説明

位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、複合偏光板及び偏光板

【課題】面内均一性に優れ、かつ適切なリタデーションを有する位相差フィルムの製造方法、及び該製造方法により得られた位相差フィルムを提供する。
【解決手段】長さ方向及び幅方向を有する長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向に延伸する縦延伸工程の後に、縦延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向に延伸する横延伸工程が行われる逐次二軸延伸法により位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造方法であって、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向の両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いる、位相差フィルムの製造方法及び該製造方法により得られた位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置などに組込まれ、液晶表示装置のコントラストを向上し、かつ視野角を拡大するために用いられる位相差フィルムの製造方法、および該製造方法により得られた位相差フィルム、並びに該位相差フィルムを用いた複合偏光板及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、パーソナルコンピューターの表示装置や液晶テレビ等の用途に広く普及している。液晶表示装置の一つとして、旋光効果を利用したTN(Twisted Nematic)モードの液晶表示装置が挙げられる。しかしながら、TNモードの液晶表示装置では、視野角が狭く、応答速度が遅いという問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、複屈折効果を利用したVA(Vertically Aligned)モードの液晶表示装置が提案されている。さらに、VAモードの液晶表示装置として、視野角依存性を改善したMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モードの液晶表示装置が提案されている。MVAモードの液晶表示装置では、液晶セルを構成する基板内面に傾斜面を有する突起等からなるドメイン規制手段が設けられている。このドメイン規制手段によって液晶分子の配向方向を2方向以上に分割して、液晶セルを通過してくる光量を均一化させることにより、見込み角度によって表示輝度が大きく異なる視野角依存性が改善されている。
【0004】
しかしながら、視野角依存性が改善された上記MVAモードの液晶表示装置であっても、液晶表示面を斜め45度の角度から見た場合に、やはりコントラストが低下する問題点があった。このような問題点を解決するために、液晶表示装置には、位相差フィルムが用いられている。
【0005】
上記位相差フィルムには、ポリカーボネートやポリサルホンに代表されるような透明性及び耐熱性に優れている合成樹脂フィルムが多く用いられている。これらの特性に加えて光弾性係数、波長分散性及び水蒸気透過率等の特性に優れている環状オレフィン系樹脂フィルムも用いられてきている。
【0006】
ところで、厚み方向の屈折率よりも長さ方向及び幅方向の屈折率が大きくされた二軸性位相差フィルムが、上記VAモードやMVAモードの液晶表示装置の視野角を改善するのに有効であることが知られている。
【0007】
上記二軸性位相差フィルムを製造する方法として、下記の特許文献1には、縦延伸工程の後にテンター延伸機等を用いた横延伸工程を行う逐次二軸延伸法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−148438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
位相差フィルムとしての機能を十分に発揮するためには、液晶パネルの複屈折との合わせ込みが必要であり、位相差フィルムには、面内で均一なリタデーションを有することが強く求められている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の逐次二軸延伸法では、テンター延伸機を用いた横延伸工程において、通常、フィルムの幅方向中央部より延伸が開始される。よって、フィルムの幅方向中央部に応力が集中し、変形度合いで見た場合、幅方向端部と比較して、幅方向中央部の方が大きく延伸される。これにより、位相差フィルムの幅方向の面内のリタデーションRoにバラツキが生じがちであった。仮に縦延伸され、かつ横延伸する前のフィルムの面内のリタデーションRoのプロファイルを均一にした場合でも、横延伸した後には幅方向の面内のリタデーションRoにバラツキが生じるという大きな課題があった。
【0010】
