説明

低温焼成用の誘電体磁器組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサ

【課題】低温焼成が可能で高誘電率を示しながらも温度安定性が優秀な、誘電体磁器組成物およびこれを用いた積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】本発明による誘電体磁器組成物は、主成分として(Ba1−xCa)TiOと、副成分としてMgCO、RE(REはY、Dy及びHoから成る群から1種以上選択される希土類酸化物)、MO(MはBa及びCaのうち一つの元素)、MnO、V、Cr及び焼結助剤であるSiOを含む。上記誘電体磁器組成物の組成式はa(Ba1−xCa)TiO−bMgCO−cRE-dMO−eMnO−fSiO−gV−hCrと表現する際、モル比でa=100、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦3.0、0.1≦d≦3.0、0.05≦e≦1.0、0.2≦f≦3.0、0.01≦g≦1.0、0.01≦h≦1.0であり、0.005≦x≦0.15、0.995≦m≦1.03を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘電体磁器組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサに関するものとして、より詳細には1200℃以下の低温焼成が可能で温度安定性が優秀でありながらも高誘電率を具現することが出来る、低温焼成用の誘電体磁器組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気及び電子製品の小型化、軽量化、高性能化が急速に進行されるにつれ、これに使用される積層セラミックコンデンサも次第に小型化及び高容量化されつつある。このような小型化及び高容量化の要求を満たすため積層セラミックコンデンサに使用される誘電体層は漸次薄層化されつつあり、最近3μm以下の厚さを有する誘電体層が必要とされている。誘電体層を薄層化するためには、焼結時の粒成長が抑制され得る誘電体パウダーと副成分添加剤が必要となる。また、焼結体の粒子大きさに比べその誘電率が高いほど誘電体層を薄層化するに有利である。
【0003】
また、薄層の誘電体を使用して積層セラミックコンデンサを具現するためには、1200℃以下の低温で焼成が可能な誘電体組成物を使用すべきである。これは1300℃以上の高温で誘電体組成物を焼成する場合、内部電極の固まり現象が生じてセラミックコンデンサの容量が低下されショート(短絡)率が増加されるからである。高容量のための誘電体の薄層化、高積層化は高温での容量変化(容量の温度安定性)にも深刻な影響を与え得る。
【0004】
特許文献1には、X5R特性及びX7R特性を満足する積層セラミックコンデンサ用の誘電体磁器組成物を開示している。上記公報に開示された誘電体磁器組成物は主成分のBaTiOとCr等の副成分を含む。この誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサは、直流電界下での容量の経時変化が小さく絶縁抵抗の加速寿命が長いと言う長所を有している。しかし、焼成温度が1270℃にも至るため3μm以下の超薄層の誘電体層を具備する積層セラミックコンデンサを具現するには限界がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−311828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決するためのものとして、その目的は1200℃以下の低温焼成が可能で、高誘電率を具現しながらも誘電率の温度安定性が優秀で、3μm以下の厚さの誘電体層形成に適した誘電体磁器組成物を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は上記低温焼成用の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題を達成すべく、本発明による誘電体磁器組成物は、主成分として(Ba1−xCa)TiOと、副成分としてMgCO、RE(REはY、Dy及びHoから成る群から1種以上選択される希土類酸化物)、MO(MはBa及びCaのうち一つの元素)、MnO、V、Cr及び焼結助剤であるSiOを含み、組成式はa(Ba1−xCa)TiO−bMgCO−cRE-dMO−eMnO−fSiO−gV−hCrと表現する際、モル比でa=100、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦3.0、0.1≦d≦3.0、0.05≦e≦1.0、0.2≦f≦3.0、0.01≦g≦1.0、0.01≦h≦1.0であり、0.005≦x≦0.15、0.995≦m≦1.03を満足する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によると、上記(Ba1−xCa)TiO成分は平均粒径が150ないし400nmの(Ba1−xCa)TiO粉末から得られる。