説明

低用量酢酸シプロテロンを用いる、去勢された前立腺癌患者における血管運動症状の治療方法

本発明は、治療を必要とする去勢された前立腺癌患者に1日当たり約15 mg以下の酢酸シプロテロンを投与する段階を含む、前記患者における血管運動症状を治療する方法を対象とする。本発明はさらに、約1 mgから約15 mgの酢酸シプロテロンを含む剤形および約1 mgから約15 mgの酢酸シプロテロンを含む複数の剤形を含むパッケージを対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、外科的または化学的に去勢された前立腺癌患者における血管運動症状の治療、および前記患者の治療に使用するための薬学的剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
前立腺癌は、米国男性中で二番目に多い癌で、そして癌による死亡原因の第二位であり、約6人に1人の男性が診断されるものである。ほとんどの癌と同様に、前立腺癌は治癒することがない。しかしながら、アンドロゲン除去療法(「ADT」)、前立腺摘除術、精巣摘除術を含むいくつかの治療法が、その進行を抑制するのに利用可能である。最も一般的に用いられる治療は、ADTである。
【0003】
アンドロゲンは、前立腺癌の進行に主要な役割を果たし、特には、テストステロンとジヒドロテストステロンである。アンドロゲン除去は、精巣摘除術(精巣の除去)により外科的に、または薬物の使用により内科的に、実現可能である。しかしながら、ADTには、被験者の生活の質を低下させる可能性のある副作用がある。副作用の一つにホットフラッシュがあり、それは前兆なしに始まり、最大30分間持続しうる。そして、その頻度にはばらつきがあり、1週間に数回から1日当たり十数回以上のエピソードが起こる場合がある。ホットフラッシュは、脈拍数の増加、不安、被刺激性、および悪心を伴い、突然起こる熱感として体感される場合がある。熱感は、顔面から胸部および背中へと急速に広がり、その後身体の残りの部分に渡って広がり、大量の発汗を伴う場合がある。一般的に、それらは前立腺癌患者にとって、大きな身体的および精神的苦痛の元である。
【0004】
ホットフラッシュに対する最良の治療効果は、性ステロイドを用いた補充療法により実現される。しかしながら、アンドロゲンは、男性の前立腺癌被験者においては禁忌である。
【0005】
ジエチルスチルベストロール(「DES」))、あるいは単独もしくはDESと組み合わせた酢酸シプロテロン(「CPA」)または酢酸メゲストロール(「MA」)などのエストロゲン類を用いて治療した前立腺癌患者では、ホットフラッシュの症状は稀にしか報告されていない。一次療法が、外科的もしくは化学的去勢であるかどうか、または互いに異なる黄体形成ホルモン放出ホルモン(「LHRH」)作動薬の多様な処方を受けた患者におけるものであるかどうかに関して、血管運動によるホットフラッシュ反応に明らかな差はない。外科的去勢またはLHRH作動薬治療に加えて、純粋な抗アンドロゲン剤(フルタミドなど)を用いて治療しても、ホットフラッシュの頻度もしくは重症度または治療への応答のいずれにも有意に影響があるようには見えない。DESなどのエストロゲン類は、ホットフラッシュを減少させるのに効果的である可能性があるが、女性化乳房および心血管疾患の罹患率の増加のリスクがある。
【0006】
MA、すなわち黄体ホルモンは、男性および女性においてホットフラッシュを低減することが示されてきた。前立腺癌の治療およびホットフラッシュの低減に関するものを含む、MAの様々な研究が、文献に報告されてきた。例えば、 Loprinzi et al., N. Engl. J. Med. 331 : 347-352 (1994)(非特許文献1); Wehbe, et al., Mayo Clin. Proc., 72: 932-934, 932 (1997)(非特許文献2); Dawson et al., J. Urol. 153: 1946-1947 (1995)(非特許文献3); Mann et al., Arch. Intern. Med. 157: 1651-1656 (1997)(非特許文献4)を参照されたい。
【0007】
CPA、すなわち21個の炭素原子を有するヒドロキシプロゲステロン合成誘導体は、米国特許第3,234,093号(特許文献1)に開示され、参照により本明細書に組み入れられる。CPAは、ステロイド性の抗アンドロゲン剤であり、前立腺細胞に対する副腎性および精巣性のアンドロゲンの作用を阻害し、総合的なアンドロゲン遮断を生じさせる。さらに、そのプロゲストゲン活性の有する抗性腺刺激効果に起因して、CPAは、中枢神経を介する、アンドロゲンの精巣性分泌の減少を引き起こす。CPAは、ヨーロッパ、アジア、南アメリカ、ならびにオーストラリアおよびカナダを含む世界の多くの地域において、使用が認可されている。それは、経口避妊薬の構成成分として使用され、そして、アクネ、脂漏、多毛症、思春期早発症、および性行動亢進の治療ならびに前立腺癌の治療に使用される。薬学的製剤であるAndrocur(登録商標)、Cyprostat(登録商標)、Diane(登録商標)、およびDianette(登録商標)は、CPA系製品である。これらの製品の製造元には、Schering AG(ベルリン、ドイツ)およびBerlex(カナダ)が含まれる。
【0008】
CPA治療において最も頻繁に記録された副作用は、その薬物の有するホルモン性効果に関する。これらには、インポテンス、精子形成阻害、および女性化乳房を含む。これらの反応は、療法の中断または用量の低減に応じて通常可逆的である。この薬物は、血清中のテストステロンレベルの急降下も伴い、疲労、虚弱、および頭痛といった中枢神経系効果をも生じる可能性がある。
【0009】
外科的または医薬的去勢に関連するホットフラッシュ症状を治療する際における使用に関して、CPAは調査されてきた。二重盲検交叉試験において、EatonとMcGuireは、精巣摘除術後における厄介なホットフラッシュを有する12人の前立腺癌被験者を、CPAまたはプラセボを用いて治療した(Eaton AC and McGuire N., Lancet 8363: 1336-1337 (1983)(非特許文献5))。ホットフラッシュの頻度は、CPA(毎日300mg)を与えた3週間の間、有意に低減した。Ronzoniらは、煩わしいホットフラッシュを有する37人の被験者を、CPAまたはMAを用いて治療した(Ronzoni et al., Arch Ital Urol Androl 70(1): 37-40 (1998)(非特許文献6))。CPAの投与およびMAの投与後、ホットフラッシュがそれぞれ80%および70%低減するという治療効力が観察された。
【0010】
同様に、過去に精巣摘除術を受けた273人の被験者におけるさらに大規模な臨床試験では、プラセボと比較してCPA(毎日150mg)を用いた治療後に ホットフラッシュおよび発汗の発生を体験した被験者数は減少した(Kramer et al., Proceedings of the 3rd International Symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment, Paris (1992) June 17-19: pp 3-7(非特許文献7))。CPAを受けた被験者の33%とプラセボを受けた被験者の61%がホットフラッシュを体験した。一方、プラセボ治療された被験者の47%に比較して、CPA治療された被験者たった24%に発汗の発生があった。さらに、CPAを受けた被験者であって、継続してホットフラッシュまたは発汗を体験したものにおいては、その頻度と重症度は減少した(Id. and Barradell et al., Drugs & Aging 5/1: 59-80 (1994)(非特許文献8))。前立腺癌被験者における、無作為で十分管理されたいくつかの臨床試験では、LHRL作動薬と組み合わせてCPAを与えることは、ホットフラッシュを申告した被験者の割合の低減を伴った(deVoogt et al., J Steroid Biochem Molec Biol 37: 965-969 (1990)(非特許文献9); DiSilverio et al., Eur Urol 18 (suppl 3):54-61 (1990)(非特許文献10); Thorpe et al., Eur Urol, 29(1): 47-54 (1996)(非特許文献11))。
