説明

伝送線路共振器並びに伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタ、バランス型フィルタ、プッシュ−プッシュ発振器及び分波器

【課題】従来の1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIRは、小型化と低損失化の両立が困難であった。そこで、1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIRの構造を見直し、その応用を詳細に検討した。従来の1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIRに匹敵する小型化と、これを超える機能及び性能を実現する1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIR並びにこれらのSIRを用いた高周波回路を提供することを目的とする。
【解決手段】一端が短絡接地された第1の伝送線路11aと、他端に接続された第2の伝送線路12aと、第2の伝送線路12aの他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子としての先端開放スタブ13とを備える。そして、本発明の伝送線路共振器は、共振条件を表わす所定の式を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路で用いられる伝送線路共振器に関し、特にステップインピーダンス型伝送線路共振器並びにその伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタ、バランス型フィルタ、プッシュ−プッシュ発振器及び分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波帯、マイクロ波帯で用いられる共振器は、1/4波長型又は1/2波長型の一様線路共振器が主流である。最近では、非特許文献1に示すように、線路インピーダンスの異なる複数の伝送線路から構成されるステップインピーダンス共振器(以下、SIRともいう。)が、小型化、スプリアス抑圧あるいは多様な結合方式の実現を目的として用いられるようになってきている。
【0003】
SIRには、多様な構造のものがある。代表的なものとして、1/4波長型における一端開放他端短絡型SIRと、1/2波長型の両端開放型SIRがある。非特許文献2及び3に示すように、1/4波長型SIRは、もっとも小型化することができることから、従来から積極的に開発実用化が行われてきた。そして、近年においては、LTCC(低温同時焼成セラミックス)プロセス技術の確立により、1/4波長型SIRは、特許文献1に示すようにマイクロ波帯無線システム用フィルタに多く用いられるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−87830号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sagawa,Makimoto and Yamashita.,「Geometrical Structures and Fundamental Characteristics of Microwave Stepped Impedance Resonators」,IEEE Trans.MTT,vol.45,No.7,pp.1078−1085,July 1997
【非特許文献2】牧本、「マイクロ波SIRの構造とその特性」、電気情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告 MW2003−221、p83−90、2003年12月
【非特許文献3】Makimoto and Yamashita,「Microwave Resonators and Filters for Wireless Communication」,Springer,Heiderberg,Germany,Dec.2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1/4波長型であっても、1/2波長型であっても、ステップインピーダンス共振器を一様線路共振器(例えば、図2(A)参照)に比べて小型にするためには、共振時に電流が最大になる第1の伝送線路(例えば、図2(B)の21b、図2(E)の21e参照)の線路インピーダンスZを、開放端を含む第2の伝送線路(例えば、図2(B)の22b、図2(E)の22e参照)の線路インピーダンスZよりも大きく設計する必要がある。すなわち、伝送線路のインピーダンス比R=Z/Zとした場合において、R<1となるように設計する必要がある。このことは、大きい電流が流れる伝送線路部分である第1の伝送線路の線路幅を狭く設計することに相当し、結果的に導体損失が増大することとなる。一方、導体損失を低減するために、第1の伝送線路の線路インピーダンスZを第2の伝送線路の線路インピーダンスZよりも小さく設計した場合には(例えば、図2(C)、(F)参照)、R>1となり、全体の線路長が一様線路の場合よりも長くなってしまう。このように、従来の技術では、小型化と低損失化(共振器の高Q化)を両立することは困難であった。
【0007】
そこで、発明者らは、1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIRの機能及び性能の改善を目指してその構造を見直し、さらにその応用を詳細に検討した。したがって、本発明は、従来の1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIRに匹敵する小型化と、これを超える機能及び性能を実現する1/4波長型SIR及び両端開放1/2波長型SIR並びにこれらのSIRを用いた高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る1/4波長型伝送線路共振器は、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備える。そして、本発明の1/4波長型伝送線路共振器は、以下の式を満たし、第1の伝送線路の他端が短絡接地される。
【0009】
【数1】

【0010】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0011】
本発明に係る、1/4波長型伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタは、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備え、以下の式を満たし、第1の伝送線路の他端が短絡接地された、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含んでいる。本発明の帯域通過フィルタは、2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備える。そして、本発明の帯域通過フィルタは、2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させて構成される。
【0012】
【数2】

【0013】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0014】
本発明に係る、1/4波長型伝送線路共振器を用いた分波器は、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備え、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含んでいる。本発明の分波器は、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力を結合させた入力端子と、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合された出力端子とを備える。本発明の分波器の2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する。
【0015】
【数3】

【0016】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0017】
本発明に係る両端開放1/2波長型伝送線路共振器は、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備える。本発明の両端開放1/2波長型伝送線路共振器の第1の共振部及び第2の共振部は、それぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たす。
【0018】
【数4】

【0019】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0020】
本発明に係る、両端開放1/2波長型伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタは、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として第1の共振部を180°折り返した当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、第1の共振部及び第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含んでいる。本発明の帯域通過フィルタは、2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備える。本発明の帯域通過フィルタは、2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させて構成される。
【0021】
【数5】

【0022】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0023】
本発明に係る、両端開放1/2波長型伝送線路共振器を用いたバランス型フィルタは、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として第1の共振部を180°折り返した当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、第1の共振部及び第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含んでいる。本発明のバランス方フィルタは、2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器の2つの容量性素子それぞれに結合された第1及び第2の入力端子と、2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器の2つの容量性素子それぞれに結合された第1及び第2の出力端子とを備える。本発明のバランス型フィルタは、2個以上の伝送線路共振器のそれぞれの容量性素子を略平行に所定の距離離間して隣接するように配置して構成される。
