説明

伸縮手摺装置

【課題】 第1および第2手摺組立て体の変形および破損を防止して、各建物間の相対変位を許容することができる信頼性の向上された伸縮手摺装置を提供する。
【解決手段】 第1手摺組立て体25の上弦材27と下弦材28とに案内レール部60,61を一体的に形成し、第2手摺組立て体26の上弦材31と下弦材32とにレール案内溝62,63を形成し、各レール案内溝62,63に各案内レール部60,61が移動自在に嵌合させ、第1および第2手摺組立て体25,26を伸縮可能に連結する。各案内レール部60,61を上弦材27および下弦材28に一体的に形成することによって、各案内レール部60,61に各レール案内溝62,63から作用する力を上弦材27の広い範囲に分散して、部材に発生する応力を減少させ、部材の変形および破損を抑制し、各建物A,B間の前後方向Xおよび近接/離反方向Yの相対変位の吸収に対する信頼性を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2つの建物間に設けられる伸縮継手構造の渡り通路の手摺として好適に実施することができる伸縮手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の技術の伸縮手摺装置1を示す鉛直断面図であり、この従来の技術はたとえば特許文献1に記載されている。隣接する2つの建物間で相互の通行を可能とするため、各建物は渡り通路によって接続されている。この渡り通路には、通行者の転落および物体の落下を防ぐため、目地カバー体2の図9の紙面に垂直な通行方向に向かって左右両側部には、伸縮手摺装置1が設けられている。
【0003】
前記伸縮手摺装置1は、通路の内側(図9の右側)に配置され、一方の建物に図示しないヒンジによって鉛直軸線まわりに回動自在に連結される第1手摺組立て体3と、この第1手摺組立て体3よりも外側(図9の左側)に隣接して配置され、他方の建物に図示しないヒンジによって鉛直軸線まわりに回動自在に連結される第2手摺組立て体4とを有する。
【0004】
第1手摺組立て体3は、第1上弦材5の長手方向両端部と、第1下弦材6の長手方向両端部とが、第1支柱7によって連結され、各第1支柱7間には、上端部が第1上弦材5に連結され、かつ下端部が第1下弦材6に連結される複数の第1竪桟8が設けられる。
【0005】
第2手摺組立て体4は、第2上弦材9の長手方向両端部と、第2下弦材10の長手方向両端部とが、第2支柱11によって連結され、各第2支柱11間には、上端部が第2上弦材9に連結され、かつ下端部が第2下弦材10に連結される複数の第2竪桟12が設けられる。
【0006】
前記第1および第2上弦材5,9には、案内溝14,15が相互に対向してそれぞれ形成される。これらの案内溝14,15には、断面がH字状のスライド芯材16が挿入され、このようなスライド芯材16および各案内溝14,15によって、第1および第2上弦材5,9が長手方向に移動自在に連結される。
【0007】
また、第1および第2下弦材6,10には、案内溝17,18が相互に対向してそれぞれ形成される。これらの案内溝17,18には、断面がH字状のスライド芯材19が挿入され、このようなスライド芯材19および各案内溝17,18によって、第1および第2下弦材6,10が長手方向に移動自在に連結される。
【0008】
各建物が急激な地震によって近接および離反する方向に相対変位すると、第1および第2手摺組立て体3,4は、各建物の変位に追従して変位するが、第1および第2上弦材5,9ならびに第1および第2下弦材6,10は、各案内溝14,15;17,18に挿入されたスライド芯材16,19によって移動自在に連結されているため、第1および第2手摺組立て体3,4の相対変位が許容され、第1および第2手摺組立て体3,4が互いに干渉して破損してしまうことが防がれ、地震が生じても通路の両側が開放されないようにして、通行者の安全を確保している。
【0009】
【特許文献1】特開2001−220832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の技術では、急激な地震によって各建物が相互に近接および離反する方向への相対変位に対しては、第1および第2手摺組立て体3,4が各建物に追従して個別に移動することができるため、第1および第2手摺組立て体3,4が互い干渉することは回避されるが、上下方向および左右方向の相対変位に対しては、第1上弦材5とスライド芯材16との間、第2上弦材9とスライド芯材16との間、第1下弦材6とスライド芯材19との間および第2下弦材10とスライド芯材19との間で、互いに荷重を伝達することができる有効接触面積が少ないため、第1手摺組立て体3から第2手摺組立て体4へ、または第2手摺組立て体4から第1手摺組立て体3へ荷重として作用する力を広い範囲に分散することができず、局部的に大きな応力が発生してしまい、各上弦材5,9、各下弦材6,10および各スライド芯材16,19が容易に変形してしまう。
