位相差板及びプロジェクタ
【課題】実用性を有しコストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供する。
【解決手段】入射面62に入射光L1が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が略45°となる状態で設置される位相差板6を、水晶からYカットで切り出した水晶板を基にして、板厚dが21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成した。位相差板6を1枚の板状にしているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。位相差板6の板厚dを21.2μm〜35.6μmに設定しているので、位相差板6を上記の条件で設置したときの三色波長帯での三色偏光変換効率を0.8以上にすることができ、プロジェクタに利用した場合でも、三色波長帯の入射光L1を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができる。
【解決手段】入射面62に入射光L1が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が略45°となる状態で設置される位相差板6を、水晶からYカットで切り出した水晶板を基にして、板厚dが21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成した。位相差板6を1枚の板状にしているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。位相差板6の板厚dを21.2μm〜35.6μmに設定しているので、位相差板6を上記の条件で設置したときの三色波長帯での三色偏光変換効率を0.8以上にすることができ、プロジェクタに利用した場合でも、三色波長帯の入射光L1を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶板を基に形成された位相差板及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶プロジェクタ等において、光源からの入射角の偏光をそろえる偏光変換素子に用いられる光学素子として、積層位相差板が知られている(特許文献1)。
この積層位相差板は、水晶基板からなる2枚の位相差板により構成される。これらの位相差板は、結晶光学軸(以下、光学軸と称す)が交差するように貼り合わされている。
これにより積層位相差板は、1/2位相差板として機能し、入射光の偏光面を90°回転した偏光面に変換する。この入射光は、青色波長帯(概ね400nm〜500nm)、あるいは緑色波長帯(概ね500nm〜600nm)、あるいは赤色波長帯(概ね600nm〜700nm)のいずれかの波長帯に属する、または三色波長帯(概ね400nm〜700nm)に属する光である。
液晶プロジェクタ等では、様々な光学素子を用いて、光源からの光線から紫外線等を除き、上記の三つの波長帯に色分離する。そして、液晶シャッタで階調した後、再びこれらを色合成し、映像情報を投射する。これらの光学素子で構成される光路中では、複数の位相差板が用いられる。これらの位相差板に入射する光は、前記のいずれかの波長帯に属する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−170853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で示される従来例では、板厚が小さい2枚の位相差板を貼り合わせるため、この貼り合わせる作業が容易でなく、歩留まりが落ちてしまうという問題点がある。また、2枚の位相差板を用いるので、部品点数が多くなり、コストアップにつながってしまうという問題点がある。
ところで、位相差板は、十分な偏光変換効率を有し、例えばプロジェクタに利用可能な実用性を備えている必要がある。この偏光変換効率とは、例えばP偏光成分からS偏光成分に偏光する場合に変換される割合を示し、P偏光成分が全てS偏光成分に偏光されたとすると、理想値の1.00として示される。この偏光変換効率が理想値1.00に近いほど、位相差板を通過した光量の損失が少なく、明るい映像を投射可能な液晶プロジェクタを生産するのに好適である。
以上のことから、実用性を有しコストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、実用性を有しコストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板及びプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0007】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。従って、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を21.2μm〜35.6μmに設定しているので、この位相差板を入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態(以下、入射光対応状態と称す)で設置したときの三色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、三色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板をプロジェクタに用いる場合、一般的に、この位相差板をレンズアレイの光射出側において、プロジェクタの設計上の照明光軸と、位相差板の入射面とが直交するように、つまりレンズアレイから射出される入射光が入射面に0°の入射角度で入射されるように設置する。このような構成では、レンズアレイの焦点位置などにより、レンズアレイからの射出光が位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射される。
さらに、位相差板の三色偏光変換効率と、この位相差板を用いたプロジェクタによる映像の投射状態との関係を調べたところ、三色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの青色成分、緑色成分、赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置した場合でも、つまり−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、三色波長帯の入射光を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0008】
[適用例2]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が400nm〜500nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を16.8μm〜30.4μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が400nm〜500nm、すなわち青色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、青色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の青色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、青色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの青色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0010】
[適用例3]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が500nm〜600nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を21.2μm〜38.4μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が500nm〜600nm、すなわち緑色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、緑色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の緑色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、緑色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの緑色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0012】
[適用例4]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が600nm〜700nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0013】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を25.5μm〜46.5μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が600nm〜700nm、すなわち赤色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、赤色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の赤色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、赤色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの赤色成分の再現性を有し、かつ、明るさを有する映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0014】
[適用例5]