【0024】
【数6】

【0025】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0026】
本発明に係る、両端開放1/2波長型伝送線路共振器を用いたプッシュ−プッシュ発振器は、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、第1の共振部及び第2の共振部は、それぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たす伝送線路共振器と、第1の伝送線路に結合された、伝送線路共振器の共振周波数を不平衡出力するための第1の出力端子と、第1の共振部及び第2の共振部にそれぞれ結合されて、逆相の信号により発振する2個の発振部と、2個の発振部の2つの同相信号出力を合成する同相合成器と、共振周波数の偶数次高調波信号を出力する出力端子とを備える。
【0027】
【数7】

【0028】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【0029】
本発明に係る、両端開放1/2波長型伝送線路共振器を用いた分波器は、第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、第1の共振部及び第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含んでいる。本発明の分波器は、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力を結合させた入力端子と、2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合された出力端子とを備える。本発明の分波器の2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する。
【0030】
【数8】

【0031】
(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【発明の効果】
【0032】
本発明の1/4波長型SIRによれば、短絡接地部とは逆の端に容量性素子を装荷することにより、従来の1/4波長型SIRに比べて短絡接地部における低損失化が図られ、同時に従来の一様線路共振器の大きさに比べて小型化することができる。
【0033】
本発明の1/2波長型SIRによれば、従来の両端開放1/2波長型SIRに比べて電流の集中するSIR中央部における低損失が図られ、同時に従来の一様線路共振器の大きさに比べて小型化することができる。また、その対称構造により、平衡結合を容易に実現することができる。
【0034】
本発明の1/4波長型SIR、1/2波長型SIRを用いて、多段の帯域通過フィルタ、バランス型フィルタ、プッシュ−プッシュ発振器及び分波器等多くの高周波回路において小型化と低損失化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の構成を示す図である。(A)は、本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の最も基本的な構成を示すものであり、伝送線路の幅がステップ状に変化する例を示す。(B)は、異なる線路インピーダンスの伝送線路の間にテーパ部を設けて、伝送線路の幅をゆるやかに変化させた構成の例を示す。(C)は、伝送線路がテーパ部のみからなる例を示す。
【図2】従来の1/4波長型伝送線路共振器と両端開放1/2波長型伝送線路共振器の構成を示す図である。(A)は、一様線路による従来の1/4波長型伝送線路共振器の例である。(B)、(C)は、従来の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の例である。(D)は、一様線路による従来の両端開放1/2波長型伝送線路共振器の例である。(E)、(F)は、従来の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の例である。
【図3】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の動作原理を説明するための図である。
【図4】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器、両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器に接続する容量性素子や外部回路との容量結合のための素子として用いることができる分布定数素子を示す図である。(A)は、長方形状のスタブである。(B)は、ステップインピーダンスを有するスタブである。(C)は、T型のスタブである。(D)は、折り返し線路構造のスタブである。
【図5】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の変形例を示す図である。(A)は、異なる線路インピーダンスの伝送線路の接続部をテーパ部により接続し、容量性素子に可変容量素子である可変容量ダイオードを組み合わせた電子同調回路の構成例である。(B)は、異なる線路インピーダンスの伝送線路の接続部をテーパ部により接続し、容量性素子として、折り返し構造スタブを用いた例を示したものである。
【図6】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を3個用いて、3段帯域通過フィルタを構成した例である。
【図7】本発明の1/4波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器による電子同調回路を2個用いて、電子同調フィルタを構成した例である。
【図8】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の構成を示す図である。(A)は、本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の最も基本的な構成を示すもので、伝送線路の幅をステップ状に変化させた構成例である。(B)は、伝送線路が異なる線路インピーダンスの伝送線路の間に設けるテーパ部のみからなり、伝送線路の幅をゆるやかに変化させた構成例である。(C)は、容量性素子を折り返し構造スタブを用いた構成例である。
【図9】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器の変形例を示す図である。(A)は、両端の容量性素子を隣接するように配置し、共振器をループ状に配置することにより共振器を小型化した例である。(B)は、第2及び第3の伝送線路の先端をL字状に屈曲させてそれらの先端に容量性素子である先端開放スタブを接続した構成例である。
【図10】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を用いた2段構成の帯域通過フィルタの構成例である。
【図11】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器による電子同調回路を2個用いた2段電子同調フィルタの構成例である。
【図12】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を2個縦続に結合させた2段バランス型フィルタの構成例である。
【図13】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を3個縦続に結合させた3段バランス型フィルタの構成例である。
【図14】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を4個用い、入出力間を結合させたクロスカップルフィルタの構成例である。
【図15】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器からなる通過周波数の異なる2段帯域通過フィルタを用いた分波器の構成例である。
【図16】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器による2段電子同調フィルタを用いた分波器の例である。
【図17】本発明の両端開放1/2波長型ステップインピーダンス伝送線路共振器を用いたプッシュ−プッシュ発振器の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明が適用された伝送線路共振器(以下、単にSIRともいう。)並びにその伝送線路共振器を用いた帯域通過フィルタ、バランス型フィルタ、プッシュ−プッシュ発振器及び分波器について、図面を参照して説明する。なお、説明は以下の順序で説明する。
【0037】
1.1/4波長型伝送線路共振器
1−1.構成
1−2.動作原理
1−3.変形例
1−4.応用回路
(1)多段帯域通過フィルタ
(2)電子同調フィルタ
(3)分波器
2.両端開放1/2波長型伝送線路共振器
2−1.構成
2−2.変形例
2−3.応用回路
(1)帯域通過フィルタ
(2)電子同調フィルタ
(3)バランス型フィルタ
(4)クロスカップルフィルタ
(5)分波器
(6)プッシュ−プッシュ発振器。
【0038】
1.1/4波長型伝送線路共振器
1−1.構成
【0039】
図1(A)は、本発明の1/4波長型ステップインピーダンス共振器の代表的な例である。1/4波長型SIR1aは、裏面一面が導体パターンで誘電率が一様な誘電体基板上に形成される。第1の伝送線路11aは、第1の線路インピーダンスZ及び第1の線路長θを有している。第1の伝送線路11aの一方の端は、短絡接地部14であるビアを介して誘電体基板裏面の導体パターンに短絡接地される。第2の伝送線路12aは、第2の線路インピーダンスZ及び第2の線路長θを有し、第1の伝送線路11aの他方の端に接続される。第1の線路インピーダンスZは、第2の線路インピーダンスZよりも小さくするために、第1の伝送線路11aの幅は、第2の伝送線路12aの幅よりも広く設定される。第2の伝送線路12aの他方の端には、容量性素子としての先端開放スタブ13が接続される。先端開放スタブ13の容量値Cは、後述するように、先端開放スタブ13のサセプタンスの値をBとすると、以下の式(1)で表わされる共振条件を満たす必要がある。なお、この先端開放スタブ13は、裏面導体パターンと結合しているので、容量性素子として機能するときには、第2の伝送線路12aと短絡接地14間に実質的に接続されていることになる。
