説明

人工衛星ベースの受信機に対するSBAS支援情報を持ったAGPSサーバ

【課題】特定の地表位置から視認可能な静止衛星型衛星航法増補システム(SBAS)の情報を提供される航法受信機が、それらから視認可能なSBAS衛星の擬似乱数(PRN)信号をインテリジェントに探索、捕捉、および追跡することができるようにする。
【解決手段】人工衛星航法システム支援サーバは、クライアント位置の表示を含むクライアントの要求に応答するように構成されている。人工衛星航法システム支援サーバは、正確な位置がサーバ要求に含まれる場合には、どの特定のSBASシステムが要求中のクライアントから観測可能であるかを演算する。この場合には、その応答を、人工衛星航法システム支援サーバは、よりコンパクトな応答メッセージに対する関連情報に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星航法システムに関し、特に、特定の地表位置から視認可能な静止衛星型衛星航法増補システム(SBAS)のリストをコンパイルするための世界中の観測基準点に関し、その結果、ネットワーク・サーバからこの情報を提供される航法受信機が、それらから視認可能なSBAS衛星の擬似乱数(PRN)信号をインテリジェントに探索、捕捉、および追跡することができる。
【背景技術】
【0002】
広域補強システム(WAAS)は、全地球測位システム(GPS)を補足するために連邦航空局によって開発された航空航法支援である。そのゴールは、GPSの精度、完全性、および利用可能性を改善することである。WAASは、精密進入や他の飛行の段階に対して航空機をGPSに依存させるように計画されている。WAASは、様々な地域における地球表面のGPS衛星の送信エラーを検出するために北米およびハワイで正確に調査された地上の観測基準点のネットワークを使用する。その測定値は、地域毎に主局に転送される。偏差補正(DC)は、少なくとも5秒毎に静止WAAS衛星に補正メッセージで送られる。そして、静止WAAS衛星は、北米およびハワイに補正メッセージを放送し戻し、その結果、WAAS対応のGPS受信機は、その補正をそれらの航法位置演算に含むことができる。WAASは、欧州やアジアにはサービスを提供していない。なぜならば、静止WAAS衛星がそこからは視認可能でないからであり、得られる測定値はそこでは適用可能ではないからである。
【0003】
国際民間航空機関(ICAO)は、WAASを静止衛星型衛星航法増補システム(SBAS)として参照している。欧州およびアジアは、対応するSBAS展開(つまり、欧州の静止衛星による衛星航法補強サービス(EGNOS)、インドの自国周辺の航空管制用静止衛星(GAGAN)、および日本の運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS))を有している。商用SBASの運用は、StarFireおよびOmniSTARを含んでいる。これらは、それぞれのサービス提供エリア上に留まる静止衛星を有している。従って、地球上のどの場所も、WAAS、EGNOS、GAGAN、MSAS、および他の衛星を同時に視認することはできない。
【0004】
WAASの位置精度は、水平方向および垂直方向の測定値に対して7.6m(25フィート)よりも良好なはずである(WAAS使用時間の少なくとも95%)。試験によって、北米の殆どの地域では水平方向で1m(3フィート3インチ)および垂直方向で1.5m(4フィート11インチ)以上の良好な解精度を標準的には提供することが示されている。従って、WAASは、水平方向で16m(52フィート)および垂直方向で4m(13.1フィート)の精密進入精度が要求されるCategory Iを満足する。
【0005】
航法システムの完全性の維持は、危険を生じることがある誤解を招く恐れのあるデータが提供されている場合に、適時の警告を必要とする。WAAS仕様書は、GPSおよびWAASネットワークにおけるエラーをシステムに監視および検知させ、6.2秒以内にユーザに通知することを要求している。WAASが計器飛行方式(IFR)に対して安全であると証明するには、精度要求を超過する如何なるエラーも発見されるという証明を必要とする。具体的には、その確率は1×10−7と記述され、1年当たりで3秒未満の不良データに等しい。これは、受信機自律型完全性監視(RAIM)と等価かまたはそれよりも良い完全性情報を提供する。
【0006】
WAASのグランド(地表)・セグメントは、GPS信号についての情報を監視および収集する、正確に調査された位置を持った幾つかの広域基準局(WRS)を含んでおり、そして、それらのデータをグランド・ベースの通信網を使用して3つの広域主局(WMS)に送る。観測基準点は、WAAS静止衛星からの信号も監視し、それらに関する完全性情報を同様に提供する。2007年10月時点で38個のWRSがあった。これらのうちの20個が米国本土(CONUS)に、7個がアラスカ州に、1個がハワイ州に、1個がプエルトリコに、5個がメキシコに、そして、4個がカナダにある。
【0007】
