説明

付加型ノルボルネン系樹脂、その製造方法、該樹脂を含む樹脂組成物、ならびに該樹脂を含む成形体および該成形体を含む複合部材

【課題】無機基材との密着性、誘電特性、耐熱性、成形性に優れた、付加型ノルボルネン系樹脂、該樹脂を含む成形体、該成形体を備える複合部材等を提供する。
【解決手段】ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめて得られ、ケイ素原子の含有率0.01質量%〜2.0質量%、数平均分子量5万〜1000万である付加型ノルボルネン系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加型ノルボルネン系樹脂、その製造方法、該樹脂を含む樹脂組成物、ならびに該樹脂を含む成形体および該成形体を含む複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノルボルネン系モノマーをメタセシス重合触媒の存在下で開環重合することにより、非晶質の開環型ノルボルネン系樹脂が得られることが知られている。非晶質の開環型ノルボルネン系樹脂は電気特性、光学特性、低吸湿性などに優れるという特徴を有し、成形品として種々の用途に用いられている。
【0003】
かかる成形品の製造方法としては、ノルボルネン系モノマーを溶液重合して得られる重合体を、射出成形やカレンダー成形等の熱成形法により成形品とする方法がある。また、反応射出成形法(RIM法)のように、金型内でノルボルネン系モノマーを塊状重合して成形品を得る方法も知られている。例えば特許文献1(特開2001−163959号公報)には、ルテニウム触媒を用いた塊状重合による開環型ノルボルネン系樹脂の製造方法が開示されている。
【0004】
一方で近年、例えば電子機器の高速化、高性能化に伴い、誘電率および誘電正接(特に高周波における誘電率および誘電正接)が低く、優れた耐熱性が要求される成形体が求められている。
これらの要求に対し、前記文献に記載された開環型ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度は200℃以下であり、必ずしも耐熱性等の要求特性を満足できない場合があった。
【0005】
一方で、ノルボルネン系モノマーを10族遷移金属触媒の存在下、溶液中で付加重合することで、非晶質の付加型ノルボルネン系樹脂が得られることが知られている。非晶質の付加型ノルボルネン系樹脂は前記誘電特性をはじめ、電気特性、光学特性、低吸湿性などに優れるという特徴を有するとともに、高いガラス転移温度を示す成形品を与えることができる。
【0006】
しかしながら、付加型ノルボルネン系樹脂は、その高いガラス転移温度から射出成形やカレンダー成形等の熱成形法により成形品を得ることは困難であった。
【0007】
一方、付加型ノルボルネン系樹脂の成形品を簡便に得る方法として、モノマーを塊状重合する方法が知られており、例えば特許文献2(特表2002−531648号公報)には、ニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いた塊状重合による付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの文献に記載された技術は、前記誘電特性をはじめとする電気特性、光学特性、低吸湿性に優れ、高いガラス転移温度を有する樹脂を製造する技術の開示はあるものの、近年高まってきている樹脂と無機物との密着性に関する要求特性においては、必ずしも満足できない場合があった。
【0009】
また、付加型ノルボルネン系樹脂の重合時にオレフィン系連鎖移動剤を用いることで分子量を調整する方法ならびにオレフィン性末端基を導入する方法が知られており、例えば特許文献3(特表平9−508649号公報)などに開示されている。
【0010】
これらの方法は、溶液重合時の付加型ノルボルネン樹脂の分子量を調整する方法であり、前述のとおり、熱成形法により成形品を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−163959号公報
【特許文献2】特表2002−531648号公報
【特許文献3】特表平9−508649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、無機基材との密着性に優れ、誘電率および誘電正接が低く、耐熱性、成形性に優れた、付加型ノルボルネン系樹脂、その製造方法、該樹脂を含む樹脂組成物、ならびに該樹脂を含む成形体および該成形体を含む複合部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、以下の第(1)項〜第(14)項によって達成される。
(1)ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることで得られ、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、pは1〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり、p+q+r=4である。)
【0014】
(2)前記付加型ノルボルネン系樹脂の数平均分子量が10万以上100万以下である第(1)項記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【0015】
(3)前記付加型ノルボルネン系樹脂の分散度が10以下である第(1)項または第(2)項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【0016】
(4)前記ノルボルネン系モノマーが、式(2)で表される化合物を含む、第(1)項ないし第(3)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【化2】



(式中、Rは水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基のいずれかを示し;nは0〜2の整数を示す。)
【0017】
(5)前記付加型ノルボルネン系樹脂の周波数45GHzでの誘電率が4.0未満、かつ誘電正接が0.005未満である第(1)項ないし第(4)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【0018】
(6)前記付加型ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度が250℃以上である第(1)ないし第(5)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【0019】
(7)ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることにより、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂を得る、付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、pは1〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり、p+q+r=4である。)
【0020】
(8)前記10族遷移金属触媒に対する前記ノルボルネン系モノマーのモル比が、1:1,000以上1:500,000以下である、第(7)項記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【0021】
(9)前記式(1)で表されるシラン化合物に対する前記ノルボルネン系モノマーの質量比が1:5以上1:1000以下である、第(7)項または第(8)項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【0022】
(10)前記反応液を30〜250℃の温度範囲で塊状重合する第(7)項ないし第(9)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【0023】
