説明

介護用ハウス

【課題】要介護者が安静した状態で介護を受けることができ、介護者が高齢であっても安全に介護をすることができ、安価、コンパクトで設置時間も短く、特別な許可を要せずトラック移動をさせることができる介護用ハウスを提供する。
【解決手段】本発明は、天井部に2本のレールを平行に配設したハウス体と、ハウス体内に設置され中央部底面から下方に向かって排水パイプを取り付けて中央部上面には孔を穿設したオムツを排水パイプの上部と孔を取り外し可能に連結した状態で備えた介護ベッドと、介護ベッドの下に設置され排水パイプから流れ落ちる排泄物を受け止める便器と、介護ベッドに隣接し蛇口とシャワーを備えた浴槽と、レールに移動可能に吊り下げられたスライド可動部とスライド可動部に取り付けられ、スライド可動部の駆動を制御する駆動部からなり介護ベッドと浴槽上をスライド移動するリフト部とからなることを特徴とする介護用ハウスの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢化社会において今後増えるであろう自宅介護、特に老老介護をしやすくするための介護用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老人介護をするためには、要介護者を専門の老人ホームに預けたり、訪問介護を依頼し自宅で介護をしていた。
【0003】
しかしながら、前記の老人ホームに預けた場合、完全介護を依頼できる代わりに高額な利用料を支払わなければならず、家計を圧迫しているのが現状であった。
【0004】
一方、このような完全介護のための費用をまかなえない場合や、要介護者や要介護者の身内の者ができる限り自宅での介護を希望している場合は、自宅に介護用ベッド等を設置して介護し、定期的又は必要な場合に訪問介護を依頼していたが、介護者及び要介護者が共に高齢である場合は、訪問介護が得られない時間の介護が難しく、事故が起こりやすかった。
【0005】
また、上記のような事故を防ぐために様々な自宅介護用品が提供されているが、介護において最も労力を要する入浴を安全に行うためには、自宅を大幅に改築する必要があり、当然、莫大な費用を要するものであった。
【0006】
介護における問題を解決するために、特許文献1に示す「浴槽・トイレ付きベッド装置」が公開されている。この発明では、介護ベッドの下に浴槽及びトイレが設置されており、要介護者が入浴又は排泄をするには要介護者を上方に向かって引き上げた状態でマットレスを立ち上げて退かし、その後に要介護者を浴槽又は便座に下ろして入用又は排泄をさせ、入浴又は排泄が終了すると再度要介護者を上方に向かって引き上げてマットレスを戻して要介護者をベッドに寝かせるという方法をとっている。
【0007】
しかし、特許文献1の構造では、マットレスを立ち上げて退かすために、かなり高い位置まで要介護者を引き上げなければならないため、落下事故の心配があり、また、ネットで引き上げるため要介護者がくの字に曲がって苦しい思いをする可能性が高い。
【0008】
また、浴槽上にマットレスが載置されるため、入浴後は浴槽の水を抜き水気を完全に拭き取らないと湿気によりマットレスにカビが発生する可能性があり、それを避けるために浴槽を清掃している間は要介護者を上方に引き上げて不安定な状態にさせなければならなかった。
【0009】
このように要介護者の上下移動で全てを賄うことで介護のスペースを小さくすることはできるが、要介護者にとっては不安定な状態で何度も上下移動をさせられることになり安らぐことができず、何よりも大掛かりで複雑な構造であるため設置に費用がかかり現実的ではなかった。
【0010】
次に、特許文献2に示す「介護用の天井走行リフト装置」が公開されている。この発明では、天井に十文字状にレールを渡してリフトを吊し、リフトがレール状を移動することにより部屋内に設置されているベッド、トイレ、浴槽等に移動することができる方法をとっている。
【0011】
しかし、特許文献2の構造では、載荷シートで要介護者を包み込んだ状態で吊り上げるため、ハンモックのような状態となり、特に高齢の要介護者にとっては吊り上げられている間に非常に強い圧迫感を感じる可能性がある。
【0012】
