説明

伝送装置

【課題】抵抗回路部における抵抗値のバラツキを抑制可能な伝送装置を提供する。
【解決手段】抵抗回路部2は、可変抵抗VRを含む。一例として、可変抵抗VRは、外部からの設定に応じて、抵抗体に沿って移動する可動片を有し、その可動片の位置に応じて抵抗値を変化させることで、外部からの設定に応じた抵抗値を実現する。さらに、抵抗回路部2は、可変抵抗VRと並列に接続されたインダクタL1およびキャパシタC1を含み、並列共振回路を構成する。この並列共振回路の共振周波数を接地電流のパルス周波数と略一致させることで、直流における抵抗回路部2のインピーダンスに比較し、接地電流のパルス周波数における抵抗回路部2のインピーダンスが大きくなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は直流電位が印加された伝送路に電位変化を与えて信号伝送を行なう伝送装置に関し、特に電位変化を生じさせるための抵抗値のバラツキを抑制する伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、比較的短い距離の装置間における信号伝送を実現する手段として、直流電位を印加した伝送路において、送信側が送信信号に応じた電位変化を与え、受信側がその電位変化を検出することで、当該送信信号を受信する伝送装置が知られている。
【0003】
このような伝送装置の適用例として、衛星放送用の受信アンテナを構成する受信信号コンバータ(LNB:Low Noise Block converter;以下、単にLNBとも称す)と、LNBから出力された受信信号から映像信号を生成するセットトップボックス(STB:Set Top Box;以下、単にSTBとも称す)との間の切換信号の伝送などに用いられている。なお、STBは、レシーバとも称される。
【0004】
衛星放送は、地上放送などと異なり、極めて高い周波数の電波を用いて放送が行なわれため、受信アンテナで受信された電波がそのまま同軸ケーブルなどの導体中を伝搬すると、その減衰量は非常に大きくなる。そこで、受信アンテナで受信される電波は、LNBにより所望のチャンネル毎に導体中の伝搬に適した受信信号に変換され、STBへ送られる。このとき、上述のような構成により、所望のチャンネルの選択や感度などのさまざまな切換信号がSTBからLNBへ伝送される。
【0005】
さらに、特開2004−260656号公報(特許文献1)には、複数のLNBと複数のSTBとの間の切換信号の伝送を実現するためのスイッチボックスが開示されている。
【特許文献1】特開2004−260656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような伝送装置においては、送信側が送信信号に応じて、伝送路から接地電位への電流経路を形成することで、直流印加部から接地電位へ接地電流が流される。このとき、直流印加部と伝送路との間に配置される抵抗回路部にその接地電流が流れ、抵抗回路部に電圧降下が生じる。すると、伝送路の電位は、直流印加部の印加電位から電圧降下分だけ低下する。このように与えられる電位変化に基づいて、受信信号が伝送される。
【0007】
したがって、抵抗回路部で生じる電圧降下は、受信信号の品質に直接的に影響するため、抵抗回路部の抵抗値は、規定値または規定範囲となるように製造する必要がある。しかしながら、抵抗回路部の抵抗値は、比較的小さな値であり、製造過程におけるバラツキが大きい。そのため、伝送装置毎に抵抗回路部で生じる電圧降下が互いに異なり、伝送品質が劣化するという問題があった。
【0008】
また、構成を簡素化するため、送信信号に加えて、伝送路を介して受けた電流から制御回路などの駆動電源を生成することもできる。しかしながら、このような構成を採用する場合には、伝送路における電位変化の影響を受け、駆動電源が不安定になるといった問題があった。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、抵抗回路部における抵抗値のバラツキを抑制可能な伝送装置を提供することである。
【0010】