(11)前記反応液を不活性ガス雰囲気下または真空下で塊状重合する、第(7)項ないし第(10)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【0024】
(12)第(1)項ないし第(6)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む樹脂組成物。
【0025】
(13)第(1)項ないし第(6)項のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む成形体。
【0026】
(14)第(13)項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む成形体を備える複合部材。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、無機基材との密着性に優れ、誘電率および誘電正接が低く、耐熱性に優れた、付加型ノルボルネン系樹脂、該樹脂を含む樹脂組成物、該樹脂を含む成形体および、該成形体を備える複合部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂およびその製造方法、該樹脂を含む成形体およびその製造方法、該成形体を備える複合部材の実施形態を説明する。
【0029】
本発明の付加型ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることで得られ、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂である。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、Rは炭素数1〜30の末端オレフィンを持たない炭化水素基であり、pは1〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり、p+q+r=4である。)
本発明で用いるノルボルネン系モノマーは、下記式(3)で表される構造を持つものであり、
【化3】



(式中、R11、R12、R13、R14は、水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基、アセトキシ基を含む基を示し、R11、R12、R13、R14は同じであっても、異なっていてもよい。n11は0から5の整数を示す。)
【0030】
上記式(3)中のR11、R12、R13、R14は水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基、アセトキシ基を含む基であればよいが、アルキル基としては、メチル基、エチル基;線状、分岐状のプロピル基;線状、分岐状または環状のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基、トリアコンチル基が挙げられる。
【0031】
また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、デシルフェニル基などの単環芳香族基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基などの縮合多環芳香族基、ビフェニル基、ターフェニル基などの多環芳香族基などが挙げられる。なお、前記芳香族基の芳香環を構成する炭素原子に置換する水素原子は、アルキル基、ハロゲンなどで置換していてもよい。
【0032】
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルヘキシル基、フェニルシクロヘキシル基、ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0033】
また、アセトキシ基を含む基としては、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、ジアセトキシエチル基、アセトキシブチル基、アセトキシヘキシル基、アセトキシデシル基、アセトキシシクロヘキシル基、アセトキシフェニル基などが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、得られる付加型ノルボルネン樹脂の脆性を低めるとともに剛性を高めることができるという理由から、水素原子、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニルエチル基から少なくとも一種選ばれることが好ましく、水素原子、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニルエチル基から構成されることがさらに好ましい。
【0035】
また、ノルボルネン系モノマーの脂環構造を規定する整数n11は、特に限定されるわけではないが、合成のしやすさから1または2(即ち、ノルボルネン構造またはテトラシクトドデセン構造)であるのが好ましい。
【0036】
具体的には、前記ノルボルネン系モノマーの好ましい例としては、ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの無置換ノルボルネン系モノマー;メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチルメチルノルボルネン、プロピルノルボルネン、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネン、オクチルノルボルネン、デシルノルボルネン、ドデシルノルボルネン、メチルテトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、などのアルキル置換ノルボルネン系モノマー;フェニルノルボルネン、ジフェニルノルボルネン、ジフェニルノルボルネン、ナフチル)ノルボルネン、フェニルテトラシクロドデセン、ナフチルテトラシクロドデセン、などのアリール置換ノルボルネン系モノマー;フェニルエチルノルボルネン、フェニルブチルノルボルネン、ナフチルエチルノルボルネン、フェニルエチルテトラシクロドデセン、などのアラルキル置換ノルボルネン系モノマー;アセトキシメチルノルボルネン、アセトキシエチルノルボルネン、アセトキシブチルノルボルネン、アセトキシメチルテトラシクロドデセン、などのアセトキシ基を含む基を持つノルボルネン系モノマー;等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いるノルボルネン系モノマーの置換基の配置としては、R11、R12、R13、R14の内、少なくとも3つが水素原子であり1つが置換体である(即ち、下記式(2)に表される構造)ことが好ましい。
【化2】



(式中、Rは、水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基、アセトキシ基を含む基を示し、nは0から5の整数を示す。)
【0037】
これらの中でも、上述のとおりRは、水素原子、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニルエチル基から少なくとも一種選ばれることが好ましく、水素原子、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニルエチル基から構成されることがさらに好ましく、ノルボルネン系モノマーの脂環構造を規定する整数nは、特に限定されるわけではないが、合成のしやすさから1または2(即ち、ノルボルネン構造またはテトラシクトドデセン構造)であるのが好ましい。
【0038】
具体的には、かかるノルボルネン系モノマーの好ましい例としては、ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの無置換ノルボルネン系モノマー;5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、8−メチル−2−テトラシクロドデセン、8−エチル−2−テトラシクロドデセン、などのアルキル置換ノルボルネン系モノマー;5−(2−フェニルエチル)−2−ノルボルネン、5−(4−フェニルブチル)−2−ノルボルネン、8−(2−フェニルエチル)−2−テトラシクロドデセン、などのアラルキル置換ノルボルネン系モノマー;であるのがより好ましく、
ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−(2−フェニルエチル)−2−ノルボルネン、5−(4−フェニルブチル)−2−ノルボルネン、であるのがさらに好ましい。
これにより、付加型ノルボルネン樹脂の脆性を低めるとともに剛性を高めることができ、絶縁性を高めることができる。
【0039】
本発明で用いる10族金属触媒は、パラジウム、ニッケルおよび白金のうちの少なくとも1つを含有する触媒である。これにより、環状オレフィン系の低分子量成分同士を塊状重合させることができる。かかる触媒としては、パラジウムを含有する触媒を用いるのがより好ましい。
【0040】
かかる10族遷移金属触媒は、下記式(4)および/または(5)で表されるパラジウム触媒から少なくとも1種選ばれるのが好ましい。
[R’’’Pd(L)(L’)] (4)
[R’’’’Pd(L)(L’’)[WCA] (5)
(式中、R’’’およびR’’’’はカルボキシレート基、チオカルボキシレート基、ジチオカルボキシレート基、及びヒドロカルビル基から選択されるアニオン性配位子を表し;Lは第15族の中性電子供与配位子を表し;L’はハロゲン配位子を表し;L’’は不安定中性電子供与配位子を表し;WCAは弱配位アニオンを表し;xは0〜2の整数であり;yは0〜2の整数であり;zは0〜2の整数であり、bおよびdは触媒錯体全体の電子電荷のバランスをとるためにカチオン錯体とアニオン錯体とが用いられた数を表す数字である。)
【0041】
かかる10族遷移金属触媒として、さらに好ましくは、[Pd(NCMe)(OAc)(P(i−プロピル)]B(C、[Pd(NCC(CH)(OAc)(P(i−プロピル)]B(C、[Pd(OC(C)(OAc)](P(i−プロピル)]B(C、[Pd(HOCH(CH)(OAc)](P(i−プロピル)]B(C、[Pd(NCMe)(OAc)](P(シクロヘキシル)]B(C、Pd(OAc)(P(シクロヘキシル)、Pd(OAc)(P(i−プロピル)、Pd(OAc)(P(i−プロピル)(フェニル))、または[Pd(NCMe)(OAc)(P(シクロヘキシル)(t−ブチル))]B(Cから少なくとも1種選ばれるものである
【0042】
これにより、ノルボルネン系モノマーの重合速度を高めるとともに、付加型ノルボルネン系樹脂への転化率を高めることができる。
【0043】
本発明で用いるシラン化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基を示し;Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基を示し;Rは炭素数1〜30の末端オレフィンを持たない炭化水素基を示し;pは1〜3の整数を示し;qは1〜3の整数を示し;rは0〜2の整数を示し;p+q+r=4である。)
【0044】
上記式中のRである末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基の具体例としては、特に限定されるわけではないが、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基、などの脂肪族アルケニル基;スチリル基、3,5−ジビニルフェニル基、メチルビニルフェニル基、ビニルナフチル基などの芳香族アルケニル基;スチリルエチル基、(ビニルナフチル)エチル基、スチリルブチル基、スチリルヘキシル基、スチリルデシル基、などのビニル基を有するアラルキル基;などが挙げられる。
【0045】
上記式中のRである炭素数1〜10のアルコキシ基の具体例としては、特に限定されるわけではないが、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、デシルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロピオキシ基、などの脂肪族のみから構成されるアルコキシ基; ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基、トリルエチルオキシ基、(エチルフェニル)エチルオキシ基、(ジメチルフェニル)エチルオキシ基、(メトキシフェニル)エチルオキシ基、などのアラルキル骨格を有するアルコキシ基;アセトキシ基などのアルキロイロキシ基、ベンゾイロキシ基などのアリーロイロキシ基が挙げられる。
【0046】
上記式中のRである炭素数1〜30の末端オレフィンを持たない炭化水素基の具体例としては、特に限定されるわけではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、などの環状アルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などの芳香族基;ベンジル基、フェニルエチル基、(ナフチル)エチル基、フェニルブチル基、などのアラルキル基;などが挙げられる。
【0047】
具体的には、かかるシラン化合物の好ましい例としては、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロピルオキシシラン、ビニル−トリス(デシルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシランなどのビニルシラン類;アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、トリアリルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリイソプロピルオキシシラン、アリル−トリス(デシルオキシ)シラン、アリル−トリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのアリルシラン類;3−ブテニルトリメトキシシラン、ジ(3−ブテニル)ジメトキシシラン、トリ(3−ブテニル)メトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、3−ブテニルトリイソプロピルオキシシラン、3−ブテニル−トリス(デシルオキシ)シラン、3−ブテニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのブテニルシラン類;スチリルトリメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、トリスチリルメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルトリイソプロピルオキシシラン、スチリル−トリス(デシルオキシ)シラン、スチリル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、スチリルトリアセトキシシランなどのスチリルシラン類;1−(4−ビニルナフチル)トリメトキシシラン、ビス−1−(4−ビニルナフチル)ジメトキシシラン、トリス−1−(4−ビニルナフチル)メトキシシラン、1−(4−ビニルナフチル)トリエトキシシラン、1−(4−ビニルナフチル)トリイソプロピルオキシシラン、1−(4−ビニルナフチル)−トリス(デシルオキシ)シラン、1−(4−ビニルナフチル)−トリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのビニルナフチルシラン類;等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いるシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロピルオキシシラン、ビニル−トリス(デシルオキシ)シラン、などのビニルシラン類;
スチリルトリメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、トリスチリルメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルトリイソプロピルオキシシラン、などのスチリルシラン類;であるのがより好ましく、ビニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランであるのがさらに好ましい。これにより、ノルボルネン系モノマーの付加重合時の連鎖移動剤としての反応性を高めるとともに、得られる付加型ノルボルネン系樹脂の無機基材との密着性を高めることができる。
【0048】
本発明の付加型ノルボルネン系樹脂は、開環メタセシス重合などとは異なりノルボルナン骨格同士が直接結合した繰り返し単位を含むものである。具体的には、下記式(6)に示す繰り返し単位を含むものである。
【化6】



(式中、R11、R12、R13、R14は、前記式(3)で表わされるノルボルネン系モノマーの置換基に由来し、水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基、アセトキシ基を含む基を示す。また、R11、R12、R13、R14は同じであっても、異なっていてもよい。n11は前記式(3)で表わされるノルボルネン系モノマーの構造に由来し、0から5の整数を示す。)
【0049】
また、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂は、式(1)に表されるシラン化合物が塊状重合中に連鎖移動剤として働き、樹脂中に取り込まれているため、0.01質量%以上2.0質量%以下のケイ素原子を含むものである。なお、該シラン化合物に由来する構造はカップリング剤様の効果を奏することで、無機基材との密着性を高めることができる。
【0050】
本発明ではケイ素原子の含有率はアルカリ溶融〜吸光光度法を用いて測定する。具体的には、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂を1gサンプリングし、数ミリの大きさに粉砕した後、1,2,4−トリクロロベンゼン30gと混合し、室温で72時間撹拌した後、固形分をろ別、溶媒を除去して得た試料0.1gを白金ルツボに採り、0.5mLの10%KOH-PGME溶液を加えて室温で1時間浸潤させ、さらに1.0gの炭酸ナトリウムを加えて徐々に加熱し、最後に800℃まで強熱して有機SiをSiO32−として固定する。室温まで放冷後に15mLの水中に溶かし検液とした。定容後検液を、モリブデン青吸光光度法(JIS-K0101-44)により発色させ、分光光度計(島津UV3100型紫外可視分光光度計)に発色液を導入し、波長815nmの吸光度を測定することで、試料中のケイ素原子の含有率に換算した。
【0051】
このようなケイ素原子を含有する付加型ノルボルネン系樹脂は、カップリング剤様の効果を奏するシリル基を有するオレフィン骨格を有するため、前記シリル基の効果により、無機基材などとの密着性に優れ、ケイ素原子の含有率が非常に低いため、誘電正接が低い値を示す。
【0052】
また、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂が十分な機械強度を有すること、および本発明のモノマーと触媒の適用範囲から、ポリスチレン換算による数平均分子量は5万以上1000万以下であり、好ましくは10万以上100万以下であり、より好ましくは20万以上100万以下であり、さらに好ましくは50万以上100万以下である。
【0053】
また、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂は、式(1)に表されるシラン化合物が塊状重合中に連鎖移動剤として働くことで、分散度が10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは分散度が5以下である。
【0054】
重量平均分子量、数平均分子量および分散度は、GPC(ゲル浸透クロマトグラム)装置を用い、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、カラム温度:140℃にて、ポリスチレン換算値として算出することができる。
【0055】
特に、本発明の付加型ノルボルネン系樹脂は、周波数45GHzにおける誘電率(比誘電率)が4.0以下であり、周波数45GHzにおける誘電正接が0.005未満である。これにより、例えばミリ波のような高周波域の搬送波を送信・受信するアンテナ装置や高周波伝送用の回路基板等の電子部品のように低誘電率および低誘電正接が要求される成形体に本発明を適用することができる。このような本発明を適用した高周波用のアンテナ装置や回路基板は、搬送波の伝送速度が速く、また、伝送ロスが少ない。
【0056】
なお、ここで、上記の比誘電率および誘電正接の測定方法は、JIS1660−1、IEC61338−1−4に準ずるものである。また、上記の誘電率および誘電正接は、厳密に45GHzでの値ではなく、その周辺の周波数においても同様である。
【0057】
本発明の付加型ノルボルネン樹脂は、DMS測定におけるガラス転移温度は、200℃以上であり、好ましくは250℃以上である。これにより、高い耐熱性が要求される様々な成形体に適用することができる。
【0058】
付加型ノルボルネン樹脂のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル株式会社製、型番:DMS6100)により、測定サンプルサイズ:4mm(幅)×20mm(長さ)×500μm(厚み)、周波数:1Hz、測定温度範囲:30〜300℃、昇温速度:10℃/分により測定し、Tanδのピークとして算出することができる。
【0059】
本発明の反応液は、ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、シラン化合物以外にも、助触媒、フィラー、前記シラン化合物と同様のものまたはそれ以外のシランカップリング剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤などを含んでいても良い。
前記助触媒として、弱配位性アニオン塩を含有するイオン錯体を含むのが好ましい。すなわち、前記付加型ノルボルネン系樹脂を合成する場合、前記触媒の他に助触媒を添加する方が好ましい。これにより、付加型ノルボルネン系モノマーの重合速度をより高めることができる。
【0060】
前記助触媒としては、特に限定されるわけではないが、アルキルアルミニウム、ルイス酸又は、弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体等を挙げることができ、それらの中でも、弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体が好ましい。
【0061】
また、前記助触媒としては、下記式(7)で表されるものが、さらに好ましい。

[C][WCA] 式(7)

[上記式において、Cは、プロトン(H)、有機基含有カチオン、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは遷移金属のカチオンを表し、WCAは、上記で定義したとおりであり、eとdは、それぞれ、カチオン錯体(C)と弱配位性アニオン塩(WCA)の、総合塩錯体上の電子電荷を釣り合わせるように定められる数である。]
【0062】
前記弱配位性アニオン(WCA)塩を含むイオン錯体としては、特に限定されるわけではないが、リチウム(ジエチルエーテル)2.5テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、H(OEtテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[(4−メチル)−α,α−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンメタノラト−κO]アルミネート、ナトリウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリアルキル及びトリアリールホスホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、並びにトリチル・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0063】
