説明

位置推定方法及び位置推定システム

【課題】位置推定を行う範囲、ターゲット端末数の増加に伴い、通信量が増加する問題を軽減し、同時に高精度な位置推定を可能とする位置推定システムを得る。
【解決手段】無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末20の位置とに基づき複数のターゲット端末10のそれぞれの第1の推定位置を求め、無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末10以外の他のターゲット端末10の第1の推定位置と、リファレンス端末20の位置とに基づきターゲット端末10の第2の推定位置を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した無線信号を基に無線端末の位置を推定する位置推定システムに関し、特に、高精度な位置推定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の位置推定システムは、例えば、位置を推定したい無線端末(ターゲット端末)と位置が予め分かっている3つ以上の無線端末(リファレンス端末)がそれぞれ周辺の端末へ向けパケットを送信する。パケットには個々の端末固有の識別符号を含む。パケットを受信した各端末は、送信端末が信号到達範囲内にあると判断し、隣接端末リストに送信端末を加える。全ての端末間の通信が完了した後、全ての端末の隣接端末リストは位置推定装置(シンク端末)へと収集される。位置推定装置は、得られた端末間の接続関係とリファレンス端末の位置を用いることで、ターゲット端末の存在し得る範囲を徐々に狭めていく。すなわちパケットの送受信がなされた端未間の距離は信号到達距離以下、送受信がなされなかった端末間の距離は信号到達距離以上と見なし、端末間の距離を2段階(信号到達距離以上もしくは以下)で明らかにすることで位置推定を行うものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、無線伝播路のフェージングを考慮して端末間の距離と受信信号電力との関係をモデル化し、ターゲット端末と複数のリファレンス端末との間の推定距離とリファレンス端末の位置から、ターゲット端末の位置を推定する。また、信号の受信を複数回行うことで、フェージングの影響を低減し、位置推定精度の改善を図るものが提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2005−507070号公報
【非特許文献1】N.Sundaram and P.Ramanathan,"Connectivity Based Location Estimation Scheme for Wireless ad Hoc Networks",IEEE Globecom 2002,p.143-147
【非特許文献2】柳原健太郎、他7名、「センサネットワークにおける受信信号電力を用いた最尤位置推定法」、技術報告、電子情報通信学会、IN2004−327、p.409−414
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の位置推定システムでは、位置推定の対象となる面積が増加すると、リファレンス端末の数を増加させる必要がある。さらに位置推定精度を上げるためには、リファレンス端末を高密度に設置し、多くの情報を位置推定装置に集める必要があるが、ターゲット端末が増加すると位置推定のための通信量が増加する。集める情報の量はリファレンス端末の密度とターゲット端末数の積に比例する。位置推定のための通信量の増加は、通信の品質を劣化させる可能性がある。したがって、位置推定を行う範囲、ターゲット端末数の増加に伴い、通信量が増加する問題を軽減し、同時に高精度な位置推定を可能とする位置推定システムが求められていた。
【0006】
また、従来の位置推定システムでは、ターゲット端末の移動がないことを前提としており、ターゲット端末が移動した場合には位置推定精度が下がる。したがって、位置推定の対象となるターゲット端末が移動した場合にも対応できる高精度な位置推定システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る位置推定方法は、複数配置されるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、無線信号とリファレンス端末の位置とに基づきターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末の位置とに基づき複数のターゲット端末それぞれの第1の推定位置を求め、無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末以外の他のターゲット端末の第1の推定位置と、リファレンス端末の位置とに基づきターゲット端末の第2の推定位置を求めるものである。
【0008】