WRSサイトからのデータは、各WMSによって使用され、高速補正セットおよび低速補正セットを生成する。高速補正は、急速に変化する誤差に対するものであり、GPS衛星の瞬間的な位置およびクロック誤差に主として関係がある。これらの補正は、ユーザ位置から独立しており、WAAS放送エリアにおける受信機によって直ちに適用されることができる。低速補正は、長期的なエフェメリスおよびクロック誤差の推定値、ならびに電離層での遅延情報に関する。遅れ補正は、WAASサービス提供エリアに亘って格子パターンで組織されたポイントに提供される。WMSはそれぞれ、スペース(宇宙)・セグメントにおける静止衛星に余剰のグランド・アップリンク・ステーション(GUS)を通じて補正メッセージを送り、ユーザ・セグメントに再放送する。
【0008】
WAASスペース・セグメントは、ユーザ・セグメントによる受信のための広域主局からの補正メッセージを放送する多数の静止通信衛星を有している。それらは各々、GPS衛星のように距離情報も放送し、位置fixに利用可能な衛星の数を有効に増加させる。元々は、スペース・セグメントは、2つの商業衛星(太平洋地域(POR)および大西洋地域西洋(AOR-W))を有していた。これらは、実際にはインマルサット3号(Inmarsat III)衛星でリースされた宇宙であり、2007年7月31日にWAAS送信を止めた。2つの新しい衛星(Galaxy 15およびAnik F1R)が2005年の終わりに打ち上げられた。Galaxy 15は、PanAmSatであり、Anik F1Rは、Telesatである。これらは、WAAS静止衛星リース・サービスに対してロッキード・マーチン社と契約したFAA(米連邦航空局)の静止衛星通信制御セグメント下のリース・サービスである。ロッキード・マーチン社は、2016年までに最大3機の衛星を提供するように契約している。Galaxy 15およびAnik F1Rからの距離データは、「精密進入」としてフラグが立てられている。
【表1】

【0009】
SBAS受信機の第1の課題は、PRNマスクを収集することである。受信機は、SBASメッセージを使用可能になる前にこれを必要とする。PRNマスクの収集には最大1分掛かることがある。PRNマスクを受信した後、SBAS受信機は、使用する適切な衛星の健康と差動GPSの補正とを決めなければならない。エフェメリスは、距離を得て、fixでSBAS衛星を含めるために必要である。しかし、エフェメリスを得ることは、衛星の健康および差動GPSの補正を得ることよりも優先順位が低い。従って、自律型SBAS受信機は、最初のfixが可能になる前に一般には利用可能なSBASデータを有さない。その最初のfixは、あまり正確ではない可能性があり、少なくともSBAS支援型の航法受信機の通常なものに及ぶことはない。
【0010】
ガリレオ(Galileo)は、欧州連合(EU)およびその欧州宇宙機関(ESA)によって構築中の全地球型衛星航法システム(GNSS)である。それは、米国の全地球測位システム(GPS)およびそれに匹敵するロシアのシステム(つまり、GLONASS)と重複する。ガリレオは、2箇所の地上オペレーション・センタ(1つがドイツのミュンヘン近郊、そして、もう1つがイタリアのローマの真東)で、2014年までに使用可能になることが期待されている。ガリレオは、GPSまたはGLONASSと広くアクセス可能であるというよりも、より正確な測定(特に、高緯度での)を利用可能にするように計画されている。ロシアおよびアメリカには両方とも信号暗号化のスイッチを入れるための軍事オプションがあるので、その政治的な目標は、欧州の国家が頼ることができる独立した測位システムを提供することである。基礎的なガリレオのサービスは、皆に無料でオープンとなることであるが、その高精度機能は、EUの軍事ユーザと商用加入者とに制限される。
【発明の開示】
【0011】
簡潔には、本発明の人工衛星航法システム支援サーバの実施形態は、クライアントの要求に応答するように構成されている。その要求は、クライアント位置の表示を含み、そして、もし正確な位置がサーバ要求に含まれる場合には、人工衛星航法システム支援サーバは、要求中のクライアントがどの特定のSBASシステムを観測可能であるかを演算し、この場合には、人工衛星航法システム支援サーバは、その応答を、よりコンパクトな応答メッセージに対する関連情報に制限する。返すことができるSBAS支援の品質は、クライアントが要求メッセージ中のそれらの位置をどれくらい正確に推定したかに依存する。非常に正確な推定値は、非常に詳細なSBAS支援の見返りがある。粗い推定値は、より大きいかまたは世界中のSBAS支援を生じる可能性があるだけである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の詳細な記述他の目的および利点は、様々な図面で図示される好ましい実施形態の次の詳述を読んだ後で、当業者にとっては疑いなく明白になるであろう。
