説明

低分子量のヘキサフルオロプロピレン−オレフィンコテロマーの製造方法

【課題】低分子量のヘキサフルオロプロピレン−オレフィンコテロマーの製造方法を提供する。
【解決手段】非晶質ヒドロフルオロオレフィンテロマーの調製をフリーラジカル重合工程を225から400℃の範囲内の温度において40−700MPaの圧力下でモノマーでない連鎖移動剤として直鎖,分枝もしくは環式C1−C6炭化水素,ジアルキルエーテル,テトラヒドロフラン,FSO2Cl,ClSO2Cl,芳香族およびシロキサンから成る群から選択するを存在させて行うことで実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル重合工程をモノマーではない連鎖移動剤の存在下の高温高圧下で実施することでヒドロフルオロオレフィンテロマーを製造することに向けたものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素化油および油脂が厳しい用途で潤滑油として用いられている。良く知られている種類のフッ素化潤滑油は、商標名KRYTOX(R)(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington DE),FOMBLIN(R)(Ausimont,Milan,イタリア)およびDEMNUM(R)(Daiken Industries,日本)の下で商品として入手可能なパーフルオロアルキルポリエーテル油である。実際、パーフルオロアルキルポリエーテルは酸素含有環境下に置かれると150℃の如き低い温度で劣化を起こす可能性があり、それに付随してある種の金属表面、例えばアルミニウム、鉄およびこれらの合金などを腐食させることが分かっている。高温における酸化劣化に安定なままでありかつ潤滑した金属表面の腐食を防止する潤滑油が求められている。
【0003】
ヘキサフルオロプロペンとフッ化ビニリデンと連鎖移動剤として働くアルコール,ケトンおよびカルボン酸エステルから成る群から選択した脂肪族化合物を開始剤、例えばジ−t−ブチルパーオキサイドなどおよび場合により溶媒の存在下で反応させることが特許文献1に開示されている。
【0004】
ヘキサフルオロプロペンとより高い反応性を示すテロマーから作られた低分子量のコテロマーが特許文献2、3および4に開示されており、それの調製は、生成物である共重合体の分子量を制限しかつ液状生成物を得る目的で塩素化および臭素化末端基を有するテロゲンを用いて実施されているが、塩素化および臭素化末端基は生成物の熱安定性を制限することから、これの調製は比較的低い温度および圧力で実施されている。
【0005】
ヨウ化パーフルオロアルキルを末端テロゲンとして用いてヘキサフルオロプロペン(HFP)を数単位取り込ませることが特許文献5に開示されている。ガンマ放射線を開始で用いることが特許文献5に開示されている。そのように高いエネルギーを用いて開始させると分枝および架橋が広範に生じる可能性があり、組成物の特徴が油に望ましくなくなってしまう。
【0006】
連続重合方法がAnolick他,特許文献6、7、8および9に開示されており、その方法は、大過剰量のヘキサフルオロプロピレンとフルオロ−オレフィン、例えばテトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンなどとラジカル開始剤を約41から約690MPaの圧力下において約200°以上から約400℃の温度で接触させることで非晶質共重合体を生じさせることを含んで成る。
【0007】
HFP含有量が高いオリゴマー状の共重合体は表面の保護および潤滑で数多くの潜在的用途を有するが、モノマーである連鎖移動剤を用いると望ましくなく分子量の調節と組成を関連させてしまう。Anolick他が開示した方法を分子量調節用の特定のモノマーを用いるように改作して液状のオリゴマーを生じさせることが特許文献10に開示されている。油状のオリゴマーを生じさせるに望ましい生産性を与えるが好適には連鎖停止剤を除いて重合体鎖の中に組み込まれない連鎖移動剤を見つけだすことができれば、これは望ましいことである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,069,401号
【特許文献2】米国特許第5,350,878号
【特許文献3】米国特許第5,446,214号
【特許文献4】米国特許第5,493,049号
【特許文献5】米国特許第2,446,214号
【特許文献6】米国特許第5,478,905号
【特許文献7】米国特許第5,663,255号
【特許文献8】米国特許第5,637,663号
【特許文献9】米国特許第6,133,389号
【特許文献10】米国特許第6,767,626号