また、ターゲット端末は、当該ターゲット端末の移動を検出する移動検出手段を備え、当該ターゲット端末の移動に関する情報を位置推定情報信号に含め、位置推定情報信号を受信する毎に、位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、当該ターゲット端末の移動に関する情報に基づき、蓄積された情報を選択し、選択した情報を用いて、当該ターゲット端末の第2の推定位置を求めるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末の位置とに基づき複数のターゲット端末それぞれの第1の推定位置を求め、無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末以外の他のターゲット端末の第1の推定位置と、リファレンス端末の位置とに基づきターゲット端末の第2の推定位置を求めることにより、リファレンス端末を増加させることなく、、ターゲット端末の推定位置の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における位置推定システムの構成を示す図である。図1において、ターゲット端末10は、複数配置され、位置推定の対象である端末であり、位置推定要求信号を送信する。また、ターゲット端末10は、他のターゲット端末10が送信した位置推定要求信号の受信電力値S1を測定し、測定値の情報を位置推定に必要な情報として、位置推定装置30に送信する。リファレンス端末20は、複数配置され、予め位置が分かっている端末であり、ターゲット端末10が送信した位置推定要求信号の受信電力値S1を測定し、測定値の情報を位置推定に必要な情報として、位置推定装置30に送信する。位置推定装置30は、リファレンス端末20から送信された位置推定に必要な情報である受信電力値S1をもとに、ターゲット端末10の位置を推定する。尚、図中の点線は周辺の全端末に対する送信を示し、実線は矢印が示す1つの端末へ向けた送信を示す。
【0011】
図2は本発明の実施の形態1におけるターゲット端末及びリファレンス端末の構成を示す図である。図2において、ターゲット端末10及びリファレンス端末20は、アンテナ201、送信回路202、受信回路203、送信データ生成部204、受信データ処理部205により構成されている。アンテナ201は、無線信号を送受信するためのアンテナである。受信回路203は、アンテナ201により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部205に出力する。また、受信回路203は、入力された無線信号の受信電力値S1を測定し、測定した受信電力値S1の情報を受信データ処理部205に出力する。受信データ処理部205は、受信回路203より入力された受信データを処理し、受信データがターゲット端末10から送られた位置推定要求信号の場合に、送信データ生成部204に対して、受信回路203により測定された受信電力値S1の情報及び位置推定要求信号に含まれる送信端末符号を含めた送信データの作成を指示する。送信データ生成部204は、受信データ処理部205からの指示により受信データ処理部205から入力された受信電力値S1の情報及び送信端末符号、並びに当該端末固有の識別符号を中継端末符号として含めた位置推定情報信号を生成する。また、送信データ生成部204は、位置推定が必要なタイミングで、当該端末固有の識別符号を送信端末符号として含めた位置推定要求信号を生成し、送信回路202へ出力する。送信回路202は、送信データ生成部204で生成された位置推定要求信号又は位置推定情報信号を無線信号に変換しアンテナ201へ出力する。
【0012】
図3は本発明の実施の形態1における位置推定装置の構成を示す図である。図3において、位置推定装置30は、アンテナ301、受信回路302、受信データ処理部303、位置推定処理部304により構成されている。アンテナ301は、無線信号を送受信するためのアンテナである。受信回路302は、アンテナ301により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部303に出力する。受信データ処理部303は、受信回路302より入力された受信データを処理し、受信データがターゲット端末10又はリファレンス端末20から送信された位置推定情報信号の場合、位置推定情報信号に含まれる情報を位置推定処理部304に出力する。位置推定処理部304は、受信データ処理部303から入力された複数の位置推定情報信号に含まれる情報に基づき、後述する動作により、ターゲット端末10の位置を推定する。尚、アンテナ301、受信回路302、受信データ処理部303はターゲット端末10と同様の機器を用い、位置推定処理部304のみを専用の機器とし、受信データ処理部303と位置推定処理部304が通信を介して接続する形態としても良い。
【0013】
このように構成された本実施の形態1の動作について説明する。
まず、ターゲット端末10は、当該ターゲット端末10固有の識別符号を送信端末符号として含めた位置推定要求信号を周辺の全端末に向け送信する。次に、上記位置推定要求信号を送信したターゲット端末10以外のターゲット端末10及びリファレンス端末20は、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及び送信端末符号、並びに当該端末固有の識別符号を中継端末符号として含めた位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。位置推定装置30は、各ターゲット端末10及び各リファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれる情報を保存し、保存した情報に基づきターゲット端末10の位置を推定する。
次に、位置推定装置30の位置推定の動作について図4により説明する。
【0014】
