説明

代謝調節型グルタミン酸受容体のリガンド、及び、NAALADaseの阻害剤

【課題】代謝調節型グルタミン酸レセプタまたはNAALADase酵素のアゴニストまたはアンタゴニストの提供。
【解決手段】一般式1の化合物、例えばA、Bの化合物。





【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年3月9日に出願された米国暫定特許出願60/188,031号;1999年11月22日に出願された米国暫定特許出願60/166,915号;及び1999年4月28日に出願された米国暫定特許出願60/131,627号の優先権を主張するものである。
【0002】
グルタミン酸は、ほ乳類中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質である。グルタミン酸の神経伝達活性は、主にリガンド開口型イオンチャンネルによって媒介される。さらに、グルタミン酸は第二メッセンジャによって媒介される応答も誘導するという観察に基づいて、代謝調節型受容体(mGluR)と呼ばれる、Gタンパク質に共役する個別のグループのグルタミン酸受容体が発見された。Schoepp and Conn, Trends Pharmacol. Sci. 14: 13-20 (1993)。グルタミン酸代謝調節型受容体の作用で最初に解説されたものは、イノシトールホスホリピド(PI)加水分解である。 Nicoletti et al., J. Neurochem. 46: 40-46 (1986) and Sugiyama et al., Nature 325: 531-533 (1987)。分子クローニング技術により、異なる伝達機序や発現パターン、及びグルタミン酸アゴニストに対する感受性を持つ代謝調節型受容体の大きなファミリーが見つかった。上記のSchoepp 及び Connの文献。
【0003】
これら代謝調節型受容体に関して観察された分子の異質性と合致して、電気生理学的研究の結果、これらの受容体が、シナプスの可塑性、シナプス前部抑制、及び、イオンチャネル変調による細胞興奮性の調節において、多様な役割を持つことが示唆されたBashir et al., Nature 363: 347-363 (1993); Linden et al., Neuron 7: 81-89 (1991); Baskys and Malenka, J. Physiol. (Lond.) 444: 687-701 (1991); Charpak et al. Nature 347: 765-767 (1990); 及びLester and Jahr, Neuron 5: 741-749 (1990)。しかしながら、これらの細胞機能を媒介している特定のmGluR受容体はまだ大部分が定義されていない。
【0004】
特定のmGluRサブタイプの持つ生理学的役割の証拠は、これら受容体の選択的アゴニスト及びアンタゴニストの研究から得られた。例えば、(1S,3R)-1-アミノシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸(ACPD)は、mGluR1、mGluR2、mGluR3及びmGluR5受容体の選択的かつ強力な活性化剤である。Masu et al., Nature 349: 760-765 (1991); Abe et al., J. Biol. Chem. 267: 13361-13368 (1992); Tanabe et al., Neuron 8: 169-179 (1992); 及びTanabe et al., J. Neurosci. 13: 1372-1378 (1993)。L-2-アミノ-4-ホスホノブトリック酸(phosphonobutryic acid )(L-AP4)は、mGluR4及びmGluR6を活性化させることが示されている。Id., Thomsen et al., Eur. J. Pharmacol. 227: 361-362 (1992); Nakajima et al., J. Biol. Chem. 268:11868-11873 (1993). L-AP4は、所定の脳及び脊髄ニューロンで、神経伝達物質の放出や、電位依存的カルシウム進入を阻害する。Koerner and Cotman, Brain Res. 216: 192-198 (1981); Trombley and Westbrook, J. Neurosci. 12:2-43-2050 (1992); 及びSahara and Westbrook, J. Neurosci. 13: 3041-3050 (1993)。しかし網膜双極ニューロンでは、シナプス後部L-AP4受容体は、アホスホジエステラーゼを活性化させる。Nawy and Jahr, Nature 346: 269-271 (1990)。
【0005】
複数のmGluRサブタイプが同じグループのニューロン内に存在できる。特定のmGluRの細胞上及び細胞レベル下での局在が、入ってくる感覚情報を形作るには重要であるため、mGluRグループの他の受容体を同定することも重要である。同定さえすれば、その受容体に関連する応答を変調するために、特異的アゴニスト及びアンタゴニストを作製できる。全く驚くべきことに、本発明は、mGluR4又はmGluR6のいずれも発現しないニューロンで伝達物質の放出を変調するL-AP4感受性受容体を同定し、他の関連する必要性も満たすものである。
【0006】
上で言及したように、代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluRs)は、多数の第二メッセンジャ系に共役したGタンパク質結合型受容体の不均質なファミリーである。これらには、アデニル酸シクラーゼの負の変調、ホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼCの活性化、及び、イオンチャネル電流の変調がある[Science, 1992, 258, 597; Trends in Pharmacol. Sci.1993, 14, 13; J.Med.Chem. 1995, 1417]。三つの種類のmGluR受容体が同定されている。グループIの受容体はホスホイノシチドの加水分解と共役し、mGluR1 及びmGluR5がこれに含まれる。グループIIの受容体は環状アデノシン5'-一リン酸(cAMP)形成の阻害と共役し、mGluR2 及びmGluR3がこれに含まれる。グループIIIの受容体(mGluR4、 mGluR6、mGluR7 及びmGluR8)もcAMPと負に共役している。このように、これらmGluRサブタイプのそれぞれは、その薬理及び配列相同性に基づいて区別されている。グルタミン酸受容体の過剰な活性化や、又は、生理的なグルタミン酸受容体活性化の潜在的な悪影響から防御する細胞機序の障害が、多数の神経障害の病因であると示唆されている。これらの障害には、てんかん、虚血、中枢神経系の外傷、神経痛、及び、慢性神経変性性疾患がある。グルタミン酸作動性シナプスは広汎に分布しているために、mGluRは中枢神経系の様々な機能に参与している可能性がある。加えて、mGluRサブタイプの多様性及び不均一な分布を考えると、限られた数の中枢神経系機能に影響する高度に選択的な薬剤を開発できる可能性がある。従って、mGluRは治療薬開発の新規なターゲットであり、幅広い精神医学的及び神経学的障害の治療に劇的な影響を与えると考えられる。
【0007】
虚血は、動脈血の流入が妨げられて起きる局所的な組織貧血であり、脳内又は中枢神経系で起きた場合は広汎な損傷を引き起こすことがある。中枢神経系の修復能力は低く、末梢神経組織もそれ程ではないが低い。このように、神経組織に対する損傷の結果、著しい永久的な能力障害が起き、しばしば死をも招く。神経組織の損傷は多くの態様で起き、脳血管の事故での虚血だけでなく、脳の循環障害、絶対又は相対低酸素のエピソード、代謝障害や様々な形の外傷からも起きる。
【0008】
全虚血は、心臓停止の場合など、脳全体への血流が一定時間停まった場合に起きる。局所性虚血は、例えば脳血管の血塞栓閉止や頭部外傷、水腫及び脳腫瘍など、正常な血液供給を脳の一部が奪われた場合に起きる。局所性の虚血又は損傷の箇所では、より損傷が深い中心部の周りに、損傷の少ない周辺半影がある。これは、この半影内のニューロンが一定の時間は恒常性を維持でき、この間にこの部分が薬理物質により、より救出可能になっているためと考えられる。
【0009】
全虚血及び局所性虚血の状態の両方とも、たとえその虚血状態が一過性の場合でも、広汎な神経損傷を生む可能性がある。脳への血流停止後の最初の混合状態では何らかの永久的な神経傷害が起きる場合はあるが、全虚血及び局所性虚血での損傷は、虚血開始後1時間以上又は数日後に起きる。この神経損傷の大半は、グルタミン酸の毒性や、例えば損傷した内皮細胞による血管作動性生成物の放出、損傷組織によるフリーラジカル、ロイコトリエン、等々を含む細胞毒性生成物の放出など、組織の再潅流の二次的結果が原因である。
【0010】
グルタミン酸の神経毒性は、虚血性神経傷害の主要な因子であり、酸化的代謝の再開と同時に始まると考えられ、従って可逆性の虚血と回復中の両方で起きる。この問題を回避しようと多くの試みがなされ、NMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体、及びMGR受容体を含め、グルタミン酸により刺激を受け、また全虚血又は局所性虚血の開始後に起きる神経細胞の死に強く関与する多様な受容体の遮断が試みられてきた。脳卒中又は心臓発作など、虚血が起きると、過剰な内生グルタミン酸が放出されて、NMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体、及びMGR受容体が過剰に刺激される。これらの受容体とグルタミン酸との相互作用により、これらの受容体に関連するイオンチャネルが開口して、細胞膜を横切って陽イオンが流れる。このイオンの流れ、特にCa2+の細胞内への流れが、神経細胞死で重要な役割を果たしている。
【0011】
前立腺癌は現在、男性の癌で最も多い形であり、男性で二番目に多い癌による死因である。1993年では165,000人を越える前立腺癌の新しい症例が診断され、この年、35,000人を越える男性が前立腺癌で死亡している。加えて、1981年以降、前立腺癌の発病率は50%増加しており、この疾患による死亡率は増加し続けている。従来では、大半の男性は、前立腺癌で死亡する以前に、その他の疾病又は疾患で死亡していたのである。男性が長寿になるにつれ、前立腺癌による死亡が増加し、この疾患が進行する機会もできた。現在の前立腺癌治療法は、前立腺癌の成長を減少又は防止するために、ジヒドロテストステロンのレベルを下げることのみに焦点を当てている。デジタルな直腸検査及び経直腸的な超音波検査の利用に加え、前立腺特異抗原(PSA)濃度も、前立腺癌の診断にひんぱんに用いられている。
【0012】
PSAは、前立腺細胞が産生するタンパク質であり、前立腺癌の男性では血中レベルがしばしば高い。PSAは腫瘍負荷と相関関係にあり、転移性関与の指標として役立ち、前立腺患者の外科術、放射線照射、及びアンドロゲン置換治療後の応答を追跡するパラメータとなると示されている。前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺特異膜抗原(PSMa)とは完全に異なるタンパク質であることに留意されたい。これら二つのタンパク質は異なる構造及び機能を有しており、それらの似た名称のために混同してはならない。
【0013】
1993年には、前立腺特異膜抗原(PSMA)の分子クローニングが前立腺癌マーカの候補として報告され、前立腺癌の撮像及び細胞毒性治療法のターゲットとなると仮説が立てられた。PSMAに対する抗体が、前立腺癌の診断及び治療に関して解説及び臨床検査された。具体的には、インジウム−111で標識したPSMA抗体が、前立腺癌の診断に関して解説及び検査され、イットリウムで標識したPSMA抗体が、前立腺癌の治療に関して解説及び検査された。
【0014】
PSMAは前立腺管上皮で発現し、精漿、前立腺液及び尿中に存在する。1996年、PSMA cDNAの発現が実際にNAALADase活性をもたらすことが発見された。これは全く予期されなかったことである。なぜなら、つい最近まで、NAALADaseの研究は、脳内でのその役割や、神経伝達物質に対するその作用に限られており、他方、PSMAは、前立腺癌の診断及び治療に関して解説及び検査されてきたからである。
【0015】
ジペプチドNAAGは豊富な神経系特異的ペプチドであり、シナプス小胞に存在し、いくつかの系で神経刺激を受けて放出される。NAAGは、脳の主要なペプチド成分として、主要な抑制性神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(GABA)のレベルに匹敵するレベルで、存在する。NAAGが最初に単離されたのは1964年であるが、過剰なグルタミン酸が有害であるという性質が様々な疾患で明らかにされるまでは、中枢神経系でのその役割を解明しようとする研究はほとんどなかった。グルタミン酸に構造が似ているために、NAAGはグルタミン酸自体の役割に似た多様な役割を有すると示唆されており、その役割の中には、神経伝達物質又は補助伝達物質、神経変調物質としての機能や、神経伝達物質グルタミン酸の前駆物質としての機能がある。NAAGはインビトロ及びインビボの両方で興奮性応答を惹起したが、グルタミン酸ほど強力ではない。
【0016】
1988年には、NAAGを加水分解してN-アセチルアスパラギン酸(NAA)及びグルタミン酸にする脳内酵素NAALADaseが同定された。NAALADaseは、その名称をN-アセチル化酸性ジペプチドへの構造上の特異性に由来しており、変性後分子質量94 kDa[x]の膜結合型金属ペプチダーゼであり、NAAGを分解してN-アセチルアスパラギン酸(NAA)及びグルタミン酸にする。[3H]NAAGはインビボではNAALADaseの生理学的特徴を持つ酵素で分解されることが実証されており、内因性NAAGの代謝においてNAALADaseが担う役割を裏付けている。
【0017】
ラットNAALADase活性が広汎に性格付けられており、Km = 140 nMという、その推定上の基質NAAGの加水分解に対する高い親和性が実証されている。最近では、NAALADaseは高い親和性で非アセチル化ペプチドであるアスパルチルグルタミン酸を開裂させることが示されている。さらに研究により、この酵素が膜結合型であり、塩化物イオンにより刺激され、そして多価の陽イオンキレータで阻害され、金属ペプチダーゼであることが示されている。
【0018】
動物では、NAALADaseはシナプス細胞膜で濃度が高く、主に神経組織及び腎臓に局在化している。NAALADaseはほ乳類の肝臓、心臓、膵臓、又は脾臓では大量には見つかっていない。NAAG及びNAALADaseの検査が数種の様々なヒト及び動物の病的状態に関して行われてきた。NAAGを海馬内注射すると、長時間の発作活性が惹起されることが実証されている。より最近では、遺伝的にてんかん発作を起こしやすいラットは、NAALADase活性の基礎レベルが持続的に高いことが報告された。これらの観察は、シナプスでのグルタミン酸利用率が高いと、てんかん易罹患率が高くなるという仮説と合致しており、NAALADase阻害剤が抗てんかん活性を持つ可能性を示唆している。
【0019】
NAAG及びNAALADaseはさらに、ALSや、遺伝的イヌ棘筋萎縮症(HCSMA)と呼ばれる病理学的に類似の動物の疾患の病理発生への関連も示されている。NAAG及びその代謝産物であるNAA、グルタミン酸及びアスパラギン酸の濃度が、ALS患者及びHCSMAのイヌの脳脊髄液では二倍から三倍に上昇していると示されている。
【0020】
加えて、ALS患者及びHCSMAのイヌの死後脊髄組織中ではNAALADase活性が有意に増加している(二倍から三倍)。かなり推測ではあるが、もしNAAGの代謝増加がこれらのアミノ酸及びペプチドのCSFレベルの変化の原因であるのなら、ALSの進行を抑えるには、NAALADase阻害剤が臨床上、有用かも知れない。NAAGレベル及びNAALAD活性の異常はさらに、死後の分裂病の脳、特に前頭前野及び辺縁系の脳領域について文献化されており、分裂病の病態生理においてNAAGの代謝を調べる重要性が強く裏付けられている。NAALADaseの同定及び精製の結果、NAAGの別の役割が提案された。即ち、このジペプチドが貯蔵型のシナプスグルタミン酸として働いている可能性である。
【0021】
NAALAD阻害剤はごく僅かが同定されたに過ぎず、その同定されたものも、臨床以外の神経研究に用いられたに過ぎない。このような阻害剤の例には、例えばo-フェナントロレンなどの一般的な金属ペプチダーゼ阻害剤や、EGTA及びEDTAなどの金属キレート剤、及び、キスカル酸及びベータ-NAAGなどのペプチド類似体がある。
【0022】
発明の概要
本発明のいくつかの実施例は、代謝調節型グルタミン酸受容体の新規なリガンド、及び、前記リガンドを含んで成る組成物、に関する。前記医薬組成物は、中枢神経系のニューロン及びグリア細胞を含め、グルタミン酸受容体による制御を受ける細胞に、影響を与えるのに用いられよう。
【0023】
更なる実施例では、本発明は、NAALADase酵素活性の阻害剤と、同阻害剤を含んで成る組成物とから成る。本発明の他の実施例は、前述の阻害剤又はその組成物でNAALADase酵素を阻害することにより、動物のグルタミン酸異常及び関連する神経組織傷害を治療する方法から成る。
【0024】
発明の詳細な説明
今日までのところ、mGluRの生物学的研究に一般に用いられているアゴニスト及びアンタゴニストはすべてアミノ酸であり、その多くは構造的に硬直化させたグルタミン酸様コアを持つアミノ酸である [Neuropharmacology, 36, 1-11 (1997); Neuropharmacology 37, 1-12 (1998); Neuropharmacology 35, 1661-1672 (1996); J. Med. Chem. 38, 1417 (1995); J. Med. Chem. 41, 347 (1998); Current Pharmaceutical Design, 1, 355 (1995)]。我々は、これらの受容体で作用する強力かつ選択的なリガンドを同定しようとする中で、酸性基のみを含有するmGluR3選択的アゴニストを発見した。
【0025】
まず我々は、脳内に豊富に存在し、グルタミン酸自体と同様、中枢神経系で神経伝達物質又は補助伝達物質として作用すると考えられるジペプチドであるジペプチドN-アセチル-L-アスパラギン酸-L-グルタミン酸 (NAAG)から研究を始めた。NAAGはインビトロ及びインビボの両方で興奮性を示すが、グルタミン酸よりは活性が低く、貯蔵型のグルタミン酸を表す。mGluR1-6をトランスフェクトした細胞系を用いた研究では、NAAGはmGluR3 受容体を選択的に活性化させ、EC50 値は65 ± 20μMの範囲であることが判明した [J. Neurochem. 69, 174(1997)]。最近、N-アセチル化a-結合酸性ジペプチドの開裂に特異的な脳内酵素が同定され、この酵素はNAALADaseと命名された [J. Biol. Chem., 1987, 262, 14498]。
【0026】
【化1】