本適用例に係わるプロジェクタは、光源装置と、この光源装置から射出され、偏光分離素子で分離された一方の光を偏光光に変換する請求項1から請求項4のいずれかに記載の位相差板と、前記偏光分離素子と前記位相差板とからなる偏光変換素子と、この偏光変換素子で形成された偏光光を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置とを備え、前記位相差板は、前記光源装置から射出され、前記偏光分離素子で分離された入射光が、入射面に−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置されたことを特徴とする。
本適用例では、前述の効果を奏することができるプロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。この第1実施形態では、三色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1は、第1実施形態および後述する第2〜第4実施形態の位相差板を説明する説明図である。
図1に示すように、位相差板6は、板厚dが21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6は、光学軸61が板面に沿って存在するYカット水晶基板から形成されている。ここで、位相差板6を形成する方法としては、水晶からYカットで切り出した水晶板をエッチング処理、あるいは研磨処理することにより、板厚dが上記の範囲となるように形成する方法が例示できる。
この位相差板6は、入射面62の法線方向と等しい方向から(0°の入射角度で)入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。この光学軸方位角θ1は、入射光L1の水平の振動面63に対する光学軸61のなす角度を、振動面63から反時計回りに表したものである。
【0016】
上記の構成により、位相差板6は、1/2波長位相差板として機能する。これにより、位相差板6は、入射光L1のうちP偏光成分である直線偏光91が入射されると、直線偏光91の位相が180°ずれることにより偏光面が90°回転させられて、S偏光成分である偏光光92に偏光変換されて射出される。
【0017】
次に、第1実施形態の位相差板6によるP偏光成分のS偏光成分への偏光変換効率について説明する。
位相差板6の偏光変換効率は、以下の式(1)、式(2)、及びミューラ行列式などに基づいて得た。
δ=2πd(Ne−No)/λ ……(1)
T=4sin2(θ1)・cos2(θ1)・sin2δ/2……(2)
ここで、δ:位相差、d:板厚、Ne:異常光線屈折率、No:常光線屈折率、λ:波長、T:偏光変換効率、θ1:光学軸方位角を表す。
【0018】
具体的には、図2に示すような光線進行角度θ2を0°に、入射光L1の入射角度θ3を+10°にそれぞれ固定して、三色波長帯(400nm〜700nm)の範囲における5nm間隔ごとの偏光変換効率を、上記の式(1)、(2)などに基づいて得た。光線進行角度θ2は、入射光L1の光路を入射面62に投射したときの投射像Pと、位相差板6の振動面63とのなす角度を、振動面63から反時計回りに表したものである。つまり、P偏光成分の光線進行角度θ2は、0°として表される。
さらに、光線進行角度θ2を0°に固定したままで、入射光L1の入射角度θ3を+8°、+6°、+4°、+2°、0°、−2°、−4°、−6°、−8°、−10°にしたときの三色波長帯の偏光変換効率を得た。そして、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率を波長ごとに平均したものを、光線進行角度θ2が0°の平均偏光変換効率として求めた。
次に、同様にして、光線進行角度θ2が+22.5°、+45°、−22.5°、−45°の平均偏光変換効率を求めた。
そして、光線進行角度θ2が−45°〜+45°の平均偏光変換効率を三色波長帯全域において平均したものを、位相差板6の三色偏光変換効率として求めた。
【0019】
具体的に、位相差板6の板厚dが下限値(21.2μm)、中心値(28.4μm)、上限値(35.6μm)の場合、三色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0020】
板厚dが下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図3に示すようになった。
ここで、図3のグラフおよび後述する同様の各グラフにおいて、各光線進行角度θ2における各入射角度θ3での偏光変換効率に大きな差異がないため、数本の線しか描かれていないように示されているが、実際には55本(光線進行角度θ2が5通り、入射角度θ3が11通り)の線が描かれている。
また、板厚dが中心値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図4に示すようになった。
さらに、板厚dが上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図5に示すようになった。
そして、図3〜図5の関係に基づいて、板厚dが下限値、中心値、上限値の位相差板6における三色偏光変換効率、つまり図3〜図5に示すような三色波長帯領域Aaで囲まれる部分において平均したものを求めた。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、板厚dが下限値、中心値、上限値の位相差板6における三色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚dが21.2μm〜35.6μmの位相差板6が入射光対応状態で設置された場合、その三色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0023】
次に、第1実施形態の位相差板6と偏光分離素子7とから構成される偏光変換素子8を用いたプロジェクタの一例を図6に基づいて説明する。
プロジェクタ1は、外装筺体2と、投射光学装置としての投射レンズ3と、光学ユニット4等を備える。
光学ユニット4は、光源装置41と、均一照明光学装置42と、色分離光学装置43と、リレー光学装置44と、光学装置45と、これら光学部品42〜45を内部に収納配置する光学部品用筐体46とを備える。
光源装置41は、光源ランプ411と、リフレクタ412と、平行化レンズ413とを有しており、光源ランプ411から射出された放射状の光束をリフレクタ412にて反射させ、平行化レンズ413を介して平行光として射出する。
【0024】
均一照明光学装置42は、第1レンズアレイ421と、第2レンズアレイ422と、上述の偏光変換素子8と、重畳レンズ424とを備える。
第1レンズアレイ421は、入射光軸方向から見て略矩形状の輪郭を有する第1小レンズが、入射光軸に対し略直交する面内においてマトリクス状に配列された構成を有している。各第1小レンズは、光源装置41から射出される光束を複数の部分光束に分割している。
第2レンズアレイ422は、第1レンズアレイ421と略同様な構成を有しており、第2小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ422は、重畳レンズ424とともに、第1レンズアレイ421の各第1小レンズの像を光学装置45の後述する液晶パネル上に結像させる機能を有している。
【0025】
偏光変換素子8は、第2レンズアレイ422と重畳レンズ424との間に設置される。この偏光変換素子8の偏光分離素子7は、図7に示すように、ガラスなどからなるプリズム72の斜面に偏光分離膜73が形成されたプリズムアレイ71を複数備えている。この偏光分離素子7は、複数のプリズムアレイ71の斜面同士が接合されることにより、略薄板状に形成されている。
位相差板6は、偏光分離素子7の光射出側面に、光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と、入射面62とが直交するように設置されている。ここで、第2レンズアレイ422の焦点位置などにより、第2レンズアレイ422からの射出光が位相差板6に−10°〜+10°の入射角度で入射される。つまり、位相差板6は、入射光対応状態で設置されている。
【0026】
そして、偏光変換素子8は、偏光分離素子7により第2レンズアレイ422からの三色波長帯のS偏光成分を偏光分離膜73で反射させるとともに、P偏光成分を透過させる。この透過したS偏光成分を隣の偏光分離膜73でさらに反射させて、位相差板6を介さずに重畳レンズ424に射出する。また、偏光変換素子8は、偏光分離膜73を透過したP偏光成分を位相差板6により0.8以上の三色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換して、重畳レンズ424に射出する。
具体的に、偏光変換素子8によって略1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ424によって最終的に光学装置45の後述する液晶パネル上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源装置41からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子8を用いることで、光源装置41からの射出光を略1種類の偏光光に変換し、光学装置45での光の利用効率を高めている。
【0027】
色分離光学装置43は、2枚のダイクロイックミラー431,432と、反射ミラー433とを備え、ダイクロイックミラー431,432により均一照明光学装置42から射出された複数の部分光束を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。
リレー光学装置44は、入射側レンズ441、リレーレンズ443、および反射ミラー442,444を備え、色分離光学装置43で分離された赤色光を光学装置45の後述する赤色光用の液晶パネルまで導く機能を有している。
【0028】
この際、色分離光学装置43のダイクロイックミラー431では、均一照明光学装置42から射出された光束の青色光成分が反射するとともに、赤色光成分と緑色光成分とが透過する。ダイクロイックミラー431によって反射した青色光は、反射ミラー433で反射し、フィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する青色光用の液晶パネルに達する。
