説明

伝動装置の構造

ギアトレイン(7、9)と、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置(29、31;31、33)とを含み、ギアトレインが、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置(29、31;31、33)によって選択されるように配置される伝動システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動システムと、ギアトレインを選択するために伝動システムで使用されるセレクタ機構、例えばドグ式セレクタ機構に関する。
【0002】
本発明は、WO2004/099654、WO2005/005868、WO2005/005869、WO2005/024261及び、WO2005/026570号公報に記載される種類の伝動システムで起こりうる故障モードを除去するシステム及び方法に関する。
【0003】
しかしながら、同様の問題は、他の種類の伝動システムでも起こる場合がある。
【背景技術】
【0004】
上記公開に開示される既知のシステムは、瞬時伝動システムの例である。既知の伝動装置は、伝動入力シャフトと伝動出力シャフト間の駆動を伝達する複数のギアトレインを有する。第1のギアトレインに関しては、第1のギアホイールは伝動入力シャフトと出力シャフトのうちの一方に回転可能に搭載され、第2のギアホイールは第1のギアホイールとかみ合って、他方のシャフトに固定される。第3及び第4のギアホイールを備える第2のギアトレインも同様に配置される。
【0005】
伝動装置は、回転可能に搭載されたギアホイール間に配置され、ギアホイールを搭載するシャフトとともに回転させるためギアホイールを選択的にロックするように配置される少なくとも1つのギアセレクタ機構を含む。ギアトレインからのギアホイールがシャフトとともに回転するためにロックされるとき、そのギアトレインを介して、入力シャフト、及び、出力シャフト間で駆動力が伝達される。
【0006】
駆動力がギアトレインのうち1つの、例えば第1のギアトレインを介して入力シャフト、及び、出力シャフト間で伝達されるとき、ギアセレクタ機構は第2のギアトレインの回転可能に搭載されたギアホイールをそのシャフトにロックすることによって、第1のギアトレインを開放せずに動力で新しい(第2の)ギアトレインを選択することができるように配置される。よって、一瞬で、駆動力は、2つのギアトレインを介して、入力シャフト及び出力シャフト間で伝達される。その後、新しいギアトレインは第1のギアトレインをオーバドライブし、セレクタ機構は第1のギアホイールを解放する。次に、駆動力は新しいギアトレインのみを介して、入力シャフト、及び、出力シャフト間を伝達されて、ギアシフトを通じて連続した動力を提供する。セレクタ機構は、ギアシフトが加速、又は、減速下で行うことができるように配置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知の伝動装置のギアセレクタ機構は、それぞれの隣接するギアトレインに対して以下の4つのモードを有する。
【0008】
両トルク方向で完全に係合されるモード(ギア全開)
両トルク方向で解放されるモード(ニュートラル)
順トルク方向で係合され、逆トルク方向で解放されるモード
順トルク方向で解放され、逆トルク方向で係合されるモード
4つのモードのうち最後の2つは、別々の比ギアボックスが、トルクの中断なしに負荷下で瞬時に比を高速、又は、低速に切り換えることを可能にする。
【0009】
最後の2つのモードの両方を有する2つのギアトレインを備えるどのギアボックスにも固有の故障モードがある。よって、瞬時伝動システムにおいては、いくつかの状況で逆のモードと同時に係合され、伝動装置をロックアップ(Lockup)させる2つのギアに対して少なくとも3つのギアトレインを備えることが可能である。最も危険なシナリオは、トルクの方向がシフト中に変動することである。トルクがシフト中に一定の既知の方向を有する場合、事象の自然なシーケンスが上記の故障モードを回避する。シフトの直前、又は、シフト中にトルクの方向が突然逆転するとき、上記の故障モードが生じる可能性がある。
【0010】
伝動システムは通常、少なくとも3つのギアトレインを含み、4〜6個のギアトレインを含む可能性が高い。4つのギアトレインを有する伝動装置は、2つの瞬時ギアセレクタ機構を要する。第1のギアセレクタ機構は第1及び第2のギアトレインを選択的に係合するように配置され、第2のギアセレクタ機構は第3及び第4のギアトレインを選択的に係合するように配置される。各ギアセレクタ機構は、固定された対向するトルク伝達方向を有する対向端を備える第1及び第2のセットの係合部材を含む。これによって、ハブ(セレクタ機構)の一方の側のギアから同ハブの別の側のギアにシフトされる、例えば、第1のセレクタ機構が第1及び第2のギア間を選択する、或は第2のセレクタ機構が第3及び第4のギア間を選択するとき、上記の故障モードに対する固有のフェールセーフ配列が提供される。
【0011】
上記故障モードは、ギアシフトがギアセレクタ機構のうち1つと係合可能であるギアから、その他のギアセレクタ機構によって係合可能なギアへ行われる、例えば上記の4つの変速で第2及び第3のギア間を変更するときにのみ生じる可能性がある。というのは、これには第1及び第2のギアセレクタ機構の両方の移動が必要だからである。第1のギアセレクタ機構は第2のギアトレインとの係合から解放されなければならず、第2のギアセレクタ機構は第3のギアトレインと係合しなければならない。第2のギアがまだ第1のセレクタ機構によって係合されており、第3のギアが第2のセレクタ機構によって係合されているとき、トルク逆転が生じ、伝動装置をロックすることができる。
【0012】
WO2005/0058648号公報は、ギアボックス内のトルク方向を測定し、キックダウンシフトなどのシフトを管理する電子制御システムを記載している。すべてのシフトのトルクの大きさ及び方向を測定することによって、1度に2つのギアで係合されている対立するモードのためにギアボックスがロックされるのを防止することができる。
【0013】
しかしながら、制御システムは複雑で、新しい故障モードを伝動システムに導入する場合がある。制御システムは上記瞬時伝達におけるギアトレインとセレクタ機構の相対位置に影響を及ぼさないため、仮に制御システムで問題が起きたとしても、伝達レイアウトは依然として本質的に上記故障モードに入る傾向がある。
【0014】