また、前記10族遷移金属触媒に対するノルボルネン系モノマーのモル比(即ち、10族遷移金属触媒のモル数:ノルボルネン系モノマーのモル数)は、1:1,000以上1:500,000以下であるのが好ましく、1:10,000以上1:250,000以下であるのがより好ましく、1:25,000以上1:100,000以下であるのがさらに好ましい。これにより、確実にノルボルネン系モノマーを重合し、付加型ノルボルネン系樹脂を得ることができるとともに、付加型ノルボルネン系樹脂中に含まれる遷移金属触媒の量を低減することができる。
【0064】
前記助触媒の添加量は、特に限定されるわけではないが、10族遷移金属触媒に対する助触媒のモル比(即ち、10族遷移金属触媒のモル数:助触媒のモル数)が、1:0.1以上1:10以下が好ましく、1:0.3以上1:8以下がより好ましく、1:0.5以上1:5以下がさらに好ましい。これにより、ノルボルネン系モノマーの重合速度が高まるとともに、意図しない反応を抑制することができる。
【0065】
また、式(1)で表されるシラン化合物に対するノルボルネン系モノマーの質量比(即ち、式(1)で表されるシラン化合物の質量:ノルボルネン系モノマーの質量)は、1:5以上1:1,000以下であるのが好ましく、1:20以上1:500以下であるのがより好ましく、1:100以上1:300以下であるのがさらに好ましい。これにより、付加型ノルボルネン系樹脂と無機基材との密着性が高まるとともに、誘電率および誘電正接が低い成形体を得ることができる。
【0066】
反応液の加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱された熱盤上に型を載置して反応液を加熱する方法、加熱されたオーブン内に型を載置して反応液を加熱する方法、型を熱プレスして反応液を加熱する方法、赤外線を反応液に照射して加熱する方法等が挙げられる。
【0067】
この加熱温度は、反応液の組成や加熱時間等に応じて適宜設定されるものであり、前述したノルボルネン系モノマーが塊状重合することにより反応液を硬化または固化させて付加型ノルボルネン系樹脂を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば20℃以上250℃以下であるのが好ましく、30℃以上250℃以下であるのがより好ましく、50℃以上200℃以下であるのがさらに好ましい。
加熱方法として熱プレスを用いる際の加圧の圧力は、特に限定されないが、0.5〜8MPaが好ましく、1〜5MPaがさらに好ましい。
【0068】
また、加熱時間は、反応液の組成や加熱温度等に応じて適宜設定されるものであり、前述したノルボルネン系モノマーが塊状重合することにより反応液を硬化または固化させて付加型ノルボルネン系を形成することができるものであれば、特に限定されないが、10分〜24時間程度である。
【0069】
反応液の加熱の一部または全部は、窒素雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ノルボルネン系モノマーの重合速度を向上することができるとともに、意図しない反応を抑制することができる。
【0070】
本発明の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法は、ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることにより、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂が得られればよいが、好ましくは前述の構成成分、成分比、反応条件にて、適宜実施することができるものである。
【0071】
本発明のノルボルネン系樹脂に用いることができるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーが挙げられる。
【0072】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライト等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム(軽質、重質)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素、その他鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、亜鉛華、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛が挙げられる。
【0073】
また、有機フィラーとしては、合成樹脂粉末が挙げられる。この合成樹脂粉末としては、例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の粉末、またはこれらの樹脂の共重合体の粉末が挙げられる。また、有機フィラーの他の例としては、芳香族または脂肪族ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0074】
特に、前記フィラーは、無機フィラーであるのが好ましい。これにより、得られる付加型ノルボルネン樹脂を含む成形体の熱膨張係数を効果的に低めることができる。また、成形体の耐熱性を優れたものとすることができる。また、前記無機フィラーは、シリカフィラーであるのが好ましい。これにより、得られる付加型ノルボルネン樹脂を含む成形体の誘電特性を優れたものとしつつ、成形体の熱膨張係数を低めることができる。前記シリカフィラーとしては、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ等が挙げられるが、溶融シリカフィラーを用いるのが好ましく、さらには最大充填量が大きくできるので球状シリカがより好ましい。これにより、成形体の誘電特性を特に優れたものとすることができる。
【0075】
また基材としては、ガラス、炭素繊維、アラミド繊維、紙等の材質を適宜、織布、不織布、などとした、当業者に公知の積層板、回路基板で使用される基材が使用できる。
【0076】
本発明で必要に応じて用いることができる添加剤としては、特に限定されるわけではないが、前記シラン化合物と同様のものまたはそれ以外のシランカップリング剤、難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。
前記シラン化合物と同様のもの以外のシランカップリング剤としては、本発明の特性を損なわない範囲で、フィラーと樹脂や、ガラスクロスなどの基材と樹脂との親和性など公知の作用をもたらすために、アルキルシラン、アリールシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、シラザンなどが例示される。
【0077】
また前記難燃剤の代表例としては、トリキシレニルホスフェート、ジキシレニルホスフェート、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンー10−オキシドなどのリン系難燃剤、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤等を挙げることができ、成形体の難燃性を向上させることができる。
【0078】
前記酸化防止剤の代表例としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド、2,4−ビス((オクチルチオ)メチル)−o−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、などのヒンダードフェノール化合物が挙げられる。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、塊状重合過程で生成する付加型ノルボルネン系樹脂と未反応モノマーなどの反応液成分が混在した状態、例えばBステージ化した状態のものが例示される。
