073】
図13(b)は給電部の変形例を示している。この変形例では、アンテナ用基板116に貫通孔17cが形成されていて、同軸ケーブル115の中心導体115aが接続された状態にある端子17aの中心導体18aが、前記貫通孔17cを挿通した状態となり、ストリップ線路26に接続されている。そして、同軸ケーブル115の外導体15bが端子17aを介してグランド(短絡部28)に接続されている。
【0074】
このような各給電部も、樹脂製等の誘電体からなるカバー部材(図示せず)によって、覆われている。なお、図示しないが、前記バルンは、アンテナ用基板116とは別の部分に設けられていてもよい。例えば、バルンは信号灯器1の筐体3内に設けられていて、このバルンと平衡給電線部27a,27bとがリード線を介して繋がっていてもよい。
また、ダイポールアンテナ104aの形態に関して、図12の二点鎖線で示しているように、短絡部28側で左右に延長した延長部28bが形成されていてもよい。この場合、延長部28bが反射器としての機能を有することができる。
【0075】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
そして、信号灯器1は、当該信号灯器1の前方の領域に対して、見通しが良い位置に設置される。したがって、このダイポールアンテナ104aの指向性によって、この信号灯器1の前方の領域に設置されている他の路側通信装置(図示せず)との間で、良好な通信状態が自然と得られる。
【0076】
このように、信号灯器1の庇30に組み込まれたダイポールアンテナ104a及び前記制御装置5b(図1参照)を路側通信装置とすることで、当該路側通信装置と前記他の路側通信装置との間で無線通信(路路間通信)が行われ、交通安全の促進や交通事故の防止を目的とする高度道路交通システム(ITS)を実現することができる。
このシステムで使用される無線周波数は、前記のとおり、例えば、720MHz帯、2.4GHz帯があり、第一アンテナ104(ダイポールアンテナ104a)の共振周波数を2.4GHz帯に設定することができる。なお、周囲に設置されている他の路側通信装置についても、前記第一及び第二のアンテナが組み込まれている信号灯器を有しているものとすることができる。
【0077】
信号灯器1における庇30の大きさとダイポールアンテナ104aの大きさとの関係を図12及び図14により説明する。なお、図14は庇30及びダイポールアンテナ104aを正面から見た図である。
図14において、庇30は、光学ユニット2の左端2aから上端2bを経て右端2cまでを覆う形状であり、光学ユニット2の中心C周りに180°(以上)の範囲(光学ユニット2の上半分)にわたって設けられている形状である。庇30の内面30bの半径rは約160mmであり、庇30の前後方向寸法Lは約340mmである。
【0078】
ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯に設定すると、図12の左右方向の寸法A(円弧面に沿った寸法)を46mm〜61mm(0.38λ〜0.5λ:λは入力される高周波信号の波長)とすることができ、前後方向の寸法Bを30mm程度(約λ/4)とすることができる。
【0079】
このダイポールアンテナ104aを、前記上端2bを周方向の中心として、庇30の上面30aに沿って設けると、当該ダイポールアンテナ104aは、周方向にθ=18°〜24°の範囲を占めることとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aは、庇30が存在している180°の範囲よりも狭くなっており、また、ダイポールアンテナ104aの前後方向の寸法Bも、庇30の前後方向寸法Lよりも小さくなっている。
すなわち、ダイポールアンテナ104aは、庇30の下方からの投影面の範囲で庇30に取り付けられた構成となる。この構成によれば、信号灯器1を下から見た際に、ダイポールアンテナ104aは庇30に隠れた状態にあり、ダイポールアンテナ104aを目立たなくすることができる。
【0080】
また、この実施形態では、ダイポールアンテナ104aが取り付けられている庇30は、信号灯器1の筐体3に対してネジ等の留め具33(図11参照)によって取り外しが可能となっている。このため、例えばダイポールアンテナ104aを取り替える場合、庇30を交換すればよく、信号灯器1全体を取り替える必要がなく、経済的である。
また、ダイポールアンテナ104aを庇30に直接取り付けてもよいが、ダイポールアンテナ104aを誘電体からなるアンテナ筐体に収納した状態として、ダイポールアンテナ104aをアンテナ筐体を介して庇30に取り付けてもよい。なお、この場合、アンテナ筐体の全体(又はアンテナ筐体の少なくとも下面)は、庇30の上面30aの形状に沿った湾曲形状とする。
【0081】
〔第一アンテナ104について(第二実施形態)〕