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
本発明の1つの面は、
1)反応混合物の総重量を基準にしてHFPを80から99重量パーセント、オレフィン系不飽和コモノマーを1から20重量パーセント、フリーラジカル開始剤を0.05から2重量パーセントおよびモノマーではない連鎖移動剤を0.25から5重量%含有して成る反応体を一緒にすることで反応混合物を生じさせ;
2)前記フリーラジカル開始剤によってフリーラジカル重合を開始させ、そして
3)前記反応混合物のフリーラジカル重合を225から400℃の範囲の温度において40−700MPaの圧力下で1秒から30分間起こさせることでHFPに由来するモノマー単位を30モル%から95モル%含有して成る液状の非晶質HFPテロマーを生じさせる、
ことを含んで成る方法である。
【0010】
詳細な説明
本開示の目的で、用語“テロマー”は、生じさせる重合体の分子量を制限する目的で連鎖移動剤を用いる本明細書の以下に開示する重合方法を用いて合成した同族系列の液状パーフルオロカーボンまたは液状ヒドロフルオロカーボンの一員以上を指す。
【0011】
本発明は、HFPを重合体が起こす結晶化を最小限、望ましくは防止、好適には30から95モル%に抑制する量で存在させてHFPとの共重合体が基になった液状のテロマーを製造する方法を提供する。この液状のテロマーは被膜および潤滑油として用いるに適する。その生じさせる液状のテロマーは、いろいろな粘度を有する蒸留可能な同族系列の溜分に相当する。本方法で生じさせるテロマーは、水素含有末端基を有するヒドロフルオロカーボンからパーフルオロカーボンに及ぶ範囲である。
【0012】
本方法は、モノマーではない連鎖移動剤の使用を包含し、その結果として、分子量と組成を関連させる公知方法とは異なり、分子量の調節とテロマー組成を切り離すことで生産性が高い反応をもたらし、それによって、公知方法に比べて追加的自由度を与える。
【0013】
1つの態様において、本発明は、反応混合物の総重量を基準にしてHFPを80から99重量パーセント、好適には90−97重量パーセント、オレフィン系不飽和コモノマーを1から20重量パーセント、好適には3−10重量パーセント、フリーラジカル開始剤を0.05から2重量パーセント、好適には0.05−0.8重量パーセントおよびモノマーではない連鎖移動剤を0.25から5重量%、好適には0.5−1重量パーセントの量で一緒にすることで反応混合物を生じさせ;前記フリーラジカル開始剤によってフリーラジカル重合を開始させ、そして前記反応混合物のフリーラジカル重合を225から400℃の範囲内の温度において40−700MPa(5.8から100kpsi)の圧力下で1秒から60分間起こさせることでHFPに由来するモノマー単位を30−95%含有して成る液状の非晶質HFPテロマーを生じさせることを含んで成る方法を提供する。
【0014】
本発明の方法では、2種類の成分である潤滑用のフルオロヒドロカーボン油と揮発性のフルオロヒドロカーボン液に分割可能なテロマー混合物を生じさせる。その揮発性のフルオロヒドロカーボン液は重合体用溶媒および油性洗浄剤として用いるに有用である。
【0015】
本明細書で用いる如き用語“揮発性液”は、生成物混合物の中の大気圧から0.1トール(13Pa)の範囲の圧力下で約40から200℃で留出し得る部分を指す。用語“潤滑用油”は、生成物の中の蒸留後に残存する部分を指す。そのような油が約0.1から3トール(13から400Pa)の真空下で沸騰する温度は約100以上から200℃である。
【0016】
その生じさせた潤滑用油は非晶質のパーフルオロヒドロカーボンまたは部分フッ素置換炭化水素であり、これはHFPモノマー単位を30から95%、好適には 40から60%含有しかつC−H/C−F結合比は0から1である。そのような油が40℃で示す粘度は1から10,000cStの範囲である。
【0017】
このテロマー化を実施するに適した装置は、反応体および生成物流れの添加および取り出しを適切な速度で行うことを可能にする適切な加圧装置のいずれかであり得る。従って、そのような装置は撹拌型または非撹拌型のオートクレーブ、パイプライン型の反応槽または他の適切な装置であり得る。撹拌を行う必要はないが、多分散性を低下させるには撹拌を行う方が好適である。構成材料は工程材料に適切であるべきであり、金属、例えばステンレス鋼またはハステロイなどがしばしば適切である。
【0018】
