説明

位置検出用受光素子およびその製造方法およびセンサおよび電子機器

【課題】測距対象物までの距離に比例する出力が正確に得られる位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を提供する。
【解決手段】N型基板1と、N型基板1表面に形成されたP型抵抗層8と、P型抵抗層8の両端側にそれぞれ接続された2つの第1アノ−ド電極4と第2アノ−ド電極5とを備える。N型基板1とP型抵抗層8とから受光部9を構成し、受光部9に入射する入射光位置に応じた光電流が第1アノ−ド電極4と第2アノ−ド電極5から出力される。P型抵抗層8は、第2アノ−ド電極5から第1アノ−ド電極4に向かって不純物濃度が高くなるよう配置された5個の異なる不純物濃度の抵抗部8a〜8eからなり、抵抗部8a〜8eの隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の抵抗部の不純物濃度以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出用受光素子およびその製造方法およびセンサおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置検出用受光素子を用いた光学式測距センサとしては、一つの発光素子と、一つの位置検出受光素子(PSD(Position Sensitive Device))と、投光用集光部および受光用集光部と、上記位置検出受光素子から出力される信号の処理および所定のタイミングで発光素子を駆動する1つのIC(Integrated Circuit:集積回路)とを備えたものがある(例えば、特開平9−318315号公報(特許文献1)および特開2003−287420号公報(特許文献2)参照)。
【0003】
図3は、このような光学式測距センサに用いられる位置検出用受光素子の平面図を示し、図4図3のIV−IV線から見た断面図を示している。また、図5に、この位置検出用受光素子を用いた一般的な光学式測距センサの光学系の概念図を示している。
【0004】
一般的には、N型半導体基板1をカソ−ド層2とし、裏面側にカソ−ド電極3を有し、表側の両端に第1アノ−ド電極4、および第2アノ−ド電極5を有し、第1アノ−ド電極4と第2アノ−ド電極5はP型抵抗部8で接続されている。P型抵抗部8は一応な抵抗率となっている。P型抵抗部8はまた、N型半導体基板1とPN接合を形成しており、P型抵抗部8をアノ−ド、N型半導体基板1をカソ−ドとしてフォトダイオ−ドを形成している。第1アノ−ド電極4と第2アノ−ド電極5を同電位とし、これに対してカソ−ド電極3に逆バイアスを印加した状態で、図5に示すように、第2アノ−ド電極5から距離xの箇所に光が入射した場合、
V(x)=I1/(I1+I2)=R(x)/R0 ……… (1)
として、位置情報V(x)が得られる。
【0005】
ここで、I1、I2は、それぞれ第1アノ−ド電極4および第2アノ−ド電極5に流れ込む電流で、R(x)は、距離xの箇所から、P型抵抗部8を通って第2アノ−ド電極5まで電流が流れるときの抵抗値であり、R0は距離d、すなわち第1アノ−ド電極4から第2アノ−ド電極5までP型抵抗部8を通って電流が流れるときの抵抗値である。
【0006】
今、P型抵抗部8の抵抗率は一定であるので、この抵抗率をρとすると、
R(x)=ρx ……… (2)
となり、抵抗関数R(x)はxに対してリニアな関数となる。
(1)、(2)式より、
V(x)=(ρ・x)/(ρ・d)=x/d ……… (3)
となる。
【0007】
距離の測定法としては三角法を用いており、図5に示す光学系において、
L/A=f/(x+c) ……… (4)
となり、対象物14までの距離Lを変数とした場合の位置情報V(L)は、(3)式、(4)式より
V(L)=(1/d)・[(A・f/L)−c] ……… (5)
となる。位置情報V(L)は距離Lに対して双曲線関数となり、遠方、すなわち、Lが大きく、従ってxが小さい場合、距離の変化ΔLに対する位置情報V(L)の変化ΔVが小さくなり、S/N比が下がり測距精度が悪化する。
【0008】
したがって、測距対象物までの距離が短いところでは、精度よく距離を計測できるが、測距対象物までの距離が長いところでは、距離計測の精度が悪くなる。また、測距対象物までの距離が長いところでは、距離計測の精度が悪くなるので、実用上の距離計測範囲は、計測可能な最大距離と最小距離の比が8程度までしかなかった。
【0009】
これを解決するため、本発明者は、ΔVが小さいとき、すなわち(1)式にて距離xが小さいときの抵抗関数R(x)の変化率ΔRを、距離xが大きい場合よりも大きくすることによって、測距対象物までの距離に比例する出力を正確に得ることができる光学式測距センサを考えた。なお、この光学式測距センサは、この発明を理解しやすくするために説明するものであって、公知技術ではなく、従来技術ではない。
