説明

位置決めピンの固定方法及びピン固定台

【課題】搬送装置に搬送物を搬送させる前の準備作業である位置合わせを多大な時間をかけることなく簡易に行う。
【解決手段】フープを把持する把持機構にフープを介してマーカーを固定する(S1)。ここでマーカーは、先端のインク付着部が下方に位置し、フープの下面に形成された位置決め穴と水平方向に関して所定の位置関係を有するように固定される。次に、把持機構を下降させ、フープの載置台上にマーカーで位置合わせマークを形成する(S5)。そして、位置決め穴に対応する位置決めピンが固定されたテーブルを、位置決めピンが位置合わせマークに対して上記所定の位置関係を有するように、載置台上に固定する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め穴が形成された搬送物を搬送する際に、位置決め穴に対応する位置決めピンを物体に固定する、位置決めピン固定方法、及びかかる方法に用いられるピン固定台に関する。
【背景技術】
【0002】
載置台等の物体の上面とその物体の上方の位置との間で搬送物を搬送する搬送装置として、特許文献1に記載のものがある。この搬送装置には、搬送物を把持する把持手段及び把持手段を鉛直方向に移動する移動手段が設けられている。このような搬送装置を用いて搬送物を搬送する場合に、物体の上面に搬送物を載置する際の水平方向の位置決めを行うために、搬送物の下面に位置決め穴が形成されることがある。一方、物体の上面には位置決め穴に対応する位置に位置決めピンが固定される。かかる位置決め穴及び位置決めピンを用いて位置決めを行いつつ搬送物を搬送させる場合には、搬送装置を使用する前の準備作業として、位置決め穴及び位置決めピンを以下のようにあらかじめ互いに位置合わせしておく必要がある。なお、搬送装置には、把持手段及び移動手段と共に、把持手段の水平方向に関する位置を補正する補正手段が設けられているものとする。
【0003】
まず、物体の上面において把持手段の下方の位置にあらかじめ位置決めピンを固定する。次に、把持手段に搬送物を把持させた状態で移動手段を駆動して、位置決めピンの上方から位置決めピンの近傍へと把持手段を下降させる。そして、移動手段を制御して把持手段の鉛直位置を目視で調整すると共に、補正手段を制御して把持手段の水平位置を目視で調整しつつ、搬送物の下面の位置決め穴と位置決めピンとがちょうど嵌合されるよう位置合わせして、搬送物を物体上に載置する。最後に、搬送物を物体上に載置した状態で、把持手段の水平位置及び鉛直位置を搬送装置に記憶させる。搬送装置は、このように記憶された位置に基づいて搬送物を搬送する。
【0004】
【特許文献1】特開2005−294614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の位置合わせ方法においては、搬送装置を制御して把持手段の位置を目視で調整しつつ把持手段を移動しなければならない。特に、搬送物の載置位置に高い精度が要求される場合や、搬送物の載置位置の目視が困難な場合には、搬送装置に載置位置を記憶させるまでに多大な時間を要する場合がある。また、作業に非常な労苦を伴うおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、搬送物を搬送する前の準備作業である位置合わせを多大な時間をかけることなく簡易に行うことができる位置決めピンの固定方法及びピン固定台を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の位置決めピンの固定方法は、位置決め穴が下面に形成された搬送物を把持する把持手段と、水平位置を示す位置情報を記憶する記憶手段と、水平な上面を有する物体の当該上面上の前記記憶手段が記憶している位置情報が示す位置と前記物体より上方の位置との間で前記把持手段を鉛直方向に移動する移動手段とを有する搬送装置の使用準備として、前記位置決め穴に対応する位置決めピンを前記物体の上面に固定する方法である。そして、水平位置の位置合わせ用の目印を前記物体の上面に形成する目印形成手段を、当該目印形成手段による前記目印の形成位置と前記把持手段が把持する前記搬送物の前記位置決め穴の位置とが水平方向に関して所定の位置関係を有するように、直接的に又は他の物体を介して前記把持手段に固定する形成手段固定ステップと、所定の水平位置を示す位置情報を前記記憶手段に記憶させる記憶ステップと、前記形成手段固定ステップで前記把持手段に固定された前記目印形成手段が前記物体の上面に前記目印を形成できる位置まで、前記記憶ステップで記憶された前記所定の水平位置に前記把持手段の水平位置を保持させつつ前記把持手段を下方へと前記移動手段に移動させる移動ステップと、前記移動ステップで前記把持手段が移動された後に、前記目印形成手段に前記目印を形成させる形成ステップと、前記形成ステップで前記目印形成手段が前記物体の上面に形成した前記目印の位置と前記位置決めピンの固定位置とが水平方向に関して前記所定の位置関係を有するように、前記位置決めピンを前記物体の上面上に固定するピン固定ステップとを備えている。
