説明

低分子量ジエン重合体の脱溶媒方法

【課題】重合体を抽出する時に通常の脱溶媒手順を用いることができ、かつ低い分子量を有するブタジエン重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】a)触媒存在下の適切な溶媒中で、場合により他の1種以上の共役単量体の存在下にジエンを重合させて1番目の重量平均分子量を有する重合体を生成させ、b)前記重合体をカップリング剤と反応させて前記1番目の重量平均分子量より高い2番目の重量平均分子量を有する結合重合体を生成させ、c)前記結合重合体の脱溶媒を行い、そして、d)前記脱溶媒した結合重合体を脱結合させて前記結合重合体の重量平均分子量より低い重量平均分子量を有する脱結合ジエン含有重合体を生成させる、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性および加工性が優れていることでゴムを製造する時に添加剤として用いるに適したトランス−ブタジエン重合体、ならびに他の多様な低分子量重合体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子量重合体はゴムコンパウンドにおける加工助剤として用いるに有用である。バックボーンに不飽和が存在する重合体はこれをタイヤ用弾性重合体と共にブレンドした時にそれに優れた特性を与える、と言うのは、そのような低分子量の重合体は弾性重合体と共硬化し得るからである。従って、そのような加工助剤は硬化マトリックス(cured matrix)の負荷を支える成分(load bearing component)になる。他の加工助剤、例えば加工油、ワックスおよび低分子量の飽和重合体などは希釈剤として働き、硬化製品の強度には貢献しない。
【0003】
ゴムコンパウンドにおける加工助剤としてポリイソプレンおよびポリオクタナマー(polyoctanamer)が用いられてきた。しかしながら、両方とも高価である傾向がある。ポリイソプレンは取り扱いが困難な高粘性材料である。最近、低分子量のトランス−ポリブタジエンが反応性加工助剤として用いるに有用であることが確認された。これを製造する時の費用は不飽和を有する他の加工助剤に比べて安価であり、かつこれは室温で固体であることからペレット形態で取り扱い可能である。
【0004】
トランス−1,4−結合の含有量が高いブタジエン重合体の製造は重合用触媒を用いて行われてきた。そのような重合体の製造は下記の3種類の公知技術を用いて行われてきた:
1)遷移金属を主成分として含有するチーグラー触媒、
2)アルカリ土類金属化合物を主成分として含有するアニオン重合用触媒系、および
3)希土類金属化合物を主成分として含有する触媒。
【0005】
1番目の技術では、共役ジエン単量体の立体規則的重合を高い度合で起こさせるのに、遷移金属、例えばNi、Co、TiおよびVなどが有効であることが確認された。例えば、四価チタン金属化合物の形態のTiと担体であるハロゲン化マグネシウムを用いてブタジエンを重合させることができる。また、四価バナジウムのハロゲン化物と有機アルミニウムの錯体である触媒を用いてイソプレンを重合させることも報告された。
【0006】
2番目の技術では、IIA族の金属の有機金属化合物が重合用触媒として用いられる。BeおよびMgの有機金属化合物は比較的容易に合成できる。しかしながら、共役ジエンの重合に関して活性があることが示されたのは特殊な反応条件においてのみである。それとは対照的に、IIA族の金属、例えばBaおよびSrなどの有機酸塩はこれを他の有機金属化合物と組合わせて用いると共役ジエン単量体の重合に有効であることが知られている。例えばバリウム−ジ−t−ブトキサドと有機マグネシウム化合物を用いた触媒系がブタジエンの重合で用いられてきた。また、バリウムもしくはストロンチウムの有機化合物を有機リチウムおよびIIBもしくはIIIA族の金属の有機金属化合物と組み合わせて用いることも行われてきた。
【0007】
3番目の技術では、ランタニド金属の塩または錯体を有機マグネシウム化合物または有機リチウム化合物と組み合わせて用いる。そのような有機マグネシウム化合物はジヒドロカルビルマグネシウム化合物、例えばジアルキルマグネシウム、ジシクロアルキルマグネ
シウムまたはジアリールマグネシウム化合物などである。希土類元素は原子番号が57(La)から71(Lu)の元素のいずれかであってもよいが、ある種の元素は他の元素に比べて効果が低い。Ndの有機酸[例えばShell Chemicalsが販売しているバーサティックアシッド(Versatic acid)、即ちC10モノカルボン酸の高分枝異性体の混合物で構成されている合成酸]の塩および有機マグネシウム化合物を用いて高いトランス−結合(high trans−linkage)を有する結晶性ポリブタジエンを製造することが行われてきた。また、他のバーサティックアシッド塩、例えばDi、Prなどのバーサティックアシッド塩を用いることも可能である。トリブロックまたはラジアルアーム(tri−block or radial arm)ブロック共重合体はスチレンもしくはスチレンブタジエンブロックと高トランス−ポリブタジエンブロック(トランスが80%を超える)から製造することができる。最初に、ブチルリチウム/ジブチルマグネシウム触媒系を用いてスチレンまたはスチレン/ブタジエンブロックを製造する。この重合が完了した時点で有機酸のLa塩を添加した後、ブタジエンを更に添加する。また、LaもしくはCeの有機酸塩と有機マグネシウム化合物の錯体である触媒を用いて結晶性のトランス−ブタジエン重合体を炭化水素溶媒中で生成させることも公知である。