【0010】
すなわち、距離xが小さいときの抵抗関数R(x)の変化率ΔRを、距離xが大きい場合よりも大きくするには、P型抵抗部8の抵抗率を一定ではなく、第2アノ−ド電極5から第1アノ−ド電極4に向かって小さくしていけばよい。
【0011】
その手段としては、P型抵抗部8のパタ−ン線幅により抵抗率をコントロ−ルする方法がある。これは、P型抵抗部8のパタ−ン線幅を、第2アノ−ド電極5から第1アノ−ド電極4に向かって広くしていくことにより抵抗率を小さくしていくものである。
【0012】
しかしながら、この場合、第1アノ−ド電極4付近のP型抵抗部8のパタ−ン線幅は、チップサイズを考慮すると、むやみに広くすることができない。また、第2アノ−ド電極5付近のP型抵抗部8のパタ−ン線幅については、工程能力からその線幅に制限がある。また、むやみに線幅を狭くすると、特性バラツキの増大、歩留の低下を招くという問題がある。
【0013】
従って、P型抵抗部8のパタ−ンの線幅による抵抗率のコントロ−ルには限界がある。
【特許文献1】特開平9−318315号公報
【特許文献2】特開2003−287420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の課題は、電極間に連続して配置された異なる不純物濃度の複数の抵抗部間の境界に抵抗率異常領域がないようにして、測距対象物までの距離に比例する出力が正確に得られる位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を提供することにある。
【0015】
また、この発明のもう1つの課題は、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子をばらつきが少なくかつ高歩留まりで製造できる位置検出用受光素子の製造方法を提供することにある。
【0016】
また、この発明のもう1つの課題は、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、性能のよいセンサおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、この発明の位置検出用受光素子は、
第1導電型半導体層と、
上記第1導電型半導体層表面に形成された第2導電型拡散抵抗と、
上記第2導電型拡散抵抗の両端側にそれぞれ接続された2つの電極と
を備え、
上記第1導電型半導体層と上記第2導電型拡散抵抗で受光部を構成し、
上記受光部に入射する入射光位置に応じた光電流が上記2つの電極から夫々出力され、
上記第2導電型拡散抵抗は、上記2つの電極のうちの一方から他方に向かって不純物濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる不純物濃度の抵抗部からなり、
上記抵抗部が隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の上記抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の上記抵抗部の不純物濃度以上であることを特徴とする。
【0018】
上記構成の位置検出用受光素子によれば、上記2つの電極のうちの一方から他方に向かって不純物濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる不純物濃度の抵抗部において、抵抗部が隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の抵抗部の不純物濃度以上とすることにより、電極間に連続して配置された異なる不純物濃度の複数の抵抗部間の境界に抵抗率異常領域がないようにできる。したがって、測距対象物までの距離に比例する出力を正確に得られる位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を実現できる。
【0019】
この発明では、抵抗部のパタ−ン線幅を一定の適切な値に設定し、抵抗部を形成する不純物濃度をコントロ−ルすることにより、抵抗部の抵抗率をコントロ−ルするものである。
【0020】
すなわち、一方の電極から他方の電極に向かって濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる濃度の抵抗部からなる。これにより、チップサイズを大きくすることなく、また特性バラツキ、チップ歩留を悪化させることなく、十分な範囲に抵抗部の抵抗率をコントロ−ルすることができる。
【0021】
抵抗値を連続的に変化させること、すなわち不純物濃度を連続的に変化させることが理想的であるが、連続的に不純物濃度を変化させることは非常に困難であり、抵抗領域を複数の領域に分け、この領域内では一定の抵抗率としても、実用上問題ない。