【0008】
本発明の位置決めピンの固定方法によると、あらかじめ搬送装置に記憶させた水平位置に把持手段を下降させ、把持手段に固定された目印形成手段によって物体の上面に目印を形成する。そして、形成した目印に基づいて水平方向に関する位置を調整しつつ位置決めピンを固定すればよい。したがって、搬送装置に搬送物の載置位置を記憶させるために、あらかじめ物体の上面に位置決めピンを固定し、水平位置及び鉛直位置を調整しつつ把持手段を移動して位置決めピンと位置決め穴とを位置合わせする必要がある従来の方法と比べて、大きな労苦を必要とせず、速やかに位置合わせを完了することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記位置決め穴が、前記物体の上面上に載置された際の水平方向に関する前記搬送物の向きを規定するように前記搬送物に形成されており、前記形成手段固定ステップにおいて複数の前記目印形成手段を、水平位置が互いに異なる複数の前記目印が前記形成ステップで形成されると共に当該複数の目印の形成位置のそれぞれと前記位置決め穴の位置とが水平方向に関して所定の位置関係を有するように、前記把持手段に固定してもよい。搬送物の向きについても位置決めが必要な場合には、位置合わせにさらに多大な時間を要し、労苦も多くなる。上記の構成によると2つ以上の目印が物体の上面に形成されるので、かかる目印に基づいて水平方向に関する搬送物の向きについても調整することができる。したがって、位置合わせが簡易になる。
【0010】
また、本発明においては、前記位置決めピンにおいて、前記位置決めピンが表面から突出するように固定されたピン固定台を、前記位置決めピンが上方に向かって突出するように前記物体の上面に固定することが好ましい。この構成によると、搬送物の位置決め穴に対応するようにあらかじめピン固定台に位置決めピンを固定しておき、位置合わせの際に固定台ごと位置決めピンを物体の上面に固定すれば良い。したがって、作業に要する時間がさらに短縮される。特に複数の位置決め穴に対応する複数の位置決めピンを固定する場合には、位置決め穴同士の位置関係と同様の位置関係を有するようにあらかじめこれらの位置決めピンを固定台に固定しておけばよいので、作業に要する時間がより大きく短縮される。
【0011】
また本発明のピン固定台は、上述の位置決めピンの固定方法に用いられるピン固定台であって、互いに平行な第1及び第2の面を有しており、前記第1の面と前記物体の上面とが当接するように当該ピン固定台が前記物体の上面上に載置された際に前記目印形成手段が形成した前記目印と水平方向に関して重なり合うこととなる位置に、前記第1の面から前記第2の面まで前記第1の面に垂直に貫通する貫通孔が形成されており、且つ、前記目印形成手段が形成した前記目印の位置と前記貫通孔の位置とが水平方向に関して重なり合うように当該ピン固定台が前記物体の上面上に載置された際に、前記位置決め穴と水平方向に関して重なり合うこととなる位置に、前記第1の面から突出するように前記位置決めピンが固定されている。
【0012】
本発明のピン固定台によると、物体の上面に形成された目印が鉛直方向に貫通孔から目視できる位置に合わせて物体の上面に固定することで、位置合わせが完了する。したがって、作業に要する時間がより短縮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下は、本発明の好適な一実施形態に係る説明である。図1は、本実施形態に係る搬送システム1の構成を示す斜視図である。
【0014】
<搬送システム>
搬送システム1は、レール11、水平移動機構12、昇降機構13、懸垂ベルト14、把持機構15及びグリッパ16を有している(搬送装置)。水平移動機構12は、レール11から吊り下げられている。水平移動機構12とレール11との間には図示されていないレール上移動機構が設置されている。レール上移動機構は水平移動機構12をレール11に沿って移動する。
【0015】
水平移動機構12の下方には昇降機構13が設置されている。水平移動機構12は昇降機構13を水平方向に関して移動する。昇降機構13には4本の懸垂ベルト14が設置されている。昇降機構13は懸垂ベルト14を巻き上げたり繰り出したりする。懸垂ベルト14の下端には把持機構15が固定されており、懸垂ベルト14が巻き上げられると把持機構15が上昇し、懸垂ベルト14が繰り出されると把持機構15が下降する(移動手段)。把持機構15において、レール11に沿った前後方向(方向D1)に関して互いに対向する一対の側面には、グリッパ16が設置されている。グリッパ16は搬送物を把持したり、把持している搬送物を解離したりする(把持手段)。本実施形態においては搬送物として、半導体製造工場などで製造途中のウェハが収容されるフープ(FOUP;Front Opening Unified Pod)21が搬送される場合が想定されている。フープ21の上部においてグリッパ16に把持される部分は、グリッパ16に把持されている状態でフープ21の下面が水平になるような形状に形成されている。