したがって、本発明は、上記問題の少なくとも一部を緩和する高度な伝動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある側面によると、ギアトレインと、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置とを含み、ギアトレインが、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置によって選択されるように配置される伝動システムが提供される。
【0016】
よって、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置は、それぞれが、他方の瞬時ギアセレクタ装置と選択的に係合可能な少なくとも1つのギアトレインを選択的に係合することができるように配置される。発明者は、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置によってギアトレインを選択する能力が、瞬時伝動システムにおけるロックアップ問題を解決するための重要な特徴であることを発見した。瞬時ギアセレクタ装置は、現在のギアがまだギアセレクタ装置によって係合されている間、動力で新しいギアを選択できる装置である。すなわち、2つの異なるギアトレインはギアシフト中、同時に伝達入力から伝達出力に瞬時に駆動力を伝達する。
【0017】
本発明の別の側面によると、第1及び第2のシャフトと、第1、第2及び第3のギアトレインと、第1及び第2のギアトレインを介して第1及び第2のシャフト間で駆動力を選択的に伝達する第1の瞬時ギアセレクタ装置と、第2及び第3のギアトレインを介して第1及び第2のシャフト間で駆動力を選択的に伝達する第2の瞬時ギアセレクタ装置とを含む伝動システムが提供される。
【0018】
発明者は、先行技術の伝動装置のギアトレイン(例えば、第2及び第3のギアトレイン)間に瞬時ギアセレクタ装置が存在しないことが、ロックアップ問題の大きな原因であることを発見し、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置により選択可能なギアトレインを提供することによってその問題を解決した。
【0019】
上記故障モードは上述の種類の伝動システムで生じることは既知だが、同様の問題は他の種類の瞬時伝動システムでも起こる場合があると予想されるため、本発明はWO2004/099654、WO2005/005868、WO2005/005869、WO2005/024261及びWO2005/026570号公報に記載の種類の伝動装置、又は、瞬時ギアセレクタ装置に限定されないと考えられる。
【0020】
好都合なことに、それぞれの新しいギアトレインは、好ましくは、単独の瞬時ギアセレクタ装置をわたって選択される。単独のギアセレクタ装置を介しての新しいギアの選択は、本質的に安全であるため(上記参照)、これによりロックアップの発生が防止される。例えば、伝動装置は、各ギア選択が、ギア選択毎にギアセレクタ装置のうちの1つのみの始動を必要とするように配置することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、新しいギアトレインが有効な瞬時ギアセレクタ装置によって選択される前に、別のセレクタ装置をニュートラルの位置に移動させることが好ましいかもしれないと考えられる。
【0021】
好都合なことに、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置は、第1及び第2のシャフト上に交互に配列される。例えば、5つのギアセレクタ装置を含む伝動装置に関しては、第1の、第3及び第5のギアセレクタ装置は、好ましくは第1のシャフトに搭載され、第2及び第4のギアセレクタ装置は、好ましくは第2のシャフトに搭載される。
【0022】
好都合なことに、ギアトレインとギアセレクタ装置は、交互に配置される。例えば、4つのギアトレイン(「第1〜第4のギア」)と3つの瞬時ギアセレクタ装置を含む伝動装置に関しては、好適な配列は、位置がシャフトに沿うと考えられる場合、第1のギア、第1の瞬時ギアセレクタ装置、第2のギア、第2の瞬時ギアセレクタ装置、第3のギア、第3の瞬時セレクタ装置、第4のギアの順である。よって、瞬時ギアセレクタ装置は、例におけるすべてのペアのギアトレイン間に位置する。この例では、これにより、個々のハブ(単独の瞬時ギアセレクタ装置の移動)を介したギア選択のシーケンスが連続するように確保される。
【0023】
好ましくは、伝動装置は3〜10個のギアトレイン、好ましくは、3〜8個のギアトレイン、より好ましくは、3〜6個のギアトレインを含む。しかしながら、実行可能な数のギアトレインを伝動システムに含むことができる。
【0024】
好都合なことに、伝動装置は、「n」個の瞬時ギアセレクタ機構を含む。ただし、n数は、ギアトレインの数引く1である。
【0025】
好都合なことに、第1のギアトレインは、第1及び第2のギア素子を備えることができ、第1のギア素子は、第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第2のギア素子は、第2のシャフトとともに回転するために固定される。第1の瞬時ギアセレクタ装置は、第1のシャフトとともに回転するために第1のギア素子を選択的にロックするように配置される。好ましくは、第1のギアトレインは最も高い、又は低いギアである及び/又は第1のギアトレインは、最も外のギアトレインとして位置する、例えば、入力又は出力側に向かって第1及び第2のシャフトに沿う最も外のギアトレインとして位置する。
【0026】
好都合なことに、第2のギアトレインは第3及び第4のギア素子を備えることができ、第3のギア素子は第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第4のギア素子は第2のシャフト上に回転可能に搭載される。好ましくは、第1の瞬時ギアセレクタ装置は、第1のシャフトとともに回転するために第3のギア素子を選択的にロックするように配置される。好ましくは、第2の瞬時ギアセレクタ装置は、第2のシャフトとともに回転するために第4のギア素子を選択的にロックするように配置される。
【0027】
第3のギアトレインは第5及び第6のギア素子を備えることができ、ギア素子のうちの1つは第1及び第2のシャフトのうちの1つとともに回転するために固定され、その他のギア素子はその他のシャフトに回転可能に搭載される。好ましくは、第3のギアトレインは最も高い、又は低いギアである、及び/又は、第1のギアトレインから(シャフトに沿って)伝達の逆側で最も外のギアトレインとして位置する。伝動装置が奇数のギアトレインを含む場合、第5のギア素子は、好ましくは、第1のシャフトとともに回転するために固定され、第6のギア素子は、第2のシャフト上に回転可能に搭載される。伝動装置が偶数のギアトレインを含む場合、第5のギアは、好ましくは、第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第6のギアホイールは、第2のシャフトとともに回転するために固定される。伝動装置が3つ以上のギアトレインを含む場合、好ましくは、追加のギアトレインは第2のギアトレインと同様に配置され、第1及び第3のギアトレインの間に位置し、追加の瞬時セレクタ装置は各ペアのギアトレイン間に位置する。