【図1】本発明のSBASの構成、およびそのシステムの実施形態の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における、人工衛星航法システム支援サーバの機能ブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態におけるSBASの構成100を表わしている。多数のクライアント101〜104は、それらのユーザにマイクロ波信号に基づいた位置、速度、および時間情報(PVT)を提供する衛星航法受信機を備え、それらは、クライアント受信機(例えば、WAAS 111、EGNOS 112、MSAS 113、GAGAN 114、StarFire 115、OmniSTAR 116)の位置に対応する、軌道上のGPS衛星106、GLONASS衛星108、および地域のSBASシステムからそれぞれ独立して受信する。SBASシステム111〜116はすべて、米国のナブスター(Navstar)GPSおよびロシアのGLONASS航法システムからの衛星送信を追跡および解析する。欧州のガリレオ航法システムもそれが使用可能になる際には、これも含まれる。
【0014】
個々の衛星ビークル(SV)は、それらがそれらの信号を変調する特有の符号分割多元接続(CDMA)擬似乱数(PRN)コードに応じてマイクロ波受信機によって互いに一致されるかまたは異ならせられる。PRNマスク・メッセージは、GPS、GLONASS、将来のGNSS、およびSBAS衛星それら自身をすべて含む、210個の可能な擬似乱数信号(PRN)のシーケンスのリストにSBASによって提供される補正のマッピングを含んでいる。例えば、GPSのPRN1がランチされておらず、PRN2がランチされている場合、その状況に対するPRNマスクは、ビット位置−1における有効化ビットに対して0、ビット位置−2における有効化ビットに対して1を有する。
【0015】
そして、まさに最初の補正メッセージは、GPS PRN2に対応する。PRNマスクは、打ち上げられた衛星のテーブル(表)であり、どのPRNを許可するか、および、どれを受信機信号の探索から除外するかを素早く調査することができる。初期化している航法受信機にどのSVが任意の瞬間に上空にあるかについて通知することは、SVの取得にまったく時間を浪費しないことを意味している。対応するPRNだけが探索されるべきである。これは、勿論、受信機がどこにあるか且つ何時かの観点についてかなり良好な出発点を有するべきであるということを必要としている。そして、アルマナックは、どのSVかを示すための基準として有用になり、それらのPRNは、様々な時間および場所で空にあることになる。しかしながら、PRNマスクの主たる目的は、特定のGNSSの特定のPRNに対してSBASデータ・ストリーム中の個々の補正をマッピングすることである。
【0016】
対応するSBAS受信機121〜126は、SBASシステム111〜116の各々(例えば、北米、アジア、および欧州の)から地域送信を受信するために、世界中に戦略的に配置されている。SBASシステムはそれぞれ、少なくとも1機の静止衛星を有している。SBAS受信機121〜126はそれぞれ、インターネット・サーバ130にSBASデータおよび航法システム衛星データ(GPSおよびGLONASS)の両方を報告する。特定の軌道上の航行衛星が複数のSBASシステム111〜116に同時に見える可能性が非常に高いので、PRN調整プロセッサ132がデータを調和させる。SBAS静止衛星を含むすべての衛星に対する結果はすべて、衛星PRNデータベース134に格納される。
【0017】
衛星データベース134に格納された情報は、対応するSBAS送信をWAAS 111、EGNOS 112、MSAS 113、GAGAN 114、StarFire 115、またはOmniSTAR 116から直接ダウンロードしようとすることと比較して、クライアント101〜104によってその起動の際にインターネットを通じてより迅速に通常得ることができる。サーバ130は、クライアント101〜104に、適切なSBASデータを短いメッセージで、または、それが有しているすべてのSBASデータを遥かに長いメッセージで送ることができる。幾つかの状況では、クライアント101〜104は、より長いSBASメッセージを受信するのに必要なインターネット接続の帯域幅を有していないことがある。従って、クライアント101〜104がサーバ130にその粗い位置を送る場合、サーバは、PRNマスク、独立して推定された衛星の健康、差動GPS、ならびに特定のクライアントの当面のニーズに制限されたSBASエフェメリスおよびアルマナック情報を返すことができる。サーバは、各SBASシステムに対して適切なPRNマスクも送らなければならない。SBASシステムはそれぞれ、独立して維持され、任意の2つのSBASシステムは、この点に関していつも同じではない場合がある。従って、各システムに対するPRNマスクが通信されなければならない。たとえ打ち上げられたGNSS衛星間の変化が非常に希であったとしても、SBASシステムは、新しい衛星と古い衛星とをそれぞれ異なって扱うことがある。
【0018】