また、載荷シートは柔らかいシート状であるため要介護者に設置するには時間を要し、排泄の際に間に合わない可能性がある。尚、排泄については、載荷シートの底面部分に開口が設けられているが、この開口を有効に使用するためには、載荷シートに要介護者を吊す前にズボンやオムツを既に外していなければならず、外さない状態で便座に移動した場合は、便座の位置で再度立ち上がるなどしてズボンやオムツを取り外すこととなり、このような場合は載荷シートの開口を使用するよりも載荷シートを外した方が排泄をし易いと考えられる。
【0013】
このように、特許文献2の構造では、移動範囲が広がるものの移動した先で行う入浴や排泄のし易さが改善されるものではなかった。
【0014】
次に、特許文献3に示す「トイレを有するベッド」が公開されている。この発明では、ベッドの中央部に用便の穴が穿設されており、この用便の穴の下に便器が設置されている。そして通常は前記用便の穴が便蓋マットで塞がれてベッドとして使用される。
【0015】
上記の構造において、排泄をするには便蓋マットが外れると共に用便の穴に向かって便器が上昇し、要介護者が寝た状態で排泄をすることができるものである。
【0016】
しかしながら、特許文献3の構造では、要介護者は排泄をする際にズボンやオムツ等を外さなければ用便の穴を使用することができず、要介護者が排泄をコントロールできる状態にあれば有効に使用することができるが、要介護者が痴呆等により排泄をコントロール出来ない場合には、有効にしようすることができない。
【0017】
次に、特許文献4に示す「介護用のユニットハウス」が公開されている。この発明では、プレハブ小屋の中にベッド、便器、浴槽及びそれらの間を移動するための電動介護リフトが設置されている。
【0018】
しかし、特許文献4の構造では、要介護者が電動介護リフトに乗った状態で便器及び浴槽まで移動することができるが、排泄をコントロールできない要介護者にとっては便器が離れた位置にあることは利用価値がなく、また、排泄をコントロールできる状態にあったとしても電動リフトに乗るまでに時間と体力を使用するため使い勝手のよいものではないと考えられる。
【0019】
また、特許文献4で使用する電動介護リフトは構造が複雑で大掛かりなため設置費用が高額と考えられ、本当に便利な介護システムを必要としている金銭的に余裕のない老老介護環境にある者にとっては手の届かないものと考えられる。
【0020】
以上のように、これまで発明及び考案されてきた介護システムは、介護者及び要介護者が共に高齢者であり、特に高額な老人介護施設や介護システムを利用できない者が利用できるものでなければならないはずであるのに、高額な設置費用が予想されるものであり、また、電動による装置を多用しているため誤作動の心配や介護者が高齢であるためにかえって分かりにくいものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平11−56926号公報
【特許文献2】特開2000−350750号公報
【特許文献3】特開2003−225261号公報
【特許文献4】特開2001−295484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そこで、本発明は、要介護者が安静した状態で介護を受けることができ、介護者が高齢であっても安全に介護をすることができ、更に安価であるにもかかわらず必要充分な設備をコンパクトなハウスにまとめることで設置時間も短く、特別な許可を要することなくトラック移動をさせることができる介護用ハウスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するために、天井部に2本のレールを平行に配設したハウス体2と、前記ハウス体2内に設置され中央部底面から下方に向かって排水パイプ3eを取り付けて中央部上面には孔を穿設したオムツ3dを前記排水パイプ3eの上部と前記孔に取り付けた連結パイプ3hを取り外し可能に連結した状態で備えた介護ベッド3と、前記介護ベッド3の下に設置され排水パイプ3eから流れ落ちる排泄物を受け止める便器4と、前記介護ベッド3に隣接し蛇口とシャワーを備えた浴槽6と、前記レール9に移動可能に吊り下げられたスライド可動部7と前記スライド可動部7に取り付けられ、前記スライド可動部の駆動を制御する駆動部8からなり前記介護ベッドと浴槽上をスライド移動するリフト部5とからなることを特徴とする介護用ハウスと、
