説明

伝達装置

【課題】交互回転運動を直線往復運動に変換するための装置に関し、往復運動は、一定の周期と力で実行されなければならないが、これらの要件に適合できる装置はかさばる上、摩擦損も大きい。
【解決手段】交互回転要素2と、回転要素に接続された直線往復要素3と、直線往復要素に接続され、第1の固定されたピボット点5を有する第1のピボット要素4と、第1のピボット要素に接続され、ボール部材7を備える第2のピボット要素6と、第2のピボット要素に接続され、第2の固定されたピボット点9を有する第3のピボット要素8とを備え、回転要素の交互回転運動Aをボール部材の実質的な往復運動Bに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの交互回転運動を回転接続によって蘇生装置における往復運動に変換するように配置される伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
また、本発明は、上記伝達装置を組み込んだ胸部圧迫装置と、グライディング接続ではなく回転接続によって電気エネルギーを往復運動に変換するためのシステムとを備える。
【0003】
一部の蘇生装置は、患者の胸部に往復力を加える手段を備える。これらの装置は、普通、往復運動を実行するピストン部材と、ピストン部材を駆動機構に機械的に接続するための電圧システムとを備える。往復運動は、一定の周期と力、すなわち、1〜3Hzの範囲内の周波数と0〜600Nの範囲内の力で実行されなければならない。これらの値は、調整システム、精度、機械的応力の操作などに関する要件を満たす。これらの要件に適合することができる装置を備える従来の伝達システムは極めてかさばる。その上、力の伝達に関連する摩擦損がかなり大きいため、上記伝達システムの効果は満足がいくものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回転運動を直線往復運動に変換するための装置を提供する。この装置は、交互回転要素と、回転要素に接続された直線往復要素と、直線往復要素に接続され、第1の固定されたピボット点を有する第1のピボット要素と、第1のピボット要素に接続され、ボール部材を備える第2のピボット要素と、第2のピボット要素に接続され、第2の固定されたピボット点を有する第3のピボット要素とを備え、伝達システムは、回転要素の回転運動をボール部材の実質的な往復運動に変換する装置を備える。
【0005】
交互回転要素は、例えば、電気モータ、油圧システムまたは任意の他の起動機構からシステムに回転エネルギーを入力する。ボール部材は、圧迫部材によって患者に伝達可能な往復運動を提供する。交互回転要素は、一方向(患者の胸部に圧力を加えるボール部材が下降する方向)に回転する間にトルク伝達方式でモータに接続でき、逆の方向に回転するときにモータから分離することができる。この場合、もう一方向の回転は、ばね戻り機構によって達成することができる。交互回転要素は、また、両方向に回転する間にトルク伝達方式でモータに接続できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態では、回転要素は、螺旋ねじを備え、この形態の変形例では、螺旋ボールねじである。
【0007】
本発明の一形態では、直線往復要素は、ねじ山を備える環状部分を備え、この形態の変形例では、ねじ山は螺旋ねじ山である。本発明の他の形態では、直線往復要素は、第1のピボット要素に回転接続するための接続要素を備える2つのアームを備える。ここで、「回転」という用語は、直線往復要素に関連する点を中心とする第1のピボット要素の制限された回転を可能にする接続と解釈するものとする。「制限された回転」または「回転」という表現は、本明細書では、360度未満の角運動または角揺動と解釈されなければならない。
【0008】
本発明の一形態では、第1のピボット要素は、レバーの一方の端部で直線往復要素に接続する接続要素と、レバーの反対側端部で第2のピボット要素に接続する接続要素と、第1のピボット要素の第1の固定されたピボット点において軸に接続する接続要素とを備える2つの平行なL字形のレバーを備える。本発明の一形態では、レバーは、ウェブによって相互に接続されている。
【0009】
本発明の一形態では、第2のピボット要素は、U字形の2叉フォークを備え、該フォークの2つの叉は、第1のピボット要素に回転接続するための接続要素を備える。この形態の変形例では、2つの叉は長さが異なり、最長の叉は、第3のピボット要素に回転接続するための接続要素を備える。2つの叉を接続する要素の部分は、モータの回転運動の結果としての実質的な往復運動を実行するボール部材を備える。
【0010】
第3のピボット要素は、1つのアームを備えることができ、上記アームは、一方の端部に第2のピボット要素に回転接続するための接続要素を備え、他方の端部に第3のピボット要素の第2の固定されたピボット点において軸に回転接続するための接続要素を備える。