それが収集するデータに基づいて、衛星の位相または周波数を実際に測定することとは無関係に、サーバ130は、GPS/SBAS衛星の各々およびすべての全体的な健康情報を提供することができる。クライアント101〜104は、不健康なまたは高エラーの衛星からの信号を使用しない。サーバは、クライアントがそれぞれSBAS衛星を実際に追跡し始める前に使用することができるメッセージで、すべての衛星にDGPS補正値を提供する。これらは、SBASからローカルにデータを直接受信する前に、最初のDGPSの補正値として使用することができる。より低い精度のDGPS補正値は、概略の位置に対して使用される。クライアント101〜104が正確な位置を提供する場合には、高精度のDGPS補正値が返される。サーバ130は、クライアント101〜104によって提供される正確な位置での電離層遅れを演算する。可視のSBAS衛星のエフェメリスおよび/またはアルマナック、そして同様に、それらの対応するPRNマスク(提供された補正値にインデックスを付けるためのPRNのマップ)は、提供される推定位置に応じて提供されることができる。これは、受信機の位置が既知の場合は非常に信頼できるが、単に近似の場合はそれほど信頼できない。クライアントは、各々が最も正確で最も最近の補正値を得るために、信頼できる位置fixを得ると直ぐにサーバと迅速にネゴシエーションをすることができる。
【0019】
サーバ130は、位置誤差の標準偏差(位置シグマ)によって表わされる推定位置誤差に応じてクライアントが彼らの要求で提供するクライアント位置情報の品質に応じた各クライアントの要求に対するその応答をソートし次第に変化させる。クライアント位置の推定値が良いほど位置シグマは小さくなり、サーバ130の支援はより正確になることができる。クライアント受信機が正確な位置を有している場合、サーバ130は、観測可能なSBASシステム間で顕著に異ならせることができ、よりコンパクトなメッセージ形式を構成する単なる関連情報で応答する。
【0020】
自律型モードでは、クライアント受信機の第1の課題は、適切なPRNマスクをフェッチすることであり、従って、利用可能なSBASメッセージをその後に使用することができる。PRNマスクを収集するには最大1分掛かることがある。PRNマスクを受信した後、クライアント受信機は、使用する適切な衛星の健康および差動GPSの補正値を決めなければならない。エフェメリスは、位置fixの演算に対してSBAS衛星を測距するために必要である。
【0021】
しかし、エフェメリスを得ることは、衛星の健康および差動GPSの補正値を得るよりも優先順位が低くなければならない。この優先順位は、最も高い優先順位が完全性および補正値を提供することであるように衛星によって設定され、従って、エフェメリスは、それほど決定論的でない速度でメッセージ・ストリームを通じて循環する。自律型SBAS受信機は、最初のfixが可能になる前に、必要なSBASデータを一般には利用可能にしない。サーバ130を使用すると、クライアント101〜104の受信機は、SBAS情報を遥かに速く利用することができ、それらが各々生じる最初のfixは非常に信頼できる。
【0022】
本発明の実施形態では、最初のfixは、SBASの完全性チェックおよび補正から利益を享受し、依然として高速である。その最初のfixは、SBAS情報を待機する従来の受信機よりも速い。
【0023】
観測基準点は、それらが視界に有しているSBAS衛星をすべて追跡することができる。SBAS衛星に関して異なるのは、それらが地域的であり、良好には相互接続していないということである。対照的に、GPSは、すべてのGPS衛星によって送信される単一のアルマナックで完全性情報が得られるように提供する。SBASシステムは、地域的であるかまたは殆ど国内利用だけである。これは、幾つかのSBASシステムによって提供されるPRNマスクは調和されないので、重要な問題である。従って、クライアント受信機が追跡しているかもしれない特定のPRNを補正するために使用することができる補正メッセージの受信からの長い遅れが存在する場合がある。
【0024】
本発明の実施形態は、どのPRNが1日のうちの様々な時刻で各エリアにおいて見えるかをソートする世界中の観測基準点(WWRS)となるものを構築する。SBASシステムはそれぞれ、各衛星の特定のPRNに、送信されたDGPSおよび完全性情報の任意のインデックスをマッピングするそれ自身のPRNマスクを送信する。異なるSBASシステム(例えば、WAASおよびEGNOS)は、同じPRNに対する異なる補正インデックスを送信することができる。
【0025】
最初のステップとして、サーバ130は、与えられた位置でどのSBAS PRNを探索すべきかを伝える方法を含み、そして、与えられたSBAS PRNに対するPRNマスクを提供する(例えば、ハンドシェイク・オペレーション)。受信機は、その位置を提供し、そして、サーバは、その情報に応答する。これは著しい改善である。なぜならば、この支援なしでは、クライアントは、18個ものSBAS PRNを探索しなければならないかもしれないからである。これに代えて、SBAS衛星がそれぞれ静止衛星であるので、どのSBAS PRNが見えるか、および、どのシステムにそれらが属するかを示すために経度テーブルを使用することができる。例えば、経度の僅かな角度毎に、そのテーブルは、どのSBAS PRNが地平線よりも上にあるかを示す。