【0011】
このような各上弦材5,9、各下弦材6,10および各スライド芯材16,19に変形が生じると、変形箇所でのスライド芯材16,19の噛み込みが生じ、初期の変形が拡大されて、各手摺組立て体3,4が破壊してしまうという問題が生じる。
【0012】
また、各上弦材5,9、各下弦材6,10および各スライド芯材16,19の一部に生じた変形によって、各上弦材5,9、各下弦材6,10および各スライド芯材16,19の平行度が損なわれると、次に地震が発生したとき、各上弦材5,9とスライド芯材16との間および各下弦材6,10とスライド芯材19との間で大きな摩擦が発生し、焼き付きまたは噛み込みが生じるおそれがあり、各手摺組立て体3,4間で円滑な相対移動ができなくなる場合があり、相対変位の吸収に対して、信頼性が低いという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、第1および第2手摺組立て体の変形および破損を防止して、各建物間の相対変位を許容することができる信頼性の向上された伸縮手摺装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1上弦材の長手方向両端部と第1下弦材の長手方向両端部とが第1支柱によって連結され、各第1支柱間には上端部が第1上弦材に連結されかつ下端部が第1下弦材に連結される複数の第1竪桟が設けられ、第1上弦材および第1下弦材の長手方向一端部に配置される第1支柱が一方の建物に係止される第1手摺組立て体と、
第2上弦材の長手方向両端部と第2下弦材の長手方向両端部とが第2支柱によって連結され、各第2支柱間には上端部が第2上弦材に連結されかつ下端部が第2下弦材に連結される複数の第2竪桟が設けられ、第2上弦材および第2下弦材の長手方向他端部に配置される第2支柱が他方の建物に係止される第2手摺組立て体とを含み、
第1手摺組立て体と第2手摺組立て体とは、相互に平行にかつ水平方向に隣接して配置され、
第1上弦材には、第2上弦材に近接する方向に突出する上レール部が一体的に形成され、
第1下弦材には、第2下弦材に近接する方向に突出する下レール部が一体的に形成され、
第2上弦材には、上レール部がその長手方向に移動自在に嵌まり込む上案内溝が形成され、
第2下弦材には、下レール部がその長手方向に移動自在に嵌まり込む下案内溝が形成されることを特徴とする伸縮手摺装置である。
【0015】
また本発明は、前記第1上弦材は、各第1支柱の上端部および各第1竪桟の上端部を上方から覆い、前記上レール部が一体的に形成される第1笠木部材と、この第1笠木部材が装着され、各第1支柱の上端部および各第1竪桟の上端部がそれぞれ連結される第1笠木受け部材とを含み、
前記第2上弦材は、各第2支柱の上端部および各第2竪桟の上端部を上方から覆い、前記上案内溝が形成される第2笠木部材と、この第2笠木部材が装着され、各第2支柱の上端部および各第2竪桟の上端部がそれぞれ連結される第2笠木受け部材と含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明は、前記第1下弦材は、各第1支柱の下端部および各第1竪桟の下端部が連結される第1下弦材本体に、前記下レール部が一体的に形成され、
前記第2下弦材は、各第2支柱の下端部および各第2竪桟の下端部が連結される第2下弦材本体に、前記下案内溝を有する案内溝形成部分が一体的に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1上弦材には上レール部が一体的に形成され、第1下弦材には下レール部が一体的に形成されるので、急激な地震などによって、上レール部および下レール部に大きな力が作用しても、その力を第1上弦材および第1下弦材の広い領域に分散して応力を発生させることができ、これによって第1上弦材および第1下弦材に荷重によって発生する応力を小さくすることができる。このように第1上弦材および第1下弦材が荷重を受けて発生する応力が小さくなるので、この応力による変形も少なくなり、残留ひずみなどの塑性変形が生じにくい第1上弦材および第1下弦材を実現し、第1および第2手摺組立て体の変形および破損を防止して、各建物間の相対変位を長期にわたって許容することができ、信頼性を向上することができる。
【0018】
