説明

位置情報処理装置

【課題】実際の画像に適用して位置補正を行うことができる位置情報処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】モニタ53Mに時系列毎の被検体の位置情報を表示し、時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正を行うために、当該位置情報を用いる。その際に、位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲を基準フレームとして縦枠53bにより設定し、基準フレームでの基準位置に基づいて各時間範囲(各フレーム)に対応する前各画像の位置補正を行う。基準位置となるときの基準フレームを縦枠53bにより設定することにより、被検体の体動がなかったフレーム、あるいは被検体の体動がないとみなされたフレームでの位置情報を最大限に利用することができ、各フレームに対応する実際の画像に適用して位置補正を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正を行うために用いられる時系列毎の被検体の位置情報を処理する位置情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明し、上述の位置補正として、PET装置で取得されたPET画像の位置補正を例に採って説明する。PET装置は、陽電子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
具体的には、陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤を被検体内に投与して、投与された被検体内から放出される511KeVの対消滅γ線を多数の検出素子(例えばシンチレータ)群からなる検出器で検出する。そして、2つの検出器で一定時間内にγ線を検出した場合に同時に検出したとして、それを一対の対消滅γ線として計数し、さらに対消滅発生地点を、検出した検出器対の直線上と特定する。このような同時計数情報を蓄積して再構成処理を行って、陽電子放出核種分布画像(すなわち断層画像)を得る。
【0004】
PET装置でPET画像を取得する際には、被検体の心臓の動き(拡張・収縮)により体動が生じ、画像がぼけるという問題がある。そこで、呼吸ゲートや心電同期によって画像の位相分割を行い、同じ位相の投影データを収集して断層画像を求めることで、画像のぼけを防止することができる。なお、被検体の心臓の動きや呼吸のような規則的な動き以外で体動が生じた場合(不規則な動きなど)には、画像のぼけを防止するために以下のような位置補正に関するアルゴリズムが提案されている。すなわち、位置検出装置を用いて時系列的に被検体の動きをモニタし、動きがあった場合に該当する時間帯(時間範囲)のデータを位置補正する(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H Watanabe, et al. Correction of Head Movement Using Optical Motion Tracking System during PET Study with Rhesus Monkey
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような位置補正に関するアルゴリズムは、非特許文献1に提案されているが、具体的な表示方法や分割方法については明らかにされていない。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、実際の画像に適用して位置補正を行うことができる位置情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る位置情報処理装置は、時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正を行うために用いられる時系列毎の被検体の位置情報を処理する位置情報処理装置であって、前記時系列毎の被検体の位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲を設定する基準設定手段と、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲をそれぞれ設定する第1分割設定手段とを備え、前記基準設定手段で設定された基準時間範囲での基準位置に基づいて、前記第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲に対応する前記各画像の位置補正を行うことを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]この発明に係る位置情報処理装置によれば、時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正を行うために用いられる時系列毎の被検体の位置情報に対して以下の処理を行う。すなわち、基準設定手段は、時系列毎の被検体の位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲を設定し、第1分割設定手段は、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲をそれぞれ設定する。そして、基準設定手段で設定された基準時間範囲での基準位置に基づいて、第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲に対応する各画像の位置補正を行う。このように、基準位置となるときの基準時間範囲を設定することにより、被検体の体動がなかった時間範囲、あるいは被検体の体動がないとみなされた時間範囲での位置情報を最大限に利用することができ、各時間範囲に対応する実際の画像に適用して位置補正を行うことができる。
【0010】
上述の基準設定手段の一例は、基準の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較して、基準位置となるときの基準時間範囲を演算して設定することである。基準の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較することにより、位置ズレが少ない時間範囲を基準時間範囲として演算により設定することができ、基準時間範囲を自動で設定することができる。
【0011】
また、基準設定手段の他の一例は、時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段での表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲を入力可能に構成することである。位置情報を時系列的にみれば、位置ズレは相対的なものであるので、基準時間範囲を任意に入力して、その基準時間範囲での基準位置に基づいて位置補正を行えば、その基準時間範囲での基準位置に合わせて、各時間範囲に対応する各画像の位置補正が可能となる。したがって、時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段でモニタすることで、視覚的に被検体の体動を把握することができ、表示手段での表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲を手動で設定することができる。なお、(基準時間範囲を演算して設定する)前者の一例と、(基準時間範囲を入力する)後者の一例とを組み合わせて、自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0012】