【0026】
SBAS受信機から収集したDGPS補正値および完全性は、GPS受信機に転送される。SBASは、それが高速の、低速の、さらには空間補正値、および、かなり良好な電離層モデル化を可能にする全電子数(TEC)の複雑な表面を、受信機からGPS衛星へのベクトルに応じたその表面の貫通点に基づいて提供するという点で有利である。
【0027】
SBAS観測基準点受信機121〜126はそれぞれ、単なるデータ収集局(位相を測定する必要がないもの)であることができる。SBASシステムは、見通し線(Los)、特別なおよびローカルの電離層誤差を分解するために使用される高度な二重周波数観測基準点のそのネットワークを有している。
【0028】
本発明の実施形態の1つの用途は、SBAS放送を直接受信することが不可能な屋内でのタイミングである。なぜならば、それらの放送が弱すぎるからである。
【0029】
SBAS衛星は、比較的より高いパワーを有しているが、より高速なデータ転送速度のために(500Hzのデータ変調を使用した250bpsの符号化)、2ミリ秒を超える位相の揃った状態での積分の高い感度を得ることは可能ではない。GPSは、約20ミリ秒であり、それはデータ収集に対して10dBだけ敏感である。
【0030】
主な用途は、屋内でのタイミング向けであり、eRide社のサーバは、GPS RSからのエフェメリス、さらにはSBAS RSからの完全性およびDGPS補正およびSBASエフェメリスを提供する。
【0031】
SBAS DGPSおよび完全性の大きな利点は、それが10秒以内であるということである。より小さな衛星誤差に対して、SBASは、空間DGPS補正値を提供し、より大きな誤差に対して、SBASは、SVを不健康と宣言する。これは、SBASを使用したずっと大きな完全性を意味している。屋内でのタイミングについては、高感度技術は、GPS PRNのコード位相を判断するために使用されることができるが、z-カウントおよびnavDataは判断されない。そして、サーバは、有用性に対してエフェメリスを提供し、DGPSおよび完全性に対してSBASを提供することによって、ロバストなシステムが可能になる。
【0032】
高速なスタートのための別の用途は、PRNマスクおよびSBASエフェメリスを提供するためにサーバを使用することである。現在、これには2分程度掛かり、SBASデータ・メッセージは、優先順位に基づいており、固定したメッセージ・パターンを有してはいない。PRNマスクは、低い優先順位のメッセージであり、完全性および補正値は、高い優先順位である。従って、PRNマスクおよびSBASエフェメリスを得るために必要な時間が長くなることがある。
【0033】
SBASエフェメリスの形式は、SVが楕円軌道を持つので、X,Y,Zのデカルトの二次多項式である。それは、局所的により線形なGPSのエフェメリスの長い持続性を有していない。受信機に提供される長期SBASエフェメリスは、待機時間を短くし、また、受信機がエフェメリスをセッション毎に要求する必要がないので、データ・トラフィックを低減することができる。
【0034】
PRNマスクを得ることは、補正値が任意のインデックスによって送られるので、DGPS補正値および完全性を得ることを遅らせる。従って、PRNマスクをより速く提供することは、SBASを使用してスピードアップさせることができ、その結果、SBASは、最初のfixを助けることができる。一般に、GPS衛星は、SBAS衛星が使用可能になる前にfixに対して使用可能になる。なぜならば、完全なGPSモデルは、1分に1回の希にPRNマスクを送るSBASシステムと比較して、30秒毎に送られる。
【0035】
図2は、本発明の実施形態における人工衛星航法システム支援サーバ200を表わしている。支援サーバ200は、クライアントの人工衛星航法システム受信機にアクセス可能なインターネットの存在202を備えている。それは、世界中の戦略的位置に配置される複数のSBAS基準受信機204〜209に接続し、各々は、独立したSBASシステム210〜215のうちの1つからのSBAS放送(例えば、WAAS、EGNOS、MSASおよびGAGAN)に対応し、また、該SBAS放送を受信および処理するように構成されている。SBASアキュムレータ220は、複数のSBAS基準受信機204〜209から対応するSBASメッセージを収集し、衛星ビークル(SV)の健康と、GLONASS、GPS、およびガリレオSVに対するDGPS情報と、さらには、各SBAS衛星のエフェメリスおよびアルマナックとを演算する。PRNプロセッサ222は、SVを、それらに割り当てられた擬似乱数(PRN)変調コードに応じて識別し、世界中のそれらのそれぞれの場所に対して可視のSBASシステムに応じた特定のクライアントに判読可能となるPRNマスクの上位集合を収集する。PRN調整プロセッサ224は、独立したSBASシステム210〜215間で複製される特定のPRNを調整する。補正値および健康は、僅かに相違することがある。それぞれのSBASシステムは、それらの特定の観測基準点の位置とは異なった展望を有している。PRNデータベース226は、SBASアキュムレータ220、PRNプロセッサ222、および対応するSVのPRNに応じたPRN調整プロセッサ224によって生成された情報を格納する。