【0011】
Androcur(登録商標)の研究書(Berlex社、カナダ(1997))には、CPAに関する世界規模の試験に参加した367名の評価可能な患者の70%において、生活の質の主観的評価が一般的に改善することが示されている。リストされた評価基準は、体重増加および鎮痛である。検討された患者には、単剤療法としてCPAを受けた者、エストロゲン抵抗性群、および精巣摘除患者を含んでいた。剤形には、経口および筋内注射が含まれ、その用量は様々であったと考えられる。経口CPAを受けたほとんどの患者は、200から300mg/日で投薬された。精巣摘除患者に与えられた最低の経口用量は、100mg/日であると示されていた。
【0012】
ヒトにおける用量依存性の肝臓毒性が、CPAの長期使用について報告されてきた。しかしながら、ヒトへのCPAの投与が、肝臓毒性の重度のリスクを提示しないことが、毒性学的研究で明らかになった。50mg/日のCPAを用いた継続的で追加的な抗アンドロゲン治療を受けた患者であって、進行前立腺癌を有する89名の患者に関して、遡及的な肝臓毒性解析を実施した(Hinkel et al., Eur. Urol. 30:464-470 (1996)(非特許文献12))。
【0013】
さらにその上、Rabeらは、CPAの毒性学に関する完全な総説を発表した(Drug Safety, 14(l): 25-38 (1996)(非特許文献13))。2500名を超える患者における、長期間のCPA使用の、多施設でのサーベイランス試験においては、治療群には、男性と女性を含んだ。男性を、200mg/日を上回る投与量のCPAまたは100から200mg/日の投与量のCPAのいずれかを用いて治療した。CPA治療の期間と肝酵素の上昇の有病率との間に、相関を見いだせなかった。
【0014】
米国特許第6,165,504号(「'504特許」)(特許文献2)は、1日当たりCPAを25mgから150mg、好ましくは1日当たりCPAを50mgから100mg経口投与することにより、去勢された前立腺癌患者において、ホットフラッシュを治療するための方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,234,093号
【特許文献2】米国特許第6,165,504号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Loprinzi et al., N. Engl. J. Med. 331 : 347-352 (1994)
【非特許文献2】Wehbe, et al., Mayo Clin. Proc., 72: 932-934, 932 (1997)
【非特許文献3】Dawson et al., J. Urol. 153: 1946-1947 (1995)
【非特許文献4】Mann et al., Arch. Intern. Med. 157: 1651-1656 (1997)
【非特許文献5】Eaton AC and McGuire N., Lancet 8363: 1336-1337 (1983)
【非特許文献6】Ronzoni et al., Arch Ital Urol Androl 70(1): 37-40 (1998)
【非特許文献7】Kramer et al., Proceedings of the 3rd International Symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment, Paris (1992) June 17-19: pp 3-7
【非特許文献8】Id. and Barradell et al., Drugs & Aging 5/1: 59-80 (1994)
【非特許文献9】deVoogt et al., J Steroid Biochem Molec Biol 37: 965-969 (1990)
【非特許文献10】DiSilverio et al., Eur Urol 18 (suppl 3):54-61 (1990)
【非特許文献11】Thorpe et al., Eur Urol, 29(1): 47-54 (1996)
【非特許文献12】Hinkel et al., Eur. Urol. 30:464-470 (1996)
【非特許文献13】Rabe et al., Drug Safety, 14(l): 25-38 (1996)
【発明の概要】
【0017】
本発明は、治療を必要とする去勢された前立腺癌患者に、1日当たり約15mg以下の酢酸シプロテロンを投与する段階を含む、前記患者において血管運動症状を治療するための方法を対象としている。
【0018】
本発明は、約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと、約0.1%から約5.0%(wt/wt)の量の界面活性剤、約2%から約20%(wt/wt)の量の崩壊剤、および約20%から約95%(wt/wt)の量の充填剤を含む薬学的に許容される不活性物質とを含む薬学的剤形を対象としている。
【0019】
本発明は、約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスポビドン、無水ラクトース、および微結晶性セルロースを含む薬学的に許容される不活性物質とを含む薬学的剤形を対象としている。
【0020】
本発明は、それぞれの剤形が約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと薬学的に許容される不活性物質とを含む、複数の薬学的剤形を含むパッケージを対象としている。
【0021】
いくつかの態様では、患者は、1日当たり少なくとも3回の血管運動症状を有する。いくつかの態様では、患者は、1週間当たり少なくとも21回の血管運動症状を有する。
【0022】
いくつかの態様では、治療は血管運動症状の重症度を低減する。いくつかの態様では、治療は、1日当たりの血管運動症状の回数を低減する。
【0023】
いくつかの態様では、患者は少なくとも14日間治療される。いくつかの態様では、患者は少なくとも60日間治療される。いくつかの態様では、患者は少なくとも12週間治療される。いくつかの態様では、患者は少なくとも6ヶ月間治療される。いくつかの態様では、患者は2から3年間治療される。
【0024】
いくつかの態様では、患者は少なくとも14日間継続的に治療される。
【0025】
いくつかの態様では、1日当たり約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンが投与される。
【0026】
いくつかの態様では、1日当たり約5mgの酢酸シプロテロンが投与される。いくつかの態様では、1日当たり約10mgの酢酸シプロテロンが投与される。いくつかの態様では、1日当たり約15mgの酢酸シプロテロンが投与される。
【0027】
いくつかの態様では、患者は化学的に去勢された前立腺癌患者である。いくつかの態様では、患者は精巣摘除された前立腺癌患者である。
【0028】
いくつかの態様では、投与は経口であり、1日当たり1回である。いくつかの態様では、投与は経口であり、1日当たり2〜5回の投薬に分割される。
【0029】
いくつかの態様では、酢酸シプロテロンと界面活性剤は、約1:0.05から約0.1:1の比率で存在する。
【0030】
いくつかの態様では、薬学的剤形は、約0.1%から約3.0%(wt/wt)の量の流動促進剤と約0.5%から約6.0%(wt/wt)の量の潤滑剤とをさらに含む。
【0031】
いくつかの態様では、酢酸シプロテロンのD90は、約25ミクロン以下である。
【0032】
いくつかの態様では、900mLの水中に0.35%ラウリル硫酸ナトリウムを含むUSP II型パドル装置を使用して50rpmのパドル速度で試験した場合、75%を上回る酢酸シプロテロンが30分以内に放出される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の酢酸シプロテロン錠を調製するための過程を表すプロセスフローチャートである。
