説明

仕切板を備えた容器の振動防止装置及び振動防止方法

【課題】起振力となる起振源の振動数が変化したときでも、常に仕切板の共振を回避可能にし、仕切板及び仕切板を備えた容器の振動を防止可能にする。
【解決手段】オイルパン1の仕切板3の上端にウィンチ16が設けられ、仕切板3の上面に加速度計20が装着されている。重錘12は電磁石で構成され、通電兼用のワイヤロープ18に接続されている。発電用ガスエンジンの回転数又は振動数データに対し、共振しない仕切板3の振動数を算出し、該振動数となるように重錘12の目標高さ位置を算出する。コントローラ22でウィンチ16を動作させ、重錘12を目標高さ位置に移動させる。この操作によって、発電用ガスエンジンの回転数又は振動数が変動しても、常に仕切板3の共振を防止できる。起振力となる起振源の振動数が変化したときでも、常に仕切板3の共振を回避可能にし、仕切板3及びオイルパン1の振動及び騒音を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関の下部に設けられるオイルパン等の振動防止に好適であり、振動数が変動する起振源から伝搬する振動に対して、仕切板を備えた容器の振動を防止可能な装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関の下部には、潤滑油を受けるために大きな容器状の形状をしたオイルパンが設けられている。オイルパンは、大きな面積をもつ壁面で構成されているため、振動しやすく、内燃機関の運転時に振動と騒音が大きくなるという不具合いがある。そのため、以前から種々の振動防止対策、騒音防止対策が取られている。例えば、特許文献1には、オイルパンに補強用段付部と補強リブを設けて剛性を増し、振動、騒音を低減する対策が開示されている。
【0003】
また、オイルパンには、強度を増すために、容器の内側に仕切板が設けられているが、この仕切板が、内燃機関から伝搬する振動によって、振動、騒音を発生させることがある。この対策として、例えば、特許文献2には、仕切板の剛性を高めて仕切板の振動を低減し、騒音を抑止するオイルパンの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−171651号の明細書及び図面
【特許文献2】特開2004−232605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、仕切板の起振力となる内燃機関の振動数が仕切板の固有振動数に近い場合、仕切板が共振して大きな振動が発生し、仕切板にクラックが発生すると共に、オイルパン全体に振動及び騒音が発生することがある。そのため、仕切板の共振を回避するため、仕切板の固有振動数を調整するなどの措置を取る必要がある。既設構造物の固有振動数を調整する手段として、例えば、重錘を構造物に取り付け、固有振動数を起振力となる振動数から遠ざける等の手段が取られている。
【0006】
しかし、図8に示すように、起振力となる振動数は、細かく分布している。即ち、内燃機関の振動数の0.5倍の倍数毎に存在する。更に、内燃機関の起動時から定常運転に至るまでに、内燃機関の回転数が変化するため、起振力となる振動数も変化する。図8において、曲線Aは起動運転時のひずみ曲線であり、曲線Bは定常運転時のひずみ曲線である。起振力となる振動数は、起動時から定常運転に至る間に矢印方向に変化する。そのため、起動時から定常運転に至る間で、仕切板の共振を確実に避けることは困難である。
【0007】
例えば、図中、調整前の仕切板の固有振動数がFaであるとき、定常運転では共振を回避できるが、起動運転時には回避できない。一方、仕切板の固有振動数をFbに調整したとき、起動運転時では共振を回避できるが、定常運転時には共振を回避できない。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、起振力となる起振源の振動数が変化したときでも、常に仕切板の共振を回避可能にし、これによって、仕切板を備えた容器の振動及び騒音を防止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明の仕切板を備えた容器の振動防止装置は、容器壁体によって囲繞されて形成され、内部空間を仕切る仕切板を備えた容器の振動防止装置において、仕切板の表面に接するようにかつ重力方向に移動可能に設けられた重錘と、該重錘を重力方向に移動させると共に、任意の重力方向位置で停止させる移動装置、及び重錘を板体に接した状態とする保持手段と、仕切板の振動数を計測する振動数計測器と、仕切板に振動を伝搬させる起振源の振動数に基づいて、仕切板の許容振動数を算出する許容振動数算出手段と、仕切板の振動数が前記許容範囲となる重錘の目標重力方向位置を算出する重錘位置算出手段と、移動装置を稼働させ、重錘を目標重力方向位置に移動させるコントローラとを備えているものである。