図4は本発明の実施の形態1における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。位置推定装置30は、位置推定情報信号を受信し、位置推定を開始する(S1)。受信した位置推定情報信号の送信端末符号が示す全てのターゲット端末10について、第1の推定位置を求める第1推定段階を実行する(S2、S3)。第1推定段階は、推定位置を求めるターゲット端末10の送信端末符号が含まれた位置推定情報信号のうち、中継端末符号がリファレンス端末20である位置推定情報信号に含まれる受信電力値S1の情報と、リファレンス端末20の位置とに基づき、ターゲット端末10の推定位置を求める。推定位置は、例えば、各リファレンス端末20と当該ターゲット端末10間で授受された情報とリファレンス端末20の位置から、当該ターゲット端末10が存在すると考えられる各地点における存在確率を計算する。次に最尤推定法等の手法を用いて、当該ターゲット端末10の存在確率が最も高い点を探索し、該当点を当該ターゲット端末10の推定位置とする。また例えば、受信電力値S1と距離との関係を示すテーブルを参照し、予め位置が分かっている複数のリファレンス端末20とターゲット端末10との距離を得ることにより推定位置を求める。尚、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。上記、第1推定段階(S3)を全てのターゲット端末10に対して実行する(S2〜S4)。
【0015】
次に、上記第1推定段階(S3)で求めた、ターゲット端末10の第1の推定位置と、ターゲット端末10とリファレンス端末20から受信した位置推定情報信号と、リファレンス端末20の位置とに基づき、ターゲット端末10の第2の推定位置を求める第2推定段階を実行する。第2推定段階は、推定位置を求めるターゲット端末10の送信端末符号が含まれた位置推定情報信号に含まれる受信電力値S1の情報と、リファレンス端末20の位置と、当該ターゲット端末10以外のターゲット端末10の第1の推定位置とに基づき、ターゲット端末10の推定位置を求める。推定位置は、上記第1推定段階と同様の方法で求める。上記、第2推定段階(S6)を全てのターゲット端末10に対して実行する(S5〜S7)。求められた第2の推定位置は、第1の推定位置と比較して、ターゲット端末10間で授受された情報を利用しているため、推定誤差が少なくなる。
【0016】
第2推定段階の実行によって、ターゲット端末10の推定位置は、第1の推定位置から第2の推定位置に変更される。ここで、ターゲット端末10の推定位置を他のターゲット端末10の位置推定に用いているため、ターゲット端末10の推定位置の変更は周辺の異なるターゲット端末10の位置推定に影響を与える。そこで、ターゲット端末10の推定位置が変更された場合には、他のターゲット端末10の位置推定を再度行う。即ち、第2の推定位置を第1の推定位置として、当該ターゲット端末10以外の他のターゲット端末10に関して、第2推定段階を繰り返し実行する(S5〜S8)。第2推定段階の繰り返しを続けるか否かは全てのターゲット端末10に関して、位置推定の結果が収束した場合、もしくは計算時間等の制約によって判断する(S8)。
【0017】
尚、第2推定段階を繰り返し実行する過程(S5〜S8)で、ターゲット端末10の位置関係によっては推定位置の更新が互いに影響を及ぼしあうことで、位置推定の結果が収束しなくなる可能性がある。例えば、ターゲット端末10が、一直線上に配置された3台のリファレンス端末20からの信号のみ受信した場合には、3台のリファレンス端末20を結ぶ直線を線対称とする2つの点が推定位置となる。また例えば、位置推定情報信号の衝突などによって、リファレンス端末からの信号を2つしか受信することができなかった2つのターゲット端末10が両リファレンス端末20から等距離に存在した場合には、推測される2つの点(リファレンス端末20を中心とする円弧の交点)が2つのターゲット端末10の推定位置となる。このような場合には、第2推定段階を繰り返し行うと、ターゲット端末10は、2つの推定位置を交互に推定し、位置推定が収束しない可能性がある。
従って、位置推定処理部304は、推定位置を更新する場合に得られた推定位置と過去の推定位置とを比較し、状況に応じて推定位置を補正する機能を持たせる。例えば、ターゲット端末の第1の推定位置と第2の推定位置との間の距離が所定の値以上のとき、第1の推定位置と第2の推定位置との間の任意の位置を第2の推定位置とする。尚、任意の位置の決定方法として、例えば、第1の推定位置と第2の推定位置の尤度を用いても良い。
【0018】
また、例えば、更新後の推定位置と更新前の推定位置が大きく異なる場合には、更新前の推定位置と更新後の推定位置を結ぶ線分上の位置を更新後の推定位置とする。また例えば、位置推定処理部304で過去の推定位置を記録し、更新後の推定位置が過去の推定位置と同一である場合には、処理を中止する。
【0019】
尚、第1推定段階において、ターゲット端末10の位置を推定する際に、すでに位置推定が完了している他のターゲット端末10の識別符号と中継端末符号が一致する情報が位置推定装置30に存在する場合には、他のターゲット端末10をリファレンス端末20と見なして当該ターゲット端末10の位置推定に利用しても良い。
【0020】
また、ターゲット端末10の移動が少ない状況においては、第1及び第2推定段階において過去に授受されたデータを合わせて用いても良い。このようにすることで、フェージングなどによる受信電力の瞬時的な変動の影響を排除することが可能となる。
【0021】
以上のように、ターゲット端末10が他のターゲット端末10から受信した情報を位置推定装置30に送信することによって、リファレンス端末20の数が少ない状況であっても、より精度の高い位置推定を実現することができ、通信量の増加を軽減できる。また、周辺のターゲット端末10の位置推定結果を利用して、繰り返して位置推定を行うことで、より精度の高い位置推定を実現することができる。
【0022】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、位置推定装置30により位置推定を行ったが、本実施の形態2では、ターゲット端末10に位置推定装置を内蔵し、ターゲット端末10及びリファレンス端末20のみの構成により、ターゲット端末10の位置推定を行う。