【図2】本発明の酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mg錠の溶解データおよびプロフィールを示す。
【図3】酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mg/日を投与された去勢された前立腺癌患者における、治療および診察毎の酢酸シプロテロンおよび15β-OH酢酸シプロテロンの濃度の平均値の比較を示す。
【図4】酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mg/日を投与された去勢された前立腺癌患者における、中等度から重度のホットフラッシュの1日の回数の平均値の低減の比較を示す。
【図5】酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mg/日を投与された去勢された前立腺癌患者における、ホットフラッシュの重症度の平均値の低減の比較を示す。
【図6】酢酸シプロテロン50 mgおよび100 mg/日を投与された去勢された前立腺癌患者における、中等度から重度のホットフラッシュの1日の回数の平均値の低減の比較を示す。
【図7】酢酸シプロテロン50 mgおよび100 mg/日を投与された去勢された前立腺癌患者における、ホットフラッシュの重症度の平均値の低減の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、酢酸シプロテロンを投与することによって、去勢された前立腺癌患者における血管運動症状を治療するための方法を提供する。本方法は、患者が1日に経験する血管運動症状の回数の低減、患者が経験する血管運動症状の重症度の低減、または血管運動症状の完全な消失をもたらす。
【0035】
本発明は、治療を必要とする去勢された前立腺癌患者に、1日当たり約15 mg以下の酢酸シプロテロンを投与する段階を含む、前記患者において血管運動症状を治療する方法を対象とする。
【0036】
本明細書を通して記述されるように、15β-OH酢酸シプロテロンは、酢酸シプロテロンの代わりに用いられうる。
【0037】
いくつかの態様において、治療される患者は、1日当たり少なくとも3回の血管運動症状、または1週間に少なくとも21回の血管運動症状を経験する。いくつかの態様において、患者は、1日当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回以上の血管運動症状を経験する。本発明によると、酢酸シプロテロンによる治療は、血管運動症状を軽減するために少なくとも十分な期間行われる。いくつかの態様において、治療は少なくとも14日間提供される。いくつかの態様において、治療は長期にわたる。本発明によると、酢酸シプロテロンは、連続的に、すなわち毎日、または間欠的に、たとえば1日おき、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、または1週間に1回投与されうる。
【0038】
本発明による去勢された前立腺癌患者は、内科的または外科的去勢を受けたことがある前立腺癌患者、たとえば両側精巣摘除、放射線切除を受けたことがある前立腺癌患者、またはたとえばLupron(登録商標)もしくはZoladex(登録商標)などのLHRHアゴニストの投与による化学的去勢を受けたことがあるもしくは受けている前立腺癌患者である。多くの患者が、それに加えてフルタミドなどの純粋な抗アンドロゲン治療を受けているかまたは受けたことがある。
【0039】
本発明はまた、1日当たり約15 mg以下の酢酸シプロテロンを投与することによって、Lupron(登録商標)および/またはフルタミドによる治療を現在受けている去勢された前立腺癌患者における血管運動症状を治療するための方法も対象とする。いくつかの態様において、酢酸シプロテロンは、Lupron(登録商標)およびフルタミドと同時に投与される。いくつかの態様において、酢酸シプロテロンは、Lupron(登録商標)と共におよびフルタミドの代わりに投与される。
【0040】
「治療する」および「治療」という用語は、有益なまたは望ましい臨床結果を得ることを目標とする治療的処置を指す。本発明の目的に関して、有益なまたは望ましい臨床結果には、血管運動症状の回数および/または血管運動症状の重症度の低減、および/または患者における血管運動症状の発生の完全な停止が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0041】
本明細書において用いられるように、「血管運動症状」は、ホットフラッシュ、顔面潮紅、寝汗、発汗、脈拍の増加、不安、被刺激性、または悪心を指す。
【0042】
血管運動症状の重症度は、以下の用語によって臨床的に定義される。「軽度」という用語は、発汗を伴わない熱感を指す。「中等度」という用語は、活動を継続することができる発汗を伴う熱感を指す。「重度」という用語は、活動の中止を引き起こす発汗を伴う熱感を指す(Guidance for Industry: Estrogen and Estrogen/Progestin Drug Products to Treat Vasomotor Symptoms and Vulvar and Vaginal Atrophy Symptoms- Recommendations for Clinical Evaluation, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research, January 2003)。
【0043】
血管運動症状を経験する化学的または外科的に去勢された前立腺癌患者は、本発明による「治療を必要とする」患者または被験者である。
【0044】
本発明による「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内における、妥当な利益/リスク比に釣り合う、過度の毒性または他の合併症を伴うことなくヒトおよび動物の組織と接触するのに適した組成物を指す。いくつかの態様において、本発明の組成物および剤形は薬学的に許容される。
【0045】
治療の期間は、好ましくは医師の判断でおよび/または医師の管轄下での患者の判断で連続的または間欠的でありうる。
【0046】
いくつかの態様において、治療は連続的であり、すなわちCPAは毎日服用される。本明細書において「投与」に関して用いられる「持続的」または「連続的」という用語は、投与頻度が少なくとも1日1回であることを意味する。しかし、本明細書において明記される投薬量レベルを超えない限り、投与頻度は1日1回を上回ってもよく(たとえば、1日2回または3回でありうる)、それでもなお「持続的」または「連続的」でありうることに注意されたい。いくつかの態様において、治療は、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも30日間、少なくとも45日間、少なくとも60日間、少なくとも12週間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2〜3年間、または患者が治療を必要とする限りの期間、連続的である。
【0047】
本発明による「間欠的治療」とは、CPAによる治療後、患者が一定期間薬物を服用せず、次に血管運動症状が不快なレベルまで戻った場合に必要に応じて薬物の服用を再開すること、またはこの時点に達する前に薬物の服用を再開することを意味する。いくつかの態様において、患者は2日毎、3日毎、4日毎、または1週間に1回CPAを服用する。いくつかの態様において、患者は、CPAを服用していない期間の直前の約14日間またはそれより長く連続的にCPAを服用する。いくつかの態様において、患者がCPAを服用していない期間は、約14日間、約30日間、約40日間、約50日間、約60日間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約1年間または約2年間を超えない。いくつかの態様において、投与は、CPA治療の開始後少なくとも60日間連続的であり、その後いずれかの時点で間欠的でありうる。いくつかの態様において、投与はCPA治療の開始後約14日間連続的であり、その後血管運動症状を軽減する必要に応じて、CPAは1週間に1日、1週間に2日、1週間に3日、1週間に4日、1週間に5日、1週間に6日、もしくは1週間に7日、またはそのいくつかの組み合わせで投与される。最適な治療は患者によって異なりうる。