図2の信号灯器1の左側にある左側ユニットU2において、第一アンテナ104は、信号灯器1の筐体3に取り付けられている。そして、図15は、筐体3に第一アンテナ104が取り付けられた信号灯器1の側面図である。この第一アンテナ104は、前記第一の実施形態と同様のダイポールアンテナ104aであるが、庇30の上方で信号灯器1の筐体3に取り付けられている。この形態においても、庇30の材質は樹脂製等の誘電体であるのが好ましい。
【0082】
このダイポールアンテナ104aは、樹脂などの誘電体からなるアンテナ筐体20を介して信号灯器1の筐体3に取り付けられている。すなわち、ダイポールアンテナ104aはアンテナ筐体20に格納されていて、このアンテナ筐体20が、ネジ等の留め具(図示せず)によって、信号灯器1の筐体3に取り付けられている。なお、アンテナ筐体20は庇30にも固定されていてもよい。
図16は、庇30の上方に設けられたダイポールアンテナ104aを正面の斜め上方から見た斜視図である。なお、図16では、アンテナ筐体20を二点鎖線で示している。ダイポールアンテナ104aの基本的な構成は前記第一の実施形態(図12)と同様であるが、この第二実施形態ではダイポールアンテナ104aを湾曲させていない。
【0083】
具体的な構成を図16により説明すると、ダイポールアンテナ104aは、平坦状の樹脂板からなるアンテナ用基板116と、このアンテナ用基板116の一面側に形成されたダイポール部25、一対の平衡給電線部27a,27b及び短絡部28とを有している。平衡給電線部27a,27bは前後方向に延びて形成されていて、ダイポール部25が有しているアンテナ素子25a,25bが左右方向に延びている(左右に展開している)。短絡部28は一対の平衡給電線部27a,27bを短絡している。
さらに、アンテナ用基板116の他面側には、ストリップ線路26が形成されている。
【0084】
ダイポール部25、平衡給電線部27a,27b及び短絡部28は、アンテナ用基板116の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。また、ストリップ線路26は、アンテナ用基板16の他面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。
【0085】
そして、このアンテナ用基板116がアンテナ筐体20内に格納された状態となり、アンテナ筐体20の後部が、信号灯器1の筐体3の前面3aに固定されている(図15参照)。信号灯器1の筐体3に対するアンテナ筐体20の固定は、庇30を筐体3に固定するためのネジの留め具33(図15参照)を用いてもよい。つまり、留め具33によって、信号灯器1の筐体3に、アンテナ筐体20及び庇30を共締めしてもよい。
【0086】
アンテナ筐体20は、上下方向に偏平した形状であり、左右方向及び前後方向に比べて、上下方向に薄い直方体であり、庇30の上面30aの頂部と信号灯器1の筐体3の上端との間の上下方向の空間よりも、薄く構成されている。そして、このアンテナ筐体20内に、アンテナ用基板116は、そのアンテナ形成面が水平(投光方向に平行)となるようにして設けられている。
このダイポールアンテナ104aの給電部の構造は、前記第一の実施形態と同様の構成(図13参照)であり、説明を省略する。
【0087】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、水平偏波となり、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
【0088】
この第二の実施形態においても、ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯とすることができ、図16の左右方向の寸法A(左右直線方向の寸法)を46mm〜61mm(0.38λ〜0.5λ:λは入力される高周波信号の波長)とすることができ、前後方向の寸法Bを30mm程度(約λ/4)とすることができる。
これにより、ダイポールアンテナ104aは、庇30が存在している180°の範囲よりも狭くなっており、また、ダイポールアンテナ104aの前後方向の寸法Bも、庇30の前後方向寸法Lよりも小さくなっている。
すなわち、ダイポールアンテナ104aは、庇30の下方からの投影面の範囲で筐体3に取り付けられた構成となる。この構成によれば、信号灯器1を下から見た際に、ダイポールアンテナ104aは庇30に隠れた状態にあり、ダイポールアンテナ104aを目立たなくすることができる。
【0089】
〔第一アンテナ104について(第三実施形態)〕
図2の信号灯器1の右側にある右側ユニットU3において、第一アンテナ104は庇30の内部に格納されている。すなわち、庇30の内部に空間部Kが形成されていて、この空間部Kに第一アンテナ104が格納されている。なお、信号灯器1の筐体3は、中央ユニットU1、左側ユニットU2及び右側ユニットU3で分離可能であってもよく、分離不能の一体ものであってもよい。