【0023】
図5は本発明の実施の形態2における位置推定システムの構成を示す図である。図5において、ターゲット端末10は、複数配置され、位置推定の対象である端末であり、位置推定情報信号を送受信する。また、ターゲット端末10は、リファレンス端末20又は他のターゲット端末10が送信した位置推定情報信号をもとに当該ターゲット端末10の位置を推定する。リファレンス端末20は、複数配置され、予め位置が分かっている端末であり、位置推定情報信号を定期的に送信する。尚、図中の点線は周辺の全端末に対する送信を示す。
【0024】
図6は本発明の実施の形態2におけるリファレンス端末の構成を示す図である。図6において、リファレンス端末20は、アンテナ211、送信回路212、送信データ生成部213により構成されている。アンテナ211は、無線信号を送信するためのアンテナである。送信データ生成部213は、当該リファレンス端末固有の識別符号を含めた位置推定情報信号を生成する。送信回路212は、送信データ生成部213で生成された位置推定情報信号を無線信号に変換しアンテナ211へ出力する。
【0025】
図7は本発明の実施の形態2におけるターゲット端末の構成を示す図である。図7において、ターゲット端末10は、アンテナ111、送信回路112、受信回路113、送信データ生成部114、受信データ処理部115、位置推定処理部116により構成されている。アンテナ111は、無線信号を送受信するためのアンテナである。受信回路113は、アンテナ111により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部115に出力する。また、受信回路113は、入力された無線信号の受信電力値S1を測定し、測定した受信電力値S1の情報を受信データ処理部115に出力する。受信データ処理部115は、受信回路113より入力された受信データを処理し、受信データがターゲット端末10又はリファレンス端末20から送られた位置推定情報信号の場合に、位置推定情報信号に含まれる情報及び測定した受信電力値S1の情報を位置推定処理部116に出力する。位置推定処理部116は、受信データ処理部115から入力された複数の位置推定情報信号に含まれる情報に基づき、後述する動作により、当該ターゲット端末10の位置を推定し、推定位置の情報を送信データ生成部114に出力する。送信データ生成部114は、位置推定処理部116から入力された当該ターゲット端末10の推定位置の情報及び当該端末固有の識別符号を含めた位置推定情報信号を生成し、送信回路112へ出力する。送信回路112は、送信データ生成部114で生成された位置推定情報信号を無線信号に変換しアンテナ111へ出力する。
このように構成された本実施の形態2の動作について図8により説明する。
【0026】
図8は本発明の実施の形態2におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。まず、各リファレンス端末20は、当該リファレンス端末20固有の識別符号を含めた位置推定情報信号を送信する。ターゲット端末10は、各リファレンス端末20から送信された位置推定情報信号を受信し(S11)、受信した位置推定情報信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及びリファレンス端末20の位置とに基づき、当該ターゲット端末10の第1の推定位置を求める第1推定段階を実行する(S12)。推定位置の取得は、上記実施の形態1と同様の動作により行う。尚、推定位置の取得はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。次に、上記第1推定段階(S12)で求めた、当該ターゲット端末10の第1の推定位置の情報と、当該ターゲット端末10固有の識別符号を含めた位置推定情報信号を送信する(S13)。
【0027】
ターゲット端末10は、他のターゲット端末10から送信された位置推定情報信号を受信し(S14)、受信した位置推定情報信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及び位置推定情報信号に含まれる他のターゲット端末10の第1の推定位置と、リファレンス端末20より受信した位置推定情報信号から取得した受信電力値S1の情報と、リファレンス端末20の位置とに基づき、当該ターゲット端末10の第2の推定位置を求める第2推定段階を実行する(S15)。推定位置は、上記第1推定段階と同様の方法で求める。求められた第2の推定位置は、第1の推定位置と比較して、ターゲット端末10間で授受された情報を利用しているため、推定誤差が少なくなる。
【0028】
第2推定段階の実行(S15)によって、ターゲット端末10の推定位置は、第1の推定位置から第2の推定位置に変更される。ここで、ターゲット端末10の推定位置の情報を他のターゲット端末10の位置推定に用いているため、ターゲット端末10の推定位置の変更は周辺の異なるターゲット端末10の位置推定に影響を与える。そこで、ターゲット端末10の推定位置が変更された場合には、他のターゲット端末10の位置推定を再度行う。即ち、当該ターゲット端末10の第2の推定位置の情報を含めた位置推定情報信号を送信すると共に、他のターゲット端末10から第2の推定位置を含む位置推定情報信号を受信した場合、他のターゲット端末10の第2の推定位置を第1の推定位置として、手順S13〜S15を繰り返し実行する(S16)。第2推定段階の繰り返しを続けるか否かは全てのターゲット端末10に関して、位置推定の結果が収束した場合、もしくは計算時間等の制約によって判断する(S16)。