【0080】
本発明では、ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を用いて、塊状重合せしめることで、付加型ノルボルネン系樹脂を得ることができる。
なお、「塊状重合」とは、一般に、実質的無溶媒で行なわれる重合反応を意味するが、場合によっては、少ない割合の溶媒をノルボルネン系モノマーに添加してもよい。また、10族遷移金属触媒および式(1)で表されるシラン化合物をノルボルネン系モノマーに加える前に、溶媒中に予め溶解することが望ましい場合には、酢酸エチル、THF、トルエン等の溶媒を用いてもよい。その際、反応液中の溶媒の含有量は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
本発明の成形体は、前記本発明のノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、式(1)で表されるシラン化合物、または必要に応じて、前述の助触媒、フィラーや基材、その他添加剤などを加え、反応液を所定の金型などに充填するなどして賦型すれば得られるが、
工業的には、バルクの成形体を製造する場合は、反応射出成形法(RIM法)、インジェクション成形、コンプレッション成形、トランスファー成形など公知の方法を用いればよく、また積層板などの板状成形体を製造する場合は、ガラスクロス、ガラス不織布などの無機基材、紙、ナノセルロース、アラミド繊維などに代表される有機織布、同不織布などの有機基材に含浸させ、必要に応じてBステージ化等を行い、プリプレグとして、単数または複数枚のプリプレグを積層した後、必要に応じて、離型シートで挟んで加熱加圧等の手段を用いて硬化させればよい。
【0082】
また、本発明の複合部材は、前記成形体を製造する手順に順じ、バルクのインサートを使用した複合部材ならば、金型に予めインサートを固定し、本発明の反応液または樹脂組成物を流し込んで硬化させればよく、回路基板のようなものであれば、前記積層板の製造において、離型シートに替えて、金属箔などを使用すれば、製造することができる。
【実施例】
【0083】
<実施例1>
(重合性反応液の調製)
下記モノマー(A)と下記化合物(B)を混合し、室温で5分間攪拌した。さらに下記Pd触媒(C)および下記助触媒(D)を加え、室温で1分間攪拌し、重合性反応液Rを得た。
・モノマー(A):HexNB(5−ヘキシルノルボルネン)
・化合物(B):ビニルトリメトキシシラン (KBM−1003 信越化学社製)
・触媒(C):ビス(トリイソプロピルホスフィン)パラジウムアセテート(アセトニトリル)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Pd触媒1)
・助触媒(D):N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
この重合性反応液Rの調整に際しては、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=20:1の割合となるようにした。また、モノマー(A)、Pd触媒(C)および助触媒(D)のモル比が(A):(C):(D)=50,000:1:1の割合となるようにした。
【0084】
(成形体の作製)
中心線平均粗さRa0.06μmの銅箔(三井金属箔製造株式会社製DFF−NA 18μm厚)を銅箔粗面が内側となるようにステンレス板(15cm角)に貼り付けたものを2枚用意した。コの字型のシリコーンゴム製スペーサー(厚み0.5mm、150mm角から140mm×130mmを切り抜いたもの)、2枚の銅箔付きステンレス板で、銅箔が内側となるように挟み込み、クランプで固定し型を作製した。作製した型へ重合性反応液Rを8mL流し込み、大気下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した。型を室温にて冷却した後、銅箔付き成形体を取り出した。
【0085】
<実施例2>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=10:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0086】
<実施例3>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=33:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0087】
<実施例4>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=100:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0088】
<実施例5>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=200:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0089】
<実施例6>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、触媒(C)および助触媒(D)のモル比が(A):(C):(D)=10,000:1:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0090】
<実施例7>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、触媒(C)および助触媒(D)のモル比が(A):(C):(D)=100,000:1:1の割合となるようにした以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0091】
<実施例8>
成形体の作製において、大気下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した代わりに、大気下オーブンを用いて50℃で5時間加熱した以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0092】
<実施例9>
成形体の作製において、大気下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した代わりに、大気下オーブンを用いて200℃で1時間加熱した以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0093】
<実施例10>
成形体の作製において、大気下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した代わりに、窒素下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0094】
<実施例11>
成形体の作製において、大気下オーブンを用い80℃で1時間加熱した後、さらに150℃で1時間加熱した代わりに、真空プレスを用い120℃、圧力3MPaで2時間保持した後に、210℃に昇温してさらに2時間保持した以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0095】
<実施例12>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)としてDecNB(5−デシル−2−ノルボルネン)を用いた以外は、前述の実施例6と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0096】
