説明

低品位炭乾燥システム

【課題】低品位炭を乾燥させる熱源をヒートポンプで再加熱する際の熱交換に、低品位炭を乾燥させた際に発生する蒸気を利用する際、ヒートポンプの減圧器でのエネルギー損失を低減すること。
【解決手段】過熱蒸気Aの潜熱で間接的に低品位炭101を乾燥させる低品位炭乾燥装置102と、低品位炭101を乾燥させた過熱蒸気Aが凝縮した凝縮水Bを減圧する減圧器121、減圧した凝縮水Bと乾燥により低品位炭101から発生する発生蒸気104とを熱交換する熱交換器122、および熱交換後の蒸気を圧縮する圧縮機123を有するヒートポンプ120とを備え、減圧器121の回転軸121aと圧縮機123の回転軸123aとを同軸上で連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低品位炭乾燥装置により低品位炭を乾燥させた際に発生する蒸気を熱源として利用する低品位炭乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Combined Cycle:IGCC)システムは、石炭をガス化し、ガスタービンおよび蒸気タービンからなるコンバインドサイクル発電と組み合わせることにより、従来型の石炭火力に比べ、さらなる高効率化・高環境性を目指した発電システムである。この石炭ガス化複合発電システムは、資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであり、適用炭種を拡大することにより、さらにメリットが大きくなることが知られている。
【0003】
ところが、褐炭や亜瀝青炭などの低品位炭は、持ち込まれる水分が多く、この水分により発電効率が低下する問題がある。このため、低品位炭を乾燥させて水分を除去する必要がある。
【0004】
従来、例えば、特許文献1に記載の低品位炭乾燥システム(低品位炭を燃料とする発電方法)は、低品位炭から水分を除去する脱水改質プロセスが示されている。この脱水改質プロセスでは、蒸発分離した水分が蒸気の状態にあり、この蒸気をコンプレッサで圧縮することにより発生する蒸発潜熱を回収し、脱水改質プロセスで必要とされる熱源として再利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4153448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、脱水改質プロセスで発生した蒸気を、脱水改質プロセスで必要とされる熱源として利用する別の方法として、脱水改質プロセスで必要とされる熱源をヒートポンプで再過熱する際の熱交換に、脱水改質プロセスで発生した蒸気を利用することも考えられる。
【0007】
しかし、ヒートポンプを適用した場合、脱水改質プロセスで発生した蒸気で熱交換する前に、脱水改質プロセスで低品位炭から水分を除去する際に使用された熱源を減圧器により減圧するが、当該減圧器における機械的なエネルギー損失が生じることから、このエネルギー損失を低減して効率を向上することが切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、低品位炭を乾燥させる熱源をヒートポンプで再加熱する際の熱交換に、低品位炭を乾燥させた際に発生する蒸気を利用する際、ヒートポンプの減圧器でのエネルギー損失を低減することのできる低品位炭乾燥システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の低品位炭乾燥システムは、過熱蒸気の潜熱で間接的に低品位炭を乾燥させる低品位炭乾燥装置と、前記低品位炭を乾燥させた前記過熱蒸気が凝縮した凝縮水を減圧する減圧器、減圧した前記凝縮水と乾燥により前記低品位炭から発生する発生蒸気とを熱交換する熱交換器、および熱交換後の蒸気を圧縮する圧縮機を有するヒートポンプと、を備え、前記減圧器の回転軸と前記圧縮機の回転軸とを同軸上で連結したことを特徴とする。
【0010】