【0027】
NAAG及びNAALADaseは、グルタミン酸異常及び神経毒性に関連したいくつかの病的状態への関与が示唆されている。例えば、NAAGを海馬内に注射すると長時間の発作活性が惹起されることが実証されている [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80(1983), 1116-1119]。また、遺伝的にてんかん発作を起こしやすいラットは、NAALADase活性の基礎レベルが持続的に高いことが報告された[Brain Research, 593(1992), 140-143]。これらの結果は、シナプスでのグルタミン酸利用率が高いと、てんかん易罹患率が高くなるという仮説を裏付けている。結論的には、NAALADase阻害剤が効果的な抗てんかん治療薬である可能性が示された。
【0028】
NAAG及びNAALADaseはさらに、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の病理発生への関連も示されている [Brain Research, 556 (1991), 151-156]。従って、もしNAAGの代謝増加がこれらの酸性アミノ酸のCSFレベルの変化の原因であるのなら、ALSの進行を抑えるには、NAALADase阻害剤が臨床上、有用かも知れない [Ann. Neurol. 28(1990), 18-25を参照されたい]。
【0029】
例えば2-(ホスホノメチル)-ペンタン二酸など、NAAGの特定のホスホン酸類似体が、NAALADaseの強力な阻害剤として作用することが報告されている [J. Med. Chem. 39, 619 (1996)]。興味深いことに、この化合物は受容体活性はほとんどないと報告されているが、これが実際にmGluR3ではアゴニストとして作用することを、我々は発見した。
【0030】
発明の化合物
この予期しない結果に基づき、我々は関連類似体の活性を調べることにした。我々のデザインストラテジの一部として、Asp及びGlu残基の間にあるアミド結合を欠き(標準的なケトメチレン型置換)、さらにNアセチル基を削除したNAAG様類似体の活性を調べることに決定したが、それはなぜなら、この特定の基がNAALADase 活性の絶対要件ではないと報告されていたからである。
【0031】
従って、一連の化合物を作製し、mGluR活性について調べた。合成した化合物のうち、二つのペンタン二酸基で両側を挟まれたアセトン部分を含んで成る化合物(A)が、有意なmGluR3 活性を保持していたため、興味が持たれた。
【0032】
【化2】

【0033】
我々は、この観察に基づき、この化合物がmGluR3選択的リガンドとして作用するだけでなく、NAALADase 阻害剤としても働くのではないかという着想を持ち、Aの中央のカルボニル基がP(O)OH、CHOH、O、S、SO、SO2、 及びR3CHOHに置換された化合物の活性も調べることにした。リンの化合物(B)は、NAALADase 阻害剤としては特に強力であり、IC50 は4 nMであった。この新規な化合物に関する他のデータをここに掲げる。
【0034】
【化3】

【0035】
いくつかの実施例では本発明の化合物は一般構造1:
【0036】
【化4】

【0037】
で表され、但し式中、
X は、-C(O)-、 -C(S)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、-P(NR)(NR2)-、O、S, -S(O)-、-S(O)2-、Se、-Se(O)-、-Se(O)2-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-C(NR)-、-NR(O)-、及び-N(OR)-からなる群より選択され、
Y は、それぞれ個別に、(CR2)n、 (NR)n、 (PR)n、及び一個の結合からなる群より選択され、
Z は、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、C(NHアシル)、N、及びPからなる群より選択され、
Wは、それぞれ個別に、(CR2)m、(NR)m、 (PR)m、及び一個の結合からなる群より選択され、
G は、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-C(S)SH、-SO3H、-SO2H、-SOH、-SeO3H、-SeO2H、-SeOH、-S(O)2NH2、-P(O)(OH)2、及び-P(OH)2からなる群より選択され、
Rは、それぞれ個別に、H、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルからなる群より選択され、そしてRがヘテロ原子に結合している場合にはさらにマイナスの電荷を含み、そして
m 及びnは、それぞれ個別に、0以上3以下の範囲より選択される整数である。
【0038】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は-C(O)-、-C(S)-、-C(NR)-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択される。
【0039】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択される。
【0040】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Yは(CR2)nである。
【0041】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Yは(CR2)nであり、そしてnは1である。
【0042】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Zは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択される。
【0043】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Z はC(R)である。
【0044】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、W は(CR2)mである。
【0045】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、W は(CR2)mであり、そしてm は 2である。
【0046】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、G は、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-SO3H、-SO2H、-S(O)2NH2、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0047】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Gは、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-SO3H、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0048】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、G は、それぞれ個別に、-COOH、及び-C(O)NHOHからなる群より選択される。
【0049】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、G は-COOHである。
【0050】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、m 及びn は、それぞれ個別に、1以上2以下の範囲から選択される整数である。
【0051】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR)-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択され、そしてY は(CR2)nである。
【0052】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は、 -C(O)-、-C(S)-、-C(NR)-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択され、Yは(CR2)nであり、そしてZは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択される。
【0053】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は、-C(O)-、 -C(S)-、 -C(NR)-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択され、Yは(CR2)nであり、 Zは、それぞれ個別に、C(R), C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択され、そしてW は(CR2)mである。
【0054】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Xは、-C(O)-、-C(S)-、 -C(NR)-、 -C(R)(OR)-、 -C(R)(SR)-、 -P(O)(OR)-、 -P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択され、Yは、(CR2)nであり、Z は、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択され、Wは (CR2)mであり、そしてGは、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-SO3H、 -SO2H、-S(O)2NH2、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0055】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Xは、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR)-、-C(R)(OR)-、-C(R)(SR)-、-P(O)(OR)-、-P(O)(NR2)-、-P(NR)(OR)-、及び-P(NR)(NR2)-からなる群より選択され、Yは(CR2)nであり、Zは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及び C(NHアシル)からなる群より選択され、W は(CR2)mであり、Gは、それぞれ個別に、-COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、 -SO3H、 -SO2H、 -S(O)2NH2、及び -P(O)(OH)2からなる群より選択され、そしてm 及び nは、それぞれ個別に、1 以上 2以下の範囲から選択される整数である。
【0056】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択され、そしてY は(CR2)nである。
【0057】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、 X は、-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択され、Y は(CR2)nであり、そして Z は C(R)である。
【0058】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、Xは、-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択され、Yは (CR2)nであり、 Zは C(R)であり、そしてW は(CR2)mである。
【0059】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択され、Y は (CR2)nであり、Z は C(R)であり、W は(CR2)mであり、そしてG は、それぞれ個別に、-COOH、及び -C(O)NHOHからなる群より選択される。
【0060】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し式中、X は-P(O)(OR)-、及び-P(O)(NR2)-からなる群より選択され、Yは (CR2)nであり、 Zは C(R)であり、Wは (CR2)mであり、 G は、それぞれ個別に、-COOH、及び -C(O)NHOHからなる群より選択され、そしてm 及びnは、それぞれ個別に1以上2以下の範囲から選択される整数である。
【0061】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体のリガンドである。
【0062】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体のアゴニストである。
【0063】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体のアンタゴニストである。
【0064】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのリガンドである。
【0065】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのアゴニストである。
【0066】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのアンタゴニストである。
【0067】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造1及び付属の定義で表され、但し前記化合物はNAALADaseの阻害剤である。
【0068】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2:
【0069】
【化5】