前記ハウス体2を、換気扇、出入り口、複数の窓及び折り畳みテーブル2aを備えたハウス体としたことを特徴とする介護用ハウスと、前記介護ベッド3を、上半身部分に起上がり部3cを備え、下半身部分の両縁に手摺りを取付けた介護ベッドとしたことを特徴とする介護用ハウスと、前記便器4を、パイプ4bを介してトイレタンク4aに連結し、排水パイプ4cを介して下水に連結した便器としたことを特徴とする介護用ハウスと、前記オムツ3dを、略中央付近に孔を穿設して撥水加工を施した略T字状のオムツとしたことを特徴とする介護用ハウスと、前記シャワーを、介護ベッドのオムツの位置まで届く長さにしてオムツを洗浄できるシャワーとしたことを特徴とする介護用ハウスと、前記スライド可動部7を、レールに吊り下げられる前後枠体7a、7bと、前記前後枠体の下端同士を連結する左右枠体7c、7dと前記左右枠体7c、7d間に渡される回転軸及び前後ガイド棒と、前記前後ガイド棒のいずれか一方の上面を通り先端を前記回転軸に固定し他端にネット枠を取り外し可能に取り付けるためのフックを設けた4本の吊り下げベルトと、平板状のネットを格子状に編んで四隅に前記フックを連結するための接続具を備えたネット枠とからなるスライド可動部としたことを特徴とする介護用ハウスと、前記駆動部8を、ハンドル8bを備えて前記回転軸の回動を制御する制御ワイヤー8dを巻いた回転ドラム8aと前記回転ドラム8aを固定するための載置部8cと、前記載置部8cをスライド可動部7に連結するための複数本の固定枠とからなる駆動部8としたことを特徴とする介護用ハウスと、 前記リフト部5を、前記制御ワイヤー8dの先端を回転軸7gに固定し、回転ドラム8aのハンドル8bを回転させて前記制御ワイヤーを介して前記回転軸7gを回転させることにより、同じく回転軸7gに一端を固定されている4本の吊り下げベルトが巻き上げられたり巻き上げを戻されて4本の前記吊り下げベルトの他端に連結されたネット枠が連動して上下するリフト体としたことを特徴とする介護用ハウスと、前記スライド可動部7を、左右枠体7c、7dの上部に複数の調節孔7fを穿設した調節ガイド7eを備え、前記回転軸7g及び前後ガイド棒7h、7iの位置を調節可能とし、前記左枠体7cに取っ手7jを備えたスライド可動部7としたことを特徴とする介護用ハウスと、
前記吊り下げベルト7o、7p、7q、7rを、先端部の表裏面にオスメス一対の面ファスナーを取り付けた吊り下げベルトとしたことを特徴とする介護用ハウスの構成とした。
【発明の効果】
【0024】
本発明である介護用ハウスは、ベッド上では専用のオムツを使用するため排泄をコントロール出来ない状態にある要介護者であっても主な排泄物はベッド下に設けた便器内に流れるためベッドを汚すことなく排泄をすることができ、一方、介護者は前記のベッド専用のオムツをベッドから取り外すことなく水洗いできる。
【0025】
また、要介護者を移動させるためのリフト部で使用するネットが平板状のベルトを縦横に編んでネット枠に取り付けた構造をしているために大きく撓むことがなく、ベッドから20〜30cm程度の介護者の視線の高さで要介護者を移動させることができ、介護者は要介護者に手を添えやすく落下の発生率を抑えることが出来る。
【0026】
また、前記のネットを張ったネット枠は4点で吊り下げられているため安定しており、従来のように要介護者は圧迫感を感じることなく安全に移動することができる。
【0027】
また、前記ネット枠の上下動を制御する回転ドラムは常にストッパがかかっており、人力でハンドルを回転させている状態でのみ動くことができるため、電気系統の接触不良などによる誤作動の心配がなく高齢者でも安心して使用することができる。
【0028】
また、ベッドと浴槽が隣り合って設置されているため、要介護者を浴槽に入れている等の少しの時間でシャワーをベッドまで伸ばしてベッド専用のオムツを洗うことや、ベッドメイク、便器清掃をすることができ、要介護者に湯冷め等をさせる心配がない。
【0029】
更に、前記のようにネット枠を必要以上に吊り上げる必要がないため天井を低く抑えて道路交通法による高さ制限をクリアし、トラック等で介護用ハウスごと移動させることができるため、設置時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明である介護用ハウスの全体図である。
【図2】本発明である介護用ハウスの側面図である。