【0022】
また、一実施形態の位置検出用受光素子では、上記n個の抵抗部の幅を、上記入射光のスポット幅の1/2〜3/2倍程度に設定した。
【0023】
上記実施形態によれば、上記n個の抵抗部の幅を入射光のスポット幅の1/2〜3/2倍程度にすることによって、位置情報出力は、連続的に変化させた場合と殆ど有意差がない。
【0024】
また、一実施形態の位置検出用受光素子では、上記n個の抵抗部のうちの最低不純物濃度の上記抵抗部の幅を他の上記抵抗部の幅よりも大きくした。
【0025】
上記実施形態によれば、光学系に位置検出用受光素子を設置する際に位置ズレが発生した場合、遠距離対象物からくるスポット光が、最低不純物濃度の領域、即ち抵抗変化率が最も大きく従ってΔVが最も大きい領域に照射されない恐れがあるが、上記領域幅を大きくとることによりこれを防止することができる。
【0026】
また、この発明の位置検出用受光素子の製造方法では、
第1導電型半導体層と、
上記第1導電型半導体層表面に形成された第2導電型拡散抵抗と、
上記第2導電型拡散抵抗の両端側にそれぞれ接続された2つの電極と
を備え、
上記第1導電型半導体層と上記第2導電型拡散抵抗で受光部を構成し、
上記受光部に入射する入射光位置に応じた光電流が上記2つの電極から夫々出力され、
上記第2導電型拡散抵抗は、上記2つの電極のうちの一方から他方に向かって不純物濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる不純物濃度の抵抗部からなり、
上記抵抗部が隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の上記抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の上記抵抗部の不純物濃度以上である位置検出用受光素子の製造方法であって、
上記n個の抵抗部を形成するためのn回のイオン注入を行うイオン注入工程を備え、
上記イオン注入工程において、
1回目のイオン注入は、上記第2導電型拡散抵抗の上記n個の抵抗部が形成される領域以外の領域を酸化膜により遮蔽し、上記n個の抵抗部に選択的に不純物を注入し、
2回目以降のイオン注入では、i回目(i=2〜n)のイオン注入は、i−1番目の上記抵抗部をフォトレジストにより遮蔽し、i番目の上記抵抗部からn番目の上記抵抗部までに選択的に不純物を注入したことを特徴とする。
【0027】
不純物濃度のコントロ−ルとしてはイオン注入法が知られているが、一般的には、濃度の異なる3つの領域A,B,Cを考えた場合、図6のように、3回のイオン注入で、別々にそれぞれ不純物量D1、D2、D3を選択的に注入する。
【0028】
この場合、パタ−ンズレや線幅シフトにより、その境界付近にて、図6に示すように、不純物の全く注入されない領域16や、濃度の高い特異な領域17が発生する。これらのことが、上記抵抗部間の境界にて発生すると、抵抗の断線、抵抗率異常領域の発生による位置検出誤差が発生する。
【0029】
これを防止するためには、先ず、図7(a)のように、酸化膜18を遮蔽膜として1回目のイオン注入を行い、3つの領域全てに不純物量D3を注入する。
【0030】
次に、図7(b)のように、領域Cをフォトレジスト19で遮蔽し、2回目のイオン注入を行い、領域BおよびAに不純物量(D2−D3)を注入する。
【0031】
次に、図7(c)のように、領域BおよびCをフォトレジスト19で遮蔽し、3回目のイオン注入を行い、領域Aに不純物量(D1−D2)を注入する。
【0032】
3回のイオン注入により各領域に注入された不純物量は、
領域A:D3+(D2−D3)+(D1−D2)=D1
領域B:D3+(D2−D3)=D2
領域C:D3
となる。また、この場合、パタ−ンズレや線幅シフトが発生しても、図8に示すように、境界線がシフトするだけで図6に示すような領域16,17は発生しない。
【0033】
すなわち、上記構成の位置検出用受光素子の製造方法によれば、n個の抵抗部をn回のイオン注入により形成し、1回目のイオン注入は、酸化膜により遮蔽し、上記n個の抵抗部に選択的に不純物を注入する。そして、次の2回目以降のi回目(i=2〜n)のイオン注入は、i−1番目の抵抗部をフォトレジストにより遮蔽し、i番目の抵抗部からn番目の抵抗部までに選択的に不純物を注入する。そうすることによって、1番目の抵抗部からn番目の抵抗部の順に不純物濃度が高くなり、その隣り合う抵抗部の境界付近にて、抵抗の断線や抵抗率異常領域の発生しないn個の連続した抵抗部を形成することができる。
【0034】
また、この発明のセンサでは、上記のいずれか1つの位置検出用受光素子を備えたことを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、性能のよいセンサを実現できる。