【0029】
本実施の形態2の場合も上記実施の形態1と同様に、反復計算の過程で、端末の位置関係によっては推定位置の更新が互いに影響を及ぼしあうことで、位置推定の結果が収束しなくなる可能性がある。従って位置推定処理部116は、推定位置を更新する場合に得られた推定位置と過去の推定位置とを比較し、状況に応じて推定位置を補正する機能を持たせる。
【0030】
尚、第2推定段階を繰り返し実行する過程において、リファレンス端末20も定期的に位置推定情報信号を送信し、ターゲット端末10が同一リファレンス端末20と複数回の信号授受を行うことで、リファレンス端末20との位置関係をより正確に計測することができる。第2推定段階においてターゲット端末10の推定位置を更新する際に、合わせてターゲット端末10とリファレンス端末20の位置関係を更新することによって、位置推定精度を改善することができる。
【0031】
以上のように、ターゲット端末10の位置推定結果を周辺のターゲット端末10に伝えて利用することで、リファレンス端末20の数が少ない状況であっても、より精度の高い位置推定を実現することができる。また、ターゲット端末10が位置推定処理を行うことで、リファレンス端末20と位置推定装置30間の通信をなくすことができ、位置推定のために用いる通信量をさらに削減することができる。
【0032】
実施の形態3.
本実施の形態3では、上記実施の形態1の構成に加え、ターゲット端末10に移動検出機能を付加し、端末の移動情報を位置推定に用いる。尚、位置推定システムの構成、リファレンス端末20、位置推定装置30の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0033】
図9は本発明の実施の形態3におけるターゲット端末の構成を示す図である。図9において、ターゲット端末10は、アンテナ121、送信回路122、受信回路123、送信データ生成部124、受信データ処理部125、移動検出部126により構成されている。アンテナ121は、無線信号を送受信するためのアンテナである。受信回路123は、アンテナ121により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部125に出力する。また、受信回路123は、入力された無線信号の受信電力値S1を測定し、測定した受信電力値S1の情報を受信データ処理部125に出力する。受信データ処理部125は、受信回路123より入力された受信データを処理し、受信データがターゲット端末10から送られた位置推定要求信号の場合に、送信データ生成部124に対して、受信回路123により測定された受信電力値S1の情報及び位置推定要求信号に含まれる送信端末符号を含めた送信データの作成を指示する。移動検出部126は、加速度センサ等の端末の移動を検出する機能を持ち、移動に関する情報を送信データ生成部124へ出力する。送信データ生成部124は、受信データ処理部125からの指示により、移動検出部126から入力された端末の移動に関する情報及び受信データ処理部125から入力された受信電力値S1の情報並びに送信端末符号と、中継端末符号として当該端末固有の識別符号とを含めた位置推定情報信号を生成する。また、送信データ生成部124は、位置推定が必要なタイミングで、当該端末固有の識別符号を送信端末符号として含めた位置推定要求信号を生成し、送信回路122へ出力する。送信回路122は、送信データ生成部124で生成された位置推定要求信号又は位置推定情報信号を無線信号に変換しアンテナ121へ出力する。
【0034】
このように構成された本実施の形態3の動作について説明する。まず、ターゲット端末10は、移動検出部126により検出した当該ターゲット端末10の移動に関する情報と、当該ターゲット端末10固有の識別符号を送信端末符号として含めた位置推定要求信号を周辺の全端末に向け送信する。次に、上記位置推定要求信号を送信したターゲット端末10以外のターゲット端末10及びリファレンス端末20は、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及びターゲット端末10の移動に関する情報及び送信端末符号、並びに当該端末固有の識別符号を中継端末符号として含めた位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。位置推定装置30は、各ターゲット端末10及びリファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、蓄積した情報に基づきターゲット端末10の位置を推定する。
【0035】
位置推定の動作は上記実施の形態1と同様であるが、位置推定に用いる情報においては、推定対象ターゲット端末10の移動に関する情報に基づき、蓄積された情報を選択し、選択した情報を用いて、当該ターゲット端末の第2の推定位置を求める。例えば、ターゲット端末10の移動がない場合には、過去に授受された情報を利用する。また例えば、ターゲット端末10が移動した場合は、受信した情報に重み付けをし、過去に授受された情報の重みを下げる。
【0036】
また、位置推定情報信号の受信からの経過時間に応じて、蓄積された情報を選択し、選択した情報を用いて、ターゲット端末の第2の推定位置を求めても良い。例えば、受信した情報に重み付けをし、情報を受信した時からの経過時間に応じて情報の重みを変更する。
【0037】
以上のように、端末の移動情報を用いることで、実施の形態1の効果に加え、ターゲット端末10間で過去に授受したデータを位置推定に用いる上で、ターゲット端末10の移動に応じて利用することが可能となり、位置推定精度を改善することが可能となる。また、過去の情報を利用するために、定期的に位置推定信号を送信する間隔を長くすることが可能となり、位置推定に用いる通信量をさらに削減することも可能となる。また、過去の複数の情報を利用し平均化した情報を用いることが可能となり、フェージングの影響を減少させ、精度の高い位置推定が可能となる。