この低品位炭乾燥システムによれば、ヒートポンプの減圧器と圧縮機とを同軸上で連結したことにより、減圧器の回転軸の回転に伴って圧縮機の運転が補助されるので、減圧器によるエネルギー損失を低減でき、ヒートポンプの効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低品位炭を乾燥させる熱源をヒートポンプで再加熱する際の熱交換に、低品位炭を乾燥させた際に発生する蒸気を利用する際、ヒートポンプの減圧器でのエネルギー損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、低品位炭乾燥システムの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す低品位炭乾燥システムを適用した石炭ガス化複合発電システムの一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る低品位炭乾燥システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
本実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、低品位炭乾燥システムの一例を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、低品位炭乾燥システム100は、水分含量が高い褐炭等の低品位炭101を乾燥する低品位炭乾燥装置102と、低品位炭乾燥装置102内に設けられ、管状の内部に過熱蒸気(例えば150℃蒸気)Aを供給して低品位炭101中の水分を除去する伝熱部材(加熱手段)103と、前記伝熱部材103によって低品位炭101が乾燥される際に発生する発生蒸気104を低品位炭乾燥装置102の外部に排出する発生蒸気ラインLと、前記発生蒸気ラインLに介装され、発生蒸気104中の粉塵を除去する集塵装置105と、前記集塵装置105から粉塵が除去された発生蒸気104の一部を分岐し、流動化蒸気107として低品位炭乾燥装置102内に供給する分岐ラインLと、前記低品位炭乾燥装置102から抜き出された乾燥炭108を冷却して製品炭109とする冷却器110とを備えるものである。
【0016】
低品位炭乾燥システム100において、低品位炭101は、図示しない供給手段により低品位炭乾燥装置102内に投入され、低品位炭乾燥装置102内に別に導入される流動化蒸気107により流動されて流動層111を形成する。上述した伝熱部材103は、この流動層111内に配置されている。伝熱部材103内には、150℃の過熱蒸気Aが供給され、その高温の過熱蒸気Aの潜熱を利用して低品位炭101を間接的に乾燥させるようにしている。乾燥に利用された過熱蒸気Aは、例えば150℃の凝縮水Bとして低品位炭乾燥装置102の外部に排出されている。
【0017】
すなわち、加熱手段である伝熱部材103内面では、過熱蒸気Aが凝縮して液体(水分)になるので、この際に放熱される凝縮潜熱を、低品位炭101の乾燥の加熱に有効利用している。なお、高温の過熱蒸気A以外としては、相変化を伴う熱媒であれば何れでも良く、例えばフロンやペンタンやアンモニア等を例示することができる。
【0018】
伝熱部材103によって低品位炭101が乾燥される際に発生する発生蒸気104は、低品位炭乾燥装置102内において、流動層111の上部空間に形成されるフリーボード部Fから発生蒸気ラインLにより低品位炭乾燥装置102の外部に排出される。この発生蒸気104は、低品位炭101が乾燥し微粉化したものが含まれているので、サイクロンや電気集塵機等の集塵装置105により集塵して固体成分115として分離する。この固体成分115は、低品位炭乾燥装置102から抜き出された乾燥炭108に混合し、冷却器110で冷却し、製品炭109としている。この製品炭109は、例えばボイラ、ガス化炉等の原料として利用に供される。
【0019】
一方、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104は、例えば105〜110℃の蒸気として低品位炭乾燥システム100の外部に排出されている。また、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104の一部は、分岐ラインLに介装された循環ファン114により低品位炭乾燥装置102内に送られて、低品位炭101の流動層111を流動させる流動化蒸気107として利用される。なお、流動層111を流動化させる流動化媒体としては、発生蒸気104の一部を再利用しているが、これに限定されず、例えば窒素、二酸化炭素またはこれらのガスを含む低酸素濃度の空気を用いてもよい。
【0020】
なお、上述した低品位炭乾燥装置102により乾燥する被乾燥物として低品位炭101を例示したが、水分含量の高いものであれば低品位炭101以外の被乾燥物を乾燥対象としてもよい。
【0021】