【0028】
好ましくは、第2の瞬時ギアセレクタ装置は、第2のシャフトとともに回転するために、第6のギアトレインを選択的にロックするように配置される。
【0029】
伝動装置は、第4のギアトレインと第3の瞬時ギアセレクタ装置を含むことができる。
【0030】
第4のギアトレインは、第7及び第8のギア素子を備え、第7のギア素子は、第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第8のギア素子は第2のシャフト上に回転可能に搭載される。好ましくは、第2の瞬時ギアセレクタ装置は、第2のシャフトとともに回転するために第8のギア素子を選択的にロックするように配置され、第3の瞬時ギアセレクタ機構は第1のシャフトとともに回転するために第7のギアホイールを選択的にロックするように配置される。
【0031】
好都合なことに、第3の瞬時ギアセレクタ装置は、第1のシャフトとともに回転するために第5のギアホイールを選択的にロックするように配置することができ、第6のギアホイールは、第2のシャフトとともに回転するために固定される。
【0032】
本発明の別の側面によると、第1及び第2のシャフトを含み、第1のギアトレインが、第1及び第2のシャフト間の駆動力を伝達する第1及び第2のギア素子と、第1及び第2のギアセレクタ装置とを備え、第1のギア素子は第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第1のギアセレクタ装置は第1のシャフトとともに回転するために第1のギア素子を選択的にロックするように配置され、第2のギア素子は第2のシャフト上に回転可能に搭載され、第2のギアセレクタ装置は第2のシャフトとともに回転するために第2のギア素子を選択的にロックするように配置される伝動システムが提供される。
【0033】
第1及び第2のギア素子が各シャフトとともに回転するためにロックされ、駆動力が第1及び第2のシャフト間に伝達される。本発明のこの側面は、非瞬時伝動システムでの適用を有することができるため、ギアセレクタ装置はどのような種類、例えば従来のドグセレクタ装置であってもよいと予想される。
【0034】
好ましくは、ギアセレクタ装置は、アクチュエータアセンブリと、第1及び第2のギアホイールと互いに無関係に係合したり分離したりするように移動可能な第1及び第2のセットの係合部材とを含み、前記ギアセレクタ装置は、駆動力が伝達されるとき、第1及び第2のセットの係合部材のうちの1つが係合されたギアホイールと駆動係合し、次にその他のセットの係合部材が無負荷状態になるように配置され、アクチュエータアセンブリは無負荷のギアホイールと駆動係合するように無負荷のセットの係合部材を移動させて、ギア変更を実行するように配置される。これは、瞬時ギアセレクタ伝達の例である。
【0035】
各ギアセレクタ装置は好ましくは、制動力が伝達されるとき、第1のセットの係合部材は係合されたギア素子を駆動係合し、第2のセットの係合部材は無負荷状態にあり、駆動力が伝達されるとき、第2のセットの係合部材は係合されたギア素子に駆動係合し、その後、第2のセットの係合部材は無負荷状態になるように配置される。
【0036】
ギアセレクタ装置は、係合されたギア素子から負荷時のセットの係合部材を解放せずに、係合されていないギア素子に向かって負荷時のセットの係合部材にバイアスを加えるように配置することができる。
【0037】
第1及び第2のセットの係合部材は、使用中、その上に搭載されるシャフトとともに回転するように配置することができる。第1のシャフトは、ある実施形態では入力シャフト、別の実施形態では出力シャフトであってもよい。第2のシャフトは、入力シャフト、及び出力シャフトのうち他方である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、ロックアップ(Lockup)が生じるのを防止するように配置された本発明の伝動装置の断面図である。伝動装置は、入力シャフト1と、出力シャフト3と、入力シャフト及び出力シャフト1、3間で駆動力を伝達するように配置された第1、第2、第3及び第4のギアトレイン(、又は、ギア比)5、7、9、11とを含む。
【0039】
第1のギアトレイン5は、入力シャフト1に搭載される第1のギアホイール13と、第1のギアホイール13に噛み合い、出力シャフト3に搭載される第2のギアホイール15とを備える。
【0040】
第2のギアトレイン7は、入力シャフト1に搭載される第3のギアホイール17と、第3のギアホイール17に噛み合い、出力シャフト3に搭載される第4のギアホイール19とを備える。
【0041】
第3のギアトレイン9は、入力シャフト1に搭載される第5のギアホイール21と、第5のギアホイール21に噛み合い、出力シャフト3に搭載される第6のギアホイール23とを備える。第4のギアトレイン11は、入力シャフト1に搭載される第7のギアホイール25と、第7のギアホイール25に噛み合い、出力シャフト3に搭載される第8のギアホイール27とを備える。
【0042】
第1及び第7のギアホイール13、25は入力シャフト1に固定され、ともに回転するためにロックされる。他のギアホイール15〜23、27は、ギアホイールが搭載されるシャフト1、3に対して回転できるように、軸受上の各シャフトに搭載される。従来の伝動装置のすべてギアトレイン(ペアのギアホイール)の場合、ギアホイールのうちの1つは永久的にシャフトに固定され、噛み合いギアは軸受上に据えられることによって、噛み合いギアは、例えば、ドグクラッチ装置によって、シャフトとともに回転するために固定されるまでシャフトとは関係なく回転することができる。これは本発明とは明らかに異なる。従来の伝動装置では、すべての固定されたギアは1つのシャフト(例えば入力シャフト)上にあり、ギアに搭載されたすべての軸受はその他のシャフト(例えば出力シャフト)上にある。
【0043】
伝動装置は、ギアホイールが搭載されるシャフトとともに回転するために、隣接するギアホイールを選択的にロックするように配置される第1、第2及び第3のギアセレクタ機構29、31、33も含む。第1のセレクタ機構29は、第2及び第4のギアホイール15、19間の出力シャフト3上に搭載され、出力シャフト3とともに回転するために、第2及び第4のギアホイール15、19を選択的にロックするように配置される。
【0044】