また、この発明の別の目的は、伝送路を介して電流を受け、安定した駆動電源を生成する伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従う伝送装置は、抵抗を含む抵抗回路部と、抵抗回路部を介して、伝送路に所定の直流電位を印加する直流印加部と、伝送路の一端と接地電位との間に接続されるスイッチ部と、外部から受けた送信信号に応じて、スイッチ部をオン・オフし、直流印加部から接地電位へ流れる接地電流を断続させる制御部と、伝送路の他端と接続され、接地電流が抵抗回路部を通過することで生じる電圧降下による伝送路の電位変化を検出し、検出した伝送路の電位変化に基づいて受信信号を生成する信号検出部とを備える。そして、抵抗回路部は、外部からの設定に従い、自身の抵抗値を調整できるように構成される。
【0012】
好ましくは、抵抗回路部は、互いに並列に接続される複数の抵抗と、複数の抵抗の各々と直列に接続されるトランジスタとを含む。そして、制御部は、外部からの設定に応じた抵抗値を生じるように、所定の数の抵抗とそれぞれ直列に接続されるトランジスタをオンさせる。
【0013】
好ましくは、抵抗回路部は、抵抗とそれぞれ並列に接続されるインダクタおよびキャパシタをさらに含み、インダクタおよびキャパシタは、直流に対する抵抗回路部のインピーダンスに比較し、接地電流の断続周波数に対する抵抗回路部のインピーダンスが大きくなるように、選定される。
【0014】
好ましくは、インダクタは、被覆を有さないコイルからなる。
好ましくは、伝送装置は、伝送路を介して電流を受け、信号検出部の駆動電源を生成する電源生成部をさらに備える。そして、信号検出部は、さらに、伝送路の電位変化が生じているか否かを判定し、電源生成部は、信号検出部における判定結果に基づいて、接地電流の断続に起因するノイズの侵入を抑制する。
【0015】
好ましくは、電源生成部は、伝送路と接続され、直流に対するインピーダンスに比較し、接地電流の断続周波数に対して大きいインピーダンスを有する抑制回路部と、抑制回路部と並列に接続され、信号検出部からの判定結果に応じて、オン・オフするバイパス回路部とを含む。
【0016】
好ましくは、バイパス回路部は、信号検出部からの判定結果をゲートに受けるバイパストランジスタと、バイパストランジスタと直列に接続され、伝送路を介して受ける電流値を制限する制限抵抗とを含む。
【0017】
また、この発明に従う伝送装置は、抵抗を含む抵抗回路部と、抵抗回路部を介して、伝送路に所定の直流電位を印加する直流印加部と、伝送路の一端と接地電位との間に接続されるスイッチ部と、外部から受けた送信信号に応じて、スイッチ部をオン・オフし、直流印加部から接地電位へ流れる接地電流を断続させる制御部と、伝送路の他端と接続され、接地電流が抵抗回路部を通過することで生じる電圧降下による伝送路の電位変化を検出し、検出した伝送路の電位変化に基づいて受信信号を生成する信号検出部と、伝送路を介して電流を受け、信号検出部の駆動電源を生成する電源生成部とを備える。そして、信号検出部は、伝送路の電位変化が生じているか否かを判定し、電源生成部は、信号検出部における判定結果に基づいて、接地電流の断続に起因するノイズの侵入を抑制する。
【発明の効果】
【0018】
この発明に従う伝送装置によれば、抵抗回路部が外部からの設定に従い、自身の抵抗値を調整できるように構成されるため、抵抗回路部における抵抗値のバラツキを抑制可能な伝送装置を実現できる。
【0019】
また、この発明に従う伝送装置によれば、信号検出部が伝送路の電位変化が生じているか否かを判定し、電源生成部が信号検出部における判定結果に基づいて、接地電流の断続に起因するノイズの侵入を抑制するので、伝送路を介して電流を受け、安定した駆動電源を生成する伝送装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う伝送装置100の概略構成図である。
【0022】
図1を参照して、伝送装置100は、伝送路8と、直流印加部4と、抵抗回路部2と、スイッチ部SWと、調整抵抗raと、制御部6と、信号検出部10とからなる。
【0023】
直流印加部4は、所定の一定電圧を発生する電圧源からなり、抵抗回路部2を介して、伝送路8の一端と接続される。
【0024】
抵抗回路部2は、直流印加部4と伝送路8との間に配置され、直流印加部4から伝送路8へ供給される電流値と自身の抵抗値との積に応じた電圧降下を生じる。そして、抵抗回路部2は、外部からの設定を受けて、抵抗値を変化させる可変抵抗を含む。
【0025】