上述した低品位炭乾燥装置102で乾燥した製品炭109を用い、石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Combined Cycle:IGCC)システムに適用した一例を説明する。図2は、図1に示す低品位炭乾燥システムを適用した石炭ガス化複合発電システムの一例を示す概略図である。
【0022】
図2に示すように、石炭ガス化複合発電システム200は、石炭(低品位炭乾燥システム100で乾燥された製品炭109)がミル210粉砕された微粉炭201aを処理してガス化ガス202に変換する石炭ガス化炉203と、前記ガス化ガス202を燃料として運転されるガスタービン(GT)204と、前記ガスタービン204からのタービン排ガス205を導入する排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator:HRSG)206で生成した蒸気207により運転される蒸気タービン(ST)208と、前記ガスタービン204および/または前記蒸気タービン208と連結された発電機(G)209とを備えるものである。
【0023】
この石炭ガス化複合発電システム200は、ミル210で粉砕された微粉炭201aを石炭ガス化炉203でガス化し、生成ガスであるガス化ガス202を得る。このガス化ガス202は、サイクロン211およびガス精製装置212で除塵およびガス精製された後、発電手段であるガスタービン204の燃焼器213に供給され、ここで燃焼して高温高圧の燃焼ガス214を生成する。そして、この燃焼ガス214によってガスタービン204を駆動する。このガスタービン204は、発電機209と連結されており、ガスタービン204が駆動することによって発電機209が電力を発生する。ガスタービン204を駆動した後のタービン排ガス205は、まだ約500〜600℃の温度を持っているため、排熱回収ボイラ(HRSG)206へ送られ、ここで熱エネルギーが回収される。この排熱回収ボイラ(HRSG)206では、タービン排ガス205の熱エネルギーによって蒸気207が生成され、この蒸気207によって蒸気タービン208を駆動する。この排熱回収ボイラ(HRSG)206で熱エネルギーが回収された排ガス215は、ガス浄化装置216で排ガス215中のNOxおよびSOx分が除去された後、煙突217を介して大気中へ放出される。なお、図中、符号218は復水器、219は空気、220は圧縮機、221は空気を窒素(N)と酸素(O)とに分離する空気分離装置(ASU)を各々図示する。
【0024】
この石炭ガス化複合発電システム200によれば、高い水分を有する低品位炭101を用いてガス化する場合においても、効率的な低品位炭乾燥装置102により低品位炭101を乾燥しているので、ガス化効率が向上し、長期間に亙って安定して発電を行うことができる。
【0025】
また、石炭ガス化複合発電システム200においては、ガスタービンおよび蒸気タービンの組み合わせによって、従来40%程度であった石炭焚発電プラントの効率を約46%まで向上させることができる。このプラント効率の向上によって、COの排出量は従来の石炭焚ボイラに対して約13%削減できる。
【0026】
なお、本実施の形態に係る低品位炭乾燥システム100で乾燥した製品炭109を用いた発電システムとしては、上述した石炭ガス化複合発電システム200に限らない。例えば、図には明示しないが、低品位炭乾燥システム100で乾燥した製品炭109をボイラ火炉に供給し、当該ボイラ火炉で発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電機により出力を得る褐炭炊ボイラによる発電システムであってもよい。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る低品位炭乾燥システムの概略図である。図3に示すように、本実施の形態の低品位炭乾燥システム100は、ヒートポンプ120を備えている。
【0028】
ヒートポンプ120は、減圧器121、熱交換器122、および圧縮機123を備えている。
【0029】
減圧器121は、低品位炭乾燥装置102における伝熱部材103の凝縮水Bを排出する側のラインに接続され、低品位炭101を乾燥させた過熱蒸気Aが凝縮した凝縮水(例えば150℃凝縮水)Bを減圧して約80℃に降温する。
【0030】
