説明

人物識別情報対応付けシステム及びプログラム

【課題】同一人物に係る複数の人体画像に対して当該人物の識別情報として異なる識別情報が付された状況において、当該人物に係る複数の人体画像を取り扱う際の利便性を向上させる。
【解決手段】連携管理システム20では、画像比較部23が、施設側システム側から受信した生前画像のデータと死後画像のデータが記憶されたデータ記憶部22から、比較する生前画像のデータと死後画像のデータを読み出して取得し、これらの人体画像が同一人物のものであるかを判別する。画像比較部23により同一人物のものであると判別された場合には、対応管理部24が、比較した生前画像と死後画像の人物を一意に識別する統一IDを発行し、当該発行した統一IDに当該生前画像に付された人物IDと当該死後画像に付された人物IDとを対応付けた対応付けデータを生成して記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物識別情報対応付けシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ断層撮影法(CT;Computed Tomography)や磁気共鳴画像法(MRI;Magnetic Resonance Imaging)等の手法により人体を撮影して得られた画像(所謂、医用画像)を扱う読影システムが知られている。読影システムは、例えば、病院等の施設に設けられ、読影医が人体画像を読影して読影レポートを作成する際に用いられる。
また、近年では、死亡後に撮影された人体画像に基づいてその人物の死因を究明する死亡時画像診断(Ai;Autopsy imaging)に読影システムを用いることが考えられている。
【0003】
読影システムに関連する技術として、以下のような技術が提案されている。
例えば、患者を撮影した医用画像の画像情報と撮影対象である前記患者を特定可能な患者情報と当該患者の検査関連情報、電子カルテ情報、読影レポート情報のうち少なくともいずれか1つを含む画像関連情報とを相互に対応付けて記憶する記憶手段と、比較用画像と読影対象画像とを比較することにより医用画像の読影を行う読影用の端末装置と、前記記憶手段に記憶された画像情報の中から前記患者情報又は前記画像関連情報のうち少なくともいずれか一方に基づいて、前記比較用画像の画像情報を抽出する画像抽出手段と、を備え、前記読影用の端末装置は、少なくとも前記画像抽出手段によって抽出された前記比較用画像と、読影対象画像とを表示させる表示部を備えていることを特徴とする医用画像読影システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−307290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
読影システムでは、一般に、そのシステム独自の人物ID(人物の識別情報)を当該人物に係る人体の画像に付して管理することが行われている。このため、同一人物が同じ施設で複数回撮影された場合には、通常、それぞれの人体画像には同一の人物IDが付されることになる。
【0006】
一方、或る人物が異なる施設で撮影された場合(例えば、生存時と死亡後にそれぞれ異なる施設で撮影された場合)は、当該人物に係る人体画像に対して各施設の読影システムに応じた人物ID(システム毎に異なる人物ID)が付されることになる。
また、或る人物が生存時と死亡後に同じ施設で撮影された場合であっても、生存時に撮影された人体画像と死亡後に撮影された人体画像とで異なる人物IDを用いる運用が行われる場合がある。この場合には、同一人物に係る人体画像であるにも関わらず、システム上は同一人物として管理されない。
【0007】
このような状況下では、同一人物について異なる人物IDが付された複数の人体画像を取り扱うに際して、例えば、各画像が同一人物のものであるかは利用者の判断に委ねられる、利用者は同一人物に係る複数の人物IDを把握しておく必要がある、等の不都合が生ずる。また、人体画像に付された人物IDを変更すれば、システム上同一人物として扱うことは可能だが、データの完全性という点で問題が残る。
【0008】
本発明は、上記従来の事情に鑑み、同一人物に係る複数の人体画像に対して当該人物の識別情報として異なる識別情報が付された状況において、当該人物に係る複数の人体画像を取り扱う際の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、人物の識別情報が付された人体の画像を記憶する1つ又は複数の人体画像記憶システムについて設けられ、前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像に付された人物の識別情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された人物の識別情報であって同一人物についての識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする人物識別情報対応付けシステムである。