【0016】
レール11の下方には、フープ21が載置される載置台31が固定されている。載置台31は、一時的にフープ21を保管するための棚や収容庫に設けられているものであってもよい。載置台31の上面は水平であり、位置決めテーブル22が固定されている。フープ21は位置決めテーブル22上に載置される。位置決めテーブル22は平板状の部材であり、その上面には上方に向かって突出する3本の位置決めピン23が固定されている。これらの位置決めピン23は、平面視において三角形の頂点に相当する位置にそれぞれ配置されている(図6(b)参照)。さらに、位置決めテーブル22の両端縁には、一対の貫通孔22a及び22bが形成されている。一方、図2に示されているように、フープ21の下面は平坦であり、3つの位置決め穴24が形成されている。位置決め穴24は、図2のように凹型の形状を有していてもよいし、フープ21の底板を貫通する貫通孔であってもよい。
【0017】
3本の位置決めピン23と3つの位置決め穴24とは互いに対応し合っている。2本の位置決めピン23同士の水平方向に関する位置関係は、2つの位置決め穴24の水平方向に関する位置関係と同じである。つまり、水平方向に関して3本の位置決めピン23と3つの位置決め穴24とを重ね合わせることができるように、これらの位置が調整されている。一方、上記の通り位置決めピン23は平面視において三角形の頂点に相当する位置のそれぞれに配置されている。つまり、位置決め穴24も平面視においてかかる三角形の頂点に相当する位置のそれぞれに配置されている。これによって、位置決めピン23と位置決め穴24とが嵌合するようにフープ21が載置されたときのフープ21の水平方向に関する向きが規定される。
【0018】
搬送システム1は制御装置19を有している。制御装置19は、プロセッサユニット、メモリ、バス及びキーボード等の各種のハードウェアと、メモリ等の記憶装置に記憶されたプログラムからなるソフトウェアとから構成されている。メモリには、後述の位置情報記憶部19a、移動制御部19b及び入力部19cとして機能するようにハードウェアを動作させるためのプログラムが記憶されている。かかるプログラムに沿ってプロセッサユニット等のハードウェアが動作することにより、位置情報記憶部19a、移動制御部19b及び入力部19cが実現する。なお、制御装置19は汎用のコンピュータにソフトウェアをインストールすることによって構築されてもよいし、はじめから位置情報記憶部19a、移動制御部19b及び入力部19cの機能に特化した装置として実現されていてもよい。
【0019】
位置情報記憶部19aは、搬送システム1によって搬送されたフープ21を積み下ろす位置を示す位置データを記憶している。かかる位置データは入力部19cを介してオペレータによって入力されたり、入力されたデータに基づいて搬送システム1が自動で調整したりして取得されたものである。位置データには、位置決めテーブル22上の載置位置を示す載置位置データが含まれている。また載置位置データには、位置決めピン23と位置決め穴24とがちょうど嵌合するように位置決めテーブル22上にフープ21が載置される水平位置及び鉛直位置を示すデータが含まれている。
【0020】
移動制御部19bは、位置情報記憶部19aが記憶している位置データに基づいて、水平移動機構12がレール11に沿って移動したり、昇降機構13が懸垂ベルト14を巻き上げたり繰り出したりするのを制御する。また、把持機構15がフープ21を把持したり、把持しているフープ21を解離したりするのを制御する。さらに、水平移動機構12が水平方向に関して把持機構15を移動するのを制御する。また、移動制御部19bによる制御モードには、フープ21を自動で搬送する自動搬送モードと、フープ21を搬送する制御を入力部19cを介したオペレータの入力に応じて一部マニュアルで行うマニュアル搬送モードとが含まれている。自動搬送モードにおいては、搬送システム1はレール11下の一の載置台31から他の載置台31までフープ21を以下のように搬送する。
【0021】
まず、一の載置台31の上方の位置まで水平移動機構12を移動する。次に、把持機構15がフープ21を把持できる位置まで把持機構15を下降させる。そして、把持機構15にフープ21を把持させ、把持機構15を昇降機構13の近傍まで上昇させる。次に、レール11に沿って他の載置台31の上方の位置まで水平移動機構12を移動する。次に、フープ21が位置決めテーブル22上に載置される位置まで、把持機構15を下降させる。そして、フープ21を位置決めテーブル22上に載置すると、把持機構15にフープ21を解離させる。なお、水平方向に関して把持機構15を水平移動機構12に移動させることにより、水平方向に関する載置位置を補正してから、位置決めテーブル22上にフープ21を載置してもよい。
