説明

低温流体用貯蔵タンク

【課題】低温流体貯蔵槽内における低温流体の気化(ボイルオフ)を低減させること。
【解決手段】低温の固液二相流体が貯蔵される低温流体貯蔵槽82と、この低温流体貯蔵槽82が収容される真空断熱槽81とを備えた低温流体用貯蔵タンク80であって、前記低温流体貯蔵槽82内の空間を、その側面に沿って分離する仕切板83が、前記低温流体貯蔵槽82の内面に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温の固液二相流体を貯蔵しておくための低温流体用貯蔵タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低温の流体(例えば、液体水素や液体窒素等)を貯蔵しておく低温流体用貯蔵タンクとしては、その内部に低温流体貯蔵槽を備えるものが知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ダブリュー・ペシュカ(W PESCHKA)著、「ザ・フューチャー・クリョフューエル・イン・インターナル・コンバッション・エンジンズ(The future cryofuel in internal combustion engines)」、(英国)、イント・ジェイ・ハイドロジェン・エナジー(Int.J.Hydrogen Energy)、Vol23、No.1、p.27−43、1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような低温流体貯蔵槽の内部には、液体状態の低温流体(あるいは液体状態の低温流体と気体状態の低温流体とが混じり合ったもの)が貯蔵されるようになっている。このとき、低温流体貯蔵槽内における低温流体の温度は、例えば液体水素の場合、約20.3Kであり、低温流体が気化(ボイルオフ)してしまう割合は、一日当たり約3〜5%となって、低温流体の蒸発量をこれ以上に低く抑えるのは困難であった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、低温流体貯蔵槽内における低温流体の気化(ボイルオフ)を低減させることができる低温流体用貯蔵タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクは、低温の固液二相流体が貯蔵される低温流体貯蔵槽と、この低温流体貯蔵槽が収容される真空断熱槽とを備えた低温流体用貯蔵タンクであって、前記低温流体貯蔵槽内の空間を、その側面に沿って分離する仕切板が、前記低温流体貯蔵槽の内面に取り付けられている。
【0007】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクによれば、例えば、図8に示すように、気化したガスが断熱材の役割を果たし、低温流体貯蔵槽の側面から液相への熱の侵入が阻止(防止)され、低温流体貯蔵槽の底面からのみ熱が侵入することとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク外から侵入する侵入熱は、固相に入り、固相の融解熱により吸収され、液相への入熱が防止されることとなる。また、液相よりも温度の低い固相は、液相を冷却して、液相の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽内に貯蔵された液相の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0008】
上記低温流体用貯蔵タンクにおいて、前記仕切板が、熱伝導率の小さい断熱材を材料として作製されたものであるとさらに好適である。
【0009】
このような低温流体用貯蔵タンクによれば、例えば、図9に示すように、仕切板から液相への熱の侵入が阻止(防止)され、低温流体貯蔵槽内に貯蔵された液相の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなるので、液相が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【0010】
上記低温流体用貯蔵タンクにおいて、前記低温流体貯蔵槽の内面に、高熱伝導部材が取り付けられているとさらに好適である。
【0011】
このような低温流体用貯蔵タンクによれば、例えば、図10に示すように、高熱伝導部材に伝達された侵入熱は、高熱伝導部材によって低温流体貯蔵槽の底部にスムーズに導かれるとともに、低温流体貯蔵槽の底部に一様(均一)に分散(拡散)されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク外から侵入する侵入熱は、固相に一様に入り、固相の融解熱により吸収され、液相への入熱がさらに防止されることとなる。また、液相よりも温度の低い固相は、液相を冷却して、液相の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽内に貯蔵された液相の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなり、これにより液相が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温流体貯蔵槽内における低温流体の気化(ボイルオフ)を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、(a)は長手方向に沿って切った断面図、(b)は(a)のI−I矢視断面図である。
【図2】本発明の第2参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
【図3】本発明の第3参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
【図4】本発明の第4参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、(a)は長手方向に沿って切った断面図、(b)は(a)のIV−IV矢視断面図である。
【図5】本発明の第5参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
【図6】本発明の第6参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【図7】本発明の第7参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【図11】本発明の第8参考実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの低温流体貯蔵槽だけを取り出した図であって、その内部が見えるように描いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第1参考実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、(a)は長手方向に沿って切った断面図、(b)は(a)のI−I矢視断面図である。