【0011】
また、本発明は、上記伝達装置と、交互回転要素に接続された低慣性モータと、患者に圧迫を加える圧迫部材とを備える胸部圧迫装置を備える。低慣性モータは、損失が小さく、その結果、高効率の胸部圧迫装置が提供されるので有利である。
【0012】
また、本発明は、電気エネルギーを往復運動に変換するように配置されるシステムを備え、システムは、上記低慣性モータと、伝達装置とを備える。
【0013】
圧迫部材は、例えば、板、丸い形状の物体、または吸着カップなどである。
【0014】
本明細書では、さまざまな形態に属する本発明のさまざまな特徴を説明してきた。当業者には明らかなように、以下の例示的実施形態に記載するように、これらの全部または一部は1つの形態に組み合わせることができる。
【0015】
本発明の伝達装置は、体積が減少し、それ故、ポータブル装置に容易に組み込むことができる。また、当然、規定装置に組み込むことが可能である。この装置は、さらに、大半の構成要素に応力を満足に分配し、その結果、装置の高い信頼性および長い耐久性を有する。
【0016】
本発明の装置は、摺動動作ではなくほぼ回転(または角運動)によって力の伝達を実行する。この伝達によって、摩擦力が低減するので効率が向上する。この装置は、大幅な損失なしに垂直の力を吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を、添付の図面に示されている例示的実施形態により詳細に説明する。
【0018】
図1は、ボール部材が下部位置にある本発明の一実施形態の斜視図である。この図は、交互回転要素2と、回転要素2に接続された直線往復要素3と、直線往復要素3に接続され、第1の固定されたピボット点5を有する第1のピボット要素4と、第1のピボット要素4に接続され、ボール部材7を備える第2のピボット要素6と、第2のピボット要素6に接続され、第2の固定されたピボット点9を有する第3のピボット要素8とを備える伝達装置1であって、伝達システム1は、回転要素2の交互回転運動(矢印A)をボール部材7の実質的な往復運動(矢印B)に変換する。
【0019】
図に示す本発明の実施形態では、回転要素2は、螺旋ボールねじ10を備える。このボールねじの目的は、交互回転要素2と直線往復要素3との間に低摩擦接続を提供することである。直線往復要素は、ボールねじ10に接続するための低摩擦ボール(図示せず)を含む対応する内部のねじ部を備える。図示する本発明の実施形態では、回転要素3と往復要素3との間にギア接続19が提供される。ギア接続の目的は、摩擦力、それ故、磨耗および損失を低減することである。
【0020】
図に示すように、直線往復要素3は、2つのアーム20を備える。アーム20は、一方の端部に往復要素3の内部のねじ部への回転接続を備える。アーム20とボルト11の開口部によって実施されるこの接続によって制限された揺動運動が可能になる。
【0021】
第1のピボット要素4に接続するための接続部を備える直線往復要素3のねじ部への接続の反対側の端部にアーム20が提供され、上記接続によって直線往復要素3に関する第1のピボット要素4の回転が可能になる。往復要素3の接続部とそれに対応する第1のピボット要素4の接続部とは、回転可能な継ぎ手(角運動を可能にする)を提供する。上記接続部は、直線往復要素3と第1のピボット要素4の開口部として実施される。また、継ぎ手は、上記開口部に配置されたボルト12を備える。ボルト12は、要素3または要素4に組み込むか、または独立の構成要素であってもよい。
【0022】
以下に詳述するように、交互回転要素2が一方向に回転すると、往復要素3は、一方向にほぼ直線的に動き(アーム20のわずかな回転を備える)、ボルト12で同じ方向に回転継ぎ手を押し付ける。これによって、第1のピボット要素4は、第1の固定されたピボット点5を中心にピボットする。
【0023】
本発明のこの実施形態では、第1のピボット要素4は、第2のピボット要素6に接続するための接続部を備える2つの平行なL字形のレバーを備え、第2のピボット要素6に関連する第1のピボット要素4の回転を可能にする。上記接続部は、第1および第2のピボット要素(それぞれ4および6)の開口部として実施される。継ぎ手は、また、ボルト14(要素4および要素6の一方に組み込むことができるか、または独立の構成要素であってもよい)を備えることができる。レバー13は、また、第1のピボット要素4の第1の固定ピボット要素5を提供するボルト15に接続するための接続部(この場合は、開口部の形の)を備える。レバー13は、ウェブ15によって相互に接続される。
【0024】