また本発明によれば、第1上弦材を、上レール部が一体的に形成される第1笠木部材と、この第1笠木部材が装着され、各第1支柱の上端部および各第1竪桟の上端部が連結される第1笠木受け部材とに分割した構成とされ、また第2上弦材は、上案内溝が形成される第2笠木部材と、この第2笠木部材が装着され、各第2支柱の上端部および各第2竪桟の上端部が連結される第2笠木受け部材とに分割した構成とされるので、第1および第2上弦材の一方から他方へ、設計時に想定していなかった過大な力が作用して変形または損傷を生じても、その変形または損傷が生じた部材だけを交換すればよく、第1上弦材および第2上弦材の一方または双方をすべて交換する必要がなく、保守管理を容易に行うことができる。
【0019】
さらに本発明によれば、第1下弦材は各第1支柱の下端部および各第1竪桟の下端部が連結される第1下弦材本体に下レール部が一体的に形成され、第2下弦材は各第2支柱の下端部および各第2竪桟の下端部が連結される第2下弦材本体に、下案内溝を有する案内溝形成部分が一体的に形成されるので、部品点数が少なくて済み、生産性および組立て性が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の実施の一形態の伸縮手摺装置20が適用される渡り通路21の水平断面図である。隣接した2つの建物A,B間に、目地として空隙Cが存在し、この空隙Cを介して各建物A,Bの通路A1,B1間を通行可能とするために、各建物A,B間には渡り通路21が設けられる。これらの建物A,Bは、たとえばコンクリート構造物によって実現される。
【0021】
前記渡り通路21は、各建物A,Bが急激な地震などによって相互に近接および離反する方向X(図1において上下方向)、前記近接および離反する方向Xに水平面上で直角な前後方向Y(図1において左右方向)、ならびに前記水平面に垂直な上下方向Z(図1において紙面に垂直方向)の直交3軸方向の各変位成分が合成された方向への挙動として生じる相対変位を許容するため、エキスパンションジョイントとも呼ばれる伸縮継手構造が採用されている。
【0022】
このような渡り通路21は、各建物A,Bの通路A1,B1間にわたって略水平に掛け渡される伸縮床構造体22と、伸縮床構造体22の前後方向Yの一側部に立設される本発明に従う伸縮手摺装置20と、伸縮床構造体22の前後方向Yの他側部および一方の建物Aにわたって立設されるL形手摺装置23とによって構成される。
【0023】
図2は図1の切断面線II−IIから見た伸縮手摺装置20の側面図であり、図3は図2の切断面線III−IIIから見た伸縮手摺装置20の断面図である。前記伸縮手摺装置20は、渡り通路21の中心軸線L寄り、すなわち前後方向Yに関して他側部寄りとなる内側に配置される第1手摺組立て体25と、第1手摺組立て体25よりも外側(図3の上方)に隣接して平行に配置される第2手摺組立て体26とを含む。
【0024】
第1手摺組立て体25は、第1上弦材27と、第1下弦材28と、一対の第1支柱29,30と、各支柱29,30間に相互に間隔をあけて設けられる複数の第1竪桟31とを有する。第1上弦材27の長手方向両端部と第1下弦材28の長手方向両端部とは、各第1支柱29,30によって連結され、各第1支柱29,30間には、上端部が第1上弦材27に連結され、かつ下端部が第1下弦材28に連結される複数の第1竪桟31が設けられる。第1上弦材27および第1下弦材28の長手方向一端部に配置される第1支柱29は、一方の建物Aに、上下各一対のヒンジ33,34によって鉛直軸線まわりに回動自在に連結される。
【0025】
第2手摺組立て体26は、第2上弦材36と、第2下弦材37と、一対の第2支柱38,39と、各第2支柱38,39間に相互に間隔をあけて設けられる複数の第2竪桟40とを有する。第2上弦材36の長手方向両端部と第2下弦材37の長手方向両端部とは、第2支柱38,39によって連結され、各第2支柱38,39間には、上端部が第2上弦材36に連結され、かつ下端部が第2下弦材37に連結される複数の第2竪桟40が設けられる。第2上弦材36および第2下弦材37の長手方向他端部に配置される第2支柱39は、他方の建物Bに、上下各一対のヒンジ41,42によって鉛直軸線まわりに回動自在に連結される。
【0026】
各建物A,Bの通路A1,B1の床43,44間にわたって、前記伸縮床構造体22が設けられる。この伸縮床構造体22は、各床43,44の相互に近接および離反する方向Xに対向する対向壁部45,46のうち、一方の対向壁部45にブラケット47およびアンカー体48によって前後方向Yと平行に固定されるY軸案内レール50と、Y軸案内レール50に嵌まり込んで案内される複数の案内ローラ51と、Y軸案内レール50が、空隙Cに臨む裏面に固定される目地カバー体52と、他方の建物Bの側縁部に固定され、近接および離反する方向Xに延びる断面L字状の縁材114とを含む。