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、前記取得手段は、前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像を取得して、当該人体の画像に付された人物の識別情報を取得し、前記人物識別情報対応付けシステムは、前記取得手段により取得された複数の人体の画像に基づいて、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する判別手段を備え、前記記憶手段は、前記判別手段により同一人物のものであると判別された複数の人体の画像のそれぞれに付された人物の識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、人体の画像として人体の断面の画像が用いられ、前記判別手段は、人体の断面の画像同士を利用した比較を行い、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、人体の画像に基づいて測定された当該人体の各部位の測定結果を蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段に蓄積された複数の人体の各部位の測定結果に基づいて、測定結果が所定の誤差範囲に収まらない部位を特定する特定手段と、を備え、前記判別手段は、前記特定手段により特定された部位の画像部分同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、人体の画像を予め定められた方向の走査線に沿って走査し、走査線毎に、画素値の変化が閾値以上となる特徴点を抽出し、当該抽出された特徴点の位置を表す位置ベクトルと当該特徴点以降の画素値の情報とを対応付けしたベクトルデータを生成するベクトル化手段を備え、前記判別手段は、人体の画像をもとに前記ベクトル化手段により生成されたベクトルデータ同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、前記判別手段は、人体の画像について抽出される特徴点の位置に基づいて、複数の人体の画像を位置合わせし、当該位置合わせ後の人体の画像同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、前記判別手段は、位置合わせ後の複数の人体の画像を重ね合わせて表示する手段と、重ね合わせて表示した複数の人体の画像の画像が同一人物のものであるか否かの入力を利用者から受け付ける手段と、を有する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の本発明は、請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、前記判別手段は、生存時に撮影された人体の画像と死亡後に撮影された人体の画像に基づいて、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の本発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステムにおいて、前記記憶手段の記憶内容に基づいて、同一人物について生存時に撮影された人体の画像と死亡後に撮影された人体の画像とを対応付ける表示を出力する出力手段を備えた、ことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の本発明は、人物の識別情報が付された人体の画像を記憶する1つ又は複数の人体画像記憶システムについて設けられる人物識別情報対応付けシステムのコンピュータに、前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像に付された人物の識別情報を取得する取得機能と、前記取得機能により取得された人物の識別情報であって同一人物についての識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する記憶機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、10に記載の本発明によると、同一人物に係る複数の人体画像に対して当該人物の識別情報として異なる識別情報が付された状況において、当該人物に係る複数の人体画像を取り扱う際の利便性を向上させることができる。
【0020】
請求項2に記載の本発明によると、同一人物のものであると判別された複数の人体画像を対応付けて扱えるようになる。
【0021】
請求項3に記載の本発明によると、複数の人体画像が同一人物のものであるかの判別を効率的に行える。また、利用者の主観を排除した判別を行える。