【0048】
本発明によると、患者は、血管運動症状のために、1日当たり約15 mg以下の投薬量のCPAによって治療される。いくつかの態様において、用いられる投薬量は、1日当たりCPA約1 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mg、または約15 mgである。いくつかの態様において、CPAは経口剤形で投与される。
【0049】
いくつかの態様において、CPAは、治療開始前の血管運動症状の回数と比較して血管運動症状の回数が低減されるような投薬量および期間で投与される。いくつかの態様において、CPAは、血管運動症状の重症度が低減されるような投薬量および期間で投与される。いくつかの態様において、血管運動症状の回数および血管運動症状の全体的な重症度は、治療開始前の血管運動症状の回数および重症度と比較して低減される。いくつかの態様において、治療は、血管運動症状の頻度がより少なくなり、以下に定義されるホットフラッシュスコアが低減されるような治療である。いくつかの態様において、治療は、血管運動症状の実質的な消失が起こるように、本発明による投薬量および期間で行われる。
【0050】
CPAは、1日に経験する血管運動症状の回数によらず、去勢された前立腺癌患者に投与されうる。いくつかの態様において、1日当たりおよそ3回の血管運動症状を経験する患者は、血管運動症状の回数および/または重症度が低減されるように、または血管運動症状が実質的に消失するような期間、約15 mg以下の投薬量のCPAによって治療される。
【0051】
1日当たり約15 mg以下のCPAによって治療される患者は、都合よくは血管運動症状の軽減または消失を達成することができる。1週間当たり平均値で約21回の血管運動症状を有する患者もまた利益を得ることができる。その上、治療を行うべきである血管運動症状を有すると医師によって診断された去勢された前立腺癌患者に対する、本発明による投薬量でのCPAによる治療もまた、患者が経験する血管運動症状の回数の減少に関して十分に有意な結果を生じるのに有効でありうると認識される。
【0052】
1日当たり少なくともおよそ3回の血管運動症状を経験する、または治療に値する血管運動症状であると診断された患者における血管運動症状の回数および/または重症度の低減は、1日当たり約15 mg以下のCPAの治療範囲において適切でありうる。
【0053】
血管運動症状のおよその回数は、CPA投与の開始前数日間、たとえば直前の3〜5日間に経験する血管運動症状の回数のほぼ平均値である。これはまた、投与開始前のより長い期間、たとえば約12週間での症状の回数のほぼ平均値であってもよい。血管運動症状の全体的な重症度の分布は、各々の重症度カテゴリーにおいて患者が有する血管運動症状のおよその百分率である。CPA治療の際に患者が経験する血管運動症状の重症度の低減は、血管運動症状のより大きい百分率が、治療前の重症度の分布より低い重症度カテゴリーに特徴付けされる場合に起こる。
【0054】
ホットフラッシュのスコアは、ホットフラッシュの重症度または強度を乗じたホットフラッシュの回数を表す値である。Loprinzi et al, N. Engl. J. Med. 331 : 347-352 (1994)によって記述されるように、患者のホットフラッシュスコアは、所定の日に経験された軽度のホットフラッシュの総数、中等度のホットフラッシュの回数の2倍、重度のホットフラッシュの回数の3倍、および非常に重度のホットフラッシュの回数の4倍を加算することによって計算される。ホットフラッシュスコアの平均値に関して、複数の日に関するホットフラッシュの回数を上記のように加算して計算した後、その値が含まれる日数の合計によって除する。
【0055】
いくつかの態様において、十分に有意な結果を提供する投薬量は、1日に少なくともおよそ3回のホットフラッシュを経験する患者のホットフラッシュの回数を、1日2回以上に低減させる投薬量である。そのような投薬量は、当然、1日に3回より少ないットフラッシュを経験する患者に投与されうる。
【0056】
いくつかの態様において、ホットフラッシュの回数の低減に関して十分に有意な結果を提供する投薬量はまた、依然残っているホットフラッシュの全体的な重症度の分布も低減させる。ホットフラッシュの回数のみならず重症度の低減を考慮に入れる複合値を表す測定は、患者のホットフラッシュスコアの低減である。いくつかの態様において、本発明によるCPAの投薬量は、ホットフラッシュスコアが治療前のスコアと比較して低減される持続期間で投与される。いくつかの態様において、ホットフラッシュスコアは、CPA治療前のスコアの少なくとも約20%減少する。
【0057】
典型的に、ホットフラッシュスコアは、ホットフラッシュの回数および重症度の双方の低減を反映すると認識される。いくつかの態様において、先に述べたホットフラッシュの回数の低減に関して十分に有意な結果に関する基準を満たさない可能性がある投薬量が、ホットフラッシュスコアの約20%低減の定義を満たす可能性があり、この場合重症度の低減が回数の低減を埋め合わせる。いくつかの態様において、CPAは、患者がCPA治療前のホットフラッシュスコアの20%を上回る低減を有するのに十分な投薬量および期間で投与される。
【0058】
1日当たりおよそ3〜25回、たとえば1日当たり29回の血管運動症状を経験する患者は、驚くべきことに、本発明の治療によって血管運動症状の有意な軽減または実質的な消失を達成できると認識される。その上、そのほとんどが中等度から重度と採点される血管運動症状を1日当たり少なくともおよそ3回を経験する患者を、本発明によるCPAによって治療すると、この血管運動症状の全体的な重症度の有意な軽減を達成できると認識される。
【0059】
CPAの投与は、少なくとも血管運動症状の回数の低減、およびいくつかの態様において依然残っている血管運動症状の重症度の低減も達成するのに十分である限り持続することができる。たとえば、CPAは、重症度がほとんど軽度であると採点された血管運動症状を有する患者には、患者の血管運動症状が実質的に消失するまで投与されうる。同様に、たとえばCPAは、治療前の重症度が主として中等度と採点される血管運動症状を有する患者には、CPA治療の際に経験するいかなる血管運動症状も軽度であると採点されるまで投与されうる。
【0060】
いくつかの態様において、治療の期間は14日間またはそれより長く、たとえば約60日間である。いくつかの態様において、患者は、少なくとも12週間、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、2〜3年間、または患者が治療を必要とする限りCPAを投与される。
【0061】
いくつかの態様において、剤形は1日1回投与される。いくつかの態様において、剤形は、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、もしくは1日7回またはそれより多く投与される。いくつかの態様において、経口投薬量はCPA約1 mgで処方される。他の量、たとえばCPA約2.5 mg、約5 mg、約10 mg、または約15 mgの経口用量を処方することができる。
【0062】
いくつかの態様において、剤形は、錠剤、丸剤、またはカプレットである。いくつかの態様において、剤形はカプセル剤である。いくつかの態様において、剤形は刻み目のある即時放出錠である。いくつかの態様において、剤形は経口懸濁液、経口溶液、経口乳剤、または液体充填カプセルである。液体充填カプセルには、溶液、固体の結晶を有する懸濁液、または乳剤(液体-液体)が充填されうる。いくつかの態様において、剤形は、口腔内投与用または局所投与用に処方される。