【0022】
<位置決めピンの固定方法>
ところで、自動搬送モードで搬送システム1にフープ21を搬送させる前の準備作業として、載置台31上に正確にフープ21が載置されるように、位置決めピン23と位置決め穴24との位置合わせを行わなければならない。以下は、かかる位置合わせを伴う本実施形態に係る位置決めピンの固定方法の手順についての説明である。図3は、位置合わせの一連の流れを示すフローチャートである。図4及び図5は図3のフローチャートの各手順における搬送システム1の状態を示す正面図である。図6(a)は、フープ21の底面図であり、図6(b)は、載置台31上における位置決めテーブル22とフープ21との水平方向に関する位置関係を示す平面図である。
【0023】
なお、本実施形態において位置合わせは、オペレータが搬送システム1を一部マニュアルで操作することによって行われる。また、位置合わせ前において、載置台31には位置決めテーブル22が未だ固定されていない。
【0024】
まず、図4の状態100aに示されているように、把持機構15にフープ21を把持させると共に、フープ21の互いに対向する両側面にマーカー41a及び41b(目印形成手段)を固定する(図3のS1)。マーカー41a及び41bは下端にインク付着部42a及び42bを有している。マーカー41a及び41bは、(a)インク付着部42a及び42bとフープ21の下面の位置決め穴24とが水平方向に関して所定の位置関係を有し、且つ、(b)インク付着部42a及び42bがフープ21の下面より下方の同じ鉛直位置に配置されるように、固定される。所定の位置関係とは、図6(a)の矢印61〜66によって示される位置関係に相当する。
【0025】
次に、目的の載置台31上に相当する所定の水平位置を制御装置19に入力する(図3のS2)。制御装置19は、入力された所定の水平位置を位置情報記憶部19aに記憶させる。かかる所定の水平位置が、目的の載置台31にフープ21を載置する際の載置位置となる。つまり、かかる所定の水平位置が位置決めテーブル22を固定する位置を決定する。
【0026】
次に、昇降機構13に把持機構15を図4の状態100bまで上昇させると共に、位置情報記憶部19aに記憶された所定の水平位置に至る図4の状態100cまでレール11に沿って水平移動機構12を移動する(図3のS3)。なお、所定の水平位置を入力してからその水平位置に水平移動機構12を移動するまでの制御は制御装置19が自動で実行する。
【0027】
次に、マーカー41a及び41bのインク付着部42a及び42bが載置台31の上面に当接するまで、昇降機構13に把持機構15を下降させる(S4)。この制御はオペレータによってマニュアルで実行される。そして、インク付着部42a及び42bを載置台31の上面に当接させることによって、載置台31の上面に位置合わせマーク51a及び51b(図5参照)を形成する(S5)。ここで、把持機構15の鉛直位置が位置情報記憶部19aに記憶されてもよい。
【0028】
次に、図5に示されているように、載置台31上に形成された位置合わせマーク51a及び51bと貫通孔22a及び22bとに基づいて位置合わせしつつ、位置決めテーブル22を載置台31上に固定する(図3のS6)。ここで貫通孔22a及び22bは、位置決めピン23と貫通孔22a及び22bとの位置関係がフープ21の底面における位置決め穴24とマーカー41a及び41bとの位置関係(矢印61〜66)と同じになるように、位置決めテーブル22に形成されている(図6(b)参照)。
【0029】
図3のS6において、位置決めテーブル22は、貫通孔22a及び22bが位置合わせマーク51a及び51bと平面視においてちょうど重なり合う位置に位置合わせされて載置台31上に固定される。これによって、図6(b)に示されているように、フープ21が載置台31上に載置された際の位置決め穴24と位置決めピン23とが平面視においてちょうど重なり合うような位置に、位置決めテーブル22が固定されることとなる。これによって、搬送システム1は、位置情報記憶部19aに記憶された所定の水平位置を載置位置として、自動搬送モードでフープ21を搬送することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の位置決めピンの固定方法によると、位置合わせマーク51a及び51bを形成することによってフープ21が載置される位置を特定してから、位置決めテーブル22が位置合わせされることとなる。つまり、位置合わせマーク51a及び51bに基づいてフープ21の下面に形成された位置決め穴24が載置台31上のいずれに位置するかを特定してから、その位置に位置決めピン23が配置されるように位置決めテーブル22を固定することができる。したがって、あらかじめ位置決めピン23を載置台31上に固定してから搬送システム1にその載置位置を記憶させる場合と異なり、昇降機構13や水平移動機構12を制御して把持機構15を移動しつつ微妙な位置合わせを目視で行う必要がない。つまり、大きな労苦を必要とせず、速やかに位置合わせを完了することができる。