【0090】
図17は、庇30に第一アンテナ104が格納された信号灯器1の側面図であり、庇30部分を断面により示している。この第三の実施形態の第一アンテナ104も、ダイポールアンテナ104aであるが、このダイポールアンテナ104aは庇30の内の上部に格納されている。
【0091】
庇30は、光学ユニット2のほぼ上半分の範囲を覆う正面視円弧形状の主庇部35と、主庇部35の上部に前記空間部Kを形成するための前壁31a、後壁31b、左右の側壁31c(図2参照)、上壁31dを有していて、主庇部35の一部(上部)が空間部Kを形成するための底壁となる。そして、これら壁で囲まれた範囲が、ダイポールアンテナ104aを収納する前記空間部Kとなる。空間部Kは、庇30の上部に形成されている。そして、庇30の上面30aは、信号灯器1の筐体3の上端よりも低く構成されている。この形態では、庇30の材質は樹脂製等の誘電体である。
【0092】
ダイポールアンテナ104aの具体的な構成は、図16に示したものと同じであり、その説明を省略する。また、このダイポールアンテナ104aの給電構造は、前記第一及び第二の実施形態と同様の構成(図13参照)であるが、図17の実施形態では、前記コネクタ17は、前記後壁31bに設けられている。これにより、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の金属製の筐体3の前に配置された構成となる。この形態では、後壁31bのみ金属製とすることができ、この場合、後壁31bと、前記ストリップ線路26a及び前記コネクタ17の内導体17a(図13(a)参照)との間は、絶縁されている必要がある。
【0093】
以上の構成により、ダイポールアンテナ104aは、信号灯器1の投光方向(つまり、前方)と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとなる。つまり、ダイポールアンテナ104aの指向性と、光学ユニット2の投光方向とを略一致させることができる。
【0094】
この第三の実施形態においても、ダイポールアンテナ104aの共振周波数を2.4GHz帯とすることができる。そして、ダイポールアンテナ104aの大きさは、前記のとおり、庇30の左右方向の幅よりも小さく、かつ、庇30の前後方向よりも小さい。したがって、前記空間部Kは、庇30の左右方向の幅よりも小さく、かつ、庇30の前後方向よりも小さい形状でよい。
また、この第三の実施形態の構造によれば、ダイポールアンテナ104aは庇30に格納されているので、当該ダイポールアンテナ104aを見えなくすることができる。また、下から見てアンテナ104aを格納する空間部Kが見えない庇30となっている。
【0095】
なお、第一アンテナ104の種類は、前記のようなダイポールアンテナ104a以外に、折り返しダイポールアンテナ等であってもよい。この場合、不平衡電流が流れにくいことからバルンを省略して、直接的に同軸ケーブルを平衡給電線部に接続してもアンテナ性能を確保し易いという利点がある。
【0096】
以上の第一アンテナ104についての第一、第二及び第三実施形態では、当該第一アンテナ104を信号灯器1の庇30に取り付ける場合を説明したが、第一アンテナ104を、この他に、信号灯器1の筐体3、若しくは、図19に示した道路に設置され信号灯器1を取り付けるための支柱40又はアーム41(取り付け体R)に、組み込ませることができる。
【0097】
そこで、第一アンテナ104を、信号灯器1の筐体3に組み込ませる場合を説明する。
〔第一アンテナ104について(第四実施形態)〕
第四の実施形態の第一アンテナ104は、パッチアンテナ104bである。このパッチアンテナ104bは、図18の右側ユニットU3に示しているように、信号灯器1の筐体3の前面3aに取り付けられていて、光学ユニット2の投光方向と同一方向の指向性を有するように構成されている。
【0098】
パッチアンテナ104bは、投光方向の前方のパッチ素子11と、パッチ素子11の後方のグランド素子12とを有している。なお、信号灯器1の筐体3が金属製である場合、この筐体3の前面3aをグランド素子12として機能させることができる。
パッチアンテナ104bの共振周波数を2.4GHz帯に設定した場合、パッチ素子11の大きさを(パッチ素子11を矩形とした場合)60mm程度とすることができる。
【0099】
そこで、このパッチ素子11を図18に示しているように、筐体3の前面の上半分の領域に取り付けている。この取り付け位置をさらに説明する。信号灯器1の筐体3の内の、中央ユニットU1の前面3d、左側ユニットU2の前面3e及び右側ユニットU3の前面3fそれぞれは、正面視ほぼ矩形であるのに対して、光学ユニット2は円形であり、庇30も正面視円弧形状である。このため、代表として右側ユニットU3について説明すると、前面3fの四隅には、前方に面した正面板部37aが形成されている。この四隅の正面板部37aの内の上二つのいずれかに、パッチアンテナ104bが設けられている。この場合、下方から信号灯器1を見ると、パッチ素子11は庇30によって隠れた状態となる。