【0027】
前記目地カバー体52は、一方の建物Aの床43と他方の建物Bの床44とのわたって設けられる。目地カバー体52の近接および離反する方向Xの一端部は、前記一方の建物Aの床43の対向壁部45上に配置され、この一端部近傍の裏面に前記複数の案内ローラ51が前後方向Yに間隔をあけて取り付けられている。
【0028】
前記目地カバー体52の近接および離反する方向Xの他端部は、他方の建物Bの床45の対向壁部46から空隙Cの近接および離反する方向Xの間隔ΔLに相当する距離だけ入り込んだ状態で移動自在に支持される。このような目地カバー体52は、たとえばステンレス鋼板からなる。また、前記目地カバー体52の前後方向Yの一方(図1の左方)への変位は、前記縁材114によって阻止され、目地カバー体52が他方の建物Bから突出する方向にずれでしまうことが防がれる。
【0029】
図4は図2の切断面線IV−IVから見た拡大断面図であり、図5は図2の切断面線V−Vから見た拡大断面図である。前記第1上弦材27には、第2上弦材36に近接する方向に突出する断面T字状断面の上レール部60が一体的に形成され、第1下弦材28には、第2下弦材37に近接する方向に突出する断面T字状の下レール部61が一体的に形成される。また第2上弦材36には、上レール部60がその長手方向に移動自在に嵌まり込む断面T字状の上案内溝62が形成され、第2下弦材37には、下レール部61がその長手方向に移動自在に嵌まり込む断面T字状の下案内溝63が形成される。
【0030】
第1上弦材27は、各第1支柱29,30の上端部および各第1竪桟31の上端部を上方から覆い、前記上レール部60が一体的に形成される断面逆凹状の第1笠木部材65と、この第1笠木部材65が装着され、各第1支柱29,30の上端部および各第1竪桟31の上端部がそれぞれ連結される第1笠木受け部材66とを含む。
【0031】
前記第2上弦材36は、各第2支柱38,39の上端部および各第2竪桟40の上端部を上方から覆い、前記上案内溝62が形成される断面逆凹状の第2笠木部材67と、この第2笠木部材67が装着され、各第2支柱38,39の上端部および各第2竪桟40の上端部がそれぞれ連結される第2笠木受け部材68と含む。
【0032】
前記第1下弦材28は、各第1支柱29,30の下端部および各第1竪桟31の下端部が連結される断面逆凹状の第1下弦材本体69に、前記下レール部61が一体的に形成される。前記第2下弦材37は、各第2支柱38,39の下端部および各第2竪桟40の下端部が連結される第2下弦材本体70に、前記下案内溝63を有する案内溝形成部分71が一体的に形成される。
【0033】
前記第1および第2笠木部材65,67ならびに第1および第2下弦材28,37は、アルミニウム合金の押し出し形材からなる。また各支柱29,30;38,39および各竪桟31,40は、ステンレス鋼製またはアルミニウム合金製の押し出し形材からなる。
【0034】
第1下弦材本体69の他方の建物B寄りに配置される支柱30の直下には、目地カバー体52上で移動自在な案内ローラ72が設けられる。この案内ローラ72は第1および第2手摺組立て体25,26の荷重、手摺に寄りかかる通行者通行者の持ち物および荷物などを含む全重量を支持し、円滑に目地カバー体52上を移動して、各建物A,B間の近接および離反する方向Xおよび前後方向Yの相対変位を許容することができる。
【0035】
図6はL形手摺装置23を上方から見た水平断面図である。前記L形手摺装置23は、他方の建物Bの対向壁部46の通路B1の臨む壁面に、前記近接および離反する方向Xに移動自在に設けられる第1可動手摺組立て体80と、一方の建物Aの対向壁部45の壁面に、前記前後方向Yに移動自在に設けられる第2可動手摺組立て体81と、第1および第2可動手摺組立て体80,81の相互に近接した端部を連結する水平断面がL字状の緊結金具82とを含む。
【0036】
図7は図6の切断面線VII−VIIから見た第1可動手摺組立て体80の断面図である。前記第1可動手摺組立て体80は、上弦材83の長手方向両端部と下弦材84の長手方向両端部とが支柱85,86によって連結され、各支柱85,86間には上端部が上弦材83に連結されかつ下端部が下弦材84に連結される複数の竪桟87が設けられる。
【0037】
前記上弦材83は、各支柱85,86の上端部および各竪桟87の上端部を上方から覆い、前記上レール部材88によって前記近接および離反する方向Xに移動自在に支持される笠木部材89と、この笠木部材89が装着され、各支柱85,86の上端部および各竪桟87の上端部がそれぞれ連結される笠木受け部材90とを含む。