【0070】
で表され、但し式中、
Xは-C(R)=、-C(OR)=、-C(SR)=、及び-C(NR)=からなる群より選択され、
Yは、それぞれ個別に、(CR2)n、(NR)n、(PR)n、及び一個の結合からなる群より選択され、
D は =C(R)-、=N-、及び =P-からなる群より選択され、
Z は、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、C(NHアシル)、 N、及び Pからなる群より選択され、
W は、それぞれ個別に、 (CR2)m、 (NR)m、 (PR)m、及び一個の結合からなる群より選択され、
G は、それぞれ個別に、 -COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、-C(S)SH、 -SO3H、 -SO2H、 -SOH、 -SeO3H、 -SeO2H、 -SeOH、 -S(O)2NH2、 -P(O)(OH)2、及び -P(OH)2からなる群より選択され、
R は、それぞれ個別に、 H、アルキル、 ヘテロアルキル、 アリール、ヘテロアリール、及びアラルキルからなる群より選択され、さらに、Rがヘテロ原子に結合している場合にはマイナスの電荷を含み、そして m 及び n は、それぞれ個別に、0以上3以下の範囲から選択される整数である。
【0071】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは、-C(OR)=、及び -C(SR)=からなる群より選択される。
【0072】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは C(SR)=である。
【0073】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Yは(CR2)nである。
【0074】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Dに結合している場合のYは一個の結合である。
【0075】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、D は=C(R)-である。
【0076】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Dは =C(R)-であり、そしてDに結合している場合のYは一個の結合である。
【0077】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Zは、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択される。
【0078】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Zは C(R)である。
【0079】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Wは(CR2)mである。
【0080】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、 W は(CR2)mであり、そしてm は 2である。
【0081】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Gは、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-SO3H、 -SO2H、-S(O)2NH2、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0082】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、 G は、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-SO3H、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0083】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Gは、それぞれ個別に、-COOH、及び-C(O)NHOHからなる群より選択される。
【0084】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Gは -COOHである。
【0085】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、 m 及びn は、それぞれ個別に、0、1、又は2である。
【0086】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、 Xは-C(OR)=、及び -C(SR)=からなる群より選択され、そして Y は(CR2)nである。
【0087】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は -C(OR)=、及び -C(SR)=からなる群より選択され、そしてDは =C(R)-である。
【0088】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは-C(OR)=、及び-C(SR)=からなる群より選択され、Dは =C(R)-であり、そしてDに結合している場合のYは一個の結合である。
【0089】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は-C(OR)=、及び-C(SR)=からなる群より選択され、Yは (CR2)nであり、そしてZ は、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、及び C(NHアシル)からなる群より選択される。
【0090】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは-C(OR)=、及び-C(SR)=からなる群より選択され、Yは(CR2)nであり、 Zは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及び C(NHアシル)からなる群より選択され、そしてWは(CR2)mである。
【0091】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは-C(OR)=、及び-C(SR)=からなる群より選択され、Yは(CR2)nであり、Zは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及びC(NHアシル)からなる群より選択され、Wは (CR2)mであり、そしてG は、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-SO3H、-SO2H、-S(O)2NH2、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択される。
【0092】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは-C(OR)=、及び-C(SR)=からなる群より選択され、Yは (CR2)nであり、Zは、それぞれ個別に、C(R)、C(NR2)、及び C(NHアシル)からなる群より選択され、Wは (CR2)mであり、 Gは、それぞれ個別に、-COOH、-C(O)NHOH、-C(O)NH2、-SO3H、-SO2H、-S(O)2NH2、及び-P(O)(OH)2からなる群より選択され、そしてm 及び nは、それぞれ個別に、0、 1、又は2である。
【0093】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは -C(SR)=であり、そしてYは (CR2)nである。
【0094】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は-C(SR)=であり、そしてDは =C(R)-である。
【0095】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、 Xは-C(SR)=であり、D は=C(R)-であり、そしてDに結合している場合のYは一個の結合である。
【0096】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は-C(SR)=であり、Yは (CR2)nであり、そしてZは C(R)である。
【0097】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、Xは -C(SR)=であり、Yは(CR2)nであり、Zは C(R)であり、そしてW は(CR2)mである。
【0098】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は-C(SR)=であり、Yは(CR2)nであり、Zは C(R)であり、W は(CR2)mであり、そして G は、それぞれ個別に、-COOH、及び -C(O)NHOHからなる群より選択される。
【0099】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し式中、X は -C(SR)=であり、Yは (CR2)nであり、Zは C(R)であり、Wは (CR2)mであり、G は、それぞれ個別に、-COOH、及び-C(O)NHOHからなる群より選択され、そしてm及びnは、それぞれ個別に、0、1、又は2である。
【0100】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は、代謝調節型グルタミン酸受容体のリガンドである。
【0101】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体のアゴニストである。
【0102】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体のアンタゴニストである。
【0103】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのリガンドである。
【0104】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのアゴニストである。
【0105】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物は代謝調節型グルタミン酸受容体の一個のサブタイプのアンタゴニストである。
【0106】
いくつかの実施例では、本発明の化合物は一般構造2及び付属の定義で表され、但し前記化合物はNAALADaseの阻害剤である。
【0107】
本発明の別の態様は、虚血、特に、全及び局所性虚血を、ヒト及び温血動物のN-アセチル化アルファ結合酸性ジペプチダーゼ(NAALADase)酵素活性を阻害する組成物を用いて治療する方法に関する。一般構造1及び2で表される特定の化合物が、NAALADaseの阻害剤である。当業者であれば、ごく通常の実験を用いれば、本発明の化合物のどれがNAALADaseのアンタゴニストであるかを確認できよう。
【0108】
NAALADase は、膜結合型メタロプロテアーゼである一酵素であり、ジペプチドであるN-アセチル-L-アスパラギン酸-L-グルタミン酸 (NAAG)を加水分解してグルタミン酸及びN-アセチルアスパラギン酸を生成する。本発明の方法には、NAALADase酵素活性を阻害する、虚血の治療に有用であることが判明しているホスフィン酸誘導体を含有する組成物を用いることが含まれる。アミノ酸L-グルタミン酸は神経伝達物質であり、高速の神経細胞興奮を中枢神経系(CNS)の主要なシナプスで伝達する。シナプス内に放出されると、L-グルタミン酸は、興奮性アミノ酸受容体のサブタイプであるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA) 受容体を刺激することができる。このNMDA受容体の過剰な活性化が、例えば虚血、てんかん及びハンチントン病など、多様な急性及び慢性の神経病理プロセスへ関与していることが発見された。このように、NMDA受容体を通じて媒介されるL-グルタミン酸のシナプス後部作用に拮抗する新規な治療薬の発見に、相当な努力が費やされてきた。
【0109】
本発明のいくつかの実施例は、虚血に罹患した動物に、NAALADase阻害剤、及び、前記NAALADase阻害剤のための薬学的に容認可能な担体、を投与するステップを含む、虚血を治療する方法から成る。卒中、特に急性虚血性卒中や、溺水、頭部外傷等々が原因の全虚血を治療する方法においては、NAALADase阻害剤を、例えばアスピリン又はチクロピジン(好ましくは二次性虚血事象の危険性を減らすことが実証されたチクロピジン)など、卒中の危険性を減らす上で効果的な一つ又はそれ以上の作用薬と一緒に同時投与してよい。同時投与は(例えば薬学的に容認可能な賦形剤を加えたNAALADase阻害剤及びチクロピジンを配合したものであり、選択に応じてこれら二つの有効成分を、それぞれの放出速度及び時間を個別に調節するようデザインされた別々の賦形剤混合物に分離して配合した)一個の製剤の形であってもよく、又は、これら有効な薬剤を含有する別個の製剤の個別の投与の形であってもよい。
【0110】
必要に応じ、投与しようとする医薬組成物に、さらに、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、等々や酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、等々、少量の非毒性の補助的な物質を含有させてもよい。
【0111】
本発明のNAALADase 阻害剤は、一般的には、当該阻害剤と組み合わせて薬学的な賦形剤を含んで成る医薬組成物として投与される。一製剤中の薬剤のレベルは、当業者が用いる全範囲、即ち、全製剤に基づき約0.01パーセント重量 (% w)から約 99.99% 重量の薬剤と、約0.01% 重量から99.99% 重量の賦形剤の範囲で、様々であろう。好ましくは、製剤中、重量で約3.5 から60% のNAALADase阻害剤を含め、残りは薬学的に適した賦形剤であるとよい。
【0112】
定義
便宜上、本発明の解説をさらに行う前に、本明細書、実施例、及び付属の請求の範囲で用いたいくつかの用語をここに集める。
【0113】
ここで用いられた「NAALADase」はN-アセチル化アルファ結合酸性ジペプチダーゼを言う。この酵素は当初、N-アセチル化アルファ結合酸性ジペプチドを加水分解するその基質特異性に基づいて命名された。現在では、この酵素が最初に発見されたよりも広い範囲の基質特異性を有することが知られており、特に、この酵素には、N-アセチル化又はアルファ結合は必要ではないことが知られている。このように、ここで用いられた「NAALADase」は、例えばNAAG加水分解酵素及びNAALAジペプチダーゼなど、文献中で用いられる他の名称も包含する。
【0114】
酵素阻害に関する用語「阻害」は、例えば競合的、不競合的、及び非競合的阻害など、可逆的な酵素阻害に関する。これは、基礎的なミカエリス−メンテンの速度式で分析できる、この酵素の反応速度に対する、阻害剤の作用により、実験的に識別できる。競合的阻害は、活性部位への結合をめぐって通常の基質と競合するような態様で、阻害剤が遊離酵素と結合できる場合に起きる。競合的阻害剤は、酵素と可逆的に反応して、酵素−阻害剤複合体 [EI]を形成する。ミカエリス−メンテンの形式に従って、この阻害剤の定数K[i]を、酵素−阻害剤複合体の解離定数と定義することができる。このように、上記に基づき、かつ、ここで用いられるように、K[i]は実質的には、ある分子と、その受容体との間の、又は、本発明の関係では本発明の化合物と、阻害しようとする酵素の間の、親和性の測定値である。 IC50は、標的酵素の阻害を50%引き起こすのに必要な化合物濃度又は量を定義する場合に用いられる関連用語であることに留意されたい。
【0115】
用語「虚血」は、動脈血の流入妨害によって起きる局所的な組織貧血に関する。全虚血は、脳全体への血流が一定期間停止した場合に起き、例えば心臓停止で起きることがある。局所性虚血は、脳の一部がその通常の血液供給を絶たれたときに起き、例えば脳血管の血栓性梗塞、外傷性頭部損傷、水腫及び脳腫瘍などが原因で起きることがある。
【0116】
用語「神経組織」は、神経細胞、神経支援細胞、グリア細胞、シュワン細胞、これらの構造内に内包された又はこれらの構造を提供する血管構造、中枢神経系、脳、脳幹、脊髄、中枢神経系と末梢神経系との接合部、末梢神経系及び近縁構造を含め、神経系を構成する多様な構成要素を言う。
【0117】
用語「神経機能」は、例えば日常生活の活動、仕事、認知及び会話などを行う能力に示される、環境を感じる、認識する、環境に対して恒常性を保つ、及び環境と相互作用するときに顕れる神経系及びその一部の様々な機能を言う。
【0118】
用語「神経傷害」とは、脳及び神経組織の全部又は一部の損傷及び破壊を含め、神経組織への損傷や、その結果の病的状態、機能不全、神経不全、及び死を言う。神経傷害は、虚血、低酸素、脳血管の事故、代謝、毒性、神経毒性、外傷、外科術、医原性、圧力、質量効果、出血、熱、化学、放射線、血管痙攣、神経変性性疾患、神経変性性プロセス、感染、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ミエリン形成/脱髄プロセス、てんかん、認知障害、グルタミン酸異常、及びそれらの二次的作用を含め、様々な原因で起きる。
【0119】
用語「グルタミン酸異常」とは、グルタミン酸が関与するあらゆる状態、疾患、又は障害を言い、限定はしないが、上記の神経傷害が含まれる。
【0120】
用語「グルタミン酸変調剤」とは、ヒトを含む動物のグルタミン酸レベルに影響を与える物質の単独の組成物、又は、別の作用薬と組み合わせた組成物を言う。
【0121】
用語「神経防御」とは、神経傷害を減じ、停止させ、又は改善し、かつ、神経傷害に罹患した神経組織を防御する、蘇生又は復活させる効果を言う。
【0122】
用語「治療」とは、ヒトを含む動物に、その動物の状態を直接又は間接的に向上させる目的で医療を施す際のあらゆるプロセス、行動、適用、治療、等々を言う。全虚血を治療するための本発明の方法は、それによる利益が予測される被験体の体内に、有効量のNAALADase阻害剤を投与することを含む。本発明の方法及び医薬組成物に含まれたこの異性体の用量は、効果的で非毒性の量である。当業者であれば、通常の臨床試験を利用して最適な用量を決定できる。所用の用量は、被験体に、一日当たり1回から6回又はそれ以上の回数、経口、直腸、腸管外又は局所的に投与され、最初により大量の大量投与を行い、その後に投与を続けてもよい。
【0123】
用語「求核試薬」は当業で認識されており、ここで用いる場合、反応性の対の電子を有する化学的部分を意味する。
【0124】
「求電子試薬」という術語は当業で認識されており、一対の電子を上に定義した求核試薬から受け取ることのできる化学的部分を言う。本発明の方法において有用な求電子部分にはハリド及びスルホネートがある。
【0125】
「電子求引基」という術語は当業で認識されており、ある一個の置換基が、隣り合った原子から価電子を引き付ける性質を表し、即ち、この置換基は隣り合った原子に対して電気的に陰性である。電子求引力のレベルの定量はハメットのシグマ(S)定数によって表される。このよく知られた定数は、数多くの文献、例えばJ. March, Advanced Organic Chemistry McGraw Hill Book Company, New York, (1977版)の251から259ページに説明されている。このハメットの定数の値は、s[P]がパラ置換を示すものとしたとき、一般的には電子供与基の場合はマイナスであり(NH2の場合s[P]=−0.66)、そして電子求引基の場合にはプラスである(ニトロ基の場合s[P]=0.78)。代表的な電子求引基には、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、クロリド、等々がある。代表的な電子供与基にはアミノ、メトキシ、等々がある。
【0126】
「アルキル」という術語は、直鎖アルキル基、枝分かれ鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族の基のラジカルを言う。いくつかの実施例では、直鎖又は枝分かれ鎖アルキルは、その主鎖に30個以下の炭素原子(例えば直鎖の場合はC1−C30、枝分かれ鎖の場合はC3−C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子、を有する。同様に、好適なシクロアルキルは、その環構造内に3から10個の炭素原子、より好ましくはその環構造に5、6又は7個の炭素を有するものである。
【0127】
さらに、本明細書及び請求の範囲を通じて用いられている「アルキル」(又は「低級アルキル」)という術語は、「置換されていないアルキル」及び「置換されたアルキル」の両者を包含するものとして意図されているが、この後者は、炭化水素の主鎖の一つ又はそれ以上の炭素に付いた水素を置換した置換基を有するアルキル部分を言う。このような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、エステル、ホルミル、又はケトン)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は、芳香族又はヘテロ芳香族の部分を含めることができる。当業者であれば、炭化水素の鎖上で置換された部分は、適当な場合にそれ自体、置換されてもよいことは理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基には、置換された及び置換されていない形のアミノ基、アジド基、イミノ基、アミド基、ホスホリル基(ホスホネート及びホスフィナートを含む)、スルホニル基(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)、及びシリル基や、エーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、及びエステルを含む)、−CF3、−CN、等々を含めてもよい。代表的な置換アルキルは下に説明してある。シクロアルキルは、さらに、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CN、等々で置換されていてもよい。
【0128】
ここで用いられる「アラルキル」という術語は、一個のアリール基(例えば芳香族又はヘテロ芳香族の基)で置換されたアルキル基を言う。
【0129】
「アルケニル」及び「アルキニル」という術語は、長さが同様であり、上に説明したアルキルに置換があってもよいが、それぞれ二重又は三重結合を少なくとも一個含むような不飽和脂肪族の基を言う。
【0130】
炭素数を他に特に明示していない場合、ここで用いられる「低級アルキル」は、上に定義した通りの、しかし1個から10個の炭素、より好ましくは1個から6個の炭素原子をその主鎖構造に有するようなアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」も同様な鎖の長さを有する。好適なアルキル基は低級アルキルである。いくつかの実施例では、ここでアルキルとして指定された置換基は低級アルキルである。
【0131】
ここで用いられる「アリール」という術語には、5−、6−及び7−員環の単一環芳香族の基が含まれ、この基にはゼロから4個のヘテロ原子が含まれていてもよく、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン、等々である。環構造内にヘテロ原子を有するようなアリール基はさらに「アリールヘテロ環」又は「ヘテロ芳香族」と言及される場合もある。芳香族の環は、一つ又はそれ以上の環位で、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、等々など、上述したような置換基で置換されていてもよい。「アリール」という術語には、さらに、二つ又はそれ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通である(これらの環が「縮合している」)ような二つ又はそれ以上の環を有すると共に、環のうちの少なくとも一つが芳香族であり、例えばその他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/又は、ヘテロシクリルであるような、多環式の系が含まれる。
【0132】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msという略語は、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、及びメタンスルホニルを表す。当業の有機化学者が用いる省略のより包括的なリストは、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリの各巻の第一版に見られるが、このリストは典型的には、スタンダード・リスト・オブ・アブリビエーションズという標題の表で表されている。前記リストに含まれた略語、及び当業の有機化学者が用いるすべての略語を、言及によってここに編入することとする。
【0133】
オルト、メタ及びパラという術語はそれぞれ1,2-、1,3-、及び1,4-二置換ベンゼンに用いられている。例えば1,2-ジメチルベンゼン及びオルト-ジメチルベンゼンという名称は同義である。
【0134】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式の基」という術語は、環構造が1個から4個のヘテロ原子を含む、3員環から10員環構造、より好ましくは3員環から7員環を言う。ヘテロ環はまた多環式であってもよい。ヘテロシクリル基には、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、チノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトン、等々が含まれる。ヘテロ環式の環は、一つ又はそれ以上の位置で、上述したような置換基、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、一個のヘテロシクリル、一個の芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、又は等々、で置換されていてもよい。
【0135】
「ポリシクリル」又は「多環式の基」という術語は、複数の環が「縮合環である」など、二つ又はそれ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であるような二つ又はそれ以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリル、など)を言う。隣り合っていない原子を通じて接合された環は「架橋」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、一個のヘテロシクリル、一個の芳香族又はヘテロ芳香族の部分、−CF3、−CN、等々といった上述したような置換基で置換されていてもよい。
【0136】
ここで用いられる「炭素環」という術語は、環の各原子が炭素であるような芳香族又は非芳香族の環を言う。
【0137】
ここで用いられる「ヘテロ原子」という術語は、炭素又は水素以外のあらゆる元素の原子を意味する。好適なヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄及びリンである。
【0138】
ここで用いられる場合の「ニトロ」という術語は−NO2を意味し、「ハロゲン」は−F、−Cl、−Br又は−Iを指し、「スルフヒドリル」という術語は−SHを意味し、「ヒドロキシル」という術語は−OHを意味し、そして「スルホニル」という術語は−SO2−を意味する。
【0139】
「アミン」及び「アミノ」という術語は、当業で認識されており、置換されていない及び置換されたアミンの両方を言い、例えば、一般式:
【0140】
【化6】

【0141】
(但し式中、R9、R10及びR’10はそれぞれ個別に一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、−(CH2)m−R8を表すか、又はR9及びR10は、これらが結合したN原子と一緒に捉えると、環構造内に4個から8個の原子を有するヘテロ環を完成するものであり、R8は一個のアリール、一個のシクロアルキル、一個のシクロアルケニル、一個のヘテロ環、又は一個の多環を表し、そしてmはゼロか、又は1から8までの間の一整数である)で表すことができる部分である。好適な実施例では、R9又はR10の一方のみが、一個のカルボニルであってもよく、例えばR9、R10及びこの窒素が一緒になって一個のイミドを形成していない。さらにより好適な実施例では、R9及びR10(及び選択に応じてR’10)はそれぞれ個別に一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、又は−(CH2)m−R8を表す。このように、ここで用いられる「アルキルアミン」という術語は、置換された又は置換されていない一個のアルキルをそれに結合させて有する、上に定義した通りの一個のアミン基を意味し、即ちR9及びR10の少なくとも一方は一個のアルキル基である。
【0142】
術語「アシルアミノ」は当業で認識されており、一般式:
【0143】
【化7】

【0144】
(但し式中、R9は上に定義した通りであり、そしてR’11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、又は、−(CH2)m−R8(但し式中、m及びR8は上に定義した通りである)を表す)で表すことのできる部分を言う。
【0145】
「アミド」という術語はアミノ置換カルボニルとして当業で認識されており、一般式:
【0146】
【化8】

【0147】
(但し式中、R9、R10は上に定義した通りである)によって表すことのできる部分を含む。アミドのいくつかの実施例には不安定な可能性のあるイミドは含まれないであろう。
【0148】
「アルキルチオ」という術語は、それに硫黄ラジカルを結合させて有した、上に定義した通りのアルキル基を言う。いくつかの実施例では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、及び−S−(CH2)m−R8(但し式中、、m及びR8は上に定義したとおりである)のうちの一つで表される。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオ、等々がある。
【0149】
「カルボニル」という術語は当業において認識されており、一般式:
【0150】
【化9】

【0151】
(但し式中、Xは一個の結合であるか、又は一個の酸素又は一個の硫黄を表し、そしてR11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル、−(CH2)m−R8、又は薬学的に容認可能な塩を表し、R’11は一個の水素、一個のアルキル、一個のアルケニル又は−(CH2)m−R8(但しこの式中、m及びR8は上に定義したとおりである)を表す)で表すことのできる部分を含むものである。Xが一個の酸素であり、そしてR11又はR’11が水素でない場合、この式は一個の「エステル」を表すことになる。Xが一個の酸素であり、R11が上に定義した通りである場合、この部分はここではカルボキシル基と言及されており、特にR11が一個の水素である場合、この式は「カルボン酸」を表すものである。Xが一個の酸素であり、そしてR’11が水素である場合、この式は「ギ酸塩」を表すことになる。一般的には、上の式の酸素原子が硫黄に置換された場合、この式は「チオールカルボニル」基を表すことになる。Xが一個の硫黄であり、R11又はR’11が水素でない場合、この式は「チオールエステル」を表すものである。Xが一個の硫黄であり、R11が水素であれば、この式は「チオールカルボン酸」を表すことになる。Xが一個の硫黄であり、R’11が水素であれば、この式は「チオールホルマート」を表すことになる。他方、Xが一個の結合であり、そしてR11が水素でない場合、上の式は一個の「ケトン」基を表すものである。Xが一個の結合であり、そしてR11が水素である場合、上の式は「アルデヒド」基を表す。
【0152】
ここで用いられる「アルコキシル」又は「アルコキシ」という術語は、一個の酸素ラジカルを結合させて有する、上に定義した通りのアルキル基を言う。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシ、等々がある。「エーテル」は一個の酸素によって共有結合した二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換基は、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R8(但し式中、m及びR8は上に説明した通りである)で表すことができるものなど、アルコキシルであるか、又はアルコキシルに似ている。
【0153】
「スルホネート」という術語は当業で認識されており、一般式:
【0154】

【化10】

【0155】
(但し式中、R41は一個の電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである)で表すことができる部分を含む。
【0156】
術語トリフリル、トシル、メシル、及びノナフリルは、当業で認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル、及びノナフルオロブタンスルホニル基を言う。術語トリフレート、トシレート、メシレート、及びノナフレートは当業で認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホネートエステル、p-トルエンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、及びノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、及び、同じ基を含有する分子を言う。
【0157】
「スルフェート」という術語は当業で認識されており、一般式:
【0158】
【化11】

【0159】
(但し式中、R41は上に定義したとおりである)によって表すことができる部分を含む。
【0160】
「スルホンアミド」という術語は当業で認識されており、一般式:
【0161】
【化12】

【0162】
(但し式中、R9及びR’11は上に定義した通りである)で表すことのできる部分を含む。
【0163】
「スルファモイル」という術語は当業で認識されており、一般式:
【0164】
【化13】

【0165】
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りである)で表すことのできる部分を含む。
【0166】
ここで用いられている「スルホキシド」又は「スルフィニル」という術語は、一般式:
【0167】
【化14】

【0168】
(但し式中、R44は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、又はアリールのうちのいずれかから選択される)で表すことができる部分を言う。
【0169】
「ホスホリル」は一般的には式:
【0170】
【化15】

【0171】
(但し式中、Q1はS又はOを表し、そしてR46は水素、一個の低級アルキル又は一個のアリールを表す)で表すことができる。例えばアルキルなどを置換するのに用いる場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は一般式:
【0172】
【化16】