【0100】
さらに、右側ユニットU3の前面3fにおいて、上二つの正面板部37aの内の、隣の他のユニット(中央ユニットU1)が存在している側の正面板部37aに、パッチアンテナ104を設けると(図18に示している形態)、右側ユニットU3及び中央ユニットU1の庇30によって、パッチ素子11は隠れた状態となる。
なお、筐体3の前面3aに取り付けられる第一アンテナ104は、パッチアンテナ以外であってもよく、ダイポールアンテナであってもよい。
また、各実施形態において、庇に取り付けたアンテナを、水平偏波として説明したが、垂直偏波となるように構成してもよい。さらに、各実施形態において、パッチアンテナの場合、偏波は水平偏波にこだわらず、垂直偏波、円偏波など色々な偏波のアンテナを実現することができる。
【0101】
以上の第一アンテナ104の実施形態において、当該第一アンテナ104を庇30又は筐体3に組み込む場合、例えば、第一アンテナ104としてのパッチアンテナ104bが右側ユニットU3に組み込まれていて、第二アンテナ4としてのダイポールアンテナ4(第二アンテナ)が左側ユニットU2の光学ユニット2に格納されていてもよい。すなわち、庇30等に組み込まれる第一アンテナ104、及び、光学ユニット2に格納される第二アンテナ4は、ユニットU1,U2,U3の内、異なるユニットに分かれて組み込まれていてもよい(図18)。又は、第一アンテナ104及び第二アンテナ4は、同一のユニットに組み込まれていてもよい(図示せず)。また、全てのユニットU1,U2,U3それぞれに、第一アンテナ104及び第二アンテナ4を組み込んでもよく、又は、任意のユニットに第一アンテナ104及び第二アンテナ4を適宜組み込んでもよい。
【0102】
また、図19に示しているように、第一アンテナ104を、道路に設置された支柱40又はアーム41(取り付け体R)に組み込ませる場合を説明する。
〔第一アンテナ104について(第五実施形態)〕
第五の実施形態の第一アンテナ104は、例えばパッチアンテナ104bであり、このパッチアンテナ104bは、図19の支柱40に取り付けられていて、信号灯器1の光学ユニット2の投光方向と同一方向の指向性を有するように構成されている。このパッチアンテナ104bは、図示しないが、投光方向の前方のパッチ素子と、パッチ素子11の後方のグランド素子とを有している。
また、第五の実施形態の第一アンテナ104は、支柱40ではなくアーム41に取り付けられていてもよい。さらに、第一アンテナ104は、パッチアンテナ以外であってもよく、ダイポールアンテナ等であってもよい。
【0103】
以上の各実施形態のようにして構成された第一アンテナ104及び第二アンテナ4を備えている、本発明の交通信号設備について、さらに説明する。
交通信号設備は、第一アンテナ104について、前記複数の実施形態から選択される一つを採用することができ、かつ、第二アンテナ4について、前記複数の実施形態から選択される一つを採用することができる。すなわち、選択された実施形態の第一アンテナ104は、信号灯器1の筐体3、信号灯器1の庇30、及び、信号灯器1を取り付けている支柱40又はアーム41(取り付け体R)の内の少なくとも一つに組み込まれていて、選択された実施形態の第二アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に格納されている。
【0104】
この交通信号設備によれば、第一アンテナ104及び第二アンテナ4の二つを備えていても、第二アンテナ4を信号灯器1の光学ユニット2に格納することで、当該第二アンテナ4を目立たなくすることができ、外観上煩雑となるのを抑えることができる。
また、第一アンテナ104は、第一の共振周波数(2.4GHz帯)に設定され、第二アンテナ4は第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数(720MHz帯)に設定されている。特に、第一アンテナ104と第二アンテナ4とを同じ種類のアンテナとした場合、前記のように、共振周波数が低い方のアンテナを、第二アンテナ4とすることで、当該第二アンテナ4は第一アンテナ104よりも大きくなるが、この大きい第二アンテナ4は信号灯器1の光学ユニット2に格納されるので、目立たなくなる。
さらに、第一アンテナ104が、庇30の下方からの投影面の範囲で信号灯器1に取り付けられている場合、信号灯器1を下から見た際に、当該第一アンテナ104は庇30に隠れ、当該第一アンテナ104を目立たなくすることができる。
【0105】
