説明

位置検出装置

【課題】 操作感覚に違和感を与えにくい位置検出装置を提供する。
【解決手段】 ハンドルバー2に設けられたハンドルグリップ3の回動動作に基づいて回動する被検出部4と、被検出部4を検出する検出部5と、被検出部4と検出部5とを収納するケース6とを備えた位置検出装置1において、被検出部4を構成するホルダ部材4aと、ホルダ部材4aを回動可能に支持するとともに検出部5を保持する支持部材7とを備え、ホルダ部材4aに支持部材7と摺動する第一の摺動部4dを設け、支持部材7に第一の摺動部4dと摺動する第二の摺動部76を設け、ホルダ部材4aに第一の摺動部4dと第二の摺動部76との摺動部分を覆うカバー部4eを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車のハンドルグリップ等の操作手段の操作位置をホールIC等の磁気検出部にて検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の位置検出器は、特許文献1に開示されているものが提案されている。この位置検出装置は、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚に近い操作感覚を、操作する者に与えるために、グリップ本体部が回動する際に、前記グリップ本体部の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部に加える摩擦抵抗トルク付与手段を備えたものであった。前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に接触する摩擦部材を備えており、この摩擦部材と前記グリップ本体部とが面接触し、前記摩擦部材と前記グリップ本体部との間の摩擦力によって、摩擦抵抗トルクを得るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の位置検出装置では、前記摩擦抵抗トルク付与手段と前記グリップ本体部とが面接触する部分は、カバー部材内に収納されている。しかし、このような位置検出装置が用いられる二輪車などの鞍型乗車車両においては、塵や埃などの異物が、前記カバー部材内に侵入し、さらに、前記摩擦抵抗トルク付与手段と前記グリップ本体部との面接触部分にも異物が侵入し、前記摩擦部材と前記グリップ本体部との間の摩擦力に変化を与えることになり、操作感覚に違和感を与える虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、操作感覚に違和感を与えにくい位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における位置検出装置は、ハンドルバーに設けられたハンドルグリップの回動動作に基づいて回動する被検出部と、前記被検出部を検出する検出部と、前記被検出部と前記検出部とを収納するケースとを備えた位置検出装置において、前記被検出部を構成するホルダ部材と、前記ホルダ部材を回動可能に支持するとともに前記検出部を保持する支持部材とを備え、前記ホルダ部材に前記支持部材と摺動する第一の摺動部を設け、前記支持部材に前記第一の摺動部と摺動する第二の摺動部を設け、前記ホルダ部材または前記支持部材に前記第一の摺動部と第二の摺動部との摺動部分を覆うカバー部を設けたものである。
【0007】
また、前記第一、第二の摺動部は、環状である。
【0008】
また、前記カバー部は、円筒形状であり、その中心軸を前記ハンドルグリップの回動軸と同一としたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、操作感覚に違和感を与えにくい位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の側面図。
【図2】図1中A−A線の断面図。
【図3】図2中B−B線の断面図。
【図4】本発明の第2実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の第1実施形態を、二輪車のハンドルバーに回動可能に設けられたハンドルグリップの操作位置(回動角)を検出する位置検出装置を例にとって説明する。
【0012】
本発明の位置検出装置1は、図示しない二輪車のハンドルバー2に設けられるものであり、ハンドルグリップ3と、このハンドルグリップ3とともに回動する被検出部4と、この被検出部4を検出する検出部5と、被検出部4を回動可能に支持するとともに検出部5を固定した支持部材7と、被検出部4と検出部5とを収納するケース6とを備えている。
【0013】
ハンドルバー2は、鉄やアルミニウム等の金属からなり、円筒形状である。
【0014】
ハンドルグリップ3は、合成樹脂からなり、スリーブ3aとグリップ部3bとで構成されており、スリーブ3aは、円筒形状で、ハンドルバー2の外周に回動自在に位置している。スリーブ3aは、図3中左側の端部に、鍔部3cを備えている。鍔部3cは円盤形状で、ハンドルグリップ3の外周に切れ目なく設けられている。そして、その縁の一部に、被検出部4と連結し、ハンドルグリップ3の回動を伝達する連結部3dを備えている。図3中、Cは、ハンドルグリップ3の回動軸である。
【0015】
グリップ部3bは、運転者が握る部分であり、ゴム等の弾性部材からなり、スリーブ3aの外周を切れ目なく覆っており、スリーブ3aに強固に固定されている。
【0016】
被検出部4は、ホルダ部材4aと、磁石4bと、ヨーク4cとからなり、磁石4bとヨーク4cとで、磁気部材を構成している。