【0008】
この記述した種類の低分子量加工助剤は、これらに脱溶媒させる時の温度で粘性のある樹脂である。生成した化合物の分子量は一般に100,000未満、しばしば約40,000であることから、通常の方法、例えば蒸気による脱溶媒またはドラム乾燥(drum
drying)などで脱溶媒を行うのは不可能である。脱溶媒は、そのような加工助剤の生成を容易にする目的で用いた溶媒を除去することである。粘性のある液体の脱溶媒で使用可能な装置は典型的に合成弾性重合体のプラントには存在せず、合成弾性重合体のプラントは一般にはるかに高い分子量の弾性重合体を取り扱うプラントである。
【0009】
ゴムコンパウンドなどにおける加工助剤として用いるための低分子量ブタジエン重合体を製造する時に通常の脱溶媒工程を用いることを可能にする新規で改良された方法が求められているままである。
【発明の概要】
【0010】
(発明の要約)
簡単に述べると、本発明はブタジエン型重合体を製造する方法を提供する。ブタジエン単量体を場合により他の不飽和単量体1種または2種以上と、触媒存在下の適切な溶媒中で重合させて1番目の分子量を有する重合体を生成させる。この重合体をカップリング剤(coupling agent)と反応させて前記1番目の分子量より高い2番目の分子量を有する結合重合体(coupled polymer)を生成させる。この結合重合体を処理して溶媒を除去する。この脱溶媒した結合重合体を脱結合させて(decoupled)前記結合重合体の分子量より低い分子量を有する脱結合重合体(decoupled polymer)を生成させる。本方法を用いると低い分子量を有するブタジエン重合体を生成させることが出来、かつこの重合体を抽出する時に通常の脱溶媒手順を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本図は、四塩化錫によるカップリングを行なう前および後のブタジエン重合体のサイズ排除クロマトグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(好適な態様の詳細な説明)
ブタジエンと他の共役ジエンの低分子量重合体の調製を偽リビング(quasi−living)重合体をもたらす触媒、例えば希土類/ジアルキルマグネシウムまたは希土類
/アルキルリチウム触媒の存在下の重合方法で実施する。即ち、この重合体分子の重要な部分は単量体重合後に反応性末端基を保持している。生成した重合体が有する反応性末端基をカップリング剤、例えば四塩化錫(SnCl4)などと反応させて前記重合体の分子量を一時的に高くすることで、それが通常方法により脱溶媒できるようにする。次に、この脱溶媒された重合体は脱結合させて、例えばゴムコンパウンドを生成させる時などに加工助剤として用いるに適した低分子量の重合体を生成させる。
【0013】
単量体1種または2種以上を接触的に約40,000の重量平均分子量(Mw)を有しかつ好適には高いトランス含有量(トランスが80%を超える)を有する重合体に転化させる。ある場合には、シス重合体を生成させることも可能であるが、比較的低い分子量を有するシス重合体を生成させるのは困難であることが分かるであろう。重合させることができる共役ジエンの例にはブタジエンおよびイソプレンが含まれるが、本方法をそのような2種類の共役ジエンの中の一方または他方の使用に限定するものでない。望まれるならば、共役ジエンの混合物を出発単量体として用いることも可能である。
【0014】
この重合工程ではリビング重合体(即ち反応性末端基を有する重合体)が生成する。この反応性末端基は典型的には負に帯電している末端基であり、これは正に帯電している種、例えば金属カチオンなどとイオン的に結合または会合する。リビング重合体を生成し得る重合用触媒は多様に存在し、それらには、これらに限定するものでないが、希土類(ランタン系列)の金属の有機塩もしくは錯体、リチウムの有機化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、そしてBaまたはSrの有機化合物が含まれる。好適には、そのような触媒を組み合わせて用いる。典型的な触媒系は下記を含有する触媒である:
(I)(a)ランタン金属の塩もしくは錯体;および(b)有機マグネシウム化合物または有機リチウム化合物;
(II)(a)ランタン金属の塩もしくは錯体;(b)有機マグネシウム化合物;および(c)リチウムの有機化合物;
(III)(b)有機マグネシウム化合物;(c)Liの有機化合物;および(d)BaもしくはSrの有機化合物;そして
(IV)(b)有機マグネシウム化合物;(c)Liの有機化合物;(d)BaもしくはSrの有機化合物;(e)有機アルミニウムもしくは有機亜鉛化合物。
【0015】
成分(a)のランタニド系列の金属は原子番号が57から71を有する元素の中のいかなる希土類元素であってもよい。しかしながら、以前に記述された触媒におけるそのような元素の中の特定の元素、例えばSmなどが示す重合活性は低い。従って、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbまたはDyの化合物が好適である。2種以上の希土類元素の混合物を用いることも可能である。特に、La、Ndまたは「ジジム」(これはNd含有量が約72%でLa含有量が約20%でPr含有量が約8%の希土類元素混合物である)が好適である。
【0016】