【0063】
CPAは、薬学的に許容される剤形に処方される。これらの剤形には、本発明において教示されるCPAの有効量を含む、経口摂取のための錠剤、コーティング錠、カプレット、コーティングカプレット、糖衣錠、カプセル、カシェ剤、ペレット剤、丸剤、粉剤、顆粒剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤等;ならびに液剤、懸濁剤、乳剤、およびドライパウダーが含まれるがこれらに限定されるわけではない非経口剤形が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、CPAは、液体経口投薬量、注射可能なデポー、鼻腔内送達系、またはたとえばパッチなどの経皮送達系などの他の剤形で提供されうる。任意の剤形で1日当たりに投与されるCPAの量は、実施例1に従って調製される即時放出錠において1日当たり約15 mg以下のCPAの投与によって得られるレベルに対応する血中CPAレベルを提供する。
【0064】
経口投与の場合、CPAは、CPAを当業者に周知の薬学的に許容される不活性物質と組み合わせることによって処方されうる。経口で用いるための薬学的調製物は、CPAを1種類または複数の薬学的に許容される不活性物質に加える段階、任意で得られた混合物を粉砕する段階、および必要に応じて錠剤または糖衣錠コアを得るために追加の適切な薬学的に許容される不活性物質を添加した後、顆粒の混合物を加工する段階によって得られうる。
【0065】
いくつかの態様において、CPAを含む剤形は、朝に朝食と共に、午後に昼食と共に、夕方に夕食と共に、または就寝前に投与されうる。剤形は、食物と共にまたは食物なしで投与されうる。いくつかの態様において、剤形が食物と共に服用される場合のCPAの有効性は、絶食状態で服用される場合と比較して、約2倍増強、約3倍増強、または約4倍増強される。いくつかの態様において、剤形におけるCPAの有効性は、食物と共に服用した場合または食物なしで服用した場合で類似である。いくつかの態様において、CPAは、毎日ほぼ同じ時間に投与される。
【0066】
同様に、CPAが、薬学的に許容される崩壊剤、結合剤/希釈剤/増量剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、保水剤、加湿剤、溶解剤、保存剤等と共に処方に含まれうることは、当技術分野において公知である。投与のための手段および方法は、当技術分野においておよび当業者に公知であり、手引きのために様々な薬物学の参考文献を参照することができる。たとえば、"Modern Pharmaceutics," Banker & Rhodes, Informa Healthcare, 4th ed. (2002);および"Goodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics," McGraw-Hill, New York, 10th ed. (2001)を参照してもよい。
【0067】
剤形におけるCPAの量は異なりうる。たとえば、剤形は、CPA約1〜15 mg、CPA約2.5〜15 mg、CPA約5〜15 mg、CPA約10〜15 mg、CPA約1〜2.5 mg、CPA約1〜5 mg、またはCPA約1〜10 mgを含有しうる。いくつかの態様において、剤形は、約1 mg、約2 mg、約2.5 mg、約3 mg、約4 mg、約5 mg、約6 mg、約7 mg、約8 mg、約9 mg、約10 mg、約11 mg、約12 mg、約13 mg、約14 mg、または約15 mgの量のCPAを含有しうる。
【0068】
本明細書において用いられるように、「不活性物質」は、薬学的組成物の処方において用いられ、それ自身一般的に治療的価値をほとんどまたは全く有しない物質を指す。様々な不活性物質が本発明において用いられうる。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内における、妥当な利益/リスク比に釣り合う、過度の毒性、被刺激性、アレルギー応答、または他の合併症を伴うことなくヒトおよび動物の組織と接触するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。いくつかの態様において、薬学的に許容される不活性物質は、界面活性剤、崩壊剤、増量剤、コーティング、香料、着色料、流動促進剤、潤滑剤、保存剤、抗菌剤、抗酸化剤、吸収剤、キレート剤、緩衝剤、乳化剤、および懸濁剤、またはその組み合わせでありうる。
【0069】
いくつかの態様において、剤形は界面活性剤を含有する。いくつかの態様において、界面活性剤は、約0.1〜約5%(重量/重量)、約0.5〜約3%(重量/重量)、約1.0〜約2.0%(重量/重量)、または約1.5〜約1.8%(重量/重量)の量で存在する。本発明で用いられる界面活性剤は、イオン性または非イオン性のいずれかでありうる。本発明で用いられる界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(たとえば、ポロキサマー)、ポリソルベート80、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、グリセロール、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、レシチンと組み合わせてもよい胆汁酸の塩(たとえば、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩等)、エトキシル化植物油(たとえば、Cremophor(登録商標)EL, BASF AG, Ludwigshafen am Rhein, Germany)、ビタミンEトコフェロールポリエチレンおよびプロピレングリコールコハク酸エステル(たとえば、ビタミンE TGPS)、およびその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0070】
いくつかの態様において、界面活性剤は、CPA:界面活性剤の重量比で約1:0.05〜約0.1:1、約1:0.1〜約0.1:1、約1:0.1〜約0.1:0.1、または約1:1〜約0.1:1で存在する。
【0071】
いくつかの態様において、界面活性剤は、CPA:界面活性剤の重量比で約15:1〜約1:1、約10:1〜約1:1、約8:1〜約1:1、約6:1〜約1:1、約4;1〜約1:1、または約2:1〜約1:1で存在する。
【0072】
いくつかの態様において、剤形は崩壊剤を含有する。崩壊剤は、投与後のその分散または崩壊を容易にするために固体経口剤形に添加される任意の物質または物質の混合物として見なされうる。いくつかの態様において、崩壊剤は、約2%〜約20%(重量/重量)、約7%〜約15%(重量/重量)、または約8%〜約12%(重量/重量)の量で存在する。本発明で用いるための崩壊剤には、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、Veegum、アルギン酸塩、寒天、グアー、トラガカント、イナゴマメ、インドゴム、ペクチン、およびその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、崩壊剤はクロスポビドンである。
【0073】
いくつかの態様において、剤形は増量剤を含有する。いくつかの態様において、増量剤は、約20%〜約95%(重量/重量)、約40%〜約95%(重量/重量)、約60%〜約90%(重量/重量)、または約70%〜約85%(重量/重量)の量で存在する。本発明で用いるために適した増量剤には、微結晶性セルロース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、無水ラクトース、ラクトース一水和物、およびその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、増量剤は無水ラクトースである。いくつかの態様において、増量剤は、微結晶性セルロースである。いくつかの態様において、増量剤は、無水ラクトースと微結晶性セルロースとの混合物である。