このフィールドレンズ425は、第2レンズアレイ422から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の緑色光用、赤色光用の液晶パネルの光束入射側に設けられたフィールドレンズ425も同様である。
【0029】
ダイクロイックミラー431を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光はダイクロイックミラー432によって反射し、フィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する緑色光用の液晶パネルに達する。一方、赤色光はダイクロイックミラー432を透過してリレー光学装置44を通り、さらにフィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する赤色光用の液晶パネルに達する。
【0030】
光学装置45は、光変調装置としての3枚の液晶パネル451(赤色光用の液晶パネルを451R、緑色光用の液晶パネルを451G、青色光用の液晶パネルを451Bとする)と、これら液晶パネル451の光束入射側および光束射出側にそれぞれ配置される偏光素子5と、クロスダイクロイックプリズム454とを備える。
【0031】
偏光素子5は、各液晶パネル451の光束入射側にそれぞれ配置される入射側偏光板5Aと、各液晶パネル451の光束射出側にそれぞれ配置される射出側偏光板5Bとを備える。
入射側偏光板5Aは、色分離光学装置43で分離された各色光のうち、偏光変換素子8で揃えられた偏光方向と略同一方向の偏光方向を有する偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。
液晶パネル451は、入射側偏光板5Aから射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
射出側偏光板5Bは、入射側偏光板5Aと略同様の構成を有し、液晶パネル451の画像形成領域から射出された光束のうち、入射側偏光板5Aにおける光束の透過軸と直交する偏光方向を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム454は、射出側偏光板5Bから射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する。このクロスダイクロイックプリズム454で形成されたカラー画像は、上述した投射レンズ3によりスクリーン等へ拡大投射される。
【0033】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6を1枚の板状に形成しているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。従って、コストアップを招くことなく容易に位相差板6を製造できる。
そして、位相差板6の板厚dを21.2μm〜35.6μmに設定しているので、位相差板6を入射光対応状態で設置したときの三色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6をプロジェクタ1における第2レンズアレイ422の光射出側に設置した場合でも、つまり−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、三色波長帯の入射光を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6を提供できる。
また、位相差板6をプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない青色成分、緑色成分、赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。この第2実施形態では、青色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Aは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d1が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Aは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0035】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様の方法により、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの青色波長帯(400nm〜500nm)における平均偏光変換効率を求め、青色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Aの青色偏光変換効率として求めた。
【0036】
具体的に、位相差板6Aの板厚d1が下限値(16.8μm)、中間値(28.4μm)、上限値(30.4μm)の場合、青色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0037】
板厚d1が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図8に示すようになった。
また、板厚d1が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d1が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図9に示すようになった。
そして、図4,7,8の関係に基づいて、板厚d1が下限値、中間値、上限値の位相差板6Aにおける青色偏光変換効率、つまり図4,7,8に示すような青色波長帯領域Abで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すように、板厚d1が下限値、中間値、上限値の位相差板6Aにおける青色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d1が16.8μm〜30.4μmの位相差板6Aが入射光対応状態で設置された場合、その青色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0040】
この第2実施形態の位相差板6Aおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、ダイクロイックミラー431と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Aの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Aの入射面62とが直交するように設置される。ここで、偏光変換素子よりも光束入射側に設けられたレンズの焦点位置などにより、位相差板6Aに−10°〜+10°の入射角度で入射されることがある。つまり、位相差板6Aは、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Aは、ダイクロイックミラー431で分離された青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0041】
従って、第2実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Aを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Aを製造できる。
そして、位相差板6Aの板厚d1を16.8μm〜30.4μmに設定しているので、位相差板6Aを入射光対応状態で設置したときの青色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Aを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Aを提供できる。
また、位相差板6Aをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない青色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。この第3実施形態では、緑色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Bは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d2が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Bは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0043】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様に、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの緑色波長帯(500nm〜600nm)における平均偏光変換効率を求め、緑色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Bの緑色偏光変換効率として求めた。
【0044】
具体的に、位相差板6Bの板厚d2が下限値(21.2μm)、中間値(28.4μm)、上限値(38.4μm)の場合、緑色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0045】
板厚d2が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図3に示すようになった。
また、板厚d2が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d2が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図10に示すようになった。
そして、図3,4,10の関係に基づいて、板厚d2が下限値、中間値、上限値の位相差板6Bにおける緑色偏光変換効率、つまり図3,4,10に示すような緑色波長帯領域Agで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示すように、板厚d2が下限値、中間値、上限値の位相差板6Bにおける緑色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d2が21.2μm〜38.4μmの位相差板6Bが入射光対応状態で設置された場合、その緑色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0048】
