説明

伝送装置及びネットワークシステム

【課題】TDMデータをパケット化し伝送するネットワークシステムにおいて、パケットネットワーク上で発生する遅延変動を吸収するために、伝送装置内に具備した遅延変動吸収バッファにユーザデータを格納している時間を最適化し、エンド・ツー・エンドでの遅延時間によるリソースの過剰消費を抑止する。
【解決手段】伝送装置1は、TDMネットワーク7から受信したTDMフレームをパケット化してパケットネットワーク8へ送信し、また、パケットネットワーク8から受信したパケット信号をTDM化して前記TDMネットワークへ送信するものであり、パケットネットワーク上の伝送遅延時間を測定する手段106〜108、113と、測定した遅延時間から遅延変動時間を算出する手段109と、算出した遅延変動時間に基づいて、パケットネットワーク8から受信した信号をTDM化してTDMネットワークに送信するまでの時間を制御する手段112とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置及びネットワークシステムに係り、特に、TDM信号をパケット化してパケットネットワークに送出し、パケット化されたTDM信号をパケットネットワークから受信し、情報したパケット信号を元のTDM信号としてTDMネットワークに出力する伝送装置及びその伝送装置を用いたネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークのパケット化が進展しており、これに伴って、従来、PDH、SDH等の時分割多重(TDM)技術により、常時線路またはチャネルリソースを占有してデータの転送を行っていた通信キャリアバックボーン(通信事業者が使用する基幹回線)についても、サーキットエミュレーション技術(CEP技術)を使用し、TDM信号をパケット化して伝送するパケットネットワーク化の動きが広がってきている。
【0003】
一般に、TDMネットワークは、ネットワーク内のすべての装置が、単一のクロックソースから生成されるクロックを基準として、ネットワークの同期化が図られている。一方、パケットネットワークは、ネットワークの輻輳や経路の変化によりデータの遅延が発生する。このため、TDM信号をパケット化してパケットネットワークに伝送し、パケットネットワークから受信したパケットを分解してTDMデータを得て、そのTDMデータをTDMネットワークへ送信する際、パケットネットワークで発生した遅延時間の変動を吸収して、TDMネットワークへ送信する必要があり、伝送装置内に遅延変動を吸収する遅延変動吸収バッファを備えることが必要となる。そして、遅延変動吸収バッファにTDMデータが格納されている時間は、伝送装置に接続された外部制御端末等から固定的設定され、この時間が、ネットワーク上の遅延時間としてそのまま加算されることになる。
【0004】
なお、前述したようなTDM信号をパケット化して伝送し、パケットネットワークから受信したパケットを分解してTDMデータを得て、そのTDMデータをTDMネットワークへ送信する伝送装置及び遅延変動吸収に関する従来技術として、例えば、特許文献1、2等に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−192830号公報
【特許文献2】特開平8−274763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術は、遅延変動を吸収する遅延変動吸収バッファにユーザデータが格納されている時間が固定的に決められているため、エンド・ツー・エンドでネットワーク及び伝送装置等のリソースを長時間にわたって占有してしまい、リソースを過剰に消費している場合があるという問題点を生じさせている。
【0007】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、TDMデータをパケット化し伝送するネットワークシステムにおいて、パケットネットワーク上で発生する遅延変動を吸収するために、伝送装置内に具備した遅延変動吸収バッファにユーザデータを格納している時間を最適化し、エンド・ツー・エンドでの遅延時間によるリソースの過剰消費を抑止することができる伝送装置及びネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば前記目的は、TDMネットワークから受信したTDMフレームをパケット化してパケットネットワークへ送信し、また、前記パケットネットワークから受信した信号をTDM化して前記TDMネットワークへ送信する伝送装置において、前記パケットネットワーク上の伝送遅延時間を測定する手段と、前記測定した遅延時間から遅延変動時間を算出する手段と、前記算出した遅延変動時間に基づいて、前記パケットネットワークから受信した信号をTDM化してTDMネットワークに送信するまでの時間を制御する手段とを備えることにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンド・ツー・エンドでの遅延時間によるリソースの過剰消費を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による伝送装置を使用しTDMフレームをパケット化して伝送するネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】パケットネットワーク上に送信されるTDM over パケット信号の詳細な構造を示す図である。
【図4】遅延変動吸収バッファの構成例を示すブロック図である。
【図5】遅延変動時間算出部の構成例を示すブロック図である。
【図6】バッファ格納時間算出部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による伝送装置及びネットワークシステムの実施形態を図面により詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明による伝送装置を使用しTDMフレームをパケット化して伝送するネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すネットワークシステムは、TDMネットワーク7から受信したTDMフレーム3をTDM over パケット信号であるパケット4、パケット5のようなパケット形状にカプセル化してパケットネットワーク8に送信する伝送装置A1と、パケットネットワーク8を介して伝送装置A1と対向し、パケットネットワーク8から受信したTDM over パケット信号であるパケット4、パケット5をTDM信号6にデパケット化してTDMネットワーク9に送信する伝送装置B2とにより構成される。そして、伝送装置B2は、パケットネットワーク8から受信したTDM over パケット信号であるパケット4、パケット5のパケット信号をTDMフレーム6に分解する際に、網同期クロックが必要であり、そのため、外部参照クロック10をクロック供給装置11から受信することができるように構成されている。
【0014】
図1に示すTDMフレーム3に含まれるデータa〜dのそれぞれは、TDMネットワーク多重化されて送信されてくる複数のチャネルのデータであり、図示の例では125μs の仲に収容されている。また、これらのデータa〜dがパケット化されたTDM over パケット信号の各パケットには、複数のデータが任意の順で格納されたものとなっている。
【0015】
図2は本発明の一実施形態による伝送装置の構成例を示すブロック図であり、図1に示す伝送装置A1の構成を示している。この伝送装置A1は、TDMネットワークから受信したTDMフレーム3をパケット化してパケットネットワーク8に送信すると共に、パケットネットワーク8から受信したパケットをTDMフレーム化し、かつ、パケットネットワーク8上での遅延時間を計測する構成を備えた装置の例である。
【0016】
伝送装置A1は、図2に示すように、TDM受信インタフェース部101と、遅延測定用フレーム挿入部102と、パケット組立部103と、パケット送信インタフェース104と、装置内基準クロック105と、遅延測定用フレーム生成部106と、遅延時間測定管理部107と、遅延時間測定用カウンタ108と、遅延変動時間算出部109と、バッファ格納時間算出部110と、TDM送信インタフェース111と、遅延変動吸収バッファ112と、遅延測定用フレーム抽出部113と、パケット分解部114と、パケット受信インタフェース115とが図1に示すように相互に接続されて構成されている。
【0017】