結果として得る生成物はHFPに由来するモノマー単位を30から95モル%、好適には40−60%含有する。その反応生成物を蒸留によって分子量およびモノマー組成が異なる溜分に分離することができ、それによって、揮発性液を油から分離することができる。蒸留を有益には0.1から約1.0トール圧の圧力範囲で達成する。温度を望ましくは約100℃以上にし、約150℃以上の温度が好適であり得、約200℃にさえすることも可能である。一般的指針として、いろいろな溜分は異なる温度および圧力下で留出し得ることを本分野の技術者は理解するであろう。蒸留後に残存する残留物が油である。その反応生成物は同族系列のテロマーを含有して成り、それを数種の成分に分別蒸留してもよいか、或は溜分を特定の最終使用の必要性に応じて一緒にしてもよい。蒸留後に残存する油が40℃で示す粘度は1から10,000cStであり、それは潤滑油として用いるに有用である。
【0019】
本明細書に開示するHFP油が示すMn値のいくつかをゲルクロマトグラフィーで測定し、それは約2000である。
【0020】
HFPと一緒にコテロマー化を起こさせるに適切なコモノマーは、フリーラジカル重合反応で重合し得るオレフィン系不飽和を有することを特徴とする。適切なコモノマーには、これらに限定するものでないが、フッ化ビニリデン;構造RfOCF=CF2[ここで、RfはC1−C4パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル、例えばパーフルオロプロピルビニルエーテル,パーフルオロメチルビニルエーテルまたはパーフルオロイソプロピルビニルエーテルなど;エチレン;ヘキサフルオロイソブチレン;構造R’fCH=CH2[ここで、R’fは直鎖C1からC8パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルエチレン、例えばパーフルオロブチルエチレン(PFBE)または3,3,3−トリフルオロプロペン(TFP)など;フッ化ビニル(VF);トリフルオロエチレン;テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせが含まれる。フッ化ビニリデン;パーフルオロプロピルビニルエーテル;エチレン;およびテトラフルオロエチレンが好適であり、ここでは、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%以下にする。
【0021】
適切なフリーラジカル開始剤には、これらに限定するものでないが、三フッ化窒素,ジ−t−ブチルパーオキサイド,酸素,パーフルオロピペラジン;RfNF2,(Rf)2NF,RfN=NRf,RfOORf,RfSO2RfおよびRfSO2F[ここで、各Rfは独立してCnF(2n+1)基であり、n=1から4である],式CnF(2n+2)で表される直鎖もしくは分枝ヒンダードフルオロカーボン、例えばTonelli他のWO 88/08007に記述されている如きそれらが含まれる。ヒンダードフルオロカーボン、例えば(CF3)2CFC(C2F5)2CF3などは容易に均一切断を起こして、フリーラジカル開始剤であるラジカルを放出する。三フッ化窒素およびジ−t−ブチルパーオキサイドが好適である。
【0022】
“連鎖移動剤”を、本明細書では、最初に1つの重合体鎖の成長を停止させた後に新しい重合体鎖の成長を再開始させる添加剤またはモノマーであると定義する。そのようにして鎖成長が邪魔されることで分子量が低くなる。そのように活動的に成長しているラジカルが1つの鎖から新しい鎖に移動する移動を好適には収率の損失も生産率の損失も最小限になるように達成する。
【0023】
本明細書に開示する方法で用いるに適した連鎖移動剤はモノマーではないラジカル発生剤である。共重合し得ない連鎖移動剤は有効に工程中に生じるテロマーの組成を分子量から切り離す能力を有する。適切な連鎖移動剤には、これらに限定するものでないが、直鎖,分枝もしくは環式C1−C6炭化水素、例えばエタンなど;ジアルキルエーテル,例えばジメチルエーテルまたはジエチルエーテルなど;テトラヒドロフラン,FSO2Cl,ClSO2Cl,芳香族、例えばp−キシレンオンおヘキサフルオロベンゼンなど,およびシロキサン、例えばオクタメチルトリスシロキサンなどが含まれる。また、連鎖移動剤の混合物を用いることも可能である。他の適切な連鎖移動剤には、ヨウ化パーフルオロアルキル、例えばCF3IまたはC4F9Iなど,クロロカーボン、例えばCHCl3およびHCCl3など,フルオロクロロカーボン、例えばFCCl3など,フルオロブロモカーボン、例えばCFBr3など,チオール、例えば例えばCF3SHなど,塩化スルホニル、例えばFSO2Clなど,ホスフィンPH3,五塩化燐、シラン、例えばCl2SiH(CH3)など,HBr,IF5,ICl,IBr,I2,Cl2,Br2,CH3OH,(EtO)2P(O)H,シクロペンタン,THF,H2S,HI,POCl3,SF5Br,イソプロパノール,メチルシクロヘキサン,ジエチルエーテル,ジオキサン,トリエチルアミン,C6H5CH2Br,CH3(C=O)(C=O)C(CH3)2H,酢酸メチルなどが含まれる。