【0074】
いくつかの態様において、剤形は流動促進剤を含有する。いくつかの態様において、流動促進剤は、約0.1%〜約3.0%(重量/重量)、約0.4%〜約2.0%(重量/重量)、約0.6%〜約1.5%(重量/重量)、または約0.8%〜約1.0%(重量/重量)の量で存在する。本発明で用いるために適した流動促進剤には、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプン、または三塩基性リン酸カルシウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素である。
【0075】
いくつかの態様において、剤形は潤滑剤を含有する。潤滑剤は、鋳型およびパンチの表面に剤形の材料が接着することを防止することができる、粒子間の摩擦を低減することができる、鋳型キャビティからの投薬量の放出を容易にすることができる、および/または粒子からの投薬量の流速を改善することができる任意の物質または物質の混合物として見なされうる。いくつかの態様において、潤滑剤は約0.5%〜約6.0%(重量/重量)、約1.0%〜約4.0%(重量/重量)、または約2.0%〜約3.0%(重量/重量)の量で存在する。本発明で用いるために適した潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛、およびその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。いくつかの態様において、潤滑剤はステアリン酸である。いくつかの態様において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムとステアリン酸の混合物である。
【0076】
いくつかの態様において、剤形は、CPA約1 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mgまたは約15 mg、約0.1%〜約5%(重量/重量)の量の界面活性剤、約2%〜約20%(重量/重量)の量の崩壊剤、約20%〜約95%の量の増量剤、約0.1%〜約3.0%(重量/重量)の量の流動促進剤、および約0.5%〜約6.0%(重量/重量)の量の潤滑剤を含む錠剤である。いくつかの態様において、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、崩壊剤はクロスポビドンであり、増量剤は、無水ラクトースと微結晶性セルロースの混合物であり、および流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0077】
いくつかの態様において、剤形は、CPA約1 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mgまたは約15 mg、約1.5%〜約1.8%(重量/重量)の量の界面活性剤、約8%〜約12%(重量/重量)の量の崩壊剤、約70%〜約85%の量の増量剤、約0.8%〜約1.0%(重量/重量)の量の流動促進剤、および約2.0%〜約3.0%(重量/重量)の量の潤滑剤を含む錠剤である。
【0078】
いくつかの態様において、剤形におけるCPAは、微粉化される。本明細書において用いられるように、「微粉化された」とは、直径約25μm以下まで低減されている組成物の粒子を指す。
【0079】
本明細書において用いられるように、「粒子サイズ」という用語は、粒子の直径を指す。粒子サイズおよび粒子サイズの分布は、たとえばHyac/Royco粒子サイズアナライザ、Malvern粒子サイズアナライザ、Beckman Coulterレーザー回折粒子サイズアナライザ、Shimadzuレーザー回折粒子サイズアナライザ、もしくは他の任意の粒子サイズ測定機器、または当業者に公知の技術を用いて測定されうる。本明細書において用いられるように、「粒子直径」という用語は、粒子のおよその球状の形状に基づく容積測定に関連する。本発明はまた、半球状、楕円、または円柱状粒子を含みうるがこれらに限定されない。所定のサイズのCPA粒子を包含することに加えて、本発明はまた、CPAおよび賦形剤の粒子サイズの分布が制御される処方および剤形も対象とする。本明細書において用いられるように、「分布」とは、本発明の所定のロット、バッチ、または剤形内での一定のサイズまたはサイズの範囲を有する粒子の数または濃度(すなわち、百分率)を指す。
【0080】
本明細書において用いられるように、「D50」値は、混合物の粒子サイズ、具体的には、組成物または混合物の(粒子の)50%がそれより大きい同等の直径を有し、粒子の残りの50%がそれより小さい同等の直径を有する直径を指す。このように、D50は、一般的に粒子直径の平均値を指す。
【0081】
本明細書において用いられるように、「D90」値は、混合物の粒子サイズ、具体的には、全ての測定可能な粒子の約90%がD90値に等しいかまたはそれ未満のミクロンでの直径を有し、測定可能な粒子の約10%がD90値より大きいミクロンでの直径を有する直径を指す。
【0082】
いくつかの態様において、本発明の剤形におけるCPAは、約25ミクロン以下のD90を有する。いくつかの態様において、本発明の剤形におけるCPAは、約25ミクロン、約20ミクロン、約15ミクロン、約10ミクロン、または約5ミクロンのD90を有する。
【0083】
本明細書において用いられるように、「D10」値は、混合物の粒子サイズ、具体的には、測定可能な全粒子の約10%がD10値に等しいかまたはそれ未満のミクロンでの直径を有し、測定可能な粒子の約90%がD10値より大きいミクロンでの直径を有する直径を指す。
【0084】
混合物における粒子サイズの分布はまた、D10:D50の比、D10:D90の比、およびD50:D90の比によって定義されうる。
【0085】
本明細書において用いられるように、「溶解」とは、それによってCPAが本発明の薬学的剤形から溶液に溶解する過程を指す。CPAの溶解速度は、たとえばUSP I型またはII型溶解装置を用いて測定されうる。いくつかの態様において、薬学的剤形からのCPAの溶解は、水900 mL中に0.35%ラウリル硫酸ナトリウムを含有するUSP II型パドル装置を用いてパドル速度50 rpmで測定される。いくつかの態様において、75%を上回るCPAが30分間で放出される。いくつかの態様において、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%のCPAが30分で放出される。
【0086】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。これらの実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、それを制限するものであると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0087】
実施例1
酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mgを含有する錠剤を調製した。錠剤の処方を表1に示す。
【0088】
(表1)酢酸シプロテロン5、15 mg、および25 mg錠の処方組成

【0089】
酢酸シプロテロンを作成するための技法を以下に記述する。技法は、表1において示される酢酸シプロテロン15 mg錠(バッチサイズ=140,000)の製造について記述するが、たとえば約15 mg以下の酢酸シプロテロンを有する錠剤を作成するために、様々な成分の量をそれに合わせて調整することができる。
【0090】
図1は、表1において記載される成分を用いて酢酸シプロテロン15 mg錠を調製するための過程を表すフローチャート100を提供する。図1を参照して、微粉化酢酸シプロテロン、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスポビドン、および無水ラクトース(101)をCollette Gral 75 Liter High Shear Mixerに入れた。バッグ/容器の中に残っている酢酸シプロテロンを、ミキサーに加える前に、無水ラクトース1さじによってすすいだ。ミキサーのタイマーを2分間に設定し、ミキサー速度「低速」、チョッパー速度「オフ」で起動させた(102)。混合の完了後少なくとも5分間、ミキサー中の粉末を沈降させた。混合に続いて、コロイド状二酸化ケイ素、無水ラクトース、および微結晶性ラクトース(103)をミキサーに加えた。ミキサーのタイマーを3分間に設定して、ミキサー速度「低速」、チョッパー速度「オフ」で起動させた(104)。