【0040】
【数9】

【0041】
図1(A)においては、容量性素子を分布定数素子である先端開放スタブ13により構成したが、分布定数素子に代えて集中定数素子、可変容量素子又はこれらを組み合わせた容量素子を用いることができる。また、後述するように、分布定数素子も、先端開放スタブに限らず、インピーダンスステップスタブ、T型スタブ又は折り返し線路構造スタブ等さまざまなスタブ形状を用いることができる。
【0042】
なお、図1(A)においては、第1の伝送線路11aの線路幅方向の中心を通る、線路長方向の対称軸をとると、第1の伝送線路11aの形状は、この対称軸に線対称となっている。同様に、第2の伝送線路12a、先端開放スタブ13も同一対称軸上にあり、線対称となっている。しかしながら、第1の伝送線路11a、第2の伝送線路12a及び先端開放スタブ13は、すべて同一対称軸上にある必要はなく、それぞれの対称軸は、線路幅方向に平行にずれていてもよく、またそれぞれの対称軸は、平行である必要はなく、任意の角度をもっていてもよい。また、上述のような線対称形状である必要もなく、線路の途中で任意の角度で屈曲する等の任意の形状をとることができるのは言うまでもない。
【0043】
1−2.動作原理
本発明の伝送線路共振器の動作原理を図1及び図2を参照して説明する。
【0044】
図2(A)−(C)は、従来の1/4波長型共振器の例を示す図である。図2(A)は、一様線路共振器20aにより1/4波長型伝送線路共振器を構成した例を示す。図2(B)は、一端が短絡接地された、線路インピーダンスの大きい第1の伝送線路21bに、開放端を有し、線路インピーダンスの小さい第2の伝送線路22bを接続したステップインピーダンス共振器を構成した例を示す図である。図2(C)は、一端が短絡接地された、線路インピーダンスの小さい第1の伝送線路21cに、開放端を有し、線路インピーダンスの大きい伝送線路22cを接続したステップインピーダンス共振器を構成した例を示す図である。
【0045】
第1の伝送線路21b、21cの線路インピーダンスをZ、線路長をθとし、第2の伝送線路22b、22cの線路インピーダンスをZ、線路長をθとすると、1/4波長型SIRの共振条件は、Rをインピーダンス比とすると、以下の(2)式で与えられる。
【0046】
tanθ・tanθ=Z/Z=R・・・(2)
<1のときには、図2(B)に示すように、一様線路共振器よりも共振器の長さが短くなる。しかしながら、図2(B)に示すような1/4波長型SIRにおいては、第1の伝送線路の短絡接地部のインピーダンスが高く、損失が大きくなるという欠点がある。一方、R>1のときには、短絡接地部のインピーダンスが小さいので損失は低下するが、図2(C)に示すように、一様線路共振器よりも共振器の長さが長くなるという欠点がある。なお、図2(A)のような一様線路共振器の場合には、R=1となる。
【0047】
そこで、装荷する容量性素子のサセプタンスの値をBとすると、図1(A)に示すような1/4波長型SIRを考えると、その共振条件は、上述した(1)式で与えられる。
【0048】
【数10】

【0049】
図3は、装荷する容量性素子の容量値と(1)式で表わされる共振条件を満たす共振周波数を計算してプロットしたものである。1/4波長型SIRの第1の伝送線路31の線路インピーダンスをZ、線路長をθとし、第2の伝送線路32の線路インピーダンスをZ、線路長をθとして、装荷する容量性素子を集中定数素子のコンデンサ33とし、その容量値をCとして、コンデンサ33の容量値Cを変化させて共振条件を求めた。ここで、それぞれの線路長は、周波数2GHzにおいて、θ=θ=45°とした。
【0050】
図3に示すように、R<1、R=1、R>1いずれの場合においても、Cの増大に応じて、SIRの共振周波数は低下する。特に、R>1(図3においては、R=2.0)のときには、他の場合に比べてCに対する共振周波数の変化幅が大きいことがわかる。すなわち、R>1の場合には、Cを大きくすることで共振周波数を十分低くすることができることになる。総線路長(θ+θ)は、周波数に逆比例するので、周波数を上げれば、総線路長を短くすることができる。したがって、R>1の条件において、Cを一定にして、共振周波数をそれに応じて上げれば、共振器長を短くすることができる。すなわち、装荷容量を追加することで、1/4波長型SIRを小型化することができる。
【0051】
さらに、図3に示すように、R>1の場合において、Cに対する共振周波数の変化幅が大きいということは、容量性素子を可変容量ダイオードのような可変容量素子に置き換えて電子同調回路を構成すると、広い帯域をカバーした設計をすることができるという利点もある。
【0052】
1−3.変形例
図1(A)に示すような1/4波長型SIR1aの場合には、第1の伝送線路11aと第2の伝送線路12aとの接続部がステップ状に変化しているため、接続部における線路インピーダンスの急激な変化により損失が増大する。そこで、図1(B)に示すように、線路幅Wの第1の伝送線路11bと線路幅Wの第2の伝送線路12bとの接続部にテーパ部15bを挿入する。線路幅Wから線路幅Wに連続的に線路幅が減少するテーパ部15bによって、第1の伝送線路11bと第2の伝送線路12bとの接続部における線路インピーダンス変化がゆるやかになり、損失の低減が可能になる。図1(B)に示すような直線状のテーパに限らず、たとえば指数関数等にしたがって曲線的に変化する形状としてもよい。
【0053】
さらに、図1(C)に示すように、短絡接地部14に接続された一端が第1の伝送線路の線路幅Wであり、先端開放スタブ13に接続された他方の端が第2の伝送線路の線路幅Wであるようなテーパ部15cのみからなるSIR1cも実現できる。ここで、第1の伝送線路11a、11bにテーパ部15cを接続し、テーパ部15cの他端に容量性素子としての先端開放スタブ13を接続してもよく、テーパ部15cの一端は、直接に短絡接地部14に接続し、他端を第2の伝送線路12a、12bに接続した形状としてもよい。
【0054】
図4には、第2の伝送線路に接続する容量性素子として採用可能な分布定数素子の例を示している。図4(A)は、方形状の先端開放スタブ33aである。接続端子30により1/4波長型SIRに接続する。図4(B)は、インピーダンスステップを有するスタブ33bの例である。図4(C)は、T型のスタブ33cの例である。図4(D)は、折り返し構造のスタブ33dの例である。これらは、代表的な例であり、任意の形状の分布定数素子を容量性素子として用いることができる。
【0055】
また、図5(A)に示すように、容量性素子を可変容量素子と組み合わせて置き換えたり、集中定数素子、他の分布定数素子と組み合わせることにより所望の機能、性能を実現することも可能である。
【0056】
図5(B)は、テーパ部45bを、第1の伝送線路41bと第2の伝送線路42bとの接続部に挿入した1/4波長型SIRの例である。容量性素子には、折り返し構造スタブ43bを用いることで容量値の確保と小型化の両立を図っている。
【0057】
なお、一般的には、伝送線路の形状によりインピーダンスステップを形成するが、伝送線路の形状によらずインピーダンスステップを形成することも可能である。たとえば第1の伝送線路及び第2の伝送線路のそれぞれの下層に異なる誘電率の誘電体を用いることによって、所定のインピーダンスステップを形成することが可能である。あるいは誘電体の厚さをステップ状に変えることにより、インピーダンスステップを形成したり、誘電体の厚さを連続的に変化させて、連続的なインピーダンス変化を実現することも可能である。伝送線路の形状、採用する容量性素子の種類、誘電体の構成等を組み合わせることによって、高い自由度で、SIRを設計することが可能である。
【0058】
1−4.応用回路
次に、本発明の1/4波長型SIRを用いた応用回路について説明する。
【0059】
(1)多段帯域通過フィルタ
帯域通過フィルタは、混在した周波数の信号を入力して、特定の周波数の信号を出力する回路である。図6に示すように、複数の1/4波長型SIRを隣接するように配置することにより相互に結合させて、特定の周波数のみを通過させる多段帯域通過フィルタを構成することができる。
【0060】
本発明の3段帯域通過フィルタ50は、図6に示すように、同一形状、同一共振周波数の第1のSIR50a、第2のSIR50b及び第3のSIR50cをそれぞれ略平行に隣接するように配置して構成される。各SIR50a−50cは、一端が短絡接地部54に接続された第1の伝送線路51a、51b、51cと、第1の伝送線路51a、51b、51cの他端に一方の端が接続された第2の伝送線路52a、52b、52cと、第2の伝送線路52a、52b、52cの他方の端に接続された容量性素子である折り返し構造スタブ53a、53b、53cと、第1のSIR50aの折り返し構造スタブの一方に略平行に配置することにより結合された入力端子55と、第3のSIR50cの折り返し構造スタブの一方に略平行に配置することにより結合された出力端子56とを備える。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。上述した第2のSIR50bは、第1のSIR50aを180°回転した向きに配置され、所定の距離57abだけ離間して略平行に配置される。第3のSIR50cは、第2のSIR50bを180°回転した向きに配置され、所定の距離57bcだけ離間して略平行に配置される。各SIRを離間して配置する距離57ab、57bcを調整することによって、各SIRの結合度を調整することができる。各SIRの向きを変えることによって、通過する信号の位相を調整することができる。各SIRの離間距離、配置位置、配置角度を調整することによって、所望の帯域通過フィルタの特性を設定することができる。
【0061】
図6に示す例のような帯域通過フィルタの入力部に相当するSIR50aと、出力部に相当するSIR50cとを配置によって隣接させて結合させることにより、クロスカップルフィルタを構成することができる。たとえば第2のSIR50bの配置を三角形の頂点とする位置に置き、第1のSIR50aと第3のSIR50cとで三角形の底辺を構成するように配置すると、すべての1/4波長型SIRについて相互に結合させることができる。そして、各SIRの位置を調整し、入出力の結合度を調整することによりフィルタの減衰特性を設定することができる。
【0062】