【0038】
前記上レール部材88は、断面が逆L字状の長尺のアルミニウム合金または鋼材からなり、壁面の凹凸を吸収するためのゴム製のシート状ライナー部材95を介して、アンカー体91によって他方の建物Bの壁面92に固定される。前記下弦材84は、各支柱85,86の下端部および各竪桟87の下端部が連結され、断面が逆凹状のアルミニウム合金または鋼材からなる。
【0039】
図8は図6の切断面線VIII−VIIIから見た第2可動手摺組立て体81の断面図である。前記第2可動手摺組立て体81は、上弦材100の長手方向両端部と下弦材101の長手方向両端部とが支柱102,103によって連結され、各支柱102,103間には、上端部が上弦材100に連結されかつ下端部が下弦材101に連結される複数の竪桟104が設けられ、前記笠木部材100が上下一対の案内レール部材105,106によって一方の建物Aに前後方向Yに移動自在に係止される。各案内レール部材105,106は、壁面の凹凸を吸収するためのゴム製のシート状ライナー部材120,121を介して、アンカー体107,108によって一方の建物Aの対向壁部46の壁面に水平に固定される。
【0040】
前記上弦材100には、上案内レール部材105がその長手方向に移動自在に嵌まり込む上案内溝110が形成され、下弦材101には、下案内レール部材106がその長手方向に移動自在に嵌まり込む下案内溝111が形成される。前記上弦材100は、各支柱102,103の上端部および各竪桟104の上端部を上方から覆い、前記上案内溝110が形成される笠木部材112と、この笠木部材112が装着され、各支柱102,103の上端部および各竪桟104の上端部がそれぞれ連結される笠木受け部材113と含む。
【0041】
次に、上記のように構成される渡り通路21において、急激な地震によって各建物A,Bが相互に近接および離反する方向X、前後方向Y、上下方向Zの直交3軸方向の各変位成分が合成された相対変位を生じた場合の動作について説明する。
【0042】
第1および第2伸縮手摺組立て体25,26は、前記近接および離反する方向Xへ互いに移動自在とするため、第1上弦材27には上レール部60が一体的に形成され、第1下弦材28には下レール部61が一体的に形成されるので、急激な地震などによって、上レール部60および下レール部61に大きな力が作用しても、その力を第1上弦材27および第1下弦材28の広い領域に分散して応力を発生させることができ、これによって第1上弦材27および第1下弦材28に荷重によって発生する応力を小さくすることができる。
【0043】
このように第1上弦材27および第1下弦材28が荷重を受けて発生する応力が小さくなるので、この応力による変形も少なくなり、残留ひずみなどの塑性変形が生じにくい第1上弦材27および第1下弦材28を実現し、第1および第2手摺組立て体25,26の変形および破損を防止して、各建物A,B間の相対変位を長期にわたって許容することができ、信頼性を向上することができる。
【0044】
また本実施の形態によれば、第1上弦材27を、上レール部60が一体的に形成される第1笠木部材65と、この第1笠木部材65が装着され、各第1支柱29,30の上端部および各第1竪桟31の上端部が連結される第1笠木受け部材66とに分割した構成とされ、また第2上弦材36は、上案内溝62が形成される第2笠木部材67と、この第2笠木部材67が装着され、各第2支柱38,39の上端部および各第2竪桟40の上端部が連結される第2笠木受け部材68とに分割した構成とされるので、第1および第2上弦材27,36の一方から他方へ、設計時に想定していなかった過大な力が作用して変形または損傷を生じても、その変形または損傷が生じた部材だけを交換すればよく、第1および第2上弦材27,36の一方または双方をすべて交換する必要がなく、保守管理を容易に行うことができる。
【0045】
本実施の形態によれば、第1下弦材28は各第1支柱29,30の下端部および各第1竪桟31の下端部が連結される第1下弦材本体69に下レール部61が一体的に形成され、第2下弦材37は各第2支柱38,39の下端部および各第2竪桟40の下端部が連結される第2下弦材本体70に、下案内溝63を有する案内溝形成部分71が一体的に形成されるので、部品点数が少なくて済み、生産性および組立て性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の一形態の伸縮手摺装置20が適用される渡り通路21の水平断面図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見た伸縮手摺装置20の側面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIから見た伸縮手摺装置20の断面図である。