第2のセレクタ機構31は、第3及び第5のギアホイール17、21間の入力シャフト1に搭載され、入力シャフト1とともに回転するために第3及び第5のギアホイール17、21を選択的にロックするように配置される。第3のセレクタ機構33は第6及び第8のギアホイール23、27間の出力シャフト3に搭載され、出力シャフト3とともに回転するために第6及び第8のギアホイール23、27を選択的にロックするように配置される。
【0045】
よって、ギアセレクタ機構29、31、33は入力シャフト、及び、出力シャフト1、3に交互に配置され、別のギアセレクタ機構によって選択的に係合可能な少なくとも1つのギアトレイン(第2又は第3のギアトレイン7、11)と選択的に係合するように配置される。これは、ペアのギアホイールのうちの1つと係合するように配置されるギアセレクタ機構と、その他のギアホイールに係合するように配置されるその他のギアセレクタ機構のうち1つによって、本実施形態における特定のギアトレインに対して実現される。例えば、第3のギアトレイン9の場合、第2のセレクタ機構31は入力シャフト1に搭載される第5のギアホイール21に係合するように配置され、第3のギアセレクタ機構33は出力シャフト3上の第6のギアホイール23に係合するように配置される。
【0046】
ギアホイールがギアセレクタ機構によって係合されると、ホイールが搭載されるシャフトとともに回転するためにロックされる。したがって、第3のギアトレイン9の場合、第2のギアセレクタ機構31が第5のギアホイール21に係合し、第3のギアセレクタ機構33が第6のギアホイール23に係合すると、駆動力が第3のギアトレイン9を介して入力シャフトと出力シャフト1、3間で伝達される。第2のギアセレクタ機構31が第5のギアホイール21を解放する、及び/又は、第3のギアセレクタ機構33が第6のギアホイール23に解放する場合、解放されたギアホイールは、ギアホイールが搭載されるシャフトに対して自由に回転することができ、駆動力はもはやシャフト1、3間で伝達されない。
【0047】
同様に、第2のギアトレイン7を介して入力シャフト、及び、出力シャフト間の駆動力を伝達するため、第1及び第2のギアセレクタ機構29、31の両方が第2のギアトレイン7の各ギアホイール17、19に係合する。
【0048】
各セレクタ機構29、31、33は類似しており、同じようにそれぞれのシャフト1、3に搭載される。第1のギアセレクタ機構29の構造と、同機構が第2及び第4のギアホイール15、19に選択的に係合する方法とを以下説明するが、一般的な構造と動作原理は、第2及び第3のギアセレクタ機構31、33とそれぞれのギアホイールに適用可能である。
【0049】
ギアセレクタ機構29は、第2及び第4のギアホイール15、19上に位置する駆動構造20に係合するように配置される。各ギアホイール15、17上の駆動構造20は複数群のドグを備える。同様の駆動構造が、第3、第5、第6及び第8のギアホイール17、21、23、27上に配置される。
【0050】
第1のドグ群20は、第2のギアホイール15の一方の側に配置される。ドグは好ましくは第2のギアホイールと一体的に形成されるが、これは必須ではない。第1のドグ群20はギア面を中心に均等に円周方向に分布される3つのドグを備える、すなわち、一対のドグの中心間に延びる角度は約120度である(図2及び、3を参照)。第2のドグ群20は3つのドグを備え、第4のギアホイール19の一方の側に同様に配列される。この配列は大きな係合ウィンドウ、すなわち、ドグ間に係合バーを受け取る空間、を提供するために3つのドグが使用される。大きな係合ウィンドウは、駆動力を伝達する前にギアホイール15、19に完全に係合するより大きな機会を第1のギアセレクタ機構29に提供する。第1のギアセレクタ機構29が部分的に係合する場合にのみギアホイールを駆動する場合、ドグ、及び/又は、第1のギアセレクタ機構29の損傷につながる可能性がある。
【0051】
第2及び第4のギアホイール15、17は、ころ軸受23、25上の入力シャフト1に間隔を置いて搭載され、第1及び第2のドグ群を含む側が互いに対向するように配置される。
【0052】
第1のギアセレクタ機構29は、第1及び第2のセットの係合バー35、36、フォークアセンブリ40の形状のアクチュエータアセンブリ38及び、セレクタロッド(図示せず)を備える。第1及び第2のセットの係合バー35、36は、第2及び第4のギアホイール15、19間で出力シャフト3に搭載される。第1のセットの係合バー35は、底部が内方を向き、バー28の軸がほぼ平行になるように、出力シャフト3を中心に均等に配布される3つのバー28を備える。第2のセットの係合バー36は、出力シャフト1を中心に同様に分布される3つのバー30を備える。
【0053】
セットの係合バー35、36は、第1及び第2のギアホイール3、5間の出力シャフト3に搭載されるスリーブ34上に搭載される(図1及び3を参照)。セットの係合バー35、36は出力シャフト3とともに回転するように配置されるが、アクチュエータアセンブリ38の切換動作に反応して、スリーブ34及び出力シャフト3に沿って軸方向に滑動することができる。これを簡易化するため、スリーブ34は、底部に補完的な形状を有する各係合バー28、30とともに湾曲面に形成される6つのキー溝41を含む。キー溝41は、バーがキー溝41内で放射方向、及び、接線方向(だが、軸方向ではない)に抑制されるように略T形状を有する(図2を参照)。もしくは、キー溝41は、放射方向にバーを抑制するために溝穴付きの形状又は鳩尾形状を有することができる。
【0054】
好ましくは、バーは、負荷領域の大きな放射方向距離によるかなりのカンチレバー作用を防止するために出力シャフト1に近づけることによって構造的な故障の可能性を低減させるように構成されている。
【0055】
バーセット35、36は、特定のセットのバーが交互のキー溝41に置かれるように配置され、バーセット35、36はスリーブ37に沿って滑動することができる。各バーセット35、36は一体的に移動し、各バーセットは他のセットとは無関係に移動することができる。各バーセット内のバーは、剛結合される、互いにばね素子49によって接続される(下記参照)、或は接続部を持たない(WO2005/026570号公報を参照)。剛結合の例を図4に示す。第1のセットの係合バー35のバー28は、グラブねじを用いて第1のコネクタリング37に装着することができる。第1のコネクタリング37は、バーを固定配置に保持する。バー28は、底部が内方に向き、バー28が略平行に配置されるように、第1のコネクタリング37の内周を中心に均等に分布される。第2のセットの係合バー36は、第2のコネクタリング39によって同様に固定配置に保持される3つのバー30を備える。第1及び第2のセットのバー35、36間に相対的運動がある場合、第2のコネクタリング39は第1のセットのバー35を滑動し、第1のコネクタリング37は第2のセットのバー36を滑動する。