上述の第1分割設定手段の一例は、分割の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となる時間範囲の位置情報とを比較して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を演算して設定することである。分割の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較する、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となる時間範囲の位置情報とを比較することにより、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲を区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を演算により設定することができ、当該時間範囲を自動で設定することができる。
【0013】
また、第1分割設定手段の他の一例は、時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段での表示結果に基づいて、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を入力可能に構成することである。時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段でモニタすることで、視覚的に被検体の体動を把握することができ、表示手段での表示結果に基づいて、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲を手動で区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を手動で設定することができる。なお、(当該時間範囲を演算して設定する)前者の一例と、(当該時間範囲を入力する)後者の一例とを組み合わせて、自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0014】
上述したこれらの発明に係る位置情報処理装置において、第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲での位置情報を位置補正に用いずに棄却設定する棄却設定手段を備えるのが好ましい。時間範囲が短いときには被検体の体動の変化が大きく、位置補正として用いるには相応しくない場合がある。そこで、第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲での位置情報を位置補正に用いずに棄却設定手段が棄却設定することで、位置補正をより適切に行うことができる。
【0015】
上述の基準設定手段や第1分割設定手段と同様に、棄却設定手段も、自動で設定してもよいし、手動で設定してもよい。
すなわち、棄却設定手段の一例は、棄却の対象となる時間範囲が、予め設定された時間範囲よりも狭ければ、当該棄却の対象となる時間範囲での位置情報を棄却設定する。棄却の対象となる時間範囲が、予め設定された時間範囲よりも狭ければ、当該棄却の対象となる時間範囲において被検体の体動の変化が大きいとみなせるので、当該棄却の対象となる時間範囲での位置情報を自動で棄却設定することができる。
【0016】
また、棄却設定手段の他の一例は、時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段での表示結果に基づいて、棄却の対象となる時間範囲を選択して入力可能に構成することである。時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段でモニタすることで、視覚的に被検体の体動を把握することができ、表示手段での表示結果に基づいて、当該棄却の対象となる時間範囲での位置情報を手動で棄却設定することができる。なお、(当該棄却の対象となる時間範囲での位置情報を設定する)前者の一例と、(当該棄却の対象となる時間範囲での位置情報を入力する)後者の一例とを組み合わせて、自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0017】
上述したこれらの発明に係る位置情報処理装置において、上述の第1分割設定手段による分割設定とは別に、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲をそれぞれ設定する第2分割設定手段と、時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段とを備え、表示手段は、第1分割設定手段による分割を示した分割区分と、第2分割設定手段による分割を示した分割区分とを併せて表示するのが好ましい。例えば、位置補正の対象となる被検体の各画像で必要とする従来の時間範囲を第2分割設定手段でそれぞれ設定し、当該時間範囲も同時に表示することで、最終的な時間範囲における分割区分を視覚的に確認しながら行うことができる。なお、第2分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された時間範囲については、必ずしも一定である必要はない。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る位置情報処理装置によれば、基準位置となるときの基準時間範囲を設定することにより、被検体の体動がなかった時間範囲、あるいは被検体の体動がないとみなされた時間範囲での位置情報を最大限に利用することができ、各時間範囲に対応する実際の画像に適用して位置補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係るPET装置の側面図である。
【図2】実施例に係るPET装置の正面図である。
【図3】実施例に係るPET装置および位置情報処理装置のブロック図である。
【図4】(a)、(b)は位置情報処理装置の出力部におけるモニタの一実施態様を示す模式図である。
【図5】各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームを区分する説明に供する模式図である。
【図6】各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームを区分する説明に供する図5とは別の模式図である。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るPET装置の側面図であり、図2は、実施例に係るPET装置の正面図であり、図3は、実施例に係るPET装置および位置情報処理装置のブロック図である。本実施例では、PET (Positron Emission Tomography) 装置を例に採って説明するとともに、位置補正として、PET装置で取得されたPET画像の位置補正を例に採って説明する。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施例に係るPET装置1は、水平姿勢の被検体Mを載置する天板2を備えている。この天板2は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸に沿って平行移動するように構成されている。PET装置1は、天板2に載置された被検体Mを診断するPET検出部3を備えている。
【0022】
PET検出部3は、開口部31aを有したガントリ31と被検体Mから発生したγ線を検出するγ線検出器32とを備えている。γ線検出器32は、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ31内に埋設されている。