【0036】
また、この発明の電子機器では、上記のいずれか1つの位置検出用受光素子を備えたことを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、高性能な測距機能を備えた電子機器を実現できる。
【発明の効果】
【0038】
以上より明らかなように、この発明の位置検出用受光素子によれば、測距対象物までの距離に比例する出力が正確に得られる位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を実現することができる。
【0039】
また、この発明の位置検出用受光素子の製造方法によれば、一方の電極から他方の電極に向かって抵抗率が小さくなる位置検出用受光素子を安定して製造することが可能になる。
【0040】
また、この発明のセンサによれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を測距センサ等のセンサに使用することにより、遠距離、近距離ともに測定誤差の小さい、測定レンジの広い性能のよいセンサを実現することができる。
【0041】
また、この発明の電子機器によれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、高性能な測距機能を備えた電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明の位置検出用受光素子およびその製造方法およびセンサおよび電子機器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0043】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の位置検出用受光素子の平面図を示しており、図2に図1のII−II線から見た断面図を示している。
【0044】
第1導電型半導体層の一例としてのN型基板1をカソ−ド層2とし、N型基板1の一方の表面にカソ−ド電極3を有する。そのN型基板1の他方の表面に、所定の間隔をあけて形成された第1アノ−ド電極4と第2アノ−ド電極5を有し、各アノ−ド電極4,5は、コンタク窓6を介して、P型拡散層7に接続されている。アノ−ド電極4側のP型拡散層7とアノ−ド電極側5のP型拡散層7は、第2導電型拡散抵抗の一例としてのジクザグ形状のP型抵抗層8で接続されており、このP型抵抗層8とカソ−ド層2が形成する領域が受光部9になっている。
【0045】
上記P型抵抗層8は、適切な一定の線幅に設計されている。
【0046】
また、P型抵抗層8は、第1アノ−ド電極4から見て、5つの領域A〜Eに分割された抵抗部8a〜8eからなり、各領域内での抵抗率はそれぞれ一定であり、領域A〜Eの抵抗部8a〜8eのそれぞれの抵抗率をρ1〜ρ5とすると、
ρ1<ρ2<ρ3<ρ4<ρ5
となっている。従って、第2アノ−ド電極5から第1アノ−ド電極4に向かって、不純物濃度が高くなっている。また、上記受光部9の領域A〜Eにおいて隣り合う抵抗部8a〜8eの境界部分は、不純物濃度の高い側の抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の抵抗部の不純物濃度以上である
また、5つの領域A〜Eの幅は、使用される光学系において、受光部9に照射される光のスポット径にほぼ等しく設計されている。
【0047】
ここで、測距センサ等の光学系にこの位置検出用受光素子を設置する場合、その位置ズレが発生するが、この位置ズレを考慮し、最も抵抗率の大きい領域Eの抵抗部8eの幅を、他の領域に比べ大きく設定する場合がある。
【0048】
上記構成によれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を実現することができる。
【0049】
また、上記5個の抵抗部8a〜8eの幅を入射光のスポット幅の1/2〜3/2倍程度にすることによって、位置情報出力は、連続的に変化させた場合と殆ど変わらない。
【0050】
この実施形態の位置検出用受光素子は、次の工程により製造される。
【0051】
N型基板1の表面に、熱酸化法等により酸化膜10を形成する。
【0052】
次にフォトリソグラフィ工程により、酸化膜10を選択的に取り除き、取り除いた箇所から、ボロン等のP型不純物を熱拡散法等により拡散し、P型拡散層7を形成する。このとき、上記酸化膜10を取り除いた箇所にも再び酸化膜10が形成されるため、N型基板1の表面は全面に酸化膜10で被膜される。
【0053】
次に、フォトリソグラフィ工程により、酸化膜10を選択的に取り除き、残された酸化膜10を遮蔽膜として、1回目のイオン注入を行う。このとき、5つの領域A〜EのP型抵抗層8となるべき領域にボロン等の不純物が注入される。