【0015】
図1に示すように、低温流体用貯蔵タンク10は、真空断熱槽11と、低温流体貯蔵槽12と、分離手段13とを有するものである。
真空断熱槽11は、その内部が真空とされ、かつ、その内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が取り付け(貼り付け)られた容器であり、この真空断熱槽11内には、低温流体貯蔵槽12が収容されている。
低温流体貯蔵槽12は、その内部に低温(例えば、16K)の固液二相流体(例えば、液体水素とスラッシュ水素(スラッシュ状の流体:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)と混じり合ったもの)を貯蔵するものであり、この低温流体貯蔵層12内には、分離手段13が収容されている。
【0016】
分離手段13は、低温流体貯蔵槽12内の空間を内外に二分し、かつ、低温流体貯蔵槽12内に貯蔵された固液二相流体を、液相(例えば、液体水素)14と固相(例えば、固体水素)15とに分離する、例えば、金属製(ステンレスやアルミニウム合金等)のメッシュ部材である。そして、分離手段13の外側、すなわち、分離手段13と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内には、固相15が貯蔵され、分離手段13の内側、すなわち、低温流体用貯蔵タンク10の中心部(より詳しくは、低温流体貯蔵槽12の中心部)に形成された空間内には、液相14が貯蔵されるようになっている。
なお、分離手段13は、液相14は通すが固相15は通さないように構成されている。したがって、流体供給源(図示せず)から供給口16を介して分離手段13と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内に供給された固液二相流体の液相14、および分離手段13と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内において固相15から液相14に変化したものは、分離手段13を通って分離手段13の外側から内側に移動することとなる。
【0017】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク10によれば、低温流体貯蔵槽12内において固相15は液相14を取り囲むように貯蔵されていることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク10外から侵入する侵入熱は、固相15に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽12内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0018】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第2参考実施形態を図2に基づいて説明する。
図2は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク20は、分離手段13の代わりに、分離手段21および輻射シールド板22を備えているという点で上述した第1参考実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1参考実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1参考実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0019】
分離手段21は、低温流体貯蔵槽12内の空間を左右に二分し、かつ、低温流体貯蔵槽12内に貯蔵された固液二相流体を、液相(例えば、液体水素)14と固相(例えば、固体水素)15とに分離する、例えば、金属製(ステンレスやアルミニウム合金等)のメッシュ部材である。そして、分離手段13の右側(一側)、すなわち、分離手段13の右側と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内には、固相15が貯蔵され、分離手段13の左側(他側)、すなわち、分離手段13の左側と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内には、液相14が貯蔵されるようになっている。
なお、分離手段13は、液相14は通すが固相15は通さないように構成されている。したがって、流体供給源(図示せず)から供給口16を介して分離手段13の右側と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内に供給された固液二相流体の液相14、および分離手段13の右側と低温流体貯蔵槽12との間に形成された空間内において固相15から液相14に変化したものは、分離手段21を通って分離手段13の右側から左側に移動することとなる。
【0020】
輻射シールド板22は、例えば、アルミニウムや銅等からなる板状の部材であり、低温流体貯蔵槽12の内面(本実施形態では天井面)に取り付け(貼り付け)られている。また、この輻射シールド板22には、その一端部が固相15に漬かり、その他端部が当該輻射シールド板22と接続されて、輻射シールド板22と固相15とを熱的に結合(接続)する、例えば、アルミニウムや銅等からなる熱伝導部材23が設けられている。
【0021】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク20によれば、輻射による侵入熱は、輻射シールド板22および熱伝導部材23を介して固相15に伝達され、固相15の融解熱により吸収されて、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽12内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0022】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第3参考実施形態を図3に基づいて説明する。
図3は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク30は、輻射シールド板22の代わりに輻射シールド板31を備えているという点で上述した第2参考実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第2参考実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第2参考実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0023】