この課題の改善のためには、フィルムが横延伸される延伸炉内の温度を部分により異ならせて、例えばフィルムの幅方向の中央部よりも端部の樹脂温度を高くするなどして、横延伸する方法が考えられる。しかしながら、フィルムの厚みやフィルムを移送する速度、フィルムの延伸倍率等によりフィルムの幅方向端部の樹脂温度が高くなる度合いは変化し、実用化は大変困難であった。また、実際の樹脂温度を精度よく測定することは困難であった。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、面内均一性に優れ、かつ適切なリタデーションを有する位相差フィルムの製造方法、および該製造方法により得られた位相差フィルム、並びに該位相差フィルムを用いた複合偏光板及び偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、長さ方向及び幅方向を有する長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向に延伸する縦延伸工程の後に、縦延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向に延伸する横延伸工程が行われる逐次二軸延伸法により位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造方法であって、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法のある特定の局面では、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03〜1.15倍の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。
【0014】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法の他の特定の局面では、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向の厚みが両端から中央にいくにつれて厚くされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。
【0015】
本発明に係る位相差フィルムは、本発明の位相差フィルムの製造方法により得られ、面内のリタデーションRoが0〜200nmの範囲にあり、厚み方向のリタデーションRthが50〜500nmの範囲にあり、かつ幅方向における面内のリタデーションRoのプロファイルの振れ幅が20nm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る複合偏光版は、偏光板の一方面に、本発明の位相差フィルムが積層されており、偏光板と位相差フィルムとが一体化されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る偏光板は、偏光子の一方面に、本発明の位相差フィルムが積層されており、偏光子と位相差フィルムとが一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法では、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いて、該非晶性熱可塑性樹脂フィルムを逐次二軸延伸法により延伸して位相差フィルムを得るので、面内均一性に優れ、かつ適切なリタデーションを有する二軸性の位相差フィルムを得ることができる。得られた位相差フィルムを液晶表示装置に用いると、視野角を拡大することができ、コントラストを高めることができる。
【0019】
延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03〜1.15倍の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合には、面内でより一層均一であり、かつ適切なリタデーションを有する位相差フィルムを得ることができる。
【0020】
延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向の厚みが両端から中央にいくにつれて厚くされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合には、面内でさらに一層均一であり、かつ適切なリタデーションを有する位相差フィルムを得ることができる。
【0021】
本発明に係る位相差フィルムは、面内のリタデーションRoが0〜200nmの範囲にあり、厚み方向のリタデーションRthが50〜500nmの範囲にあり、かつ幅方向における面内のリタデーションRoのプロファイルの振れ幅が20nm以下であるので、面内均一性に優れ、かつ適切なリタデーションを有する。よって、液晶表示装置に用いられると視野角を効果的に拡大することができ、画質の均一化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
本発明では、長さ方向及び幅方向を有する長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムが逐次二軸延伸法により延伸される。
【0024】
上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムを構成する非晶性熱可塑性樹脂としては、特に限定はないが、透明性に優れるものが好ましい。
【0025】
上記非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系やポリエステル系、ポリスルホン系やポリエーテルスルホン系、ポリスチレン系やポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系や酢酸セルロース系、ポリ塩化ビニル系やポリメチルメタクリレート等のポリアクリル系、ポリアリレート系やポリアミド系などの高分子が挙げられる。これらの高分子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記ポリオレフィン系高分子の中でも、環状オレフィン樹脂としてのノルボルネン系ポリマーが、光弾性係数が小さく、外部応力による位相差安定性に優れていることから好ましく用いられる。
【0027】