【0054】
次に、フォトリソグラフィ工程により、領域Eをレジストにて被膜し、2回目のイオン注入を行う。このとき、4つの領域A〜DのP型抵抗層8にボロン等の不純物が注入される。
【0055】
次に、フォトリソグラフィ工程により、領域D,Eをレジストにて被膜し、3回目のイオン注入を行う。このとき、3つの領域A〜CのP型抵抗層8にボロン等の不純物が注入される。
【0056】
次に、フォトリソグラフィ工程により、領域C〜Eをレジストにて被膜し、4回目のイオン注入を行う。このとき、2つの領域A,BのP型抵抗層8にボロン等の不純物が注入される。
【0057】
次に、フォトリソグラフィ工程により、領域B〜Eをレジストにて被膜し、5回目のイオン注入を行う。このとき、領域AのP型抵抗層8にのみボロン等の不純物が注入される。
【0058】
その後、CVD法等の低温酸化により、N型基板1の表面全面に酸化膜10を形成し、熱処理を行う。
【0059】
次に、フォトリソグラフィ工程により、酸化膜10を選択的に取り除き、コンタク窓6を形成し、Al等の電極材料をスパッタ蒸着等により被膜し、フォトリソグラフィ工程により選択的に取り除くことにより、第1アノ−ド電極4および第2アノ−ド電極5を形成する。
【0060】
最後に、N型基板1の他方にAu等の電極材料をスパッタ蒸着等により被膜し、熱処理を行うことにより、カソ−ド電極3を形成する。
【0061】
上記構成の位置検出用受光素子の製造方法によれば、n個のP型抵抗層8をn回のイオン注入を行うとき、1回目のイオン注入は、酸化膜により遮蔽し、上記n個のP型抵抗層8に選択的に不純物を注入する。そして、次の2回目以降のi回目(i=2〜n)のイオン注入は、i−1番目のP型抵抗層8を酸化膜およびフォトレジストにより遮蔽し、i番目のP型抵抗層8からn番目のP型抵抗層8までに選択的に不純物を注入する。そうすることによって、1番目のP型抵抗層8からn番目のP型抵抗層8の順に不純物濃度が高くなり、その隣り合うP型抵抗層8の境界付近にて、抵抗の断線や抵抗率異常領域の発生しないP型抵抗層8を形成することができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
図9はこの発明の第2実施形態の位置検出用受光素子を用いたセンサの一例としての光学式測距センサの構成を示している。
【0063】
図9に示すように、発光素子102より出射される光が投光用集光部108で集光され、位置検出用受光素子103の受光面にほぼ垂直に投光される。この光が測距対象物112に拡散反射し、受光用集光部109に入射する光だけを集光し、位置検出用受光素子103の受光面上に光スポットを形成させる。この光学式測距センサから測距対象物までの距離が変わると、受光面上の光スポットの位置が変わるので、位置検出用受光素子103の2つの端子より得られる電流値をI1,I2としてI1/(I1+I2)で求めた出力値が得られる。受光面が1つで受光領域103a〜103eの抵抗値が均一な場合、この出力値は光学式測距センサから測距対象物までの距離に反比例するが、この発明では、複数に分割された受光部の受光領域103a〜103eの抵抗値が夫々異なり、光学式測距センサの発光素子102側つまり測距対象物が遠いところにある場合の反射光が入射する位置のほうが大きい抵抗値で、測距対象物が近いところにある場合の反射光が入射する位置のほうが小さい抵抗値となっている。
【0064】
この光学式測距センサでは、測距対象物が一定距離移動するとき、測距対象物が遠いところにある場合より近いところにある場合の方が受光面上の光スポットの位置変化量が大きいので、光スポットの位置変化量が大きいところの抵抗値が小さく、光スポットの位置変化量が小さいところの抵抗値が大きくしている。
【0065】
これにより、簡単な構成で広い測距範囲において測距対象物までの距離に比例する出力を正確に得ることができ、広い測距範囲全域で測距精度を均一にできる。
【0066】
上記構成によれば、位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、性能のよい光学式測距センサを実現することができる。
【0067】
この発明の位置検出用受光素子は、特に光学式測距センサ、人体感知センサ等のセンサ類、更にはそれらのセンサを用いたオートフォ−カス機能機器、様式便座、洗面器具、或いは自動掃除機、複写機、各種ロボット等の電子機器に用いると好適である。上記位置検出誤差の少ない位置検出用受光素子を用いることによって、高性能な電子機器を実現することができる。
【0068】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の位置検出用受光素子の平面図である。