なお、図6に示す3段帯域通過フィルタ50は、3段構成であるが、2段構成や4段以上の構成とすることももちろん可能である。各SIRの配置角度は、相互に180°ずつ回転させた位置にする場合に限らず、すべて同じ向きでもよく、あるいは90°回転したSIRがあってもよく、任意の角度だけ回転させたSIRがあってもよい。上述したクロスカップルフィルタのように、隣接するSIRは、1つである必要はなく複数のSIRを隣接させて結合させてもよい。また、容量性素子の構造は、折り返し構造スタブに限らず、図4の他の分布定数素子でもよく、集中定数素子であってももちろんよい。1/4波長型SIRの形状は、図6に示すようなステップ形状に限らず、図1(B)−(C)に示すようなテーパ部を有するSIRであってもよい。
【0063】
(2)電子同調フィルタ
図5(A)に示すように、1/4波長型SIRの容量性素子を可変容量素子と組み合わせることにより、電子同調回路40aを構成することができる。
【0064】
電子同調回路40aは、短絡接地部44に一端が接続された第1の伝送線路41aと、第1の伝送線路41aの他端に、第2の伝送線路42aとのインピーダンス変化をゆるやかにするテーパ部45aを介して一端が接続された第2の伝送線路42aと、第2の伝送線路42aの他方の端に接続されたコンデンサ43と、コンデンサ43の他の端子が接続された外部電圧印加部46と、外部電圧印加部46にカソードが接続され短絡接地部44にアノードが接続された可変容量ダイオード43aと、高周波コイル47を介して外部電圧印加部46に外部電圧を供給するための外部電圧端子49と、外部電圧端子49と短絡接地部44との間に接続された電源バイパスコンデンサ48とを備える。第1の伝送線路41aの線路インピーダンスは、第2の伝送線路42aの線路インピーダンスよりも小さいので、第1の伝送線路41aの幅は、第2の伝送線路42aの幅よりも広く、これらの異なる線路幅をテーパ部45aにより滑らかに接続する。SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。
【0065】
外部電圧端子49に直流電圧を印加すると可変容量ダイオード43aの両端電圧が変化し、コンデンサ43及び可変容量ダイオード43aで構成される直列コンデンサの容量が変化する。これにより、電子同調回路40aの同調周波数を外部直流電圧により変化させることができる。
【0066】
図7は、図5(A)に示した電子同調回路40aを2個、略平行に配置して電子同調フィルタを構成した例を示す図である。
【0067】
本発明の電子同調フィルタ60は、短絡接地部64に一端が接続された第1の伝送線路61a、61bと、第1の伝送線路61a、61bの他端に、第2の伝送線路62a、62bとのインピーダンス変化をゆるやかにするテーパ部65a、65bを介して一端が接続された第2の伝送線路62a、62bと、第2の伝送線路62a、62bの他方の端に接続されたコンデンサ63a、63bと、コンデンサ63a、63bの他の端子が接続された外部電圧印加部66a、66bと、外部電圧印加部66a、66bにカソードが接続され短絡接地部64にアノードが接続された可変容量ダイオード63aa、63bbと、高周波コイル67a、67bを介して外部電圧印加部66a、66bに外部電圧を供給するための接続部68、外部電圧端子69とを備える。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。タッピング結合により一方のSIRに結合された入力端子71と、他方のSIRに結合された出力端子72とをさらに備える。短絡接地部64は、ビア73により誘電体基板裏面の接地パターンに接続される。
【0068】
外部電圧端子69に直流電圧を印加することで、同調周波数を変化させることができるのは、電子同調回路と同様である。2つのSIRの離間距離を調整することによりフィルタ性能を設定することができる。
【0069】
なお、図7の例では、2個のSIRを配置したが、3個以上のSIRを用いることももちろんできる。また、SIRの形状も図1(A)のようなステップ状、図1(C)のような形状であってもよく、任意の形状とすることができる。
【0070】
(3)分波器
図6に示すような、多段帯域通過フィルタを2個以上用いて、それぞれの多段帯域通過フィルタの通過帯域を所望の周波数とすることによって分波器を構成することができる。それぞれの多段帯域通過フィルタの入力を接続し、又は必要に応じてインピーダンス整合回路を介して、各多段帯域通過フィルタの入力を接続することによって、分波器を構成することができる。
【0071】
この場合においても、SIRの形状は、図1(A)−(C)に示すようなステップ状のもの又はテーパ状のものいずれでもよく、容量性素子は、集中定数素子、分布定数素子いずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、容量性素子として、可変容量素子を組み合わせることによって、電子同調型の分波器を構成することもできる。
【0072】
このようにして、本発明の1/4波長型SIRは、小型化と低損失化(高Q化)を両立することができる。本発明の1/4波長型SIRを用いることにより、1/4波長型SIRの小型、低損失を活かした応用回路を構成することができる。応用回路構成にあたっては、SIR相互の結合や外部回路の配置パターンとの結合を容易に制御、調整できるので、小型かつ設計の自由度の高い上述のような帯域通過フィルタ、クロスカップルフィルタ、電子同調フィルタ及び分波器等の各種高周波応用回路を実現できる。
【0073】
設計の自由度が高いということは、多様な周波数帯域での応用設計が可能であり、近年の無線装置で要求されているマルチバンド化への対応も容易である。さらに可変容量素子を組み合わせることで、広帯域な電子同調回路を実現することができるので、コグニティブ無線システム等に向けてリコンフィギュアラブル特性を具現化できる。
【0074】
2.両端開放1/2波長型伝送線路共振器
2−1.構成
図8(A)は、本発明の両端開放1/2波長型SIR(以下、単に「1/2波長型SIR」ともいう。)の例を示す図である。
【0075】
1/2波長型SIR80aは、第1の伝送線路81aと、第1の伝送線路81aの一端に接続された第2の伝送線路82aと、第1の伝送線路81aの他端に接続された第3の伝送線路83aと、第2の伝送線路82a及び第3の伝送線路83aのそれぞれの他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子である先端開放スタブ84とを備える。
【0076】
1/2波長型SIR80aは、第1の伝送線路81aの線路長方向の中心を通る、線路幅方向に沿った対称軸に対して線対称となる形状である。すなわち、1/2波長型SIR80aは、図1(A)に示す1/4波長型SIR1aの第1の伝送線路11aの短絡接地部14に接続される一端を対称軸とした線対称形状である。したがって、1/2波長型SIRの共振器長は、1/4波長型SIRの共振器長の2倍となる。
【0077】
2−2.変形例
1/4波長型SIRと同様に、第1の伝送線路と、第2及び第3の伝送線路との接続部をテーパ部を介して接続することができ、図8(B)に示すように、第1−第3の伝送線路の一部又は全部をテーパ部85bとすることもできる。また、容量性素子を図8(C)に示すように、容量性素子として折り返し構造スタブ84cとすることや、他の分布定数素子、集中定数素子、又はこれらの組み合わせにより構成することもできる。さらに、容量性素子に可変容量素子を組み合わせて、可変容量素子に外部電圧を印加する外部電圧印加部を追加することで、電子同調回路を構成することもできる。
【0078】
図9に示すように、第1の伝送線路91a、91bと、第2の伝送線路92a、92bと、第3の伝送線路93a、93bと容量性素子である先端開放スタブ94a、94b、95a、95bとをループ状になるように配置することができる。この場合において、容量性素子を隣接するように配置して結合させることにより、1/2波長型SIRの小型化を図ることができる。
【0079】
2−3.応用回路
以下に、本発明の1/2波長型SIRを用いた応用回路について説明する。
【0080】
(1)多段帯域通過フィルタ
帯域通過フィルタは、混在した周波数の信号を入力して、特定の周波数の信号を出力する回路である。図10は、1/2波長型SIRを2個用いて2段構成の帯域通過フィルタの応用例を示した図である。
【0081】
2段帯域通過フィルタ100は、図10に示すように、同一形状、同一共振周波数を有する第1の1/2波長型SIR100aと、第2の1/2波長型SIR100bとを備える。そして、第1の1/2波長型SIR100aにタッピング結合された入力端子107と、第2の1/2波長型SIRにタッピング結合された出力端子108とを備える。第1の1/2波長型SIR100aは、図9(B)で示した1/2波長型SIRと略同じものである。すなわち、第1の1/2波長型SIR100aは、第1の伝送線路101aと、第1の伝送線路101aの一方の端に第2の伝送線路102aが第1の伝送線路101aに対して略直角の方向に接続される。また、第1の伝送線路101aの他方の端に第3の伝送線路103aが第1の伝送線路101aに対して略直角の方向に接続される。第1の伝送線路101aと第2及び第3の伝送線路102a、103aとの接続部は、L字状に屈曲しているので、接続部でのインピーダンス急変による損失の増大を防止するためテーパ部を設けている。第2及び第3の伝送線路102a、103aは、L字の形状をしており、第1の伝送線路101aに接続された側と反対側の先端に容量性素子である先端開放スタブ104a、105aがそれぞれ接続される。先端開放スタブ104aと105aとは、所定の距離106aだけ離間して配置される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。このように、第1の伝送線路101a、第2の伝送線路102a、第3の伝送線路103a及び先端開放スタブ104a、105aは、ループ状に配置された結果、小型化が実現される。
【0082】
第1の1/2波長型SIR100aと、第2の1/2波長型SIR100bとは、第2の伝送線路102aと第3の伝送線路103bとを略平行に隣接するように所定の距離109だけ離間して配置される。第1の1/2波長型SIR100aにタッピングにより結合された入力端子107に信号が入力され、第2の1/2波長型SIR100bにタッピングにより結合された出力端子108から出力信号が出力される。所定の距離109を調整し、また各1/2波長型SIRの誘電体基板平面上の配置位置、配置角度を調整して、結合度、通過する信号の位相を調整することができるので、これによりフィルタ特性を設定することができる。
【0083】