上記ノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加(共)重合体及びこれらの誘導体等のノルボルネン系樹脂が挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するものであれば特に限定されず、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;テトラシクロペンタジエン等の七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素、水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基を有する置換体等が挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体としては、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの共重合体、ノルボルネン系モノマーと環状オレフィン系モノマーとの共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、炭素数が2〜20のα−オレフィンが好ましく、炭素数が2〜10のα−オレフィンがより好ましい。
【0030】
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられ、共重合性が高いことから、エチレンが好ましい。
【0031】
上記環状オレフィン系モノマーとしては、例えば、シクロオクタジエン、シクロオクテン、シクロヘキセン、シクロドデセン、シクロドデカトリエン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、開環を伴う(共)重合体には必然的に不飽和結合が残留し、また付加(共)重合体であってもモノマーの種類によっては不飽和結合が残留することがある。このような場合、熱履歴による酸化劣化や紫外線等による着変色といった耐久性を重視する観点から、これらの不飽和結合を水素添加しておくことが好ましい。
【0033】
商業的に入手できるノルボルネン系樹脂の具体例としては、例えば、JSR社製の商品名「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア」シリーズ、チコナ社製の商品名「トパス」シリーズ、三井化学社製の商品名「アペル」シリーズ等が挙げられる。
【0034】
上記非晶性熱可塑性樹脂の数平均分子量は、小さいと、得られる位相差フィルムの機械的強度が低下することがある一方、大きいと、原反フィルム製造時の加工性が低下することがあるので、5000〜80000の範囲が好ましく、10000〜50000の範囲がより好ましい。非晶性熱可塑性樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によって測定された標準ポリスチレン換算値を示す。
【0035】
上記非晶性熱可塑性樹脂には、位相差フィルムの機能を阻害しない範囲内において、成形中の非晶性熱可塑性樹脂の劣化防止や位相差フィルムの耐熱性、耐紫外線性、平滑性等を向上させるために、フェノール系、リン系等の酸化防止剤;ラクトン系等の熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤;脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系、部分エーテル系等の滑剤;アミン系等の帯電防止剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。添加剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記非晶性熱可塑性樹脂を用いて、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜する方法としては、従来から汎用されている方法が用いられる。具体的には、非晶性熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融、混練し、押出機の先端に取り付けた金型からフィルム状に押し出して長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜する方法が挙げられ、コストが安く、環境負荷が小さいことから好ましく用いられる。
【0037】
本発明では、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、溶融押出フィルムが好ましく用いられる。図1は、溶融押出により延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜するのに用いられる装置の概略構成図である。
【0038】
図1に示すように、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜する際には、先ず押出機1から非晶性熱可塑性樹脂が押し出され、金型2に供給される。金型2で非晶性熱可塑性樹脂が成膜され、フィルム3が排出され、冷却ロール4に接触され、冷却される。なお、5はタッチロールであり、冷却ロール4にフィルム3を押圧するために設けられている。このようにして得られたフィルム3は、ロール6,7を経て巻き取られる。
【0039】
金型2の出口から半溶融状態のフィルム3が排出され、該フィルム3が冷却ロール4に接触される。ここで、上記金型2の出口からフィルム3が冷却ロール4に接する接点までの距離、すなわちエアギャップは短いほうが好ましい。エアギャップが短いほうが、外乱による厚みばらつきを低減することができる。すなわち、適正な厚みプロファイルを有するフィルムを安定的に製造することが出来る。従って、エアギャップは70mm以下とすることが望ましい。
【0040】
