説明

位置決め装置およびロボットハンド

【課題】或平面上で台座を移動させる位置決め装置およびこの位置決め装置を備えたロボットハンドであって、位置決め装置が具備する第1方向への駆動部と第2方向への駆動部とが共に基台に対して位置固定可能であるものを提供する。
【解決手段】位置決め装置10の基台11に、X方向を軸方向として支承されたXネジ軸12およびスプライン軸13と、Xネジ軸12を回転駆動するX軸駆動部14と、スプライン軸13を回転駆動するY軸駆動部15とを設ける。Xネジ軸12上にYネジ軸22が支承されたX出力台座20を設け、Yネジ軸22上にY出力台座24を設ける。スプライン軸13とYネジ軸22との間に、X出力台座20と一体的に移動し且つスプライン軸13からYネジ軸22へ動力を伝達する動力伝達機構30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台座を或平面上で位置決めする位置決め装置およびこれを備えたロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台座(ステージまたはテーブルとも呼ばれる)を或X−Y平面上でX方向およびY方向へ移動させて位置決めするXY位置決め装置が知られている。このようなXY位置決め装置は、様々な分野の設備に用いられている。例えば、XY位置決め装置がワークを所定位置へ移動するために用いられる場合、台座にワークを保持するためのピンや爪などの治具を取り付け、この台座を自動でX方向およびY方向に移動させて、治具を所定位置に位置決めさせる。また,例えば、XY位置決め装置がロボットハンドの爪を移動するために用いられる場合、台座にロボットの爪を取り付け、この台座を自動でX方向およびY方向に移動させて、ロボットの爪を所定位置に位置決めさせる。
【0003】
図3は、従来の一般的なXY位置決め装置100を示す図である。図3に示すように、XY位置決め装置100は、基台101に支承されたX軸102と、X軸102上を移動するX出力台座103と、X軸102を回転駆動するX軸駆動部104と、X出力台座103に支承されたY軸105と、Y軸105上を移動するY出力台座107と、Y軸105を回転駆動するY軸駆動部106を備えている。このXY位置決め装置100では、X軸駆動部104およびY軸駆動部106を作動させることにより、Y出力台座107上の対象物をX−Y平面上で移動させることができる。この従来の位置決め装置を、産業用ロボットのロボットハンドに設けられた爪の駆動機構に適用させた例を、図4に示している。図4に示すロボットハンドの掌部100Aには、図3に示す従来のXY位置決め装置が左右対称に設けられ、X出力台座103の一側(図4の上側)端部に第1爪108が設けられると共に、Y出力台座107上に第2爪109が設けられている。このロボットハンドの掌部100Aでは、X軸駆動部104によりX軸102が回転駆動されると左右一対のX出力台座103,103が近接又は離反するようにX軸102上を移動し、Y軸駆動部106によりY軸105が回転駆動されるとY出力台座107がY軸上を移動することにより第2爪109が第1爪108に対して近接又は離反するようにY方向へ移動する。
【0004】
ところで、従来、平行に配置されたネジ軸およびスプライン軸と、ネジ軸およびスプライン軸が挿通された出力台座とを備えた出力台座の移動機構が知られている。例えば、特許文献1では、平行に配置された上下一対のネジ(スクリュー)軸および上下一対のスプライン軸と、ネジ軸およびスプライン軸が挿通された基部と、スプライン軸と嵌合している指部とを有するロボットハンドが示されている。このロボットハンドでは、上下いずれか一方のネジ軸が回転駆動されると、軸端に設けられた平歯車を介して他方のネジ軸も回転し、これにより基部および指部は、ネジ軸およびスプライン軸に沿って並進移動する。また、上下いずれか一方のスプライン軸が回転駆動されると、軸端に設けられた平歯車を介して他方のスプライン軸も回転し、これにより指部がスプライン軸を中心として回転移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−27874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のXY位置決め装置100において、X軸駆動部104は基台101に固定されており、Y軸駆動部106はX出力台座103に固定されている。よって、X出力台座103が基台101に対してX方向に移動するときにY軸駆動部106に接続されたケーブルが絡まったり、引っ張られたり、捩れたり、他と接触したりしないようにするための、ケーブルの配置対策が必要となる。特に、基台101に対するX出力台座103の移動ストロークが大きいほどケーブルを配置するための装備が煩雑且つ大型化する。