【0017】
ホルダ部材4aは合成樹脂からなり、環状で、支持部材7が貫通する孔部41を備えており、支持部材7に回動可能に支持されている。また、ホルダ部材4aには、ハンドルグリップ3に設けた連結部3dが挿入される凹みからなる受け部42を備えている。ハンドルグリップ3の連結部3dを受け部42に挿入することによって、ハンドルグリップ3の回動が、ホルダ部材4aに伝わり、被検出部4が回動するものである。
【0018】
ホルダ部材4aは、支持部材7と摺動する第一の摺動部4dと、カバー部4eとを備えている。
【0019】
ホルダ部材4aに設けた第一の摺動部4dは、ハンドルグリップ3の回動軸Cに対して垂直方向の面であり、ホルダ部材4aのハンドルグリップ3を設けた側とは反対の側、すなわち、前記二輪車の中心側(図3中左側)に設けられている。第一の摺動部4dは、環状であり、後述するリターンスプリング8の外径より大きく形成されている。また、第一の摺動部4dは、滑らかな平面である。
【0020】
カバー部4eは、前記二輪車の中心側(図3中左側)に向けて突出した円筒形状をしている。さらに、カバー部4eは、切れ目のない円筒形状をしている。また、カバー部4eの中心軸は、ハンドルグリップ3の回動軸Cと同一である。カバー部4eは、第一の摺動部4dの外側に設けられており、第一の摺動部4dと後述する第二の摺動部との摺動部分を覆っている。
【0021】
磁石4bは、永久磁石からなり、円柱形状で、本実施形態では、2つ設けられている。2つの磁石4bは、ともにホルダ部材4aに固定されている。
【0022】
ヨーク4cは、金属の軟磁性材料からなり、板状で、かつ半円弧の形状である。ヨーク4cは、ホルダ部材4aに固定されている。ヨーク4cは、1つ設けられている。ヨーク4cは、両端で2つの磁石4bと接触し、閉磁気回路を構成している。
【0023】
検出部5は、磁気検出素子51と回路基板52とからなり、磁気検出部を構成している。
【0024】
磁気検出素子51は、磁束密度の変化を電気信号に変換するものであり、例えば、ホール素子等である。磁気検出素子51は、2つ設けられており、ヨーク4cの板面に沿うように配設され、磁石4bとヨーク4cによって形成される閉磁気回路の漏洩磁束密度の変化を検出するものである。
【0025】
回路基板52は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性の基材に図示しない導電路やこの導電路と電気的に接続された電子部品等を備えたものである。磁気検出素子51は、回路基板52に電気的に接続されている。また、回路基板52には、外部回路に接続された配線54が電気的に接続されている。磁気検出素子51の信号は、回路基板52と配線54を介して外部の回路に出力される。
【0026】
53は、回路ホルダー部53であり、支持部材7に一体に形成されている。回路ホルダー部53は、カップ形状をしており、磁気検出素子51と回路基板52を収納するものである。特に、回路ホルダー部53には、磁気検出素子51を収納する袋状の収納部55を備えており、この収納部55内に磁気検出素子51が嵌め込まれている。収納部55は、ヨーク4cに近接し、ヨーク4cの板面に沿うように設けられている。
【0027】
支持部材7は、合成樹脂からなり、環状で、ハンドルバー2が貫通する孔部71を備えた筒状体であり、ハンドルバー2の外周を取り囲んでいる。そして、支持部材7は、ハンドルバー2に対して、図示しない手段によって回動しないように固定されている。支持部材7は、円筒形状の回動支持部72を備えており、被検出部4を回動可能に支持している。
【0028】
支持部材7は、図3中、回動支持部72の左側に、回動支持部72の外周より大きい外周の鍔部73を備えている。この鍔部73は、第二の摺動部76を備えた円筒部77を備えている。
【0029】
また、支持部材7は、図3中、回動支持部72の右側に、抜け止め部材74が取り付けられている。この抜け止め部材74は、被検出部4の回動支持部72からの脱落を防止するとともに、被検出部4のハンドルグリップ3の回動軸方向において、図3中右側への移動を規制するものである。また、この抜け止め部材74とホルダ部材4aとの間には、スプリング9が設けられている。このスプリング9は、コイルスプリングであり、ホルダ部材4aを図3中左側へ移動させるもので、ホルダ部材4aを支持部材7の鍔部73側へ押しつけることによって、第一の摺動部4dと第二の摺動部76とを所定の力を加えながら接触することができる。
【0030】
支持部材7には、鍔部73から延長形成された支持部75を備えている。この支持部75には、検出部5の回路ホルダー部53が一体に形成されている。なお、8は、コイルスプリングからなるリターンスプリングであり、運転者によって操作されたハンドルグリップ3を初期の位置に復帰させるものである。このリターンスプリング8の一端は、被検出部4のホルダ部材4aに固定されており、他端は、支持部材7に固定されている。
【0031】
円筒部77は、ハンドルグリップ3側(図3中右側)に向けて突出した、切れ目のない円筒形状をしている。また、円筒部77の中心軸は、ハンドルグリップ3の回動軸Cと同一である。円筒部77は、カバー部4eの内側に設けられており、円筒部77とカバー部4eとは、カバー部4eを備えたホルダ部材4aが、回転可能な程度に接触している。
【0032】