また、フィルム3が冷却ロール4に接触する際に、冷却ロール4とフィルム3との間に空気が入らないことが望ましく、かつ冷却速度が全面で均一であることが望ましい。従って、上記接点の下流側近傍において、タッチロール5などの押圧手段によりフィルム3を冷却ロール4側に押圧することが望ましい。
【0041】
押圧手段としては、タッチロール5に限定されず、エアナイフや静電ピニングなどを用いてもよい。もっとも、安定性に優れ、フィルム3を均一に冷却ロール4に圧接させ得るため、弾性材料からなる表面を有するタッチロールを用いることが望ましい。
【0042】
冷却ロール4の温度は、フィルム3を構成する樹脂の種類によっても異なるが、用いられている樹脂のガラス転移点Tgとしたとき、Tg−10℃〜Tg−100℃の範囲であることが望ましい。
【0043】
フィルムの平滑性と透明性とを確保するために、冷却ロール4の表面粗さは、JIS B0601に定義されているRy値で0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下とすることがより好ましい。上記冷却ロール4は様々な材料で構成され得るが、好ましくは金属からなり、例えば炭素鋼やステンレス鋼などにより構成されているものが好適に用いられる。金属からなる冷却ロール4を用いた場合、冷却ロール4の温度を速やかに一定温度に維持することができ、かつフィルム3を効率よく冷却することができる。
【0044】
金型2の温度がばらついていると、樹脂の流動性が変化するので、金型2の温度は安定していることが望ましい。好ましくは、金型2のフィルム3を構成する溶融樹脂に接触する部分の温度は、設定温度±0.5℃以内、より好ましくは設定温度±0.2℃以内に保たれていることが望ましい。
【0045】
また、一般に、ロール温度は樹脂の固化点に大きく影響を与える。従って、冷却ロール4を様々な温度に温度調節できる構造を有するように、冷却ロール4の軸芯部に温度調節機構を連結もしくは内蔵する構造を有することが望ましい。好ましい温度調節手段としては、シーズヒーターを軸芯部に組み込んで冷却ロール4を適当な温度に設定するように加熱する電気加熱方式の温度調節手段、あるいは誘導発熱コイルによる電磁誘導作用による温度調節手段、軸芯部に設けられた流路に温度制御用の熱媒体を循環させて冷却ロールを設定温度に加熱する熱媒体循環加熱方式などの温度調節手段が用いられ得る。特に好ましいのは、熱媒体循環加熱方式であり、熱媒体としては気体を用いてもよく、水または油などの液体を用いてもよい。好ましくは、熱容量が大きい、水や油などの液体を用いることが望ましい。このような熱媒体流路の好適な例としては、内部に二条スパイラル構造または四条スパイラル構造を有するものが挙げられる。
【0046】
本発明では、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上厚くないと、逐次二軸延伸した後の面内のリタデーションRoのバラツキを改善する効果を十分に得られないことがある。
【0047】
また、延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03〜1.15倍の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムが好ましく用いられる。幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.15倍を超える厚みであると、逆に面内のリタデーションRoのバラツキが悪化するなどの不具合が生じることがある。
【0048】
また、面内でより一層均一であり、適切なリタデーションを有する位相差フィルムを得ることができるので、幅方向の厚みが両端から中央にいくにつれて厚くされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムがより好ましく用いられる。
【0049】
延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムの幅方向中央部の厚みは、薄いと、所望のリタデーションを得ることが困難となる一方、厚いと、液晶表示装置の薄型化に不利となるので、30〜500μmの範囲が好ましく、40〜300μmの範囲がより好ましく、50〜200μmの範囲が更に好ましい。
【0050】
フィルムの幅方向に厚み分布を持たせる方法としては、特に限定されず、金型の温度を部分により異ならせて成膜する方法や、樹脂吐出口の間隙を部分により異ならせて成膜する方法が挙げられる。
【0051】
成膜されたフィルムの幅方向両端部は幅方向寸法精度や厚み精度が悪いので、適宜の幅にスリットを行ってもよく、スリット後に得られるフィルムを延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして用いてもよい。
【0052】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚み、及び後述する面内,厚み方向のリタデーションRo,Rthの測定は、以下のようにして行われる。
【0053】
フィルムの幅方向に50mm間隔でフィルムの長さ方向に延びる複数の測定ラインを設ける。各測定ラインについて、フィルムの長さ方向に1m間隔で少なくとも10箇所以上(N≧10)フィルム厚みあるいはリタデーションRo,Rthの測定を行う。各測定ラインのフィルムの長さ方向の各測定点の測定値(N≧10)の平均値を各測定ラインにおけるフィルム厚みの測定値X、リタデーションRoの測定値Y、あるいはリタデーションRthの測定値Zとする。
【0054】
例えば、幅方向の中央部の測定ラインにおける測定値Xが、フィルム幅方向の中央部厚みであり、幅方向の端部の測定ラインにおける測定値Xが、フィルム幅方向の端部厚みである。
【0055】