上記(Ba1−xCa)TiO成分は固相混合法、水熱合成法またはゾル−ゲル(sol−gel)法により製造された(Ba1−xCa)TiO粉末から得られることが出来る。好ましくは、m+dは1.00より大きく1.03よりは小さい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、上記SiO成分はSiO粉末から得られる。また、上記SiO成分はSiOゾル(SiO sol)またはSiアルコキサイドから得られることが出来る。
【0011】
本発明の他の目的を達成するため、本発明による積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極が交代に積層されているコンデンサ本体を含み、上記誘電体層は上述の本発明による誘電体磁器組成物から成る。
【0012】
本発明の実施形態による積層セラミックコンデンサは、上記内部電極はNiまたはNi合金を導電材として含有する。
【0013】
本発明の実施形態によると、上記誘電体層の積層数が400以上であり得る。また、上記誘電体層の厚さは3μm以下であり得る。好ましくは、上記誘電体層の厚さは0.5ないし3μmであり得る。また、上記誘電体層に含まれた(Ba1−xCa)TiO誘電体粒子の平均粒径は150ないし400nmであり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、誘電体磁器組成物は還元性雰囲気で1150ないし1200℃の低温で焼結されることが出来る。また、本発明の誘電体磁器組成物は微粒の粉末を使用しても3000以上の高誘電率を具現することが出来る。さらに、粒成長が抑えられ温度による誘電率の変化が少なく温度安定性が優秀である。上記誘電体組成物は3μm以下の超薄層誘電体シートに容易に適用されることができ、超薄型の高容量積層セラミックコンデンサ製造に適している。
【0015】
上記誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサはX5R特性を満足し、優秀な電気的特性(IR特性及び誘電損失率など)を有しており、高い平均寿命時間を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に対して詳細に説明する。
【0017】
<誘電体磁器組成物>
本発明の誘電体磁器組成物はX5R特性(EIA規格;−55〜85℃で容量変化率(ΔC)が±15%以内(基準温度25℃))を示すことができ、焼結後にも誘電体結晶粒子が成長しないため、1μm以下の薄層誘電体シート(誘電体層)を容易に形成させることが出来る。これによって高温絶縁抵抗(Insulation Resistance:IR)等の信頼性特性が優秀である。
【0018】
上記誘電体磁器組成物の主成分である(Ba1−xCa)TiOでCaは、BaTiO内の一部Ba元素と置換され、一部酸素空孔を形成して耐還元性を付与する。このため、焼結後にもコア−シェル(core−shell)構造が形成されなかったりシェルが薄く形成されても、上記誘電体磁器組成物は高い絶縁抵抗を示すことが出来る。主成分の(Ba1−xCa)TiOは(Ba1−xCa)TiOパウダーとして提供され得る。
【0019】
(Ba1−xCa)TiOから置換されるCaの量(x)は(Ba1−xCa)1モル当たり0.005〜0.15モル(0.5〜15モル%)である。Caの置換量が0.5モル%より小さい場合、平均寿命時間が短くなり、15モル%を超過すると焼結性が衰え誘電率も減少する問題がある。m値(Ba/Ti比)は0.995よりは大きく、1.03よりは小さくなければならない。m値が0.995未満の場合には非抵抗が減少し、m値が1.02以上の場合には焼結性が衰え、非抵抗が低くなる問題がある。そして、m値が1.03より大きい場合には焼結性が衰え平均寿命時間に問題が生じる。
【0020】
(Ba1−xCa)TiO主成分パウダーの粒径は150〜400nm程度と小さくすることが有利である。(Ba1−xCa)TiOの粒子が大きいと誘電率は増加するものの寿命時間が減少し、粒子が小さ過ぎると誘電率が減少する問題点がある。本発明で使用する(Ba1−xCa)TiOパウダーはBaCO、TiOをスタート物質として使用する一般的な固相反応法で製造される(Ba1−xCa)TiOパウダーが可能で、Ba(OH)、Ti(OH)を中間原料として使用する水熱合成法(hydrothermal method)で製造したパウダー、またはゾル−ゲル(sol−gel)法で製造したパウダーも可能である。
【0021】