【0038】
尚、上記説明では、実施の形態1の構成に加えてターゲット端末10に移動検出機能を付加した場合を説明したが、これに限らず実施の形態2の構成により、ターゲット端末10に移動検出機能を付加しても良い。この場合においても、同様にターゲット端末に移動検出機能を付加することで、位置推定精度を向上することが可能である。
【0039】
尚、上記実施の形態1〜3では、位置推定に必要な情報として、無線信号の受信電力値を用いた位置推定を行うシステムについて説明したが、本発明は、位置推定に必要な情報を無線信号の受信電力値に限るものではなく、ターゲット端末10又はリファレンス端末20で測定できる情報であれば、信号の伝搬遅延時間や信号の到来方向又は複数の波長の信号の伝搬遅延の差などでも良く、その他の情報であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における位置推定システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるターゲット端末及びリファレンス端末の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における位置推定装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における位置推定システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2におけるリファレンス端末の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ターゲット端末、20 リファレンス端末、30 位置推定装置、111 アンテナ、112 送信回路、113 受信回路、114 送信データ生成部、115 受信データ処理部、116 位置推定処理部、121 アンテナ、122 送信回路、123 受信回路、124 送信データ生成部、125 受信データ処理部、126 移動検出部、201 アンテナ、202 送信回路、203 受信回路、204 送信データ生成部、205 受信データ処理部、211 アンテナ、212 送信回路、213 送信データ生成部、301 アンテナ、302 受信回路、303 受信データ処理部、304 位置推定処理部、S1 受信電力値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配置されるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とがが無線信号を授受し、前記無線信号と前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数のターゲット端末それぞれの第1の推定位置を求め、
前記無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末以外の他のターゲット端末の前記第1の推定位置と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めることを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
複数配置され、無線信号を送受信するターゲット端末と、
既知の位置に複数配置され、無線信号を送受信するリファレンス端末と、
前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末が送信した無線信号を受信する位置推定装置とを備え、
前記位置推定装置は、前記リファレンス端末より受信した無線信号から、位置推定に必要な情報を取得し、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数のターゲット端末それぞれの第1の推定位置を求め、
前記リファレンス端末及び前記ターゲット端末より受信した無線信号から、位置推定に必要な情報を取得し、取得した前記位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末以外の他のターゲット端末の第1の推定位置と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めることを特徴とする位置推定システム。
【請求項3】
前記ターゲット端末は、該ターゲット端末固有の識別符号の情報を送信端末符号として含めた位置推定要求信号を送信すると共に、
当該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から送信された前記位置推定要求信号を受信した場合、受信した前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記送信端末符号の情報と、該ターゲット端末固有の識別符号の情報を中継端末符号として含めた位置推定情報信号を送信し、
前記リファレンス端末は、前記ターゲット端末から送信された前記位置推定要求信号を受信し、受信した前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記送信端末符号の情報と、該リファレンス端末固有の識別符号の情報を中継端末符号として含めた位置推定情報信号を送信し、