スイッチ部SWは、伝送路8の一端と接地電位GNDとの間に接続され、制御部6からの指令に応じてオン・オフする。そして、スイッチ部SWのオン・オフに伴い、パルス状の接地電流Iaが伝送路8から接地電位GNDへ流れる。一例として、スイッチ部SWは、バイポーラトランジスタで構成される。さらに、スイッチ部SWと接地電位GNDとの間には、接地電流Iaの値を調整するための調整抵抗raが接続される。
【0026】
制御部6は、外部から送信信号を受け、その送信信号に応じて、スイッチ部SWをオン・オフさせるための指令を与える。なお、制御部6からスイッチ部SWへ与える指令は、接地電流Iaの断続周波数、すなわちパルス周波数が一定となるような指令であることが望ましい。そこで、制御部6は、一例として、外部から受けた送信信号をパルス密度変調(PDM:Pulse Density Modulation)により、時間軸上におけるパルスの粗密に変調する。具体的には、制御部6は、一定のパルス幅をもつパルスの存在する期間を「Hレベル」、それ以外の期間を「Lレベル」とみなし、「Hレベル」と「Lレベル」との時間間隔の比率の変化として送信信号を表す。
【0027】
信号検出部10は、伝送路8の他端と接続され、接地電流Iaにより生じる伝送路8の電位変化を検出し、その検出した電位変化を受信信号に復調して出力する。
【0028】
なお、接地電流Iaが遮断される期間の伝送路8の電位は、直流印加部4の電位にほぼ等しく、接地電流Iaが生じる期間の伝送路8の電位は、直流印加部4の電位から抵抗回路部2で生じる電圧降下だけ低下した値となる。したがって、伝送路8の電位変化の振幅幅(変化幅)は、抵抗回路部2と接地電流Iaとの積に一致する。
【0029】
一例として、直流印加部4の直流電位として接地電位GNDに対して15V〜18V、抵抗回路部2の抵抗値として15Ω、および接地電流Iaとして40mAがそれぞれ設定される。この場合において、接地電流Iaの断続に応じた伝送路の電位変化は、600mV(=15Ω×40mA)となる。
【0030】
ここで、接地電流Iaは、直流印加部4の接地電位GNDに対する電圧値と、抵抗回路部2、調整抵抗raおよびスイッチ部SWの合計抵抗値とに応じて決まるが、調整抵抗raの抵抗値は、抵抗回路部2およびスイッチ部SWの抵抗値に比較して十分大きいので、接地電流Iaは、調整抵抗raの抵抗値によりほぼ決定され、抵抗回路部2の抵抗値のバラツキによる接地電流Iaのバラツキへの影響は小さい。しかしながら、抵抗回路部2の電圧降下は、接地電流Iaと抵抗値との積で決定されるため、抵抗回路部2の抵抗値のバラツキは、伝送信号の品質へ直接影響する。したがって、伝送過程におけるエラーを抑制し、伝送信号の品質を向上させるために、抵抗回路部2は外部からの設定に従い、自身の抵抗値を基準値に調整する。具体的には、伝送装置100の製造過程において、製造者または製造装置が抵抗回路部2の抵抗値を測定しながら、基準値となるように抵抗回路部2へ設定を与える。
【0031】
図2は、抵抗回路部2の概略構成図である。
図2を参照して、抵抗回路部2は、可変抵抗VRを含む。一例として、可変抵抗VRは、外部からの設定に応じて、抵抗体に沿って移動する可動片を有し、その可動片の位置に応じて抵抗値を変化させる。そして、抵抗回路部2は、外部からの設定に従い、所望の抵抗値を実現する。
【0032】
さらに、抵抗回路部2は、可変抵抗VRと並列に接続されたインダクタL1およびキャパシタC1を含み、並列共振回路を構成する。そして、このインダクタL1とキャパシタC1とからなる並列共振回路の共振周波数を接地電流Iaのパルス周波数と略一致させることで、直流における抵抗回路部2のインピーダンスに比較し、接地電流Iaのパルス周波数における抵抗回路部2のインピーダンスが大きくなるように構成される。
【0033】
すなわち、接地電流Iaが遮断されている期間においては、直流印加部4から伝送路8へ供給される電流には直流成分だけが含まれるため、抵抗回路部2におけるインピーダンスが小さくなり、抵抗回路部2における電圧降下、すなわち電力損失が抑制され、かつ、伝送路8の直流電位が安定する。一方、接地電流Iaが生じる期間においては、直流印加部4から伝送路8へ供給される電流にはパルス周波数成分が含まれるため、インダクタL1とキャパシタC1とからなる並列共振回路のインピーダンスが極めて大きくなり、接地電流Iaは可変抵抗VRを流れて、基準の電圧降下量、すなわち伝送路8において基準の電位変化が生じる。
【0034】
一例として、制御部6がパルス周波数を22kHzとする指令を与える場合には、インダクタL1およびキャパシタC1は、それぞれ820μH、0.068μFに設定することができる。