【0173】
(但し式中、Q1はS又はOを表し、そして各R46はそれぞれ個別に水素、一個の低級アルキル又は一個のアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)で表すことができる。Q1が一個のSである場合、そのホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
【0174】
「ホスホラジミト」は一般式:
【0175】
【化17】

【0176】
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りであり、そしてQ2はO、S又はNを表す)で表すことができる。
【0177】
「ホスホンアミジト」は一般式:
【0178】
【化18】

【0179】
(但し式中、R9及びR10は上に定義した通りであり、Q2はO、S又はNを表し、そしてR48は一個の低級アルキル又は一個のアリールを表し、Q2はO、S又はNを表す)で表すことができる。
【0180】
「セレノアルキル」とは、置換されたセレノ基をそれに結合させて有したアルキル基を言う。アルキル上で置換してもよい「セレノエーテル」の例は、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル、及び、−Se−(CH2)m−R8(但し式中、m及びR8は上に定義されている)のうちの一つから選択される。
【0181】
アルケニル基及びアルキニル基には、同じような置換を行って、例えばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルなどを生成させることができる。
【0182】
ここで用いられる「保護基」という文言は、望ましくない化学的変換からそれを保護するような、一個の潜在的反応性官能基の一時的な修飾を意味する。このような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、及び、それぞれアルデヒド及びケトンのアセタル及びケタルがある。この保護基化学の分野のレビューは(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)を参照されたい。
【0183】
「置換」又は「で置換された」には、このような置換が、置換された原子及び置換基にとって可能な原子価に従ったものであり、その置換の結果、例えば、転位、環化、除去、等々といった変換を自発的には行わない化合物など、安定した化合物ができるという、暗黙の前提が含まれるものと理解されよう。
【0184】
ここで用いられる「置換された」という術語は、有機化合物のあらゆる許容できる置換基を含むものとして考察されている。広い意味では、この許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、枝分かれ式及び非枝分かれ式、炭素環式及びヘテロ環式、芳香族及び非芳香族の基が含まれる。置換基の例には、例えば、上に説明したものがある。許容可能な置換基は、適した有機化合物にとっては、一つ又はそれ以上であってもよく、同じ又は異なるものであってもよい。本発明の目的のためには、窒素などのヘテロ原子は水素置換基、及び/又は、そのヘテロ原子の原子価を満たす、ここに説明した有機化合物のいかなる許容可能な置換基を有していてもよい。本発明は、いかなる態様でも、有機化合物の許容可能な置換基によって限定されるとは意図されていない。
【0185】
「極性溶媒」とは、例えばDMF、THF、エチレングリコールジメチルエーテル、DMSO、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、t-ブタノール又は2-メトキシエチルエーテルなど、2.9以上の双極性モーメント(ε)を有する溶媒を意味する。好適な溶媒はDMF、ジグライム、及びアセトニトリルである。
【0186】
「中性溶媒」とは、水素結合供与体でない溶媒を意味する。このような溶媒の例は、アセトニトリル、トルエン、DMF、ジグライム、THF又はDMSOである。
【0187】
「極性の中性溶媒」とは、例えばDMF、アセトニトリル、DMSO及びTHFなど、双極性モーメント(ε)が2.9であり、かつ、水素結合供与体でない溶媒を意味する。
【0188】
本発明の目的のためには、化学元素は、ハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジックス、第67版、1986−87、表紙内側のCASバージョンの元素周期表に基づいて表されている。さらに本発明の目的のために、「炭化水素」という術語は少なくとも一つの水素及び一個の炭素原子を有するあらゆる許容可能な化合物を含むものとして考察されている。広い態様では、この許容可能な炭化水素には、非環式及び環式、枝分かれ式及び非枝分かれ式、炭素環式及びヘテロ環式、芳香族及び非芳香族の、置換された又は置換されていなくともよい有機化合物が含まれる。
【0189】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、上に説明した一つ又はそれ以上の化合物を治療上有効量、一つ又はそれ以上の薬学的に容認可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に調合して含んだ薬学的に容認可能な組成物を提供するものである。以下に詳述するように、本発明の医薬組成物を、以下に適合させたものを含め、固体形又は液体形での投与に向けて特に調合してもよい。即ち、(1)経口投与、例えば飲薬(水性又は非水性の溶液又は懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末、顆粒、下への塗布用のパスタ、(2)例えば皮下、筋肉内又は静脈内注射を例えば無菌の溶液又は懸濁液として行う非経口投与、(3)例えば皮膚へのクリーム、軟膏又はスプレーなど、局所投与、又は(4)例えばペッサリ、クリーム又はフォームなどの膣内又は直腸内、である。
【0190】
ここで用いられる「治療上有効量」という文言は、本発明の化合物を含んで成る化合物、材料又は組成物の量であって、動物の少なくとも一つの小集団の細胞において、妥当な利益/リスク比で医療処置に利用でき、何らかの所望の治療効果を生むのに効果的な量、を意味する。
【0191】
「薬学的に容認可能な」という文言は、ここでは、妥当な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題又は合併症を起こすことなく、ヒト及び動物の組織に接触させて用いるのに適した、健全な医療上の判断の範囲内にある、化合物、材料、組成物、及び/又は投薬形を言うために用いられている。
【0192】
ここで用いられている「薬学的に容認可能な担体」という文言は、当該化合物を身体の一臓器又は身体の一部分から、身体の別の臓器又は一部分に運ぶ又は輸送することに関与する、例えば液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は被包剤などの薬学的に容認可能な材料、組成物又は伝播体を意味する。各担体は、その調剤中のその他の成分に対して適合性があり、かつ、患者にとって有害でないという意味で「容認可能」でなければならない。薬学的に容認可能な担体として働かせることのできる材料のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類、(2)コーンスターチ及びいもでんぷんなどのでんぷん、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテートなど、セルロース及びその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び座薬用ろうなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油脂類、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)無発熱源水、(17)等張性生理食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)薬剤調合に用いられるその他の非毒性の適合性物質、がある。
【0193】
上述したように、本化合物のいくつかの実施例には、例えばアミノ又はアルキルアミノなどの塩基性の官能基が含まれてもよく、従って、薬学的に容認可能な酸と一緒になって薬学的に容認可能な塩を形成することができる。この観点での「薬学的に容認可能な塩」という術語は、本発明の化合物の、比較的に非毒性の無機及び有機酸添加塩を言う。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離及び精製の際にin situで調製しても、又は、本発明の精製化合物をその遊離塩型の状態で適した有機又は無機酸に別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することで調製してもよい。代表的な塩にはヒドロブロミド、ヒドロクロリド、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、ニトレート、アセテート、バレレート、オレエート、パルミテート、ステアレート、ラウレート、ベンゾエート、酪てーと、ホスフェート、トシレート、シトレート、マレエート、フマレート、スクシネート、酒石酸塩、ナフチレート、メシレート、グルコヘプトネート、ラクトビオネート、及びラウリルスルホネートといった塩、等々がある。(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)
【0194】
当該化合物の薬学的に容認可能な塩には、例えば非毒性の有機又は無機酸などからできる、当該化合物の従来の非毒性の塩、又は四級アンモニウム塩がある。このような従来の非毒性塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、等々などの無機の酸から誘導されるものや、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル乳酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオ酸、等々の有機酸から作製される塩類がある。
【0195】
その他の場合では、本発明の化合物は、一つ又はそれ以上の酸性官能基を含んでいてもよく、従って薬学的に容認可能な塩基と一緒になって薬学的に容認可能な塩を形成することができる。これらの場合の「薬学的に容認可能な塩」という術語は、本発明の化合物の、比較的に非毒性の、無機及び有機塩基の添加塩を言う。これらの塩もまた同様に、当該化合物の最終的な単離及び精製の際にin situで調製しても、又は、精製化合物をその遊離酸型の状態で、薬学的に容認可能な金属カチオンの例えば水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩などの適した塩基や、アンモニアや、又は薬学的に容認可能な有機一級、二級又は三級アミンに別々に反応させることによって調製してもよい。代表的なアルカリ又はアルカリ土類塩の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩、等々がある。塩基添加塩類の形成に有用な有機アミンの例には、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、等々がある(例えば上記のBerge et alを参照されたい)。
【0196】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳濁剤及び潤滑剤や、着色剤、はく離剤、コーティング剤、甘味料、着香料及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も組成物中に存在してもよい。
【0197】
薬学的に容認可能な抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、二硫化ナトリウム、重二硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、等々の水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール、等々の油溶性抗酸化剤、及び、(3)例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、等々といった金属キレート剤、がある。
【0198】
本発明の方法に利用するアデノシンアンタゴニスト及びアゴニストの投与は、容認されたいかなる投与形態を通じて行ってもよい。これらの方法には、限定はしないが、経口、非経口、経皮、関節内及び他の全身投与が含まれる。経口投与が好ましい。当該化合物は、治療上有効量を単独で、又は、適した薬学的に容認可能な担体又は賦形剤と組み合わせて投与される。
【0199】
意図した投与形態に応じて、選択されたアデノシンアンタゴニスト又はアゴニストを、例えば錠剤、経皮用パッチ、丸剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、乳濁液、エーロゾル等々の薬学的に容認可能な投薬型に組み込み、好ましくは精確な投薬量を一回で投与するのに適した単位投薬型や、又は、投与を継続的にコントロールしながら行えるよう、持続放出型としてもよい。好ましくは、投薬型には、薬学的に容認可能な賦形剤が含まれようが、それに加えて、他の医薬、製薬、担体、アジュバント、等々を含めてもよい。
【0200】
固体投薬型の場合、非毒性の担体には、限定はしないが、例えば薬剤級のマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、ポリアルキレングリコール、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、及び、炭酸マグネシウムがある。液体の薬学的に投与可能な投薬型は、例えば、活性アデノシン作用薬と、選択に応じて薬学的なアジュバントとを、液体又は懸濁液を形成させる例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール、等々の担体中に含めて成るものでもよい。必要に応じ、投与する医薬組成物には、さらに、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、等々の非毒性の補助物質を少量、含めてもよい。このような補助物質の例は、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、等々である。このような投薬型を作製する実際の方法は公知であり、又は、当業者には明白であり、例えば、ペンシルバニア州イーストン、マック・パブリッシング・カンパニー社のレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズ、1980年第16版を参照されたい。投与する製剤の組成には、いかなる場合も、治療にとって有効量の有効アデノシン作用薬の量が含まれることとなる。
【0201】
非経口投与は、皮下、筋肉内、又は静脈内注射を特徴とする場合が多い。注射剤は、従来の形で、液体の溶液又は懸濁液として、注射前の溶液又は懸濁液に適した固体形として、又は、乳濁液として調製することができる。適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、等々である。加えて、必要に応じ、投与しようとする注射用医薬組成物に、さらに、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、等々の非毒性の補助物質を少量、含めてもよい。
【0202】
投与する有効アデノシンアンタゴニスト又はアゴニストの量は、もちろん、治療しようとする被験体や、疾患の重篤度及び性質、投与方法、当該作用薬の力価及び薬物動態、及び処方する医師の判断に依存するであろう。しかしながら、本発明で用いるのに治療上有効投薬量は、一般的には、約0.01mug/kg(体重)から5mg/kgの範囲内であろう。
【0203】
本発明の調剤には、経口、鼻孔、局所(バッカル及び舌下剤を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与に適したものが含まれる。調剤は便利なように単位用量型で提供してもよく、製薬業で公知の方法で調製してもよい。一回分の投薬型を作製するのに担体材料と組み合わせることのできる有効成分の量は、治療しようとするホスト、特定の投与形態に応じて様々であろう。一回分の投薬型を作製するのに担体材料と組み合わせることのできる有効成分の量は、一般的には、治療効果を生じる化合物量となるであろう。概して、100パーセントのうち、この量は約1パーセントから約99パーセントの有効成分、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲になるであろう。
【0204】
これらの調剤又は組成物を調製する方法には、本発明の化合物を、担体、及び選択に応じて一つ又はそれ以上の付属成分に、結び付けるステップが含まれる。一般的には、本調剤は、本発明の化合物を、液体の担体、又は微細に分割された固形の担体、又はその両方に均質かつ密接に結び付けるステップと、必要に応じてその後に生成物を成形するステップとによって調製される。
【0205】
経口投与に適した本発明の調剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(多くの場合スクロース及びアカシアゴム又はトラガカントである着香した基剤を用いて)、粉末、顆粒の形で、又は水性又は非水性の液体に溶かした溶液又は懸濁液として、又は水中油又は油中水式の液体乳濁液として、又は、エリキシル又はシロップとして、又は、香錠(例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアゴムなどの不活性の基剤を用いて)として、及び/又は、口内洗剤等々として、それぞれが所定量の本発明の化合物を有効成分として含むような形であってもよい。本発明の化合物をさらに巨丸剤、舐剤又はパスタとして投与してもよい。
【0206】
経口投与用の本発明の固体投薬形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末、顆粒、等々)の場合、有効成分を、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなど、一つ又はそれ以上の薬学的に容認可能な担体、及び/又は、以下のうちのいずれかと一緒に混合する。即ち、(1)でんぷん、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又は、ケイ酸などの充填剤及び増量剤、(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又は、アカシアゴムなどの結合剤、(3)グリセロールなどの湿潤薬、(4)寒天、炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、などの崩壊剤、(5)パラフィンなどの吸収遅延剤、(6)四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤、(7)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイト・クレイなどの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤、及び、(10)着色剤、である。カプセル、錠剤及び丸剤の場合には、当該薬剤組成物はさらに緩衝剤を含んでいてもよい。同様な種類の固体組成物を、さらに、ラクトース又は乳糖などの賦形剤や、高分子量ポリエチレングリコール等々を用いて、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0207】
錠剤は、選択に応じて一つ又はそれ以上の付属成分と一緒に、圧縮又は鋳込みによって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばでんぷんグリコール酸ナトリウム、又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤又は分散剤などを用いて調製してよい。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿潤させた粉末状の化合物の混合物を適した機械で成形することによって作製してもよい。
【0208】
例えば糖衣剤、カプセル、丸剤及び顆粒など、本発明の医薬組成物の錠剤及びその他の固体投薬形には、選択に応じて切り込みを入れたり、又は、腸溶コーティング及びその他の、製薬業で公知のコーティングなど、コーティング及びシェルと一緒に作製してもよい。これらはさらに、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な比率で用いるなどして、所望の放出曲線、その他のポリママトリックス、リポソーム、及び/又は、マイクロスフィアを提供できるよう、有効成分の放出が遅延又はコントロールされるように調合してもよい。これらは、例えば細菌保持フィルタを用いた濾過や、又は溶解可能な無菌の固形組成物の形で滅菌剤を無菌水に組み込んだり、又は何らかのその他の無菌の注射可能な媒質に使用直前に組み込んだりして滅菌してもよい。さらにこれらの組成物は、選択に応じ、乳白剤を含んでいてもよく、胃腸管の特定の部分でのみ、又は、胃腸管の特定の部分で優先的に、選択によっては遅延的な態様で、有効成分を放出するような組成物としてもよい。利用可能な埋封組成物の例には、ポリマ物質及びろうがある。さらに有効成分は、適宜上述した一つ又はそれ以上の賦形剤と一緒の、マイクロ被包形としてもよい。
【0209】
本発明の化合物の経口投与用の液体投薬形には、薬学的に容認可能な乳濁液、マイクロ乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれる。有効成分に加え、この液体投薬形には、例えば水又はその他の溶媒や、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油脂類(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、及び、これらの混合物などの可溶化剤及び乳化剤など、当業で通常用いられている不活性の希釈剤を含めてもよい。
【0210】
不活性の希釈剤の他に、経口用組成物にはさらに湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤及び保存剤などのアジュバントを含めてもよい。
【0211】
懸濁液は、有効化合物に加えて、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、及びこれらの混合物など、懸濁剤を含んでいてもよい。
【0212】
直腸用又は膣投与用の、本発明による医薬組成物の調剤は座薬として提供してもよく、この座薬は、本発明に基づく一つ又はそれ以上の化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう又はサリチル酸塩などを含有する、一つ又はそれ以上の適した非刺激性の賦形剤又は担体と一緒に混合して調合してもよく、このときこの座薬は、室温では固形であるが、体温では液体となって直腸又は膣腔で融解して有効化合物を放出することとなる。
【0213】
膣投与に適した本発明の調剤には、さらに当業で適していることが公知である担体を含有したペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ、フォーム、又はスプレー調剤が含まれる。
【0214】
本発明の化合物の局所又は経皮投与に向けた投薬形には、粉末、スプレー、軟膏、パスタ、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤がある。有効化合物は無菌条件下で薬学的に容認可能な担体に混合してもよく、そして、必要であれば何らかの保存剤、緩衝剤、又は推進薬に混合してもよい。
【0215】
軟膏、パスタ、クリーム及びゲルは、本発明の有効化合物に加え、例えば動物性油脂及び植物性油脂、油脂、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの賦形剤を含んでいてもよい。
【0216】
粉末及びスプレーは、本発明の化合物に加え、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでいてもよい。さらにスプレーは、例えばクロロフルオロ炭化水素、及び、ブタン及びプロパンなどの揮発性の未置換炭化水素などの通常の推進薬をさらに含んでいてもよい。
【0217】
経皮用パッチには、本発明の化合物の身体への送達をコントロールできるという長所がさらにある。このような投薬形は、当該化合物を適した媒質中に溶解又は分散させることによって作製できる。吸収相乗剤を用いて、皮膚を通る当該化合物の流束を高めてもよい。このような流束の速度は、速度調節膜を提供したり、又は当該化合物をポリママトリックス又はゲル中に分散させることによってコントロールすることができる。
【0218】
眼用調剤、眼用軟膏、粉末、溶液、等々も、本発明の範囲内にあると考察されている。
【0219】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、一つ又はそれ以上の本発明に基づく化合物を、一つ又はそれ以上の薬学的に容認可能な無菌の等張性水溶液又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液と組み合わせて、又は、使用直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に溶かして再構成するような無菌粉末と組み合わせて含み、その中には抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤や、調剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質や、又は懸濁剤又は増粘剤を含めてもよい。
【0220】
本発明の医薬組成物中に用いてよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオル(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、等々)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を利用したり、分散液の場合には必要な粒子の大きさを維持したり、界面活性剤を用いるなどして維持することができる。
【0221】
これらの組成物には、さらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含めてもよい。当該化合物に対する微生物の作用を防止するには、多様な抗菌剤、及び抗カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、等々などを含めて確実にしてもよい。さらに、糖類、塩化ナトリウム、等々の等張剤を組成物中に含めるのも好ましいかも知れない。加えて、注射可能な薬剤形の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を送らせる作用薬を含めれば可能である。
【0222】