【0022】
請求項4に記載の本発明によると、複数の人体画像が同一人物のものであるかの判別に係る処理負担を低減することができる。
【0023】
請求項5に記載の本発明によると、複数の人体画像が同一人物のものであるかの判別に際して行う画像処理を効率的に行える。
【0024】
請求項6に記載の本発明によると、人体画像同士を比較し易くなり、複数の人体画像が同一人物のものであるかの判別を効率的に行える。
【0025】
請求項7に記載の本発明によると、人体画像同士の一致部分や相違部分を特定し易くなり、複数の人体画像が同一人物のものであるかの判別を効率的に行える。
【0026】
請求項8に記載の本発明によると、同一人物について生存時に撮影された人体画像と死亡後に撮影された人体画像とを対応付けて扱えるようになる。
【0027】
請求項9に記載の本発明によると、同一人物について生存時に撮影された人体画像と死亡後に撮影された人体画像との対応を利用者が容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るAiシステムの構成の概要を例示する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおける施設側システムの構成を例 示する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおける連携管理システムの構成を 例示する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るAiシステムの各システムを実現するコンピュー タのハードウェアを例示する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおける送信用データのデータ構造 を例示する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおける対応付けデータのデータ構 成を例示する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおけるリスト表示画面を例示する 図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るAiシステムにおける対応付け処理のフローを例 示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るAiシステムの構成の概要を例示してある。
本例のAiシステムは、CTやMRI等により人体を撮影する設備を備えた病院等の施設に設けられた複数の施設側システム10と、施設側システム10のそれぞれに設けられた読影システムで処理される人体画像を共有化するための連携管理システム20(人物識別情報対応付けシステムの一例)とを有し、互いにネットワークを介して通信可能に構成されている。
【0030】
本例のAiシステムでは、同一人物について、生存時に撮影された人体画像と、死亡後に撮影された人体画像と、これらの人体画像に付随する情報(検査情報など)とを一元管理できるようにする。そして、これらの人体画像及び情報を取り扱う際の利便性を向上させて、Aiの精度向上・効率化・誤判断の防止、読影医の負担軽減、Aiデータの有効活用などを図る。
以下では、生存時に撮影された人体画像を生前画像と呼び、死亡後に撮影された人体画像を死後画像と呼び、これらの人体画像に付随する情報を付随情報と呼ぶ。
【0031】
本例のAiシステムは、概略的に、以下のような処理を行う。
生前画像と死後画像が同一人物のものであるかの判別を自動で行う。そして、同一人物に係る2種類の人体画像(生前画像と死後画像)を取り扱う際の利便性を向上させるために、当該人物についてAiシステムでユニークな統一ID(統一的な識別情報)を採番する。統一IDは、例えば、日付や施設コード(医療機関コード)などを元に作成してデータベース等で管理し、必要に応じて、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)内のタグに埋め込む。若しくは、データの完全性を保証するため、DICOMのタグの中ではなく、別途データベース等で統一IDを管理する。また、Aiは個人情報保護法の範囲外であるが、扱いには生者と同等のセキュリティを担保することが求められるため、患者名などの匿名化を行う。匿名化を行う場合には、匿名化前の状態をデータベース等で管理する。
【0032】
また、特定のシステム同士のみの連携ではなく、様々なシステムを柔軟に連携し、利用者からは一元的なアクセスにて各システムを利用できるようにする。人体画像を収集するシステムは、ファイルアップロードシステム、専用に開発されたDICOMゲートウェイ、既存のPACS(Picture Archiving and Communication Systems)環境などの種々の環境から受け付けられるようにする。なお、管理作業は全て連携管理システム20側で行う。