【0010】
本発明装置では、仕切板の固有振動数を変える重錘を設け、許容振動範囲算出手段によって、起振源の振動数に応じて、共振を起こさない仕切板の許容振動数を算出する。そして、重錘位置算出手段によって、この許容振動数となる重錘の目標重力方向位置を算出する。次に、コントローラによって、重錘を目標重力方向位置に変えることで、仕切板の共振を防止できる。これによって、起振源の振動数が変わっても常に仕切板の振動を抑制でき、仕切板の破損を防止できると共に、該仕切板を備えた容器の振動及び騒音を防止できる。
【0011】
本発明装置において、移動装置が、重錘に接続されたワイヤロープと、該ワイヤロープを巻き揚げ又は巻き戻すウィンチとで構成され、該ウィンチによって重錘を重力方向へ移動させ、かつ目標重力方向位置で停止させるようにするとよい。これによって、移動装置を簡易かつ低コストな構成とすることができる。また、重錘を目標重力方向位置で確実に停止させることができる。
【0012】
本発明装置において、ワイヤロープが通電兼用のケーブルで構成され、重錘が電磁石で構成されていると共に、仕切板が磁性体で構成され、仕切板の振動防止時に重錘への通電を行い、重錘の移動時に重錘への通電を止めるようにするとよい。これによって、重錘の停止時には、重錘を仕切板に磁気力で吸着させるので、仕切板の表面に重錘を安定して接触状態に保持できる。また、重錘の移動時には、通電を止めるので、重錘をスムーズに移動できる。
【0013】
本発明装置において、前記保持手段が、重錘を仕切板の壁面に常に接した状態で重力方向へガイドするガイドレールで構成されているとよい。これによって、重錘が常に仕切板の表面に接触状態であるので、仕切板の固有振動数の変更を確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明の仕切板を備えた容器の振動防止方法は、容器壁体によって囲繞されて形成され、内部空間を仕切る仕切板を備えた容器の振動防止方法において、仕切板の固有振動数を調整する重錘を仕切板に接するようにかつ重錘の重力方向位置を変更可能に設ける重錘設置工程と、仕切板に振動を伝搬させる起振源の振動数に基づいて、仕切板の許容振動数を算出する許容振動数算出工程と、仕切板の振動数を検出し、この検出値と許容振動数とを比較し、仕切板の振動数が許容範囲内でないとき、仕切板の振動数を許容範囲内とする重錘の目標重力方向位置を算出する重錘位置算出工程と、重錘を目標重力方向位置に移動させ、該目標重力方向位置で仕切板に接した状態とする重錘移動工程とからなるものである。
【0015】
本発明方法では、仕切板の固有振動数を変える重錘を設け、起振源の振動数に対し、共振を起こさない許容振動数を算出する。そして、この許容振動数となるように重錘の重力方向位置を変えることで、仕切板の共振を防止できる。起振源の振動数を常に検出し、前記操作を行うことで、起振源の振動数が変わっても仕切板の振動を抑制できると共に、仕切板を備えた容器の振動及び騒音を防止できる。
【0016】
本発明方法において、許容振動数Fnを、次式から求めるとよい。
F×(0.15+0.5n)<Fn<F×(0.35+0.5n) (1)
但し、F:起振源の振動数
n:正の整数
共振を起こす振動数は、起振源の振動数の0.5倍毎に細かく分布している。そのため、前記算式(1)に基づいて、前記起振力となる振動数を回避した振動数とすることで、仕切板の共振を回避できる。
【0017】
本発明を内燃機関の下部に設けられたオイルパンの仕切板の振動防止に適用する場合、起振源となる内燃機関の回転数を目安として板体の許容振動数を算出してもよいし、あるいは内燃機関の振動数を検出し、その検出値に基づいて、仕切板の許容振動数を算出してもよい。これによって、内燃機関の回転数又は振動数が変化しても、仕切板の固有振動数を常に許容範囲に保持できる。そのため、仕切板が内燃機関の振動に共振して破損するのを防止できると共に、該仕切板を備えた容器の振動及び騒音を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明方法によれば、仕切板に重錘を設けて仕切板の固有振動数を変え、起振源の振動数に応じて、共振を起こさない仕切板の許容振動数を算出し、この許容振動数となるように重錘の重力方向位置を変えることで、仕切板の共振を防止できる。これによって、起振源の振動数が変わっても、仕切板の振動を抑制できると共に、該仕切板を備えた容器の振動及び騒音を防止できる。
【0019】
本発明装置によれば、仕切板の固有振動数を変える重錘を設け、起振源の振動数に対し、仕切板の固有振動数を共振を起こさない許容振動数を算出し、該許容振動数となるように、コントローラによって、重錘を目標重力方向位置に移動させるようにしたので、本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を発電用ガスエンジンのオイルパンに適用した第1実施形態に係り、(A)はその平面図であり、(B)はその正面図である。