【図3】本発明である介護用ハウスを構成するリフト部分の斜視図である。
【図4】本発明である介護用ハウスを構成するリフト部分の構造図である。
【図5】本発明である介護用ハウスの吊り下げベルトの使用例を示した図である。
【図6】本発明である介護用ハウスの吊り下げベルトの使用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である介護用ハウスについて詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明である介護用ハウスの全体図、図2は介護用ハウスの側面図、図3は介護用ハウスを構成するリフト部分の斜視図、図4は介護用ハウスを構成するリフト部分の構造図、図5及び図6は護用ハウスの吊り下げベルトの使用例を示した図である。
【0033】
図1及び図2に示すように、本発明である介護用ハウス1は、天井部に2本のレールを平行に配設したハウス体2と、前記ハウス体2内に設置され中央部底面から下方に向かって排水パイプ3eを取り付けて中央部上面には孔を穿設したオムツ3dを前記排水パイプ3eの上部と前記孔に取り付けた連結パイプ3hを取り外し可能に連結した状態で備えた介護ベッド3と、前記介護ベッド3の下に設置され排水パイプ3eから流れ落ちる排泄物を受け止める便器4と、前記介護ベッド3に隣接し蛇口6aとシャワー6bを備えた浴槽6と、前記レール9に移動可能に吊り下げられたスライド可動部7と前記スライド可動部7に取り付けられ、前記スライド可動部の駆動を制御する駆動部8からなり前記介護ベッドと浴槽上をスライド移動するリフト部5とからなる。
【0034】
前記ハウス体2には、出入口2dが設けられており、その他にハウス体2内を換気するための換気扇2bや複数の窓2cを備えても良い。また、ハウス体2内に設置された介護ベッド3で食事などができるように折り畳みテーブル2aを備え付けてもよい。前記折り畳みテーブル2aは蝶番2eを介してハウス体2の壁面に取り付けられている。
【0035】
前記介護ベッド3は、4本の脚を備えたベッド枠体3aとマットレスからなり、要介護者が介護ベッド上で起き上がることができるように、上半身部分に起上がり部3cを備えている。前記起上がり部3cは電動で容易に上下動させることができ、起上がり部3cの操作は介護ベッド3に接続されたリモコン3fで操作をする。
【0036】
また、前記ベッド枠体3aの下半身部分の両縁には手摺り3bが備え付けられており、要介護者や介護者の様々な行動の際に使用することができる。
【0037】
更に、前記介護ベッド3の上面の中央部、即ち要介護者が介護ベッドに寝た場合に要介護者のお尻がくる位置にはオムツ3dが備え付けられており、このオムツ3dの略中央付近には孔3gが穿設されている。
【0038】
そして、前記孔3gに連結パイプ3hが取り付けられており、前記連結パイプ3hは介護ベッド3の底面の中央に取り付けられた排泄パイプ3eの上端に接続されており、更に排泄パイプ3eの下端は便器4の上部に位置している。
【0039】
排泄をコントロールできない要介護者が介護ベッド上で排泄をした場合に、排泄物はオムツ3dの孔3gから下方に向かって流れ落ち、更に孔3gから流れ落ちた排泄物は、連結パイプ3hに接続された排泄パイプ3eを通り、介護ベッド3の下に設置された便器4に受け止められる。
【0040】
また、前記オムツ3dは撥水加工が施されているため、要介護者が排泄した尿等の液体も孔3g及び排泄パイプ3eを通り便器4に流れ落ちる。
【0041】
前記便器4は、パイプ4bを介してトイレタンク4aに連結し、排泄パイプ4cを介して下水に連結されている。従って、便器4内に排泄物が流れ落ちた際にトイレタンク4aを操作して水を流すことで排泄物は下水に流されるため従来のように要介護者がトイレまで移動する必要がなく、また排泄物は排泄パイプ3eを通って便器4内に流れ落ちるため便器4周辺を汚すこともない。
【0042】
前記シャワー6bは、介護ベッド3に備え付けられたオムツ3dの位置まで届く長さとなっているため前述のように撥水加工されたオムツ3dを介護ベッド上で洗うことができる。但し、前記オムツ3dは容易に取り外すことができるため、取り外して洗っても良い。尚、介護ベッド3上でオムツ3dを洗浄する方法は、図6で説明することとする。
【0043】