副成分のうち炭酸マグネシウム(MgCO)は(Ba1−xCa)TiOパウダーに添加され、粒成長を抑制させる役割をし、添加量が(Ba1−xCa)TiO100モル当たり0.1モルより小さいと粒成長安定性が衰え非抵抗が低く、温度特性がX5R特性を満足できない。MgCOの量が3.0モルを超過すると、焼結温度が高くなり、寿命時間も減少する。添加するMgCO副成分は酸化物やNO形態の塩から得ることが出来る。
【0022】
副成分のうち希土類化合物(希土類酸化物)は平均寿命時間を増加させる役割をする。希土類酸化物の含有量が(Ba1−xCa)TiO100モル当たり0.1モルより小さいと高温での平均寿命時間が短くなる問題点がある。その反面、その含有量が3.0モルより多いとTcc(静電容量温度係数;Temperature cosfficient of capacitance)はより安定化されるが、焼結性が悪化され焼結温度が1300℃以上に増加する問題が生じ、かえって平均寿命時間が減少する。希土類のうちY、Dy、Hoまたはこれらの組合せがこのような役割をする。
【0023】
副成分のうちMnOは還元雰囲気で(Ba1−xCa)TiOパウダーの常温及び高温IRを増加させる役割をする。MnOの量が0.05モルより小さいと非抵抗が減少する。一方、MnOの量が1.0モル以上の場合、容量の時間による変化率(aging rate)及び直流バイアスを連続して印加した際の容量変化が大きくなる。
【0024】
副成分のうちMO(MはBa及びCaのうち一つ)はBaCO、CaCOのような炭酸塩形態や、NO(窒酸塩)などの形態からも得られることが可能で、熱処理後にBaまたはCa酸化物が生成される物質であれば全て可能である。誘電体磁器組成物に添加されるMOの量は母材パウダー((Ba1−xCa)TiO)のm値と関連があり、MOの添加量が少な過ぎると効率的に粒成長を抑えることができなく、MOの添加量が過量の場合は焼結性が低下され非抵抗が減少する問題点が発生する。
【0025】
MOの添加量(d)は(Ba1−xCa)TiO100モル当たり0.1ないし3.0モルの範囲になければならなく、(m+d)は1.00より大きく1.03よりは小さいことが好ましい。
【0026】
副成分のうちSiOは焼結温度を低下させる焼結助剤の役割をする。SiO成分は微粒のSiOパウダー形態で添加されるのが好ましく、SiOゾル(sol)やSiアルコキサイド化合物の形態で添加されることも出来る。
【0027】
SiO成分の添加量が(Ba1−xCa)TiO100モル当たり0.2モルより小さいと焼結性が低下されIRが落ちて平均寿命時間が減少する問題があり、その添加量が多すぎて3.0モル以上であると誘電率が減少しIRが低下される問題が生じる。その添加量は0.2ないし3.0モルが適当である。
【0028】
既存の焼結助剤は(Ba、Ca)SiO2+x(x=0.8〜1.2)のような混合か焼品を使用するので、焼結助剤を製造するための別途の工程が必要である。また、既存の焼結助剤はか焼品を使用するので、粗大粒パウダーになりやすい。従って、薄層の誘電体シートを備えた積層セラミックコンデンサを製造するための焼結助剤として使用される場合には、既存の(Ba、Ca)SiO2+x焼結助剤は信頼性低下を引き起こす恐れがある。しかし、本発明ではSiOを焼結助剤として使用することにより焼結助剤製造のための別途の工程を必要としない。SiOを他の副成分との適切な比率で添加するだけでも、SiO成分は焼結助剤の役割をし低温焼成を可能とする。
【0029】
副成分のうちVは誘電率に大きく影響を及ぼさず、粒界に偏析され主成分である(Ba1−xCa)TiOパウダーの異常粒成長を抑える役割をする。また、Vは(Ba1−xCa)TiOのBaと置換され酸素空孔の移動を制御することにより焼結性、絶縁抵抗、絶縁破壊電圧(breakdown voltage)及び平均寿命時間を改善する効果を示す。Vの添加量は(Ba1−xCa)TiO100モル当たり1.0モル以下が適当で、過量が添加される場合には、かえって絶縁抵抗が減少する問題点がある。
【0030】
Crは粒界に主に偏析され(Ba1−xCa)TiOパウダーの異常粒成長を抑えつつ、焼結温度を多少低下させる役割をし、誘電率向上と絶縁破壊電圧及び平均寿命時間を向上させる効果を示す。Cr添加量は(Ba1−xCa)TiO100モル当たり1.0モル以下が適当で、過量添加されると平均寿命時間が低下される問題点がある。
【0031】
上記のような組成を有する誘電体磁器組成物は耐還元性を有する組成物である。従って、NiまたはNi合金から成る内部電極を使用する積層セラミックコンデンサの誘電体として有用に使用され得る。また、後述する通り上記誘電体磁器組成物は3000以上の高誘電率を具現しつつも1150ないし1200℃の低温で焼結可能である。さらに、粒成長が抑制され温度による誘電率の変化が少なく温度安定性が優秀である。上記誘電体組成物は3μm以下の超薄型誘電体シートに容易に適用されることができ、超薄型の高容量積層セラミックコンデンサ製造に適合である。
【0032】
<積層セラミックコンデンサ>