場合によっては、薬剤の作用を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅延させるのが好ましい。これは、水溶性の乏しい結晶質又は非晶質の液体懸濁液を利用することによって可能であろう。こうすれば、薬剤の吸収速度は、その溶解速度、ひいては、結晶の大きさ及び結晶の形状に左右されることになる。あるいは、非経口投与される薬剤形の吸収の遅延は、薬剤を油性の伝播体中に溶解又は懸濁させることによって、なされる。
【0223】
注射可能なデポー形は、本発明の化合物のマイクロ封入マトリックスをポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解可能なポリマに形成することによって作製される。薬剤のポリマに対する比、及び用いる特定のポリマの性質に応じて、薬剤放出の速度をコントロールすることができる。その他の生分解可能なポリマの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。さらにデポー型の注射可能な調剤は、身体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロ乳濁液中に当該薬剤を捕捉することでも調製される。
【0224】
本発明の化合物を、ヒト及び動物に薬剤として投与する場合、それらは、単独で与えられても、又は、薬学的に容認可能な担体と組み合わせて0.1から99.5%(より好ましくは0.5から90%)の有効成分を含む医薬組成物として与えることができる。
【0225】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所又は直腸投与してよい。もちろん、これらは各投与経路に適した形で与えられる。例えば、これらは錠剤又はカプセル型として投与されたり、注射、吸入、眼用ローション、軟膏、座薬、等々や、注射、輸注又は吸入による投与や、ローション又は軟膏による局所、座薬による直腸、などによって投与される。経口投与が好ましい。
【0226】
ここで用いられる「非経口投与」及び「非経口的に投与する」という文言は、多くの場合注射による、腸内及び局所投与以外の投与形態を意味し、限定的な意味はないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内及び胸骨内注射及び輸注が含まれる。
【0227】
ここで用いられる「全身投与」、「全身的に投与する」、「末梢投与」及び「末梢的に投与する」という文言は、患者の全身に入り、従って代謝及びその他の同様なプロセスを受けるような、例えば皮下投与など、中枢神経系に直接投与する以外の方法で化合物、薬剤又はその他の材料を投与することを意味する。
【0228】
これらの化合物は、経口、例えばスプレーなどによる鼻孔、直腸、膣内、非経口、槽内、及び、例えば粉末、軟膏又は、バッカル剤及び舌下剤などを含むドロップなどとして局所投与する方法を含め、あらゆる適した投与経路によって、治療目的でヒト及びその他の動物に投与してもよい。
【0229】
選択した投与経路に関係なく、適した水和化形で用いてもよい本発明の化合物、及び/又は、本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に容認可能な投薬形に調合される。
【0230】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬レベルは、患者にとって毒性となることなく、特定の患者、組成物、及び投与形態にとって所望の治療的応答が得られる効果的である有効成分量が得られるように、変更してもよい。
【0231】
選択される投薬量は、用いる本発明の特定の化合物、又はそのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出速度、治療期間、用いる特定の化合物と組み合わせて用いるその他の薬剤、化合物及び/又は材料、治療しようとする患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び医療歴、及び、医業で公知の同様のファクタを含め、様々なファクタに依存するであろう。
【0232】
当業で通常の技術を有する医師又は獣医であれば、必要な医薬組成物の効果的な量を容易に決定でき、処方することができる。例えば、この医師又は獣医は、医薬組成物中で用いる本発明の化合物の量を、所望の治療効果を得るには少ない量から開始し、所望の効果が得られるまでこの投薬量を次第に増加させていってもよいであろう。
【0233】
一般的には、本発明の化合物の適した一日当たりの用量は、治療効果を生じるには最も少ない量である当該化合物量となるであろう。このような有効量は、一般的には、上述したようなファクタに依存することであろう。概して、提示した鎮痛作用に用いる場合は、一人の患者に対する本発明の化合物の静脈内、脳室内及び皮下用量は、体重1キログラムで一日当たり約0.0001から約100mgの範囲であろう。
【0234】
必要に応じて、活性化合物の効果的な一日当たりの用量を、一日中、選択に応じて単位用量形で、適当な間隔で2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上の小用量に、別々に分割して投与してもよい。
【0235】
本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、当該化合物を薬剤調剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0236】
別の態様では、本発明は、上述したうちの一つ又はそれ以上の当該化合物の治療上有効量を、一つ又はそれ以上の薬学的に容認可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に調剤して含めた薬学的に容認可能な組成物を提供するものである。以下に詳述するように、本発明の医薬組成物は、以下、(1)例えば飲薬(水溶液又は非水性溶液又は懸濁液、)錠剤、巨丸剤、粉末、顆粒、舌塗布用のパスタなどの経口投与、(2)例えば無菌の溶液又は懸濁液として、皮下、筋肉内又は静脈内注射するなどの非経口投与、(3)例えば皮膚塗布用のクリーム、軟膏又はスプレーなどの局所投与、又は(4)例えばペッサリ、クリーム又はフォームなどの膣内又はベクタ内、に適合させたものを含め、固形又は液体形での投与用に空間的に調合してもよい。
【0237】
本発明の化合物を、その他の製薬との類推によって、ヒト又は獣医療に用いるのに便利な態様で投与できるように調合してもよい。
【0238】
「処置」という術語は、さらに予防、治療及び加療を包含するものとして意図されている。
【0239】
この処置を受ける患者は、霊長類、特にヒト、及びその他の例えばウマ、ウシ、ブタ及びヒツジなどのほ乳類、一般的な家禽類及びペットを含め、必要なあらゆる動物である。
【0240】
本発明の化合物は、従って、薬学的に容認可能な担体との混合物として投与することができ、またさらに、例えばペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びグリコペプチドなどの抗菌剤と一緒に投与することができる。このように、連合的な治療には、最初に投与されたものの治療効果が、その次のものを投与したときに完全に失われないような態様で、当該化合物を連続的に、同時に、及び別々に投与することが含まれる。
【0241】
本発明の活性化合物の動物飼料への添加は、好ましくは、当該活性化合物を有効量含む適切な飼料プレミックスを調製し、このプレミックスを完全な糧食になるように組み込むことで達成されるとよい。
【0242】
あるいは、本活性成分を含有する中間の濃厚飼料又は飼料補助剤を飼料中に混合することもできる。このような飼料プレミックス及び完全な糧食を調製し、投与する方法は参考文献に説明されている(例えば、"Applied Animal Nutrition", W.H. Freedman and CO., San Francisco, U.S.A., 1969 又は "Livestock Feeds and Feeding" O and B books, Corvallis, Ore., U.S.A., 1977)。
【0243】
コンビナトリアル・ライブラリ
今日の医薬品開発の時代には、何千から何百万種もの化合物のハイスループットスクリーニングが、重要な役割を担っている。ハイスループットスクリーニングは、一般には、これら何百万種もある化合物を、比較的短時間で、一つ以上のバイオアッセイを行って検査できるような自動化及びロボット工学を取り入れている。この高性能スクリーニング技術は、その性能に見合うように、膨大な分子多様性を有する「原材料」を大量に必要とする。従って、コンビナトリアル・ケミストリは、スクリーニング用の新規な分子のこの需要を満たすための重要な役割を担うであろう。ハイスループットスクリーニング技術を用いて「リード化合物」をひとたび同定すれば、コンビナトリアル・ケミストリはこれらの開始リード化合物を最適化するために有利に用いられるであろう(類似体/変異体は、開始リード化合物を同定する同様のハイスループットスクリーニングアッセイで検査されるであろう)。
【0244】
本発明の目的のためのコンビナトリアルライブラリは、化学的に関連した化合物の混合物であり、望まれる特性について一緒にスクリーニングしてもよく、当該ライブラリは溶液中であるか、または共有結合で固体支持体に結合していてもよい。また、一つの反応で多くの関連化合物を調製すると、必要なスクリーニングの段階数が減少し、簡略化される。適切な生物学的、薬学的、農薬学的、または物理学的特性についてのスクリーニングは、従来の方法で行ってもよい。
【0245】
ライブラリの多様性は、多種の異なるレベルで生成することができる。例えば、コンビナトリアル的手法に用いられる基質アリール基は、例えば環構造のふ入り化など、核となるアリール部分に関連して多様である場合があり、及び/または、そのほかの置換基による違いなどによって多様化させることができる。
【0246】
有機小分子のコンビナトリアル・ライブラリを作製するには、当業において様々な技術が利用できる。例えば、Blondelle et al. (1995) Trends Anal. Chem. 14:83; the Affymax U.S. Patents 5,359,115 and 5,362,899: the Ellman U.S. Patent 5,288,514: the Still et al. PCT publication WO 94/08051; Chen et al. (1994) JACS 116:2661: Kerr et al. (1993) JACS 115:252; PCT publications WO92/10092, WO93/09668 and WO91/07087; 及び the Lerner et al. PCT publication WO93/20242)を参照されたい。従って約16から1,000,000又はそれ以上といったオーダのダイバーソマに関する様々なライブラリを合成でき、特定の活性又は性質についてスクリーニングすることができる。
【0247】
例示的な実施例では、例えば基質のある一つの位置に位置するなど、加水分解可能な又は光分解可能な基によってポリマ・ビードに結合させるなど、スティル氏らのPCT公報WO 94/08051に説明された技術に適合された当該反応を用いて、置換されたダイバーソマのライブラリを合成することができる。このスティル氏らの技術によれば、ライブラリは一組のビード上で合成されるが、各ビードは、そのビード上にある特定のダイバーソマを判別できるようにした一組のタグを含んでいる。酵素阻害剤を発見するのに特に適した実施例の一つとしては、透過可能な膜の表面上にビードを分散させ、そのダイバーソマをこのビードから、ビード・リンカの溶解によって解放することができる。各ビードから出たダイバーソマは、この膜を通ってアッセイ領域に拡散し、このアッセイ領域で酵素アッセイと相互作用することになる。数多くのコンビナトリアル法の詳細な説明を下で行う。
【0248】
A)直接的な特徴付け
コンビナトリアル化学の分野で成長中の傾向としては、質量分析法(MS)など、フェムトモルより小さい量の化合物を特徴付けるのに用いることのできる技術の感受性を利用したり、コンビナトリアル・ライブラリから選別された化合物の化学的構成を直接調べるといった傾向がある。例えば、ライブラリを不溶性の支持マトリックス上に提供した場合、化合物の個別の集団を最初にその支持体から解放し、MSで特徴付けることができる。別の実施例では、MS試料調製技術の一部として、MALDIなどのMS技術を用いて化合物をマトリックスから、特に、化合物をマトリックスに繋ぎ止めるために最初に不安定な結合を用いた場合に、解放することができる。例えば、マトリックスからダイバーソマを解放し、そのダイバーソマをMS分析のために電離させるために、ある一つのライブラリから選別したビードを、MALDIステップで照射することができる。
【0249】
B)マルチピン合成
本方法のライブラリはマルチピン・ライブラリ・フォーマットを採ることができる。簡単に説明すると、ゲイセン氏及びその共同研究者は(Geysen et al. (1984) PNAS 81:3998-4002)、マイクロタイタ・フォーマットに並べた、ポリアクリル酸をグレーティングしたポリエチレン製ピン上のパラレル合成によって化合物ライブラリを作製する方法を紹介した。このゲイセン氏の技術を用いて、このマルチピン法を用い、一週間当たり数千の化合物を合成及びスクリーニングすることができ、繋ぎ止められた化合物を多くのアッセイで再利用してもよい。さらに、純度評価及び更なる評価を行うために、合成後に支持体から化合物を切り離せるよう、適したリンカ部分をこのピンに繋げることもできる(Bray et al. (1990) Tetrahedron Lett 31:5811-5814; Valerio et al. (1991) Anal Biochem 197:168-177; Bray et al. (1991) Tetrahedron Lett 32:6163-6166参照)。
【0250】
C)分割−カップリング−リコンバイン
さらに別の実施例では、化合物のふ入りのライブラリを、分割−カップリング−リコンバインというストラテジを用いて一組のビード上で提供することができる(例えばHoughten (1985) PNAS 82:5131-5135; 及び米国特許第4,631,211号; 第5,440,016号; 第5,480,971号を参照されたい)。簡単に説明すると、この名称が暗に示すように、縮合がライブラリに導入される各合成ステップにおいて、当該ライブラリの特定の位置に付加される異なる置換基の数に等しいグループにビードを分割し、この異なる置換基を別々の反応でカップリングし、ビードをリコンバインし、次回の反復のための一個のプールにするのである。
【0251】
ある一つの実施例では、分割−カップリング−リコンバイン・ストラテジを、Houghten氏が初めて開発したいわゆる「ティーバッグ法」に類似の方法を用いて実施することができ、このとき化合物の合成は、樹脂で密封された、内側が多孔質のポリプロピレンバッグで起きる(Houghten et al. (1986) PNAS 82:5131-5135)。こうしてこのバッグを適した反応溶液中に配置することで、置換基を、化合物を保持した樹脂に結合させ、樹脂洗浄及び脱保護といった全ての共通のステップは、一個の反応容器中で同時に行われる。合成終了時、各バッグは一個の化合物を含有することとなる。
【0252】
D)光指示、空間指定可能なパラレル化学合成によるコンビナトリアル・ライブラリ
一個の化合物の同定が、合成基質上でのその位置によってなされるようなコンビナトリアル合成のスキームは、空間指定可能な合成法と呼ばれる。ある一つの実施例では、このコンビナトリアル・プロセスは、固体支持体上の特定の位置上への化学試薬の添加をコントロールすることによって行われる(Dower et al. (1991) Annu Rep Med Chem 26:271-280; Fodor, S.P.A. (1991) Science 251:767; Pirrung et al. (1992) U.S. Patent No. 5,143,854; Jacobs et al. (1994) Trends Biotechnol 12:19-26)。写真印刷の空間解像力によって、小型化が可能である。この技術は、感光性の保護基を用いた保護/脱保護反応の利用を通じて実施できる。
【0253】
この技術の主要な点はGallop et al. (1994) J Med Chem 37:1233-1251に説かれている。感光性のニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)保護されたアミノリンカ又はその他の感光性のリンカの共有結合を通じたカップリングのために合成基質が調製される。光を用いて、カップリングに向けて合成支持体の特定の領域を選択的に活性化させる。感光性の保護基を光によって除去する(脱保護)と、選択された区域が活性化する。活性化後、それぞれがアミノ末端に感光性保護基を持つアミノ酸類似体の組の最初のものが表面全体に露出される。カップリングは、前のステップで光によって指定された領域のみで起きる。この反応を停止させ、プレートを洗浄し、第二のマスクを通じて基質を再度照射し、第二の保護されたビルディングブロックとの反応に向けて異なる領域を活性化させる。マスクのパターン及び反応物の順序が、生成物及びそれらの位置を決定することとなる。このプロセスは写真印刷技術を用いているため、合成できる化合物の数は、適した解像度で指定することのできる合成部位の数の制限を受けるだけである。各化合物の位置が精確に判明しているために、その他の分子とのその相互作用を直接評価できる。
【0254】
光指示化学合成においては、生成物は、照射パターン及び反応物添加の順序に依存する。刷板パターンを変えることで、数多くの様々な組のテスト化合物を同時に合成することができるが、この特徴は、数多くの様々なマスキング・ストラテジの作製につながる。
【0255】
E)コードされたコンビナトリアル・ライブラリ
さらに別の実施例では、当該方法は、コードされたタギング系を備えた化合物ライブラリを利用する。コンビナトリアル・ライブラリからの活性化合物の同定における最近の改良法は、一本のビードになされた反応ステップをユニークにコードしているタグと、推論ではあるがそれが持つ構造と、を用いた化学的指標系を利用するものである。概念的には、この方法は、発現したペプチドから活性を得るが、この活性ペプチドの構造は、対応するゲノムDNA配列から推論されるような、ファージ展示ライブラリを模倣したものである。合成コンビナトリアルライブラリの最初のコーディングは、DNAをコードとして用いた。その他、多様な形のコーディングが報告されており、その中には、配列決定可能なバイオ−オリゴマ(例えばオリゴヌクレオチド及びペプチド)を用いたコーディング法や、配列決定不可能なタグを更に用いた二進法コーディング法がある。
【0256】
1)配列決定可能なバイオ−オリゴマを用いたタギング
コンビナトリアル合成ライブラリをコードするのにオリゴヌクレオチドを用いる原理は、1992年に説かれており (Brenner et al. (1992) PNAS 89:5381-5383)、このようなライブラリの一例が、翌年に発表されている(Needles et al. (1993) PNAS 90:10700-10704)。各々が特定のジヌクレオチド(それぞれTA, TC, CT, AT, TT, CA及びAC)によってコードされた全ての組合せのArg、Gln、Phe、Lys、Val、D-Val及びThr(三文字のアミノ酸の記号)から成る公称77(=823,543)のペプチドのコンビナトリアル・ライブラリが、固体支持体上でペプチド及びオリゴヌクレオチド合成を、一連にして交互に行うことによって作製された。この研究では、オリゴヌクレオチド合成の場合は保護されたOH基を、そしてペプチド合成には保護されたNH2基を(ここでは1:20の比で)生じる試薬と一緒に、ビードを同時に予備インキュベートすることによって、ペプチド又はオリゴヌクレオチド合成に向けて、ビード上のアミン結合官能性を特異的に差異化させた。終了時、タグはそれぞれ69量体から成ったが、そのうち14単位はこの記号を持っていた。ビードに結合したライブラリを、蛍光標識した抗体と一緒にインキュベートし、蛍光の強力な結合抗体を含有するビードを、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって採集した。このDNAタグをPCRによって増幅し、配列決定し、予測されたペプチドを合成した。このような技術に従えば、化合物ライブラリは、当該方法で用いるように得られるが、当該方法でのタグのオリゴヌクレオチド配列は、特定のビードに対してなされた連続的なコンビナトリアル反応を表すものであり、従って、そのビード上の化合物の正体を明らかにするものである。
【0257】
オリゴヌクレオチドのタグを利用することにより、感受性の優れたタグ分析が可能となる。しかしながら尚、当該方法では、タグ及びライブラリ・メンバの同時合成を交互に行うために必要なオルトゴナルの組の保護基を注意深く選択せねばならない。さらに、タグ、特にリン酸塩及び糖アノメリック結合の化学的不安定性によって、オリゴマー以外のライブラリの合成に利用できる試薬及び条件の選択が限られてくる場合がある。いくつかの実施例では、本ライブラリは、アッセイに向けてテスト化合物のライブラリ・メンバを選択的に切り離すことができるリンカを利用する。
【0258】
さらにペプチドはコンビナトリアル・ライブラリのタギング分子としても利用されてきた。当業においては二つの例示的な方法が説かれているが、その両方が、コーディング鎖及びリガンド鎖を交互につなげた、固相上に枝分かれしたリンカを用いている。最初の方法 (Kerr JM et al. (1993) J Am Chem Soc 115:2529-2531)では、合成におけるオルトゴナリティは、コーディング鎖には酸に弱い保護を、そして化合物鎖には塩基に弱い保護を利用することによって、達成している。
【0259】
もう一つの方法 (Nikolaiev et al. (1993) Pept Res 6:161-170)では、枝分かれしたリンカを用いて、コーディング単位及びテスト化合物の両方が、樹脂上の同じ官能基に結合できるようにしている。実施例の一つでは、切断可能なリンカを、枝分かれの点とビードとの間に配置して、切断の結果、コード及び化合物の両方を含有する分子が解放されるようにすることができる (Ptek et al. (1991) Tetrahedron Lett 32:3891-3894)。別の実施例では、切断可能なリンカは、コードを残したまま、テスト化合物をビードから選択的に分離できるよう、切断可能なリンカを配置することができる。この最後のコンストラクトは特に貴重であるが、それはなぜなら、それによって、コーディング基の潜在的な干渉を受けずに、テスト化合物をスクリーニングすることができるからである。ペプチド・ライブラリ・メンバ及びそれらの対応するタグの個別の切断及び配列決定の、当業における例の結果、このタグは、ペプチド構造を精確に予測するものであることが確認された。
【0260】
2)配列決定の不可能なタギング:二進法コーディング法
テスト化合物ライブラリをコーディングするための、もう一つの代替的な形は、二進法のコードとして用いられる、一組の配列決定不可能な電子含有タギング分子を利用するものである(Ohlmeyer et al. (1993) PNAS 90:10922-10926)。タグの例は、電子捕捉ガスクロマトグラフィ(ECGC)によってフェムトモルレベルよりも小さいレベルで、それらのトリメチルシリルエーテルとして検出可能なハロ芳香族アルキルエーテルである。アルキル鎖の長さの変更や、芳香族ハリド置換基の性質及び位置の変更により、原理的には240個(例えば1012から上)の異なる分子をコードすることのできる、少なくとも40個のこのようなタグの合成が可能である。最初の報告(上記Ohlmeyer et al.) では、このタグを、光切断可能なo-ニトロベンジルリンカを介してペプチドライブラリの利用できるアミン基のうちの約1%に結合させていた。ペプチド様又はその他のアミン含有分子のコンビナトリアル・ライブラリを作製する場合、この方法は便利である。しかしながら、基本的にあらゆるコンビナトリアル・ライブラリのコーディングを可能とする、より多能な系が開発されている。そこで、当該化合物を、固体支持体に、光切断可能なリンカを介して結合させており、そのタグを、カテコールエーテルのリンカを通じ、カルベン挿入を介してビード・マトリックス中に結合させる(Nestler et al. (1994) J Org Chem 59:4723-4724)。このオルトゴナル結合ストラテジにより、溶液中でのアッセイに向けてライブラリ・メンバを選択的に切り離すことができ、その後、このタグの組の酸化的解離の後にECGCにより解読することができる。
【0261】
当業ではいくつかのアミド結合ライブラリは、アミン基に結合させた電子含有タグを用いた二進法コーディングを利用しているが、これらのタグをビード・マトリックスに直接結合させることにより、コードされるコンビナトリアル・ライブラリ中に作製できる構造に、より大きな多能性がもたらされる。このように結合させると、タグ及びそれらのリンカは、ビード・マトリックス自体とほぼ同じ程度に非反応性となる。二進法で符号化されたコンビナトリアル・ライブラリが二つ、報告されているが、これらの方法では、電子含有タグは、固相に直接結合され(Ohlmeyer et al. (1995) PNAS 92:6027-6031)ており、当該化合物ライブラリを作製する上での目印となっている。両ライブラリは、ライブラリ・メンバが固体支持体に光不安定性のリンカによって結合され、タグは強力な酸化によってのみ切断可能なリンカを通じて結合されているといった、オルトゴナル結合ストラテジを用いて構成された。ライブラリのメンバは固体支持体から繰り返し、部分的に光溶離させることができるため、ライブラリ・メンバを複数のアッセイに利用することができる。さらに連続的な光溶離により、高収量の反復的スクリーニング・ストラテジが可能となる。一番目に、複数のビードを96ウェルのマイクロタイタ・プレートに容れ、二番目に、化合物を部分的に切り離し、アッセイプレートに移し、三番目に、金属結合アッセイにより活性のあるウェルを識別し、四番目に、対応するビードを一つずつ、新しいマイクロタイタ・プレートに再度並べ、五番目に、単一の活性化合物を同定し、そして六番目に、構造を解読する。
【0262】
実施例
以上、本発明が概略的に説明されたところで、後述の例を参照することでさらに容易に理解できようが、それは本発明のある様態または実施例を具体化することのみを目的としており、本発明を限定するためのものではない。
【0263】
本例に使用された一般方法
NMRスペクトルは、特に記載のない限り、CDCl3を溶媒として用い、プロトン周波数270MHz及び300MHzにおいて得た。1H化学シフトは内部標準Me4Si (“TMS”; d= 0.00 ppm) または CHCl3 (d = 7.26 ppm)と比較して報告され、31P化学シフトは外部H3PO4 (d = 0.00 ppm) 85%水溶液と比較し、13Cは内部標準CHCl3 (d = 77.00 ppm) または TMS (d = 0.00 ppm)と比較した。質量スペクトルは、電子衝撃イオン化モード70eVにおいて得た。旋光度は室温で測定した。
【0264】
例1
ラセミ化ジエステル2の合成
【0265】
【化19】