【0023】
また、図2に示すように被検体Mの位置を検出する位置検出部6を設けている。位置検出部6については、PET装置1側に備えられていてもよいし、位置情報処理装置5側に備えられていてもよいし、あるいは単独に備えられていてもよい(図3のブロック図では単独で図示)。
【0024】
本実施例では、位置検出部6として、赤外線センサを用いる。赤外線センサは、図2に示すように発光素子61と、2つの受光素子62とを備えている。発光素子61を、被検体Mの中心軸(図2の一点鎖線を参照)上に設置し、発光素子61から発光された赤外線を被検体Mの頭頂部に設けられた球状のマーカmによって反射させる。各受光素子62を互いに中心軸の対称の位置にそれぞれ設置し、球状のマーカmから反射した赤外線を各受光素子62が受光することで、被検体Mの位置を検出する。発光素子61や受光素子62の設置位置は必ずしも軸対称である必要はない。なお、ガントリ31にも基準用(リファレンス用)マーカを備え、ガントリ31を基準位置とした被検体Mの位置ズレを検出してもよい。位置検出部6については、CCDカメラ等に例示されるように被検体Mの位置を検出するものであれば、特に限定されない。
【0025】
続いて、PET装置1および位置情報処理装置5のブロック図について説明する。図3に示すように、PET装置1は、上述した天板2やPET検出部3の他に、コンソール4を備えている。PET検出部3は、上述したガントリ31やγ線検出器32の他に、増幅器33とAD変換器34と同時計数回路35とを備えている。
【0026】
コンソール4は、データ収集部41と画像再構成部42と位置補正部43とメモリ部44と入力部45と出力部46とコントローラ47とを備えている。
【0027】
一方、位置情報処理装置5は、メモリ部51と入力部52と出力部53とコントローラ54とを備えている。位置情報処理装置5は、「Polaris」と呼ばれるインターフェースを利用している。入力部52およびコントローラ54は、この発明における基準設定手段、第1分割設定手段、棄却設定手段および第2分割設定手段に相当し、出力部53は、この発明における表示手段に相当する。
【0028】
増幅器33は、γ線検出器32で検出されて出力された電気信号を増幅させる。AD変換器34は、増幅器33で増幅された電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力する。
【0029】
同時計数回路35は、γ線がγ線検出器32で同時に検出(すなわち同時計数)されたか否かを判定する。同時計数回路35で同時計数されたデータ(エミッションデータ)をコンソール4のデータ収集部41に送り込む。
【0030】
データ収集部41は、同時計数回路35で同時計数されて収集されたエミッションデータを収集する。データ収集部41は、投影データ(エミッションデータ)を画像再構成部42に送り込む。画像再構成部42は、投影データを再構成して断層画像を生成する。
【0031】
PET装置1のメモリ部44は、コントローラ47を介して、PET検出部3で得られた各々のデータや画像再構成部42で再構成された断層画像や位置補正部43で位置補正された断層画像などのデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ47を介して、各々のデータを出力部46に送り込んで出力する。PET装置1のメモリ部44や位置情報処理装置5のメモリ部51は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。
【0032】
PET装置1の入力部45は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ47に送り込む。PET装置1の入力部45や位置情報処理装置5の入力部52は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部46や位置情報処理装置5の出力部53は、モニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0033】
PET装置1のコントローラ47は、本実施例に係るPET装置1を構成する各部分を統括制御する。PET装置1のコントローラ47や位置情報処理装置5のコントローラ54は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。PET検出部3で得られた各々のデータや画像再構成部42で再構成された断層画像や位置補正部43で位置補正された断層画像などのデータを、コントローラ47を介して、メモリ部44に書き込んで記憶、あるいは出力部46に送り込んで出力する。出力部46が表示部の場合には出力表示し、出力部46がプリンタの場合には出力印刷する。
【0034】
位置情報処理装置5のメモリ部51は、コントローラ54を介して、PET装置1で得られた各々のデータ(以下、これらのデータを総称して「PETデータ」とし、投影データや断層画像を総称して「PET画像」とする)や、位置検出部6で得られた被検体Mの位置情報を書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ54を介して、各々のデータを出力部53に送り込んで出力する。また、PET装置1にこれらのデータをPET装置1のメモリ部44に書き込んで記憶し、あるいはPET装置1の出力部46に送り込んで出力することも可能である。
【0035】
位置情報処理装置5の入力部52は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ54に送り込む。本実施例では、出力部53のモニタでの表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲(本実施例では基準フレーム)を手動で設定する基準設定手段の機能、出力部53のモニタでの表示結果に基づいて、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲(本実施例ではフレーム)を手動で区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(フレーム)を手動で設定する第1分割設定手段の機能、出力部53のモニタでの表示結果に基づいて、棄却の対象となる時間範囲(フレーム)での位置情報を手動で棄却設定する棄却設定手段の機能などを入力部52が有している。これらの機能については後述する。
【0036】
位置情報処理装置5の出力部53は、プリンタの他に、上述したようにモニタで構成されている。本実施例では、位置検出部6で得られた被検体Mの位置情報を出力部53のモニタに表示する。モニタの具体的な構成についても後述する。
【0037】
位置情報処理装置5のコントローラ54は、本実施例に係る位置情報処理装置5を構成する各部分を統括制御する。PET検出部3で得られたPET画像などのPETデータや、位置検出部6で得られた被検体Mの位置情報を、コントローラ54を介して、メモリ部51に書き込んで記憶、あるいは出力部53に送り込んで出力する。PET装置1の出力部46でも述べたように、出力部53が表示部の場合には出力表示し、出力部53がプリンタの場合には出力印刷する。
【0038】