本発明の一実施形態では、第2のピボット要素6は、U字形の2叉フォークを備え、該フォークの2つの叉16、17は、第1のピボット要素4に接続するための開口部の形の接続部を備える。この実施形態の変形例では、2つの叉は長さが異なり、最長の叉16は、第3の要素8の対応する部分に回転接続するための接続部を備える。これらの接続部は、第3のピボット要素8の開口部18として概略が示されており、第2のピボット要素6の(または独立の部分としての)開口部またはボルトを備えることができる。また、2つの叉16および17は同じ長さを有することができ、叉17はこの場合それぞれのアームに接続される。2つの叉16、17を接続する第2のピボット要素のこの部分は、回転要素2の交互運動の結果としての実質的な往復運動を実行するボール部材7を備える。
【0025】
使用中、ボルト12によって実施される回転接続が一方向にほぼ直線的に動くと、第1のピボット要素4は、固定点5を中心に回転し、ボルト14によって実施される接続を変位させる。
【0026】
図に示す本発明の実施形態では、第3のピボット要素8は、一方の端部に第2のピボット要素6に接続するための接続部(開口部18)を備え、他方の端部に第3のピボット要素8の第2の固定されたピボット点9を提供するボルト(図示せず)に接続するための、この場合は、開口部として示されている、接続部を備える1つのアームを備える。2つのアームを備える第3のピボット要素8を実施することもできる。
【0027】
変位動作時に、ボルト14は、叉脚部16によって開口部18まで移送される。第3のピボット要素は、固定点9を中心に回転し、それによってボール部材7の実質的な直線運動が引き起こされる。
【0028】
図2〜図6は、運動中のさまざまな段階の伝達装置を示す。
【0029】
図2は、ボール部材が中間位置にある段階の伝達装置の斜視図である。回転要素2は、図1に示す位置に関して回転し、往復要素3は、図中左方向に移動している。したがって、アーム20は、左方に移動し、要素4は、第1の固定点5を中心に回転し、ボール部材7を備える第2のピボット要素6を持ち上げている。第2のピボット要素6は、第3のピボット要素8によってその回転が制限される。
【0030】
図8は、交互回転要素2から最も遠い位置にある往復要素3を示す。アーム20は、水平方向からわずかに傾いた位置に示されている。これは、内部のねじ部(ボルト11)へのアームの回転接続によって可能になっている。第1のピボット要素4の一方の端部は、最も高い位置に達し、ボール部材7を備える第2のピボット要素6も同様である。第3のピボット要素3の一方の端部も最も高い位置に達している。
【0031】
この後、回転要素は、反対方向に回転を始め、反対方向に前述の各工程が繰り返される。また、回転要素2のみがボール部材の上部位置(図3)から下部位置(図2および図1)への運動を提供するためのモータに接続され、逆の運動がモータから分離された第2の回転要素によるばね戻り機構(図示せず)によって実行されるように本発明を実施することも可能である。
【0032】
上記伝達装置は、心肺蘇生法(「CPR」)用の胸部圧迫装置に使用できる。胸部圧迫装置100の一例を図7に示す。胸部圧迫装置100は、横板10上に装着された信号プロセッサ104と電源120とを含む。また、胸部圧迫装置100は、ピストン111と、モータ112と、本発明の実施形態のいずれかによる伝達装置などの伝達機構119とを含む。伝達機構119は、モータ112からのエネルギーをピストン111に伝達する。モータ112は、例えば、リチウムイオン化学型バッテリーのようなバッテリー113と、ブースト電子回路114から構成される電源120から受電する。電源120は、救急車、病院、またはバッテリーあるいはコンデンサのような外部電力蓄積装置の電源、または他の任意の利用可能な電源装置に接続するための装置であってもよい。電力アダプタ/コンバータを用いて電源からの電力を異なる電圧、周波数などの異なる特徴/特性に変換してもよい。
【0033】
ピストン111は、伝達機構119を介してモータ112によって駆動され、上下に往復し、患者の胸部を交互に圧迫し、圧迫解除する。ブースト電子回路は、高エネルギーの短パルスをモータ112の電力入力部に提供する。
【0034】
信号プロセッサ114は、所定の特性、および/または測定装置113のような測定装置によって測定された特性に基づいて胸部圧迫装置の動作を制御する。例えば、制御信号は、患者の測定された胸部の高さ/深さ、患者の年齢、ECG測定値などの患者の特性に基づくことができる。このように、蘇生システムは、特定の患者専用に特別に適合したパルス・パターンを使用することができる。胸部圧迫装置100の起動を制御する信号プロセッサ114によって提供される制御信号は、開始/停止信号、および/または圧迫の深さ/力/周期などを制御する信号などのモータ112の制御信号であってもよい。
【0035】
以上、本明細書で説明のために本発明の特定の実施形態について記述してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明をさまざまに変更することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ボール部材が最も低い位置にある本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】ボール部材が中間位置にある本発明の一実施形態の斜視図である。