【0036】
クライアント要求プロセッサ228は、SVの健康、DGPS情報、ならびにSBASエフェメリスおよびアルマナックに関して適切なSBAS情報232を必要とするインターネット上のクライアントに応答し、PRNデータベースから適切なPRNマスクを提供する。それらがそれらの現在位置230についてのアイデアを提供し、コンパクトな応答を要求する場合、サーバは、SBASエフェメリスおよびマスク情報のボリュームを、有用なものだけにすることができる。
【0037】
一般に、サーバ130および200はそれぞれ、少なくとも1つのSBASシステムを監視する少なくとも1つのSBAS観測基準点から受信したデータに基づいて任意のGPS、GLONASS、ガリレオ、およびSBAS衛星に対するDGPS補正値および健康と共にクライアント要求に応答する。さらに、それらは、世界規模のPRNマスク(例えば、送信中のSBAS衛星によって使用されるPRNによって参照される個々のPRNマスクのセット)を提供する。クライアントは、任意のSBAS PRNを探索するのに先立ち、これらのPRNマスクを使用することができる。経度によって参照されるテーブルは、どのSBAS PRNが見えるかおよび健康かをクライアントに通知するために提供される。そして、クライアントは、今後見えるSBAS衛星にそれらの探索を制限することができる。クライアントは、不健康なSBAS衛星からデータ・メッセージを得る際に時間を節約する。
【0038】
サーバ130および200は、すべてのSBASエフェメリスの上位集合をさらに提供し、その結果、如何なる衛星も位置fixにおける測距に対して素早く使用されることができる。長期SBASエフェメリスは、クライアントがエフェメリスを再収集する必要なしに測距を長期間するためにSBASを使用し、多くの場合サーバ130からエフェメリスを要求しないように含まれている。これは、受信信号がデータを得るには弱過ぎるが、コード位相を識別するためには十分に強い場合にも役に立つ。
【0039】
送られたSBASおよびGNSS情報の量は、クライアントが位置および誤差の推定値を提供する場合に、最小限にすることができる。そして、サーバ130または200は、経度の範囲(LongMin,LongMax)を演算することができ、そのような経度範囲内の可視の衛星に対する適切なSBASおよびGNSS情報、それぞれの衛星のDGPS補正値および健康、健康な衛星に対するエフェメリス、およびその経度の範囲で可視の各SBASまたはGNSS PRNに対するPRNマスクの上位集合を送る。一般に、補正値は、短期の値(10〜30秒など)であるが、一方で、PRNマスクおよびエフェメリスは、より長期間の値(PRNマスクは衛星の打上げレートにより変化し、エフェメリスは約15分間有効である)である。弱い信号の状態では、SBASコード位相だけが利用可能であり(受信したSNRが信頼できる復号レベル以下である場合)、または、SBAS信号がまったく利用可能でない場合、クライアント受信機は、連続的に最新の健康および補正値を要求することによって高精度および完全性を今まで通り維持することができるが、エフェメリスをより長い時間再使用することができる。
【0040】
クライアントは、探索中に消費される電力を節約し、可視のSBAS PRNだけを探索することによって捕捉時間を短縮することができる。SBASを追跡することができない最初のfixおよび連続的なfixは、SBAS DGPSおよび完全性から常に導出されるので、完全性は改善される。
【0041】
DGPS補正値を判断するときにはいつでも、サーバ130または200は、どのSBASシステムが特定のSVのより良好なサービス提供範囲を有しているかを判断し、そのSBASシステムに基づいてDGPS補正値を優先的に提供する。どのSBASシステムを電離層モデルに使用するかは、90°に最も近い、電離層の貫通点に対する傾斜角を持つものに依存する(例えば、ユーザ位置が電離層マップの中心にある)。すべての最新のSBAS情報のフィード・フォワードは、要求されたときに提供され、それは、クライアント受信機がDGPSおよび完全性を得るために、それがSBAS衛星によって提供される付加的な測距を必要としない場合に、SBAS衛星をまったく追跡する必要がないかも知れないことを意味している。
【0042】