<実施例13>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)としてBuNB(5−ブチル−2−ノルボルネン)を用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0097】
<実施例14>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)としてPENB(5−フェニルエチル−2−ノルボルネン)を用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0098】
<実施例15>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)としてHexNBとPENBの重量比50:50の混合物を用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0099】
<実施例16>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)としてHexNBとTD(テトラシクロドデセン)の重量比50:50の混合物を用いた以外は、前述の実施例6と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0100】
<実施例17>
重合性反応液の調整において、化合物(B)としてp−スチリルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0101】
<実施例18>
重合性反応液の調整において、化合物(B)としてビニルトリエトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0102】
<比較例1>
重合性反応液の調整において、化合物(B)を用いない以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0103】
<比較例2>開環型ノルボルネン系樹脂を用いた比較例
重合性反応液の調整において、触媒(C)としてPd触媒1の代わりにベンジリデン(1,3−ジメチルイミダゾリジ−2−イリデン)(トリシクロゲキシルホスフィン)ルテニウムジクロライド(Ru触媒1)を用い、助触媒(D)としてトリフェニルホスフィンを用いた以外は、前述した比較例1と同様にして、銅箔付き成形体を得た。
【0104】
<比較例3>
重合性反応液の調整において、化合物(B)としてメチルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0105】
<比較例4>
重合性反応液の調整において、化合物(B)としてデシルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0106】
<比較例5>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0107】
<比較例6>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0108】
<比較例7>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0109】
<比較例8>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0110】
<比較例9>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0111】
<比較例10>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として5−トリメトキシシリルー2−ノルボルネンを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0112】
<比較例11>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)、化合物(B)の重量比が(A):(B)=4:1の割合となるようにした以外は、前述の比較例10と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0113】
<比較例12>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として1−ヘキセンを用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0114】
<比較例13>
重合性反応液の調整において、化合物(B)として3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンを用いた以外は、前述の実施例1と同様に行ったが、反応が進行せずモノマーが揮発したため銅箔付き成形体は得られなかった。
【0115】
<比較例14>
重合性反応液の調整において、化合物(B)としてトリメトキシヒドロシランを用いた以外は、前述の実施例1と同様に行ったが、反応が進行せずモノマーが揮発したため銅箔付き成形体は得られなかった。
<比較例15>溶液重合品で試みた比較例
(5−ヘキシルノルボルネンの溶液重合)
ステンレス鋼反応器において、ヘキシルノルボルネン(180.0g)と1−ヘキセン(12.2mL)とをトルエン(1170mL)と共に混合し、窒素雰囲気下、80℃において撹拌するようにセットした。トルエン(10mL)中のPd触媒1(0.038g)の溶液を加えて、この溶液を3時間撹拌した。得られた粘稠なポリマー溶液を次に、メタノールを徐々に加えることによって沈殿させた。得られた白色固体ポリマーをメタノールによって洗浄し、真空中で乾燥させた。収量:144.8g(80%)、Mw=477,000、PDI=3.2。
【0116】
(成形体の作製)
上記で得られた5−ヘキシルノルボルネンポリマー(30g)およびビニルトリメトキシシラン(1.5g)をメシチレン(70g)に溶解し、ポリマー溶液を調整した。
【0117】
中心線平均粗さRa0.06μmの銅箔(三井金属箔製造株式会社製DFF−NA 12μm厚)上に、厚み1.7mm、200mm×200mmで、中央部が160mm×160mmに打ち抜かれたシリコーンゴムを敷き、水平になるようにセットした。
【0118】
作製した型へポリマー溶液を40mL流し込み、大気下オーブンを用い80℃で5時間加熱した後、さらに150℃で5時間加熱した。型を室温にて冷却した後、銅箔付き成形体を取り出したところ、樹脂層が非常に脆く評価を行うことは出来なかった。
【0119】
実施例1ないし18および比較例1ないし12で得られた銅箔付き成形体の銅箔と成形体との密着性をJIS−C−6481に従って、90℃引きはがし強度として評価を行った。
【0120】
また、銅箔付き成形体を塩化第二鉄溶液に室温で30分間浸漬し銅箔をエッチングした後、純水で洗浄した成形体の誘電特性、分子量、ケイ素原子の含有率、ガラス転移温度を測定した。
【0121】
【表1】



【0122】
<実施例19>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)と下記フィラー(E)を重量比(A):(E)=80:20で混合し、室温で1時間撹拌した組成物をモノマー(A)の代わりに用いた以外は、前述の実施例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。なお、触媒などの調合時には混合物中のモノマー成分に対する割合を前述の実施例1と同様にして用いた。
・モノマー(A):HexNB
・フィラー(E):デシルシラン処理された溶融シリカ(株式会社アドマテックス製:アドマファインSO−E2:平均粒子径0.5μm)
【0123】
<実施例20>
重合性反応液の調整において、フィラー(E)としてビニルシラン処理された溶融シリカ(株式会社アドマテックス製:アドマファインSO−E2:平均粒子径0.5μm)を用いた以外は、前述の実施例19と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0124】