ランタニド塩および錯体の例はバーサティックアシッドの「ジジム」塩(Versatic(商標)アシッドから誘導された)、バーサティックアシッドのネオジム塩およびプラセオジム(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)である。希土類金属のバーサティックアシッド塩は易溶で調製が容易でありかつ安定なことから一般に好適である。他の有用な材料にはLaもしくはCeの有機酸塩が含まれる。ランタンまたはセリウムの有機酸塩は例えば有機酸のアルカリ金属塩とLaもしくはCeの塩化物を水または有機溶媒、例えばアルコール、ケトンなど中で反応させることによる調製などで容易に入手可能である。LaもしくはCeの有機酸塩はLaもしくはCeの無機塩または有機酸を不純物として少量含有する可能性がある。
【0017】
Laと共に使用可能な有機酸化合物は以下に示す如き式1−8で表される。これらの化合物をまたCeもしくはNdと共に用いることも可能である。
【0018】
【化1】

【0019】
前記において、R1、R2およびR5−R8は、各々独立して、脂肪族もしくは環状脂肪族炭化水素基または未置換もしくは置換芳香族炭化水素基を表し、R3は、未置換もしくは置換芳香族炭化水素基を表し、R4は、脂肪族もしくは環状脂肪族炭化水素基を表し、R9−R12は、独立して、脂肪族もしくは環状脂肪族炭化水素基、未置換もしくは置換芳香族炭化水素基、アルコキシ基またはフェノキシ基を表し、LはOまたはSであり、そしてj、k、lおよびmは、独立して、1から6の整数である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用可能である。
【0020】
群1)の適切な有機酸化合物には、アルコール類、チオアルコール類、フェノール類およびチオール類が含まれる。その例にはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールなどが含まれる。
【0021】
群2)の適切なカルボン酸もしくは硫黄類似物には、イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、トリメチル酢酸などが
含まれる。
【0022】
群3)の適切なアルキルアリールスルホン酸には、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、n−ヘキシルナフタレンスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸などが含まれる。
【0023】
群4)の適切な硫酸モノ−アルキルエステルには、ラウリルアルコールの硫酸モノ−エステル、オレイルアルコールの硫酸モノ−エステル、ステアリルアルコールの硫酸モノ−エステルなどが含まれる。
【0024】
群5)の適切なアルコールもしくはフェノールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステルには、ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステル、オクチルアルコールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステル、ステアリルアルコールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステル、オレイルアルコールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステル、ノニルフェノールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステル、ドデシル−フェノールのエチレンオキサイド付加体の燐酸ジエステルなどが含まれる。
【0025】
群6)の適切なアルコールもしくはフェノールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステルには、ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステル、ステアリルアルコールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステル、オレイルアルコールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステル、ノニルフェノールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステル、ドデシル−フェノールのエチレンオキサイド付加体の亜燐酸ジエステルなどが含まれる。
【0026】
群7)の適切な五価有機燐酸化合物には、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘプチル)ホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフェート、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフェート、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフェート、モノブチル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、モノ−2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、モノ−2−エチルヘキシルフェニルホスホネート、モノ−p−ノニルフェニル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸などが含まれる。
【0027】