この第3実施形態の位相差板6Bおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、ダイクロイックミラー432と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Bの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Bの入射面62とが直交するように設置される。つまり、位相差板6Bは、光束入射側に設けられたレンズなどの作用により、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Bは、ダイクロイックミラー432で分離された緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0049】
従って、第3実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Bを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Bを製造できる。
そして、位相差板6Bの板厚d2を21.2μm〜38.4μmに設定しているので、位相差板6Bを入射光対応状態で設置したときの緑色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Bを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Bを提供できる。
また、位相差板6Bをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない緑色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0050】
次に、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。この第4実施形態では、赤色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Cは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d3が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Cは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0051】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様に、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの赤色波長帯(600nm〜700nm)における平均偏光変換効率を求め、赤色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Cの赤色偏光変換効率として得た。
【0052】
具体的に、位相差板6Cの板厚d3が下限値(25.5μm)、中間値(28.4μm)、上限値(46.5μm)の場合、赤色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0053】
板厚d3が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図11に示すようになった。
また、板厚d3が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d3が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図12に示すようになった。
そして、図4,11,12の関係に基づいて、板厚d3が下限値、中間値、上限値の位相差板6Cにおける赤色偏光変換効率、つまり図4,11,12に示すような赤色波長帯領域Arで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4に示すように、板厚d3が下限値、中間値、上限値の位相差板6Cにおける赤色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d3が25.5μm〜46.5μmの位相差板6Cが入射光対応状態で設置された場合、その赤色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0056】
この第4実施形態の位相差板6Cおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、反射ミラー442と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Cの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Cの入射面62とが直交するように設置される。つまり、位相差板6Cは、光束入射側に設けられたレンズなどの作用により、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Cは、ダイクロイックミラー432で分離された赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0057】
従って、第4実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Cを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Cを製造できる。
そして、位相差板6Cの板厚d3を25.5μm〜46.5μmに設定しているので、位相差板6Cを入射光対応状態で設置したときの赤色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Cを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Cを提供できる。
また、位相差板6Cをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0058】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、位相差板6、6A,6B,6Cの用途として、プロジェクタの偏光変換素子を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばクロスプリズムに用いてもよいし、プロジェクタ以外の装置に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、プロジェクタ、その他の装置に用いられる位相差板に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1〜第4実施形態にかかる位相差板を説明する説明図。
【図2】前記第1〜第4実施形態にかかる入射光の光線進行角度および入射角度を説明する説明図。
【図3】前記第1,第3実施形態にかかる三色,緑色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図4】前記第1〜第4実施形態にかかる三色,青色,緑色,赤色波長帯用位相差板の板厚が中心値または中間値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図5】前記第1実施形態にかかる三色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図6】前記第1実施形態にかかるプロジェクタを示す概念図。
【図7】前記第1実施形態にかかる位相差板を備えた偏光変換素子を説明する説明図。
【図8】前記第2実施形態にかかる青色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図9】前記第2実施形態にかかる青色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図10】前記第3実施形態にかかる緑色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図11】前記第4実施形態にかかる赤色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図12】前記第4実施形態にかかる赤色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【符号の説明】
【0061】
1…プロジェクタ、3…投射光学装置としての投射レンズ、6,6A,6B,6C…位相差板、7…偏光分離素子、8…偏光変換素子、41…光源装置、62…入射面、451…光変調装置としての液晶パネル、L1…入射光
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶板を基に形成された位相差板及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶プロジェクタ等において、光源からの入射角の偏光をそろえる偏光変換素子に用いられる光学素子として、積層位相差板が知られている(特許文献1)。
この積層位相差板は、水晶基板からなる2枚の位相差板により構成される。これらの位相差板は、結晶光学軸(以下、光学軸と称す)が交差するように貼り合わされている。
これにより積層位相差板は、1/2位相差板として機能し、入射光の偏光面を90°回転した偏光面に変換する。この入射光は、青色波長帯(概ね400nm〜500nm)、あるいは緑色波長帯(概ね500nm〜600nm)、あるいは赤色波長帯(概ね600nm〜700nm)のいずれかの波長帯に属する、または三色波長帯(概ね400nm〜700nm)に属する光である。