【0056】
第1のバーセット35の各バー28は、第2のギアホイール15に装着される第1の群のドグ20に係合するように配置された第1の端部28aと、第4のギアホイール19に装着される第2の群のドグ20に係合するように配置された第2の端部28bとを有する(図4及び、5を参照)。第1及び第2の端部28a、28bは通常、同一の構造を有するが、逆に渡される、例えば、第1の端部28aは第2のギアホイール15の減速中(逆トルク方向)、第1の群のドグ20に係合するように配置され、第2の端部28bは第4のギアホイール19の加速中(順トルク方向)、例えば、自動車用途の場合のエンジンブレーキ中、第2の群のドグ20に係合するように配置される。第2のバーセット36の各バー30は、第1の端部30aが第2のギアホイール15の加速中に第1の群のドグ20に係合するように配置され、第2の端部30bが第4のギアホイール19の減速中に第2の群のドグ20に係合するように配置されることを除き、同じように配置される。
【0057】
第1及び第2のセットの係合バー35、36の両方がギアホイールに係合するとき、ギアが加速しているか減速しているかにかかわらず、駆動力は入力シャフト1から出力シャフト3に伝達される。
【0058】
各バーの第1及び第2の端部28a、30a、28b、30bは、ドグ20、ランプ45、端面42を係合するための係合面43を含み、さらにショルダ44を含むことができる(図4を参照)。端面42は、ギアホイールの側面の接触によって係合バー28、30の軸方向の移動を制限する。係合面43は、係合バー28、30が回転して係合すると、磨耗を低減するため直接接触するように、ドグ20aの側面を補完するように角度を成すことができる。各ランプ45は好ましくは螺旋状に形成され、端面42から離れて傾斜する。ランプ45の傾斜角は、端面42から最も遠いランプの縁と端面42の平面の間の長手方向の距離がドグ19、21の高さより大きくなるように形成される。これにより、ランプ45をドグ20と係合するように移動させる、係合バー28、30とドグ20間の相対回転移動がある場合、伝動装置がロックアップしないように確保される。ドグ20は係合バー28、30の側面と衝突せず、ランプ45と係合する。ドグ20と係合バー28、30間のさらなる相対回転移動が生じると、ドグ20はランプ45を滑動し、ランプの螺旋状面が係合バー28、30をドグ20から離れて出力シャフト1に沿って軸方向に移動させるため、伝動はロックされない。
【0059】
ギアセレクタ機構は、新しいギアを選択する際、伝動のロックアップを生得的に防止するように配置される。
【0060】
第1及び第2のセット35、36のバーが交互に配置されるとき、図4のように、第1のセットのバー35の第1の端部28aの係合面43は、第2のセットのバー36の第1の端部30aの係合面43に隣接する。第1及び第2のセットのバー35、36がギアに完全に係合すると、ドグ20はペアの隣接する係合面43間に配置される。ドグ20とバーの端部の大きさは、好ましくは、ギアが加速から減速へ移動する、或はまたその逆の場合、ギアにガタがほとんどか全く生じないように確保するため、加速バーの係合面43と減速バーの係合面43間で各ドグがほとんど移動しないように形成される。
【0061】
アクチュエータアセンブリ38は、フォークアセンブリ40がセレクタロッドに搭載され、セレクタロッドが出力シャフト3と平行に隣接して設けられるように配置される。フォークアセンブリ40は、フォーク46と、出力シャフト3を中心に搭載される第1及び第2の管状皿ばね47、49とを含む(図1を参照)。第1及び第2の皿ばね47、49は3つのアームを有し、各アームは、ばねの部分の周りを円周方向に延在する第1の部分と、内方に放射方向に延在する第2の部分とを有する(図6を参照)。
【0062】
フォーク46は、第1の皿ばね47に係合するように配置された第1のペアの弓状部材51を有する。弓状部材51は、第1の皿ばね47が弓状部材51間で入力シャフト1とともに回転することができ、出力シャフト3と平行なフォーク46の軸方向の移動が弓状部材51を移動させるように配置される。したがって、第1の皿ばね47は、第1の皿ばね47が自由に移動する場合、シャフト3に沿って軸方向に移動する、或は、第1の皿ばね47が移動できない場合、フォーク46と同じ方向に移動するように第1の皿ばね47にバイアスを加える。フォーク46は、同様に第2の皿ばね49に係合し、作用するように配置された第2のペアの弓状部材53を有する。
【0063】
第2及び第4のギアホイール15、19に対するフォーク46の位置は、セレクタロッドを軸方向に移動することによって調節することができる。
【0064】
第1の皿ばね47の内縁は第1のバーセット35のバー28に固定され、第2の皿ばね49の内縁は第2のバーセット36のバー30に固定される。フォーク46が移動することで皿ばね47、49を移動させる、或は負荷をかけるとき、係合バーセット35、36は同様に移動させられる、或は移動するようバイアスをかけられる。
【0065】
ギアセレクタ機構29の動作を図7a〜7fを参照しつつ説明する。
【0066】
図7a〜7fは、明確にするために、各セットからの1つのみのバーの相対位置による、第1及び第2のバーセット35、36の移動を示す図である。
【0067】
図7aは、ニュートラル位置の第1及び第2のバーセット35、36を示す。すなわち、いずれのバーセットもギアホイールと係合していない。
【0068】
図7bは、フォーク46の動作下で第2のギアホイール15と係合する第1及び第2のバーセットを示す。
【0069】
図7cは、第2のギアホイール15が完全に係合したとき、すなわち、バー28、30が第1の群のドグ20と交互に配置されたときの状況を示す。セレクタロッドは、フォーク46が第2のギアホイール15と係合した第1及び第2のバーセット35、36を保持するように配置される。したがって、駆動力は、減速中は第1のバーセット35を介して、加速中は第2のバーセット36を介して第2のギアホイール15を通じて出力シャフト3に伝達される。
【0070】
第1のギアホイールペア5を用いて加速する間(第2のギアホイール15は図5cの矢印B方向に回転)、第1のバーセット35のバーの係合面43は負荷を受けず、第2のバーセット36のバーの係合面43は負荷を受ける。ユーザ、又は、エンジン管理システム(図示せず)が第2のギアトレイン7を係合させようとするとき、セレクタロッドは、フォーク46が第1の皿ばね47に作用して、第1のバーセット35のバー28をスリーブ34のキー溝41に沿って軸方向に滑動させることによって、バー28を第2のギアホイール15から解放するように移動させられる(図7dを参照)。
【0071】