システム間には、任意の潜在的な健康またはDGPS補正値の差を調整する必要性があるかもしれない。例えば、電離層モデルは、WAASのSVを使用する場合に、米国ではより正確である。同じPRNに対する別の電離層モデルは、例えばEGNOSからのものである場合がある。マスタDGPS補正では、米国のシステム(つまり、WAAS)は、ユーザ位置がより近い場合に、好まれるだろう。
【0043】
本発明は、現在のところ好ましい実施形態の点から記述されたが、本開示が、限定するものと解釈されるべきでないことが理解される。様々な変更および修正が、疑いなく、上記の開示を読んだ後で当業者に明白となる。従って、添付した特許請求の範囲が本発明の範囲内に該当するような変更および修正をすべて包含すると解釈されることを意図している。
【符号の説明】
【0044】
100−SBASの構成
101〜104−クライアント
106−GPS衛星
108−GLONASS衛星
111,210−WAAS
112,211−EGNOS
113,212−MSAS
114,213−GAGAN
115,214−StarFire
116,215−OmniSTAR
121〜126,204〜209−SBAS受信機
130,200−インターネット・サーバ
132,224−PRN調整プロセッサ
134,226−衛星PRNデータベース
202−インターネット
220−SBASアキュムレータ
222−PRNプロセッサ
228−クライアント要求プロセッサ
230−現在位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともWAAS、EGNOS、MSAS、およびGAGAN SBASシステムから対応するSBASメッセージを受信する、世界中の戦略的位置用の複数のSBAS基準受信機を備えた支援型人工衛星航法システムにおいて、
前記複数のSBAS基準受信機から対応するSBASメッセージを収集し、世界の異なる箇所に対する衛星ビークル(SV)の健康、DGPS情報、SBASエフェメリスおよびアルマナック、ならびにPRNマスクを演算する人工衛星航法システム支援サーバと、
独立したSBASシステム間で複製される特定のPRNを調整するPRN調整処理と、
それらのPRNに応じた前記複数のSBAS基準受信機から収集した前記SBASメッセージを格納するPRNデータベースとを備え、
前記人工衛星航法システム支援サーバは、クライアント位置の表示を含むクライアント要求に応答するように構成され、正確な位置がサーバ要求に含まれる場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、どの特定のSBASシステムが要求中のクライアントから観測可能であるかを演算し、この場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、その応答を、よりコンパクトな応答メッセージに対する関連情報に制限することを特徴とする支援型人工衛星航法システム。
【請求項2】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、少なくとも1つのSBASシステムを監視する少なくとも1つのSBAS観測基準点から受信したデータに基づいて、任意のGPS、GLONASS、ガリレオ、およびSBAS衛星に対するDGPS補正値および健康と共にクライアント要求に応答し、送信中のSBAS衛星によって使用されるPRNによって参照される世界規模のPRNマスクを提供し、その結果、クライアントは、任意のSBAS PRNの探索に先立ち、これらのPRNマスクを使用することができ、経度による基準テーブルは、どのSBAS PRNが可視で健康かをクライアントに通知するために設けられ、その結果、クライアントは、可視のSBAS衛星にそれらの探索を制限することができ、また、クライアントは、不健康なSBAS衛星からデータ・メッセージを得る時間を節約する請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項3】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、すべてのSBASエフェメリスの上位集合を提供し、その結果、任意の衛星が位置fixにおける測距に対して素早く使用されることができ、長期SBASエフェメリスは、受信信号がデータを得るには弱過ぎるが、コード位相を識別するために十分に強い場合に、クライアントがより長い測距有用性時間に対してSBASを使用することを助けるように含まれている請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項4】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、クライアントが位置および誤差の推定値を提供した場合に、送られたSBASおよびGNSS情報の量を最小限にすることができるように構成され、経度の範囲が演算され、適切なSBASおよびGNSS情報が、それぞれのクライアントに、そのような経度範囲内の可視の衛星、それぞれの衛星のDGPS補正値および健康、健康なSBAS衛星に対するエフェメリス、および前記経度範囲で可視の各SBASまたはGNSS PRNに対するPRNマスクの上位集合に対して送られる請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項5】