円筒部77の端部、すなわち、円筒部77の図3中右側の端部は、ハンドルグリップ3の回動軸Cに対して垂直方向の面を備えており、この面が、第二の摺動部76である。第二の摺動部76は、環状であり、第一の摺動部4dと対向するものである。また、第二の摺動部76は、第一の摺動部4dと同様に滑らかな平面である。第一の摺動部4dと第二の摺動部76との摺動部分は、カバー部4eによって覆われている。
【0033】
ケース6は、第1、第2のケース61、62とから構成されている。第1、第2のケース61、62とも、合成樹脂製で、およそ半円形状のカップ形状である。第1、第2のケース61、62は、ハンドルグリップ3の回動軸C方向に沿って分割するものである。第1、第2のケース61、62は溶着等の適宜手段によって固定されている。
【0034】
ケース6は、被検出部4と検出部5とを収納するものである。なお、本実施形態では、支持部材7も、ケース6とともに被検出部4と検出部5とを収納する外殻の一部を構成している。ケース6は、ハンドルバー2に対して図示しない手段によって回動しないように固定されている。
【0035】
なお、63は、パッキンであり、検出部5の配線54が貫通している。
【0036】
以上の構成によって、ケース6内に侵入した塵や埃などの異物が、第一の摺動部4dと第二の摺動部76との摺動部分に侵入することを抑制し、第一の摺動部4dと第二の摺動部76との間の摩擦力の変化を抑制することで、操作感覚に違和感を与えにくい位置検出装置を提供することができる。
【0037】
また、支持部材7に被検出部4と検出部5とを組み付けたことによって、被検出部4、検出部5、支持部材7とを1つの組み立て部品として取り扱うことができ、製造工程や車両への組み付け工程等において、取り扱いが容易になり、作業性の向上とコスト削減を図ることができる。
【0038】
本発明の第1実施形態では、カバー部4eをホルダ部材4aに設けていたが、本実施形態に限定されるものではなく、図4に示す第2実施形態のように、支持部材7にカバー部78を設けても良い。
【0039】
この第2実施形態では、ホルダ部材4aには、第一の摺動部4fを備えた円筒部4gを備えている。
【0040】
円筒部4gは、前記二輪車の中心側(図3中左側)に向けて突出した、切れ目のない円筒形状をしている。また、円筒部4gの中心軸は、ハンドルグリップ3の回動軸Cと同一である。円筒部4gは、カバー部78の内側に設けられており、円筒部4gとカバー部78とは、円筒部4gを備えたホルダ部材4aが、回転可能な程度に接触している。
【0041】
円筒部4gの端部、すなわち、円筒部4gの図3中左側の端部は、ハンドルグリップ3の回動軸Cに対して垂直方向の面を備えており、この面が、第一の摺動部4fである。第一の摺動部4fは、環状であり、後述する第二の摺動部79と対向するものである。また、第一の摺動部4fは、滑らかな平面である。
【0042】
支持部材7の鍔部73に設けた第二の摺動部79は、ハンドルグリップ3の回動軸Cに対して垂直方向の面であり、支持部材7のハンドルグリップ3を設けた側、すなわち、図4中右側に設けられている。第二の摺動部79は、環状であり、リターンスプリング8の外径より大きく形成されている。また、第二の摺動部79は、滑らかな平面である。
【0043】
カバー部78は、ハンドルグリップ3側(図3中右側)に向けて突出した円筒形状をしている。さらに、カバー部78は、切れ目のない円筒形状をしている。また、カバー部78の中心軸は、ハンドルグリップ3の回動軸Cと同一である。カバー部78は、第二の摺動部79の外側に設けられており、第一の摺動部4fと第二の摺動部79との摺動部分を覆っている。
【0044】
以上の構成によって、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、二輪車のハンドルグリップ等の操作手段の操作位置を検出する位置検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 位置検出装置
2 ハンドルバー
3 ハンドルグリップ
4 被検出部
4a ホルダ部材
4d 第一の摺動部
4e カバー部
5 検出部
7 支持部材
76 第二の摺動部
C 回動軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルバーに設けられたハンドルグリップの回動動作に基づいて回動する被検出部と、前記被検出部を検出する検出部と、前記被検出部と前記検出部とを収納するケースとを備えた位置検出装置において、前記被検出部を構成するホルダ部材と、前記ホルダ部材を回動可能に支持するとともに前記検出部を保持する支持部材とを備え、前記ホルダ部材に前記支持部材と摺動する第一の摺動部を設け、前記支持部材に前記第一の摺動部と摺動する第二の摺動部を設け、前記ホルダ部材または前記支持部材に前記第一の摺動部と第二の摺動部との摺動部分を覆うカバー部を設けたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第一、第二の摺動部は、環状であることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記カバー部は、円筒形状であり、その中心軸を前記ハンドルグリップの回動軸と同一としたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−73050(P2012−73050A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216527(P2010−216527)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】