熱交換器122は、減圧器121により減圧された凝縮水Bが供給される管状の伝熱部材122aと、発生蒸気ラインLに繋がり発生蒸気(約105〜110℃蒸気)104が供給される管状の伝熱部材122bとが隣接され、降温した凝縮水Bと発生蒸気104とを間接的に熱交換させ、凝縮水Bを蒸発させる。
【0031】
圧縮機123は、熱交換器122を経た蒸気を昇圧することで高温高圧の過熱蒸気(例えば150℃蒸気)Aとするものである。
【0032】
そして、この過熱蒸気Aは、低品位炭乾燥装置102の伝熱部材103に供給され低品位炭101の乾燥に利用される。
【0033】
このヒートポンプ120において、減圧器121は、回転軸121aの回転により凝縮水Bを減圧するもので、圧縮機123は、回転軸123aの回転により凝縮水Bを圧縮するものである。そして、減圧器121の回転軸121aと、圧縮機123の回転軸123aとが同軸上で連結されている。すなわち、減圧器121の回転軸121aと、圧縮機123の回転軸123aとは、回転の軸心が一致して構成されている。
【0034】
このように、本実施の形態の低品位炭乾燥システム100は、過熱蒸気Aの潜熱で間接的に低品位炭101を乾燥させる低品位炭乾燥装置102と、低品位炭101を乾燥させた過熱蒸気Aが凝縮した凝縮水Bを減圧する減圧器121、減圧した凝縮水Bと乾燥により低品位炭から発生する発生蒸気104とを熱交換する熱交換器122、および熱交換後の蒸気を圧縮する圧縮機123を有するヒートポンプ120とを備えており、減圧器121の回転軸121aと圧縮機123の回転軸123aとを同軸上で連結している。
【0035】
この低品位炭乾燥システム100によれば、ヒートポンプ120の減圧器121と圧縮機123とを同軸上で連結したことにより、減圧器121の回転軸123aの回転に伴って圧縮機123の運転が補助されるので、減圧器121による機械的なエネルギー損失を低減でき、ヒートポンプ120の効率を向上することが可能になる。
【0036】
なお、本実施の形態の低品位炭乾燥システム100では、低品位炭乾燥装置102は、伝熱部材103として管状のもので説明したが、過熱蒸気Aが内部に供給されるものであればよく、例えば板状のものであってもよい。
【0037】
また、本実施の形態の低品位炭乾燥システム100では、低品位炭乾燥装置102は、流動化蒸気107が低品位炭乾燥装置102内に導入されて低品位炭101を流動させる形態の、いわゆる流動層乾燥装置を一例として説明したが、これに限らない。例えば、スクリューフィーダを用いて低品位炭101を攪拌させつつ搬送することで低品位炭101を流動させる形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る低品位炭乾燥システムは、低品位炭を乾燥させる熱源をヒートポンプで再加熱する際の熱交換に、低品位炭を乾燥させた際に発生する蒸気を利用する際、ヒートポンプの減圧器でのエネルギー損失を低減することに適している。
【符号の説明】
【0039】
100 低品位炭乾燥システム
101 低品位炭
102 低品位炭乾燥装置
103 伝熱部材
104 発生蒸気
105 集塵装置
107 流動化蒸気
108 乾燥炭
109 製品炭
110 冷却器
111 流動層
114 循環ファン
115 固体成分
120 ヒートポンプ
121 減圧器
121a 回転軸
122 熱交換器
122a 伝熱部材
122b 伝熱部材
123 圧縮機
123a 回転軸
A 過熱蒸気
B 凝縮水
F フリーボード部
発生蒸気ライン
分岐ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気の潜熱で間接的に低品位炭を乾燥させる低品位炭乾燥装置と、
前記低品位炭を乾燥させた前記過熱蒸気が凝縮した凝縮水を減圧する減圧器、減圧した前記凝縮水と乾燥により前記低品位炭から発生する発生蒸気とを熱交換する熱交換器、および熱交換後の蒸気を圧縮する圧縮機を有するヒートポンプと、
を備え、
前記減圧器の回転軸と前記圧縮機の回転軸とを同軸上で連結したことを特徴とする低品位炭乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214810(P2011−214810A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86023(P2010−86023)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】