図3及び図4に示すように、前記スライド可動部7は、レールに吊り下げられる前後枠体7a、7bと、前記前後枠体の下端同士を連結する左右枠体7c、7dと前記左右枠体7c、7d間に渡される回転軸7g及び前後ガイド棒7h、7iと、前記前後ガイド棒7h、7iのいずれか一方の上面を通り先端を前記回転軸7gに固定し他端にネット枠7kを取り外し可能に取り付けるためのフック7nを設けた4本の吊り下げベルト7o、7p、7q、7rと、平板状のネット7lを格子状に編んで四隅に前記フックを連結するための接続具7mを備えたネット枠7kとからなる。
【0044】
前記吊り下げベルトのうち、第1、第2吊り下げベルト7o、7pは互いに複数本の背あてベルト7sで連結されており、この複数本の背あてベルト7sが要介護者をネット7l上に座らせた際の背あてとなる。
【0045】
前記第1、第2吊り下げベルト7o、7pの先端は後ガイド棒7iの上面を通って回転軸7gに固定されており、一方第3、第4吊り下げベルト7q、7rの先端は前ガイド棒7hの上面を通って回転軸7gに固定されている。
【0046】
前記回転軸7gを一方に回転させると第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rは回転軸7gに巻き上げられ、回転軸7gを反対方向に回転させると前記第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rは巻き上げを戻される。このように第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rは常に同じ動きをして各ベルトの他端は同じ高さを維持して上下動する。
【0047】
従って、第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rの他端にフック7nを介して連結されたネット枠7kも常に地面と平行状態を維持したまま上下動することができ、ネット枠7kに座る要介護者も安心してリフト移動をすることができる。
【0048】
図3に示すように、前記左右枠体7c、7dの上部には複数の調節孔7fを穿設した調節ガイド7eが備えられており、前記回転軸7g及び前後ガイド棒7h、7iの位置を調節することができる。
【0049】
例えば、要介護者が大柄であった場合、少し大きめのネット枠7kが必要となり、第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rが垂直に吊された状態とするためには前後ガイド棒7h、7iの位置を離す必要がある。このように使用するネット枠7kに併せて前後ガイド棒7h、7iの位置を変えることで体格の違う様々な要介護者に併せることができる。
【0050】
また、前記左枠体7cには取っ手7jが取り付けられており、この取っ手7jを押し引きすることでリフト部5をスライド移動することができる。この取っ手7jについては、手摺りとしての役割も果たせるように大きめの構造が望ましい。また、介護ベッド3の設置場所に従って右枠体7dに取り付けても良い。
【0051】
図3及び図4に示すように、前記駆動部8は、ハンドル8bを備えて前記回転軸7gの回動を制御する制御ワイヤー8dを巻いた回転ドラム8aと前記回転ドラム8aを固定するための載置部8cと、前記載置部8cをスライド可動部7に連結するための複数本の固定枠8eとからなる。
【0052】
前記駆動部8は、スライド可動部7の前枠体7aの下、即ちネット枠7kに座った要介護者の正面側に設置されている。
【0053】
図3に示すように2本の固定枠8eが前枠体7aの下部から下方に向かって垂設され、残りの2本の固定枠8eが左右枠体7c、7dの間に配した中枠7tの下部から下方に向かって垂設されており、各固定枠8eの下端を載置部8cの四隅に連結している。
【0054】
前記載置部8cには回転ドラム8aが設置されており、回転ドラム8aのハンドル8bはネット枠7kに座った要介護者の右手側になる側に取り付けられている。このハンドル8bについては、要介護者が左利きであった場合や、介護ベッドの設置場所に従って図3とは反対側に取り付けてもよく、また、予め両側に備えておいても構わない。
【0055】
前記回転ドラム8aには制御ワイヤー8dが巻かれており、この制御ワイヤー8dの先端は前記回転軸7gに固定されている。
【0056】