前述において、TDM受信インタフェース部101は、TDMネットワーク7から入力されたTDMフレームを受信・同期化し、遅延測定フレーム挿入部102へ出力する。遅延測定用フレーム挿入部102は、TDM受信インタフェース部101から入力されたTDMフレームが、アイドル信号のフレームであるかユーザ信号のフレームであるかを識別し、アイドル信号のフレームであると識別した場合に、アイドル信号のフレームの代りに、遅延測定用フレーム生成部106で生成された遅延測定用フレームに入れ替えてパケット組立部103に出力する。パケット組立部103は、遅延測定用フレーム挿入部102から入力された遅延測定用フレームであるTDMフレームをパケット化してパケット送信インタフェース部104へ出力する。パケット送信インタフェース部104は、パケット組立部103から入力されたパケットをパケットネットワーク8へ出力する。
【0018】
一方、パケット受信インタフェース115は、パケットネットワーク8から入力されたパケットを受信・同期化し、パケット分解部114へ出力する。パケット分解部114は、パケット受信インタフェース115から入力されたパケットをTDMフレームに分解し、分解したTDMフレームを遅延測定用フレーム抽出部113へ出力する。遅延測定用フレーム抽出部113は、パケット分解部114から入力されたTDMフレームが、遅延測定用のフレームであるかユーザ信号のフレームであるかを識別し、ユーザ信号のフレームであると識別した場合、そのユーザフレームを遅延変動吸収バッファ112に入力し、また、遅延測定用のフレームであると識別した場合に、その遅延測定用のフレームの代りにアイドル信号のフレームに入れ替えて、遅延変動吸収バッファ112に入力する。遅延変動吸収バッファ112は、遅延測定用フレーム抽出部113から入力されたTDMフレームを自バッファ内に格納し、自バッファ内に格納したTDMフレームを予め定められた一定時間毎に読み出して、TDM送信インタフェース部111へ出力する。TDM送信インタフェース部111は、遅延変動吸収バッファ112から入力されたTDMフレームをTDMネットワーク8へ出力する。
【0019】
次に、遅延測定機能を実現している、遅延測定用フレーム挿入部102と、遅延測定用フレーム生成部106と、遅延測定用フレーム抽出部113と、遅延時間測定管理部107と、遅延時間測定カウンタ108と、遅延変動時間算出部109と、バッファ格納時間算出部110と、装置内基準クロック105とについて説明する。
【0020】
遅延時間測定管理部107は、遅延測定用フレーム生成部106及び遅延測定用フレーム抽出部113に対して、遅延測定開始命令を送信する。この遅延測定開始命令は、伝送装置A1の運用が開始されたときに1度だけ送信すればよい。遅延測定用フレーム生成部106は、遅延時間測定管理部107から、遅延測定開始命令を受信すると、遅延測定用フレームを生成し、生成した遅延測定用フレームを遅延測定用フレーム挿入部102に送信する。遅延測定用フレーム挿入部102は、識別したアイドル信号のフレームの代りに、遅延測定用フレーム生成部106で生成された遅延測定用フレームに入れ替えてパケット組立部103に出力すると共に、遅延時間測定管理部107に遅延測定用フレームを送信したことを通知する。遅延時間測定管理部107は、この通知を受けると、遅延測定用カウンタ108に、カウント開始命令を送信する。遅延測定用フレーム挿入部102で挿入され、パケット組立部103、パケット送信インタフェース部104を介してパケットネットワーク8に送信された遅延測定用フレームは、伝送装置B2で検出されると、そのまま、パケットネットワーク8に戻されてくる。
【0021】
一方、遅延測定用フレーム抽出部113は、遅延時間測定管理部107から遅延測定開始命令を受信すると、パケット分解部114から入力されたTDMフレームを監視し、遅延測定用フレーム生成部106で生成された遅延測定用フレームに一致したTDMフレームを検出した場合に、遅延時間測定管理部107に、遅延測定用フレーム受信通知を出力する。遅延時間測定管理部107は、遅延測定用フレーム抽出部113から遅延測定用フレーム受信通知を受信すると、遅延測定用カウンタ108にカンウト停止命令を送信する。
【0022】
前述したように、遅延測定用カウンタ108は、遅延時間測定管理部107からカウント開始命令を受信するとカウントを開始し、カウント停止命令を受信するまでカウントを続ける。このときのカウント時間がパケットネットワークでの遅延時間となる。ここで、遅延測定用カウンタ108のカウント単位は、装置内基準クロック105のクロック単位である。
【0023】
なお、遅延変動時間算出部109及びバッファ格納時間算出部110の構成と動作については、図5、図6を参照して後述する。
【0024】