群8)の適切な三価亜燐酸には、ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ビス(1−メチルヘプチル)ホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)亜ホスフィン酸(bis(2−ethylhexyl)phosphinous acid)などが含まれる。
【0028】
適切な有機マグネシウム化合物(b)は一般式MgR1314[式中、R13およびR14は、独立して、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリルまたはシクロジエン基であり、これらは同一または異なっていてもよい]で表される。その例にはジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジ−イソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、n−ブチルs−ブチルマグネシウム、ジ−s−ブチルマグネシウム、ジ−t−ブチルマグネシウム、
ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジフェニルマグネシウムなどが含まれ、これらは単独または組み合わせであってもよい。
【0029】
成分(b)は、好適には、各Rが炭素原子を1から10個有するアルキル基であるジアルキルマグネシウムである。特にジブチルマグネシウムが好適な成分(b)である、と言うのは、これは幅広く入手可能であるからである。成分(b)は反応の開始の為の共触媒として働く。有機マグネシウム成分を共触媒として含有する触媒系IまたはIIを用いた重合の生成物は、トランス異性体含有量が非常に高い共役ジエン重合体である。
【0030】
触媒系IまたはIIにおける成分(a)と成分(b)のモル比は好適には約0.01:1から約1:1、より好適には0.06:1から0.3:1である。成分(b)の絶対濃度は例えば重合性単量体100g当たり1から5ミリモルであってもよい。好適には、単量体を溶媒に添加した後に成分(a)そして次に成分(b)を添加する。
【0031】
Liの適切な有機化合物には、有機リチウムまたは有機酸のLi塩、例えばアルキルリチウム化合物、アルコールのLi塩、グリコールエーテルのLi塩、アルコール、フェノール、チオアルコールおよびチオフェノールのLi塩、ジアルキルアミノエタノールのLi塩、第二級アミンのLi塩、環状イミンのLi塩などが含まれる。Liの好適な有機化合物には、C2−C10アルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、イソアミルリチウムなどが含まれ、これらは単独または組み合わせであってもよい。
【0032】
適切なBaもしくはSr有機化合物には、脂肪族もしくは芳香族、例えばアルコール、フェノール、チオアルコール、チオフェノール、カルボン酸もしくはS類似物、グリコールエーテル、ジアルキルアミノアルコール、ジアリールアミノアルコール、第二級アミン、環状イミン、スルホン酸および硫酸エステルなどのBaもしくはSr塩が含まれ、これらは単独または組み合わせであってもよい。
【0033】
適切なアルコールおよびフェノールのBaもしくはSr塩は、一般式(R15−O)2Me[式中、R15は脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、シクロペンチルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、1−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ノニルフェノールおよび4−フェニルフェノールの塩が含まれる。
【0034】
適切なチオールおよびチオフェノールのBaもしくはSr塩は、一般式(R16−S)2Me[式中、R16は脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、エタンチオール、1−ブタンチオール、チオフェノール、シクロヘキサンチオールおよび2−ナフタレンチオールの塩が含まれる。
【0035】
適切なカルボン酸およびこれらのS類似物のBaもしくはSr塩は、一般式(R17−C(O)O)2Meおよび(R18−C(O)S)2Me[式中、R17およびR18は、独立して、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、イソ吉草酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフタリン酸、エチルヘキサン酸、トリメチル酢酸、Versatic(商標)アシッド、フェニル酢酸、安息香酸、ヘキサンチオン酸、2,2−ジメチルブタンチオン酸、デカンチオン酸、テトラデカンチオン酸、チオ安
息香酸などの塩が含まれる。
【0036】
適切なグリコールエーテルのBaもしくはSr塩は、一般式[(R19−O−(CH2CH2C−O)n2Me[式中、nは6未満の整数であり、そしてR19は脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、エチレングリコールのモノメチルエーテル、エチレングリコールのモノエチルエーテル、エチレングリコールのモノブチルエーテル、エチレングリコールのモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールのモノエチルエーテル、ジエチレングリコールのモノブチルエーテル、トリエチレングリコールのモノブチルエーテル、ジエチレングリコールのモノフェニルエーテルなどの塩が含まれる。