【0024】
実際に示す以外、使用可能なコモノマーの数には制限はないが、但し生成物がHFPに由来するモノマー単位を30−95%含有することを条件とする。
【0025】
本発明の1つの好適な態様では、HFPとVF2を共重合させる。さらなる態様では、HFPを主要量で用いてVF2および1種以上の追加的モノマーを一緒に共重合させる。用語“を主要量で用いて共重合させる”は、反応混合物に用いるモノマーの相対的量が結果としてもたらされるテロマーに存在する“主要な”コモノマーに由来するモノマー単位のパーセントの方が他のコモノマーのいずれのそれよりも高いような量であることを意味する。HFP+VF2に加えて、好適な追加的モノマーおよびモノマー組み合わせには、エチレン;TFE;HFIBとエチレンの組み合わせ;HFIB;PFBEとエチレンの組み合わせ;PMVEとエチレンの組み合わせ;PPVEとエチレンの組み合わせ;およびPPVEが含まれ、ここでは、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチ
レンの総濃度を10重量%以下にする。
【0026】
従って、例えば、この態様では、HFP,VF2およびTFEを生成テロマー中のTFEモノマー単位のパーセントがHFPとVF2のそれよりもずっと小さくなるような量で組み合わせる方法を意図する。
【0027】
別の好適な態様では、HFPとTFEを共重合させる。さらなる態様では、HFPを主要量で用いてTFEおよび1種以上の追加的モノマーと一緒に共重合させる。好適な追加的モノマーには、PPVE,VF2,炭化水素オレフィン、例えばエチレンなど;ヒドロフルオロカーボンオレフィン、例えばHFIB,PFBE,3,3,3−トリフルオロプロペンなど;フルオロアルキルエーテルオレフィン、PMVEおよびPPVEなど,およびクロロトリフルオロエチレンが含まれ、ここでは、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%以下にする。
【0028】
別の好適な態様では、HFPとエチレンを共重合させる。さらなる態様では、HFPを主要量で用いてエチレンおよび1種以上の追加的モノマー、例えばこの上に示した如きモノマーと一緒に共重合させ、ここでは、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%以下にする。
【0029】
本方法で用いるに適した数多くのオレフィン系不飽和モノマーの間には反応性に大きな差が存在する。HFPはあまり迅速には重合しないことから、HFPとTFE,VF2またはエチレンの反応混合物では一般にHFPを大過剰量で用いることでHFP含有量がより高いテロマーを生じさせる。一般的指針として、フルオロオレフィンの重合を通常の条件(約100℃未満の温度、約1000psi未満の圧力)で実施したのでは典型的にHFPが約30モル%以上の重合体はもたらされない。従って、HFPが約30モル%以上の重合体はHFP含有量が高い重合体であると見なすことができる。TFE,VF2およびエチレンは全部が激しく重合することが知られている、即ちある工程でTFE,VF2,エチレンまたはこれらの組み合わせを過剰量で用いると、重合が暴走した後に分解を起こすことで爆発が起こる可能性がある。そのような理由で、如何なる反応混合物でもTFE,VF2およびエチレンの総量を10重量%未満に保持すべきであり、かつエチレンの含有量を3重量%以下にすることも可能である。本明細書で用いるに適したオレフィン系不飽和モノマーの中で他のモノマーはあまり激しくは反応しないことから、HFPと反応させるコモノマーの総含有量を約20重量%以下にすることも可能である。
【0030】
本発明の方法で特定のモノマー組み合わせを用いることによって、溜分としての生成物の分率が高くなるか或は低くなることで示されるように、テロマーの分子量に影響を与えることができる。HFP/VF2/PPVE/エタンおよびHFP/VF2/PFBE/エタンのテロマーをNF3開始剤を用いて生じさせると留出し得る画分のパーセントが相対的に高い(典型的には約50%以上の)生成物がもたらされる傾向がある。他方、HFP/VF2/ジエチルエーテルの重合をNF3またはジ−t−ブチルパーオキサイドで開始させると、本明細書の以下に示す実施例8で例示するように、もたらされる油のパーセントがより高くなる。重合温度を高くすると非揮発性油に対する留出し得る溶媒の比率が高くなり、温度を300℃以上にするのが好適であり、325℃以上にするのが最も好適である。揮発物の比率は、また、モノマーに対する連鎖移動剤の濃度を高くすること、相対的に高い活性を示す連鎖移動剤、例えばエタンなどを用いることおよびPFBE,PPVEおよびエチレンの如きモノマーを混合物に含めることなどでも高くなる。