【0035】
ところで、共振時のインピーダンスを大きくするためには、インダクタンスの大きなインダクタを用いることが望ましい。しかしながら、インダクタンスを大きくするためには、ターン数の多いコイルから構成されるインダクタを用いる必要があり、インダクタが大型化し、多くの空間を占有するという問題が生じる。そこで、大きなインダクタンスを実現しつつ、インダクタの小型化を実現するために、被覆を有さないコイルからなるインダクタを用いることが望ましい。
【0036】
図3は、インダクタの外形図である。
図3(a)は、コイルに被覆を有する汎用的なインダクタである。
【0037】
図3(b)は、コイルに被覆を有さない、この発明の実施の形態1に従う伝送装置100に用いられるインダクタである。
【0038】
図3(a)を参照して、汎用的なインダクタは、フェライトなどの強磁性体からなるコア34と、コア34に対して巻回される素線36と、他の回路素子と接続されるリード線32と、リード線32とコア34とを絶縁を維持したまま連結する接着剤38と、コア34および素線36の全体を覆う被覆部30とからなる。
【0039】
汎用的なインダクタは、さまざまな用途に使用されることを考慮して、他の回路素子との電気的な接触の防止や取扱性を向上させるため、コイルに被覆が施される。しかしながら、コイルに施される被覆の分だけインダクタが大型化するため、予め所定の回路に実装することを目的としてコア34などを設計することで、被覆を省略することができる。
【0040】
図3(b)を参照して、この発明の実施の形態1に従う伝送装置100に用いられるインダクタは、図3(a)に示す汎用的なインダクタから被覆部30を省略したものである。このように、被覆部30を省略することで、インダクタの大幅な小型化を実現できる。一例として、約30%程度の容積の小型化を実現できる。
【0041】
(変形例)
上述のように、この発明の実施の形態1においては、可変抵抗VRを用いて抵抗回路部2の抵抗値を変化させる構成について説明したが、可変抵抗VRに代えて、複数の固定抵抗を選択的に接続することで、抵抗値を変化させることもできる。
【0042】
この発明の実施の形態1の変形例に従う伝送装置は、図1に示すこの発明の実施の形態1に従う伝送装置100において、抵抗回路部2および制御部6をそれぞれ抵抗回路部3および制御部7に代えたものである。
【0043】
図4は、この発明の実施の形態1の変形例に従う伝送装置の要部を示す図である。
図4を参照して、この発明の実施の形態1の変形例に従う抵抗回路部3は、互いに並列に接続された抵抗R1,R2,・・・,Rnと、抵抗R1,R2,・・・,Rnの各々と直列に接続されたトランジスタTR1,TR2,・・・,TRnとを含む。さらに、抵抗回路部3は、抵抗R1,R2,・・・,Rnと並列に接続されるインダクタL1およびキャパシタC1を含む。また、トランジスタTR1,TR2,・・・,TRnの各々は、制御部7からゲートに与えられる活性化指令に応じて、オン(導通状態)またはオフ(遮断状態)となる。したがって、トランジスタTR1,TR2,・・・,TRnのうち、オンとなるトランジスタと直列に接続される抵抗のみが電気的に接続される。
【0044】
制御部7は、外部から設定を受け、抵抗回路部3がその設定に応じた抵抗値を有するように、抵抗R1,R2,・・・,Rnのうち1または2以上の抵抗を選定し、その選定した抵抗と対応するトランジスタに対して活性化指令を与える。このようにして、制御部7は、外部からの設定値に従い、抵抗回路部3の抵抗値を調整する。
【0045】
一例として、抵抗R1,R2,・・・,Rnを、Rs/2,Rs/2,Rs/2,・・・,Rs/2n−1(Rs:設計抵抗)のように等比級数的に選択すると、一定比率の調整幅を実現できる。具体的には、(1)トランジスタTR1だけがオンの場合:Rs、(2)トランジスタTR2だけがオンの場合:Rs/2、(3)トランジスタTR1およびTR2がオンの場合:Rs/3、のように抵抗回路部3の抵抗値が変化する。したがって、抵抗回路部3は、一定比率の調整幅をもって抵抗値を調整することができる。
【0046】
この発明の実施の形態1の変形例に従う伝送装置においては、機械的な可動機構を有する可変抵抗を用いる場合に比較して、電気的な信号で抵抗値を調整できるので、可動機構部の経年劣化による抵抗値の変化などが生じにくく、調整後の抵抗値をより長期に維持することができる。