輻射シールド板31は、例えば、アルミニウムや銅等からなる板状の部材であり、低温流体貯蔵槽12の内面(本実施形態では天井面および一側面)に貼り付け(取り付け)られている。また、この輻射シールド板22の一端部は、液相14に漬かるように構成されている。
【0024】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク30によれば、固相15と液相14とが、熱伝導部材23および輻射シールド板31を介して熱的に結合(接続)されており、液相14が固相15によりさらに冷却されることとなり、液相14の温度がさらに低下させられることとなる。また、輻射による侵入熱は、輻射シールド板22および熱伝導部材23を介して固相15に伝達され、固相15の融解熱により吸収されて、液相14への入熱が防止されることとなる。すなわち、低温流体貯蔵槽12内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【0025】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第4参考実施形態を図4に基づいて説明する。
図4は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、(a)は長手方向に沿って切った断面図、(b)は(a)のIV−IV矢視断面図である。
【0026】
図4に示すように、低温流体用貯蔵タンク40は、真空断熱槽41と、低温流体貯蔵槽42と、中間部材43とを有するものである。
真空断熱槽41は、その内部が真空とされ、かつ、その内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が取り付け(貼り付け)容器であり、この真空断熱槽41内には、低温流体貯蔵槽42および中間部材43が収容されている。
低温流体貯蔵槽42は、その内部に低温(例えば、16K)の固液二相流体(例えば、液体水素とスラッシュ水素(スラッシュ状の流体:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)と混じり合ったもの)を貯蔵するものである。
【0027】
中間部材43は、低温流体貯蔵槽42の外径よりも大きな内径を有し、かつ、その両端がそれぞれ開口端とされた中空円筒状の部材であり、この中間部材43内には、低温流体貯蔵槽42が収容されている。中間部材43と低温流体貯蔵槽42とは、中間部材43の内周側の底面と、低温流体貯蔵槽42の外周側の底面とが、線接触となるように(すなわち、中間部材43の内周側の底面と、低温流体貯蔵槽42の外周側の底面との接合部が、一本の線(本実施形態では直線)を形成するように)接合(結合)されている。また、中間部材43と低温流体貯蔵槽42とは、中間部材43の内周側の上面(天井面)と、低温流体貯蔵槽42の外周側の上面(天井面)とを連結(結合)する複数本(本実施形態では2本)の固定部材(例えば、断面視円形状を有する棒状の部材)44を介して互いに固定されている。そして、これら中間部材43および低温流体貯蔵槽42は、中間部材43の外周側の側面と、真空断熱槽41の内周側の上面(天井面)とを連結(結合)する複数本(本実施形態では4本)の支持部材(例えば、断面視円形状を有する棒状の部材)45を介して真空断熱槽41の内部に取り付けられている。
【0028】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク40によれば、侵入熱は、支持部材45、中間部材43、および中間部材43と低温流体貯蔵槽42との接合部を介して低温流体貯蔵槽42の底部に伝達されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク40外から侵入する侵入熱は、固相15に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽42内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0029】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第5参考実施形態を図5に基づいて説明する。
図5は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク50は、中間部材43の内周側の底面と、低温流体貯蔵槽42の外周側の底面とが、例えば、銅等の高熱伝導部材51を介して接合(結合)されているという点で上述した第4参考実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第4参考実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第4参考実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0030】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク50によれば、支持部材45および中間部材43を介して高熱伝導部材51に伝達された侵入熱は、高熱伝導部材51によって低温流体貯蔵槽42の底部に一様(均一)に分散(拡散)されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク50外から侵入する侵入熱は、固相15に一様に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱がさらに防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽42内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【0031】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第6参考実施形態を図6に基づいて説明する。
図6は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【0032】
図6に示すように、低温流体用貯蔵タンク60は、真空断熱槽61と、低温流体貯蔵槽62とを有するものである。
真空断熱槽61は、その内部が真空とされ、かつ、その内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が取り付け(貼り付け)られた容器であり、この真空断熱槽61内には、低温流体貯蔵槽62が収容されている。
低温流体貯蔵槽62は、その内部に低温(例えば、16K)の固液二相流体(例えば、液体水素とスラッシュ水素(スラッシュ状の流体:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)と混じり合ったもの)を貯蔵するものである。また、この低温流体貯蔵槽62の内面のうち、底面を除いた上面(天井面)および側面には、熱伝導率の小さい断熱材63が取り付け(貼り付け)られている。