【0266】
無水次亜リン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム一水化物を、真空条件下、50℃で、トルエンと共に共沸蒸留して調製した)(940mg, 10.8mmol)を乾燥CH2Cl2 60mLに懸濁し、0℃まで冷却してから、トリエチルアミン(2.50 mL, 18.9 mmol) 及びクロロトリメチルシラン(2.32 mL, 18.4 mmol)を 加えた。5分後、化合物1(500 mg, 1.54 mmol)の乾燥 CH2Cl25mL溶液を加えた。その混合物を室温で24時間撹拌し、その後1N HCl(20mL)を加えた。その反応混合物をCH2Cl2(3 x 40 mL)で抽出し、混合有機相を乾燥させた(MgSO4)。濃縮後、残渣を乾燥CH2Cl26mLとピラジン0.6mLに溶解し、0℃まで冷却してから、塩化トリメチルアセチル (0.3 mL, 2.25 mmol)を加え、それからベンジルアルコール(0.21 mL, 1.8 mmol)を加えた。混合物を2時間かけて撹拌して0℃から室温に戻し、エーテルで希釈した。有機相を1N HCl(10mL)、H2O(10mL)、食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)、濃縮した。シリカゲル上でCHCl3-MeOH(30:1)を溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフにかけたところ、無色油状のラセミ化化合物2(657 mg, 89%) が得られ、1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.22 (d, JH,P =555 Hz, 0.6H), 7.19 (d, JH,P =550 Hz, 0.4H), 7.39-7.34 (m, 15H), 5.15-4.95 (m, 6H), 2.98 (m, 1H), 2.47-2.17 (m, 3H), 2.14-1.79 (m, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d 36.06, 35.08; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.46, 173.39, 172.13, 135.70, 135.30, 128.73, 128.60, 128.58, 128.53, 128.46, 128.43, 128.38, 128.33, 128.26, 128.20, 67.88, 67.79, 67.07, 66.99, 66.46, 38.05, 38.02, 31.25, 30.02, 28.29, 28.13であった。
【0267】
例2
ラセミ化テトラエステル3の合成
【0268】
【化20】

【0269】
2(210 mg, 0.44 mmol)の乾燥THF 5ml溶液に水素化ナトリウム(15 mg, 60% 油中懸濁液, 0.44 mmol)を加え、その後0℃で化合物1(140 mg, 0.44 mmol)を加えて、その混合物を室温で2時間撹拌し、その後1N HClを加えた。反応混合物をCH2Cl2(3 x 20mL)で抽出した。混合有機相を乾燥(MgSO4)、濃縮した。シリカゲル上で酢酸エチル-ヘキサン(1:1)を溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフにかけたところ、無色油状の化合物3(45 mg, 13%) が得られ、1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.34-7.27 (m, 25H), 5.06-4.89 (m, 10H), 2.83 (m, 2H), 2.33-2.14 (m, 6H), 2.00-1.60 (m, 6H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d -28.51, -28.90, -29.34; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.80, 172.19, 136.27, 135.78, 135.50, 128.60, 128.56, 128.42, 128.33, 128.28, 128.24, 128.19, 128.14, 66.91, 66.87, 66.80, 66.37, 66.10, 66.02, 38.65, 38.51, 31.71, 30.32, 31.24, 30.67, 30.57, 30.04, 28.85, 28.69であった。
【0270】
例3
ラセミ化テトラ酸FN-6の合成
【0271】
【化21】

【0272】
3(42 mg, 0.52 mmol)の第三ブタノール溶液に20%Pd(OH)2/C (アルドリッチ社製, £50% H2O)を30mg加え、その混合物をH2ガス70psi下で24時間水素化した。セライトを通した濾過によりその触媒を除去し、濾液を濃縮した。残渣を水5mLに溶解して加水分解したところ、白色固体状のFN-6 17mg(92%)が得られ、1H NMR (D2O, 300 MHz) d 2.77 (m, 2H), 2.44 (t, J = 7.3 Hz, 4H), 2.20 (dt, J = 13.2, 11.3 Hz, 2H), 2.00-1.82 (m, 6H); 31P NMR (D2O, 121 MHz) d -33.12; 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 179.69, 179.61, 178.61, 39.89, 32.70, 32.28, 31.49, 29.68, 29.58, 29.52, 29.42であった。
【0273】
例4
ジエステル5の合成
【0274】
【化22】

【0275】
化合物4(130 mg, 0.33 mmol) を乾燥CH2Cl2 2mLとピラジン0.2mLに溶解し、0℃まで冷却後、塩化トリメチルアセチル(80 mL, 0.6 mmol) を加えて、その後(R)-(+)-1-フェニルl-1-ブタノール (65 mg, 0.44 mmol)を加えた。その混合物を2時間撹拌して0℃から室温に戻し、エーテルで希釈し、反応混合物を1N HCl(10mL)、H2O(10mL)及び食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)、濃縮した。シリカゲル上でCHCl3-MeOH(30:1)を溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフにかけたところ、四種類のジアステレオ異性体の混合物として5(164mg, 94%)が得られた。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.45-7.28 (m, 15H), 7.26 (d, JH,P = 558 Hz, 0.24H), 7.23 (d, JH,P = 554 Hz, 0.16H), 6.91 (d, JH,P = 552 Hz, 0.60H), 5.37-5.24 (m, 1H), 5.17-5.03 (m, 4H), 3.05-2.68 (m, 1H), 2.56-1.60 (m, 8H), 1.50-1.20 (m, 2H), 0.98-0.91 (m, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121MHz) d 34.88, 34.10, 32.22, 31.32。
【0276】
例5
テトラエステル6の合成
【0277】
【化23】