【0047】
なお、この発明の実施の形態1の変形例に従う制御部7では、任意のタイミングで抵抗回路部3の抵抗値を調整することも可能であるが、主として製造過程における抵抗値のバラツキの抑制を目的としているので、使用過程における使用者(ユーザ)による抵抗値の調整を禁止するような機能を追加してもよい。
【0048】
また、この発明の実施の形態1の変形例に従う抵抗回路部3および制御部7は、以下に詳述する他の実施の形態2および3についても同様に適用が可能である。
【0049】
この発明の実施の形態1によれば、抵抗回路部が外部からの設定に従い、自身の抵抗値を調整できるように構成されるため、製造過程などにおける抵抗回路部における抵抗値のバラツキを抑制することができる。よって、伝送過程におけるエラーを抑制し、伝送信号の品質を向上させた伝送装置を実現できる。
【0050】
また、この発明の実施の形態1によれば、抵抗回路部が接地電流のパルス周波数と略一致する共振周波数をもつ並列共振回路を含むので、抵抗回路部は、接地電流が流れない期間においては、低インピーダンスの抵抗回路部を介して、直流電位を伝送路に与え、かつ、接地電流が流れる期間においては、基準値に調整された抵抗を介して接地電流を伝送路に与える。よって、送信信号の非伝送期間においては、伝送路の電位を安定化させ、かつ、送信信号の伝送期間においては、伝送路に基準の電位変化を生じさせる伝送装置を実現できる。
【0051】
[実施の形態2]
上述の実施の形態1においては、伝送路を介して送信信号のみを伝送する構成について説明した。一方、実施の形態2においては、送信信号に加えて、送信側の駆動電源を供給する構成について説明する。
【0052】
図5は、この発明の実施の形態2に従う伝送装置102の概略構成図である。
図5を参照して、伝送装置102は、図1に示すこの発明の実施の形態1に従う伝送装置100において、電源生成部12を加え、信号検出部10を信号検出部11に代えたものである。
【0053】
信号検出部11は、電源生成部12から供給される駆動電源に基づいて動作する。そして、信号検出部11は、伝送路8の他端と接続され、伝送路8に電位変化が生じているか否かを判定し、その判定結果を電源生成部12へ出力する。具体的には、信号検出部11は、伝送路8に接地電流Iaに伴うパルス周波数の電位変化が生じている期間において、「Lレベル」の判定結果を出力し、伝送路8が一定の電位を維持している期間において、「Hレベル」の判定結果を出力する。その他については、この発明の実施の形態1に従う信号検出部10と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0054】
電源生成部12は、伝送路8の他端に接続され、伝送路8を介して直流印加部4から電流を受け、信号検出部11を駆動させるための駆動電源を生成する。さらに、電源生成部12は、信号検出部11から受けた判定結果に応じて、インピーダンスを変化させ、伝送路8からのノイズの侵入を抑制する。すなわち、電源生成部12は、伝送路8から進入するノイズにより信号検出部11へ与える駆動電源にリップルなどの変動が生じるのを回避する。
【0055】
この発明の実施の形態2に従う伝送装置102のその他の点については、この発明の実施の形態1に従う伝送装置100と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0056】
図6は、この発明の実施の形態2に従う電源生成部12の概略構成図である。
図6を参照して、この発明の実施の形態2に従う電源生成部12は、DC/DC変換部24と、互いに並列に接続された抑制回路部22およびバイパス回路部20とからなる。
【0057】
DC/DC変換部24は、主としてバイパス回路部20を介して伝送路8から受けた直流電流をスイッチングなどにより所定の電圧をもつ駆動電源に変換する。
【0058】
抑制回路部22は、互いに並列に接続されたインダクタL2およびキャパシタC2の並列共振回路であり、その共振周波数が接地電流Iaのパルス周波数と略一致するように構成される。すなわち、抑制回路部22は、接地電流のパルス周波数に対するインピーダンスを極めて大きくすることで、伝送路8を介して供給される接地電流Iaに起因するノイズがDC/DC変換部24へ侵入するのを抑制する。
【0059】