前述したような遅延測定機能の具体的な例については、先行特許文献として挙げた特許文献1、特許文献2等に詳述されており、これらの例では、遅延測定用フレームに使用するフレームには、PRBSパターンが用いられている。
【0025】
前述では、伝送装置A1の構成と動作とについて説明したが、伝送装置B2についても同様に構成することができる。
【0026】
図3はパケットネットワーク上に送信されるTDM over パケット信号の詳細な構造を示す図である。なお、本発明の実施形態では、パケットのプロトコルとして、MPLSを例に挙げ、MPLSフレームとして、ラベルを二段スタックするMartini と呼ばれる形式を例として説明する。また、TDM信号のMPLSフレーム(パケット)化にあたっては、IETF RFC5086に規定される標準を参照する。
【0027】
図3に示すように、TDM信号をMPLSフレーム化したパケット4またはパケット5は、14ByteのMACヘッダ201、4ByteのトンネルLSP 202、4ByteのVC LSP203、4ByteのCESoPSN 204、ペイロード205、パディング206、4ByteのFCS 207の順に各データ領域を結合して構成される。そして、CESoPSN 204は、10bit の制御情報211、6bit のフレーム長212、16bit のシーケンス番号213からなる。また、図3に示す例では、64kbit/sの伝送速度を持つTDMフレームを8フレーム分まとめてパケット化する(125μs×8フレーム=1ms周期でパケット化する)場合の例を示している。このため、図3に示す例では、ペイロード205は、1st TDMフレーム221、2nd TDMフレーム222、3rd TDMフレーム223、4th TDMフレーム224、5th TDMフレーム225、6th TDMフレーム226、7th TDMフレーム227、8th TDMフレーム228、4bit のシグナリング情報転送用ニブルであるSIG 229、及び、4bit のパディング230からなる。前述のペイロード205内の1つのTDMフレームは、図1に示して説明したTDMフレームのデータa〜d内の1チャネルのデータである。
【0028】
64kbit/s以上の速度のTDMフレームの信号をカプセル化する場合、1st TDMフレーム221から8th TDMフレーム228内のTDMフレーム数が、TDMフレームの速度に応じて増加することになる。また、フレーム化周期に応じてペイロード205に収容されるTDMフレーム数が増減する。パディング206は、パディング206を除くデータ長が64Byte以上となった場合に、0Byteとなり、64Byte未満となった場合、不足分がパディング長となる。
【0029】
図3に示すパケットの構造は、パケットネットワーク上に送信されるTDM over パケット信号の構造であるとして説明したが、前述した遅延測定用フレームをパケット化したものも同様な構造を持ったパケットでよい。すなわち、遅延測定用の信号のパケットは、MACヘッダ201によるアドレス部と、トンネルLSP 202、VC LSP203、CESoPSN 204による遅延測定用であることを示すラベル部と、CESoPSN 204の制御情報211による制御部と、ペイロード部205と、パディング部206と、フレームチェック部207とから構成される。また、前述のペイロード部205は、パケット化するTDMフレームに対応した信号格納領域から構成され、その中に疑似ランダムビットシーケンスを格納して構成される。
【0030】
図4は遅延変動吸収バッファ112の構成例を示すブロック図である。
【0031】
遅延変動吸収バッファ112は、TDMデータを格納するデータ領域300と、格納されたTDMデータのそれぞれに割り当てられるアドレスを格納するアドレス番号領域310とにより構成される。そして、図3の下側のアドレス番号1 311 が遅延変動吸収バッファ112の下限アドレスであり、上側のアドレス番号N 314 が遅延変動吸収バッファ111の上限アドレスである。
【0032】
まず、遅延変動吸収バッファ112への書き込み動作について説明する。遅延変動吸収バッファ112に書き込まれるデータは、パケットネットワークから受信したパケットを分解して得られたTDMデータであり、図1に示して説明したTDMフレーム3のデータa〜dに相当するものである。そして、パケットネットワークでの輻輳や経路の変化により、書き込まれる時間の間隔は、一定ではなく揺らぎが生じている。遅延測定用フレーム抽出部113から入力されたTDMデータは、バッファの下限であるアドレス番号1 311 に割り当てられたデータ領域から順に、上限値であるアドレス番号N 315 に割り当てられたデータ領域に向かって、空きデータ領域にTDMデータa〜TDMデータmとして格納される。