【0007】
また、上記従来のロボットハンドの掌部100Aでも、Y軸駆動部106,106は基台に対して変位するX出力台座103,103に固定されている。ロボットハンドの掌部100Aには、左右一対のY軸105,105に対応して2つのY軸駆動部106,106が設けられていることから、Y軸駆動部106,106と接続されたケーブルの配線は更に煩雑なものとなる。そこで、ケーブルの配線を簡略化するために、左右一対のY軸105,105に対して1つのY軸駆動部106を設けることもできるが、左右一対のY出力台座107,107を連動させるためにフレキシブルシャフトやユニバーサルジョイントを利用した複雑な駆動機構が必要となる。
【0008】
また、上記特許文献1に記載のロボットハンドでは、基部および指部が移動してもネジ軸およびその駆動部とスプライン軸およびその駆動部は相対変位しない。しかし、指部は軸方向への並進自由度とスプライン軸を中心とする回転自由度とを有するのであって、指部はX−Y平面上を自由に移動することができない。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、或平面上で台座を移動させる位置決め装置およびこの位置決め装置を備えたロボットハンドであって、位置決め装置が具備する複数の駆動部が基台に対して相対変位しないものを提供する。ひいては、位置決め装置が具備する複数の駆動部に接続されたケーブルの配線を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る位置決め装置は、第1方向を軸方向として基台に支承された第1ネジ軸と、前記第1ネジ軸を回転駆動する第1駆動部と、前記第1ネジ軸に螺嵌された第1ナット部を有し、前記第1ネジ軸の回転に伴って前記第1方向へ移動する第1出力台座と、前記第1方向と直交する第2方向を軸方向として前記第1出力台座に支承された第2ネジ軸と、前記第2ネジ軸に螺嵌された第2ナット部を有し、前記第2ネジ軸の回転に伴って前記第2方向へ移動する第2出力台座と、前記第1方向を軸方向として前記基台に支承された動力伝達軸と、前記動力伝達軸を回転駆動する第2駆動部と、前記第1出力台座と一体的に移動し且つ前記動力伝達軸から前記第2ネジ軸へ動力を伝達する動力伝達機構とを備えたものである。
【0011】
上記構成の位置決め装置によれば、第1駆動部により第1ネジ軸が回転して第1出力台座が基台に対して移動したり、第2駆動部により動力伝達軸および第2ネジ軸が回転して第2出力台座が基台に対して移動しても、第1駆動部と第2駆動部は基台に対して相対変位しない。よって、第1駆動部と第2駆動部を基台に対して相対位置固定に設けることができる。第1駆動部および第2駆動部が基台に対して相対位置固定されれば、これらの駆動部に接続されたケーブルは第1出力台座および第2出力台座の移動に伴って動くことはないので、ケーブルの配線に関し特別な保護対策や案内対策が不要となる。この結果、位置決め装置の小型化と、信頼性の向上とを実現することができる。
【0012】
前記位置決め装置において、前記動力伝達軸はスプライン軸であり、前記動力伝達機構は、前記第2ネジ軸に固定された第1歯車と、前記スプライン軸に嵌合されるとともに前記第1出力台座に保持された第2歯車との、2つの噛合する歯車で構成されていることがよい。
【0013】
前記位置決め装置において、前記動力伝達機構は、ベベルギア機構、ヘリカルギア機構、ウォームギア機構またはクラウンギア機構とすることができる。
【0014】
前記位置決め装置において、前記第1ネジ軸の前記第1方向略中央を通る前記第2方向の直線を対称軸として線対称に2組の前記第1出力台座、前記第2ネジ軸、前記第2出力台座および前記動力伝達機構を設けることできる。
【0015】
本発明に係るロボットハンドは、上記いずれかの位置決め装置を備えたものである。
【0016】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1出力台座と前記第2出力台座の各々に爪を備えることができる。
【0017】
また、前記ロボットハンドにおいて、前記第1駆動部および前記第2駆動部を、前記基台の前記第1ネジ軸の前記第1方向の長さ内に設けることがよい。