【図2】第1実施形態の操作手順を示すフロー図である。
【図3】発電用ガスエンジンの回転数の推移を示す線図である。
【図4】第1実施形態において許容振動数の範囲を示すブロック線図である。
【図5】第1実施形態において、重錘高さ位置算定時に用いられる線図である。
【図6】第1実施形態における実験値を示す線図である。
【図7】本発明を発電用ガスエンジンのオイルパンに適用した第2実施形態に係り、(A)はその平面図であり、(B)はその正面図である。
【図8】発電用ガスエンジンの起振力振動数の変化を示す線図である。
【図9】発電用ガスエンジンに用いられるオイルパンの一例を示す斜視図である。
【図10】本発明に至る前段階の固有振動数調整手段(中間技術)を示し、(A)は平面図であり、(B)は正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0022】
(実施形態1)
本発明を発電用ガスエンジンに設けられたオイルパンに適用した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図9は発電用ガスエンジンに設けられるオイルパンの一例を示す。オイルパン1は、補強のため、潤滑油の貯留空間Sを仕切る複数の仕切板3が設けられている。仕切板3はオイルパン1の長手方向と直角方向にほぼ等間隔で配置されている。各仕切板3には、潤滑油の導通孔5が設けられている。そして、オイルパンの底壁の数か所に潤滑油を取り出す取出孔7が設けられている。
【0023】
図10は、本発明に至る前段階で、本発明者が考えた中間技術としての、仕切板3の固有振動数調整手段を示す。既設構造物に重錘を取り付けて、既設構造物の固有振動数を調整する手段は従来から行われている。図10では、オイルパン1の仕切板3に重錘9を固定して、仕切板3の固有振動数を調整するようにしている。しかし、この方法では、仕切板3の固有振動数を変更できないので、発電用ガスエンジンの回転数が変わったときに対応できない。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る仕切板3の振動防止装置10を示す。図1において、仕切板3の上端にウィンチ16が取り付けられている。ウィンチ16には通電兼用のワイヤロープ18が巻き付けられ、ワイヤロープ18の先端は重錘12に接続されている。重錘12は、磁性体からなる芯の回りにコイル(図示省略)が巻き付けられ、該コイルはワイヤロープ18と接続され、該コイルに通電可能になっている。そして、該コイルに通電されることで、重錘12となる。また、仕切板3は鋼等の磁性体で構成されている。重錘12は、仕切板3に対抗する面が平坦面12aを形成しており、該平坦面で仕切板3の表面に密着可能になっている。ウィンチ16及びワイヤロープ18は、仕切板3が複数あるとき、各仕切板毎に設けられる。
【0025】
重錘12は、ワイヤロープ18によって重力方向に移動可能であり、重錘12の両側位置で仕切板3にガイド14が取り付けられ、ガイド14で重錘12を重力方向にガイドし、横方向に移動しないようになっている。仕切板3の上面には、加速度計20が装着され、加速度計20で仕切板3の振動を計測可能になっている。加速度計20の検出値はコントローラ22のメモリ220に入力されると共に、コントローラ22によって、ワイヤロープ18の巻取量を制御できる。
【0026】
次に、振動防止装置10の操作手順を図2により説明する。まず、コントローラ22のメモリ220に発電用ガスエンジンの振動数データが入力される(S10)。ここで振動数データとは、発電用ガスエンジンの回転数であってもよいし、又は発電用ガスエンジンの振動数を加速度計(図示省略)で検出し、その検出値であってもよい。図3に示すように、発電用ガスエンジンの回転数は、起動運転時と定常運転時とは異なり、起動運転時から徐々に大きくなる。これらの振動数データがコントローラ22に入力されると、コントローラ22の許容振動数算出部222で、発電用ガスエンジンの振動数と共振しない仕切板3の許容振動数を算出する(S12)。
【0027】
図4により、許容振動数の算出方法を説明する。図4に示すように、共振現象により仕切板3のひずみが極大となる仕切板3の振動数Pは、発電用ガスエンジンの振動数又は回転数(rpm)/60(Hz)の0.5倍の倍数となる。そこで、この振動数を避けるため、次の算式から許容振動数Fnを求める。
F×(0.15+0.5n)<Fn<F×(0.35+0.5n) (1)
但し、F:発電用ガスエンジンの振動数又は回転数(rpm)/60(Hz)
n:正の整数
許容振動数Fnを図4で示すと、F1〜8の範囲となる。
【0028】