【0037】
適切なジ脂肪族もしくはジ芳香族アミンのBaもしくはSr塩は、一般式[R20N(R21)−(CH2CH2−O)n2Me[式中、nは6未満の整数であり、そしてR20およびR21は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミノエタノールなどの塩が含まれる。
【0038】
適切な第二級アミンのBaもしくはSr塩は、一般式[R22N(R23)]2Me[式中、R22およびR23は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミンなどの塩が含まれる。
【0039】
適切な環状アミンのBaもしくはSr塩には、エチレンイミン、トリエチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミンなどの塩が含まれる。
【0040】
適切なスルホン酸のBaもしくはSr塩は、一般式(R24−OSO32Me[式中、R24は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジ−イソプロピルナフタレンスルホン酸、n−ヘキシルナフタレンスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸などの塩が含まれる。
【0041】
適切な硫酸エステルのBaもしくはSr塩は、一般式(R25−SO32Me[式中、R25は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である]で表される塩である。その例には、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどの硫酸エステルの塩が含まれる。
【0042】
適切な有機アルミニウム化合物は、一般式Al(R26)(R27)(R28)[式中、R26、R27およびR28は、独立して、H、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基から選択されるが、全部がHであることはないことを条件とする]で表される。その例にはトリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムの一水素化物などが含まれる。
【0043】
適切な有機亜鉛化合物(e)は一般式R29−Zn−R30[式中、R29およびR30は、同一もしくは異なっていてもよく、水素、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基から選択されるが、両方が水素であることはない]で表される。その例にはジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジ−イソ−アミル亜鉛、ジ−イソブチル亜鉛などが含まれる。
【0044】
望まれるならば、触媒系IまたはIIを用いた重合を極性成分、例えばルイス塩基、例えばTHFなどの存在下で実施することも可能である。他の極性化合物の例は、(a)エ
ーテル類、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテルおよびアニソールなど、(b)アミン類、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンおよびテトラメチルエチレンジアミンなど、(c)チオエーテル類、例えばチオフェンなど、そして(d)ポリエーテル類、例えば1,2−ジメトキシエタン、グライムおよびジグライムなどである。このような極性化合物は、得るべき重合体への単量体の転化率を高くする能力を有するが、用いる極性化合物の成分(b)に対する量を非常に高く(約2.5:1より高いモル比)しない限りトランス含有量に影響を与えることはない。極性化合物を添加しても重合体のビニル含有量が高くなることはなく、これは、そのような化合物をアニオン重合で用いるとビニル含有量が高くなるのとは対照的である。
【0045】
触媒系IIの場合、アルキルLi対アルキルMgのモル比を例えば0.5:1未満にまで低くすると結果として収率が高くなるが、微細構造に対する影響は実質的に生じない。それらを0.5:1より高いモル比(例えば1.5:1に及ぶ)で用いると、重合体のトランス含有量が96%から約50%にまで低下する可能性がある(アルキルLiの比率を高くするにつれて低下する)。
【0046】
成分(e)を触媒系IVに添加すると結果として触媒活性が向上するか或はトランス結合含有量が高くなる傾向がある。
【0047】
触媒系IIIおよびIVの有機マグネシウム含有量は好適には単量体総量100g当たり0.1から50ミリモル、より好適には0.5から5ミリモルである。0.1ミリモル未満にすると重合活性が受け入れられないほど低くなるか或は加工するには分子量が高くなり過ぎる可能性がある。
【0048】
触媒系IIIおよびIVに有機リチウム化合物を好適にはLi:Mgのモル比(Mgのモルに対するLiのモル)が0.1から10、より好適には0.5から2の範囲になるように存在させる。比率を0.1未満にすると重合活性が受け入れられないほど低くなる可能性があり、比率を10より高くすると、得られる重合体のトランス含有量が低下する傾向がある。
【0049】
触媒系IIIおよびIVにBaもしくはSrの有機化合物を好適にはMe1:Mgのモル比(Me1はSrまたはBaである)が0.005:1から10:1、より好適には0.1:1から1:1の範囲になるように存在させる。比率を0.005未満にすると得られる重合体のトランス含有量が低くなる傾向があり、比率を10:1より高くすると重合活性が受け入れられないほど低くなる可能性がある。