【0033】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク60によれば、侵入熱は、低温流体貯蔵槽62の底面からのみ侵入し、低温流体貯蔵槽62の上面および側面からの侵入が阻止(防止)されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク60外から侵入する侵入熱は、固相15に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽62内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0034】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第7参考実施形態を図7に基づいて説明する。
図7は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク70は、低温流体貯蔵槽62の外面全体に、例えば、銅等の高熱伝導部材71が取り付け(貼り付け)られているという点で上述した第6参考実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第6参考実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第6参考実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0035】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク70によれば、高熱伝導部材71に伝達された侵入熱は、高熱伝導部材71によって低温流体貯蔵槽62の底部にスムーズに導かれるとともに、低温流体貯蔵槽62の底部に一様(均一)に分散(拡散)されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク70外から侵入する侵入熱は、固相15に一様に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱がさらに防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽62内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【0036】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第1実施形態を図8に基づいて説明する。
図8は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向と直交する方向に沿って切った断面図である。
【0037】
図8に示すように、低温流体用貯蔵タンク80は、真空断熱槽81と、低温流体貯蔵槽82とを有するものである。
真空断熱槽81は、その内部が真空とされ、かつ、その内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が取り付け(貼り付け)られた容器であり、この真空断熱槽81内には、低温流体貯蔵槽82が収容されている。
低温流体貯蔵槽82は、その内部に低温(例えば、16K)の固液二相流体(例えば、液体水素とスラッシュ水素(スラッシュ状の流体:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)と混じり合ったもの)を貯蔵するものである。また、この低温流体貯蔵槽82の内面には、低温流体貯蔵槽82内の空間をその側面に沿って分離する、金属製の仕切板83が取り付けられており、低温流体貯蔵槽82の内面と仕切板83とによって形成された空間内には、気化したガス(例えば、水素ガス)84が溜まり込むようになっている。
【0038】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク80によれば、気化したガスが断熱材の役割を果たし、低温流体貯蔵槽82の側面から液相14への熱の侵入が阻止(防止)され、低温流体貯蔵槽82の底面からのみ熱が侵入することとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク80外から侵入する侵入熱は、固相15に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽82内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
【0039】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第2実施形態を図9に基づいて説明する。
図9は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク90は、仕切板83の代わりに、熱伝導率の小さい断熱材を材料として作製された仕切板92が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0040】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク90によれば、仕切板92から液相14への熱の侵入が阻止(防止)され、低温流体貯蔵槽82内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなるので、液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
なお、本実施形態において、仕切板92の代わりに、第1実施形態のところで説明した仕切板83の表面(液相14および固相15と接する側の面)全体に、熱伝導率の小さい断熱材を取り付け(貼り付け)たものを採用(適用)することもできる。
【0041】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第3実施形態を図10に基づいて説明する。
図10は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの概略構成図であって、長手方向に沿って切った断面図である。