次に、加速度計20により仕切板3の振動数を計側する(S14)。加速度計20で計測した仕切板3の振動数が許容範囲内のとき(S16)、何もせず、S10に戻る。仕切板3の振動数が許容範囲外であるとき(S16)、重錘位置算出部224で、許容範囲となる重錘12の高さ位置を算出する(S18)。この高さ位置は、次の算式から求める。
fa=fb/(1+m/M)0.5 (2)
ここで、fa:高さ変更後の固有振動数(Hz)
fb:高さ変更前の固有振動数(Hz)
m:重錘12の質量
M:モーダルマス
図5に示すように、モーダルマスMは、重錘12の高さによって異なり、計測等で求める。
【0029】
重錘12の高さ位置を算出したら、次に、重錘12への通電を停止し、重錘12と仕切板3との吸引力を消去する(S20)。次に、コントローラ22でウィンチ16を作動させ、重錘12を目標とする高さ位置に移動させる(S22)。重錘12が目標高さ位置に移動したら、重錘12に通電を開始し、重錘12を仕切板3に吸着させる(S24)。次に、加速度計20で仕切板3の振動数を計測し(S26)、計測した振動数が許容範囲内であれば、何もせず、S10に戻り、許容範囲外であれば、重錘12の高さ位置を見直すため、S18に戻る(S28)。
【0030】
本実施形態によれば、発電用ガスエンジンの回転数又は振動数を検出し、これらのデータと共振しない仕切板3の許容振動数を算出し、この算出値となるように重錘12の高さ位置を変更しているので、仕切板3の共振をなくすことができる。これによって、発電用ガスエンジンの回転数又は振動数が途中で変っても、仕切板3の共振を回避できるので、仕切板3の破損を確実に防止できると共に、仕切板3を備えたオイルパン1の振動及び騒音、さらには仕切板3の振動に起因した発電用ガスエンジン全体の振動に発展するのを防止できる。また、仕切板3の許容振動数を前記算式(1)で求めるので、該許容振動数を正確に求めることができ、該許容振動数に合致する重錘12の高さ位置を前記算式(2)で求めるので、重錘12の高さ位置を正確に求めることができる。
【0031】
さらに、重錘12の移動装置としてウィンチ16を用いているので、移動装置を簡易かつ低コストにできる。また、重錘12を電磁石とし、仕切板3を磁性体で構成して、重錘12を磁力で仕切板3に固定するようにしたので、仕切板3に対する重錘12の固定を確実にできる。また、重錘12の移動時には通電を停止するので、重錘12をスムーズに移動できる。
【0032】
図6は、前記第1実施形態において、仕切板3の固有振動数の変化を、実際に実験した結果を示す。この実験は、390gの重錘12を用い、重錘なしの状態から重錘を付加したことにより、仕切板3の固有振動数を低減させ、発電用ガスエンジンの起振力振動数(3n及び3.5n)に対する仕切板3の振動応答特性を低減できたことを示している。
【0033】
なお、複数の仕切板3の材質が同一で剛性が同一であり、かつ大きさ、板厚等の寸法が同一であるとき、各仕切板3の固有振動数はほぼ同一である。このとき、発電用ガスエンジンから伝わる振動数に対して、各仕切板3の重錘12の目標高さ位置は同一でよい。そのため、1個のウィンチで各仕切板3の高さ位置を調整できる。従って、1個のウィンチの設置で済むので、設備費を低コストにできる。
【0034】
(実施形態2)
本発明方法及び装置の第2実施形態を図7により説明する。本実施形態も、発電用ガスエンジンに設けられたオイルパンに適用したものである。図7において、仕切板3の上端にウィンチ16が設けられ、仕切板3の上面に加速度計20が装着されている。これらの構成は第1実施形態と同一である。またコントローラ22の構成も第1実施形態と同一である。仕切板3の表面に、レール30が固定されている。レール30には四角形状の凹部300形成され、該凹部300、仕切板3の表面と平行な平面状のガイド面302形成されている。重錘32の両側面に一対のガイドフレーム34a及び34bが取り付けられている。ガイドフレーム34a、34bの中央部には、回転軸36が回転自在に軸支され、回転軸36の中央にガイドローラ38が固定されている。
【0035】
ガイドフレーム34a、34bの先端には、夫々回転軸40a及び40bが回転自在に軸支され、回転軸40a、40bには、夫々ガイドローラ42a、42bが装着されている。重錘32は、通電機能のないワイヤロープ44に接続され、重錘32は、電磁石機能をもたない重錘である。そのため、仕切板3は磁性体である必要はない。
【0036】