なお、一例として、パルス周波数が22kHzである場合には、インダクタL2およびキャパシタC2は、それぞれ820μH、0.068μFに設定することができる。
【0060】
一方、インダクタL2を構成するコイルは、現実には直流に対して抵抗値を有するので、抑制回路部22においては、伝送路8から供給される直流電流によりインダクタL2において抵抗損失が生じる。そこで、電源生成部12は、バイパス回路部20を用いて、抑制回路部22で生じる抵抗損失を抑制しつつ、伝送路8から受けた直流電流をDC/DC変換部24へ与える。
【0061】
すなわち、バイパス回路部20は、抑制回路部22と並列に接続されたバイパストランジスタBTRを含み、図示しない信号検出部11から受けた判定結果に応じて、電気的な接続をオン・オフし、伝送路8から受けた直流電流の伝搬経路を切換える。上述したように、信号検出部11は、伝送路8からの電流がノイズ成分を含む期間において、「Lレベル」の判定結果を出力するので、バイパストランジスタBTRはオフとなり、伝送路8から侵入するノイズ成分は抑制回路部22で遮断される。一方、信号検出部11は、伝送路8からの電流がノイズ成分を含まない期間において、「Hレベル」の判定結果を出力するので、バイパストランジスタBTRはオンとなり、伝送路8から受ける電流はバイパストランジスタBTRを介してDC/DC変換部24へ供給される。
【0062】
上述のように、信号検出部11は、伝送路8にノイズ成分が生じているか否かを判定し、電源生成部12は、信号検出部11からの判定結果を受け、伝送路8にノイズ成分が生じていない期間だけ、電流を受けて駆動電源を生成する。したがって、電源生成部12は、伝送路8で生じるノイズ成分の影響を受けることなく、いわゆる「クリーン」な駆動電源を信号検出部11へ供給することができる。
【0063】
(変形例)
上述のように、この発明の実施の形態2においては、バイパストランジスタBTRのみで構成されるバイパス回路部20について説明したが、バイパストランジスタBTRがオンした瞬間に生じる突入電流を制限するための制限抵抗をさらに配置してもよい。
【0064】
図7は、この発明の実施の形態2の変形例に従う伝送装置の要部を示す図である。
図7を参照して、この発明の実施の形態2の変形例に従う電源生成部13は、図6に示す電源生成部12において、バイパストランジスタBTRと直列に制限抵抗rbを接続したものである。上述したように、バイパストランジスタBTRは、図示しない信号検出部11からの判定結果に応じてオン・オフするため、それに伴い電源生成部13のインピーダンスは大きく変化する。そのため、伝送路8から流入する電流値も大きく変動する。特に、バイパストランジスタBTRがオンした瞬間には、伝送路8から突入電流が流入するため、バイパストランジスタBTRに対するダメージなども懸念される。そこで、制限抵抗rbは、バイパストランジスタBTRと直列に接続され、バイパストランジスタBTRに流入する突入電流を制限する。
【0065】
このように、バイパストランジスタBTRと直列に制限抵抗rbを接続することで、バイパストランジスタBTRに生じるダメージを減少させ、製品寿命を大幅に延ばすことが可能となる。
【0066】
なお、この発明の実施の形態2およびこの発明の実施の形態2の変形例においても、図3(b)に示すようなインダクタを用いてもよく、この発明の実施の形態1と同様に、インダクタの小型化を実現できる。
【0067】
この発明の実施の形態2によれば、信号検出部が伝送路の電位変化が生じているか否か、すなわち伝送路にノイズ成分が含まれているか否かを判定し、その判定結果を電源生成部へ与える。電源生成部は、信号検出部から受けた判定結果に基づいてバイパス回路部をオン・オフさせ、伝送路から侵入するノイズを抑制回路部で遮断する。よって、接地電流の断続に起因して生じる伝送路のノイズに関わらず、安定した駆動電源の供給を実現できる。
【0068】
[実施の形態3]
上述のこの発明の実施の形態1および2においては、送信側から受信側へ一方向にのみ信号伝送を行なう構成について説明した。一方、この発明の実施の形態3においては、双方向に信号伝送を行なう構成について説明する。
【0069】
図8は、この発明の実施の形態3に従う伝送装置104の概略構成図である。
図8を参照して、伝送装置104は、伝送路8と、直流印加部4と、抵抗回路部2と、制御部6a,6bと、信号検出部10a,10bと、スイッチ部SW1,SW2と、調整抵抗raとからなる。