【0031】
本明細書に示す方法で生じさせた油は、高性能潤滑油として用いるに有用であり、かつ増粘剤、例えばポリテトラフルオロエチレン、シリカ、二硫化モリブデンおよびグラファイトなどの微粉末などと混合した後に高性能グリースの油成分として用いるに有用である
。この油はフルオロエラストマーおよび他のフルオロポリマー用の可塑剤として用いるに有用である一方、留出し得る溶媒は押出し加工および成形加工における揮発性加工助剤として使用可能である。加うるに、そのような留出し得る液体はいろいろな溶媒および液体用途でも使用可能であり、そのような用途には、これらに限定するものでないが、その溜分を油性洗浄剤、表面被覆用溶媒などとして用いることが含まれる。
【実施例】
【0032】
材料
この研究で用いるモノマー、連鎖移動剤および開始剤は全部が市販の化学品である。FOMBLIN(R)およびKRYTOX(R)はそれぞれSolvay−SolexisおよびDuPontが製造している潤滑用パーフルオロポリエーテル油の商標名である。TEFLON(R)AFはDuPontの商標であり、それはテトラフルオロエチレンとパーフルオロジメチルジオキソールの共重合体である。
【0033】
この上で行った考察および以下の実施例で使用するか或は考察するモノマーおよび連鎖移動剤には下記が含まれる:
【0034】
【表1】

【0035】
試験方法
粘度
動粘度の測定をAmerican Society for testing and
Materials(ASTM) Test Method D 445−97,“Standard Test method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids(the calculation of Dynamic Viscosity)を用いて実施した。
【0036】
分子量
サイズエクスクルージョンクロマトグラフィーをModel 410 屈折率検出器(DRI)が備わっているAlliance 2690 Size Exclusion Chromatograph(Waters Corporation,Milford,MAに加えてWaters 410 屈折率検出器(DRI))を用いて実施した。データをEmpower Pro ソフトウエアを用いて分析した。Polymer Laboratories[会社,市,州]から得た2本のPLgel Mixed Cおよび1本のPLgel 500A°カラムを分離で用いた。安定化を受けさせていないTHFを可動相として用いた。クロマトグラフィー条件は下記であった:40°C,流量:1.00mL/分,注入体積:100ミクロL,流す時間:35分。
【0037】
サンプルの調製をTHFを室温で穏やかに撹拌しながらそれに4時間かけて溶解させることで実施した。前記カラムに較正を10種類が1組の多分散性が狭い(<1.1)ポリスチレン(PS)標準(ピーク分子量が580から7,500,000)(Polymer Laboratories)を用いて受けさせた。
【0038】
テロマー化用装置
本明細書で用いるテロマー化用装置の図式図を図1に示す。
【0039】
1ガロンのオートクレーブ(1)の中でHFPおよび他のモノマーを連鎖移動剤であるエタンおよび開始剤と一緒にすると、自然発生的圧力下で液相(1b)と気相(1a)が生じた。高圧ポンプ(2)を用いて、その反応体を前記オートクレーブ(1)から加圧配管(3)に通しそしてそこから15,500psiの背圧調節装置(4)に通して前記オートクレーブに戻すことで循環させた。ガス抜きライン(5)[ニードルバルブ(6)による流量制御を受けさせた]を調整して、加熱ステンレス鋼製管状反応槽(7)[内径が0.406であり、これを具体的な反応条件に応じて約225℃−400℃に加熱]を通りそして2番目の背圧調整装置(8)(14,000psiに設定)を通る反応体の流れが約10cc/秒になるようにした。生成物が収集装置(9)の中に流れ込む時に圧力が降下し、それによって、生成物の液相と未反応モノマーの気相が生じる。その未反応のモノマーは排気ライン(10)から気体流量計(11)を通って出て行った(12)。酸性反応体残留物を除去する目的でNaOHスクラバーを前記流量計の上流の排気ラインの中に位置させた(示していない)。
【0040】
実施例1