全ての第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rの先端が介護ベッド3に余裕を持って接した状態において、制御ワイヤー8dは前記回転軸7gに複数回巻かれていなければならない。
【0057】
図4に示すように、上記のように設置することで前記回転ドラム8aのハンドル8bを回転させて回転ドラム8aをB方向に回転させると、回転軸7gはD方向に回転して第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rが回転軸7gに巻き上げられネット7kが上昇する。
【0058】
反対に回転ドラム8aをA方向に回転させると、回転軸7gはC方向に回転し第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rが回転軸7gへの巻き上げを解除される方向に動きネット枠7kが下降する。
【0059】
尚、前記回転ドラム8aはハンドル7bを人力で回転させない限りブレーキがかかった状態にあり、要介護者の自重や回転ドラム8aが勝手に回転することによるネット枠7kの落下の心配はない。
【0060】
図4及び図5に示すように、前記第1〜第4吊り下げベルト7o、7p、7q、7rの先端部分の表裏面にはオスメス一対の面ファスナー7u、7vが取り付けられている。
【0061】
図4及び図5では、各吊り下げベルト7o、7p、7q、7rの内側面に面ファスナー(オス)7u、外側面に面ファスナー(メス)7vを取り付けたが、特に限定したものではなく各吊り下げベルトの表裏面に異なる面ファスナーが取り付けられていればよい。
【0062】
前記面ファスナー7u、7vを使用して、第1吊り下げベルト7oと第2吊り下げベルト7pを連結して略U字状にすることで要介護者を一時的に僅かな高さ分持ち上げることができ、その間に要介護者のお尻下にネット枠7kを挿入する。
【0063】
尚、第3吊り下げベルト7qと第4吊り下げベルト7rも同様に連結して略U字状にすることができ、例えば要介護者の足を上げることに使用してもよい。また、要介護者自体を僅かな高さ持ち上げる際に、前述の第1第2吊り下げベルトだけではなく第3第4吊り下げベルトを使用して持ち上げてもよい。
【0064】
図6に示すように、前記面ファスナー7u(7v)を介護ベッド3に取り付けられているオムツ3dの端に連結し、各吊り下げベルトを持ち上げることでオムツ3dの中央が沈んだ状態となり、シャワー6bでオムツ3d内に放水しても周囲に水がこぼれることがなく、オムツ3d内の排泄物の残りや汚れを楽に洗浄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明である介護用ハウスは、必要充分な介護設備を安全性を向上させ、しかも取扱いがし易く、更に従来よりも安価で提供することができるため、今後も更に増えるであろうと予測される老老介護の家庭において極めて有効である。
【符号の説明】
【0066】
1 介護用ハウス
2 ハウス体
2a 折り畳みテーブル
2b 換気扇
2c 窓
2d 出入口
2e 蝶番
3 介護ベッド
3a ベッド枠体
3b 手摺り
3c 起上がり部
3d オムツ
3e 排泄パイプ
3f リモコン
3g 孔
3h 連結パイプ
4 便器
4a トイレタンク
4b パイプ
4c 排水パイプ
5 リフト部
6 浴槽
6a 蛇口
6b シャワー
7 スライド可動部
7a 前枠体
7b 後枠体
7c 左枠体
7d 右枠体
7e 調節ガイド
7f 調節孔
7g 回転軸
7h 前ガイド棒
7i 後ガイド棒
7j 取っ手
7k ネット枠
7l ネット
7m 接続具
7n フック
7o 第1吊り下げベルト
7p 第2吊り下げベルト
7q 第3吊り下げベルト
7r 第4吊り下げベルト
7s 背あてベルト
7t 中枠
7u 面ファスナー
7v 面ファスナー
8 駆動部
8a 回転ドラム
8b ハンドル
8c 載置部
8d 制御ワイヤー
8e 固定枠