本実施例では、基準の対象となる時間範囲(本実施例ではフレーム)とそれ以外の時間範囲(フレーム)との位置情報を比較することにより、位置ズレが少ない時間範囲(フレーム)を基準時間範囲(本実施例では基準フレーム)として演算により設定し、基準時間範囲(基準フレーム)を自動で設定する基準設定手段の機能、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲(フレーム)を区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(フレーム)を演算により設定し、当該時間範囲(当該フレーム)を自動で設定する第1分割設定手段の機能、棄却の対象となる時間範囲(フレーム)での位置情報を自動で棄却設定する棄却設定手段の機能などをコントローラ54が有している。これらの機能についても後述する。
【0039】
次に、位置情報処理装置5の入力部52や出力部53やコントローラ54の具体的な構成について、図4〜図6を参照して説明する。図4は、位置情報処理装置の出力部におけるモニタの一実施態様を示す模式図であり、図5は、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームを区分する説明に供する模式図であり、図6は、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームを区分する説明に供する図5とは別の模式図である。
【0040】
図3に示す位置情報処理装置5の出力部53は、図4に示すようにモニタ53Mで構成されている。このモニタ53Mはタッチパネルとして入力することも可能で、位置情報処理装置5の入力部52(図3を参照)の機能をも搭載している。位置検出部6(図2、図3を参照)で得られた時系列毎の被検体Mの位置情報をモニタ53Mに表示するために、モニタ53Mに可視化条件を予め入力設定する。入力設定としては、例えばフレームの時間設定や、後述する基準フレームに関する手動による時間設定や、マーカm(図2を参照)の位置情報に関する入力設定(例えばシフト移動の設定)や、直交座標系のx軸,y軸,z軸の3軸の表示設定(例えば色や軸のスケールや表示可能な最大値・最小値の設定、同時表示の設定)などである。これらを入力設定すると、当該入力設定の条件により、図4に示すような被検体Mの位置情報が時系列毎にモニタ53Mに表示される。
【0041】
放射性薬剤が投与された被検体Mを天板2(図1、図2を参照)に載置して、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をPET装置1のPET検出部3(図1〜図3を参照)によって検出して、増幅器33、AD変換器34および同時計数回路35(いずれも図3を参照)を介して、投影データ(エミッションデータ)をデータ収集部41に送り込む。これに並行して、被検体Mの頭頂部に設けられたマーカm(図2を参照)に向けて位置検出部6(図2、図3を参照)の発光素子61(図2を参照)から赤外線を照射して、マーカmから反射した赤外線を各受光素子62(図2を参照)が受光することで、被検体Mの位置を検出する。投影データを逐次に取得するのに対応して、位置検出部6が被検体Mの位置情報を取得することで、時系列的に並べられた被検体Mの投影データや断層画像などの各PET画像と、時系列的に並べられた被検体Mの位置情報とを時間的に対応させる。
【0042】
図4に示すように、被検体Mの位置情報を時系列毎にモニタ53Mに表示する。横軸は、時間軸となり、縦軸は位置情報となる。縦軸の位置情報は、x軸,y軸,z軸の3軸の移動量(すなわち正味の位置ズレ量)であってもよいし、これらの二乗平均であってもよい。なお、位置情報は、直交座標系に限らず円筒座標系や極座標系のように角度の位置ズレ、あるいはこれらの二乗平均であってもよい。図4では、y軸の位置ズレおよびx軸周りの回転角度の位置ズレを位置情報として時系列毎にモニタ53Mに同時に表示しており、右縦軸は角度の位置ズレ(図4では「Δ(deg)」で表記)を示し、左縦軸は直交座標系の位置ズレ(図4では「Δ(mm)」で表記)を示している。横軸の時間スケールは、上述した可視化条件に基づいて設定され、縦軸の位置スケールも、上述した可視化条件に基づいて設定される。なお、表示の途中でこれらの可視化条件の設定変更を行うことも可能である。
【0043】
長時間測定を行う場合には、図4に示すようにスライダー53aが設けられ、時間の経過とともに最新の位置情報がモニタ53Mに表示される。過去の位置情報を閲覧する場合には、入力部52(図3を参照)の例えばマウスによってポインタをスライダー53aに合わせてドラッグして操作すればよい。また、縦軸についてもスライダーを設けてもよいし、最大値・最小値が現在表記されている縦軸を超えた場合には、縦軸のスケールを自動的に変更して最大値・最小値が常に表記可能にされるようにしてもよい。
【0044】
図4に示すように、縦枠53b,53c,53dは、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームを区分する枠である。このうちの縦枠53bは、時系列毎の被検体Mの位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲を示す基準フレームを区分する枠である。縦枠53c,53dは、基準フレーム以外のフレームを区分する枠である。縦枠53cは、入力部52やコントローラ54(いずれも図3を参照)で、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示すフレームが設定された各フレーム間を区分する枠であり、縦枠53dは、縦枠53cでの分割設定とは別に、各時間位置情報を時間的に分割するための時間範囲を示す固定フレーム間を区分する枠である。したがって、縦枠53cは、この発明における第1分割設定手段による分割を示した分割区分となり、縦枠53dは、この発明における第2分割設定手段による分割を示した分割区分となる。
【0045】
すなわち、図4(a)に示すように、位置補正の対象となる被検体Mの各画像で必要とする従来のフレームを予め固定フレームとして、縦枠53dでそれぞれ設定している。固定フレームの設定については、入力部52(図3を参照)により上述の可視化条件で設定することにより手動で行ってもよいし、メモリ部51(図3を参照)に予め記憶された固定フレームをコントローラ54(図3を参照)が読み出すことにより自動で行ってもよい。
【0046】
そして、分割の対象となるフレームとそれ以外のフレームとの位置情報とを比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となるフレームの位置情報とを比較して、各位置情報を分割するためのフレームをコントローラ54(図3を参照)が演算して縦枠53cでそれぞれ設定している。縦枠53cによる分割区分と、縦枠53dによる分割区分とを併せて表示したのが、例えば図4(b)に示す表示態様となる。図4(b)で表記されている「STD」は、基準フレームを示す。
【0047】
図4(a)に示す表示態様から図4(b)に示す表示態様に移行する場合には、例えば図4(a)に示す移行ボタン53e(図4(a)では「Next」で表記)を押して、取りやめる場合には図4(a)に示す中止ボタン53f(図4(a)では「Cancel」で表記)を押す。これらのボタン53e,53fについては、モニタ53Mのタッチパネルで構成して、そのタッチパネルに触れることで入力を行ってもよいし、入力部52(図3を参照)の例えばマウスによってポインタをボタン53e,53fに合わせてクリックすることで入力を行ってもよい。
【0048】
基準フレームの設定については、出力部53のモニタでの表示結果(図4のモニタ53M)に基づいて、入力部52(図3を参照)により手動で行ってもよいし、基準の対象となる時間範囲を示すフレームとそれ以外の時間範囲を示すフレームとの位置情報を比較することにより、コントローラ54(図3を参照)が自動で行ってもよい。