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号を受信し、受信した前記位置推定情報信号のうち、前記中継端末符号が前記リファレンス端末である前記位置推定情報信号に含まれる前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の第1の推定位置を求め、
前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末から受信した前記位置推定情報信号に含まれる前記位置推定に必要な情報と、推定対象ターゲット端末以外の他のターゲット端末の第1の推定位置と、前記リファレンス端末の位置とに基づき、前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めることを特徴とする請求項2記載の位置推定システム。
【請求項4】
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めたとき、該ターゲット端末の第2の推定位置を第1の推定位置として、該ターゲット端末以外のターゲット端末の第2の推定位置を再度求めることを特徴とする請求項2又は3に記載の位置推定システム。
【請求項5】
前記ターゲット端末又は前記リファレンス端末は、前記無線信号の受信電力値を測定し、測定した前記受信電力値の情報を前記位置推定に必要な情報とすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項6】
複数配置され、位置推定情報信号を無線で送受信するターゲット端末と、
既知の位置に複数配置され、位置推定情報信号を無線で送信するリファレンス端末とを備え、
前記ターゲット端末は位置推定装置を内蔵し、前記位置推定装置は、複数の前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号を受信し、受信した前記位置推定情報信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき該ターゲット端末の第1の推定位置を求め、
前記第1の推定位置の情報を含めた位置推定情報信号を送信すると共に、
当該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から送信された前記位置推定情報信号を受信した場合、受信した前記位置推定情報信号から位置推定に必要な情報を測定し、
該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から送信された前記位置推定情報信号から測定した前記位置推定に必要な情報と、
受信した前記位置推定情報信号に含まれる該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末の第1の推定位置と、
前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号から測定した前記位置推定に必要な情報と、
前記リファレンス端末の位置とに基づき、該ターゲット端末の第2の推定位置を求めることを特徴とする位置推定システム。
【請求項7】
前記位置推定装置は、該ターゲット端末の第2の推定位置を求めたとき、
前記第2の推定位置の情報を含めた位置推定情報信号を送信し、
該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から前記第2の推定位置の情報を含めた前記位置推定情報信号を受信した場合、受信した該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末の第2の推定位置を第1の推定位置として、該ターゲット端末の第2の推定位置を再度求めることを特徴とする請求項6記載の位置推定システム。
【請求項8】
前記位置推定装置は、前記無線信号の受信電力値を測定し、測定した前記受信電力値の情報を前記位置推定に必要な情報とすることを特徴とする請求項6又は7記載の位置推定システム。
【請求項9】
前記ターゲット端末は、該ターゲット端末の移動を検出する移動検出手段を備え、
該ターゲット端末の移動に関する情報を前記位置推定情報信号に含め、
前記位置推定装置は、前記位置推定情報信号を受信する毎に、前記位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、前記ターゲット端末の移動に関する情報に基づき、前記蓄積された情報を選択し、前記選択した情報を用いて、前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めることをを特徴とする請求項2〜8の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項10】
前記位置推定装置は、前記位置推定情報信号の受信からの経過時間に応じて、前記蓄積された情報を選択し、前記選択した情報を用いて、前記ターゲット端末の第2の推定位置を求めることを特徴とする請求項9記載の位置推定システム。
【請求項11】
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末の第1の推定位置と第2の推定位置との間の距離が所定の値以上のとき、第1の推定位置と第2の推定位置との間の任意の位置を第2の推定位置とすることを特徴とする請求項2〜10の何れかに記載の位置推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−218614(P2007−218614A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36608(P2006−36608)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】