【0070】
伝送路8と、直流印加部4と、抵抗回路部2とは、上述のこの発明の実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0071】
制御部6a,6bと、信号検出部10a,10bと、スイッチ部SW1,SW2と、調整抵抗raは、伝送路8の両端側に対称となるように配置される。そして、制御部6a,6bは、それぞれ外部から受けた送信信号に応じて、スイッチ部SW1,SW2をオン・オフさせるための指令を与える。また、制御部6a,6bは、それぞれ信号検出部10a,10bが復調した受信信号を受け、外部へ出力する。その他については、この発明の実施の形態1に従う制御部6と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0072】
信号検出部10a,10bは、それぞれ伝送路8と接続され、接地電流Ia2,Ia1により生じる伝送路8の電位変化を検出し、その検出した電位変化を受信信号に復調して制御部6a,6bへ出力する。その他については、この発明の実施の形態1に従う信号検出部10と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0073】
スイッチ部SW1,SW2は、それぞれ伝送路8と接地電位GNDとの間に接続され、制御部6a,6bからの指令に応じてオン・オフする。そして、スイッチ部SW1,SW2のオン・オフに伴い、それぞれパルス状の接地電流Ia1,Ia2が伝送路8から接地電位GNDへ流れる。その他については、この発明の実施の形態1に従うスイッチ部SWおよび調整抵抗raと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0074】
上述したように、送信信号を伝送する場合には、制御部6a,6bは、それぞれスイッチ部SW1,SW2をオン・オフさせ、接地電流Ia1,Ia2を接地電位GNDへ流し、伝送路8の電位を変化させる。また、信号検出部10a,10bは、それぞれ接地電流Ia2,Ia1により生じた伝送路8の電位変化を検出する。
【0075】
なお、伝送路8の抵抗値は、調整抵抗raおよび抵抗回路部2の抵抗値に比較して小さいため、接地電流Ia2による伝送路8における電圧降下は無視できる。したがって、電流印加部4との間の距離にかかわらず、信号検出部10aおよび10bにおいて検出される電位はほぼ等しい。そのため、抵抗回路部2における抵抗値のバラツキを抑制することで、伝送信号の品質を向上させることができる。
【0076】
この発明の実施の形態3によれば、上述の実施の形態1および2における効果に加えて、双方向の信号伝送が可能となるので、一方の装置から他方の装置への一方的な指令の信号送信に加えて、その指令に対する応答などを他方の装置から送り返すこともでき、より広い用途に用いることのできる伝送装置を実現できる。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の実施の形態1に従う伝送装置の概略構成図である。
【図2】抵抗回路部の概略構成図である。
【図3】インダクタの外形図である。
【図4】この発明の実施の形態1の変形例に従う伝送装置の要部を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に従う伝送装置の概略構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2に従う電源生成部の概略構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2の変形例に従う伝送装置の要部を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態3に従う伝送装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0079】
2,3 抵抗回路部、4 直流印加部、6,6a,6b,7 制御部、8 伝送路、10,10a,10b,11 信号検出部、12,13 電源生成部、20,21 バイパス回路部、22 抑制回路部、24 DC/DC変換部、30 被覆部、32 リード線、34 コア、36 素線、38 接着剤、100,102,104 伝送装置、BTR バイパストランジスタ、C1,C2 キャパシタ、GND 接地電位、Ia,Ia1,Ia2 接地電流、L1,L2 インダクタ、R1,R2,・・・,Rn 抵抗、ra 調整抵抗、rb 制限抵抗、SW,SW1,SW2 スイッチ部、TR1,TR2,・・・,TRn トランジスタ、VR 可変抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗を含む抵抗回路部と、