【0018】
さらに、前記ロボットハンドにおいて、前記基台の前記第1方向略中央と、ロボットハンドの先端部とが接続されることがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1出力台座および第2出力台座が基台に対して移動しても、位置決め装置に具備される複数の駆動部は基台に対して相対変位しない。よって、第1駆動部および第2駆動部を基台に相対位置固定することが可能となる。そして、第1駆動部および第2駆動部が基台に相対位置固定されれば、これらの駆動部に接続されたケーブルの配線が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るXY位置決め装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るXY位置決め装置の概略構成図である。
【図3】従来のXY位置決め装置の概略構成図である。
【図4】従来のロボットハンドに取り付けられた爪の駆動機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る位置決め装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る位置決め装置の概略構成図である。図1では紙面左右方向をX方向(第1方向)とし、紙面上下方向をY方向(第2方向)とし、本実施の形態に係る位置決め装置10のX−Y平面図を示している。但し、理解を容易とするために位置決め装置10の構成要素の一部を断面で示している。
【0023】
実施の形態1に係る位置決め装置10は、X方向への送りネジ軸であるXネジ軸12と、Y方向への送りネジ軸であるYネジ軸22と、Yネジ軸22への動力伝達軸であるスプライン軸13とを備えている。Xネジ軸12とスプライン軸13は軸方向がX方向となるように平行に配置されており、これらの軸12,13が独立して回転できるようにそれぞれに駆動部14,15を備えている。
【0024】
Xネジ軸12は、外周面に螺旋状の溝(すなわち、雄ネジ)が形成された軸である。Xネジ軸12は、基台11に設けられた軸受16,16に回動可能に支承されている。Xネジ軸12にはX軸駆動部14の出力軸から直接的又は間接的に回転動力が伝達される。つまり、Xネジ軸12はX軸駆動部14に回転駆動される。なお、図1に示す例では、X軸駆動部14の出力軸とXネジ軸12とが直結されており、X軸駆動部14として電動モータが用いられている。
【0025】
スプライン軸13は、外周に複数の軸方向のスプライン(溝)が形成された軸である。スプライン軸13は、基台11に設けられた軸受17,17に回動可能に支承されている。スプライン軸13にはY軸駆動部15の出力軸から直接的又は間接的に回転動力が伝達される。つまり、スプライン軸13はY軸駆動部15により回転駆動される。なお、図1に示す例では、Y軸駆動部15の出力軸とスプライン軸13とが直結されており、Y軸駆動部15として電動モータが用いられている。X軸駆動部14とY軸駆動部15は、図示しない制御器および電源にケーブルを介して接続されており、制御器の制御を受けて動作する。
【0026】
位置決め装置10は、Xネジ軸12によりX方向へ送られるX出力台座20を更に備えている。X出力台座20は、Y方向に長尺であって、Y方向一側(図2の下側)の端部にナット部21が設けられている。ナット部21の内壁には、Xネジ軸12をX方向へ螺入可能な螺旋状の溝(すなわち、雌ネジ)が形成されている。X出力台座20のナット部21にXネジ軸12が螺入されており、Xネジ軸12の雄ネジとナット部21の雌ネジは噛合している。かかる構成により、Xネジ軸12が回転するとX出力台座20はXネジ軸12に沿ってX方向に並進運動する。
【0027】
Yネジ軸22は、X出力台座20上に、その軸方向がY方向となるように配置されている。Yネジ軸22は、外周面に螺旋状の溝(すなわち、雄ネジ)が形成された軸であって、X出力台座20に設けられた軸受23,23に回動可能に支承されている。
【0028】
位置決め装置10は、Yネジ軸22によりY方向へ送られるY出力台座24を更に備えている。Y出力台座24にはナット部25が設けられている。ナット部25の内壁には、Yネジ軸22をY方向へ螺入可能な螺旋状の溝(すなわち、雌ネジ)が形成されている。Y出力台座24のナット部25にYネジ軸22が螺入されており、Yネジ軸22の雄ネジとナット部25の雌ネジは噛合している。
【0029】
Yネジ軸22の一側(図1では下側)の端部には、第1ベベルギア28が設けられている。この第1ベベルギア28と噛合する第2ベベルギア29は、スプライン軸13に外嵌されている。これらの第1ベベルギア28と第2ベベルギア29とにより、スプライン軸13からYネジ軸22へ動力を伝達する直角動力伝達機構30が構成されている。第2ベベルギア29の内周は、スプライン軸13の外周のスプラインと咬み合うスプラインナットとなっている。さらに、第2ベベルギア29は、X出力台座20に支承された第1ベベルギア28と噛合するとともに、X出力台座20に設けられた支持部に支持されることによって、X出力台座20と相対するX方向およびY方向の移動が規制されている。換言すれば、第2ベベルギア29は、X出力台座20に保持されている。かかる構成により、第2ベベルギア29は、第1ベベルギア28との噛合が保持されつつ、前述したX出力台座20のX方向の並進運動に伴ってX方向に並進運動する。また、第2ベベルギア29は、スプライン軸13と一体的に回動することから、スプライン軸13の回転は第2ベベルギア29および第1ベベルギア28から成る直角動力伝達機構30を介してYネジ軸22へ伝達される。Yネジ軸22が回転すると、Y出力台座24はYネジ軸22に沿ってY方向に並進運動する。
【0030】
上記構成の位置決め装置10によれば、X出力台座20およびY出力台座24を基台11に対してX方向へ移動させるとともに、Y出力台座24を基台11に対してY方向へ移動させることにより、Y出力台座24をX−Y平面上で自在に移動させて位置決めすることができる。このようにX出力台座20およびY出力台座24は基台11に相対して移動するが、Xネジ軸12およびスプライン軸13は基台11に対して相対変位しない。したがって、X軸駆動部14およびY軸駆動部15も基台11に対して相対変位しない。よって、X軸駆動部14とY軸駆動部15とを基台11に対して相対位置固定に設けることが可能である。そして、X軸駆動部14とY軸駆動部15が基台11に対して相対位置固定されれば、これらの駆動部14,15に接続されたケーブルはX出力台座20およびY出力台座24の移動に伴って動くことはないので、ケーブルの配線に関し特別な保護対策や案内対策が不要となる。この結果、位置決め装置10の小型化と、信頼性の向上とを実現することができる。
【0031】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る位置決め装置について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態2に係る位置決め装置10Aの概略構成図である。図2では紙面左右方向をX方向(第1方向)とし、紙面上下方向をY方向(第2方向)とし、本実施の形態に係る位置決め装置10AのX−Y平面図を示している。但し、理解を容易とするために位置決め装置10Aの構成要素の一部を断面で示している。
【0032】
本実施の形態に係る位置決め装置10Aは、産業用ロボットのロボットハンド43の先端部に設けられた爪(指ともいう)の移動機構として構成されている。ロボットハンド43の先端部には、位置決め装置10Aの基台11のX方向略中央部が固定されている。位置決め装置10Aは、実施の形態1に係る位置決め装置10においてXネジ軸12のX方向略中央を通るY方向の直線を対称軸Lとし、この対称軸Lを対称の中心として線対称に2組のX出力台座20,20、Yネジ軸22,22、Y出力台座24,24および直角動力伝達機構30,30が設けられたものである。
【0033】
位置決め装置10Aは、X方向への送りネジ軸であるXネジ軸12と、Y方向への送りネジ軸である左右のYネジ軸22,22と、Yネジ軸22への動力伝達軸であるスプライン軸13とを備えている。Xネジ軸12とスプライン軸13は軸方向がX方向となるように平行に配置されており、これらの軸12,13が独立して回転できるようにそれぞれに駆動部14,15を備えている。
【0034】
Xネジ軸12は、外周面に螺旋状の溝(すなわち、雄ネジ)が形成された軸である。Xネジ軸12は、基台11に設けられた軸受16,16に回動可能に支承されている。Xネジ軸12に形成された溝は、対称軸Lを介して一側と他側で溝の向きが逆転している。Xネジ軸12の一側(図2の左側)の端部には、入力ギア33が設けられている。入力ギア33には、X軸駆動部14の出力軸14aから、出力軸14aに外嵌された出力ギア31、並びに、出力ギア31および入力ギア33と噛合している中間ギア32を介して、動力が伝達されている。このように、Xネジ軸12にはX軸駆動部14の出力軸14aから間接的に回転動力が伝達され、Xネジ軸12はX軸駆動部14に回転駆動される。なお、本実施例に係る位置決め装置10Aでは、X軸駆動部14として電動モータが用いられている。