かかる構成において、重錘12は、ガイドフレーム34a、34b、及びガイドローラ38、42a、42bと一体となって上下動する。そのとき、ガイドローラ42a、42bは、ガイド面302にガイドされ、ガイドローラ38はレール30の全面304にガイドされる。そのため、本実施形態では、重錘12は、仕切板3に対して停止位置にある時、及び上下動する時でも、常に仕切板3から離れない。従って、仕切板3の固有振動数の調整を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、起振力となる起振源の振動数が変化したときでも、常に仕切板を備えた容器の共振を回避可能にして、仕切板及び容器の振動を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 オイルパン
3 仕切板
5 導通孔
7 取出孔
9、12,32 重錘
10 振動防止装置
14 ガイド
16 ウィンチ
18、44 ワイヤロープ
20 加速度計
22 コントローラ
220 メモリ
222 許容振動範囲算出部
224 重錘位置算出部
30 レール
300 凹部
302 ガイド面
304 前面
34a、34b ガイドフレーム
36、40a、40b 回転軸
38、42a、42b ガイドローラ
A ひずみ曲線(起動運転時)
B ひずみ曲線(定常運転時)
S 貯留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器壁体によって囲繞されて形成され、内部空間を仕切る仕切板を備えた容器の振動防止装置において、
前記仕切板の表面に接するようにかつ重力方向に移動可能に設けられた重錘と、
該重錘を重力方向に移動させると共に、任意の重力方向位置で停止させる移動装置、及び重錘を板体に接した状態とする保持手段と、
仕切板の振動数を計測する振動数計測器と、
仕切板に振動を伝搬させる起振源の振動数に基づいて、仕切板の許容振動数を算出する許容振動数算出手段と、
仕切板の振動数が前記許容範囲となる重錘の目標重力方向位置を算出する重錘位置算出手段と、
前記移動装置を稼働させ、重錘を前記目標重力方向位置に移動させるコントローラと、を備えていることを特徴とする仕切板を備えた容器の振動防止装置。
【請求項2】
前記移動装置が、前記重錘に接続されたワイヤロープと、該ワイヤロープを巻き揚げ又は巻き戻すウィンチとで構成され、該ウィンチによって重錘を重力方向へ移動させ、かつ目標重力方向位置で停止させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の仕切板を備えた容器の振動防止装置。
【請求項3】
前記ワイヤロープが通電兼用のケーブルで構成され、前記重錘が電磁石を構成されていると共に、前記仕切板が磁性体で構成され、
前記保持手段が、仕切板の振動防止時に重錘への通電を行い、重錘と仕切板との間に吸着力を発生させるものであり、重錘の移動時に重錘への通電を止めるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の仕切板を備えた容器の振動防止装置。
【請求項4】
前記保持手段が、重錘を仕切板の壁面に常に接した状態で重力方向へガイドするガイドレールで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の仕切板を備えた容器の振動防止装置。
【請求項5】
容器壁体によって囲繞されて形成され、内部空間を仕切る仕切板を備えた容器の振動防止方法において、
前記仕切板の固有振動数を調整する重錘を仕切板に接するようにかつ重錘の重力方向位置を変更可能に設ける重錘設置工程と、
仕切板に振動を伝搬させる起振源の振動数に基づいて、仕切板の許容振動数を算出する許容振動数算出工程と、
仕切板の振動数を検出し、この検出値と前記許容振動数とを比較し、仕切板の振動数が許容範囲内でないとき、仕切板の振動数を許容範囲内とする重錘の目標重力方向位置を算出する重錘位置算出工程と、
重錘を前記目標重力方向位置に移動させ、該目標重力方向位置で仕切板に接した状態とする重錘移動工程と、からなることを特徴とする仕切板を備えた容器の振動防止方法。
【請求項6】
前記許容振動数Fnを次式から求めることを特徴とする請求項5に記載の仕切板を備えた容器の振動防止方法。
F×(0.15+0.5n)<Fn<F×(0.35+0.5n)
但し、F:起振源の振動数
n:正の整数
【請求項7】
前記起振源が内燃機関であり、前記容器が該内燃機関の下部に設けられたオイルパンであり、
前記許容振動数算出工程において、内燃機関の回転数又は振動数に基づいて、仕切板の許容振動数を算出するようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の仕切板を備えた容器の振動防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61037(P2013−61037A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200910(P2011−200910)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】