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す断面図である。図1を参照すると、積層セラミックコンデンサ100は誘電体層102と内部電極層101、103が交代で積層された構成のコンデンサ本体110を有する。このコンデンサ本体110の外面には外部電極104、105が形成されており、外部電極104、105に対応される内部電極101、103に各々電気的に接続されている。
【0033】
上記誘電体層102は、上述の本発明の誘電体磁器組成物を含んで成る。即ち、誘電体層102を成す誘電体磁器組成物は、主成分の(Ba1−xCa)TiOと、副成分のMgCO、RE(REはY、Dy及びHoから成る群から1種以上選択される希土類酸化物)、MO(MはBa及びCaのうち一つの元素)、MnO、V、Cr及びSiOを含む。また、誘電体層102を成す誘電体磁器組成物の組成式は、a(Ba1−xCa)TiO−bMgCO−cRE-dMO−eMnO−fSiO−gV−hCrと表現する際、モル比でa=100、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦3.0、0.1≦d≦3.0、0.05≦e≦1.0、0.2≦f≦3.0、0.01≦g≦1.0、0.01≦h≦1.0である。また、0.005≦x≦0.15、0.995≦m≦1.03を満足する。
【0034】
上記誘電体層102の厚さは特に限定はされないが、超薄型の高容量コンデンサを具現するため1層当たり3μm以下であり得る。好ましくは、誘電体層102は0.5ないし3μmの厚さを有することが出来る。
【0035】
上記誘電体層102の積層数は特に限定はされないが、高容量のコンデンサを具現するため400層以上であり得る。好ましくは、誘電体層102の積層数は400ないし1000であり得る。
【0036】
好ましくは、上記誘電体層102に含まれた(Ba1−xCa)TiO誘電体粒子の平均粒径は150ないし400nmである。(Ba1−xCa)TiO誘電体粒子の平均粒径が大き過ぎると誘電率は増加するものの寿命が減少し、その平均粒径が小さ過ぎると誘電率が低くなる。
【0037】
上記内部電極101、103に含有される導電材は特に限定はされない。しかし、誘電体層102が耐還元性を有するため、内部電極101、103の材料としてNiまたはNi合金を使用することが好ましい。外部電極104、105の材料としてはCuまたはNiを使用することが出来る。
【0038】
上記積層セラミックコンデンサ100は従来の積層セラミックコンデンサと同様に、スラリーの製造及びグリーンシート成形、内部電極の印刷、積層、圧着、焼結などの工程を通じて製造され得る。
【0039】
以下、図2を参照に、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造工程を具体的に説明する。先ず、上述の組成を満足するよう(Ba1−xCa)TiO、MgCO、RE、MO、MnO、V、Cr粉末及びSiO焼結助剤を夫々称量して準備した後(S1、S1’段階)、これを水またはアルコール等に分散させ湿式混合し、その混合物を約150ないし200℃で乾燥させる(S2段階)。乾燥して得た粉末混合物に有機バインダーと溶媒を添加してスラリーを製造する(S3段階)。例えば、有機バインダーにはポリビニルブチラールを使用することができ、溶媒としてはアセトンまたはトルエンを使用することが出来る。
【0040】
その後、上記スラリーをシート(グリーンシート)形態に成形する(S4段階)。例えば、上記スラリーは3μm以下の厚さを有するグリーンシートに成形され得る。その後に、成形されたグリーンシート上にNi等の内部電極を印刷し、内部電極が印刷された複数のグリーンシートを積層する(S5段階)。次に、この積層体を圧着し個別チップ(グリーンチップ)に切断する(S6段階)。次いで、このグリーンチップを250ないし350℃の温度で加熱してチップ内のバインダーまたは分散剤などを除去する(S7段階)。
【0041】
その後、脱バインダー処理された上記積層体を、例えば1150ないし1200℃の温度で焼結(焼成)する(S8段階)。その後、上記焼結体の外面にCuまたはNi等の外部電極用ペーストを塗布し、このペーストを焼成して外部電極を形成する(S9段階)。必要に応じて、外部電極表面にメッキによる被覆層を形成する(S10段階)。これによって、図1に図示されたような積層セラミックコンデンサ100を得ることとなる。その後、積層セラミックコンデンサの様々な物性を測定してコンデンサの特性を評価することが出来る。(S11段階)。
【0042】
前述の製造工程では、(Ba1−xCa)TiO粉末と副成分粉末を先に湿式混合及び乾燥した後スラリーを製造しているが、別途の湿式混合なく(Ba1−xCa)TiO粉末と副成分粉末を称量した後、これを直接有機溶媒及びバインダーと混合することによりスラリーを製造することも出来る(S2段階は省略可能)。
【0043】