【0035】
スプライン軸13は、外周に複数の軸方向のスプライン(溝)が形成された軸である。スプライン軸13は、基台11に設けられた軸受17,17に回動可能に支承されている。スプライン軸13の一側(図2の右側)の端部には、入力ギア37が設けられている。入力ギア37には、Y軸駆動部15の出力軸15aから、出力軸15aに外嵌された出力ギア34、出力ギア31と噛合している第1中間ギア35、並びに、第1中間ギア35および入力ギア37と噛合している第2中間ギア36を介して、動力が伝達されている。このように、スプライン軸13にはY軸駆動部15の出力軸15aから間接的に回転動力が伝達され、スプライン軸13はY軸駆動部15により回転駆動される。なお、本実施例に係る位置決め装置10Aでは、Y軸駆動部15として電動モータが用いられている。X軸駆動部14とY軸駆動部15は、図示しない制御器および電源にケーブルを介して接続されており、制御器の制御を受けて動作する。
【0036】
Xネジ軸12には、Xネジ軸12によりX方向へ送られる一対のX出力台座20,20が設けられている。一対のX出力台座20,20は、対称軸Lを対称の中心として線対称に構成されている。そこで、以下では、一対のX出力台座20,20のうち片方のX出力台座20について詳細に説明する。X出力台座20は、Y方向に長尺であって、Y方向一側(図2の下側)の端部にナット部21が設けられているとともに、Y方向他側(図2の上側)の端部に第1爪41が取り付けられている。ナット部21の内壁には、Xネジ軸12をX方向へ螺入可能な螺旋状の溝(すなわち、雌ネジ)が形成されている。X出力台座20のナット部21にXネジ軸12が螺入されており、Xネジ軸12の雄ネジとナット部21の雌ネジは噛合している。かかる構成により、Xネジ軸12が回転するとX出力台座20はXネジ軸12に沿ってX方向に並進運動する。
【0037】
Yネジ軸22は、外周面に螺旋状の溝(すなわち、雄ネジ)が形成された軸である。Yネジ軸22は、X出力台座20上にその軸方向がY方向となるように配置されており、X出力台座20に設けられた軸受23,23に回動可能に支承されている。Yネジ軸22には、Yネジ軸22によりY方向へ送られるY出力台座24が設けられている。Y出力台座24には、ナット部25と設けられているとともに、第2爪42が取り付けられている。ナット部25の内壁には、Yネジ軸22をY方向へ螺入可能な螺旋状の溝(すなわち、雌ネジ)が形成されている。Y出力台座24のナット部25にYネジ軸22が螺入されており、Yネジ軸22の雄ネジとナット部25の雌ネジは噛合している。
【0038】
Yネジ軸22の一側(図2では下側)の端部には、第1ベベルギア28が設けられている。この第1ベベルギア28と噛合する第2ベベルギア29は、スプライン軸13に外嵌されている。これらの第1ベベルギア28と第2ベベルギア29とにより、スプライン軸13からYネジ軸22へ動力を伝達する直角動力伝達機構30が構成されている。第2ベベルギア29の内周は、スプライン軸13の外周のスプラインと咬み合うスプラインナットとなっている。さらに、第2ベベルギア29は、X出力台座20に保持された第1ベベルギア28と噛合するとともに、X出力台座20に設けられた支持部に支持されることによって、X出力台座20と相対的なX方向およびY方向の移動が規制されている。換言すれば、第2ベベルギア29は、X出力台座20に保持されている。かかる構成により、第2ベベルギア29は、第1ベベルギア28との噛合が保持されつつ、前述したX出力台座20のX方向の並進運動に伴ってX方向に並進運動する。また、第2ベベルギア29は、スプライン軸13と一体的に回動することから、スプライン軸13の回転は第2ベベルギア29および第1ベベルギア28から成る直角動力伝達機構30を介してYネジ軸22へ伝達される。Yネジ軸22が回転すると、Y出力台座24はYネジ軸22に沿ってY方向に並進運動する。
【0039】