【0033】
また、施設(読影システム)によって患者情報等に記録する項目に差異があることを考慮して、各施設の読影システムから出力されたデータをWeb上で一元的に参照可能なように変換する機能を設ける。また、データ連携が不可である場合もあるため、ある程度の情報を共通項目としてWeb上で入力する機能を設ける。入力されたデータは、連携するPACS上で表示が可能なように変換する。なお、連携するPACS側でデータの取り込みが難しい場合もあるため、Web上での表示を行えるようにする。
【0034】
例えば、施設側システム10では、読影医に読影を依頼する際に、汎用的な形式で出力されたデータをまとめ、アップロードするファイルを形成する。また、上述したような、データをWeb上で一元的に参照可能なように変換する機能や、ある程度の情報を共通項目としてWeb上で入力する機能を設ける。人体画像のアップロードの実行指示は、ドラッグ&ドロップ方式などの直感的な操作により行えるようにする。なお、人体画像の送受信を伴うため、データ転送速度が速いことが好ましい。
【0035】
また、読影医による読影レポートの作成の支援に関して、生前画像と死後画像を1つの表示画面上で表示できるようにし、その付随情報(検査情報など)も一患者として確認できるようにする。読影レポートを作成する機能は、それぞれの読影システムに付属の機能を使用するが、Ai専用のテンプレートを設定し、どの読影システムであっても同じ書式のレポートを作成できるようにする。作成内容は、それぞれの読影システム及び連携管理システム20のデータベースに格納する。また、読影は、2読体制(2人の読影医による読影体制)を基本としており、Web管理画面上で管理者が読影依頼を他の読影医に送信する機能を設ける。
【0036】
上述したAiシステムの主要部に関する構成例について、以下に説明する。
図2には、Aiシステムにおける施設側システム10の構成を例示してあり、図3には、Aiシステムにおける連携管理システム20の構成を例示してある。また、図4には、施設側システム10及び連携管理システム20の各システムを実現するコンピュータのハードウェアを例示してある。
【0037】
本例のコンピュータは、図4に示すように、種々の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)31、CPU31の作業領域となるRAM(Random Access Memory)32や基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)33等の主記憶装置、種々のデータ(各システムの機能に関するプログラムや当該機能の実行に際して用いられるデータ等)を記憶するHDD(Hard Disk Drive)34等の補助記憶装置、種々の情報を表示出力するための表示装置及び利用者により入力操作に用いられる入力機器(キーボードやマウス等)とのインターフェースである入出力I/F35、他の装置又はシステムとの間で有線又は無線により通信を行うインターフェースである通信I/F36、等のハードウェア資源を有している。
そして、各システムの機能に関するプログラムをHDD34から読み出してRAM32に展開し、これをCPU31により実行させることで、各システムの機能をコンピュータ上に実現している。
【0038】
なお、施設側システム10及び連携管理システム20の各システムは、それぞれ、1台のコンピュータにより実現してもよく、複数台のコンピュータの協働により実現してもよい。また、各システムの機能に関するプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶した外部記憶媒体から読み込む形式や、通信回線等を介して受信する形式などにより、当該プログラムを実行するコンピュータに設定される。また、本例のようにソフトウェア構成により各システムの機能を実現する態様の他、各システムの機能を専用のハードウェアモジュールで実現してもよい。
【0039】
本例の各施設側システム10は、図2に示すように、それぞれ、読影システム11と、当該読影システム11に対して付加的に設けられたデータ送信部12及び外部呼出受付部13と、を備えている。
読影システム11は、人体画像(及びその付随情報)の表示画面を出力する情報表示機能、読影レポートの作成画面を出力して当該作成画面に対する操作入力に応じて読影レポートを作成するレポート作成機能を有している。
読影システム11で取り扱われるデータ(人体画像、付随情報、読影レポート等のデータ)は、当該読影システム11に設けられたデータベースに記憶される。また、各データには、そのデータが対象とする人物の識別情報である人物IDが付されている。本例では、データ内部の所定領域に人物IDを格納している。