クライアントは、それによって、探索中に消費される電力を節約することができ、可視のSBAS PRNだけを探索することによって捕捉時間を低減することができる請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項6】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、DGPS補正値を判断する際に、特定のSVのより良好なサービス提供エリアを有したSBASシステムが選択され、そのSBASシステムに基づいてDGPS補正値を優先的に提供する請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項7】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、どのSBASシステムを電離層モデルに使用するかを判断する際に、電離層の貫通点に対する傾斜角度が90°に最も近いものを支持し、すべての現在のSBAS情報のフィード・フォワードが、要求の際に提供される請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項8】
前記人工衛星航法システム支援サーバは、SBASシステム間で検知される健康およびDGPS補正値の差を調整する請求項1記載の支援型人工衛星航法システム。
【請求項9】
クライアント位置の表示を含むクライアント要求に応答するように構成された人工衛星航法システム支援サーバであって、
正確な位置がサーバ要求に含まれる場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、どの特定のSBASシステムが要求中のクライアントから観測可能であるかを演算し、この場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、その応答を、よりコンパクトな応答メッセージに対する関連情報に制限する人工衛星航法システム支援サーバ。
【請求項10】
人工衛星航法システム支援サーバであって、
クライアントの人工衛星航法システム受信機にアクセス可能なインターネットの存在と、
世界中の戦略的位置に対する複数のSBAS基準受信機であって、その各々が、独立したWAAS、EGNOS、MSAS、およびGAGAN SBASシステムのうちの1つからのSBAS放送を受信および処理するように対応および構成されていることと、
前記複数のSBAS基準受信機から対応するSBASメッセージを収集し、GNSS衛星ビークル(SV)の健康、DGPS情報、SBASエフェメリスおよびアルマナックを演算するSBASアキュムレータと、
それらの割り当てられた擬似乱数(PRN)変調コードに応じて前記SVを識別し、世界中のそれらのそれぞれの場所から可視のSBAS衛星に応じた特定のクライアントに対する適切なPRNマスクを転送するPRNプロセッサと、
対応するSVのPRNに応じて、前記SBASアキュムレータおよび前記PRNプロセッサによって生成された情報を格納するPRNデータベースと、
それらの現在位置についての少なくとも一般的なアイデアを誰が供給するか、ならびに、SVの健康と、DGPS情報と、SBASエフェメリスおよびアルマナックとに関して適切なGNSS情報を必要とすることを、インターネット上のクライアントに応答し、前記PRNデータベースからの適切なPRNマスクを提供するクライアント要求プロセッサとを備え、
前記人工衛星航法システム支援サーバは、クライアント位置の表示を含むクライアント要求に応答するように構成され、正確な位置がサーバ要求に含まれる場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、どの特定のSBASシステムが要求中のクライアントから観測可能であるかを演算し、この場合には、前記人工衛星航法システム支援サーバは、その応答を、よりコンパクトな応答メッセージに対する関連情報に制限する人工衛星航法システム支援サーバ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−44576(P2013−44576A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181008(P2011−181008)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【出願人】(501396026)イーライド,インク. (10)
【氏名又は名称原語表記】eRide,Inc.
【住所又は居所原語表記】One Letterman Drive,Bldg.C,Suite 310 The Presidio of San Francisco San Francisco,CA USA
【Fターム(参考)】