オートクレーブ(1)に真空排気を受けさせた。そのオートクレーブを真空下に置きながらそれに液状のパーフルオロブチルエチレンを50.4g導入した。そのオートクレーブに10グラムの気体状エタンを重量を測定しておいたシリンダーから導入した。前記オートクレーブに90gのフッ化ビニリデンを重量を測定しておいたVF2シリンダーから導入した。次に、前記オートクレーブにつながっているラインをNF3で415psigに加圧した後、密封し、その結果として約2のNF3(415psigで25mLのNF3)が捕捉された。残りのラインから余分なNF3を除去した。前記オートクレーブに2000gのHFPを重量を測定しておいたHFPシリンダーから導入することで、ラインの中に捕捉されていた〜2gのNF3を清掃してオートクレーブの中に入れた。
【0041】
前記オートクレーブの内容物を機械的に撹拌した。この実験全体に渡って、液相の反応混合物をポンプ(2)でオートクレーブの下部から15,500±100psiの背圧調節装置(4)に通して輸送しそしてオートクレーブ(1)に戻すことを連続的に実施した。微量計量用弁(6)を開けて、流量計(11)が示すように、流量を10cc/分にした。Foxboro Model IFOA流量計(11)に前以て較正を高純度のHFPを用いて受けさせておいた。それによって、反応混合物を反応槽(7)に導入した。約1分間の滞留時間後に反応流れを14,000±100psiに設定しておいた背圧調節装置(8)に通して送った。前記反応槽(7)の直ぐ上流のラインを電気的に200℃に加熱した。次に、その反応流れは背圧調節装置(8)から出る時に大気圧に戻った。未反応の気体を生成物収集装置(9)から出させて、排気(12)に向かう途中のライン(10)の中の収集装置(9)と流量計(11)の間に位置するスクラバー(示していない)に通し、その中で5% のNaOH水溶液で洗浄することで洗い流した。
【0042】
揮発性が低い生成物が収集装置(9)の中に残存していた。
【0043】
この反応をモノマー再循環ループの中の圧力が15,500psi未満にまで降下することで示されるようにオートクレーブ(1)の中の液相がほとんどなくなるまで実施した。148分間後に反応を停止させたが、流量計(11)は、その間に未反応のモノマーが955グラム流れたことを示していた。758gの暗褐色流体を収集装置(9)から回収した。955gの未反応モノマーであるオフガスと前記収集装置から回収した758gの流体を加えた値は1713gの出発材料に相当し、このことは、反応槽の中を通る平均流量が〜11.6g/分で反応槽内の平均滞留時間が1分であることに相当する(反応体が14,000psiにおいて375℃で示す密度は〜1g/ccであると仮定したことを基にして)。反応槽供給材料が粗生成物に変化した変換率は34%であった。計算生産率は粗生成物が758gであることを基にして260ポンド/ガロン/時であった。
【0044】
生成物の処理および特徴付け
758gの粗生成物をガラス製フラスコに移した後、蒸留で2溜分を生じさせた。1番目の溜分を大気圧下で100℃までの留出で集めた。また、2番目の溜分を100℃で1トールの圧力になるまで集めた。その2つの溜分および釜残の特性を表2に示す。オリゴマー化を148分間実施することで油が270g生じたが、これは油の生産に関する生産率が91ポンド/ガロン/時であることに相当する。前記2種類の溜分および油の炭素と水素の分析は、溜分#1に関しては組成が93%HFP/3%VF2/2%PFBE/1%エタンであり、溜分#2に関しては75%HFP/31%VF2/4%PFBE/3%エタンでありそして残油に関しては32%HFP/48%VF2/17%PFBE/3%エタンであることに一致していた。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例1A
実施例1で調製した油、Krytox(R)油およびFomblin(R)油に一連の#51200ステンレス鋼製ボールベアリングを浸漬し、いろいろな温度に24時間加熱した後、腐食に関して目で検査した。腐食を主観的に1−5のスケールで評価したが、ここで、1は、腐食の証拠が全くない輝いたボールベアリング表面に相当し、2は、変色および孔食がいくらか起こったことに相当し、3は、表面の約半分に孔食が起こったことに相当し、4は、表面の大部分に孔食が起こったことに相当し、そして5は、油が濁りかつボールの孔食が完全に起こったことに相当する。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例1B
ガラス瓶に実施例1で得た低沸点溜分#1を0.5gおよび58.2/42.8重量%のHFP/TFE共重合体(FLUORINERT(R)FC−75中のインヘレント粘度が0.470)を0.05g充填した。前記瓶を室温で数日間回転させると粘性のある透明な溶液が生じた。その溶液を顕微鏡用ガラススライドの上に置いた溜液を室温で評価した結果、そのポリ(HFP/TFE)は前記ガラススライド上に膜として存在したままであった。