フォーク46は第2のバーセット36のバーにバイアスをかけるように第2の皿ばね49にも作用して、第4のギアホイール19の方向に移動させる。しかしながら、第2のバーセット36のバー30は負荷を受けている、すなわち、第2のギアホイール15を駆動しているため、第2のギアホイール15から分離させることができない。よって、第2のバーセット36のバー30は静止したままである。
【0072】
第1のバーセット35のバー28が出力シャフト3に沿って軸方向に滑動すると、係合面43は第2の群のドグ20に係合する(図7eを参照)。その後、バー28は図7eの矢印Cの方向に第4のギアホイール19を駆動し始め、駆動力は第2のギアトレイン7を介して入力シャフト1から出力シャフト3に伝達される。これが生じると、第2のバーセット36のバー30は負荷をかけられるのが中止され、自由に第1の群のドグ20から解放する。第2の皿ばね49はフォーク46によってバイアスをかけられるため、第2のバーセット36のバー30はスリーブ34のキー溝41に沿って軸方向に滑動することで、第2のギアホイール15の出力シャフト3からの解放を完了させる。第2のバーセット36のバー30は、第4のギアホイール19と係合するまでキー溝41にそって滑動し、第4のギアホイール19と出力シャフト3との係合を完了させる(図7fを参照)。
【0073】
ギアトレインを選択する方法は、実質的にはトルク中断を排除する。というのは、第1のギアトレイン5が解放される前に第2のギアトレイン7が係合され、よって、新たに係合されたギアホイールが元のギアホイールをオーバドライブするまで出力シャフト3とともに回転するために、瞬時に第1及び第2のギアトレイン5、7が同時に係合されロックされるからである。
【0074】
ギアホイールが第1及び第2のバーセット35、36の両方によって係合されるとき、ギアホイールのペアを用いて、2つの状態間の切換の際にほとんどガタを生じさせずに加速、又は減速することが可能である。ガタとは、加速から減速に移行する、或はその逆の際にドグが加速バーの係合面43から減速バーの係合面43に移動するときに生じる無駄な動きのことである。従来のドグ式伝動システムは、約30度のガタを有する。本発明による自動車用の通常の伝動システムのガタは4度未満である。
【0075】
ガタは、ギアシフト中の係合部材とドグ間に必要な間隔、ドグとそれに続く係合部材間の間隔を最小化することによって低減される(図7bの測定値「A」を参照)。ドグとそれに続く係合部材間の間隔は0.5mm〜0.03mmの範囲で、通常は0.2mm未満である。ガタは、保持角、すなわち、ドグ20aの係合面のアンダーカット角と同じ係合面43の角度の関数でもある。保持角は、ドグと係合面43間の相対移動があるかどうかに影響を及ぼす。保持角が小さいほど、ガタは小さくなる。保持角は通常、2.5〜15度である。
【0076】
減速中の第2のギアトレイン7から第1のギアトレイン5への移行も、同様のプロセスによって実現される。
【0077】
第2のギアトレイン7で減速中、第1のバーセット35のバーの係合面43は負荷を受けず、第2のバーセット36のバーの係合面43は負荷を受ける。ユーザ、又は、エンジン管理システム(図示せず)が第1のギアトレイン5に係合しようとする場合、セレクタロッドは、フォーク46が出力シャフト3に対して軸方向に滑動するように移動させられる。フォーク46は第1のバーセット35に装着される第1の皿ばね47に作用して、第1のバーセット35のバー28を第2のギアホイール15の方向に出力シャフト3に沿ってキー溝41で軸方向に滑動させることによって、第1のバーセット35を第4のギアホイール19から解放する。
【0078】
フォーク46は第2の皿ばね49にも作用するが、第2のバーセット36のバー30が負荷を受けている、すなわち、第4のギアホイール19上でドグ20と駆動係合しているため、第2のバーセット36は静止したままである。しかしながら、第2の皿ばね49は、第2のギアホイール15の方に第2のバーセット36を移動させるようにフォーク46によってバイアスを加えられる。
【0079】
第1のバーセット35のバー28がキー溝41を軸方向に滑動すると、バー28は第2のギアホイール15上でドグ20に係合し、エネルギーが第1のギアトレイン5によって入力シャフト1から出力シャフト3に伝動されるように第2のギアホイール15を駆動し始める。これが起こると、第2のバーセット36のバー30は負荷をかけられるのを中断する。第2の皿ばね49は第2のバーセット36のバーに作用し、第2のギアホイール15の方に出力シャフト3に沿ってキー溝41内を軸方向に滑動させることによって、第4のギアホイール19の解放を完了させる。第2のバーセット36は、第2のギアホイール15に係合するまで出力シャフト3に沿ってキー溝41内を滑動し続けることによって、第2のギアホイール15と出力シャフト3との係合を完了させる。
【0080】
キックダウンシフト、すなわち、より高いギアトレインからより大きいギアトレインへのギアシフトであるが、加速が生じる場合、例えば、車両が上り坂を走っていて、ドライバーが加速して坂を上るために低いギアを選択する、好ましくは、シフトの前に解放するように短くトルク中断させる。
【0081】
ギア変更中の駆動の中断がほぼ排除されるため、瞬時ギアセレクタ機構の使用は、性能の向上、燃料消費量の低減、排出量の低下につながる。さらに、システムは従来のギアボックスのデザインよりも小型であるため、ギアボックスの重量も低減される。
【0082】
図1及び図8a〜8cは、ギア選択毎に1つのみのギアセレクタ機構の移動を要するため、伝動のロックアップが起こりえない伝動システムの動作を示す。これは、各ギアセレクタ機構が配置によって生じるロックアップを固有に防止するためである(上記参照)。
【0083】
図1は、第2のギアホイール15に完全に係合される第1のギアセレクタ機構29を示す。第1のギアホイール13は、入力シャフト1とともに回転するために固定され、第2のギアホイール15は、第1のギアセレクタ機構29を介して出力シャフト3とともに回転するためにロックされるため、駆動力は、第1のギアトレイン5を介して入力シャフト及び出力シャフト1、3間で伝達される。各トレインのうち少なくとも1つのギアホイールは、ホイールが搭載されるシャフトとともに回転するためにロックされず、ロックアップが生じる可能性はないため、その他のギアトレインのいずれも駆動力を伝達しない。
【0084】