例えば、付随情報の一例である患者情報は、施設側システム10の利用者(例えば、担当医)により入力されて、当該患者情報の対象となった患者の人物IDが付されてデータベースに格納される。
【0040】
データ送信部12は、読影システム11のデータベースに記憶されている人体画像(及びその付随情報)のデータを連携管理システム20へ送信する。本例では、施設側システム10の利用者から送信指示を受け付けたことに応じて、送信対象のデータに圧縮処理を施して送信用データを作成し、連携管理システム20へ送信する。図5には、送信用データのデータ構造を例示してある。本例の送信用データは、最上位のフォルダであるルートフォルダの配下に、死後画像のデータが格納されるAiフォルダ、生前画像のデータが格納されるSeizenフォルダ、付随情報のデータが格納されるInfoフォルダ、を設けた構造の圧縮ファイルである。
外部呼出受付部13は、連携管理システム20側から読影システム11の情報表示機能やレポート作成機能の呼び出しを受け付け、該当する機能に関する情報を呼び出し元である連携管理システム20側へ送信する。
【0041】
施設側システム10と連携管理システム20との情報のやり取りは、FTP(File
Transfer Protocol)、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、XML(Extensible Markup Language)等を用いた通信により行われる。
【0042】
本例の連携管理システム20は、図3に示すように、データ受信部21と、データ記憶部22と、画像比較部23と、対応管理部24と、対応表示部25と、匿名化処理部26と、を備えている。
データ受信部21は、それぞれの施設側システム10から送信された人体画像(及びその付随情報)のデータを受信して、データ記憶部22に記憶させる。本例では、図5に示したデータ構造の送信用データを受信したことに応じて、当該送信用データに伸張処理を施して、当該送信用データに含まれる人体画像(及びその付随情報)のデータを抽出し、当該送信用データの送信元の施設側システム10を示す施設IDに対応付けてデータ記憶部22に記憶させる。
【0043】
データ記憶部22には、生前画像、死後画像、付随情報の各データについて異なる格納領域が設定されており、Aiフォルダから抽出された死後画像のデータは死後画像用の格納領域に格納され、Seizenフォルダから抽出された生前画像のデータは生前画像用の格納領域に格納され、Infoフォルダから抽出された付随情報のデータは付随情報用の格納領域に格納される。本例のデータ記憶部22は、データベースにより構成されている。
【0044】
画像比較部23は、データ記憶部22から生前画像のデータと死後画像のデータを読み出し、これらの画像(生前画像と死後画像)を比較して同一人物のものであるかを判別する。なお、比較する生前画像と死後画像の組み合わせは、施設側システム10(読影システム11)側の利用者から指定されてもよく、連携管理システム20にネットワーク接続された利用者端末の利用者から指定されてもよく、予め定められた抽出条件により自動的に指定されてもよい。
生前画像と死後画像が同一人物のものであるか否かについて、人間により手を加えられた画像部分を除いて判別するためには、2つの画像データを比較する方法が好ましい。
ここで、本例の画像比較部23は、異なるIDを付された生前画像と死後画像が同一人物のものであるかを利用者に判別させる機能と、コンピュータにより自動的に判別する機能とを有しており、基本的には利用者に判別させるように構成されている。
利用者による判別に際しては、比較する生前画像と死後画像の表示画面を表示装置により出力し、これらの画像が同一人物のものであるか否かの入力を利用者から受け付ける。
なお、画像比較部23による処理の詳細については後述する。
【0045】
対応管理部24は、画像比較部23により同一人物のものであると判別された生前画像と死後画像を対応付ける対応付けデータを記憶する。本例では、対象の人物についての統一IDを発行すると共に、当該人物の生前画像に付された人物ID及び当該人物の生前画像の送信元を示す施設IDと対応付ける対応付けデータを生成し、また、当該人物の死後画像に付された人物ID及び当該人物の死後画像の送信元を示す施設IDと対応付ける対応付けデータを生成する。
【0046】
図6には、対応付けデータのデータ構成を例示してある。本例の対応付けデータは、人物を一意に識別する統一IDに対し、当該人物の人体画像(生前画像又は死後画像)に付された人物IDとその画像の送信元を示す施設ID(その人物IDを付した施設側システム10を示す施設ID)とを組にして対応付けた構成となっている。図6の例では、1つの統一IDに対し、生前画像に係る施設ID及び人物IDの組と、死後画像に係る施設ID及び人物IDの組とを対応付けてある。
【0047】