【0050】
触媒系IVにおける有機アルミニウムもしくは有機亜鉛化合物の量は好適にはMe2:Mgのモル比(Me2はAlまたはZnである)が50:1以下、より好適には前記比率が5:1以下、最も好適には前記比率が1:1以下であり、比率を50:1より高くすると重合活性が受け入れられないほど低くなる可能性がある。
【0051】
また、本明細書に記述しなかった他の触媒系を用いることも可能であるが、但し得られる重合体がカップリング剤によりカップリングされる末端基を有することを条件とする。
【0052】
触媒系I−IVの各々に関する反応を溶媒の存在下で実施する。適切な溶媒には、アルカン類、例えばn−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなど、シクロアルカン類、例えばシクロヘキサンなど、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンなど、カルボキシレート、アルコキサイドおよびジケトンなど、またはこのような溶媒の組み合わせが含まれる。好適には、触媒成分が使用する反応媒体に溶解し得るようにする。ヘキサン、
シクロヘキサンおよびトルエンが好適な溶媒であり、これらは単独または他の溶媒との組み合わせであってもよい。重合反応を加速させる目的、触媒の溶解性を向上させる目的などで、このような溶媒にまた活性水素原子を含まない極性有機化合物、例えば第三級アミンおよびエーテルなどを部分的に含有させることも可能である。
【0053】
反応温度は例えば0から150℃が便利である。反応温度はより好適には20から100℃であり、そしてこのような反応条件下では単量体1種または2種以上の蒸気圧により、高圧、例えば10気圧に及ぶ高圧を用いることも可能である。重合体の分子量は一般に用いる重合温度を高くすればするほど低くなりそしてその逆も当てはまる。また、前記触媒系は少なくとも部分的にはリビングであるので、分子量は重合時間を長くするにつれて高くなる。バッチ式または連続方法を用いることができる。
【0054】
1番目の重合工程の結果得られる重合体は、Mwが約20,000から約80,000、より好適には30,000−50,000、最も好適には約40,000を有する。この分子量が例えば約150,000の如く高いと、これを加工助剤として用いる時の効力が低くなる。また、この重合体はカップリング剤によりカップリングされる末端基を有する。
【0055】
この生成した重合体が有するジエン(例えばブタジエン)部分中のトランス結合含有量は、IR分光測光で測定しそしてMorero方法で計算した時、好適には80%を超える。このトランス結合含有量が80%未満であると、このような低分子量の重合体生成物は高い粘度を有する粘着性樹脂になってしまい、これは取り扱いが困難である。それが約80%を超えると、このような生成物は室温で可塑性を示し、ペレット、粉末などの形態で取り扱うのが容易になる。他方、トランス結合含有量があまりにも高いと、このような高分子量の樹脂材料が示す軟化温度があまりにも高くなり、比較的低い温度の時の成形性および加工性が望ましくなく低下するであろう。
【0056】
1番目の重合工程が完了に近づくか或は完了に到達した後にカップリング工程を実施する。重合混合物中に単量体がいくらか残存している可能性がある。重合が本質的に完了したことを確認する1つの方法は反応温度を検査する方法である。前記触媒を用いた反応は発熱反応である結果、一般に温度が上昇する。温度が最大温度に到達した後に降下し始めた時点で反応は本質的に終了しており、この段階でカップリング剤を添加することができる。
【0057】
適切なカップリング剤はSnのハロゲン化物、例えばSnCl4、SnBr4などであり、これらは単独または組み合わせであってもよい。また、重合体の分子量を高くしかつ後で脱結合反応を起こし得る他のカップリング剤を用いることも可能である。
【0058】
このようなカップリング剤は混合物に直接添加することができる。このカップリング剤が前記重合体の反応性末端基と反応すると錫−重合体の結合が生成し、重合体分子が4分子以下の数で塩素原子を置換する。カップリング後、Mwは約80,000から約300,000、より好適には約200,000に及ぶ可能性がある。このカップリング剤によって重合体が終結する(即ち、さらなる重合が停止する)ことから、重合体の分子量が意図した目的に適する分子量になるレベルにまで重合が進行するまではカップリング剤を添加しない。
【0059】
このカップリング剤と重合体をカップリングが起こるに充分な時間反応させる。この反応は実質的に如何なる温度でも起こるので、従って、加熱を行う必要はない。このカップリング反応は、温度を例えば約80℃にすると、約30分で本質的に完了する。
【0060】
このカップリング剤はリビング重合体が有する反応性末端基とは反応するが、混合物中に残存する単量体とは反応しない傾向がある。
【0061】
SnCl4または他のカップリング剤と重合体の好適な比率を実験で決定するのは容易である。好適な量はカップリングの度合が最大限になる量である。好適には、SnCl4の方を少なくする、即ち重合体に対するSnCl4のモル比を1未満にする。
【0062】