図8aは、第2のギアホイール15に完全に係合される位置Aから第2のギアトレイン7の第4のギアホイール19に完全に係合される位置Bに移動する第1のギアセレクタ機構29を示す。ハブを横切る移動を後述する。すなわち、無負荷のセットの係合バーは第2のギアホイール15との係合から離れて第4のギアホイール19と係合するように移動し、負荷時のセットの係合バーは第2のギアホイール15と係合したままである。よって、第1のギアセレクタ機構29は、出力シャフト3とともに回転するために第2及び第4のギアホイール15、19の両方を瞬時にロックし、駆動力は、その瞬間に第1及び第2のギアトレイン5、7の両方によって、入力シャフト及び出力シャフト1、3間で伝動される。しかしながら、第4のギアホイール19は第2のギアホイール15を迅速にオーバドライブして、その他のセットの係合バーは第2のギアホイール15を解放して第4のギアホイール19と係合し、新しいギア選択を完了させることができる。したがって、ギアシフトは、シャフト1、3間の駆動力の移行を中断させずに動力で生じる。
【0085】
第2のギアホイール15が解放されると、駆動力は、第2のギアトレイン7のみを介して入力シャフト、及び、出力シャフト1、3間を伝達される。シフトは単独のギアセレクタ装置(ハブ)で生じるため、ギアセレクタ装置に固有のフェールセーフ構造により、シフト中にロックアップが発生する可能性はない。
【0086】
図8bは、上記と同様に、第2のギアトレイン7の第3のギアホイール17と完全に係合される位置Cから、第3のギアトレイン9の第5のギアホイール21と完全に係合される位置Dに移動する第2のギアセレクタ機構31を示す。駆動力は、第3のギアトレイン9を介してシャフト1、3間を伝動される。各トレインのうち少なくとも1つのギアホイールは、ギアホイールが搭載されるシャフトとともに回転するためにロックされないため、その他のギアトレインのいずれも駆動力を伝達しない。シフトは単独のギアセレクタ装置で行われるため、ここでもシフト中にロックアップが生じる可能性はない。
【0087】
図8cは、第3のギアトレイン9の第6のギアホイール23と完全に係合される位置Eから第4のギアトレイン11の第8のギアホイール35と完全に係合される位置Fに移動する第3のギアセレクタ機構33を示し、駆動力は第4のギアトレイン11を介してシャフト1、3間で伝達される。同様に、移動は単独のハブで行われるため、ロックアップは生じ得ない。
【0088】
それぞれのギア選択は単独のハブで行われるため、ギア選択はロックアップを生じずに、逆に行うことができる。
【0089】
よって、ギアセレクタ機構29、31、33は、他の1つのギアセレクタ機構と選択的に係合可能な少なくとも1つのギアトレインと選択的に係合することができるように配置される。上述の実施形態では、これは、ギアトレイン5、7、9、11間の入力シャフト、及び、出力シャフト1、3にギアセレクタ機構29、31、33を交互に配置することによって簡易化される。連続的なギアシフト(次の高い、又は次の低いギアへのギアシフト、例えば第1(1st)−第2(2nd)−第3(3rd)−第4(4th)−第3(3rd)−第2(2nd)−第1(1st)、又は、同様)と組み合わせた伝動装置のレイアウトは、各ギアシフトが単独のギアセレクタ機構で行われるため、伝動がロックアップされる状況を排除する。レイアウトは、入力シャフトに回転可能に搭載される第1のギアホイールと出力シャフトに回転可能に搭載される第2のギアホイールとを含む少なくとも1つのギアトレインを含めることによって簡易化され、ギアセレクタ機構のうちの1つは、入力シャフトとともに回転するために第1のギアホイールを選択的にロックするように配置され、別のギアセレクタ機構は、出力シャフトとともに回転するために第2のギアホイールを選択的にロックするように配置される。
【0090】
本発明の実行可能な実装は、通常少なくとも3つのギアトレインを含む。レイアウトは、ギアセレクタ装置の数を増やし、図1に示される配置と同じように、それらをシャフト上に交互に位置させることによって、より多数のギアトレインに対応させることができる。通常、伝動システムは、ギアトレインよりも少ないギアセレクタ機構を含む。
【0091】
伝動システムは、いかなる乗り物、例えばロードカー、レーシングカー、大型トラック、オートバイ、自転車、電車、路面電車、鉄道列車、ブルドーザや掘削機などの排土車、クレーン、ホバークラフトや船舶などの水上舟艇、飛行機やヘリコプターなどの航空機、及び、軍用車で使用することができる。システムは、第1及び第2の回転体を有し、回転体のうちの1つから、可変の速度及びトルク特性を有する別の回転体に駆動力が伝達される機械、例えば輸送システムや、旋盤、フライス盤、専用製造システムなどの製造機器においても使用することができる。
【0092】
本発明の範囲に属する上記の実施形態に変更を加えることが可能であることは、当業者にとっては自明であろう。例えば、いくつかの伝動装置では、ギアセレクタ装置が作動されて新しいギアトレインを選択する前にギアセレクタ機構をニュートラルの位置に移動させることが望ましいかもしれない。固定されたギアホイールは必要であれば出力シャフトに配置することができる、或は、回転可能に搭載されたホイールや追加のギアセレクタ機構と置換することができる。さらに、教示された一般的原理のいくつかは他の種類の瞬時伝動システム、そしておそらくは一部の非瞬時伝動システムに適用可能であることも、当業者にとっては自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しつつ、例示のためにのみ以下説明する。同じ参照符号は等価の特徴を示す。
【図1】本発明による伝動システムの一般的な配置の断面図である。
【図2】ギア側の群のドグ(明瞭にするため歯は図示せず)の配置を示す概略図である。
【図3】ギアホイール側のセレクタ機構とドグの相互作用を示す概略図である。
【図4】隆起コネクタを有するセレクタ機構の一部透視図である。
【図5】図3のセレクタ機構から見た係合バーの透視図である。
【図6】皿ばねの平面図である。
【図7a】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図7b】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図7c】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図7d】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図7e】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図7f】セレクタ機構の動作を示す図である。
【図8a】伝達の一連の動作を示す図である。
【図8b】伝達の一連の動作を示す図である。