【0049】
基準フレームの設定を手動で行う場合には、図4に示すように、被検体Mの位置情報を時系列毎にモニタ53Mに表示し、そのモニタ53Mで位置情報の変化が少ない時間範囲をオペレータが目視で確認して、位置情報の変化が少ない時間範囲を基準フレームとしてオペレータが入力部52(図3を参照)により上述の可視化条件で設定する。また、縦枠53dでそれぞれ設定された固定フレーム、あるいは縦枠53cでそれぞれ設定されたフレームから1つのフレームを基準フレームとしてオペレータが入力部52により選択して設定してもよい。なお、設定された基準フレームや基準フレームの時間幅を途中で変更することも可能である。例えば、設定された基準フレームに、図4(b)の矢印に示すように、入力部52の例えばマウスによってポインタを合わせてドラッグすることで基準フレームの入力変更を行ってもよいし、モニタ53Mのタッチパネルに触れることで基準フレームの入力変更を行ってもよい。
【0050】
基準フレームの設定を自動で行う場合には、上述したように基準の対象となる時間範囲を示すフレームとそれ以外の時間範囲を示すフレームとの位置情報を比較することにより、位置ズレが少ない時間範囲を示すフレームを基準フレームとしてコントローラ54(図3を参照)が演算により設定し、基準フレームを自動で設定する。各フレームの位置情報を比較するには、例えば位置情報の時間変化として時間微分を採用して、時間微分が時間的に連続してほぼ“0”になるフレームを、基準フレームとして設定すればよい。また、時間微分が時間的に連続してほぼ“0”になるフレームが複数存在する場合には、それらのフレームを基準フレームの候補としてそれぞれ挙げて、オペレータが入力部52(図3を参照)により1つを選択してもよい。また、基準フレームの設定を手動で行う場合と同様に、自動で設定された基準フレームや基準フレームの時間幅を途中で変更することも可能である。このように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0051】
固定フレームの設定については、上述のように手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。なお、固定フレームの時間幅については、図4(a)の縦枠53dに示すように固定フレーム毎に必ずしも一定である必要はない。また、固定フレームや固定フレームの時間幅を途中で変更することも可能である。
【0052】
基準フレーム・固定フレーム以外の各フレームの設定については、出力部53のモニタでの表示結果(図4のモニタ53M)に基づいて、入力部52(図3を参照)により手動で行ってもよいし、分割の対象となるフレームとそれ以外のフレームとの位置情報とを比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となるフレームの位置情報とを比較することにより、コントローラ54(図3を参照)が自動で行ってもよい。
【0053】
基準フレーム・固定フレーム以外の各フレームの設定を手動で行う場合には、図4に示すように、被検体Mの位置情報を時系列毎にモニタ53Mに表示し、そのモニタ53Mで位置情報の特性が互いに異なるタイミングをオペレータが目視で確認して、そのタイミングを縦枠53cとするとともに、縦枠53cで区分されたフレームをオペレータが入力部52(図3を参照)により設定する。例えば、位置情報の時間変化が大きいタイミングに、入力部52の例えばマウスによってポインタを合わせてクリックすることで各フレームの入力を行ってもよいし、モニタ53Mのタッチパネルに触れることで各フレームの入力を行ってもよい。なお、設定された各フレームや各フレームの時間幅を途中で変更することも可能である。例えば、設定された各フレームに、図4(b)の縦枠53cの矢印に示すように、入力部52の例えばマウスによってポインタを合わせてドラッグすることで各フレームの入力変更を行ってもよいし、モニタ53Mのタッチパネルに触れることで各フレームの入力変更を行ってもよい。
【0054】
基準フレーム・固定フレーム以外の各フレームの設定を自動で行う場合には、上述したように分割の対象となるフレームとそれ以外のフレームとの位置情報とを比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となるフレームの位置情報とを比較することにより、位置情報の特性が互いに異なるタイミングでフレームを区分してコントローラ54(図3を参照)が演算により設定し、当該フレームを自動で設定する。
【0055】
各フレームの位置情報を比較するには、例えば位置情報の時間変化として時間微分を採用して、図5に示すように時間微分の絶対値Aが予め設定された傾きの値よりも大きければ、そこでの時間微分の絶対値Aでは位置情報の変動が大きく位置情報の特性が互いに異なるとみなせる。したがって、予め設定された傾きの値よりも大きい時間微分の絶対値Aでのタイミング(図5の縦枠53c)でフレームを区分すればよい。
【0056】
また、予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となるフレームの位置情報とを比較するには、例えば図6の黒丸(●)で示された最新の極値(極大値・極小値)からの位置ズレを監視して、図6に示すようにその位置ズレBが予め設定された位置ズレに関するしきい値よりも大きければ、そこでの位置ズレBでは位置情報の変動が大きく位置情報の特性が互いに異なるとみなせる。したがって、予め設定された位置ズレに関するしきい値よりも大きい位置ズレBでのタイミング(図6の縦枠53c)でフレームを区分すればよい。
【0057】
図6の例では、左端の黒丸のように極小値が検出されたら、その極小値を最新の極値として監視するとともに、その最新の極小値からの位置ズレを監視する。その最新の極小値からの位置ズレが予め設定された位置ズレに関するしきい値を超えるまでに、図6の左端から二番目の黒丸のように先に極大値が検出されたら、その極大値を最新の極値として監視するとともに、その最新の極大値からの位置ズレを監視する。その最新の極大値からの位置ズレが予め設定された位置ズレに関するしきい値を超えるまでに、図6の左端から三番目の黒丸のように先に極小値が検出されたら、その極小値を最新の極小値として監視するとともに、その最新の極小値からの位置ズレを監視する。次なる最大値を検出するまでに、その最新の極小値からの位置ズレBが予め設定された位置ズレに関するしきい値を超えたら、その位置ズレBでのタイミング(図6の縦枠53c)でフレームを区分する。そして、次なる最大値を検出するまでに、その区分された位置からの位置ズレCが予め設定された位置ズレに関するしきい値を超えたら、その位置ズレCでのタイミング(図6の縦枠53c)でフレームを区分する。そして、その区分された位置からの位置ズレが予め設定された位置ズレに関するしきい値を超えるまでに、図6の左端から四番目(右端)の黒丸のように先に極大値が検出されたら、その極大値を最新の極値として監視するとともに、その最新の極大値からの位置ズレを監視する。以下、同様のことを行う。
【0058】
なお、図6の位置ズレBやCに示すように、予め設定された位置ズレに関するしきい値は、必ずしも一定でなくてもよい。各々の位置に応じてそれぞれしきい値を設定すればよい。また、位置ズレの基点となる極値は、必ずしも最新の極値(極大値・極小値)に限定されず、時間的に固定された極値であってもよい。
【0059】