このようにして生成した結合重合体は、溶媒除去の目的で熱が用いられる通常の脱溶媒工程を用いて脱溶媒するのに充分な分子量を有する。強度をほとんどか或は全く有しない粘着性樹脂状塊が生成するのではなく、この結合重合体は、相対的にほとんど粘性を示さずかつ通常の脱溶媒装置を用いた処理を容易に受けるに充分なほどの弾性と強度(典型的な弾性重合体およびプラスチックがこれらのTgまたはTmより高い温度で示す弾性と強度に類似)を示すに充分な分子量を有する。例えば、その生成物は脱溶媒装置からフィルムまたは他の固体として取り出し可能である。
【0063】
適切な脱溶媒方法にはドラム乾燥機(熱い2本のロールミル)の使用または蒸気による脱溶媒方法が含まれる。また、他の種類の脱溶媒方法、例えば瞬間蒸発(flash)脱溶媒方法または押出し加工機乾燥機(extruder drier)などの使用も考えられる。脱溶媒は、温度を使用溶媒の沸点より高くすると容易に起こり、しばしば短時間、例えば約数秒で起こる。例えばヘキサンまたはヘキサンブレンド物の場合には約70から約160℃、より好適には約120から約150℃の温度が適切である。この結合重合体を好適には脱溶媒が迅速に起こるように薄膜として加熱する。
【0064】
この結合重合体と溶媒を含有する溶液の脱溶媒を行なう時に典型的に用いる温度そして用いる時間は、一般に、結果として重合体が有意な脱結合を起こすほどの温度および時間ではない。このように、脱溶媒を実施した後に脱結合工程を行うと、カップリング前に存在していた形態と本質的に同じ形態、即ち約80,000未満、より好適には約25,000から約50,000、最も好適には約40,000のMwを有する重合体に戻る。前記結合重合体に高温をかけることで脱結合工程を実施する。100から200℃の範囲の温度を用いることができ、好適な温度は約150から200℃である。200℃を超えると重合体が受け入れられないゲル化および架橋を起こすと言った問題が生じ得る。前記温度範囲の下限では脱結合が起こる速度が比較的遅くなり、例えば120℃では脱結合の完了に数時間要するが、温度をより高くすると脱結合の速度がはるかに速くなる。例えば、180℃にすると脱結合は2、3分以内に完了する。
【0065】
場合により、脱結合速度を速める目的で促進剤を脱結合段階中に添加することも可能である。これは特に脱結合で低い温度を用いる時に有用であり得る。適切なある種の促進剤は2,4−ビス(t−ブチル)p−クレゾールであり、これを重合体の約0.5重量%の量で添加することができる。他の適切な促進剤にはHClそしてこれを生成する化合物が含まれる。
【0066】
得られた重合体には安定剤および抗酸化剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリ−ノニルフェニルホスフェート、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジアルキルジフェニルアミン、N−アルキルジフェニルアミン、ビス−t−ブチルヒドリルトルエン(BHT)などを添加することができる。
【0067】
このようにして生成した脱結合重合体は多様な用途で用いるに適する。これが有するMwはカップリング前の重合体のそれと本質的に同じ、即ち約20,000−80,000、より好適には約22,000−50,000である。1つの用途はタイヤトレッドストック(tire tread stock)を生成させる時に加工助剤として用いる用途
である。この加工助剤はゴム系の1成分であり、このようなゴム系は高い分子量を有する(前記加工助剤のそれよりも高い分子量を有する)天然もしくは合成ゴムに加えて他の添加剤、例えば可塑剤、樹脂などを含有することができる。
【0068】
本発明の工程を実施する典型的な方法は下記の通りである。反応槽に溶媒およびジエン単量体1種または2種以上、例えばブタジエンなどを仕込む。この混合物を適切な出発温度に持って行く。最適な重合が起こるように、触媒を好適な順序に従って添加する。ランタン/有機マグネシウム触媒の場合には最初にLa触媒を添加し、次いで活性化剤である有機マグネシウムを添加する。このようにして反応混合物が生成すると発熱反応が起こり、この間に単量体1種または2種以上が重合体に変化する。この反応が本質的に完了した時点で、この混合物にカップリング剤を添加して、この混合物を好適にはカップリングが完了するまで撹拌する。次に、抗酸化剤、例えばBHTなどを添加することができる。次に、この重合混合物を脱溶媒して溶媒を前記結合重合体から除去することができる。この脱溶媒した重合体、即ち重合体セメント(cement)を加熱して、前記重合体を脱結合させる。
【0069】
前記重合体を加工する時の別の工程の一部として脱結合工程を実施することも可能である。例えば、加熱(脱結合)工程をペレット化機(pelletizing machine)で実施することも可能である。ペレット化では、その脱溶媒した重合体を加熱した後、押出し加工しそしてペレットに細断する。このような加熱工程は一般に前記重合体が脱結合するに充分である。必要ならば、前記ペレット化機を用いた加熱工程を、使用する温度が脱結合が起こるに充分な温度になるように調整することも可能である。別法として、前記脱結合重合体が加工助剤として組み込まれているゴム組成物を生成させる間に脱結合を実施することも可能である。この場合には、脱溶媒した結合重合体、好適にはフィルムの形態の重合体を粉砕機の中に通して、前記結合重合体を所望粒子サイズの粉末に粉砕することもできる。このような粉砕機は前記結合重合体を脱結合するに充分な熱を発生しない。従って、脱結合方法を次の加工工程で実施することもできる。例えば、脱溶媒した結合重合体をゴムコンパウンド製造中にゴム混合物の他の成分と共に混合している間に脱結合を起こさせることも可能である。前記混合物の他の成分には高い分子量を有する天然もしくは合成ゴム、可塑剤、樹脂などが含まれ得る。例えば、このような成分を標準的なバンバリー型ミキサーで加熱する。