【図3】ボール部材が最も高い位置にある本発明の一実施形態の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の側面図であり、図1に対応する。
【図5】本発明の一実施形態の側面図であり、図2に対応する。
【図6】本発明の一実施形態の側面図であり、図3に対応する。
【図7】本発明の種々の実施形態による伝達装置を用いた胸部圧迫装置の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互回転運動(A)を直線往復運動(B)に変換するように配置される装置(1)であって、交互回転要素(2)と、前記回転要素(2)に接続された直線往復要素(3)と、前記直線往復要素(3)に接続され、第1の固定されたピボット点(5)を有する第1のピボット要素(4)と、前記第1のピボット要素(4)に接続され、ボール部材(7)を備える第2のピボット要素(6)と、前記第2のピボット要素(6)に接続され、第2の固定されたピボット点(9)を有する第3のピボット要素(8)とを備え、前記回転要素(2)の交互回転運動(A)を前記ボール部材(7)の実質的な往復運動(B)に変換する装置(1)。
【請求項2】
回転による力の伝達を行うための要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転要素(2)が螺旋ねじを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記直線往復要素(3)が、前記第1のピボット要素(4)に回転接続するための接続要素を備える2つのアーム(20)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のピボット要素(4)が、レバー(13)の一方の端部で直線往復要素(3)に接続するための接続要素と、前記レバー(13)の反対側端部で前記第2のピボット要素(6)に接続するための接続要素と、前記第1のピボット要素(4)の第1の固定されたピボット点(5)において軸(15)に接続するための接続要素とを備える2つの平行なL字形のレバー(13)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
レバー(13)が、ウェブ(15)によって相互に接続される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のピボット要素(6)が、U字形の2叉フォークを備え、該フォークの2つの叉(16,17)が、前記第1のピボット要素(4)に回転接続するための接続要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記2つの叉(16,17)が長さが異なり、最長の叉(16)が前記第3のピボット要素(8)に回転接続するための接続要素を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記2つの叉(16,17)を接続する前記第2のピボット要素(6)の部分が、ボール部材(7)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第3のピボット要素(8)が、一方の端部に前記第2のピボット要素(6)に回転接続するための接続要素を備え、他方の端部に前記第3のピボット要素(8)の第2の固定されたピボット点(9)において軸に回転接続するための接続要素を備える1つのアームを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記請求項1乃至10のいずれかに記載の装置と、前記交互回転要素に接続された低慣性モータと、患者に圧迫を加える圧迫部材とを備える胸部圧迫装置。
【請求項12】
前記圧迫部材が、板、丸い形状の物体、または吸着カップであることを特徴とする、請求項11に記載の胸部圧迫装置。
【請求項13】
電気エネルギーを往復運動に変換するように配置されるシステムであって、低慣性モータと、前記請求項1乃至10のいずれかに記載の装置とを備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−138866(P2008−138866A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−274874(P2007−274874)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(507154664)レルダル メディカル アクティーゼルスカブ (13)
【Fターム(参考)】