【図2】図2は図1のII−II線から見た断面図である。
【図3】図3は従来の位置検出用受光素子の平面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線から見た断面図である。
【図5】図5は一般的な測距センサの光学系の概念図である。
【図6】図6は一般的なイオン注入方式での不純物濃度説明図である。
【図7】図7はこの発明でのイオン注入方式の説明図である。
【図8】図8はこの発明での不純物濃度説明図である。
【図9】図9はこの発明の第2実施形態の位置検出用受光素子を用いたセンサの一例としての光学式測距センサの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…N型基板
2…カソ−ド層
3…カソ−ド電極
4…第1アノ−ド電極
5…第2アノ−ド電極
6…コンタクト窓
7…P型拡散層
8…P型抵抗層
8a〜8e…抵抗部
9…受光部
10…酸化膜
11…位置検出用受光素子
12…受光レンズ
13…投光レンズ
14…対象物
15…入射光
16…不純物の全く注入されない領域
17…不純物濃度の高い特異な領域
18…酸化膜
19…レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、
上記第1導電型半導体層表面に形成された第2導電型拡散抵抗と、
上記第2導電型拡散抵抗の両端側にそれぞれ接続された2つの電極と
を備え、
上記第1導電型半導体層と上記第2導電型拡散抵抗で受光部を構成し、
上記受光部に入射する入射光位置に応じた光電流が上記2つの電極から夫々出力され、
上記第2導電型拡散抵抗は、上記2つの電極のうちの一方から他方に向かって不純物濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる不純物濃度の抵抗部からなり、
上記抵抗部が隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の上記抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の上記抵抗部の不純物濃度以上であることを特徴とする位置検出用受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出用受光素子において、
上記n個の抵抗部の幅を、上記入射光のスポット幅の1/2〜3/2倍程度に設定したことを特徴とする位置検出用受光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置検出用受光素子において、
上記n個の抵抗部のうちの最低不純物濃度の上記抵抗部の幅を他の上記抵抗部の幅よりも大きくしたことを特徴とする位置検出用受光素子。
【請求項4】
第1導電型半導体層と、
上記第1導電型半導体層表面に形成された第2導電型拡散抵抗と、
上記第2導電型拡散抵抗の両端側にそれぞれ接続された2つの電極と
を備え、
上記第1導電型半導体層と上記第2導電型拡散抵抗で受光部を構成し、
上記受光部に入射する入射光位置に応じた光電流が上記2つの電極から夫々出力され、
上記第2導電型拡散抵抗は、上記2つの電極のうちの一方から他方に向かって不純物濃度が高くなるように連続して配置されたn個(n≧3)の異なる不純物濃度の抵抗部からなり、
上記抵抗部が隣り合う境界部分は、不純物濃度の高い側の上記抵抗部の不純物濃度以下で、かつ、不純物濃度の低い側の上記抵抗部の不純物濃度以上である位置検出用受光素子の製造方法であって、
上記n個の抵抗部を形成するためのn回のイオン注入を行うイオン注入工程を備え、
上記イオン注入工程において、
1回目のイオン注入は、上記第2導電型拡散抵抗の上記n個の抵抗部が形成される領域以外の領域を酸化膜により遮蔽し、上記n個の抵抗部に選択的に不純物を注入し、
2回目以降のイオン注入では、i回目(i=2〜n)のイオン注入は、i−1番目の上記抵抗部をフォトレジストにより遮蔽し、i番目の上記抵抗部からn番目の上記抵抗部までに選択的に不純物を注入したことを特徴とする位置検出用受光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の位置検出用受光素子を備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の位置検出用受光素子を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−227430(P2008−227430A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67860(P2007−67860)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】