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク100は、低温流体貯蔵槽82の内面のうち、上面(天井面)を除いた底面および側面に、例えば、銅等の高熱伝導部材101が取り付け(貼り付け)られているという点で上述した第2実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第2実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0042】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク100によれば、高熱伝導部材101に伝達された侵入熱は、高熱伝導部材101によって低温流体貯蔵槽82の底部にスムーズに導かれるとともに、低温流体貯蔵槽82の底部に一様(均一)に分散(拡散)されることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク100外から侵入する侵入熱は、固相15に一様に入り、固相15の融解熱により吸収され、液相14への入熱がさらに防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽82内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)がさらに低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合をさらに低減させることができる。
【0043】
本発明に係る低温流体用貯蔵タンクの第8参考実施形態を図11に基づいて説明する。
図11は本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンクの低温流体貯蔵槽だけを取り出した図であって、その内部が見えるように描いた斜視図である。
【0044】
図11に示すように、低温流体用貯蔵タンク110は、図示しない真空断熱槽と、低温流体貯蔵槽111とを有するものである。
真空断熱槽は、その内部が真空とされ、かつ、その内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が取り付け(貼り付け)られた容器であり、この真空断熱槽内には、低温流体貯蔵槽111が収容されている。
低温流体貯蔵槽111は、その内部に低温(例えば、16K)の固液二相流体(例えば、液体水素とスラッシュ水素(スラッシュ状の流体:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)と混じり合ったもの)を貯蔵するものである。また、この低温流体貯蔵槽111の高さ方向における略中間部には、低温流体貯蔵槽111内の空間を上下に二分し、かつ、熱伝導率の小さい断熱材を材料として作製された仕切板112が取り付けられている。そして、この仕切板112の周縁部には、周方向に沿って複数個(本実施形態では12個)の連通部113(本実施形態では周縁から半径方向内側に向かうとともに周方向に沿って切り欠かれた切欠)が形成されている。
なお、連通部113の大きさは、図示しない供給口から供給された固液二相流体が、連通部113を通って低温流体貯蔵槽111の底部に溜まり込むのに十分な大きさとなっている。
【0045】
本実施形態に係る低温流体用貯蔵タンク110によれば、低温流体貯蔵槽111内において気化したガス(例えば、水素ガス)は、連通部113を通り、低温流体貯蔵槽111の内壁面に沿って上昇していくこととなり、低温流体貯蔵槽111の壁面の温度が低下させられることとなる。したがって、低温流体用貯蔵タンク110外から侵入する侵入熱は、気化したガスによって冷却された(冷却されつづけている)低温流体貯蔵槽111の壁面により吸収され、液相14への入熱が防止されることとなる。また、液相14よりも温度の低い固相15は、液相14を冷却して、液相14の温度を低下させる。そして、温度が低下させられた液相14は蒸発しにくくなる。すなわち、低温流体貯蔵槽111内に貯蔵された液相14の気化(ボイルオフ)が低減させられることとなり、これにより液相14が気化(ボイルオフ)してしまう割合を、例えば、一日当たり1%以下にすることができる。
なお、連通部103は、本実施形態において説明したような切欠に限定されるものではなく、板厚方向に貫通する丸孔とすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10 低温流体用貯蔵タンク
11 真空断熱槽
12 低温流体貯蔵槽
13 分離手段
14 液相
15 固相
20 低温流体用貯蔵タンク
21 分離手段
22 輻射シールド板
23 熱伝導部材
30 低温流体用貯蔵タンク
31 輻射シールド板
40 低温流体用貯蔵タンク
41 真空断熱槽
42 低温流体貯蔵槽
43 中間部材
45 支持部材
50 低温流体用貯蔵タンク
51 高熱伝導部材
60 低温流体用貯蔵タンク
61 真空断熱槽
62 低温流体貯蔵槽
63 断熱材
70 低温流体用貯蔵タンク
71 高熱伝導部材
80 低温流体用貯蔵タンク
81 真空断熱槽
82 低温流体貯蔵槽
83 仕切板
90 低温流体用貯蔵タンク
91 仕切板
100 低温流体用貯蔵タンク
101 高熱伝導部材
110 低温流体用貯蔵タンク
111 低温流体貯蔵槽
112 仕切板
113 連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温の固液二相流体が貯蔵される低温流体貯蔵槽と、この低温流体貯蔵槽が収容される真空断熱槽とを備えた低温流体用貯蔵タンクであって、
前記低温流体貯蔵槽内の空間を、その側面に沿って分離する仕切板が、前記低温流体貯蔵槽の内面に取り付けられていることを特徴とする低温流体用貯蔵タンク。
【請求項2】
前記仕切板が、熱伝導率の小さい断熱材を材料として作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の低温流体用貯蔵タンク。
【請求項3】
前記低温流体貯蔵槽の内面に、高熱伝導部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の低温流体用貯蔵タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−57802(P2012−57802A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284210(P2011−284210)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2007−111747(P2007−111747)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年7月20日付け 平成17年度、平成18年度、平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素安全利用等基盤技術開発:水素に関する共通基盤技術開発:ボイルオフガス低減を目的としたスラッシュ水素製造/供給装置の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】