フィルムの幅方向の各測定ラインの測定値Yの平均値が面内のリタデーションRoであり,フィルムの幅方向の各測定ラインの測定値Zの平均値が厚み方向のリタデーションRthである。また、フィルムの幅方向の各測定ラインの測定値Yの最大値と最小値との差が、幅方向における面内のリタデーションRoのプロファイルの振れ幅である。
【0056】
本発明では、長さ方向及び幅方向を有する長尺状の上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向(縦方向)に延伸する縦延伸工程の後に、縦延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向(横方向)に延伸する横延伸工程を行うことにより、すなわち逐次二軸延伸法による延伸を経て位相差フィルムを得ることができる。
【0057】
上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムを逐次二軸延伸法により延伸する際には、長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムは、例えば非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、長さ方向(縦方向)に延伸され、さらに幅方向(横方向)に延伸される。
【0058】
延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜した後に、縦延伸工程、すなわち非晶性熱可塑性樹脂フィルムを逐次二軸延伸する工程を続いて連続的に行ってもよい。連続的に行うことで、位相差フィルムの製造効率を高めることができ、フィルムの継ぎ目に伴うロスが少なくすることができる。
【0059】
なお、縦延伸工程の後に、横延伸工程を続いて連続的に行ってもよい。連続的に行うことで、位相差フィルムの製造効率を高めることができ、フィルムの継ぎ目に伴うロスが少なくすることができる。
【0060】
以下に、逐次二軸延伸法において、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向(縦方向)に延伸する縦延伸工程を詳細に説明する。
【0061】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向(縦方向)に延伸する方法としては、ロール間ネックイン延伸法、近接ロール延伸法等が挙げられる。リタデーションを制御し易く、非晶性熱可塑性樹脂フィルムに傷や皺等の不良が発生しにくいといった利点を有するので、ロール間ネックイン延伸法を採用することが望ましい。
【0062】
上記ロール間ネックイン延伸法とは、フィルム幅よりも広い延伸領域の両側に位置する一対のニップロール又はS字ラップロールで搬送中のフィルムを挟持するとともに、搬送方向の上流側のニップロール又はS字ラップロールの周速に対して、搬送方向の下流側のニップロール又はS字ラップロールの周速を大きくすることによって、所望の延伸倍率を得る方法である。なお、フィルムの幅方向の両端部分は拘束を受けない自由端とされており、長さ方向の延伸に伴って幅方向にネックイン現象が呈される。
【0063】
フィルムを長さ方向に延伸する際の延伸倍率は、低すぎると遅相軸精度の低下等の表示品質の低下を招くことがあり、高すぎると幅方向の製品幅が狭くなり次工程の生産性が悪くなるので、1.03〜3倍が好ましく、1.05〜2.5倍がより好ましい。
【0064】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの縦延伸時の延伸温度、すなわち縦延伸時の樹脂温度は、位相差フィルムに付与したい補償位相差量によって適宜に調整されるが、低いと、延伸時にフィルムが破断するおそれがある一方、高いと、配向に乱れが生じ、所望のリタデーションを得ることが困難となることがあるので、(フィルムのガラス転移温度Tg−20℃)〜(フィルムのガラス転移温度Tg+50℃)が好ましく、(フィルムのガラス転移温度Tg−10℃)〜(フィルムのガラス転移温度Tg+40℃)がより好ましい。
【0065】
なお、フィルム、すなわち非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計によって測定される。
【0066】
そして、上述の要領で、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向に延伸した後に、熱緩和による面内のリタデーションRoの低下を防止するために、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に縦延伸されたフィルムが冷却される。
【0067】
延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされているフィルムを用いたため、縦延伸されたフィルムの幅方向の厚みプロファイルを測定したときも、幅方向両端部の厚みよりも、幅方向中央部の厚みの方が厚い関係を保っていることとなる。よって、面内のリタデーションRoは厚みに比例するため、フィルムの幅方向中央部の方が端部よりも大きな面内のリタデーションRoを有することとなる。
【0068】
次に、逐次二軸延伸法において、縦延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向(横方向)に延伸する横延伸工程を詳細に説明する。
【0069】
縦延伸されたフィルムをその幅方向(横方向)に延伸する方法としては、縦延伸されたフィルムの幅方向の両端部を、テンタークリップ等の任意の把持手段によって把持し、この把持手段を縦延伸されたフィルムの搬送速度と同一速度にて搬送方向に移動させながら互いに離間する方向に徐々に変位させるテンター延伸機等を用いる方法が挙げられ、好ましく行われる。
【0070】
フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率は、低すぎると遅相軸精度の低下等の表示品質の低下を招くことがあり、高すぎると面内のリタデーションRoが大きくなりすぎ所望の位相差値を得られなくなることがある。また、遅相軸精度を保つためには、遅相軸方向を長さ方向(縦方向)から幅方向(横方向)に配向固定するような延伸倍率がより望ましく、よって1.05〜10倍が好ましく、1.1〜5倍がより好ましい。
【0071】
非晶性熱可塑性樹脂フィルムの横延伸時の延伸温度、すなわち横延伸時の樹脂温度は、位相差フィルムに付与したい補償位相差量によって適宜に調整されるが、低いと、延伸時にフィルムが破断するおそれがある一方、高いと、縦延伸終了後のフィルムの配向に乱れが生じ、所望のリタデーションを得ることが困難となることがあるので、縦延伸工程よりも横延伸工程の方が延伸温度が低いことが好ましく、(フィルムのガラス転移温度Tg−20℃)〜(フィルムのガラス転移温度Tg+35℃)が好ましく、(フィルムのガラス転移温度Tg−10℃)〜(フィルムのガラス転移温度Tg+25℃)がより好ましい。
【0072】
そして、上述の要領で、縦延伸されたフィルムを幅方向(横方向)に延伸して得られた位相差フィルムは、熱緩和による面内のリタデーションRoの低下を防止するために、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に冷却される。
【0073】
横延伸されて得られた位相差フィルムにおいて、幅方向の両端部は延伸時にテンタークリップにて挟持されていたため延伸されておらず、よってフィルム両端部はスリットを行い、所望の幅の位相差フィルムを得ることができる。
【0074】
幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを縦延伸し、幅方向中央部のリタデーションRoが端部のリタデーションRoよりも大きな縦延伸されたフィルムをさらに横延伸したため、位相差フィルムの面内のリタデーションRoのプロファイルを測定したとき、面内均一性に優れており、所望とするリタデーションを有する位相差フィルムを得ることができる。
【0075】
仮に縦延伸されたフィルムにおいて面内のリタデーションRoが均一である場合には、横延伸工程において、テンター延伸機では通常フィルム幅方向中央部より延伸が開始されるため、フィルムの幅方向中央部に応力が集中する。よって、変形度合いで見た場合、フィルムの幅方向端部と比較して、フィルムの幅方向中央部の方が大きく延伸されることになる。よって横延伸工程において、遅相軸方向を横方向(幅方向)に配向固定した場合、横延伸されたフィルムの面内のリタデーションRoを測定したとき、幅方向中央部のリタデーションRoが幅方向端部の面内のリタデーションRoと比較して大きくなってしまうという不具合が発生する。
【0076】
これに対し、フィルムの幅方向端部よりも、幅方向中央部の方が大きな面内のリタデーションRoを有する縦延伸されたフィルムを用いることにより、さらに言えば、縦延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされているフィルムを用いることにより、横延伸されて得られた位相差フィルムの面内のリタデーションRoのプロファイルを測定したとき、面内均一性に優れており、所望とするリタデーションを有する位相差フィルムを得ることができる。
【0077】
よって、上述のようにして得られた位相差フィルムは、液晶表示装置に用いられるとコントラストを高め、かつ視野角を拡大することができるとともに均一な画質が得られる。
【0078】
(複合偏光板)
本発明に係る複合偏光板では、上記位相差フィルムが、偏光板の一方面に積層されて、偏光板と位相差フィルムとが一体化されている。
【0079】
上記偏光板としては、特に限定されず、従来から汎用されているものが用いられ、偏光子の両面に保護フィルムが積層されて一体化されたものを挙げることができる。
【0080】
上記偏光子としては、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を吸着させた後、このフィルムをホウ酸中で一軸延伸してなるポリビニルアルコール・ヨウ素偏光子;ポリビニルアルコールからなるフィルムに二色性の高い直接染料を吸着、拡散させた後、このフィルムを一軸延伸してなるポリビニルアルコール・染料系偏光子;ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向偏光子等が挙げられる。
【0081】
上記ポリビニルアルコールとしては、酢酸ビニルモノマーを単独重合させて得られたポリ酢酸ビニルをケン化したものや、酢酸ビニルモノマーに少量のオレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩又は不飽和カルボン酸若しくはこの塩、エステル、アミド、ニトリル等のモノマーを共重合させた共重合体をケン化したものが挙げられる。
【0082】
上記偏光子の両面に積層される保護フィルムとしては、偏光子の光学特性を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、アルカリ処理等が施されたトリアセチルセルロースからなるフィルムが挙げられる。
【0083】
上記位相差フィルムは、偏光板の一方面に接着剤または粘着剤を介して積層されていてもよい。上記接着剤又は粘着剤としては、光学特性を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば透明性の高いアクリル系接着剤又はアクリル系粘着剤などが用いられる。
【0084】
複合偏光板では、位相差補償フィルムの遅相軸と、この位相差フィルムに隣接する偏光板の吸収軸とが互いに直交するように調整される。