【0031】
また、位置決めテーブル22に形成された貫通孔22a及び22bと位置決めマーク51a及び51bとが重なるように位置決めテーブル22を載置台31上に固定するだけで、位置決めピン23を正確な位置に固定することができる。したがって、位置決めマーク51a及び51bを基準に実測などして位置合わせするような場合と比べて、位置合わせの作業に要する時間が大幅に短縮される。
【0032】
さらに、あらかじめ位置決めピン23を載置台31上に固定してから位置合わせする場合には、水平移動機構12によってフープ21の載置位置を水平方向に関して補正させた上で搬送システム1にその載置位置を記憶させる必要がある。このような場合には、記憶された載置位置に基づいて自動搬送モードでフープ21を搬送する際に、水平移動機構12が把持機構15の水平位置を補正することが必要となることがある。かかる補正は、載置台31上のフープ21を把持機構15に把持させたり、フープ21を載置台31上に載置したりするたびに必要となる。しかし、本実施形態の位置合わせによると、水平移動機構12によって把持機構15の水平位置を補正することなく、昇降機構13によって把持機構15を鉛直下方へとまっすぐに下降させた位置に位置決めピン23が固定される。したがって、フープ21の搬送のたびに水平移動機構12が水平位置を補正するような必要がなく、搬送システム1による搬送に要する時間が短縮される。
【0033】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施の形態についての説明であるが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された内容の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0034】
例えば、上述の実施形態においては、位置合わせマーク51a及び51bの2つの目印が載置台31上に形成される。しかし、3つ以上の目印が形成されてもよい。また、位置合わせマーク51a及び51bはいずれも載置台31上の一点のみをそれぞれ決定するために用いられる。しかし、1つの位置合わせマークのみで位置決めテーブル22の向きが特定できるような形状の目印が載置台31上に形成されてもよい。例えば、三角形の形状を有する目印を形成するようなマーカーを用いることにより、1つのマーカーのみで位置決めテーブル22の位置及び向きの両方を特定できる場合がある。
【0035】
なお、本実施形態においては2つの位置合わせマーク51a及び51bに基づいて位置決めテーブル22が位置合わせされる。一方で、2つの位置合わせマーク51a及び51bに基づくのみであると、例えば図6(b)において上下方向に関する位置決めテーブル22の向きが決定されない、とも言える。しかし、実際に把持機構15に把持されている状態のフープ21を参照することにより、図6(b)の上下方向に関する位置決めテーブル22の向きを決定することは容易に可能である。レール11に沿った前後方向(図1の方向D1)に対して、また、フープ21の向きがどのような向きになるのかが規格によってあらかじめ規定される場合もある。このような場合には、レール11に沿った方向を参照することにより、位置決めテーブル22の大体の向きを特定することができる。したがって位置決めテーブル22の位置及び向きを厳密に決定するためには、本実施形態のように少なくとも2つの位置合わせマーク51a及び51bを形成すれば、実用上十分であると言える。
【0036】
また、上述の実施形態においては、マーカー41a及び41bがフープ21を介して把持機構15に固定されている。しかし、把持機構15にマーカー41a及び41bが直接固定されてもよい。この場合にはまず、把持機構15にフープ21を把持させた際の位置決め穴24とインク付着部42a及び42bとの水平方向に関する相対的な位置関係が所定の位置関係を有するように、把持機構15にマーカー41a及び41bが固定される。次に、このように固定されたマーカー41a及び41bによって位置合わせマークが形成される。そして、このように形成された位置合わせマークとの位置関係が上記の所定の位置関係となるような位置に、位置決めピン23が固定されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のフープに形成された位置決め穴と位置決めテーブルに固定された位置決めピンとの位置関係を示す斜視図である。