<実施例21>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)とフィラー(E)の重量比を(A):(E)=60:40とした以外は、前述の実施例19と同様にして銅箔付き成形体を作製した。
【0125】
<比較例16>
重合性反応液の調整において、モノマー(A)と下記フィラー(E)を重量比(A):(E)=80:20で混合し、室温で1時間撹拌した組成物をモノマー(A)の代わりに用いた以外は、前述の比較例1と同様にして銅箔付き成形体を作製した。なお、触媒などの調合時には混合物中のモノマー成分に対する割合を前述の比較例1と同様にして用いた。
【0126】
実施例19ないし21および比較例16で得られた銅箔付き成形体の銅箔と成形体との密着性をJIS−C−6481に従って、90℃引きはがし強度として評価を行った。
【0127】
また、銅箔付き成形体を塩化第二鉄溶液に室温で30分間浸漬し銅箔をエッチングした後、純水で洗浄した成形体の誘電特性、ガラス転移温度を測定した。
【0128】
【表2】



【0129】
<実施例22>
成形体の作製において、銅箔付きステンレス板の代わりにステンレス板を用いた以外は、前述の実施例1と同様にしてステンレス板付き成形体を作製した。
【0130】
<実施例23>
成形体の作製において、銅箔付きステンレス板の代わりにガラス板を用いた以外は、前述の実施例1と同様にしてガラス板付き成形体を作製した。
【0131】
<比較例17>
成形体の作製において、銅箔付きステンレス板の代わりにステンレス板を用いた以外は、前述の比較例1と同様にしてステンレス板付き成形体を作製した。
【0132】
<比較例18>
成形体の作製において、銅箔付きステンレス板の代わりにガラス板を用いた以外は、前述の比較例1と同様にしてガラス板付き成形体を作製した。
【0133】
実施例22と23および比較例17と18で得られた成形体の樹脂成形体面について、JIS−K−5400付着性(クロスカット法)に従い、テープテストにより密着性を評価した。すなわち、カッターナイフで、絶縁膜に1mm角の正方形の升目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を張った。1分後、無機基材を抑えてセロテープを剥がし、無機基材から樹脂成形体がいくつ剥がれるかを数えた。
【0134】
【表3】



【0135】
表1から明らかなように、本発明に係る各実施例の成形体は、密着性、耐熱性、誘電正接の評価に関し、各比較例の成形体に比し、優れていた。比較例1ないし比較例10、および比較例12で作製した成形体は、式(1)で表されるシラン化合物を用いていないため、銅箔との密着性に劣るものであった。さらに、比較例2で作製した成形体は開環型ノルボルネン系樹脂であるため、耐熱性に劣る結果であった。また、比較例11で作製した成形体は、式(1)で表されるシラン化合物以外のシラン化合物を大量に使用しているため、密着性は実施例程度の値であるが誘電正接が高く誘電特性に劣るものであった。なお、比較例13ないし15では、サンプルが脆いため評価を行う事が出来なかった。
表2から明らかなように、本発明に係る各実施例の成形体は、密着性、耐熱性、誘電正接の評価に関し、各比較例の成形体に比し、優れていた。比較例16で作製した成形体は式(1)で表されるシラン化合物を用いていないため、銅箔との密着性に劣るものであった。
表3から明らかなように、本発明に係る各実施例の成形体は、密着性の評価に関し、各比較例の成形体に比し、優れていた。比較例17および18で作製した成形体は、式(1)で表されるシラン化合物を用いていないため、ステンレス板およびガラス板との密着性に劣るものであった。
このように、本発明に係る各実施例の成形体は、密着性、耐熱性、誘電正接の評価に関し優れた結果を与えることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることで得られ、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、pは1〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり、p+q+r=4である。)
【請求項2】
前記付加型ノルボルネン系樹脂の数平均分子量が10万以上100万以下である請求項1記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【請求項3】
前記付加型ノルボルネン系樹脂の分散度が10以下である請求項1または2に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【請求項4】
前記ノルボルネン系モノマーが、式(2)で表される化合物を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【化2】



(式中、Rは水素原子、線状、分枝状もしくは環状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のアラルキル基のいずれかを示し;nは0〜2の整数を示す。)
【請求項5】
前記付加型ノルボルネン系樹脂の周波数45GHzでの誘電率が4.0未満、かつ誘電正接が0.005未満である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【請求項6】
前記付加型ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度が250℃以上である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂。
【請求項7】
ノルボルネン系モノマー、10族遷移金属触媒、および式(1)で表されるシラン化合物、を含む反応液を塊状重合せしめることにより、ケイ素原子の含有率が0.01質量%以上2.0質量%以下であり、数平均分子量が5万以上1000万以下である付加型ノルボルネン系樹脂を得る、付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【化1】



(式中、Rは末端オレフィンを持つ炭素数2〜30の炭化水素基、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキロイロキシ基、アリーロイロキシ基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基の群から少なくとも1つ選ばれる基であり、pは1〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり、p+q+r=4である。)
【請求項8】
前記10族遷移金属触媒に対する前記ノルボルネン系モノマーのモル比が、1:1,000以上1:500,000以下である、請求項7記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記式(1)で表されるシラン化合物に対する前記ノルボルネン系モノマーの質量比が1:5以上1:1000以下である、請求項7または請求項8に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記反応液を30〜250℃の温度範囲で塊状重合する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記反応液を不活性ガス雰囲気下または真空下で塊状重合する、請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む成形体。
【請求項14】
請求項13に記載の付加型ノルボルネン系樹脂を含む成形体を備える複合部材。




【公開番号】特開2012−121956(P2012−121956A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272402(P2010−272402)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】