また、信号灯器1は、赤青黄いずれか一つの灯色を前方の道路上のある領域に対して投光するという機能を発揮させるために、当該領域に存在している車両(運転者)に対して、見通しが良い位置に設置されている。すなわち、交通用の信号灯器1は、車両の運転者による視認性を考慮して道路に設置されている。そして、このような信号灯器1の光学ユニット2に第二アンテナ4が格納され、当該第二アンテナ4は、信号灯器1の投光方向と同一方向に電波を放射する指向性アンテナである。したがって、信号灯器1の第二アンテナ4と車両の車載通信装置との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態を自然と得ることができる。
【0106】
さらに、このような信号灯器1の筐体3又は庇30に第一アンテナ104を組み込ませ、当該第一アンテナ104を、信号灯器1の投光方向と同一方向に電波を放射する指向性アンテナとした場合、信号灯器1の第一アンテナ104と、その前方にある別の路側通信装置との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態を自然と得ることができる。
このような第一アンテナ104及び第二アンテナ4によれば、これらアンテナを、路車通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、良好な通信状態が得られる。
【0107】
また、信号灯器1は、赤、黄、青の灯光色を有する光学ユニット2以外に、車両等の進行可能を意味する矢印を点灯させる光学ユニットを更に備えた矢印式信号灯器であってもよい。この矢印式信号灯器の光学ユニットも、赤、黄、青の光学ユニット2と同様に、内部に発光体(LED)及びカバー部材等を有していて、この光学ユニットに第二アンテナ4が格納されていてもよい。
【0108】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前記実施形態では、複数のアンテナに関して、共振周波数が相互で異なる場合を説明したが、複数のアンテナは、共振周波数が同一であってもよい。
この場合、複数のアンテナは、相互の距離をできるだけ離隔して配置するのが好ましい。このように、共振周波数を同一とした複数のアンテナ同士を離して配置することにより、当該複数のアンテナによってダイバシティ制御を実施することが可能となる。
【0109】
また、本発明の交通信号設備が備えている信号灯器1は、車両用以外にも、歩行者用の信号灯器であってもよい。この歩行者用信号灯器も、車両用と同様に、LEDを有する光学ユニットを有していて、この光学ユニットに第二アンテナが格納されている。この場合、無線通信の相手は、車両に搭載された車載機以外に、歩行者が携帯している携帯通信端末であってもよい。
また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 交通信号灯器
2 光学ユニット
3 筐体
4 第二アンテナ
4a パッチアンテナ
4b ダイポールアンテナ(アンテナ素子)
104 第一アンテナ
104a ダイポールアンテナ
104b パッチアンテナ
7 発光ダイオード(発光体)
8 基板
9 カバー部材
11 パッチ素子(アンテナ素子)
12 グランド素子
30 庇
39 前端
40 支柱
41 アーム
R 取り付け体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体を有し前方に投光する光学ユニット、前記光学ユニットを組み込んでいる筐体、及び、前記光学ユニットに対する太陽光の入射を制限する庇を有している交通信号灯器と、
前記交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体と、を備え、
前記筐体、前記庇及び前記取り付け体の内の少なくとも一つに、第一アンテナが組み込まれ、
前記光学ユニットに、第二アンテナが格納されていることを特徴とする交通信号設備。
【請求項2】
前記第一アンテナと前記第二アンテナとは、共振周波数が相互で異なるように構成されている請求項1に記載の交通信号設備。
【請求項3】
前記第一アンテナは、第一の共振周波数に設定され、前記第二アンテナは前記第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数に設定されている請求項1又は2に記載の交通信号設備。
【請求項4】
前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の一方は、前記道路上に存在している移動通信装置と通信するためのアンテナであり、
前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の他方は、前記道路に設置されている別の路側通信装置と通信するためのアンテナである請求項1〜3のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項5】