また、基準フレーム・固定フレーム以外の各フレームの設定を手動で行う場合と同様に、自動で設定された各フレームや各フレームの時間幅を途中で変更することも可能である。例えば、設定された各フレームに、図4(b)の縦枠53cの矢印に示すように、入力部52(図3を参照)の例えばマウスによってポインタを合わせてドラッグすることで各フレームの入力変更を行ってもよいし、モニタ53Mのタッチパネルに触れることで各フレームの入力変更を行ってもよい。また、予め設定された位置ズレに関するしきい値を例えば可視化条件に基づいて設定してもよい。このように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0060】
このように、それぞれ設定された各フレームでの位置情報を位置補正部43(図3を参照)による位置補正に用いる。時間範囲を示すフレームが短いときには被検体Mの体動の変化が大きく、位置補正として用いるには相応しくない場合がある。そこで、各フレームでの位置情報を位置補正に用いずに棄却設定することで、位置補正をより適切に行う。
【0061】
各フレームでの位置情報の棄却設定については、出力部53のモニタでの表示結果(図4のモニタ53M)に基づいて、入力部52(図3を参照)により手動で行ってもよいし、棄却の対象となる時間範囲を示すフレームが、予め設定された時間範囲を示すフレームよりも狭ければ、当該棄却の対象となる時間範囲を示すフレームでの位置情報を棄却設定することを、コントローラ54(図3を参照)が自動で行ってもよい。
【0062】
各フレームでの位置情報の棄却設定を手動で行う場合には、図4に示すように、被検体Mの位置情報を時系列毎にモニタ53Mに表示し、そのモニタ53Mで被検体Mの体動の変化が大きそうな時間的に狭いフレームをオペレータが目視で確認して、時間的に狭いフレームを棄却の対象となるフレームとしてオペレータが入力部52(図3を参照)により設定する。例えば、図4(b)に示すように、時間的に狭いフレームDに入力部52の例えばマウスによってポインタを合わせてクリックすることで棄却の対象となるフレームを選択して、当該選択されたフレームでの位置情報を棄却設定してもよいし、モニタ53Mのタッチパネルに触れることでフレームを選択して、当該選択されたフレームでの位置情報を棄却設定してもよい。また、例えば、各フレームに対応させたチェックボックス(図示省略)にチェックを入れることで、棄却の対象となるフレームを選択するようにしてもよい。チェックを入れるのは、通常の手法のように、チェックボックスに入力部52の例えばマウスによってポインタを合わせてクリックすることで棄却の対象となるフレームを選択して、当該選択されたフレームでの位置情報を棄却設定してもよい。逆に、チェックを外すことで棄却の対象となるフレームを選択して、当該選択されたフレームでの位置情報を棄却設定してもよい。なお、図4(b)の縦枠53cの矢印に示すように、各フレームを途中で変更した後に、その変更後のフレームを選択して、当該選択されたフレームでの位置情報を棄却設定してもよい。
【0063】
各フレームでの位置情報の棄却設定を自動で行う場合には、上述したように棄却の対象となるフレームが、予め設定されたフレームよりも狭ければ、当該棄却の対象となるフレームにおいて被検体Mの体動の変化が大きいとみなして、当該棄却の対象となるフレームでの位置情報を、コントローラ54(図3を参照)が自動で棄却設定する。また、自動で棄却設定されたフレームでの位置情報を改めて棄却するか否かを手動で選択する、あるいは自動で棄却設定されなかった位置情報を改めて棄却するか否かを手動で選択してもよい。このように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0064】
このように、それぞれ設定された図4(b)に示す表示態様で確定する場合には、例えば図4(b)に示す完了ボタン53g(図4(b)では「Complete」で表記)を押して、取りやめる場合には図4(b)に示す中止ボタン53h(図4(b)では「Cencel」で表記)を押す。なお、図4(a)に示す表示態様に戻す場合には、戻るボタン53i(図4(b)では「Back」で表記)を押す。これらのボタン53g,53h,53iについては、図4(a)のボタン53e,53fと同様に、モニタ53Mのタッチパネルで構成して、そのタッチパネルに触れることで入力を行ってもよいし、入力部52(図3を参照)の例えばマウスによってポインタをボタン53g,53h,53iに合わせてクリックすることで入力を行ってもよい。
【0065】
また、縦枠53bで区分された基準フレームと、縦枠53c,53dで区分されたフレームとを区別するために、基準フレームおよびそれ以外のフレームの少なくともいずれか一方を色分けして表示してもよい。また、各縦枠53b,53c,53dでそれぞれ区分されたフレームを区別するために、それらフレームをそれぞれ色分けして表示してもよい。また、棄却の対象となるフレームと区別するために、棄却の対象となるフレームとそれ以外のフレームの少なくともいずれか一方を色分けして表示してもよい。
【0066】
以上のように、それぞれ設定された各フレームでの位置情報が位置補正部43(図3を参照)での位置補正を行うために用いられる。位置補正については、上述の非特許文献1のような行列演算を用いて行えばよく、基準フレームでの基準位置に基づいて、基準位置からの位置ズレを示す被検体Mの位置情報(例えば移動量や二乗平均)を各々のフレーム毎の画像に作用させる。なお、棄却設定されたフレームでの位置情報は位置補正に用いられない。
【0067】
位置補正部43で補正された各画像は、フレームごとに対応した画像である。したがって、各画像を加算してもよい。加算の際には、公知の重み付け加算を行う。例えば、下記(1)式、(2)式のように時間の重みを付けて加算する。
【0068】
static=Σwn・In …(1)
n=acq_timen/(Σacq_timen) …(2)
ここで、Inはn番目のフレームでの画像ファイル、wnはn番目のフレームでの重み付け、acq_timenはn番目のフレームの時間を表す。また、上記(1)式は、n=1からNまでのwn・Inの総和であり、上記(2)式中の分母はn=1からNまでのacq_timenの総和である。
【0069】
上述の構成を備えた本実施例に係る位置情報処理装置5によれば、時系列的に並べられた被検体Mの各画像に対して被検体Mの位置ズレを補正する位置補正を行うために用いられる時系列毎の被検体Mの位置情報(例えば移動量や二乗平均)に対して以下の処理を行う。すなわち、入力部52およびコントローラ54が有する第1分割設定手段の機能は、時系列毎の被検体Mの位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲(本実施例では基準フレーム)を設定し、第1分割設定手段の機能は、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(本実施例ではフレーム)をそれぞれ設定している。本実施例では、図4に示すように縦枠53bで区分することにより基準フレームを設定し、図4に示すように縦枠53cで区分することにより各フレームをそれぞれ設定する。そして、入力部52およびコントローラ54が有する基準設定手段の機能で設定された基準時間範囲(基準フレーム)での基準位置に基づいて、第1分割設定手段の機能で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲(各フレーム)に対応する各画像の位置補正を行う。このように、基準位置となるときの基準時間範囲(基準フレーム)を設定することにより、被検体Mの体動がなかった時間範囲(フレーム)、あるいは被検体Mの体動がないとみなされた時間範囲(フレーム)での位置情報を最大限に利用することができ、各時間範囲(各フレーム)に対応する実際の画像に適用して位置補正を行うことができる。