本発明者は様々な実験を通じ、上記誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサはX5R特性を満足し、優秀な電気的特性(例えば、IR特性及び誘電損失率などの特性)を有しており、高い平均寿命時間を示すということが分かった。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明がこれら実施例に限定されるのではない。
【0045】
先ず、下記の表1に記載されたような組成(x及びm値)を有する8種類(AないしH)の(Ba1−xCa)TiO粉末を準備した。表1に示された通り、AないしDに該当する(Ba1−xCa)TiO粉末は本発明の(Ba1−xCa)TiO組成(即ち、x及びm値)範囲を外れたものである。EないしHに該当する(Ba1−xCa)TiO粉末は本発明のx及びm値の範囲内にはあるが、(Ba1−xCa)TiO粉末の平均粒径が150nmより小さいか(G)、400nmより大きい(H)。
【0046】
【表1】

【0047】
次に、種々サンプル(サンプル1〜29)の積層セラミックコンデンサを製造するため、上記8種類の(Ba1−xCa)TiO粉末(BT粉末)と副成分粉末(MgCO、RE、MO、MnO、V、Cr及びSiO)を使用して下記表2のような組成で称量した。表において各副成分のモル数比(b〜h)は主成分の(Ba1−xCa)TiO100モル(BT 100モル)を基準にして表示したものである。
【0048】
【表2】


【0049】
その後、上記表2のように称量して準備した各々の誘電体粉末の混合物を使用して各サンプルの積層セラミックコンデンサを製造した。
【0050】
具体的に説明すると、各々の誘電体粉末混合物でスラリーを製造した後、このスラリーから3μm以下厚さのグリーンシートを成形した。このグリーンシートにNi内部電極を印刷した。Ni内部電極が印刷されたグリーンシートを470層程度に積層した。この積層体を圧着、切断してグリーンチップを得た後、250ないし350℃で脱バインダー処理を実行した。その後、脱バインダー処理された上記積層体を1180ないし1200℃範囲内で焼結した。焼結時の酸素分圧は10‐11ないし10‐12気圧範囲内にあった。焼結完了後、焼結体の外部に外部電極用のCuペーストを塗布し850ないし920℃の温度範囲内でCuペーストを焼成して外部電極を形成した。電極焼成完了後メッキ工程を進行して各サンプルの積層セラミックコンデンサを得た。
【0051】
夫々の積層セラミックコンデンササンプル(サンプル1〜29)の電気的特性を評価するため、各コンデンサの容量、誘電損失(DF)、絶縁抵抗及び静電容量温度係数(Tcc)を測定した。容量と誘電損失は1kHz、1Vrmsで測定し、Tccは-55℃から85℃までの誘電率の温度依存性に基づいて測定した(基準温度は25℃)。測定された容量と誘電体層の厚さを利用して誘電率を計算した。また、コンデンササンプルに対して高温負荷試験を実施した。この高温負荷試験では、150℃の温度で各コンデンササンプルに18.9Vの直流電圧を印加して絶縁抵抗の経時変化を測定した。高温負荷試験で、各サンプルの絶縁抵抗値が10Ω以下になった時を故障と定めて平均寿命時間を求めた。
【0052】
各コンデンササンプルに対する電気的特性評価の結果は下記の表3に記載された通りである。表3には各サンプルの焼成温度、電気的特性(誘電体特性)及び焼結特性が示されている。
【0053】
【表3】


【0054】
上記表3においてサンプル1〜4は副成分組成が本発明の範囲内にあり、主成分(Ba1−xCa)TiOの組成(x及びm値)が本発明の範囲を外れている場合に該当する(表1及び表2参照)。表3を参照すると、サンプル1はCa含量(x)が小さ過ぎるため、平均寿命時間が短くなる問題を有する。サンプル2はCa含量(x)が大き過ぎるため、実験温度(1180℃)で焼結が起こらなかった。これによって、絶縁抵抗が低すぎる値を示した。
【0055】
上記表3においてサンプル5〜13は副成分組成及び主成分(Ba1−xCa)TiOの組成がいずれも発明の範囲内にある場合に該当する(表1及び表2参照)。表3に示された通り、本発明の成分及び組成を有する誘電体組成物は組成物内の誘電体粒子の大きさが300nm程度と小さい場合にも粒成長無く3000以上の高誘電率を示すことができ、このような組成物を用いて製造された積層セラミックコンデンサ(サンプル5〜13)は容量の温度安定性が優秀でX5R特性及び高信頼性を示す。
【0056】
上記表3においてサンプル14〜29は主成分(Ba1−xCa)TiOの組成が本発明の範囲内にあり、副成分の組成が本発明の範囲を外れた場合に該当する。表3に示された通り、サンプル14〜29は大部分誘電率が3000に満たされず、3000を超えるとしても他の特性(誘電損失、Tcc、絶縁抵抗、平均寿命時間)のうち少なくとも一つは本発明の実施例(サンプル5〜13)に比べて衰えている。