9 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部に2本のレールを平行に配設したハウス体2と、 前記ハウス体2内に設置され中央部底面から下方に向かって排水パイプ3eを取り付けて中央部上面には孔を穿設したオムツ3dを前記排水パイプ3eの上部と前記孔3gに取り付けた連結パイプ3hを取り外し可能に連結した状態で備えた介護ベッド3と、前記介護ベッド3の下に設置され排水パイプ3eから流れ落ちる排泄物を受け止める便器4と、前記介護ベッド3に隣接し蛇口とシャワーを備えた浴槽6と、前記レール9に移動可能に吊り下げられたスライド可動部7と前記スライド可動部7に取り付けられ、前記スライド可動部の駆動を制御する駆動部8からなり前記介護ベッドと浴槽上をスライド移動するリフト部5とからなることを特徴とする介護用ハウス。
【請求項2】
前記ハウス体2を、換気扇、出入り口、複数の窓及び折り畳みテーブル2aを備えたハウス体としたことを特徴とする請求項1に記載の介護用ハウス。
【請求項3】
前記介護ベッド3を、上半身部分に起上がり部3cを備え、下半身部分の両縁に手摺りを取付けた介護ベッドとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項4】
前記便器4を、パイプ4bを介してトイレタンク4aに連結し、排水パイプ4cを介して下水に連結した便器としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項5】
前記オムツ3dを、略中央付近に孔を穿設して撥水加工を施した略T字状のオムツとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項6】
前記シャワーを、介護ベッドのオムツの位置まで届く長さにしてオムツを洗浄できるシャワーとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項7】
前記スライド可動部7を、レールに吊り下げられる前後枠体7a、7bと、前記前後枠体の下端同士を連結する左右枠体7c、7dと前記左右枠体7c、7d間に渡される回転軸及び前後ガイド棒と、前記前後ガイド棒のいずれか一方の上面を通り先端を前記回転軸に固定し他端にネット枠を取り外し可能に取り付けるためのフックを設けた4本の吊り下げベルトと、平板状のネットを格子状に編んで四隅に前記フックを連結するための接続具を備えたネット枠とからなるスライド可動部としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項8】
前記駆動部8を、ハンドル8bを備えて前記回転軸の回動を制御する制御ワイヤー8dを巻いた回転ドラム8aと前記回転ドラム8aを固定するための載置部8cと、前記載置部8cをスライド可動部7に連結するための複数本の固定枠とからなる駆動部8としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項9】
前記リフト部5を、前記制御ワイヤー8dの先端を回転軸7gに固定し、回転ドラム8aのハンドル8bを回転させて前記制御ワイヤーを介して前記回転軸7gを回転させることにより、同じく回転軸7gに一端を固定されている4本の吊り下げベルトが巻き上げられたり巻き上げを戻されて4本の前記吊り下げベルトの他端に連結されたネット枠が連動して上下するリフト体としたことを特徴とする請求項8に記載の介護用ハウス。
【請求項10】
前記スライド可動部7を、左右枠体7c、7dの上部に複数の調節孔7fを穿設した調節ガイド7eを備え、前記回転軸7g及び前後ガイド棒7h、7iの位置を調節可能とし、前記左枠体7cに取っ手7jを備えたスライド可動部7としたことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の介護用ハウス。
【請求項11】
前記吊り下げベルト7o、7p、7q、7rを、先端部の表裏面にオスメス一対の面ファスナーを取り付けた吊り下げベルトとしたことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の介護用ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−220819(P2010−220819A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71431(P2009−71431)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(509083500)
【Fターム(参考)】