図10の例では、2段構成の帯域通過フィルタを示したが、2段構成に限らず、3個以上の同一共振周波数を有する1/2波長型SIRを配置することで、3段以上の帯域通過フィルタを構成することができる。また、図10の例では、それぞれの1/2波長型SIRの配置の方向を同一方向としているが、一方を180°向きを変えて配置し結合させてもよい。あるいは、一方を90°向きを変えて配置してもよく、結合させる双方の1/2波長型SIRを任意の角度、任意の離間距離に配置することで結合度の調整をすることができる。
【0084】
なお、図10の例では、ループ状に形成された1/2波長型SIRを複数個配置することによる多段帯域通過フィルタを示したが、ループ状のSIRを用いる場合に限らず図8に示すような直線状の1/2波長型SIRを配置することによっても多段帯域通過フィルタを構成できることは言うまでもない。また、容量性素子としても、図4に代表的に示すようなさまざまな形状のものを用いることができ、集中定数素子ももちろん用いることが可能である。また、以下に述べるように、可変容量素子を用いれば、電子同調フィルタを構成することもできる。
【0085】
(2)電子同調フィルタ
図11に本発明の1/2波長型SIRを用いた電子同調フィルタの構成例を示す。電子同調フィルタとは、通過させる信号の周波数をプログラマブルに可変する高周波回路である。
【0086】
電子同調フィルタ110は、同一の構成、形状である第1の電子同調回路110aと、第2の電子同調回路110bと、外部電圧供給部とから構成される。第1の電子同調回路110aは、「コ」の字状の第1の伝送線路111aと、その両端に接続された、先端がL字状に形成された第2の伝送線路112aと、第3の伝送線路113aとを備える。L字状に屈曲した第2の伝送線路112aの先端には、可変容量ダイオード115aaのアノードが接続され、L字状に屈曲した第3の伝送線路113aの先端には、コンデンサ115aが接続される。可変容量ダイオード115aaのカソード端子と、コンデンサ115aの他方の端子は、外部電圧印加部116aで接続され、高周波コイル114、電流制限抵抗を介して外部電圧端子117に供給される外部電源が印加される。第2の電子同調回路110bは、第1の電子同調回路110aと同一の形状、構成である。各電子同調回路を構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。外部電源は、外部電圧端子117を共通にして各電子同調回路に同一の電圧が印加される。電子同調フィルタ110は、第1の電子同調回路110aにタッピング結合された入力端子118aと、第2の電子同調回路110bにタッピング結合された出力端子118bとをさらに備える。なお、2個の電子同調回路に均等に外部電源による電圧を供給するために、第1の伝送線路111a、111bと短絡接地部間に高周波コイル114を接続して直流バイアスをかけることが好ましい。
【0087】
入力端子118aに入力された周波数の混在した信号は、外部電圧端子117によって供給された電圧により設定される容量値に応じた共振周波数で通過周波数が決定され、出力端子118bから出力される。
【0088】
図11の例に示された形状、構成の1/2波長型SIRに限らず、容量性素子として図4に代表的に示されるような分布定数素子を組合わせて用いることができ、図8に代表的に示されるようなさまざまな構成の1/2波長型SIRを用いることができる。
【0089】
(3)バランス型フィルタ
バランス型フィルタは、平衡入力した信号を特定の周波数でフィルタリングして、平衡出力する高周波回路である。2段バランス型フィルタ120は、図12に示すように、同一形状、同一共振周波数の2個の1/2波長型SIRを隣接させて配置することにより構成される。
【0090】
2段バランス型フィルタ120は、図12に示すように、第1の1/2波長型SIR120aと、第2の1/2波長型SIR120bとを備える。第1の1/2波長型SIR120aに結合された第1の入力端子126a及び第2の入力端子127aと、第2の1/2波長型SIR120bに結合された第1の出力端子126b及び第2の出力端子127bとを備える。第1の1/2波長型SIR120aは、図9(B)で示した1/2波長型SIR90bと略同じものである。すなわち、第1の1/2波長型SIR120aは、第1の伝送線路121aと、第1の伝送線路121aの一方の端に第2の伝送線路122aが第1の伝送線路121aに対して略垂直の方向に接続される。また、第1の伝送線路121aの他方の端に第3の伝送線路123aが第1の伝送線路121aに対して略垂直の方向に接続される。第2及び第3の伝送線路122a、123aは、L字の形状をしており、第1の伝送線路121aに接続された側と反対側の先端に容量性素子である先端開放スタブ124a、125aがそれぞれ接続される。先端開放スタブ124aと125aとは、所定の距離離間して配置される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。第2の1/2波長型SIR120bの第1の伝送線路121bは、第1の1/2波長型SIR120aの第1の伝送線路121aと略平行に所定の距離128だけ離間して第1及び第2の1/2波長型SIR120a、120b同士が隣接するように配置される。所定の距離128を調整することによって、バランス型フィルタの所望のフィルタ特性を設計することができる。
【0091】
2段バランス型フィルタ120では、第1の1/2波長型SIR120aの先端開放スタブ124a及び125aのそれぞれに結合させた第1の入力端子126a及び第2の入力端子127aに信号が平衡入力される。入力された信号は、第1の1/2波長型SIR120a、第2の1/2波長型SIR120bを通過して、所望の周波数の信号が、第2の1/2波長型SIR120bの先端開放スタブ124a及び125aのそれぞれに結合させた第2の出力端子127b及び第1の出力端子126bから平衡出力される。
【0092】
平衡入力された信号が、平衡出力されるためには、信号が通過する経路の線路インピーダンスが正確に等しい必要がある。1/2波長型SIR120aは、第1の伝送線路121aの線路長方向の中心を通る、線路幅方向の対称軸により線対称である。第1の1/2波長型SIR120aと第2の1/2波長型SIR120bとは、それぞれの対称軸を一致させて対称性を確保する必要がある。
【0093】
図12の例においては、2段構成のバランス型フィルタであるが、図12の構成を1組として、2段構成バランス型フィルタを複数個縦続接続することにより、さらに多段(偶数段)の多段構成バランス型フィルタを構成することができる。
【0094】
図13は、図8(C)に例示した形状の1/2波長型SIRを3個配置することにより構成した3段バランス型フィルタの例を示した図である。図12の例では、1/2波長型SIRがループ状に形成されているのに対して、図13の例では、隣接する1/2波長型SIRと結合させるために、折り返し線路構造スタブを用いることによって、ループ状ではなく直線状の1/2波長型SIRによるバランス型フィルタを構成している点で相違する。
【0095】
3段バランス型フィルタ130は、第1の1/2波長型SIR130a、第2の1/2波長型SIR130bと、第3の1/2波長型SIR130cとを備える。第1−第3の1/2波長型SIRは、すべて同一の形状、同一の共振周波数を有する。3段バランス型フィルタ130は、第1の1/2波長型SIR130aにコンデンサ135を介して結合された第1の入力端子136a及び第2の入力端子136bと、第3の1/2波長型SIR130cにコンデンサ135を介して結合された第1の出力端子137a及び第2の出力端子137bとを備える。第1の1/2波長型SIR130aは、第1の伝送線路131aと、その両端に接続された第2の伝送線路132aと、第3の伝送線路133aとを備える。第2及び第3の伝送線路132a、133aの第1の伝送線路131aが接続されている側と反対側の端には、それぞれ容量性素子である折り返し構造スタブ134aが接続される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。第2の1/2波長型SIR130bは、第1の1/2波長型SIR130aの折り返し構造スタブ134aと略平行に、所定の距離138abだけ離間して、第2の1/2波長型SIR130bの折り返し構造スタブ134bを配置される。さらに、第3の1/2波長型SIR130cは、第2の1/2波長型SIR130bの折り返し構造スタブ134bと略平行に、所定の距離138bcだけ離間して、第2の1/2波長型SIR130cの折り返し構造スタブ134cを配置する。離間して配置する所定の距離138ab、138bcを調整することにより、フィルタ特性を設定する。
【0096】
第1の1/2波長型SIR130aに結合された第1及び第2の入力端子136a、136bに信号が平衡入力として入力されると、第1、第2、第3の1/2波長型SIR130a、130b、130cを通過して、所定の通過帯域でフィルタリングされる。フィルタリングされた信号は、第3の1/2波長型SIR130cに結合された第1及び第2の出力端子137a、137bに平衡出力される。
【0097】
入力される信号を平衡信号として扱うには、第1の入力端子136aに入力される信号と、第2の入力端子136bに入力される信号とが、等しい線路インピーダンスの経路を通過して、第1及び第2の出力端子に出力される必要がある。そこで、各1/2波長型SIR130a、130b、130cは、対称軸について正確に線対称である必要があり、各1/2波長型SIR130a、130b、130cの対称軸は、すべて一致する必要がある。ここで、図13に示すような1/2波長型SIRの対称軸は、第1の伝送線路131a、131b、131cの線路長方向の中心を通る線路幅方向の軸であり、図では上下に対称となる。
【0098】
なお、上述した対称性については、一般的な均一誘電率を有する誘電体基板を用いる場合では、形状の対称性により実現されるが、形状の対称性に限られることはなく、インピーダンスの分布における対称性によっても実現することができる。
【0099】
1/2波長型SIRの形状は、図8−9の例を始めさまざまな形状とすることができ、容量性素子も、集中定数素子、分布定数素子又はこれらを組み合わせたものを用いることができ、可変容量素子を組み合わせれば、後述する電子同調型のフィルタを構成することができる。
【0100】
(4)クロスカップルフィルタ
クロスカップルフィルタとは、有極フィルタの一種であり、帯域通過フィルタのうち急峻なフィルタの減衰特性が要求される場合に用いられる。
【0101】