液晶プロジェクタ等では、様々な光学素子を用いて、光源からの光線から紫外線等を除き、上記の三つの波長帯に色分離する。そして、液晶シャッタで階調した後、再びこれらを色合成し、映像情報を投射する。これらの光学素子で構成される光路中では、複数の位相差板が用いられる。これらの位相差板に入射する光は、前記のいずれかの波長帯に属する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−170853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で示される従来例では、板厚が小さい2枚の位相差板を貼り合わせるため、この貼り合わせる作業が容易でなく、歩留まりが落ちてしまうという問題点がある。また、2枚の位相差板を用いるので、部品点数が多くなり、コストアップにつながってしまうという問題点がある。
ところで、位相差板は、十分な偏光変換効率を有し、例えばプロジェクタに利用可能な実用性を備えている必要がある。この偏光変換効率とは、例えばP偏光成分からS偏光成分に偏光する場合に変換される割合を示し、P偏光成分が全てS偏光成分に偏光されたとすると、理想値の1.00として示される。この偏光変換効率が理想値1.00に近いほど、位相差板を通過した光量の損失が少なく、明るい映像を投射可能な液晶プロジェクタを生産するのに好適である。
以上のことから、実用性を有しコストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、実用性を有しコストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板及びプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0007】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。従って、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を21.2μm〜35.6μmに設定しているので、この位相差板を入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態(以下、入射光対応状態と称す)で設置したときの三色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、三色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板をプロジェクタに用いる場合、一般的に、この位相差板をレンズアレイの光射出側において、プロジェクタの設計上の照明光軸と、位相差板の入射面とが直交するように、つまりレンズアレイから射出される入射光が入射面に0°の入射角度で入射されるように設置する。このような構成では、レンズアレイの焦点位置などにより、レンズアレイからの射出光が位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射される。
さらに、位相差板の三色偏光変換効率と、この位相差板を用いたプロジェクタによる映像の投射状態との関係を調べたところ、三色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの青色成分、緑色成分、赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置した場合でも、つまり−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、三色波長帯の入射光を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0008】
[適用例2]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が400nm〜500nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を16.8μm〜30.4μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が400nm〜500nm、すなわち青色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、青色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の青色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、青色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの青色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0010】
[適用例3]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が500nm〜600nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を21.2μm〜38.4μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が500nm〜600nm、すなわち緑色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、緑色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の緑色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、緑色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの緑色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0012】
[適用例4]
本適用例に係わる位相差板は、入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が600nm〜700nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする。
【0013】
本適用例では、位相差板を1枚の板状に形成しているので、上述したような作用により、コストアップを招くことなく容易に製造可能な位相差板を提供できる。
そして、位相差板の板厚を25.5μm〜46.5μmに設定しているので、位相差板を入射光対応状態で設置したときの波長が600nm〜700nm、すなわち赤色波長帯での平均の偏光変換効率(以下、赤色偏光変換効率と称す)を0.8以上にすることができる。
ここで、位相差板の赤色偏光変換効率と、映像の投射状態との関係を調べたところ、赤色偏光変換効率が0.8以上であれば、実用的に問題がないレベルの赤色成分の再現性を有し、かつ、明るさを有する映像を投射できることが確認できている。
以上のことから、本適用例の位相差板を含む偏光変換素子をプロジェクタにおけるレンズアレイの光射出側に設置して、位相差板に−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板を提供できる。
【0014】
[適用例5]
本適用例に係わるプロジェクタは、光源装置と、この光源装置から射出され、偏光分離素子で分離された一方の光を偏光光に変換する請求項1から請求項4のいずれかに記載の位相差板と、前記偏光分離素子と前記位相差板とからなる偏光変換素子と、この偏光変換素子で形成された偏光光を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置とを備え、前記位相差板は、前記光源装置から射出され、前記偏光分離素子で分離された入射光が、入射面に−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置されたことを特徴とする。
本適用例では、前述の効果を奏することができるプロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。この第1実施形態では、三色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1は、第1実施形態および後述する第2〜第4実施形態の位相差板を説明する説明図である。
図1に示すように、位相差板6は、板厚dが21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6は、光学軸61が板面に沿って存在するYカット水晶基板から形成されている。ここで、位相差板6を形成する方法としては、水晶からYカットで切り出した水晶板をエッチング処理、あるいは研磨処理することにより、板厚dが上記の範囲となるように形成する方法が例示できる。
この位相差板6は、入射面62の法線方向と等しい方向から(0°の入射角度で)入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。この光学軸方位角θ1は、入射光L1の水平の振動面63に対する光学軸61のなす角度を、振動面63から反時計回りに表したものである。
【0016】
上記の構成により、位相差板6は、1/2波長位相差板として機能する。これにより、位相差板6は、入射光L1のうちP偏光成分である直線偏光91が入射されると、直線偏光91の位相が180°ずれることにより偏光面が90°回転させられて、S偏光成分である偏光光92に偏光変換されて射出される。
【0017】
次に、第1実施形態の位相差板6によるP偏光成分のS偏光成分への偏光変換効率について説明する。
位相差板6の偏光変換効率は、以下の式(1)、式(2)、及びミューラ行列式などに基づいて得た。
δ=2πd(Ne−No)/λ ……(1)
T=4sin2(θ1)・cos2(θ1)・sin2δ/2……(2)
ここで、δ:位相差、d:板厚、Ne:異常光線屈折率、No:常光線屈折率、λ:波長、T:偏光変換効率、θ1:光学軸方位角を表す。
【0018】
具体的には、図2に示すような光線進行角度θ2を0°に、入射光L1の入射角度θ3を+10°にそれぞれ固定して、三色波長帯(400nm〜700nm)の範囲における5nm間隔ごとの偏光変換効率を、上記の式(1)、(2)などに基づいて得た。光線進行角度θ2は、入射光L1の光路を入射面62に投射したときの投射像Pと、位相差板6の振動面63とのなす角度を、振動面63から反時計回りに表したものである。つまり、P偏光成分の光線進行角度θ2は、0°として表される。