対応表示部25は、対応管理部24の対応付けデータに基づいて、同一人物に係る生前画像と死後画像とを対応付ける表示を出力する。本例では、Webブラウザで閲覧可能な表示形式を用い、連携管理システム20にネットワーク接続された利用者端末(例えば、パーソナルコンピュータ)のWebブラウザにより閲覧できるよう構成されている。
【0048】
図7には、同一人物に係る生前画像と死後画像とを対応付ける表示の一例であるリスト表示画面を例示してある。本例のリスト表示画面は、統一IDにより特定される人物毎に、死後画像の表示画面へ遷移する指示を受け付ける死後画像表示指示受付部41、生前画像の表示画面へ遷移する指示を受け付ける生前画像表示指示受付部42、付随画像の表示画面へ遷移する指示を受け付ける付随情報表示指示受付部43、読影レポートの作成画面へ遷移する指示を受け付ける読影レポート作成指示受付部44、を有している。
【0049】
本例のリスト表示画面において、指示受付部41〜44に対する指示操作を受け付けた場合には、その統一IDに対応付けられている施設ID及び人物IDの組に基づいて、該当する機能(情報表示機能又はレポート作成機能)の呼び出し指示が施設側システム10の読影システム11の外部呼出受付部13へ送信され、その応答として受信された情報に基づく画面(人体画像等の表示画面又は読影レポートの作成画面)が出力される。
このように、本例では、連携管理システム20にネットワーク接続された利用者端末から、Webブラウザを用いた一元的なアクセスにより、施設側システム10の読影システム11側の機能を利用できるようにしてある。
なお、指示受付部41〜43のいずれかに対する指示操作に応じて、生前画像及び死後画像及び付随情報を一括して提示する表示画面を出力するようにしてもよい。また、図7のリスト表示画面は一例に過ぎず、他の表示形態により同一人物に係る生前画像と死後画像とを対応付ける表示を行ってもよい。
【0050】
匿名化処理部26は、データ記憶部22に記憶される人体画像やその付随情報について、そのデータに患者名などの個人情報が付されている場合に、当該個人情報の匿名化を行う。個人情報の匿名化は、例えば、個人情報を削除する、個人情報を予め定められた変換規則で変換する、等の種々の手法により行うことができる。なお、匿名化前の状態は、別途設けられたデータベースで管理している。匿名化を行うタイミングは、同一人物に係る判別及び対応付けを行う前でも後でもよいが、データの完全性等を考慮すれば、匿名化を行った後に同一人物に係る判別及び対応付けを行う方が好ましい。
【0051】
図8には、本例のAiシステムにおける対応付け処理のフローを例示してある。
画像比較部23は、施設側システム10(読影システム11)側から受信した生前画像のデータと死後画像のデータが記憶されたデータ記憶部22から、比較する生前画像のデータと死後画像のデータを読み出して取得し(ステップS11)、これらの人体画像が同一人物のものであるかを判別する(ステップS12)。
ステップS12において、同一人物のものでないと判別された場合には処理を終了し、一方、同一人物のものであると判別された場合には対応管理部24が以下の処理を行う(ステップS13)。
対応管理部24は、比較した生前画像と死後画像の人物を一意に識別する統一IDを発行し(ステップS14)、当該発行した統一IDに当該生前画像に付された人物IDと当該死後画像に付された人物IDとを対応付けた対応付けデータを生成して記憶する(ステップS15)。
【0052】
次に、画像比較部23による処理について更に説明する。
以下では、比較する生前画像及び死後画像として、それぞれ、複数枚の断面画像からなるCT画像を用いる場合について説明する。
本例の画像比較部23では、全ての断面画像を用いて再現される立体像同士を比較するのではなく、一部(1枚又は複数枚)の断面画像から人体の特定部位の特徴(例えば、脊椎の骨条件)をそれぞれ抽出して比較することで、処理負担の軽減を図っている。なお、断面画像そのものを比較するほか、断面画像をもとに生成されたデータを用いて比較する構成としてもよい。
【0053】
一例として、画像比較部23では、以下のような処理を行う。
画像比較部23は、前処理として、生前画像及び死後画像のそれぞれについて、比較する特定部位が映された断面画像を予め定められた方向の走査線に沿って走査し、走査線毎に、明度・彩度・色相等の画素値が急激に変化する点(画素値の変化が閾値以上となる点)を特徴点として抽出し、当該特徴点の位置を表す位置ベクトルと当該特徴点以降の画素値の情報(次の特徴点までの画素値の情報)とを対応付けしてベクトル圧縮データを生成する。このようなベクトル化処理を施したデータを用いれば、後述する位置合わせ等に係る画像処理を効率的に行える。
なお、ベクトル圧縮データの生成は他の処理部で行うようにしてもよく、位置合わせ等に係る画像処理を行う前までに行われていればよく、例えば、データ受信部21による人体画像の受信時にベクトル圧縮データを生成しておくようにしてもよい。