図14に示す4段クロスカップルフィルタ140は、第1の1/2波長型SIR140aと、第2の1/2波長型SIR140bと、第3の1/2波長型SIR140cと、第4の1/2波長型SIR140dとを備える。すべての1/2波長型SIRは、同一の形状、同一の共振周波数を有する。4段クロスカップルフィルタ140は、第1の1/2波長型140aに結合された入力端子147と、第2の1/2波長型SIR140bに結合された出力端子148とを備える。すべての1/2波長型SIRは、図9(B)で例示したループ状の1/2波長型SIRである。すなわち、第1の1/2波長型SIR140aは、第1の伝送線路141aと、第1の伝送線路141aの一方の端に第2の伝送線路142aが第1の伝送線路141aに対して略直角の方向に接続される。また、第1の伝送線路141aの他方の端に第3の伝送線路143aが第1の伝送線路141aに対して略直角の方向に接続される。第2及び第3の伝送線路142a、143aは、L字の形状をしており、第1の伝送線路141aに接続された側と反対側の先端に容量性素子である先端開放スタブ144a、145aがそれぞれ接続される。先端開放スタブ144aと145aとは、所定の距離146aだけ離間して配置される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。
【0102】
第2の1/2波長型SIR140bは、第1の1/2波長型SIR140aの先端開放スタブ144a、145aと第2の1/2波長型SIR140bの先端開放スタブ145b、144bとがそれぞれ略平行に所定の距離149abだけ離間して隣接するように配置される。第3の1/2波長型SIR140cは、第2の1/2波長型SIR140bの第3の伝送線路143bと第3の1/2波長型SIR140cの第3の伝送線路143cとがそれぞれ略平行に所定の距離149bcだけ離間して隣接するように配置される。第4の1/2波長型SIR140dは、第3の1/2波長型SIR140cの第1の伝送線路141cと第4の1/2波長型SIR140cの第1の伝送線路141dとがそれぞれ略平行に所定の距離149cdだけ離間して隣接するように配置される。第1の1/2波長型SIR140aは、第4の1/2波長型SIR140dの第2の伝送線路142dと第1の1/2波長型SIR140aの第2の伝送線路142aとがそれぞれ略平行に所定の距離149daだけ離間して隣接するように配置される。
【0103】
第1の1/2波長型SIR140aの第1の伝送線路141aにタッピング結合された入力端子147に入力された周波数が混在した入力信号は、第1の1/2波長型SIR140a、所定の距離149ab、第2の1/2波長型SIR140bを通って、第2の1/2波長型SIR140bの第1の伝送線路141bに結合された出力端子148に出力される経路と、第1の1/2波長型SIR140a、所定の距離149da、第4の1/2波長型SIR140d、所定の距離149cd、第3の1/2波長型SIR140c、所定の距離149bc、第2の1/2波長型SIR140bを通って出力端子148に出力される経路とを有する。これらの経路と、所定の距離149ab、149bc、149cd、149daとを調整することによりフィルタ特性を設定することができる。特に、入力端子147及び出力端子148を備える第1の1/2波長型SIR140aと第2の1/2波長型SIR140bとを距離149abによって結合させることによって、減衰特性を設定することが可能となる。
【0104】
なお、入力端子を有するSIRと出力端子を有するSIRとの結合をとる場合に限らず、縦続接続するように結合された複数のSIRのうちの任意のSIRを結合させることによって、フィルタの特性を設定することができる。フィルタの段数についても任意に設定することができるのは言うまでもない。
【0105】
1/2波長型SIRの形状は、図8−9に例示するさまざまな形状のものを用いることができ、容量性素子として、集中定数素子、分布定数素子又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。可変容量素子を組み合わせることで、電子同調型のフィルタを構成することができる。
【0106】
図14の例における配置、段数に限られるものではなく、1/2波長型SIRの配置位置、配置角度、段数を任意に設定することができる。
【0107】
(5)分波器
分波器とは、混在した周波数の信号を入力して、複数の所望の通過帯域の信号を取り出す高周波回路である。図10に示すような多段帯域通過フィルタを、異なる通過周波数のものを2個以上構成し、それぞれの多段帯域通過フィルタの入力端子を相互に接続することによって、1つの入力端子として、周波数の混在する信号を入力して、帯域通過フィルタの数に対応する周波数を取り出す分波器を構成することができる。図15は、2つの異なる通過帯域を有する帯域通過フィルタを備える分波器の例を示す図である。
【0108】
分波器150は、第1の1/2波長型SIR150aと第2の1/2波長型SIR150bとを有する第1の帯域通過フィルタと、第3の1/2波長型SIR150cと第4の1/2波長型SIR150dとを有する第2の帯域通過フィルタとを備える。
【0109】
第1の1/2波長型SIR150aと第2の1/2波長型SIR150bは、同一の形状、同一の共振周波数を有する。また、第3の1/2波長型SIR150cと第4の1/2波長型SIR150dは、同一の形状、同一の共振周波数を有する。第1及び第2の1/2波長型SIR150a、150bと第3及び第4の1/2SIR150c、150dとは、異なる共振周波数を有する。
【0110】
第1の1/2波長型SIR150aの第3の伝送線路153aにタッピング結合により入力を結合させ、第3の1/2波長型SIR150cの第3の伝送線路153cにタッピング結合により入力を結合させる。2つの入力は整合回路158を介して入力端子159に接続される。
【0111】
分波器150は、第2の1/2波長型SIR150bの第2の伝送線路152bにタッピング結合された第1の出力端子161と、第4の1/2波長型SIR150dにタッピング結合された第2の出力端子162とをさらに備える。
【0112】
第1の1/2波長型SIR150aは、第1の伝送線路151aと、第1の伝送線路151aの一方の端に第2の伝送線路152aが第1の伝送線路151aに対して略直角の方向に接続される。また、第1の伝送線路151aの他方の端に第3の伝送線路153aが第1の伝送線路151aに対して略直角の方向に接続される。第1の伝送線路151aと第2及び第3の伝送線路152a、153aとの接続部は、L字状に屈曲しているので、接続部でのインピーダンス急変による損失の増大を防止するためテーパ部を設けている。第2及び第3の伝送線路152a、153aは、L字の形状をしており、第1の伝送線路151aに接続された側と反対側の先端に容量性素子である先端開放スタブ154a、155aがそれぞれ接続される。先端開放スタブ154aと155aとは、所定の距離156aだけ離間して配置される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。
【0113】
入力端子159から入力された周波数が混在した信号は、整合回路158を通して、第1の通過周波数を有する第1の帯域通過フィルタと、第2の通過周波数を有する第2の帯域通過フィルタとをそれぞれ通って、第1の周波数信号は、第1の出力端子161から出力され、第2の周波数の信号は、第2の出力端子162から出力される。
【0114】
図16に示すように、容量性素子に可変容量素子を組み合わせると、電圧制御型(電子同調型)の分波器を構成することができる。図16に示す例は、同一の形状、同一の通過周波数を有する2個の電子同調回路を有する電子同調フィルタを2個備える電圧制御型の分波器170である。
【0115】
分波器170は、第1の電子同調回路170aと第2の電子同調回路170bとを有する第1の電子同調フィルタと、第3の電子同調回路170cと第4の電子同調回路170dとを有する第2の電子同調フィルタとを備える。分波器170は、第1の電子同調回路170aの第3の伝送線路173aにタッピング結合された入力と、第3の電子同調回路170cの第3の伝送線路173cにタッピング結合された入力とを整合回路178を介して結合し、周波数が混在した入力信号を入力する入力端子179に接続する。
【0116】
分波器170は、第2の電子同調回路170bの第2の伝送線路172bにタッピング結合された第1の出力端子181と、第4の電子同調回路170dの第2の伝送線路172dにタッピング結合された第2の出力端子182とを備える。
【0117】
第1の電子同調回路170aは、「コ」の字状の第1の伝送線路171aと、その両端に接続された、先端がL字状に形成された第2の伝送線路172aと、第3の伝送線路173aとを備える。L字状に屈曲した第2の伝送線路172aの先端には、可変容量ダイオード175aaのアノードが接続され、L字状に屈曲した第3の伝送線路173aの先端には、コンデンサ175aが接続される。可変容量ダイオード175aaのカソード端子と、コンデンサ175aの他方の端子は、外部電圧印加部176aで接続され、高周波コイル174、電流制限抵抗を介して第1の外部電圧端子176に供給される外部電源が印加される。各SIRを構成する伝送線路の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。
【0118】
第2の電子同調フィルタも同様に構成される。
【0119】
第1の外部電圧端子176と第2の外部電圧端子177に外部電源を接続し、それぞれ電圧を印加すると、それぞれの電圧に応じて各電子同調フィルタの通過周波数が設定される。入力端子179から整合回路178を介して入力された周波数が混在した入力信号は、それぞれ外部電源による通過周波数の設定された第1の電子同調フィルタを通過し、第2の電子同調フィルタを通過する。第1の電子同調フィルタを通過した第1の周波数は、第1の出力端子181に出力される。第2の電子同調フィルタを通過した第2の周波数は、第2の出力端子182に出力される。第1及び第2の出力端子181、182から出力される信号の周波数は、第1及び第2の外部電圧端子176、177に印加する電圧により、プログラマブルに変化させることができる。
【0120】
1/2波長型SIRの形状は、図8−9に例示するさまざまな形状のものを用いることができる。
【0121】
図16の例における配置、段数に限られるものではなく、1/2波長型SIRの配置位置、配置角度、段数を任意に設定することができる。
【0122】
(6)プッシュ−プッシュ発振器
プッシュ−プッシュ発振器とは、発振周波数の偶数次高調波を出力する発振器である。1/2波長型SIRの共振周波数を基本周波数として、プッシュ−プッシュ発振器を構成することができる。