さらに、光線進行角度θ2を0°に固定したままで、入射光L1の入射角度θ3を+8°、+6°、+4°、+2°、0°、−2°、−4°、−6°、−8°、−10°にしたときの三色波長帯の偏光変換効率を得た。そして、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率を波長ごとに平均したものを、光線進行角度θ2が0°の平均偏光変換効率として求めた。
次に、同様にして、光線進行角度θ2が+22.5°、+45°、−22.5°、−45°の平均偏光変換効率を求めた。
そして、光線進行角度θ2が−45°〜+45°の平均偏光変換効率を三色波長帯全域において平均したものを、位相差板6の三色偏光変換効率として求めた。
【0019】
具体的に、位相差板6の板厚dが下限値(21.2μm)、中心値(28.4μm)、上限値(35.6μm)の場合、三色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0020】
板厚dが下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図3に示すようになった。
ここで、図3のグラフおよび後述する同様の各グラフにおいて、各光線進行角度θ2における各入射角度θ3での偏光変換効率に大きな差異がないため、数本の線しか描かれていないように示されているが、実際には55本(光線進行角度θ2が5通り、入射角度θ3が11通り)の線が描かれている。
また、板厚dが中心値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図4に示すようになった。
さらに、板厚dが上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図5に示すようになった。
そして、図3〜図5の関係に基づいて、板厚dが下限値、中心値、上限値の位相差板6における三色偏光変換効率、つまり図3〜図5に示すような三色波長帯領域Aaで囲まれる部分において平均したものを求めた。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、板厚dが下限値、中心値、上限値の位相差板6における三色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚dが21.2μm〜35.6μmの位相差板6が入射光対応状態で設置された場合、その三色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0023】
次に、第1実施形態の位相差板6と偏光分離素子7とから構成される偏光変換素子8を用いたプロジェクタの一例を図6に基づいて説明する。
プロジェクタ1は、外装筺体2と、投射光学装置としての投射レンズ3と、光学ユニット4等を備える。
光学ユニット4は、光源装置41と、均一照明光学装置42と、色分離光学装置43と、リレー光学装置44と、光学装置45と、これら光学部品42〜45を内部に収納配置する光学部品用筐体46とを備える。
光源装置41は、光源ランプ411と、リフレクタ412と、平行化レンズ413とを有しており、光源ランプ411から射出された放射状の光束をリフレクタ412にて反射させ、平行化レンズ413を介して平行光として射出する。
【0024】
均一照明光学装置42は、第1レンズアレイ421と、第2レンズアレイ422と、上述の偏光変換素子8と、重畳レンズ424とを備える。
第1レンズアレイ421は、入射光軸方向から見て略矩形状の輪郭を有する第1小レンズが、入射光軸に対し略直交する面内においてマトリクス状に配列された構成を有している。各第1小レンズは、光源装置41から射出される光束を複数の部分光束に分割している。
第2レンズアレイ422は、第1レンズアレイ421と略同様な構成を有しており、第2小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ422は、重畳レンズ424とともに、第1レンズアレイ421の各第1小レンズの像を光学装置45の後述する液晶パネル上に結像させる機能を有している。
【0025】
偏光変換素子8は、第2レンズアレイ422と重畳レンズ424との間に設置される。この偏光変換素子8の偏光分離素子7は、図7に示すように、ガラスなどからなるプリズム72の斜面に偏光分離膜73が形成されたプリズムアレイ71を複数備えている。この偏光分離素子7は、複数のプリズムアレイ71の斜面同士が接合されることにより、略薄板状に形成されている。
位相差板6は、偏光分離素子7の光射出側面に、光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と、入射面62とが直交するように設置されている。ここで、第2レンズアレイ422の焦点位置などにより、第2レンズアレイ422からの射出光が位相差板6に−10°〜+10°の入射角度で入射される。つまり、位相差板6は、入射光対応状態で設置されている。
【0026】
そして、偏光変換素子8は、偏光分離素子7により第2レンズアレイ422からの三色波長帯のS偏光成分を偏光分離膜73で反射させるとともに、P偏光成分を透過させる。この透過したS偏光成分を隣の偏光分離膜73でさらに反射させて、位相差板6を介さずに重畳レンズ424に射出する。また、偏光変換素子8は、偏光分離膜73を透過したP偏光成分を位相差板6により0.8以上の三色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換して、重畳レンズ424に射出する。
具体的に、偏光変換素子8によって略1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ424によって最終的に光学装置45の後述する液晶パネル上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源装置41からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子8を用いることで、光源装置41からの射出光を略1種類の偏光光に変換し、光学装置45での光の利用効率を高めている。
【0027】
色分離光学装置43は、2枚のダイクロイックミラー431,432と、反射ミラー433とを備え、ダイクロイックミラー431,432により均一照明光学装置42から射出された複数の部分光束を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。
リレー光学装置44は、入射側レンズ441、リレーレンズ443、および反射ミラー442,444を備え、色分離光学装置43で分離された赤色光を光学装置45の後述する赤色光用の液晶パネルまで導く機能を有している。
【0028】
この際、色分離光学装置43のダイクロイックミラー431では、均一照明光学装置42から射出された光束の青色光成分が反射するとともに、赤色光成分と緑色光成分とが透過する。ダイクロイックミラー431によって反射した青色光は、反射ミラー433で反射し、フィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する青色光用の液晶パネルに達する。
このフィールドレンズ425は、第2レンズアレイ422から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の緑色光用、赤色光用の液晶パネルの光束入射側に設けられたフィールドレンズ425も同様である。
【0029】
ダイクロイックミラー431を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光はダイクロイックミラー432によって反射し、フィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する緑色光用の液晶パネルに達する。一方、赤色光はダイクロイックミラー432を透過してリレー光学装置44を通り、さらにフィールドレンズ425を通って光学装置45の後述する赤色光用の液晶パネルに達する。
【0030】
光学装置45は、光変調装置としての3枚の液晶パネル451(赤色光用の液晶パネルを451R、緑色光用の液晶パネルを451G、青色光用の液晶パネルを451Bとする)と、これら液晶パネル451の光束入射側および光束射出側にそれぞれ配置される偏光素子5と、クロスダイクロイックプリズム454とを備える。
【0031】
偏光素子5は、各液晶パネル451の光束入射側にそれぞれ配置される入射側偏光板5Aと、各液晶パネル451の光束射出側にそれぞれ配置される射出側偏光板5Bとを備える。
入射側偏光板5Aは、色分離光学装置43で分離された各色光のうち、偏光変換素子8で揃えられた偏光方向と略同一方向の偏光方向を有する偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。
液晶パネル451は、入射側偏光板5Aから射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
射出側偏光板5Bは、入射側偏光板5Aと略同様の構成を有し、液晶パネル451の画像形成領域から射出された光束のうち、入射側偏光板5Aにおける光束の透過軸と直交する偏光方向を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム454は、射出側偏光板5Bから射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する。このクロスダイクロイックプリズム454で形成されたカラー画像は、上述した投射レンズ3によりスクリーン等へ拡大投射される。
【0033】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6を1枚の板状に形成しているので、貼り合わせる必要がなく、部品点数が多くなることもない。従って、コストアップを招くことなく容易に位相差板6を製造できる。
そして、位相差板6の板厚dを21.2μm〜35.6μmに設定しているので、位相差板6を入射光対応状態で設置したときの三色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6をプロジェクタ1における第2レンズアレイ422の光射出側に設置した場合でも、つまり−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射される場合であっても、三色波長帯の入射光を0.8以上の三色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6を提供できる。