上記構成の位置決め装置10Aにおいて、X軸駆動部14によりXネジ軸12が回転駆動されると、一対のX出力台座20,20は同期して互いに近接又は離反するようにX方向へ移動する。また、Y軸駆動部15によりスプライン軸13が回転駆動されると、その回転動力が直角動力伝達機構30,30を介して2本のYネジ軸22,22へ伝達されて、2本のYネジ軸22,22が同期して回転する。このYネジ軸22,22の回転により、一対のY出力台座24,24に設けられた第2爪42,42は、第1爪41,41に対して近接または離反するようにY方向へ並進運動する。このように、位置決め装置10Aによれば、2組のX出力台座20およびY出力台座24を、基台11に対してX方向へ同じだけ移動させることができる。さらに、一対のY出力台座24,24を基台11に対してY方向へ同じだけ移動させることができる。これにより、2組の第1爪41および第2爪42をX−Y平面上で自在に移動させることができるとともに、一対の第1爪41,41に対して一対の第2爪42,42を近接または離反させて物品を把持したり放したりすることができる。
【0040】
また、上記位置決め装置10Aは、前述の通りX出力台座20,20およびY出力台座24,24のX方向への並進運動の駆動源であるX軸駆動部14と、Y出力台座24,24のY方向への並進運動の駆動源であるY軸駆動部15との、2つの駆動部を備えている。X出力台座20,20およびY出力台座24,24が移動しても、Xネジ軸12およびスプライン軸13は基台11に対して相対変位しない。したがって、X軸駆動部14およびY軸駆動部15も基台11に対して相対変位しない。よって、X軸駆動部14とY軸駆動部15とを基台11に対して相対位置固定に設けることが可能である。そして、X軸駆動部14とY軸駆動部15が基台11に対して相対位置固定されれば、これらの駆動部14,15に接続されたケーブルはX出力台座20,20およびY出力台座24,24の移動に伴って動くことはないので、ケーブルの配線に関し特別な保護対策や案内対策が不要となる。この結果、位置決め装置10の小型化と、信頼性の向上とを実現することができる。
【0041】
また、上記位置決め装置10AのX軸駆動部14とY軸駆動部15は、基台11のロボットハンド43側において、基台11のX方向略中心を介して両側に振り分けて配置されている。これに加え、X軸駆動部14とY軸駆動部15は、Xネジ軸12のX方向長さの範囲内に収まるように配置されている。基台11をロボットハンド43の掌に見立てると、X軸駆動部14とY軸駆動部15はロボットハンド43の掌の上に左右バランス良く配置されていることとなる。かかるX軸駆動部14とY軸駆動部15の配置構成により、位置決め装置10A全体をコンパクトに構成することが可能である。加えて、各駆動部14,15に接続されたケーブルに設ける遊び代を短縮することが可能である。よって、位置決め装置10Aは、狭隘な空間で使用されるロボットハンド43の爪41,41,42,42の駆動機構として特に好適である。
【0042】
以上、本発明の好適な実施の形態1,2について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、上記実施の形態1,2に係る位置決め装置10,10Aにおいて、直角動力伝達機構30は第1ベベルギア28および第2ベベルギア29で構成されているが、直角動力伝達機構30はこれに限定されない。直角動力伝達機構30は、2つの歯車であって、これらの歯車を組み合わせた際の2本の歯車軸の相対位置が交差軸となるもの、または食い違い軸となるものを用いることができる。このような直角動力伝達機構30は、例えば、ベベルギア機構(かさ歯車同士の組み合わせ)、ヘリカルギア機構(はす歯歯車同士の組み合わせ)、ウォームギア機構(ネジ歯車とはす歯歯車の組み合わせ)、またはクラウンギア機構(冠歯車とかさ歯車または平歯車の組み合わせ)である。
【0044】
また、例えば、上記実施の形態1,2に係る位置決め装置10,10Aにおいて、X出力台座20の基台11に対する移動機構とY出力台座24のX出力台座20に対する移動機構との双方には、ネジ軸(Xネジ軸12,Yネジ軸22)とナット(ナット部21,ナット部25)とからなる、いわゆる、滑りネジ機構が採用されている。但し、上記移動機構のうち少なくとも一方に、ネジ軸(Xネジ軸12,Yネジ軸22)と、ナット(ナット部21,ナット部25)と、ネジ軸とナットとの間に介在するボールとからなる、いわゆる、ボールネジ機構が採用されてもよい。
【0045】
また、例えば、上記実施の形態1,2に係る位置決め装置10,10Aにおいて、Y軸駆動部15からYネジ軸22への動力伝達軸として、外周にX方向の溝が形成されたスプライン軸13が用いられている。但し、上記動力伝達軸はスプライン軸13に限定されるものではなく、X出力台座20の並進運動に干渉されずにX出力台座20の並進運動を案内し、且つ、Yネジ軸22へY軸駆動部15の回転動力を伝達できる軸体であればよい。このような動力伝達軸は、例えば、X出力台座20が移動する範囲にわたってX方向に長い歯が形成された平歯車を有する軸体である。