【図8c】伝達の一連の動作を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアトレインと、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置とを含み、ギアトレインが、第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置によって選択されるように配置されることを特徴とする伝動システム。
【請求項2】
第1及び第2のシャフトと、第1、第2及び第3のギアトレインと、第1及び第2のギアトレインを介して第1及び第2のシャフト間で駆動力を選択的に伝動する第1の瞬時ギアセレクタ装置と、第2及び第3のギアトレインを介して第1及び第2のシャフト間で駆動力を選択的に伝動する第2の瞬時ギアセレクタ装置とを含むことを特徴とする伝動システム。
【請求項3】
それぞれの新しいギアトレインの選択が、単独の瞬時ギアセレクタ装置で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の伝動装置。
【請求項4】
第1及び第2の瞬時ギアセレクタ装置が、第1及び第2のシャフトに交互に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項5】
ギアトレインと、ギアセレクタ装置が交互に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項6】
3〜10個のギアトレインと、好ましくは3〜8個のギアトレインと、より好ましくは、3〜6個のギアトレインを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項7】
n個の瞬時ギアセレクタ機構を含み、n数が、ギアトレインの数から1引いた数であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項8】
第1のギアトレインが、第1及び第2のギア素子を備え、第1のギア素子は第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第2のギア素子は、第2のシャフトとともに回転するために固定されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項9】
第1の瞬時ギアセレクタ装置が、第1のシャフトとともに回転するために第1のギア素子を選択的にロックするように配置されることを特徴とする、請求項8に記載の伝動システム。
【請求項10】
第1のギアトレインが、最も高い又は低いギア比であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の伝動システム。
【請求項11】
第1のギアトレインは、最も外のギアトレインとして配置されることを特徴とする、請求項8〜10に記載の伝動システム。
【請求項12】
第2のギアトレインが、第3及び第4のギア素子を備え、第3のギア素子は第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第4のギア素子は、第2のシャフト上に回転可能に搭載されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項13】
第1の瞬時ギアセレクタ装置が、第1のシャフトとともに回転するために第3のギア素子を選択的にロックするように配置されることを特徴とする、請求項12に記載の伝動システム。
【請求項14】
第2の瞬時ギアセレクタ装置が、第2のシャフトとともに回転するために第4のギア素子を選択的にロックするように配置されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の伝動システム。
【請求項15】
第3のギアトレインが、第5及び第6のギア素子を備え、ギア素子のうちの1つが第1及び第2のシャフトのうちの一方とともに回転するために固定され、その他のギア素子が他方のシャフトに回転可能に搭載されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項16】
第2の瞬時ギアセレクタ装置が、第2のシャフトとともに回転するために第6のギアトレインを選択的にロックするように配置されることを特徴とする、請求項15に記載の伝動システム。
【請求項17】
第4のギアトレインと、第3の瞬時ギアセレクタ装置を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の伝動システム。
【請求項18】
第4のギアトレインは、第7及び第8のギア素子を備え、第7のギア素子は、第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第8のギア素子は、第2のシャフト上に回転可能に搭載されることを特徴とする、請求項17に記載の伝動装置。
【請求項19】
第2の瞬時ギアセレクタ装置が、第2のシャフトとともに回転するために第8のギア素子を選択的にロックするように配置され、第3の瞬時ギアセレクタ機構が、第1のシャフトとともに回転するために第7のギアホイールを選択的にロックするように配置されることを特徴とする、請求項18に記載の伝動システム。
【請求項20】
第3の瞬時ギアセレクタ装置が、第1のシャフトとともに回転するために第5のギアホイールを選択的にロックするように配置され、第6のギアホイールは、第2のシャフトとともに回転するために固定されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の伝動システム。
【請求項21】
第1及び第2のシャフトと、第1及び第2のシャフト間で駆動力を伝動する第1及び第2のギア素子を有する第1のギアトレインと、第1及び第2のギアセレクタ装置とを含み、第1のギア素子は、第1のシャフト上に回転可能に搭載され、第1のギアセレクタ装置は、第1のシャフトとともに回転するために第1のギア素子を選択的にロックするように配置され、第2のギア素子は、第2のシャフト上に回転可能に搭載され、第2のギアセレクタ装置は、第2のシャフトとともに回転するために第2のギア素子を選択的にロックするように配置されることを特徴とする伝動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2008−531948(P2008−531948A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557587(P2007−557587)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000743
【国際公開番号】WO2006/095140
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(505411505)ゼロシフト リミテッド (8)
【Fターム(参考)】