【0123】
プッシュ−プッシュ発振器190は、図17に示すように、ループ状に形成された1/2波長型SIR190aと、1/2波長型SIR190aに結合された共振周波数の信号を不平衡出力で出力する第1の出力端子204と、1/2波長型SIR190aに結合された発振部である2個の同一の負性抵抗回路202と、2個の負性抵抗回路202のそれぞれに接続され信号の同相成分を合成する同相合成器203と、同相合成器203から共振周波数の2倍の周波数を出力する第2の出力端子205とを備える。
【0124】
図17の例では、1/2波長型SIR190aは、第1の伝送線路191と、その両端にそれぞれの一端が直角方向に接続された第2の伝送線路192及び第3の伝送線路193と、第2の伝送線路192及び第3の伝送線路193の他端にそれぞれ接続された先端開放スタブ194、195とを備える。そして、先端開放スタブ194の開放端に可変容量ダイオード197aのアノードを接続し、先端開放スタブ195の開放端にコンデンサ197を接続し、可変容量ダイオード197aのカソードとコンデンサ197の他法の端子とを接続するための外部電圧印加部198と、外部電圧印加部198に高周波コイル196を介して外部電源を供給する外部電圧端子199とを備える。1/2波長型SIR190aを構成する伝送線路共振器の線路インピーダンス及び線路長と、容量性素子のサセプタンスの値とは、上述した式(1)の関係を満たす。
【0125】
2個の負性抵抗回路202は、1/2波長型SIR190aの両端にそれぞれ結合されているので、逆相で発振する。逆相で発振した信号は、同相合成器203に入力されて、逆相成分である基本発振周波数(1/2波長型SIR190aの共振周波数)の信号成分は、相殺される。一方、基本周波数の2倍の周波数の信号は、同相信号であるため同相合成器203により2倍の逓倍信号として第2の出力端子205から出力される。なお、基本周波数は、同相成分が相殺されて、第1の出力端子204から出力される。
【0126】
発振した信号の同相成分と逆相成分を効果的に加算、相殺して出力信号を得るために、各構成部分の対称配置に留意する必要がある。すなわち、1/2波長型SIR190aは、第1の伝送線路191の線路長方向の中心を通り線路幅方向の対称軸に対して線対称に形成される必要がある。2個の負性抵抗回路202は、同一の回路であり、上述の対称軸に対して線対称となる位置に配置される必要がある。2個の負性抵抗回路202からの出力信号は、上述の対称軸に対して線対称となるような経路によって同相合成器203に接続させる必要がある。
【0127】
1/2波長型SIRの形状は、図8−9に例示するさまざまな形状のものを用いることができ、容量性素子として、可変容量素子を組み合わせたもの以外に、集中定数素子、分布定数素子又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0128】
なお、上述においては、1/4波長型SIRと1/2波長型SIRのそれぞれを用いた応用回路について説明したが、1/4波長型SIRと1/2波長型SIRを混在させた応用回路、たとえば帯域通過フィルタ、電子同調フィルタ、分波器等を構成することももちろん可能である。
【0129】
このようにして、本発明の1/2波長型SIRは、小型化と低損失化、高Q化を両立することができる。本発明の1/2波長型SIRを用いることにより、1/2波長型SIRの小型、低損失を活かした応用回路を構成することができる。応用回路構成にあたっては、SIR相互の結合や外部回路の配置パターンとの結合を容易に制御、調整できるので、小型かつ設計の自由度の高い上述のような帯域通過フィルタ、クロスカップルフィルタ、電子同調フィルタ及び分波器等の各種高周波応用回路を実現できる。また、対称性を利用して、平衡入出力回路を容易に構成できる。
【0130】
設計の自由度が高いということは、多様な周波数帯域での応用設計が可能であり、近年の無線装置で要求されているマルチバンド化への対応も容易である。さらに可変容量素子を組み合わせることで、広帯域な電子同調回路を実現することができるので、コグニティブ無線システム等に向けてリコンフィギュアラブル特性を具現化できる。平衡回路を採用した半導体デバイスとのインタフェースを考慮した場合に、平衡変換機能を内蔵したフィルタ構成を特別の回路の追加なく実現することができるので、MMIC化すれば大幅な小型化が期待できる。
【符号の説明】
【0131】
1a,1b,1c 1/4波長型SIR、11a,11b 第1の伝送線路、12a,12b 第2の伝送線路、13 先端開放スタブ、14 短絡接地部、15b,15c テーパ部、20a,20d 一様線路共振器、21b,21c,21e,21f 第1の伝送線路、22b,22c,22e,22f 第2の伝送線路、23e,23f 第3の伝送線路、24 短絡接地部、30 接続端子、31 第1の伝送線路、32 第2の伝送線路、33 コンデンサ、33a,33b,33c,33d スタブ、34 短絡接地部、40a 電子同調回路、40b 1/4波長型SIR、41a,41b 第1の伝送線路、42a,42b 第2の伝送線路、43 コンデンサ、43a 可変容量ダイオード、43b 折り返し構造スタブ、44 短絡接地部、45a,45b テーパ部、46 外部電圧印加部、47 高周波コイル、48 電源バイパスコンデンサ、49 外部電圧端子、50 3段帯域通過フィルタ、50a 第1の1/4波長型SIR、50b 第2の1/4波長型SIR、50c 第3の1/4波長型SIR、51a,51b,51c 第1の伝送線路、52a,52b,52c 第2の伝送線路、53a,53b,53c 折り返し構造スタブ、54 短絡接地部、55 入力端子、56 出力端子、57ab,57bc 距離、60 電子同調フィルタ、61a,61b 第1の伝送線路、62a,62b 第2の伝送線路、63a,63b コンデンサ、63aa,63bb 可変容量ダイオード、64 短絡接地部、65a,65b テーパ部、66a,66b 外部電圧印加部、67a,67b 高周波コイル、68 接続部、69 外部電圧端子、71 入力端子、72 出力端子、73 ビア、80a,80b,80c 1/2波長型SIR、81a,81c 第1の伝送線路、82a,82c 第2の伝送線路、83a,83c 第3の伝送線路、84 先端開放スタブ、84c 折り返し構造スタブ、90a,90b 1/2波長型SIR、91,91b 第1の伝送線路、92a,92b 第2の伝送線路、93a,93b 第3の伝送線路、94a,94b,95a,95b 先端開放スタブ、96a,96b 距離、100 2段帯域通過フィルタ、100a 第1の1/2波長型SIR、100b 第2の1/2波長型SIR、101a,101b 第1の伝送線路、102a,102b 第2の伝送線路、103a,103b 第3の伝送線路、104a,104b,105a,105b 先端開放スタブ、106a,106b 距離、107 入力端子、108 出力端子、109 距離、110 電子同調フィルタ、110a 第1の電子同調回路、110b 第2の電子同調回路、111a,111b 第1の伝送線路、112a,112b 第2の伝送線路、113a,113b 第3の伝送線路、114 高周波コイル、115a,115b コンデンサ、115aa,115bb 可変容量ダイオード、116a,116b 外部電圧印加部、117 外部電圧端子、118a 入力端子、118b 出力端子、120 2段バランス型フィルタ、120a 第1の1/2波長型SIR、120b 第2の1/2波長型SIR、121a,121b 第1の伝送線路、122a,122b 第2の伝送線路、123a,123b 第3の伝送線路、124a,124b,125a,125b 先端開放スタブ、126a 第1の入力端子、126b 第1の出力端子、127a 第1の入力端子、127b 第2の出力端子、128 距離、130 3段バランス型フィルタ、130a 第1の1/2波長型SIR、130b 第2の1/2波長型SIR、130c 第3の1/2波長型SIR、131a,131b,131c 第1の伝送線路、132a,132b,132c 第2の伝送線路、133a,133b,133c 第3の伝送線路、134a,134b,134c 折り返し構造スタブ、135 コンデンサ、136a 第1の入力端子、136b 第2の入力端子、137a 第1の出力端子、137b 第2の出力端子、138ab,138bc 距離、140 4段クロスカップルフィルタ、140a 第1の1/2波長型SIR、140b 第2の1/2波長型SIR、140c 第3の1/2波長型SIR、140d 第4の1/2波長型SIR、141a,141b,141c,141d 第1の伝送線路、142a,142b,142c,142d 第2の伝送線路、143a,143b,143c,143d 第3の伝送線路、144a,144b,144c,144d,145a,145b,145c,145d 先端開放スタブ、146a,146b,146c,146d 距離、147 入力端子、148 出力端子、149ab,149bc,149cd,149da 距離、150 分波器、150a 第1の1/2波長型SIR、150b 第2の1/2波長型SIR、150c 第3の1/2波長型SIR、150d 第4の1/2波長型SIR、151a,151b,151c,151d 第1の伝送線路、152a,152b,152c,152d 第2の伝送線路、153a,153b,153c,153d 第3の伝送線路、154a,154b,154c,154d,155a,155b,155c,155d 先端開放スタブ、156a,156b,156c,156d 距離、157ab,157cd 距離、158 整合回路、159 入力端子、161 第1の出力端子、162 第2の出力端子、170 電子同調型分波器、170a 第1の電子同調回路、170b 第2の電子同調回路、170c 第3の電子同調回路、170d 第4の電子同調回路、171a,171b,171c,171d 第1の伝送線路、172a,172b,172c,172d 第2の伝送線路、173a,173b,173c,173d 第3の伝送線路、174 高周波コイル、175a,175b,175c,175d コンデンサ、175aa,175bb,175cc,175dd 可変同調ダイオード、176 第1の外部電源端子、176a,176b,176c,176d 外部電圧印加部、177 第2の外部電源端子、178 整合回路、179 入力端子、179ab,179cd 距離、181 第1の出力端子、182 第2の出力端子、190 プッシュ−プッシュ発振器、190a 1/2波長型SIR、191 第1の伝送線路、192 第2の伝送線路、193 第3の伝送線路、194,195 先端開放スタブ、196 高周波コイル、197 コンデンサ、197a 可変容量ダイオード、198 外部電圧印加部、199 外部電源端子、201 コンデンサ、202 負性抵抗回路、203 同相合成器、204 第1の出力端子、205 第2の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、