【0091】
混和物を清浄なポリエチレン二層容器に放出した。Russell Finex Compact Sieveに#30メッシュスクリーンおよびフタを備え、振動(vibrasonic)設定「オン」、シェーカー設定「オン」で起動させた。混和物を、篩いを通して清浄なポリエチレン二層容器へ通過させた(105)。スクリーン上に残っている凝集物に関しては、篩い分け過程を手動で補助した。
【0092】
材料をミキサーに移した。ミキサーのタイマーを1分間に設定した。混合速度設定「低速」、チョッパー速度設定「オフ」でミキサーを起動させた(106)。ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸(107)を#30メッシュハンドスクリーンを通してミキサーに直接加えて(108)、それを混和物の中に確実に埋もれさせた。
【0093】
ミキサーのタイマーを30秒に設定した。ミキサー速度「低速」、チョッパー速度「オフ」でミキサーを起動させた(109)。混和物を風袋の重量を測定した清浄なポリエチレン二層容器の中に放出した。
【0094】
次に、混和物を打錠に供して(110)、本発明の酢酸シプロテロン錠を生成した(111)。打錠ガイドラインを以下に記載する。
【0095】
打錠ガイドライン

【0096】
実施例2
酢酸シプロテロン5 mg、15 mg、および25 mg錠を、実施例1の過程によって調製した。溶解プロフィールを、水900 mL中に0.35% SLSを含有するUSP II型パドル装置を用いてパドル速度50 rpmで決定した。これらの結果を図2に記載する。
【0097】
実施例3
前立腺癌患者の外科的または内科的去勢後のホットフラッシュの治療のための酢酸シプロテロン5、15、および25 mg/日の安全性および有効性を試験するために、無作為多施設プラセボ対照臨床試験を米国およびカナダにおいて行った。
【0098】
参加基準には、両側精巣摘除術を受けたことがある、またはLHRHアナログ薬(たとえば、Lupron(登録商標)、Zoladex(登録商標)、Aberelix(登録商標))を用いたことがあるかもしくは用いていて、ベースラインにおいて中等度から重度のホットフラッシュが1日当たり少なくとも3回または1週間に21回発生することによって定義される厄介なホットフラッシュを訴えている男性(>18歳)の前立腺癌患者が含まれた。ホットフラッシュは、試験登録前少なくとも1ヶ月間存在した。
【0099】
合計362人の被験者を無作為化して、治療群(arm)当たり分析可能な被験者およそ75人を達成するように、被験者351人を治療した。米国およびカナダにおける合計121カ所の臨床施設がこのフェーズ2試験に参加し、77カ所が被験者少なくとも1人を登録した。各被験者の全試験期間はおよそ19週間であり、これには4週間までのスクリーニング期間、1週間のプラセボ慣らし期間、12週間の二重盲検期間、および試験投薬の最後の投薬の2週間後の追跡電話調査が含まれた。
【0100】
スクリーニング期間の初日にインフォームドコンセントを行った後、被験者は、被験者全員の病歴およびホットフラッシュ歴を記録され、身体検査、胸部X線および公知の血栓塞栓危険因子を査定するためのドップラー法、心リスクを評価するためのECG、および臨床検査評価を受けた。スクリーニング期間中に行われた検査の全ての結果が得られた後、参加基準を全て満たし、除外基準をいずれも満たさない被験者を、1週間の単盲検プラセボ慣らし期間に入るために適格とした。プラセボ慣らし期間のあいだに中等度から重度のホットフラッシュを少なくとも21回(平均3回/日)を有した被験者、および全ての適格性基準を満たし続けた被験者を、12週間の二重盲検期間に参加するように要請して、4つの二重盲検治療群の1つに均等に無作為化した:CPA 5、15、もしくは25 mg/日、またはプラセボ。試験投薬の開始後、被験者は2、4、8、および12週目に試験診察を受けた。最後の治療の2週間後に電話での追跡調査を行って、最後の試験診察以降の有害事象(「AE」)を記録して評価した。
【0101】
各被験者は、経口投与される錠剤を1日1錠与えられた。錠剤は全て盲検であり、外観は同一であった。本試験において用いられた処方は、CPA 5、15、または25 mgを含有する即時放出産物であった。CPA錠は、実施例1に記述する。本試験において用いられるCPAの剤形は、酢酸シプロテロン、ラクトース、微結晶性セルロース、クロスポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸からなる、各用量の同一で、盲検で、変形卵形で、刻み目がある、即時放出型の経口錠であった。プラセボ錠には、CPAを含まない同じ成分が含まれ、外観は活性錠と同一であった。
【0102】
単盲検プラセボ慣らし期間のあいだ、被験者は、1週間+2日分の供給量(全部で9錠)の単盲検プラセボ錠を含有する投薬ボトル1つと被験者情報シート1枚を受け取った。被験者は、毎朝、好ましくは食事と共に経口で1錠を毎日ほぼ同じ時間に服用するように指示された。被験者は、プラセボを受け取っていることに気づかなかった。
【0103】
2回目の診察時に無作為化した後、登録した適格な被験者全員を4つの治療群(CPA 5、15、25 mg、またはプラセボ)の1つに均等に無作為化して、同じ日に試験投薬を行った。開始後0、4、および8週目での治療診察で、各被験者は、1ヶ月分の供給量+7個(全部で35錠)の二重盲検プラセボ錠を含有する投薬ボトル1つと被験者情報シート1枚を受け取った。被験者は、毎朝、好ましくは食事と共に経口で1錠を毎日ほぼ同じ時間に服用するように指示された。
【0104】
本試験は、前立腺癌患者におけるホットフラッシュを治療するために、CPAの3つの用量(5 mg、15 mg、および25 mg)を評価するために設計された。ホットフラッシュの頻度および重症度の低減の観察は、活性薬治療の有効性に関する妥当で信頼可能な指標であると見なされた。
【0105】
有効性の第一義的測定は、プラセボ慣らし期間から治療の最終週までの、中等度から重度のホットフラッシュの週毎の頻度および週毎の重症度の平均値の変化であった。他の第二義的有効性評価には、プラセボ慣らし期間から治療の最終週までの全てのホットフラッシュの週毎の重症度の変化、および全てのホットフラッシュの完全な消失を経験した被験者の比率が含まれた。
【0106】
試験において治療された患者の人口統計およびベースライン特徴を表2に示す。
【0107】
(表2)被験者の人口統計およびベースライン特徴

【0108】
図3は、治療された患者における酢酸シプロテロンおよび15β-OH酢酸シプロテロン(薬物の有効性に関与する酢酸シプロテロンの分解産物)濃度の分析を図によって描写する。3つの用量、すなわち5 mg/日、15 mg/日、および25 mg/日は全て、用量に比例した応答を示す。
【0109】
表3は、治療された患者における中等度から重度のホットフラッシュの週毎の総頻度に関するベースラインから治療終了までの変化の分析に関連する知見を要約する。3つの治療群は全て、プラセボに対して、中等度から重度のホットフラッシュの週毎の総頻度において統計学的に有意な低減を示した。プラセボと比較して、CPA 5 mg/日群では、中等度から重度のホットフラッシュは23.08回少なかったが、CPA 15 mg/日および25 mg/日群では、中等度から重度のホットフラッシュはそれぞれ27.66回および28.75回少なかった。図4は、中等度/重度のホットフラッシュの回数の1日の平均値の、ベースラインからの低減を図によって描写する。
【0110】
(表3)第一義的転帰分析:週毎の中等度から重度のホットフラッシュの総頻度:ベースライン(0日目)から治療終了日(84日目)までの変化