【0278】
5(220 mg, 0.44 mmol)の乾燥THF 5mL溶液に水素化ナトリウム(15 mg, 60% dispersion in oil, 0.44 mmol)を加え、その後化合物1(例1参照; 140 mg, 0.44 mmol)を0℃で加え、その混合物を室温で2時間撹拌した。1N HClを加え、その混合物をCH2Cl2(3 x 20mL)で抽出した。混合有機相を乾燥(MgSO4)、濃縮した。シリカゲル上でCHCl3-MeOH(30:1)を溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフにかけたところ、4種類の異性体の混合物が得られた。31P NMRでは4本のピーク、d -29.91, -30.21, -30.37, 及び -30.66が現れた。TLC(酢酸エチル-ヘキサン 2:3)で慎重に分離したところ、均質な化合物6a-dが得られた。
【0279】
6a: Rf 0.60 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); [a]D +12.1° (c 0.7, CHCl3); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.37-7.28 (m, 25H), 5.30 (dt, J = 8.7, 7.2 Hz, 1H), 5.20-4.97 (m, 8H), 2.91 (m, 1H), 2.56 (m, 1H), 2.39-2.22 (m, 3H), 2.10-1.60 (m, 11H), 1.35-1.09 (m, 2H), 0.87 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d -29.90; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.93, 173.86, 173.78, 173.70, 172.23, 172.12, 140.98, 135.78, 135.55, 128.59, 128.51, 128.46, 128.25, 128.23, 128.17, 126.55, 77.19, 77.10, 66.82, 66.76, 66.31, 66.23, 40.45, 40.38, 38.67, 38.63, 38.59, 38.56, 32.18, 31.30, 31.09, 30.93, 30.11, 29.66, 28.84, 28.69, 28.64, 28.48, 18.58, 13.68。
【0280】
6b: Rf 0.58 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); [a]D +12.9° (c 0.35, CHCl3); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.37-7.28 (m, 25H), 5.30 (dt, J = 9.0, 6.6 Hz, 1H), 5.21-4.99 (m, 8H), 2.99 (m, 1H), 2.55 (m, 1H), 2.41-2.20 (m, 3H), 2.10-1.62 (m, 11H), 1.40-1.20 (m, 2H), 0.86 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d -30.32; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.94, 173.90, 173.87, 173.81, 172.25, 172.15, 141.01, 135.82, 135.58, 135.52, 128.62, 128.57, 128.54, 128.49, 128.32, 128.28, 128.26, 128.24, 128.22, 128.21, 128,19, 126.58, 77.20, 77.16, 66.82, 66.79, 66.33, 66.25, 40.44, 40.37, 38.70, 38.67, 38.43, 38.38, 32.25, 31.90, 31.34, 31.13, 31.00, 30.75, 29.70, 28.81, 28.67, 28.53, 28.38, 18.55, 13.71。
【0281】
6c: Rf 0.57 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); [a]D 0° (c 0.42, CHCl3); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.35-7.20 (m, 25H), 5.29 (dt, J = 9.3, 6.9 Hz, 1H), 5.17-4.94 (m, 8H), 2.91 (m, 1H), 2.45-2.25 (m, 3H), 2.20-1.20 (m, 14H), 0.84 (t, J = 7.5 Hz, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d -30.11; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.84, 173.74, 173.70, 173.62, 172.25, 172.10, 140.84, 135.80, 135.60, 135.49, 128.62, 128.53, 128.41, 128.32, 128.24, 128.21, 126.68, 77.24, 77.15, 66.87, 66.79, 66.33, 66.25, 40.27, 40.21, 38.86, 38.83, 38.46, 38.41, 31.95, 31.62, 31.30, 31.19, 30.80, 30.39, 29.70, 28.64, 28.53, 28.48, 28.40, 18.63, 13.73。
【0282】
6d: Rf 0.55 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); [a]D -2.8° (c 0.42, CHCl3); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.41-7.20 (m, 25H), 5.31 (dt, J = 9.3, 6.9 Hz, 1H), 5.23-4.98 (m, 8H), 2.97 (m, 1H), 2.50-2.17 (m, 4H), 2.15-1.82 (m, 6H), 1.80-1.50 (m, 5H), 1.45-1.20 (m, 2H), 0.85 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 31P NMR (CDCl3, 121 MHz) d -30.57; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.77, 173.70, 173.66, 173.59, 172.18, 172.06, 140.81, 135.77, 135.50, 135.46, 128.59, 128.53, 128.51, 128.41, 128.30, 128.23, 128.19, 126.58, 77.16, 77.05, 66.82, 66.31, 66.24, 40.29, 40.23, 38.79, 38.30, 38.24, 31.96, 31.44, 31.34, 31.14, 30.81, 30.20, 28.95, 28.80, 28.69, 28.53, 18.54, 13.69。
【0283】
例6
テトラ酸FN-6の光学的に純粋な立体異性体の合成

【0284】
【化24】

【0285】
光学的に純粋な立体異性体FN-6a-dの調製に、FN-6の調製を概説した合成方法(例3参照)が用いられた。
【0286】
FN-6a (収率 94%): 白色固体; 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 2.76 (m, 2H), 2.45 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 2.14 (dt, J = 12.9, 9.6 Hz, 2H), 2.00-1.89 (m, 4H), 1.83 (dt, J = 14.4, 4.2 Hz, 2H); 31P NMR (D2O, 121 MHz) d -37.63; 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 179.95, 178.74, 40.16, 32.55 (d, J1,P = 90.23 Hz), 32.38, 29.67 (d, J3,P = 11.48 Hz)。
【0287】
FN-6b (収率 96%): 白色固体; 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 2.76 (m, 2H), 2.45 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 2.13 (dt, J = 12.6, 10.5 Hz, 2H), 2.04-1.89 (m, 4H), 1.83 (dt, J = 15.0, 4.2 Hz, 2H); 31P NMR (D2O, 121 MHz) d -36.42; 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 180.07, 178.76, 40.10, 32.67 (d, J1,P = 90.75 Hz), 32.40, 29.57 (d, J3,P = 11.25 Hz)。
【0288】
FN-6c (収率 99%): 白色固体; 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 2.76 (m, 2H), 2.45 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 2.09 (dt, J = 12.6, 9.0 Hz, 2H), 2.04-1.88 (m, 4H), 1.79 (dt, J = 15.0, 4.2 Hz, 2H); 31P NMR (D2O, 121 MHz) d -37.96; 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 179.88, 178.72, 40.13, 32.46 (d, J1,P = 90.75 Hz), 32.36, 29.66 (d, J3,P = 12 Hz)。
【0289】
FN-6d (収率 96%): 白色固体; 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 2.76 (m, 2H), 2.45 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 2.14 (dt, J = 13.2, 9.6 Hz, 2H), 2.00-1.86 (m, 4H), 1.85 (dt, J = 14.7, 3.6 Hz, 2H); 31P NMR (D2O, 121 MHz) d -35.56; 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 179.88, 178.72, 40.13, 32.46 (d, J1,P = 90.75 Hz), 32.37, 29.66 (d, J3,P = 12 Hz)。
【0290】
例7


【0291】
4のニトロメタン溶液に、トリトンB(40%メタノール溶液)0.1mLを加えた。その混合物を室温で5時間撹拌した。ニトロメタンを減圧下で除去した。シリカゲル上で酢酸エチル-ヘキサン(8:1から3:1)を溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフにかけたところ、無色油状の化合物5(200mg, 42%)及び6(150mg, 17%)が得られた。IR (フィルム) u 1730 cm-1, 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.40-7.28 (m, 10H), 5.13 (s, 2H), 5.10 (s, 2H), 4.35 (m, 2H), 2.45-2.15 (m, 4H), 2.08-1.82 (m, 2H); 13C NMR(CDCl3, 75 MHz) d 173.52, 172.22, 135.67, 135.32, 128.66, 128.57, 128.51, 128.32, 128.28, 73.01, 66.89, 66.48, 41.40, 31.41, 28.95, 26.94. 6: IR (film) u 1731 cm-11H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.39-7.20 (m, 20H), 5.15-5.02 (m, 8H), 4.53 (m, 1H), 2.52-2.22 (m, 6H), 2.08-1.75 (m, 8H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.34, 172.10, 135.70, 135.37, 128.57, 128.40, 128.29, 128.27, 84.35, 66.87, 66.44, 41.17, 41.06, 35.83, 35.62, 31.32, 27.55, 27.41。
【0292】
例8


【0293】
化合物5(58 mg, 0.15 mmol)とアクリル酸ベンジル(25 mg, 0.15mmol)の1mL乾燥CH2Cl2溶液に、触媒量のトリトンB(40%メタノール溶液)を加えた。その混合物を室温で4時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、シリカゲル上で酢酸エチル-ヘキサン(5:1)を溶離液としてフラッシュクロマトグラフにかけたところ、化合物7(75 mg, 91%)が得られた。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.40-7.25 (m, 15H), 5.20-5.03 (m, 6H), 4.64-4.46 (m, 1H), 2.55-1.80 (m, 11H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.63, 172.10, 171.34, 135.67, 135.49, 128.60, 128.55, 128.41, 128.31, 128.27,85.67, 85.03, 66.86, 66.67, 66.44, 41.17, 35.41, 35.32, 31.35, 30.07, 29.96, 29.07, 28.36, 27.48, 26.64。
【0294】
例9


【0295】
化合物8(54 mg, 0.076 mmol) の2mL乾燥CH2Cl2溶液に、トリエチルアミン18uLを加え、室温で10分間撹拌後、CATP 80mgを加えた。得られた混合物をさらに4時間撹拌した。その後、エーテル10mLを加え、セライトを通して濾過し、エーテルで洗浄した。濾液を濃縮した。クロマトグラフにかけたところ、8(30 mg, 58%)が得られた。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.40-7.22 (m, 20H), 5.15-5.01 (m, 8H), 3.00-2.79 (m, 4H), 2.50-2.30 (m, 6H), 2.00-1.78 (m, 4H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 205.98, 205.73, 174.20, 174.03, 172.45, 172.40, 135.78, 135.68, 128.53, 128.51, 128.22, 128.16, 66.58, 66.33, 43.95, 39.27, 31.62, 31.59, 29.68, 26.66, 26.59。
【0296】
例10


【0297】
化合物7(70 mg, 0.13 mmol)の5mL乾燥CH2Cl2溶液にトリエチルアミン30uLを加え、室温で10分間撹拌後、CATP120mgを加えた。得られた混合物をさらに4時間撹拌し、エーテル20mLを加え、セライトを通して濾過し、エーテルで洗浄した。濾液を濃縮した。クロマトグラフにかけたところ、9(40 mg, 60%)が得られた。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.40-7.25 (m, 15H), 5.16-5.05 (m, 6H), 3.02-2.90 (m, 2H), 2.80-2.50 (m, 5H), 2.36 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.00-1.89 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 206.30, 174.20, 172.43, 172.36, 135.76, 135.70, 128.51, 128.49, 128.20, 128.17, 128.15, 66.57, 66.47, 66.33, 43.92, 39.33, 37.06, 31.62, 27.85, 26.65。
【0298】
例11


【0299】
9(40 mg, 0.078 mmol) の第三ブタノール溶液に20% Pd(OH)2/C(アルドリッチ社製、£50% H2O)30mgを加え、混合物を水素1気圧下で4時間水素化した。触媒をセライトで濾過して除去し、濾液を濃縮した。残渣を水5mLに溶解して凍結乾燥したところ、18mgのシロップ状の1(94%) が得られた。1: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 3.03-2.74 (m, 5H), 2.59 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.96-1.76 (m, 2H)。
【0300】
例12


【0301】
8の第三ブタノール溶液に20% Pd(OH)2/C(アルドリッチ社製、£50% H2O)10mgを加え、混合物を水素1気圧下で4時間水素化した。触媒をセライトで濾過して除去し、濾液を濃縮した。残渣を水5mLに溶解して凍結乾燥し、10mgのシロップ状の2(93%) が得られた。. 2: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 3.03-2.72 (m, 6H), 2.45 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.96-1.75 (m, 4H)。
【0302】
例13


【0303】
L-グルタミン酸トシル酸ジベンジル(1g, 2mmol)の20mLCH2Cl2懸濁液にトリホスゲン(110 mg, 0.37 mmol)を加えた。混合物を-78℃まで冷却し、Et3N(0.53 mL, 4 mmol) を加えた。反応混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。反応混合物をEtOAc 100mLで希釈し、H2O(3 x 30 mL)と食塩水(30 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、その残渣をCH2Cl25mLに溶解し、過剰量のキサンを加えた。白色固体10(600 mg, 88%)を収集した。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.40-7.25 (m, 20H), 5.17 (br s, 2H), 5.13 (br s, 4H), 5.08 (s, 4H), 4.53 (dt, J = 8.1, 4.8 Hz, 2H), 2.41 (m, 4H), 2.19 (m, 2H), 1.97 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 172.70, 172.51, 156.53, 135.67, 135.12, 128.51, 128.46, 128.33, 128.14, 67.18, 66.38, 52.47, 30.17, 27.84。
【0304】
例14


【0305】
10の第三ブタノール溶液に20% Pd(OH)2/C(アルドリッチ社製、£50% H2O)200mgを加え、その混合物を水素1気圧下で24時間水素化した。触媒をセライトで濾過して除去し、濾液を濃縮した。残渣を水15mLに溶解して凍結乾燥し、235mg(98%)の白色固体状のFN11 が得られた。[a]D -16.4° (c 0.5, H2O); 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 4.26 (br s, 2H), 2.51 (t, J = 9.9 Hz, 4H), 2.18 (m, 2H), 1.98 (m, 2H); 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 178.59, 177.59, 160.55, 53.91, 31.36, 27.51。
【0306】
例15


【0307】
L-グルタミン酸トシル酸ジベンジル(1g, 2mmol)の20mLCH2Cl2懸濁液にトリホスゲン(200 mg, 0.66 mmol)を加えた。混合物を-78℃まで冷却し、Et3N(0.60 mL, 4 mmol) を加えた。反応混合物を-78℃で2時間撹拌してから室温まで温め、EtOAc 100mLで希釈し、H2O(30 mL)、1N HCl(30mL)、食塩水(30 mL)で洗浄した。その混合物をMgSO4で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、その残渣をシリカゲル上でヘキサン/EtOAc(2:1)を用いてクロマトグラフにかけたところ、イソシアン酸塩(230mg)が得られた。イソシアン酸塩(230 mg, 0.65 mmol) をCH2Cl25mLに溶解し、0℃でL-グルタミン酸ジベンジルを加えた。その混合物を24時間室温で撹拌した。過剰量のヘキサンを加えた。白色固体11を収集した(440 mg, イソシアン酸塩から99%)。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 7.35-7.25 (m, 20H), 5.51 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 5.11 (s, 4H), 5.06 (s, 4H), 4.52 (dt, J = 7.8, 5.4 Hz, 2H), 2.41 (m, 4H), 2.19 (m, 2H), 1.98 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 172.79, 172.68, 156.78, 135.75, 135.21, 128.57, 128.53, 128.38, 128.23, 128.19, 67.22, 66.42, 52.53, 30.25, 27.88。
【0308】
例16


【0309】
11からFN16を調製するために、例14に概説された一般手順にしたがった。FN16: 1H NMR (D2O, 300 MHz) d 4.24 (m, 2H), 2.45 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 2.15 (m, 2H), 1.95 (m, 2H); 13C NMR (D2O, 75 MHz) d 178.48, 177.40, 160.34, 53.80, 31.34, 27.62。
【0310】
例17


【0311】
D-グルタミン酸トシル酸ジベンジルから12を調製するために、例13に概説された一般手順にしたがった。
【0312】
例18


【0313】
12からFN13を調製するために、例14に概説された一般手順にしたがった。FN13: [a]D +17.1° (c 0.84, H2O); 1H NMR (D2O, 300 MHz) 及び13C NMR (D2O, 75 MHz) は FN11と同じであった。
【0314】
例19

【0315】
L-グルタミン酸塩化ジメチル (2.1g, 10mmol)の40mLCH2Cl2懸濁液にトリホスゲン (1 g, 3.3 mmol)を加えた。その混合物を-78℃まで冷却してから、Et3N(3 mL, 20 mmol) を加えた。反応混合物を-78℃で0.5時間撹拌し、室温まで温めてからEtOAc 100mLで希釈し、H2O(30mL)、1N HCl(30mL)、食塩水(30mL)で洗浄した。混合物をMgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲル上でヘキサン/EtOAc(2:1)を用いてクロマトグラフにかけたところ、対応するイソシアン酸塩(870mg)が得られた。イソシアン酸塩(870 mg, 4.3 mmol) をCH2Cl210mLに溶解し、0℃でL-グルタミン酸ジメチル (752 mg, 4.3 mmol) を加えた。混合物を、その後24時間室温で撹拌した。過剰量のヘキサンを加え、白色固体FN15(1.50 g, イソシアン酸塩から92% )を収集した。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 5.47 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 4.50 (dt, J = 8.1, 5.1 Hz, 2H), 3.75 (s, 6H), 3.67 (s, 6H), 2.42 (m, 4H), 2.17 (m, 2H), 1.96 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 173.47, 173.36, 156.71, 52.45, 52.40, 51.79, 30.03, 27.92。
【0316】
例20