【0054】
画像比較部23は、生前画像に係る断面画像のベクトル圧縮データによって特定される特徴点の位置と死後画像に係る断面画像のベクトル圧縮データによって特定される特徴点の位置とに基づいて各画像(生前画像に係る断面画像と死後画像に係る断面画像)の位置合わせを行い、位置合わせ後の各画像を重ね合わせて表示装置により表示する。位置合わせは、例えば、それぞれの画像に含まれる複数の特徴点の位置関係が所定の誤差範囲に収まるように平行移動、回転、拡大/縮小などの画像処理を施すことで行われる。利用者は、重ね表示の内容に基づいて(例えば、各画像の重なり具合や相違部分の有無などを考慮して)、これらの画像が同一人物のものであるか否かを判別し、判別結果を入力する。なお、位置合わせ後の各画像を重ね合わせて表示する構成に代えて、これらの画像を対比して(上下又は左右に並べて)表示するようにしてもよい。
【0055】
また、コンピュータにより自動的に判別する場合には、画像比較部23は、例えば、位置合わせ後の各画像における複数の特徴点の位置関係の類似度を予め定められた算出規則に基づいて算出し、当該算出した類似度が基準値を上回る場合に、これらの画像が同一人物のものであると判別する。
【0056】
また、複数枚の断面画像を用いて作成される3Dイメージに基づいて、3次元において生前画像と死後画像を比較してもよい。この場合にも、上述したベクトル圧縮データを用いてもよい。
例えば、生前画像と死後画像に係るそれぞれのCT画像(断面画像)をもとに2つの3Dイメージを生成し、生成した2つの3Dイメージを利用して同一人物のものであるかの判別を行う。比較の際には、3Dイメージ上で特徴点を作成した後に、上述したように位置合わせ及びサイズ変換(平行移動、回転、拡大/縮小など)を行って重なり具合等によって判定する、などの方法が考えられる。
【0057】
また、例えば、人体画像に基づいて人体の各部位を測定した結果(本例では、長さ)をデータベース等に蓄積しておき、その測定結果を比較することにより、個体識別に有効な部位を特定する機能を設ける。一例として、日本人の各個体に関わらずに略同じ長さ(所定の誤差範囲に収まる長さ)の部位を特定し、それ以外の部位を個体識別に有効な部位として特定して、当該部位(個体識別に有効な部位)を示す部位情報をメモリに記憶しておき、画像比較部23は、当該部位情報に基づいて個体識別に有効な部位の画像部分について比較することで、個体識別の精度を上げる。このように、個体識別を行うのに有効な部位を特定し、その結果を利用して画像比較を行うように画像比較部23に設定することで、より効率的且つ精度の高い画像比較を実施できる。
【0058】
ここで、本例のAiシステムでは、死因究明結果のデータに関連するMRI画像やCT画像等の人体画像(死後画像)を死因究明結果のデータに対応付けて蓄積するデータベースを有しており、当該データベースに蓄積されたデータをリファレンス(死因究明例)とすることで、本システムの利用者に正確な参考資料を提供できるようにしてある。すなわち、例えば、死因を検索条件に指定して当該データベースを検索することで、指定された死因を含む死因究明結果のデータに対応付けられた人体画像を抽出し、表示装置により表示させる等を行うことができる。
【0059】
なお、上記の説明では、異なる人物IDが付された2つの人体画像(生前画像と死後画像)の組み合わせについて、同一人物に係る判別及び対応付けを行っているが、これに限定するものではなく、異なる人物IDが付された2以上の人体画像(生前画像又は死後画像)の組み合わせについて、同一人物に係る判別及び対応付けを行うようにしてもよい。
【0060】
また、上記の説明では、人体画像としてCT画像を用いているが、MRI画像やレントゲン画像などの他の撮影方式による人体画像を用いてもよい。
また、上記の説明では、各データの内部の所定領域に人物IDを格納しているが、各データの識別子に人物IDを含める形式や、各データの識別子との対応表を用いる形式など、他の形式により人物IDを付すようにしてもよい。
【0061】
なお、上述した人体画像を比較する技術は、身元確認システムに適用することもできる。すなわち、例えば、生前画像に患者情報を対応付けてデータベースに記憶させておき、身元不明者の死後画像を検索条件に用いて、当該死後画像と同一人物であると判別される生前画像をデータベースから検索し、当該死後画像と同一人物であると判別された生前画像に対応付けられた患者情報を用いて、当該死後画像の人物の身元を特定する。
【符号の説明】
【0062】
10:施設側システム、 20:連携管理システム、
11:読影システム、 12:データ送信部、 13:外部呼出受付部、
21:データ受信部、 22:データ記憶部、 23:画像比較部、 24:対応管理部、 25:対応表示部、 26:匿名化処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の識別情報が付された人体の画像を記憶する1つ又は複数の人体画像記憶システムについて設けられ、