【0057】
本発明は上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定しようとする。また、本発明は請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が可能であることは当技術分野の通常の知識を有している者には自明なことである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造工程を示す工程フロー図である。
【符号の説明】
【0059】
100 積層セラミックコンデンサ 101、103 内部電極
102 誘電体層 104、105 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として(Ba1−xCa)TiO及び、
副成分としてMgCO、RE(REはY、Dy及びHoから成る群から1種以上選択される希土類酸化物)、MO(MはBa及びCaのうち一つの元素)、MnO、V、Cr及び焼結助剤であるSiOを含み、
組成式はa(Ba1−xCa)TiO−bMgCO−cRE-dMO−eMnO−fSiO−gV−hCrと表現する際、モル比でa=100、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦3.0、0.1≦d≦3.0、0.05≦e≦1.0、0.2≦f≦3.0、0.01≦g≦1.0、0.01≦h≦1.0であり、0.005≦x≦0.15、0.995≦m≦1.03を満足することを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記(Ba1−xCa)TiO成分は平均粒径が150ないし400nmである(Ba1−xCa)TiO粉末により提供されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
前記(Ba1−xCa)TiO成分は固相混合法、水熱合成法またはゾル−ゲル法により製造された(Ba1−xCa)TiO粉末により提供されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
前記mとdの和は1.00より大きく1.03よりは小さいことを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項5】
前記SiO成分はSiO粉末により提供されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項6】
前記SiO成分はSiOゾルまたはSiアルコキサイドにより提供されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項7】
誘電体層と内部電極が交代に積層されているコンデンサ本体を含み、
前記誘電体層は、
主成分として(Ba1−xCa)TiOと、副成分としてMgCO、RE(REはY、Dy及びHoから成る群から1種以上選択される希土類酸化物)、MO(MはBa及びCaのうち一つの元素)、MnO、V、Cr及びSiOを含む誘電体磁器組成物から成り、
前記誘電体磁器組成物の組成式は、a(Ba1−xCa)TiO−bMgCO−cRE-dMO−eMnO−fSiO−gV−hCrと表現する際、モル比でa=100、0.1≦b≦3.0、0.1≦c≦3.0、0.1≦d≦3.0、0.05≦e≦1.0、0.2≦f≦3.0、0.01≦g≦1.0、0.01≦h≦1.0であり、0.005≦x≦0.15、0.995≦m≦1.03を満足することを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記内部電極に含有される導電材はNiまたはNi合金であることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記誘電体層の積層数が400以上であることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記誘電体層の厚さは3μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記誘電体層の厚さは0.5ないし3μmであることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
前記誘電体層に含まれた(Ba1−xCa)TiO誘電体粒子の平均粒径は150ないし400nmであることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−31273(P2007−31273A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204605(P2006−204605)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】