【0085】
(偏光板)
本発明の偏光板では、上記偏光子の一方面に、位相差フィルムが積層されて、偏光子と位相差フィルムとが一体化されている。位相差フィルムは、例えば水系接着剤等を介して偏光子の一方面に積層される。
【0086】
上記水系接着剤としては、偏光子及び位相差フィルムの光学特性を阻害しないものであれば特に限定されない。水系接着剤としては、水性ウレタン系接着剤が好適に用いられる。
【0087】
偏光子と位相差フィルムとを対向させて積層させる際には、偏光子または位相差フィルムの何れか一方の対向面の全体に、好ましくは位相差フィルムの対向面の全体に上記水系接着剤を塗布する。しかる後、偏光子と位相差フィルムを重ね合わせて積層し、偏光子と位相差フィルムとが一体化されて、本発明の偏光板が得られる。
【0088】
上記水系接着剤の塗布量は、少ないと、偏光子と位相差フィルムとの接着強度が低下したり、若しくは偏光子と位相差フィルムとの間に隙間が生じて光学特性が阻害されることがある。水系接着剤の塗布量が多いと、水系接着剤の乾燥が不十分となり、偏光子が湾曲したり、若しくは偏光度が低下することがある。偏光子または位相差フィルムに塗布した直後の上記水系接着剤の塗布量は、0.05〜10g/mであることが好ましい。
【0089】
偏光子の一方面とは反対側の他方面には、接着剤、好ましくは上記水系接着剤を介して、保護フィルムが積層されて一体化されていてもよい。保護フィルムとしては、偏光板が湾曲するのを防ぐため、保護フィルムの透湿度が、位相差フィルムの透湿度の±50%以内であるものが好適に用いられる。
【0090】
上記保護フィルムを構成する材料としては、特に限定されないが、位相差フィルムを構成している非晶性熱可塑性樹脂が好ましく、ノルボルネン系樹脂がより好ましい。
【0091】
偏光板では、位相差フィルムの遅相軸と、この位相差フィルムに隣接する偏光子の吸収軸とが互いに直交するように調整される。
【0092】
本発明の偏光板は、透過型液晶表示装置または反射型液晶表示装置の何れの種類の液晶表示装置にも用いられ得る。
【0093】
透過型液晶表示装置に本発明の偏光板を使用した液晶表示装置としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0094】
液晶セルを構成している一対の基板の各外表面に一対の偏光板を配設し、液晶表示面とは反対側の基板側に配設した偏光板上に、バックライト型或いはサイドライト型の公知の照明システムを配設し、更に、駆動回路を組込んで透過型液晶表示装置が構成される。この透過型液晶表示装置においては、一対の偏光板の内の一方或いは双方の偏光板として、本発明の偏光板が用いられ、偏光板は位相差フィルムが基板に対向するように配設される。
【0095】
反射型液晶表示装置に本発明の偏光板を使用した液晶表示装置としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0096】
液晶セルを構成している一対の基板において、液晶表示面とされる側の基板上に、位相差フィルムが基板に対向するように本発明の偏光板が配設される。他方、液晶表示面とされる側とは反対側の基板上に反射層が配設されて、反射型液晶表示装置が構成される。
【0097】
上記液晶セルとしては、従来より用いられている液晶セルであれば特に限定されない。OCBモード、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードなどの各種液晶表示デバイスに、本発明の位相差フィルム、複合偏光板および偏光板を用いることができる。
【0098】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
非晶性熱可塑性樹脂である環状オレフィン系樹脂として、開環重合による熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア#1420」)を用意した。熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、商品名「DSC220C」)を用いて測定したところ、135.5℃であった。
【0100】
この熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を一軸押出機に供給して溶融、混練し、一軸押出機の先端に取り付けた金型から溶融押出を行い、フィルムを得、フィルム中央部を中心に幅1000mmとなるようスリットし、延伸前の原反フィルムとしての長尺状の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを得た。なお、フィルム厚みの調整は、金型の樹脂吐出口であるリップ間隔を微調整することで行った。
【0101】
延伸前の原反フィルムの幅方向の厚みは、両端から中央にいくにつれて厚くされており、2次曲線状の中凸の形状であった。また、延伸前の原反フィルムは、フィルム中央部の厚みが102.7μm、フィルム端部の厚みが92.8μm、フィルムの幅方向の平均厚みが100.0μmであり、フィルムの幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.107倍であった。原反フィルムの幅方向の厚みプロファイルを図2に示した。
【0102】
なお、フィルムの厚みは、1/1000mmデジタル厚み計を用いて測定した。フィルムの幅方向に50mm間隔で複数の測定ラインを設け、各測定ラインについて、フィルムの長さ方向に1m間隔で20箇所(N=20)フィルムの厚みを測定した。
【0103】