【0033】
次に、遅延変動吸収バッファ112からの読み出し動作について説明する。遅延変動吸収バッファ112に書き込まれたTDMデータが、アドレス番号n 314 に割り当てられたデータ領域まで格納されると、バッファの下限であるアドレス番号1 311 に割り当てられたデータ領域に格納されたTDMデータa 301 が読み出され、TDM送信インタフェース部111へ出力される。これと同時に、アドレス番号2 312 に割り当てられたデータ領域より上方に格納されていた全てのTDMデータのアドレス番号がデクリメントされ、全TDMデータのそれぞれは、バッファの下限であるアドレス番号1 311 の方向へシフトさせられる。これによって、アドレス番号1 312 に割り当てられたデータ領域に格納されていたTDMデータb 302 は、バッファの下限であるアドレス番号1 311 に割り当てられたデータ領域に格納され、次のタイミングで読み出される対象データとなる。一旦、TDMデータの読み出しが開始されると、TDMネットワークの速度に対応した時間間隔で、遅延変動吸収バッファ112に格納されているデータが空になるまで、データの読み出しが続けられる。
【0034】
ここで、遅延変動吸収バッファ112からのTDMデータの読み出しの時間間隔と、アドレス番号n 314 との積が、パケットネットワークで発生した遅延変動を吸収できる時間となる。
【0035】
以下に、吸収することができる遅延変動時間について、例を挙げて説明する。例えば、64kbit/sの伝送速度を持つTDMネットワークは、8bit のTDMデータを1周期125μs で通信するため、遅延変動吸収バッファ112のデータ領域幅が8bit の場合、遅延変動吸収バッファ112の読み出しの時間間隔が125μs となる。アドレス番号n 314 を、例えば、16(バッファの下限であるアドレス1 311 から上方に向かって順に数えて、16個目)とすると、2ms(=読み出し周期:125μs ×格納アドレス領域16個分)のパケットネットワークで生じたデータの遅延変動時間を吸収することができる。このアドレス番号n 314 は、遅延変動時間算出部109で自動制御される。
【0036】
図5は遅延変動時間算出部109の構成例を示すブロック図である。
【0037】
遅延変動時間算出部109は、遅延測定用カウンタ107で計測した遅延測定用フレームの遅延時間を格納する遅延時間情報テーブル410と、遅延時間情報テーブル410内に隣り合って格納された遅延時間情報を減算する複数の減算器A420〜減算器M422と、減算結果を格納する遅延変動時間情報テーブル430と、遅延変動時間情報テーブル430に格納された遅延変動時間情報から、遅延変動時間の最大値を検出する遅延変動最大時間検出部440とにより構成される。
【0038】
次に、前述したように構成される遅延変動時間算出部109の動作を説明する。遅延測定用フレームは、TDM信号がアイドルの場合に、次々にパケットネットワーク8に送出されて戻されてくるので、遅延測定用カウンタ108により測定された遅延時間の情報も、次々に遅延時間情報テーブル410に入力され、遅延時間データa415から順に、遅延時間データn411に向けて格納される。遅延時間情報テーブル410に格納できる遅延時間情報の個数は、任意に設定することが可能であり、このテーブルが満杯になると、古い遅延時間データから順に捨てられシフトされていく。このため、遅延時間情報テーブル410には、常に最新のn個の遅延時間情報が格納されていることになる。
【0039】
遅延時間情報テーブル410に格納された遅延時間データa415と隣り合った遅延時間データb414とは、減算器A420により減算され、減算結果が、遅延変動時間情報テーブル430に遅延変動時間データa-b 433として格納される。また、遅延時間データb414と遅延時間データc413とは、減算器B421により減算され、減算結果が、遅延変動時間情報テーブル430に遅延変動時間データb-c 432として格納される。このような減算は、遅延時間情報テーブル410に格納された遅延時間データの全てについて行われ、遅延変動時間情報テーブル430に減算結果が遅延変動時間データとして格納される。最大遅延変動時間検出部440は、遅延変動時間情報テーブル430を検索し、遅延変動時間の最大値A441を検出する。この最大値A441は、遅延時間情報テーブルに新しい遅延時間データが格納される毎に更新されて、バッファ格納時間算出部110に入力される。