【0070】
本実施例では、コントローラ54が有する基準設定手段の機能は、基準の対象となる時間範囲(本実施例ではフレーム)とそれ以外の時間範囲(フレーム)との位置情報を比較して、基準位置となるときの基準時間範囲(本実施例では基準フレーム)を演算して設定している。基準の対象となる時間範囲(フレーム)とそれ以外の時間範囲(フレーム)との位置情報を比較することにより、位置ズレが少ない時間範囲(フレーム)を基準時間範囲(基準フレーム)として演算により設定することができ、基準時間範囲(基準フレーム)を自動で設定することができる。
【0071】
また、本実施例では、入力部52が有する基準設定手段の機能は、時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでの表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲(本実施例では基準フレーム)を入力可能に構成している。位置情報を時系列的にみれば、位置ズレは相対的なものであるので、基準時間範囲(基準フレーム)を任意に入力して、その基準時間範囲(基準フレーム)での基準位置に基づいて位置補正を行えば、その基準時間範囲(基準フレーム)での基準位置に合わせて、各時間範囲(各フレーム)に対応する各画像の位置補正が可能となる。したがって、時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでモニタすることで、視覚的に被検体Mの体動を把握することができ、モニタ53Mでの表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲(基準フレーム)を手動で設定することができる。(基準フレームを演算して設定する)コントローラ54が有する基準設定手段の機能と、(基準フレームを入力する)入力部52が有する基準設定手段の機能とを組み合わせて、上述したように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0072】
本実施例では、コントローラ54が有する第1分割設定手段の機能は、分割の対象となる時間範囲(本実施例ではフレーム)とそれ以外の時間範囲(フレーム)との位置情報を比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となる時間範囲(フレーム)の位置情報とを比較して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(フレーム)を演算して設定している。分割の対象となる時間範囲(フレーム)とそれ以外の時間範囲(フレーム)との位置情報を比較する、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となる時間範囲(フレーム)の位置情報とを比較することにより、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲(フレーム)を区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(フレーム)を演算により設定することができ、当該時間範囲(当該フレーム)を自動で設定することができる。
【0073】
また、本実施例では、入力部52が有する第1分割設定手段の機能は、時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでの表示結果に基づいて、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(本実施例ではフレーム)を入力可能に構成している。時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでモニタすることで、視覚的に被検体Mの体動を把握することができ、モニタ53Mでの表示結果に基づいて、位置情報の特性が互いに異なるタイミングで時間範囲(フレーム)を手動で区分して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(フレーム)を手動で設定することができる。なお、(当該フレームを演算して設定する)コントローラ54が有する第1分割設定手段の機能と、(当該フレームを入力する)入力部52が有する第1分割設定手段の機能とを組み合わせて、上述したように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0074】
本実施例では、好ましくは、入力部52およびコントローラ54が有する第1分割設定手段の機能で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲(各フレーム)での位置情報を位置補正に用いずに棄却設定する棄却設定手段の機能を入力部52およびコントローラ54が有している。時間範囲(フレーム)が短いときには被検体Mの体動の変化が大きく、位置補正として用いるには相応しくない場合がある。そこで、第1分割設定手段の機能で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲(各フレーム)での位置情報を位置補正に用いずに棄却設定手段の機能が棄却設定することで、位置補正をより適切に行うことができる。
【0075】
本実施例では、コントローラ54が有する棄却設定手段の機能は、棄却の対象となる時間範囲(本実施例ではフレーム)が、予め設定された時間範囲(フレーム)よりも狭ければ、当該棄却の対象となる時間範囲(フレーム)での位置情報を棄却設定している。棄却の対象となる時間範囲(フレーム)が、予め設定された時間範囲(フレーム)よりも狭ければ、当該棄却の対象となる時間範囲(フレーム)において被検体Mの体動の変化が大きいとみなせるので、当該棄却の対象となる時間範囲(フレーム)での位置情報を自動で棄却設定することができる。
【0076】
また、本実施例では、入力部52が有する棄却設定手段の機能は、時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでの表示結果に基づいて、棄却の対象となる時間範囲(本実施例ではフレーム)を選択して入力可能に構成している。時系列毎の被検体Mの位置情報を表示するモニタ53Mでモニタすることで、視覚的に被検体Mの体動を把握することができ、モニタ53Mでの表示結果に基づいて、当該棄却の対象となる時間範囲(フレーム)での位置情報を手動で棄却設定することができる。なお、(当該棄却の対象となるフレームでの位置情報を設定する)コントローラ54が有する棄却設定手段の機能と、(当該棄却の対象となるフレームでの位置情報を入力する)入力部52が有する棄却設定手段の機能とを組み合わせて、上述したように自動と手動とを組み合わせてもよい。
【0077】
本実施例では、好ましくは、上述の第1分割設定手段の機能による分割設定(すなわち縦枠53cによる分割区分)とは別に、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲(本実施例では固定フレーム)をそれぞれ設定する第2分割設定手段の機能をコントローラ54、さらには入力部52が有している。より具体的には、図4に示すように縦枠53dで区分することにより固定フレームをそれぞれ設定している。すなわち、第2分割設定手段の機能による分割設定は、縦枠53dによる分割区分である。本実施例のように、位置補正の対象となる被検体Mの各画像で必要とする従来の時間範囲(固定フレーム)を第2分割設定手段の機能でそれぞれ設定し、当該時間範囲(当該固定フレーム)も同時に表示することで、最終的な時間範囲(フレーム)における分割区分を視覚的に確認しながら行うことができる。上述したように、第2分割設定手段の機能で時間的に分割されてそれぞれ設定された時間範囲(固定フレーム)については、必ずしも一定である必要はない。