【0070】
本発明の範囲を限定することを意図するものでないが、以下に示す実施例では、どのようにしてカップリング工程で重合体の分子量を高くするかを示す。
【実施例】
【0071】
(実施例)
22Lの反応槽に23.7重量%ブタジエン/ヘキサンブレンド物を6.08kg仕込んだ。このブレンド物を約40℃の温度に持って行った。次に、このブレンド物にランタントリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート]を10.5ミリモル加えた。その後、ジブチルマグネシウムを42ミリモルを加えた。この重合は発熱反応であったが、外部の冷却も加熱も行なわなかった。65分間でピーク温度である71℃に到達した。この重合を更に20分間進行させた後、この時点で反応槽から重合体セメントを3.04kg取り出し、これをイソプロパノールによりクエンチを行った(quenched)。
【0072】
前記反応槽に入っている残りの重合体セメントにSnCl4を約8.9ミリモル加えた。この時点での単量体から重合体への転化率は固体パーセントを基準にして93%であった。両方の重合体セメントに2,4−ビス(t−ブチル)−p−クレゾールを抗酸化剤が重合体当たり0.5重量%になるような量で加えた。
【0073】
基礎重合体(即ち、カップリングさせないで取り出した重合体)を空気乾燥し、そして結合重合体をドラム乾燥機を用いて乾燥した。
【0074】
基礎重合体および相当する結合重合体のサイズ排除クロマトグラフ(size exclusion chromatographs)を本図に示し、この図は、基礎重合体のMwは約27,000であるが結合重合体のそれは約100,000であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン含有重合体の製造方法であって、
a)触媒存在下の適切な溶媒中で、場合により他の1種以上の共役単量体の存在下にジエンを重合させて1番目の重量平均分子量を有する重合体を生成させ、
b)前記重合体をカップリング剤と反応させて前記1番目の重量平均分子量より高い2番目の重量平均分子量を有する結合重合体を生成させ、
c)前記結合重合体の脱溶媒を行い、そして
d)前記脱溶媒した結合重合体を脱結合させて前記結合重合体の重量平均分子量より低い重量平均分子量を有する脱結合ジエン含有重合体を生成させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記触媒が
(1)ランタン金属の塩もしくは錯体および有機マグネシウム化合物;
(2)ランタン金属の塩もしくは錯体、有機マグネシウム化合物、およびリチウムの有機化合物;
(3)有機マグネシウム化合物、リチウムの有機化合物、およびバリウムもしくはストロンチウムの有機化合物;
(4)有機マグネシウム化合物、リチウムの有機化合物、バリウムもしくはストロンチウムの有機化合物、および有機アルミニウムもしくは有機亜鉛化合物;または
(5)ランタン金属の塩もしくは錯体および有機リチウム錯体、
を含んで成る材料から調製されたか或は誘導された触媒系である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ジエン含有重合体がブタジエンに由来する単量体単位を含有する請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記カップリング剤がハロゲン化錫を含んで成る請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1番目の分子量が20,000から80,000でありそして前記2番目の分子量が80,000から300,000である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記脱溶媒工程をドラム乾燥機および蒸気脱溶媒装置の少なくとも1つ中で実施する請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記結合重合体を脱結合させる工程を前記結合重合体を加熱することにより実施する請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記加熱をペレット化機で実施する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記加熱を天然ゴムおよび合成ゴムの中の少なくとも1種を含有するゴム組成物の存在下で実施する請求項7記載の方法。
【請求項10】
更に、前記脱結合重合体を天然ゴムおよび合成ゴムの少なくとも1種を含有するゴム組成物に添加することも包含し、ここで、前記脱結合重合体を前記ゴム組成物用の共硬化性加工助剤として働かせる請求項1から9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−229434(P2012−229434A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155575(P2012−155575)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2002−510558(P2002−510558)の分割
【原出願日】平成13年6月4日(2001.6.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】