次に、原反フィルムを連続的に巻き出し、ロール間ネックイン延伸機を用いてその長さ方向(縦方向)に延伸を行った。原反フィルムを連続的に145℃に加熱し、延伸倍率が1.45倍になるように145℃で延伸し、その後23℃まで徐々に冷却して、縦延伸されたフィルムをロール状に連続的に巻き取った。
【0104】
さらに、縦延伸されたフィルムを連続的に巻き出し、テンター延伸機を用いてその幅方向(横方向)に延伸を行った。縦延伸されたフィルムを連続的に140℃に加熱し、延伸倍率が1.6倍になるように140℃で延伸し、その後23℃まで徐々に冷却して、横延伸されたフィルムをロール状に連続的に巻き取り、フィルム中央部を中心に幅1000mmとなるようスリットし、位相差フィルムを得た。
【0105】
得られた位相差フィルムにおいて、リタデーションRo,Rthを自動複屈折測定装置(王子計測機器社製 商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて測定した。フィルムの幅方向に50mm間隔で複数の測定ラインを設け、各測定ラインについて、フィルムの長さ方向に1m間隔で20箇所(N=20)リタデーションRo,Rthを測定した。
【0106】
(比較例1)
金型の樹脂吐出口であるリップ間隔を微調整することにより、フィルムの厚みを異ならせたこと以外は実施例1と同様にして、延伸前の原反フィルムとしての長尺状の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを得た。
【0107】
延伸前の原反フィルムの幅方向の厚みは、両端から中央にいくにつれて厚くされており、2次曲線状の中凸の形状であった。また、実施例1と同様にしてフィルム厚みを測定したところ、延伸前の原反フィルムは、フィルム中央部の厚みが100.1μm、フィルム端部の厚みが99.8μm、フィルムの幅方向の平均厚みが100.0μmであり、フィルムの幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.003倍であった。原反フィルムの幅方向の厚みプロファイルを図3に示した。
【0108】
この原反フィルムについて、実施例1と同様にして縦延伸工程及び横延伸工程を行い、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムについて、実施例1と同様にして、リタデーションRo,Rthを測定した。
【0109】
結果を下記表1に示す。
【0110】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】延伸前の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを成膜するのに用いられる装置の概略構成図。
【図2】実施例1で得られた延伸前の原反フィルムの幅方向の厚みプロファイルを示す図。
【図3】比較例1で得られた延伸前の原反フィルムの幅方向の厚みプロファイルを示す図。
【符号の説明】
【0112】
1…押出機
2…金型
3…フィルム
4…冷却ロール
5…タッチロール
6、7…ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向及び幅方向を有する長尺状の非晶性熱可塑性樹脂フィルムを長さ方向に延伸する縦延伸工程の後に、縦延伸された前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向に延伸する横延伸工程が行われる逐次二軸延伸法により位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造方法であって、
延伸前の前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向両端部の厚みの1.03倍以上の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いることを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
【請求項2】
延伸前の前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向中央部の厚みが幅方向の両端部の厚みの1.03〜1.15倍の厚みとされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いる、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項3】
延伸前の前記非晶性熱可塑性樹脂フィルムとして、幅方向の厚みが両端から中央にいくにつれて厚くされている非晶性熱可塑性樹脂フィルムを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法により得られ、
面内のリタデーションRoが0〜200nmの範囲にあり、厚み方向のリタデーションRthが50〜500nmの範囲にあり、かつ幅方向における面内のリタデーションRoのプロファイルの振れ幅が20nm以下であることを特徴とする、位相差フィルム。
【請求項5】
偏光板の一方面に、請求項4に記載の位相差フィルムが積層されており、前記偏光板と前記位相差フィルムとが一体化されていることを特徴とする、複合偏光板。
【請求項6】
偏光子の一方面に、請求項4に記載の位相差フィルムが積層されており、前記偏光子と前記位相差フィルムとが一体化されていることを特徴とする、偏光板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−39808(P2008−39808A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209642(P2006−209642)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】