前記抵抗回路部を介して、伝送路に所定の直流電位を印加する直流印加部と、
前記伝送路の一端と接地電位との間に接続されるスイッチ部と、
外部から受けた送信信号に応じて、前記スイッチ部をオン・オフし、前記直流印加部から前記接地電位へ流れる接地電流を断続させる制御部と、
前記伝送路の他端と接続され、前記接地電流が前記抵抗回路部を通過することで生じる電圧降下による前記伝送路の電位変化を検出し、検出した前記伝送路の電位変化に基づいて受信信号を生成する信号検出部とを備え、
前記抵抗回路部は、外部からの設定に従い、自身の抵抗値を調整できるように構成される、伝送装置。
【請求項2】
前記抵抗回路部は、
互いに並列に接続される複数の抵抗と、
前記複数の抵抗の各々と直列に接続されるトランジスタとを含み、
前記制御部は、前記外部からの設定に応じた抵抗値を生じるように、所定の数の抵抗とそれぞれ直列に接続されるトランジスタをオンさせる、請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記抵抗回路部は、抵抗とそれぞれ並列に接続されるインダクタおよびキャパシタをさらに含み、
前記インダクタおよび前記キャパシタは、直流に対する前記抵抗回路部のインピーダンスに比較し、前記接地電流の断続周波数に対する前記抵抗回路部のインピーダンスが大きくなるように、選定される、請求項1または2に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記インダクタは、被覆を有さないコイルからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項5】
前記伝送路を介して電流を受け、前記信号検出部の駆動電源を生成する電源生成部をさらに備え、
前記信号検出部は、さらに、前記伝送路の電位変化が生じているか否かを判定し、
前記電源生成部は、前記信号検出部における判定結果に基づいて、前記接地電流の断続に起因するノイズの侵入を抑制する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項6】
前記電源生成部は、
前記伝送路と接続され、直流に対するインピーダンスに比較し、前記接地電流の断続周波数に対して大きいインピーダンスを有する抑制回路部と、
前記抑制回路部と並列に接続され、前記信号検出部からの判定結果に応じて、オン・オフするバイパス回路部とを含む、請求項5に記載の伝送装置。
【請求項7】
前記バイパス回路部は、
前記信号検出部からの判定結果をゲートに受けるバイパストランジスタと、
前記バイパストランジスタと直列に接続され、前記伝送路を介して受ける電流値を制限する制限抵抗とを含む、請求項6に記載の伝送装置。
【請求項8】
抵抗を含む抵抗回路部と、
前記抵抗回路部を介して、伝送路に所定の直流電位を印加する直流印加部と、
前記伝送路の一端と接地電位との間に接続されるスイッチ部と、
外部から受けた送信信号に応じて、前記スイッチ部をオン・オフし、前記直流印加部から前記接地電位へ流れる接地電流を断続させる制御部と、
前記伝送路の他端と接続され、前記接地電流が前記抵抗回路部を通過することで生じる電圧降下による前記伝送路の電位変化を検出し、検出した前記伝送路の電位変化に基づいて受信信号を生成する信号検出部と、
前記伝送路を介して電流を受け、前記信号検出部の駆動電源を生成する電源生成部とを備え、
前記信号検出部は、前記伝送路の電位変化が生じているか否かを判定し、
前記電源生成部は、前記信号検出部における判定結果に基づいて、前記接地電流の断続に起因するノイズの侵入を抑制する、伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−116353(P2007−116353A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304544(P2005−304544)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】