【図3】図2の位置決め穴と位置決めピンとの位置合わせの手順を示すフローチャートである。
【図4】図3の各手順における搬送システムの状態を示す正面図である。
【図5】図3の位置決めテーブルを固定する手順において、位置決めテーブルを載置台に固定する様子を示す斜視図である。
【図6】図6(a)はフープの底面図である。 図6(b)は、載置台上における位置決めテーブルとフープとの水平方向に関する位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 搬送システム
11 レール
12 水平移動機構
13 昇降機構
14 懸垂ベルト
15 把持機構
16 グリッパ
19 制御装置
19a 位置情報記憶部
19b 移動制御部
19c 入力部
21 フープ
22 位置決めテーブル
22a 貫通孔
23 位置決めピン
24 位置決め穴
41a、41b マーカー
42a、42b インク付着部
51a、51b マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め穴が下面に形成された搬送物を把持する把持手段と、水平位置を示す位置情報を記憶する記憶手段と、水平な上面を有する物体の当該上面上の前記記憶手段が記憶している位置情報が示す位置と前記物体より上方の位置との間で前記把持手段を鉛直方向に移動する移動手段とを有する搬送装置の使用準備として、前記位置決め穴に対応する位置決めピンを前記物体の上面に固定する方法であって、
水平位置の位置合わせ用の目印を前記物体の上面に形成する目印形成手段を、当該目印形成手段による前記目印の形成位置と前記把持手段が把持する前記搬送物の前記位置決め穴の位置とが水平方向に関して所定の位置関係を有するように、直接的に又は他の物体を介して前記把持手段に固定する形成手段固定ステップと、
所定の水平位置を示す位置情報を前記記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
前記形成手段固定ステップで前記把持手段に固定された前記目印形成手段が前記物体の上面に前記目印を形成できる位置まで、前記記憶ステップで記憶された前記所定の水平位置に前記把持手段の水平位置を保持させつつ前記把持手段を下方へと前記移動手段に移動させる移動ステップと、
前記移動ステップで前記把持手段が移動された後に、前記目印形成手段に前記目印を形成させる形成ステップと、
前記形成ステップで前記目印形成手段が前記物体の上面に形成した前記目印の位置と前記位置決めピンの固定位置とが水平方向に関して前記所定の位置関係を有するように、前記位置決めピンを前記物体の上面上に固定するピン固定ステップとを備えていることを特徴とする位置決めピンの固定方法。
【請求項2】
前記位置決め穴が、前記物体の上面上に載置された際の水平方向に関する前記搬送物の向きを規定するように前記搬送物に形成されており、
前記形成手段固定ステップにおいて複数の前記目印形成手段を、水平位置が互いに異なる複数の前記目印が前記形成ステップで形成されると共に当該複数の目印の形成位置のそれぞれと前記位置決め穴の位置とが水平方向に関して前記所定の位置関係を有するように、前記把持手段に固定することを特徴とする請求項1に記載の位置決めピンの固定方法。
【請求項3】
前記位置決めピンにおいて、前記位置決めピンが表面から突出するように固定されたピン固定台を、前記位置決めピンが上方に向かって突出するように前記物体の上面に固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決めピンの固定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の位置決めピンの固定方法に用いられるピン固定台であって、
互いに平行な第1及び第2の面を有しており、
前記第1の面と前記物体の上面とが当接するように当該ピン固定台が前記物体の上面上に載置された際に前記目印形成手段が形成した前記目印と水平方向に関して重なり合うこととなる位置に、前記第1の面から前記第2の面まで前記第1の面に垂直に貫通する貫通孔が形成されており、且つ、
前記目印形成手段が形成した前記目印の位置と前記貫通孔の位置とが水平方向に関して重なり合うように当該位置決めピン固定台が前記物体の上面上に載置された際に、前記位置決め穴と水平方向に関して重なり合うこととなる位置に、前記物体の上面から突出するように前記位置決めピンが固定されていることを特徴とするピン固定台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−140847(P2008−140847A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323553(P2006−323553)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】