前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像に付された人物の識別情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された人物の識別情報であって同一人物についての識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする人物識別情報対応付けシステム。
【請求項2】
前記取得手段は、前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像を取得して、当該人体の画像に付された人物の識別情報を取得し、
前記人物識別情報対応付けシステムは、前記取得手段により取得された複数の人体の画像に基づいて、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する判別手段を備え、
前記記憶手段は、前記判別手段により同一人物のものであると判別された複数の人体の画像のそれぞれに付された人物の識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項3】
人体の画像として人体の断面の画像が用いられ、
前記判別手段は、人体の断面の画像同士もしくは当該人体の断面の画像をもとに生成されたデータ同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項4】
人体の画像に基づいて測定された当該人体の各部位の測定結果を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積された複数の人体の各部位の測定結果に基づいて、測定結果が所定の誤差範囲に収まらない部位を特定する特定手段と、を備え、
前記判別手段は、前記特定手段により特定された部位の画像部分同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項5】
人体の画像を予め定められた方向の走査線に沿って走査し、走査線毎に、画素値の変化が閾値以上となる特徴点を抽出し、当該抽出された特徴点の位置を表す位置ベクトルと当該特徴点以降の画素値の情報とを対応付けしたベクトルデータを生成するベクトル化手段を備え、
前記判別手段は、人体の画像をもとに前記ベクトル化手段により生成されたベクトルデータ同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項6】
前記判別手段は、人体の画像について抽出される特徴点の位置に基づいて、複数の人体の画像を位置合わせし、当該位置合わせ後の人体の画像同士を比較して、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項7】
前記判別手段は、位置合わせ後の複数の人体の画像を重ね合わせて表示する手段と、重ね合わせて表示した複数の人体の画像の画像が同一人物のものであるか否かの入力を利用者から受け付ける手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項8】
前記判別手段は、生存時に撮影された人体の画像と死亡後に撮影された人体の画像に基づいて、これらの画像が同一人物のものであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項9】
前記記憶手段の記憶内容に基づいて、同一人物について生存時に撮影された人体の画像と死亡後に撮影された人体の画像とを対応付ける表示を出力する出力手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の人物識別情報対応付けシステム。
【請求項10】
人物の識別情報が付された人体の画像を記憶する1つ又は複数の人体画像記憶システムについて設けられる人物識別情報対応付けシステムのコンピュータに、
前記人体画像記憶システムに記憶された人体の画像に付された人物の識別情報を取得する取得機能と、
前記取得機能により取得された人物の識別情報であって同一人物についての識別情報を、当該人物についての統一的な識別情報と対応付けて記憶する記憶機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−84114(P2012−84114A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82841(P2011−82841)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(510250010)株式会社イメージクエスト (1)
【Fターム(参考)】