【0040】
図6はバッファ格納時間算出部110の構成例を示すブロック図である。
【0041】
バッファ格納時間算出部110は、バッファ読み出し周期値情報テーブル451と、除算器B453と、整数部抽出部454と、+1加算器455とから構成される。バッファ読み出し周期値情報テーブル451には、遅延変動吸収バッファ112の読み出しの時間間隔であるバッファ読み出し周期値B452が格納されている。このバッファ読み出し周期値B452は、予めシステムの運用管理者等により設定された値である。
【0042】
次に、前述のように構成されるバッファ格納時間算出部110の動作を説明する。遅延変動時間算出部109により算出されて入力された最大値A441は、除算器B453において、バッファ読み出し周期値情報テーブル451に格納されているバッファ読み出し周期値B452で除算され、整数部抽出部454に入力される。整数部抽出部454は、除算器B453で除算された値の整数部のみを抽出し、整数部を+1加算器455へ入力する。+1加算器455は、整数部抽出部454から入力された値を、インクリメントする。+1加算器455から出力された値が、遅延変動吸収バッファ112の読み出しを開始するアドレスn 314 のアドレス番号となる。すなわち、遅延変動吸収バッファ112は、TDMデータがアドレスn 314まで格納されると、アドレス1のTDMデータから順に読み出されていく。
【0043】
次に、前述したバッファ格納時間算出部110の機能について、具体的な測定例を挙げて説明する。いま、遅延変動時間算出部の最大遅延変動時間検出が検出した最大値A441が、480μsであったものとする。この場合、遅延変動吸収バッファ112は、480μs以上の遅延変動を吸収するだけのバッファ容量を持てばよい。そして、遅延変動吸収バッファ112に格納されているデータを125μs間隔で読み出すものとした場合、遅延変動吸収バッファ112に格納される時間は125μsの倍数となるため、最大値A441の値480μsより大きく、かつ、125μsの倍数の最小値である500μsであればよいことになる。よって、アドレスn 314 のアドレス番号は4となる。
【0044】
前述したように、本発明の実施形態によれば、遅延測定用フレームの遅延測定時間から、パケットネットワーク上で発生する遅延変動時間を算出し、その算出結果から遅延変動吸収バッファの読の出しを開始するための書き込みアドレス番号を制御することができ、パケットネットワーク上で発生する遅延変動時間を吸収するための遅延変動吸収バッファで生じる遅延時間を最適化することができる。これにより、エンド・ツー・エンド間での遅延時間によるリソースの過剰消費抑止することができ、また、ユーザデータをバッファに格納している時間を短縮できた場合に、それにより生じたリソースを同一経路の別の遅延要因の遅延時間に割り当てることにより、より高機能なネットワークシステムを実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 伝送装置A
2 伝送装置B
3、6 TDMフレーム
4、5 パケット
7、9 TDMネットワーク
8 パケットネットワーク
11 クロック供給装置
101 TDM受信インタフェース部
102 遅延測定用フレーム挿入部
103 パケット組立部
104 パケット送信インタフェース
105 装置内基準クロック
106 遅延測定用フレーム生成部
107 遅延時間測定管理部
108 遅延測定用カウンタ
109 遅延変動時間算出部
110 バッファ格納時間算出部
111 TDM送信インタフェース
112 遅延変動吸収バッファ
113 遅延測定用フレーム抽出部
114 パケット分解部
115 パケット受信インタフェース
300 データ領域
301〜304 TDMデータa〜n
310 アドレス番号領域
311〜315 アドレス番号1〜N
410 遅延時間情報テーブル
420〜422 減算器A〜M
430 遅延変動時間情報テーブル
440 最大遅延変動時間検出部
441 最大値A
451 バッファ読出し周期値情報テーブル