【0049】
実施例1C
ガラス瓶に実施例1で得た真空溜分#2を0.5gおよびTEFLON AF 1601を0.05g充填した。前記瓶を室温で約1週間回転させると前記重合体の大部分が溶解することで、粘性のある透明な溶液が生じた。
【0050】
実施例2から23および
比較実施例A−D
オリゴマー化の実験を実施例1の装置および方法を用いて実施した。実施例および比較実施例の全部でHFPを2000g用いた。
【0051】
実施例1の条件をいくらか変えたが、それを表4に示す。いろいろな実施例で実施例1の10ccの反応槽ではなく5ccの管状反応槽を用いた。これは管状反応槽内の滞留時間を10から15秒にする効果を有していた。生成物全体の生産率は滞留時間を10−15秒にしても500ポンド/ガロン/時(60kg/リットル/時)に近かった。管状反応槽内の圧力を時には14,000psiから8,000(実施例8)または10,000psi(実施例6,9,18)にまで低下させたが、それでも生産率は劇的には低下しなかった。実施例5では、出発反応混合物を二酸化炭素で希釈した。いろいろな実施例で、油溜分を単離する過程で真空蒸留を150−200℃になるまで実施した。実施例10では、管状反応槽の直前でジ−t−ブチルパーオキサイドを〜0.04mL/分の注入速度で始めて実験過程全体に渡って段階的に高くして0.33mL/分になるように注入した。実施例23では、60mLのジ−t−ブチルパーオキサイドを30mLのCF3CFHCFHCF2CF3と混合した。この混合物を5ccの管状反応槽の直前のラインの中に〜0.17mL/分の注入速度で注入した。
【0052】
開始剤およびモノマー反応体のそれぞれの量を重量測定するか或は添加部分およびオートクレーブの温度、圧力および体積を基にして計算した。それらの場所で反応槽に排出させたが、移動は定量的ではない。本実施例に記述した如き三フッ化窒素およびモノマー反応体の量は近似値である。
【0053】
実施例10および23では、NF3縦列に示したDTBPはジ−t−ブチルパーオキサイドをNF3の代わりに用いたことを示している。
【0054】
表4では、図1に示したオートクレーブ(2)に導入したNF3開始剤の重量を理想気体法則PV=nRT[ここで、Pは、図1に示した構成部分(1)の中のNF3圧であり、そしてVは、前記構成部分の体積である]を用いて計算する。
【0055】
生収率は、図1に示した収集装置(7)から取り出した全液状生成物または固体状重合体の重量(グラム)であった。最後の縦列に示した反応槽生産率(ポンド/ガロン/時)は油溜分のみを指す。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1に、本発明の1つの態様に従うテロマー状フルオロオレフィンの調製で用いた装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 反応混合物の総重量を基準にしてHFPを80から99重量パーセント、オレフィン系不飽和コモノマーを1から20重量パーセント、フリーラジカル開始剤を0.05から2重量パーセントおよびモノマーではない連鎖移動剤を0.25から5重量%含有して成る反応体を一緒にすることで反応混合物を生じさせ;
b)前記フリーラジカル開始剤によってフリーラジカル重合を開始させ、そして
c)前記反応混合物のフリーラジカル重合を225から400℃の範囲内の温度において40−700MPaの圧力下で1秒から30分間起こさせることでHFPに由来するモノマー単位を30モル%から95モル%含有して成る液状の非晶質HFPテロマーを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記オレフィン系不飽和コモノマーをテトラフルオロエチレン,フッ化ビニリデン;エチレン,構造RfOCF=CF2[ここで、RfはC1−C4パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル;ヘキサフルオロイソブチレン;構造R’fCH=CH2[ここで、R’fは直鎖C1からC8パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルエチレン;フッ化ビニル(VF);トリフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンから成る群から選択する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィン系不飽和コモノマーをフッ化ビニリデン,パーフルオロプロピルビニルエーテル,パーフルオロメチルビニルエーテル,パーフルオロイソプロピルビニルエーテル,エチレン,ヘキサフルオロイソブチレン,パーフルオロブチルエチレン,3,3,3−トリフルオロプロペン,フッ化ビニル,トリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンから成る群から選択する請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィン系不飽和コモノマーがフッ化ビニリデン,パーフルオロプロピルビニルエーテル,エチレンまたはテトラフルオロエチレンである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィン系不飽和コモノマーが濃度が1から10重量%のフッ化ビニリデンである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィン系不飽和コモノマーが濃度が1から10重量%のテトラフルオロエチレンである請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記オレフィン系不飽和コモノマーが濃度が1から3重量%のエチレンである請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物に更にフッ化ビニリデン;構造RfOCF=CF2[ここで、RfはC1−C4パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル;ヘキサフルオロイソブチレン;構造R’fCH=CH2[ここで、R’fは直鎖C1からC8パーフルオロアルキル基である]で表されるパーフルオロアルキルエチレン;フッ化ビニル(VF);トリフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン;およびこれらの組み合わせから成る群から選択した1種以上の追加的モノマーも含有させ、ここで、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%以下にする請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の追加的モノマーをフッ化ビニリデン,パーフルオロプロピルビニルエーテル,パーフルオロメチルビニルエーテル,パーフルオロイソプロピルビニルエーテル,
エチレン,ヘキサフルオロイソブチレン,パーフルオロブチルエチレン,3,3,3−トリフルオロプロペン,フッ化ビニル,トリフルオロエチレン,テトラフルオロエチレンおよびこれらの組み合わせから成る群から選択し、ここで、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%未満にする請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上の追加的モノマーをエチレン;TFE;HFIBとエチレンの組み合わせ;HFIB;PFBEとエチレンの組み合わせ;PMVEとエチレンの組み合わせ;PPVEとエチレンの組み合わせ;およびPPVEから成る群から選択し,ここで、フッ化ビニリデン,エチレンおよびテトラフルオロエチレンの総濃度を10重量%以下にする請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記フリーラジカル開始剤が三フッ化窒素またはジ−t−ブチルパーオキサイドである請求項1または請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記連鎖移動剤を直鎖,分枝もしくは環式C1−C6炭化水素,ジアルキルエーテル,テトラヒドロフラン,FSO2Cl,ClSO2Cl,芳香族およびシロキサンから成る群から選択する請求項1または請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記連鎖移動剤をエタン,ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,FSO2Cl,ClSO2Cl,p−キシレン,ヘキサフルオロベンゼンおよびオクタメチルトリスシロキサンから成る群から選択する請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記連鎖移動剤がエタンである請求項13記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−156647(P2008−156647A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329808(P2007−329808)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】