【0317】
L-グルタミン酸ジメチル(575 mg, 3.28mmol)の15mLCH2Cl2溶液にトリホスゲン(187 mg, 1.64mmol)を加えた。その混合物を-78℃まで冷却し、その後Et3N (0.43 mL, 3.28 mmol)を加えた。反応混合物を-78℃で短時間撹拌し、その後15時間かけて室温に温めた。その混合物をEtOAc 100mLで希釈してH2O(30 mL)、1N HCl( 30 mL)、及び食塩水(30 mL)で洗浄した。その混合物をMgSO4で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲル上でヘキサン/EtOAcを用いてクロマトグラフにかけたところ、FN18 (410 mg, 64%)が得られた。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) d 5.08 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 4.50 (m, 2H), 3.78 (s, 6H), 3.68 (s, 6H), 2.46 (m, 4H), 2.25 (m, 2H), 2.12 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 182.89, 173.47, 172.89, 56.19, 52.57, 51.82, 29.87, 27.40。
【0318】
例21
FN11の抗癌効果
U-87多型性膠芽腫細胞2x106個とマトリゲル0.5mgの混合物を皮下接種し、移植異種移植片を作製した。FN11をPBS中に、濃度が10mMまたは100mMになるように溶解し、皮下移植した異種移植片の基底部に一日一回注射(0.1mL)した。腫瘍の開始量は約250mm3であった。このプロトコルから得られた結果を図15に示す。
【0319】
例22
FN11の抗血管形成効果
対照腫瘍と例21に記載の条件下で増殖させた腫瘍を7日目の終わりに収集し、ホルマリン中に固定してパラフィン中に包埋し切片化した。組織をフォン・ウィルブランド因子のために免疫組織化学的に染色し、血管新生を測定した。図13及び14は、このプロトコルを用いて腫瘍をFN11 100mMで処理したときの結果を示している。図13は低倍率(100X)で、図14は高倍率(400X)で撮影されている。これらの図から、FN11 100mMで処理した腫瘍中には、無血管領域または血管が少なくほとんどが小血管である領域が優性であることが明らかである。
【0320】
例23
FN化合物の神経保護特性の研究
代謝調節型グルタミン酸レセプタおいて作用するリガンドの神経保護作用を検査するには、これらの化合物の作用を可視化することができる特異的なモデルを使用しなければならない。いくつかの文献にもみられるように、興奮毒性(NMDAの適応により誘発されることがある)に対する保護は、グリア細胞の存在が必要であることが多く、ニューロン細胞のみを含有する培養物では実証できない。グループIImGluRアゴニストの神経保護作用は、グリア細胞上にあるmGluR3またはmGluR2レセプタにおける作用に起因しており、これらのグリア細胞からの神経栄養性因子の放出を誘発すると考えられている。
【0321】
我々は、マウス胎仔から調製した皮質ニューロンの培養物中におけるNMDA毒性の三つのモデルを用いて、これらの記述の妥当性を検査した。第一モデル(A)は、ニューロンを含有しグリア細胞は含有しない培養物の使用を含む。NMDA(75mM)を10分間、検査された化合物がある場合と無い場合に適用する。その後、培養培地を交換し、細胞を24時間放置して毒性を発生させる。第二モデル(B)は、新生マウスの大脳皮質から調製した融合性グリア細胞(ほとんどが星状細胞)のシートに播種した、マウス皮質ニューロンの使用を含む。インキュベーションはモデルAと同一に行う。第三モデル(C)は、ニューロン培養物とグリア培養物を分離する。グリア培養物は、保護因子の培地への放出を誘発するため、検査された神経保護化合物で処理する。並行して、皮質ニューロン培養物(グリアなし)を10分間NMDA(20mM)で処理する。その後、NMDAを洗浄し、処理されたグリア細胞から収集した培地でニューロンを処理する。すべての場合において、毒性の評価は、NDMA処理から24時間後に行われ、この時間内に培地中に蓄積された乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定することにより行われる。
【0322】
三つのモデルの比較を棒グラフ1に示す。予想通り、モデルAの場合、ABHxD-Iは、NMDA毒性に対して保護することができなかった。反対に、グリア細胞が存在する場合(モデルB)、ABHxD-Iは著しい保護を産生し、NMDAの毒性作用を40%を超えて減少させた。これは、ABHxD-Iが、グリア細胞からの保護因子の放出を事実上誘発している可能性があることを示唆した。この可能性をモデルCで検証した。棒グラフ1cに示したように、グリア細胞と分離してインキュベートした場合、ABHxD-IはモデルBと同様に効果的であった。未処理グリア細胞から採取した培地は神経保護性ではなかったことは特筆すべきである。これは、ABHxDの作用は、グリア細胞からの神経保護因子の放出を介しているという仮説を実証する。さらに重要なことに、これは、ABHxD-Iの神経保護作用は毒性イベント中には薬物の存在に依存しないが、薬物が毒性刺激後に添加された場合、薬物が効果的である可能性があることを示唆している。
【0323】
モデルBとCの比較は、どちらのモデルも、グリア細胞上に位置するレセプタでの薬物作用を介したABHxD-Iの、間接的神経保護作用を反映していることを示している。これは、脳損傷の機序におけるグリア細胞の役割を強調しており、これらの細胞が潜在的な治療介入の標的であることを証明している。実用的な視点からみると、この機序を介して作用する化合物の検証には、モデルCはモデルBより優れており、なぜならモデルCでは測定の可変性が減少するからである。これは計算された平均の標準誤差が二倍減少していることに反映されている。この差は、LDH測定の性質が起因している可能性が高い。モデルCでは、LDHは瀕死状態のニューロンからのみ放出され、したがって、死滅細胞数に直接反映する。反対に、モデルBでは、LDHレベルはグリア細胞のLDH漏出によって影響を受けることもある。グリア細胞数はニューロンと比較して多いため、小さな漏出でもLDHレベルに顕著な変化を来す可能性がある。グリア細胞はNMDA毒性に感受性がないことが知られており、したがってこのような増加は、NMDA毒性ではなく、むしろすべての生物系において発生するランダムな変動を反映している。したがって、モデルBでは、瀕死状態のニューロンからのLDH放出を、より高い可変性コントロールレベル背景において測定し、信号-雑音比を減少させ、測定のランダム可変性を増加させている。我々の研究では、最初はモデルBを採用したが(棒グラフ2及び3参照)、その後、より信頼できる測定を提供するモデルC(棒グラフ4及び5)に切り替えた。
【0324】
最初、FN化合物はモデルBで検証された。棒グラフ2は濃度300mMにおけるFN1-8の効果を示す。FN1とFN6だけが約30%の神経保護を示している。濃度100mMにおけるFN6の光学異性体(棒グラフ2)の中でも、6/1及び6/4化合物がより効果的に見える。
【0325】
FN6光学異性体はモデルCでも検査された(棒グラフ4)。モデルBの場合、6/1及び6/4化合物がより効果的で、保護は約30%に達した。FN6に類似のギルフォード化合物PMPAは、効果が低かった。いくつかの新規FN化合物もモデルCで検証した。棒グラフ5に示したように、これらの化合物の中で、FN13だけがいくらかの神経保護効果を示し、保護の約20%であった。
【0326】
総括
最も強力な効果、約30%を示すのはFN1及びFN6である。これらの効果はABHxD-Iにみられる神経保護よりは低いが、PMPAの作用よりは良好である。検査された化合物は、より小さな神経成分とより大きなアポトーシス成分を有する毒性モデルにおいて、より大きな効力を示す可能性がある。
【0327】
例23の棒グラフ
【0328】
【表1】

【0329】
棒グラフ1 NMDA毒性のモデル三つにおけるABHxD-Iの神経保護作用を比較すると、グリアなし、ニューロンのみの培養物(A)中では効果がないが、皮質ニューロン-グリア混合溶媒物を用いたモデル(B)と、保護化合物にさらされたグリア細胞からニューロンが培地と共に救出される時(C)には、顕著な保護がみられることを示している。対照はNMDAのみ(保護化合物なし)で処理された細胞である。ABHxDは、濃度10mMで用いられた。棒グラフは16-30回の測定から得られた平均値及びSEMを表している。
【0330】
【表2】

【0331】
棒グラフ2 FN化合物が、皮質ニューロン-グリア細胞の混合培地中のNMDA毒性に与える影響(モデルB)。FN化合物は300mMだった。対照はNMDAのみ(保護化合物なし)で処理された細胞である。ABHxD-I(10mM)を陽性対照として用いた。棒グラフは8-40回の測定から得られた平均値及びSEMを表している。
【0332】
【表3】

【0333】
棒グラフ3 FN6光学異性体が、皮質ニューロン-グリア細胞の混合培地中のNMDA毒性に与える影響(モデルB)。FN化合物は100mMだった。対照はNMDAのみ(保護化合物なし)で処理された細胞である。ABHxD-I(10mM)を陽性対照として用いた。棒グラフは8-11回の測定から得られた平均値及びSEMを表している。
【0334】
【表4】

【0335】
棒グラフ4 FN6光学異性体が、薬物処理されたグリア細胞から得た培地にさらされた皮質ニューロン細胞中のNMDA毒性に与える影響(モデルC)。FN化合物は100mMだった。対照はNMDAのみ(及び未処理グリアから得た培地)で処理された細胞である。ABHxD-I(10mM)を陽性対照として用いた。ギルフォード化合物PMPAを用いて得られた結果を比較のために示す。グラフは12-30回の測定から得られた平均値及びSEMを表している。
【0336】
【表5】

【0337】
棒グラフ5 FN化合物が薬物処理されたグリア細胞から得た培地にさらされた皮質ニューロン細胞中のNMDA毒性に与える影響(モデルC)。FN化合物は100mMだった。対照はNMDAのみ(及び未処理グリアから得た培地)で処理された細胞である。ABHxD-I(10mM)を陽性対照として用いた。グラフは8-61回の測定から得られた平均値及びSEMを表している。

【0338】
言及による編入
ここに引用したすべての特許及び文献は、言及によりここに編入する。
【0339】
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を用いるのみで、ここに説明された特定の実施例の等価物を数多く認識され、又は確認できることであろう。このような等価物は、以下の請求の範囲の包含するところである。
【図面の簡単な説明】
【0340】
【図1】本発明の化合物のある好ましい実施態様を示す。
【図2】本発明の化合物6つがNAALADase活性に与える影響を示す。
【図3】代謝調節型グルタミン酸レセプタ(mGluR)のサブタイプ6種における本発明の化合物の影響を示す。
【図4】代謝調節型グルタミン酸レセプタのサブタイプ1種における本発明の化合物の影響を示す。
【図5】本発明の化合物及び2-(ホスホメチル)ペンタンジオン酸(PMPA)がラット脳膜におけるNAAGペプチダーゼ活性に与える影響を示す。
【図6】本発明の化合物、PMPA、及びキスカル酸(原語:Quis)がラットNAAGペプチダーゼ活性に与える影響を示す。
【図7】本発明の化合物5つがラットNAAGペプチダーゼ活性に与える影響を示す。
【図8】本発明の化合物1つ、PMPA、及びキスカル酸(原語:Quis)が前立腺特異的膜抗原(PMSA)活性に与える影響を示す。
【図9】本発明の化合物2つがラットNAAGペプチダーゼ活性に与える影響を示す。
【図10】本発明の特定の化合物、NAAGペプチダーゼに対するそれらの活性、および特定の代謝調節型グルタミン酸レセプタに対するそれらの活性を示す。
【図11】本発明の特定の化合物、NAAGペプチダーゼに対するそれらの活性、および特定の代謝調節型グルタミン酸レセプタに対するそれらの活性を示す。
【図12】本発明の特定の化合物、NAAGペプチダーゼに対するそれらの活性、および特定の代謝調節型グルタミン酸レセプタに対するそれらの活性を示す。
【図13】本発明の化合物が膠芽腫異種移植片に与える抗血管形成効果を低倍率で示す。
【図14】本発明の化合物が膠芽腫異種移植片に与える抗血管形成効果を高倍率で示す。
【図15】腫瘍量 対 本発明の化合物(濃度10mM及び100mM)で処理した膠芽腫異種移植片の処理持続時間のプロットで、対照と比較して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造2:


で表される化合物であって、但し式中、
Xが -C(R)=、 -C(OR)=、 -C(SR)=、 及び -C(NR)=からなる群より選択され、
Yが、それぞれ個別に、 (CR2)n、 (NR)n、 (PR)n、 及び 一個の結合からなる群より選択され、
Dが=C(R)-、 =N-、 及び =P-からなる群より選択され、
Zが、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、 C(NHアシル)、 N、 及び Pからなる群より選択され、
Wが、それぞれ個別に、(CR2)m、 (NR)m、 (PR)m、 及び 一個の結合からなる群より選択され、
G が、それぞれ個別に、 -COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、 -C(S)SH、 -SO3H、 -SO2H、 -SOH、 -SeO3H、 -SeO2H、 -SeOH、 -S(O)2NH2、 -P(O)(OH)2、 及び -P(OH)2からなる群より選択され、
Rが、それぞれ個別に、H、 アルキル、ヘテロアルキル、アリール、 ヘテロアリール、 及びアラルキルからなる群より選択され、さらにヘテロ原子に結合したRの場合には、マイナスの電荷を含み、そして
m 及び nは、それぞれ個別に、0以上3以下の範囲から選択される整数である、
化合物。
【請求項2】
式中、 Xが-C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式中、 Xが −C(SR)=である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式中、Y が (CR2)nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Dに結合した場合のYが一個の結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式中、Dが =C(R)-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式中、 D が=C(R)-であり、そしてDに結合した場合のYが一個の結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式中、 Zが、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、 及び C(NHアシル)からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式中、Zが C(R)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式中、W が(CR2)mである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
式中、W が (CR2)mであり、そしてm が 2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
式中、 Gが、それぞれ個別に、-COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、 -SO3H、 -SO2H、 -S(O)2NH2、 及び -P(O)(OH)2 からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式中、Gが、それぞれ個別に、-COOH、 -C(O)NHOH、 -SO3H、 及び -P(O)(OH)2からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
式中、Gが、それぞれ個別に、 -COOH、 及び -C(O)NHOHからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
式中、Gが -COOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式中、 m 及び n が、それぞれ個別に、0、 1、 又は 2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式中、Xが -C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、そしてY が (CR2)nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式中、Xが -C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、そしてD が =C(R)-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
式中、 Xが-C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、Dが =C(R)-であり、そしてDに結合した場合のYが一個の結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
式中、Xが -C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、Yが (CR2)nであり、そしてZ が、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、 及び C(NHアシル)からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
式中、X が -C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、Yが (CR2)nであり、 Zが、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、 及び C(NHアシル)からなる群より選択され、そしてWが (CR2)mである、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
式中、Xが-C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、Yが (CR2)nであり、 Zが、それぞれ個別に、 C(R)、 C(NR2)、 及び C(NHアシル)からなる群より選択され、 W が (CR2)mであり、そして Gが、それぞれ個別に、-COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、 -SO3H、 -SO2H、 -S(O)2NH2、 及び -P(O)(OH)2からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
式中、X が-C(OR)=、 及び -C(SR)=からなる群より選択され、Y が (CR2)nであり、Zが、それぞれ個別に、C(R)、 C(NR2)、 及び C(NHアシル)からなる群より選択され、 Wが (CR2)mであり、 Gが、それぞれ個別に、 -COOH、 -C(O)NHOH、 -C(O)NH2、 -SO3H、 -SO2H、 -S(O)2NH2、 及び -P(O)(OH)2からなる群より選択され、そして m 及び n がそれぞれ個別に 0、 1、又は 2である、請求項25に記載の化合物。
【請求項48】
式中、X が-C(SR)=であり、そしてYが(CR2)nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
式中、Xが -C(SR)=であり、そしてDが =C(R)-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
式中、Xが -C(SR)=であり、 Dが=C(R)-であり、そしてDに結合した場合のYが一個の結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
式中、X が -C(SR)=であり、Yが (CR2)nであり、そしてZが C(R)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
式中、X が-C(SR)=であり、Yが (CR2)nであり、Z が C(R)であり、そして W が(CR2)mである、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
式中、X が -C(SR)=であり、 Y が (CR2)nであり、 Zが C(R)であり、 Wが (CR2)mであり、そして G が、それぞれ個別に、 -COOH、 及び -C(O)NHOHからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
式中、 Xが -C(SR)=であり、Yが (CR2)nであり、 Z がC(R)であり、 W が(CR2)mであり、 Gが、それぞれ個別に、-COOH、 及び -C(O)NHOHからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
式中、 Xが -C(SR)=であり、Yが (CR2)nであり、 Z がC(R)であり、 W が(CR2)mであり、 Gが、それぞれ個別に、-COOH、 及び -C(O)NHOHからなる群より選択され、そしてm 及び n がそれぞれ個別に 0、 1、又は 2である、請求項1に記載の化合物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−144189(P2011−144189A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41001(P2011−41001)
【出願日】平成23年2月26日(2011.2.26)
【分割の表示】特願2000−614262(P2000−614262)の分割
【原出願日】平成12年4月27日(2000.4.27)
【出願人】(501420044)ジョージタウン ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】GEORGETOWN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Office of University Counsel Box 571246 37th and O Street, N.W. Washington, D.C. 20057 United States of America
【Fターム(参考)】