上記第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び上記第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、
上記第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備え、
以下の式を満たし、
上記第1の伝送線路の他端は、短絡接地された伝送線路共振器。
【数1】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項2】
上記容量性素子は、集中定数素子、可変容量素子、分布定数素子又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の伝送線路共振器。
【請求項3】
上記分布定数素子は、方形状スタブ、インピーダンスステップスタブ、T型スタブ又は折り返し線路構造スタブのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項2記載の伝送線路共振器。
【請求項4】
上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路との接続部は、ステップ状にインピーダンスが変化するように形成されることを特徴とする請求項1−3いずれか1項記載の伝送線路共振器。
【請求項5】
上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路との接続部は、連続的にインピーダンスが変化するようにテーパ状に形成されることを特徴とする請求項1−3いずれか1項記載の伝送線路共振器。
【請求項6】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備え、以下の式を満たし、該第1の伝送線路の他端が短絡接地された、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含み、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備え、
上記2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる帯域通過フィルタ。
【数2】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Z1は、上記第1の線路インピーダンス、θ1は、上記第1の線路長、Z2は、上記第2の線路インピーダンス、θ2は、上記第2の線路長である。)
【請求項7】
上記2個以上の伝送線路共振器は、3個以上の伝送線路共振器からなり、
上記3個以上の伝送線路共振器のうちの任意の1つの伝送線路共振器と任意の他の1つの伝送線路共振器とを互いに結合させた請求項6記載の帯域通過フィルタ。
【請求項8】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とを備え、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含み、
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力を結合させた入力端子と、
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの上記入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合された出力端子とを備え、
上記2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する分波器。
【数3】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項9】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、
上記第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び上記第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、
上記第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、
上記第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として上記第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、
上記第1の共振部及び上記第2の共振部は、それぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たす伝送線路共振器。
【数4】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項10】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、該第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として該第1の共振部を180°折り返した当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、該第1の共振部及び該第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含み、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器に結合させた入力端子と、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器に結合させた出力端子とを備え、
上記2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる帯域通過フィルタ。
【数5】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項11】
上記2個以上の伝送線路共振器は、3個以上の伝送線路共振器からなり、
上記3個以上の伝送線路共振器のうちの任意の1つの伝送線路共振器と任意の他の1つの伝送線路共振器とを互いに結合させた請求項10記載の帯域通過フィルタ。
【請求項12】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、該第1の共振部及び該第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器を含み、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの1つの伝送線路共振器の2つの上記容量性素子それぞれに結合された第1及び第2の入力端子と、
上記2個以上の伝送線路共振器のうちの他の1つの伝送線路共振器の2つの上記容量性素子それぞれに結合された第1及び第2の出力端子とを備え、
上記2個以上の伝送線路共振器のそれぞれの上記容量性素子を略平行に所定の距離離間して隣接するように配置してなるバランス型フィルタ。
【数6】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項13】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、該第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として該第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、該第1の共振部及び該第2の共振部は、それぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たす伝送線路共振器と、
上記第1の伝送線路に結合された、上記伝送線路共振の共振周波数を不平衡出力するための第1の出力端子と、
上記第1の共振部及び上記第2の共振部にそれぞれ結合されて、逆相の信号により発振する2個の発振部と、
上記2個の発振部の2つの同相信号出力を合成する同相合成器と、
上記共振周波数の偶数次高調波信号を出力する出力端子とを備えるプッシュ−プッシュ発振器。
【数7】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)
【請求項14】
第1の線路長及び第1の線路インピーダンスを有する第1の伝送線路と、該第1の伝送線路の一端に一方の端が接続された、第2の線路長及び該第1の線路インピーダンスよりも大きい第2の線路インピーダンスを有する第2の伝送線路と、該第2の伝送線路の他方の端と短絡接地部との間に接続された容量性素子とからなる当該伝送線路共振器の第1の共振部と、該第1の伝送線路の他端を線対称の対称軸として該第1の共振部を180°折り返した、当該伝送線路共振器の第2の共振部とを備え、該第1の共振部及び該第2の共振部がそれぞれの第1の伝送線路の他端同士を線対称となるように接続され、以下の式を満たし、同一の共振周波数を有する2個以上の伝送線路共振器をそれぞれ所定の距離離間して相互に隣接するように配置して結合させてなる2個以上の帯域通過フィルタを含み、
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの入力を結合させた入力端子と、
上記2個以上の帯域通過フィルタのそれぞれの上記入力端子を有する伝送線路共振器以外の伝送線路共振器に結合された出力端子とを備え、
上記2個以上の帯域通過フィルタは、それぞれ異なる通過帯域を有する分波器。
【数8】

(ただし、Bは上記容量性素子のサセプタンスの値であり、Zは、上記第1の線路インピーダンス、θは、上記第1の線路長、Zは、上記第2の線路インピーダンス、θは、上記第2の線路長である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−227793(P2012−227793A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94480(P2011−94480)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】