【0078】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0079】
(1)上述した実施例では、PET装置で取得されたPET画像の位置補正を例に採って説明したが、PET装置とトランスミッション装置とを組み合わせた装置や、PET装置とX線CT装置とを組み合わせた装置や、PET装置と核磁気共鳴装置 (MRI: Magnetic Resonance Imaging)とを組み合わせた装置などに例示されるように、PET装置と他の装置を組み合わせた組み合わせ型PET装置で取得された画像の位置補正に適用してもよい。また、PET装置以外の核医学診断装置として、単一のγ線を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置や、ガンマカメラで得られた画像の位置補正に適用してもよい。また、核医学診断装置以外にも、上述のX線CT装置や核磁気共鳴装置などに例示されるように、時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正に適用するのであれば、特に限定されない。
【0080】
(2)上述した実施例では、PET装置および位置情報処理装置であったが、PET装置を外部装置として、位置情報処理装置単体に適用してもよい。
【0081】
(3)上述した実施例では、基準設定手段や第1分割設定手段や棄却設定手段などでは、自動および手動で行ったが、自動のみであってもよいし、逆に手動のみであってもよい。第2分割設定手段についても同様である。
【0082】
(4)上述した実施例では、基準設定手段や第1分割設定手段や棄却設定手段などによる手動の際には、モニタ53Mに表示させた表示結果に基づいて行ったが、自動のみの場合には、必ずしもモニタ53Mに代表される表示手段は必要ではない。
【0083】
(5)上述した実施例では、棄却設定手段を備えたが、体動の変化が大きくない場合、あるいは体動の変化を考慮する必要の場合には、必ずしも棄却設定手段を備える必要はない。
【0084】
(6)上述した実施例では、第2分割設定手段を備えたが、必ずしも第2分割設定手段を備える必要はない。
【0085】
(7)上述した実施例では、時間範囲を画像のフレームとして説明したが、画像のフレームに関係なく、時系列毎に時間範囲を設定してもよい。
【0086】
(8)位置補正の対象となる画像と位置情報とを関連付けるために、呼吸ゲートによって画像の位相分割を行ってもよいし、心電同期によって画像の位相分割を行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
5 … 位置情報処理装置
52 … 入力部
54 … コントローラ
53 … 出力部
53M … モニタ
53b,53c,53d … 縦枠
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列的に並べられた被検体の各画像に対して被検体の位置ズレを補正する位置補正を行うために用いられる時系列毎の被検体の位置情報を処理する位置情報処理装置であって、
前記時系列毎の被検体の位置情報の中から基準位置となるときの基準時間範囲を設定する基準設定手段と、
各位置情報を時間的に分割するための時間範囲をそれぞれ設定する第1分割設定手段と
を備え、
前記基準設定手段で設定された基準時間範囲での基準位置に基づいて、前記第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲に対応する前記各画像の位置補正を行うことを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置情報処理装置において、
前記基準設定手段は、基準の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較して、基準位置となるときの基準時間範囲を演算して設定することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置情報処理装置において、
前記時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段を備え、
前記基準設定手段を、前記表示手段での表示結果に基づいて、基準位置となるときの基準時間範囲を入力可能に構成することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置情報処理装置において、
前記第1分割設定手段は、分割の対象となる時間範囲とそれ以外の時間範囲との位置情報を比較して、あるいは予め設定された位置ズレに関するしきい値と分割の対象となる時間範囲の位置情報とを比較して、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を演算して設定することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の位置情報処理装置において、
前記時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段を備え、
前記第1分割設定手段を、前記表示手段での表示結果に基づいて、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲を入力可能に構成することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置情報処理装置において、
前記第1分割設定手段で時間的に分割されてそれぞれ設定された各時間範囲での位置情報を前記位置補正に用いずに棄却設定する棄却設定手段を備えることを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置情報処理装置において、
前記棄却設定手段は、棄却の対象となる時間範囲が、予め設定された時間範囲よりも狭ければ、前記棄却の対象となる時間範囲での位置情報を棄却設定することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の位置情報処理装置において、
前記時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段を備え、
前記棄却設定手段を、前記表示手段での表示結果に基づいて、棄却の対象となる時間範囲を選択して入力可能に構成することを特徴とする位置情報処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の位置情報処理装置において、
前記第1分割設定手段による分割設定とは別に、各位置情報を時間的に分割するための時間範囲をそれぞれ設定する第2分割設定手段と、
前記時系列毎の被検体の位置情報を表示する表示手段と
を備え、
前記表示手段は、前記第1分割設定手段による分割を示した分割区分と、前記第2分割設定手段による分割を示した分割区分とを併せて表示することを特徴とする位置情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45274(P2012−45274A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191987(P2010−191987)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】