【0046】
また、例えば、上記実施の形態において、XY位置決め装置10,10AのY出力台座はX方向およびY方向へ移動可能である。但し、実施の形態1,2に係るXY位置決め装置10,10AにZ方向への移動機構や回転移動機構を組み合わせて、Y出力台座をX,Y方向以外の方向にも移動できるように構成してもよい。このような、XY位置決め装置を含む位置決め装置も本発明に含まれ得る。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る位置決め装置は、基台に対して台座を或平面上で移動させる機構に広く適用することができる。その一例として、本発明を、ロボットハンドに設けられた複数の爪又は指を動かすための機構に適用させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10,10A 位置決め装置
11 基台
12 Xネジ軸(第1ネジ軸)
13 スプライン軸(動力伝達軸)
14 X軸駆動部(第1駆動部)
15 Y軸駆動部(第2駆動部)
20 X出力台座(第1出力台座)
21 ナット部(第1ナット部)
22 Yネジ軸(第2ネジ軸)
24 Y出力台座(第2出力台座)
25 ナット部(第2ナット部)
30 直角動力伝達機構
28 第1ベベルギア
29 第2ベベルギア
41,42 爪
43 ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を軸方向として基台に支承された第1ネジ軸と、
前記第1ネジ軸を回転駆動する第1駆動部と、
前記第1ネジ軸に螺嵌された第1ナット部を有し、前記第1ネジ軸の回転に伴って前記第1方向へ移動する第1出力台座と、
前記第1方向と直交する第2方向を軸方向として前記第1出力台座に支承された第2ネジ軸と、
前記第2ネジ軸に螺嵌された第2ナット部を有し、前記第2ネジ軸の回転に伴って前記第2方向へ移動する第2出力台座と、
前記第1方向を軸方向として前記基台に支承された動力伝達軸と、
前記動力伝達軸を回転駆動する第2駆動部と、
前記第1出力台座と一体的に移動し且つ前記動力伝達軸から前記第2ネジ軸へ動力を伝達する動力伝達機構とを備えた、位置決め装置。
【請求項2】
前記動力伝達軸はスプライン軸であり、
前記動力伝達機構は、前記第2ネジ軸に固定された第1歯車と、前記スプライン軸に嵌合されるとともに前記第1出力台座に保持された第2歯車との、2つの噛合する歯車で構成されている、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、ベベルギア機構、ヘリカルギア機構、ウォームギア機構またはクラウンギア機構である、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1ネジ軸の前記第1方向略中央を通る前記第2方向の直線を対称軸として線対称に2組の前記第1出力台座、前記第2ネジ軸、前記第2出力台座および前記動力伝達機構を設けた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置決め装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の位置決め装置を備えた、ロボットハンド。
【請求項6】
前記第1出力台座と前記第2出力台座の各々に爪を備えた、請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第1駆動部および前記第2駆動部を、前記基台の前記第1ネジ軸の前記第1方向の長さ内に設けた、請求項5又は請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記基台の前記第1方向略中央と、ロボットハンドの先端部とが接続された、請求項5〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139775(P2012−139775A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294001(P2010−294001)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】