また、位相差板6をプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない青色成分、緑色成分、赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。この第2実施形態では、青色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Aは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d1が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Aは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0035】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様の方法により、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの青色波長帯(400nm〜500nm)における平均偏光変換効率を求め、青色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Aの青色偏光変換効率として求めた。
【0036】
具体的に、位相差板6Aの板厚d1が下限値(16.8μm)、中間値(28.4μm)、上限値(30.4μm)の場合、青色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0037】
板厚d1が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図8に示すようになった。
また、板厚d1が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d1が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図9に示すようになった。
そして、図4,7,8の関係に基づいて、板厚d1が下限値、中間値、上限値の位相差板6Aにおける青色偏光変換効率、つまり図4,7,8に示すような青色波長帯領域Abで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すように、板厚d1が下限値、中間値、上限値の位相差板6Aにおける青色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d1が16.8μm〜30.4μmの位相差板6Aが入射光対応状態で設置された場合、その青色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0040】
この第2実施形態の位相差板6Aおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、ダイクロイックミラー431と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Aの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Aの入射面62とが直交するように設置される。ここで、偏光変換素子よりも光束入射側に設けられたレンズの焦点位置などにより、位相差板6Aに−10°〜+10°の入射角度で入射されることがある。つまり、位相差板6Aは、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Aは、ダイクロイックミラー431で分離された青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0041】
従って、第2実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Aを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Aを製造できる。
そして、位相差板6Aの板厚d1を16.8μm〜30.4μmに設定しているので、位相差板6Aを入射光対応状態で設置したときの青色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Aを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、青色波長帯の入射光を0.8以上の青色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Aを提供できる。
また、位相差板6Aをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない青色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。この第3実施形態では、緑色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Bは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d2が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Bは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0043】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様に、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの緑色波長帯(500nm〜600nm)における平均偏光変換効率を求め、緑色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Bの緑色偏光変換効率として求めた。
【0044】
具体的に、位相差板6Bの板厚d2が下限値(21.2μm)、中間値(28.4μm)、上限値(38.4μm)の場合、緑色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0045】
板厚d2が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図3に示すようになった。
また、板厚d2が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d2が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図10に示すようになった。
そして、図3,4,10の関係に基づいて、板厚d2が下限値、中間値、上限値の位相差板6Bにおける緑色偏光変換効率、つまり図3,4,10に示すような緑色波長帯領域Agで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示すように、板厚d2が下限値、中間値、上限値の位相差板6Bにおける緑色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d2が21.2μm〜38.4μmの位相差板6Bが入射光対応状態で設置された場合、その緑色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0048】
この第3実施形態の位相差板6Bおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、ダイクロイックミラー432と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Bの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Bの入射面62とが直交するように設置される。つまり、位相差板6Bは、光束入射側に設けられたレンズなどの作用により、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Bは、ダイクロイックミラー432で分離された緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0049】
従って、第3実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Bを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Bを製造できる。
そして、位相差板6Bの板厚d2を21.2μm〜38.4μmに設定しているので、位相差板6Bを入射光対応状態で設置したときの緑色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Bを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、緑色波長帯の入射光を0.8以上の緑色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Bを提供できる。
また、位相差板6Bをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない緑色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0050】
次に、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。この第4実施形態では、赤色偏光変換効率が0.8以上の位相差板について説明する。
図1に示すように、位相差板6Cは、Yカット水晶基板を基にして、板厚d3が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されている。この位相差板6Cは、偏光分離素子の光射出側面に取り付けられ、0°の入射角度で入射面62に入射光L1が入射される状態で、かつ、光学軸方位角θ1が45°となる状態で設置される。
【0051】