452 バッファ読出し周期値B
453 割算器B
454 整数部抽出部
455 +1加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDMネットワークから受信したTDMフレームをパケット化してパケットネットワークへ送信し、また、前記パケットネットワークから受信したパケット信号をTDM化して前記TDMネットワークへ送信する伝送装置において、
前記パケットネットワーク上の伝送遅延時間を測定する手段と、前記測定した遅延時間から遅延変動時間を算出する手段と、前記算出した遅延変動時間に基づいて、前記パケットネットワークから受信した信号をTDM化してTDMネットワークに送信するまでの時間を制御する手段とを備えることを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記パケットネットワーク上の伝送遅延時間を測定する手段は、遅延測定用の信号を生成する手段と、前記生成した遅延測定用の信号を前記パケットネットワークへ送信する信号に挿入する手段と、前記パケットネットワークから受信した信号から前記遅延測定用の信号を抽出する手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
前記遅延測定用の信号は、アドレス部、ラベル部、制御部、ペイロード部、パディング部及びフレームチェック部から構成されることを特徴とする請求項2記載の伝送装置。
【請求項4】
前記遅延測定用信号の前記ペイロード部は、パケット化する前記TDMフレームに対応した信号格納領域であり、前記ペイロード部内に疑似ランダムビットシーケンスを格納することを特徴とする請求項3記載の伝送装置。
【請求項5】
前記測定した遅延時間から遅延変動時間を算出する手段は、測定された遅延時間を記憶する手段と、前記記憶した遅延時間から遅延変動時間を算出する手段とにより構成されることを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項6】
前記測定した遅延時間を記憶する手段は、複数の測定値を格納するテーブルであり、
前記記憶した遅延時間より遅延変動時間を算出する手段は、前記測定値の格納テーブルの隣接する格納テーブル内の格納値の差分を演算する手段と、その結果である遅延変動時間を格納するテーブルと、前記遅延変動時間を格納するテーブルの中の最大値を算出する手段とから構成されることを特徴とする請求項5記載の伝送装置。
【請求項7】
前記パケットネットワークから受信した信号をTDM化してTDMネットワークに送信するまでの時間を制御する手段は、パケットネットワーク上で発生したユーザデータの遅延変動時間を吸収するための遅延変動吸収バッファと、前記遅延変動バッファでの格納時間を算出する手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項8】
前記バッファでの格納時間を算出する手段は、予め定められた前記バッファの読み出し周期を格納する手段と、前記遅延変動時間を算出する手段により求められた遅延変動時間を前記予め定められた読み出し周期により除算した後に小数点以下を切り上げることにより前記バッファの読み出し周期を算出する手段とを備え、前記算出したバッファの読み出し周期により、前記遅延変動吸収バッファの読み出し開始時に格納されているべきTDM化したデータの数を示すアドレスを制御することを特徴とする請求項7記載の伝送装置。
【請求項9】
TDMネットワークから受信したTDMフレームをパケット化してパケットネットワークへ送信し、また、前記パケットネットワークから受信した信号をTDM化して前記TDMネットワークへ送信するネットワークシステムにおいて、
TDMネットワークとパケットネットワークとの間、及び、パケットネットワークとTDMネットワークとの間に伝送装置を備え、
これらの伝送装置として、請求項1ないし8のうちいずれか1記載の伝送装置を使用することを特徴とするネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−165318(P2012−165318A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25993(P2011−25993)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】