【図4】図2の切断面線IV−IVから見た拡大断面図である。
【図5】図2の切断面線V−Vから見た拡大断面図である。
【図6】L形手摺装置23を上方から見た水平断面図である。
【図7】図6の切断面線VII−VIIから見た第1可動手摺組立て体80の断面図である。
【図8】図6の切断面線VIII−VIIIから見た第2可動手摺組立て体81の断面図である。
【図9】従来の技術の伸縮手摺装置1を示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0047】
20 伸縮手摺装置
21 渡り通路
22 伸縮床構造体
23 L形手摺装置
25 第1手摺組立て体
26 第2手摺組立て体
27 第1上弦材
28 第1下弦材
29,30 第1支柱
31 第1竪桟
33,34;41,42 ヒンジ
36 第2上弦材
37 第2下弦材
40 第2竪桟
43,44 通路A1,B1の床
45,46 対向壁部
47 ブラケット
48 アンカー体
50 Y軸案内レール
51 案内ローラ
52 目地カバー体
60 上レール部
61 下レール部
62 上案内溝
63 下案内溝
65 第1笠木部材
66 第1笠木受け部材
67 第2笠木部材
68 第2笠木受け部材
69 第1下弦材本体
70 第2下弦材本体
71 案内溝形成部分
72 案内ローラ
80 第1可動手摺組立て体
81 第2可動手摺組立て体
連結部材
A,B 建物
C 空隙
A1,B1 通路
X 近接および離反する方向
Y 前後方向
Z 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上弦材の長手方向両端部と第1下弦材の長手方向両端部とが第1支柱によって連結され、各第1支柱間には上端部が第1上弦材に連結されかつ下端部が第1下弦材に連結される複数の第1竪桟が設けられ、第1上弦材および第1下弦材の長手方向一端部に配置される第1支柱が一方の建物に係止される第1手摺組立て体と、
第2上弦材の長手方向両端部と第2下弦材の長手方向両端部とが第2支柱によって連結され、各第2支柱間には上端部が第2上弦材に連結されかつ下端部が第2下弦材に連結される複数の第2竪桟が設けられ、第2上弦材および第2下弦材の長手方向他端部に配置される第2支柱が他方の建物に係止される第2手摺組立て体とを含み、
第1手摺組立て体と第2手摺組立て体とは、相互に平行にかつ水平方向に隣接して配置され、
第1上弦材には、第2上弦材に近接する方向に突出する上レール部が一体的に形成され、
第1下弦材には、第2下弦材に近接する方向に突出する下レール部が一体的に形成され、
第2上弦材には、上レール部がその長手方向に移動自在に嵌まり込む上案内溝が形成され、
第2下弦材には、下レール部がその長手方向に移動自在に嵌まり込む下案内溝が形成されることを特徴とする伸縮手摺装置。
【請求項2】
前記第1上弦材は、各第1支柱の上端部および各第1竪桟の上端部を上方から覆い、前記上レール部が一体的に形成される第1笠木部材と、この第1笠木部材が装着され、各第1支柱の上端部および各第1竪桟の上端部がそれぞれ連結される第1笠木受け部材とを含み、
前記第2上弦材は、各第2支柱の上端部および各第2竪桟の上端部を上方から覆い、前記上案内溝が形成される第2笠木部材と、この第2笠木部材が装着され、各第2支柱の上端部および各第2竪桟の上端部がそれぞれ連結される第2笠木受け部材と含むことを特徴とする請求項1記載の伸縮手摺装置。
【請求項3】
前記第1下弦材は、各第1支柱の下端部および各第1竪桟の下端部が連結される第1下弦材本体に、前記下レール部が一体的に形成され、
前記第2下弦材は、各第2支柱の下端部および各第2竪桟の下端部が連結される第2下弦材本体に、前記下案内溝を有する案内溝形成部分が一体的に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の伸縮手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−154621(P2007−154621A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355271(P2005−355271)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】