そして、第1実施形態の位相差板6と同様に、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射光L1の入射角度θ3が−10°〜+10°のときの赤色波長帯(600nm〜700nm)における平均偏光変換効率を求め、赤色波長帯全域において平均したものを、位相差板6Cの赤色偏光変換効率として得た。
【0052】
具体的に、位相差板6Cの板厚d3が下限値(25.5μm)、中間値(28.4μm)、上限値(46.5μm)の場合、赤色偏光変換効率は、以下のようになった。
【0053】
板厚d3が下限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図11に示すようになった。
また、板厚d3が中間値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、第1実施形態でも示したように、図4に示すようになった。
さらに、板厚d3が上限値の場合、光線進行角度θ2が−45°〜+45°、入射角度θ3が−10°〜+10°のときの偏光変換効率は、図12に示すようになった。
そして、図4,11,12の関係に基づいて、板厚d3が下限値、中間値、上限値の位相差板6Cにおける赤色偏光変換効率、つまり図4,11,12に示すような赤色波長帯領域Arで囲まれる部分において偏光変換効率を平均したものを求めた。その結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4に示すように、板厚d3が下限値、中間値、上限値の位相差板6Cにおける赤色偏光変換効率は、いずれも0.8以上となっていることがわかる。つまり、板厚d3が25.5μm〜46.5μmの位相差板6Cが入射光対応状態で設置された場合、その赤色偏光変換効率は、0.8以上になる。
【0056】
この第4実施形態の位相差板6Cおよび偏光分離素子を備えた偏光変換素子は、図6に示すような構成のうち偏光変換素子8が設けられていないプロジェクタ1において、反射ミラー442と、入射側偏光板5Aとの間の光路中に、位相差板6Cの光学軸方位角θ1が45°となる状態で、かつ、プロジェクタ1の設計上の照明光軸と位相差板6Cの入射面62とが直交するように設置される。つまり、位相差板6Cは、光束入射側に設けられたレンズなどの作用により、入射光対応状態で設置されている。
この位相差板6Cは、ダイクロイックミラー432で分離された赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で略1種類の偏光光に変換する。
【0057】
従って、第4実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
位相差板6Cを1枚の板状に形成しているため、第1実施形態と同様の作用により、コストアップを招くことなく容易に位相差板6Cを製造できる。
そして、位相差板6Cの板厚d3を25.5μm〜46.5μmに設定しているので、位相差板6Cを入射光対応状態で設置したときの赤色偏光変換効率を0.8以上にすることができる。従って、位相差板6Cを−10°〜+10°の入射角度で入射光が入射されるように設置した場合であっても、赤色波長帯の入射光を0.8以上の赤色偏光変換効率で偏光光に変換することができ、実用性を有する位相差板6Cを提供できる。
また、位相差板6Cをプロジェクタ1に使用すると、プロジェクタ1をコストアップを招くことなく容易に製造できる。さらに、実用的に問題がない赤色成分の再現性を有し、かつ、問題がない明るさの映像を投射できる。
【0058】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、位相差板6、6A,6B,6Cの用途として、プロジェクタの偏光変換素子を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばクロスプリズムに用いてもよいし、プロジェクタ以外の装置に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、プロジェクタ、その他の装置に用いられる位相差板に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1〜第4実施形態にかかる位相差板を説明する説明図。
【図2】前記第1〜第4実施形態にかかる入射光の光線進行角度および入射角度を説明する説明図。
【図3】前記第1,第3実施形態にかかる三色,緑色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図4】前記第1〜第4実施形態にかかる三色,青色,緑色,赤色波長帯用位相差板の板厚が中心値または中間値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図5】前記第1実施形態にかかる三色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図6】前記第1実施形態にかかるプロジェクタを示す概念図。
【図7】前記第1実施形態にかかる位相差板を備えた偏光変換素子を説明する説明図。
【図8】前記第2実施形態にかかる青色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図9】前記第2実施形態にかかる青色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図10】前記第3実施形態にかかる緑色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図11】前記第4実施形態にかかる赤色波長帯用位相差板の板厚が下限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【図12】前記第4実施形態にかかる赤色波長帯用位相差板の板厚が上限値のときの偏光変換効率を示すグラフ。
【符号の説明】
【0061】
1…プロジェクタ、3…投射光学装置としての投射レンズ、6,6A,6B,6C…位相差板、7…偏光分離素子、8…偏光変換素子、41…光源装置、62…入射面、451…光変調装置としての液晶パネル、L1…入射光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項2】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が400nm〜500nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項3】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が500nm〜600nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項4】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が600nm〜700nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項5】
光源装置と、この光源装置から射出され、偏光分離素子で分離された一方の光を偏光光に変換する請求項1から請求項4のいずれかに記載の位相差板と、前記偏光分離素子と前記位相差板とからなる偏光変換素子と、この偏光変換素子で形成された偏光光を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置とを備え、
前記位相差板は、前記光源装置から射出され、前記偏光分離素子で分離された入射光が、入射面に−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置されたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜35.6μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項2】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が400nm〜500nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が16.8μm〜30.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項3】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が500nm〜600nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が21.2μm〜38.4μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項4】
入射面に入射光が−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置され、波長が600nm〜700nmの前記入射光に対して適用される位相差板であって、
水晶からYカットで切り出した水晶により形成され、板厚が25.5μm〜46.5μmの1枚の板状に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項5】
光源装置と、この光源装置から射出され、偏光分離素子で分離された一方の光を偏光光に変換する請求項1から請求項4のいずれかに記載の位相差板と、前記偏光分離素子と前記位相差板とからなる偏光変換素子と、この偏光変換素子で形成された偏光光を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置にて形成された光学像を拡大投射する投射光学装置とを備え、
前記位相差板は、前記光源装置から射出され、前記偏光分離素子で分離された入射光が、入射面に−10°〜+10°の入射角度で入射される状態で、かつ、光学軸方位角が略45°となる状態で設置されたことを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−103863(P2009−103863A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274737(P2007−274737)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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