前記光学ユニットは、前記発光体を前方から覆うカバー部材を有し、
前記第二アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ可視光透過性を有しているアンテナ素子を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項6】
前記第二アンテナは、前記アンテナ素子としてのパッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、
前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、
前記グランド素子は、前記基板よりも前方に設けられている請求項5に記載の交通信号設備。
【請求項7】
前記第二アンテナは、前記発光体の前端よりも後方に設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項8】
前記第二アンテナは、パッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、
前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、
前記パッチ素子及び前記グランド素子は、前記発光体の前端よりも後方でかつ前記基板よりも前方に設けられている請求項7に記載の交通信号設備。
【請求項1】
発光体を有し前方に投光する光学ユニット、前記光学ユニットを組み込んでいる筐体、及び、前記光学ユニットに対する太陽光の入射を制限する庇を有している交通信号灯器と、
前記交通信号灯器を道路上の所定位置に取り付けるための取り付け体と、を備え、
前記筐体、前記庇及び前記取り付け体の内の少なくとも一つに、第一アンテナが組み込まれ、
前記光学ユニットに、第二アンテナが格納されていることを特徴とする交通信号設備。
【請求項2】
前記第一アンテナと前記第二アンテナとは、共振周波数が相互で異なるように構成されている請求項1に記載の交通信号設備。
【請求項3】
前記第一アンテナは、第一の共振周波数に設定され、前記第二アンテナは前記第一の共振周波数よりも低い第二の共振周波数に設定されている請求項1又は2に記載の交通信号設備。
【請求項4】
前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の一方は、前記道路上に存在している移動通信装置と通信するためのアンテナであり、
前記第一アンテナと前記第二アンテナとの内の他方は、前記道路に設置されている別の路側通信装置と通信するためのアンテナである請求項1〜3のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項5】
前記光学ユニットは、前記発光体を前方から覆うカバー部材を有し、
前記第二アンテナは、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ可視光透過性を有しているアンテナ素子を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項6】
前記第二アンテナは、前記アンテナ素子としてのパッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、
前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、
前記グランド素子は、前記基板よりも前方に設けられている請求項5に記載の交通信号設備。
【請求項7】
前記第二アンテナは、前記発光体の前端よりも後方に設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の交通信号設備。
【請求項8】
前記第二アンテナは、パッチ素子、及び、このパッチ素子よりも後方に設けられたグランド素子を有しているパッチアンテナであり、
前記光学ユニットは、前記発光体が前面に実装された基板を有し、
前記パッチ素子及び前記グランド素子は、前記発光体の前端よりも後方でかつ前記基板よりも前方に設けられている請求項7に記載の交通信号設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−163751(P2010−163751A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4741(P2009−4741)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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