* 変化=週毎の中等度から重度のホットフラッシュの総頻度の変化(0日目から84日目[または治療終了])
** 差=活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの差。
*** P値:活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの有意性を生データ分析において試験した。
【0111】
治療した患者における中等度から重度のホットフラッシュの週毎の重症度の平均値に関するベースラインから治療終了までの変化の分析を表4に表す。3つの治療群は全て、プラセボに対して、中等度から重度のホットフラッシュの週毎の重症度の平均値において統計学的に有意な低減を示した。4点尺度を用いると、プラセボと比較して、CPA 5 mg/日群では、中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値は0.86単位低減したが、CPA 15 mg/日および25 mg/日群では、重症度の平均値はそれぞれ1.13単位および0.94単位低減した。
【0112】
(表4)第一義的転帰分析:週毎の中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値:ベースライン(0日目)から治療終了(84日目)までの変化

* 変化=週毎の中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値の変化(0日目から84日目[または治療終了])
** 差=活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの差。
*** P値:活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの有意性を生データ分析において試験した。
【0113】
表5は、試験期間に対して全てのホットフラッシュの完全な消失を経験した被験者の各治療群における比率を要約する。全てのホットフラッシュの完全な消失を経験したプラセボ群の被験者の比率は1.25%(被験者80人中1人)であった。3つ全ての活性薬治療群に関して、当該比率は有意に高かった。CPA 5 mg/日群は27.27%の比率(被験者77人中21人)を有し、CPA 15 mg/日群は32.63%の比率(被験者95人中31人)、およびCPA 25 mg/日群は36.05%の比率(被験者86人中31人)を有した。活性薬治療群の被験者は、全てのホットフラッシュの完全な消失に関して、プラセボと比較して有意な差を示した。
【0114】
(表5)第二義的転帰分析:中等度から重度のホットフラッシュの完全な消失を有する被験者の比率

【0115】
表6は、治療した患者における全てのホットフラッシュの週毎の頻度の平均値に関するベースラインから治療終了までの変化の分析に関連する知見を要約する。3つの治療群は全て、プラセボに対して、全てのホットフラッシュの週毎の頻度の平均値において統計学的に有意な低減を示した。プラセボと比較して、CPA 5 mg/日群では、ホットフラッシュの頻度の平均値は27.73単位低減したが;CPA 15 mg/日および25 mg/日群では、当該頻度の平均値はそれぞれ32.69単位および33.93単位低減した。
【0116】
(表6)第一義的転帰分析:全てのホットフラッシュの週毎の頻度の平均値:ベースライン(0日目)から治療終了(84日目)までの変化

* 変化=週毎の全てのホットフラッシュの頻度の平均値の変化(0日目から84日目[または治療終了])
** 差=活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの差。
*** P値:活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの有意性を生データ分析において試験した。
注:試験治療-施設間相互作用(1つ以上の治療群において被験者3人未満)により1つの「スーパー施設(super site)」にプールされたのは0カ所であった。
【0117】
表7は、治療した患者における全てのホットフラッシュの重症度の週毎の平均値に関するベースラインから治療終了までの変化の分析に関連する知見を要約する。3つの治療群は全て、プラセボに対して、全てのホットフラッシュの重症度の週毎の平均値において統計学的に有意な低減を示した。4点尺度を用いると、プラセボと比較してCPA 5 mg/日群では、中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値は0.60単位低減したが、CPA 15 mg/日および25 mg/日群では、重症度の平均値はそれぞれ0.78単位および0.77単位低減した。
【0118】
(表7)第二義的転帰分析:全てのホットフラッシュの週毎の重症度の平均値:ベースライン(0日目)から治療終了(84日目)までの変化

* 変化=週毎の全てのホットフラッシュの重症度の平均値の変化(0日目から84日目[または治療終了])
** 差=活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの差。
*** P値:活性薬治療群と対応するプラセボとのあいだの有意性を生データ分析において試験した。
注:試験治療-施設間相互作用(1つ以上の治療群において被験者3人未満)により1つの「スーパー施設」にプールされたのは0カ所であった。
【0119】
1週間のプラセボ慣らし期間の後に12週間の活性薬治療またはプラセボを組み入れるこの二重盲検試験は、CPAの5 mg、15 mg、および25 mg用量が、ベースラインから治療終了までプラセボと比較して、中等度から重度のホットフラッシュの週毎の頻度および重症度を有意に低減させることを示した。治療した患者に関して、CPA 5 mg/日群では、プラセボと比較して、中等度から重度のホットフラッシュの頻度は23.08回低減した。プラセボと比較して、CPA 15 mg/日群では頻度は27.66回低減し、CPA 25 mg/日群では頻度は28.75回低減した。加えて、ベースラインから治療終了までの全てのホットフラッシュの頻度の平均値の低減の第二義的分析に関して、3つの治療群全てにおいて、プラセボと比較して、頻度の平均値が有意に低減した。
【0120】
中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値も同様に、プラセボと比較して、3つ全ての活性薬治療群において有意に低減した。治療された患者に関して、CPA 5 mg/日群では、プラセボと比較して、中等度から重度のホットフラッシュの重症度の平均値をさらに0.86低減できたが、CPA 15 mg/日群および25 mg/日群も同様にそれぞれ、1.13および0.94の低減を示した。加えて、ベースラインから治療終了までの全てのホットフラッシュの重症度の平均値の低減に関する第二義的分析において、3つの治療群全てにおいて、プラセボと比較して、重症度の平均値が有意に低減した。
【0121】
本治験の結果は、CPAの3つの用量が全て、軽度、中等度、および重度のホットフラッシュが含まれる全てのホットフラッシュの治療において有効であることを示唆している。
【0122】
頻度が3%以上と報告された、治療により出現したAEの体組織毎の発生率を、全ての治療被験者に関してMedDRAの基本語により表8に提供する。CPA 5 mg/日群は、治療により出現したAEを経験する被験者の割合が最も少なく、これにプラセボ群、CPA 15 mg/日群、および最後にCPA 25 mg/日群が続いた。この治験の結果は、プラセボとCPA 5 mg/日群とが類似の有害事象プロフィールを有したことを示している。
【0123】
被験者の3%以上に発生した、治療により出現したAEの中で、いくつかのAEは、用量と共に増加する発生率に関連した。女性化乳房はCPA 5 mg/日群の被験者においては報告されなかったが、発生率は、CPA 15 mg/日群では2.02%に、およびCPA 25 mg/日群では4.60%に増加した。末梢浮腫は、CPA 5 mg/日群では被験者の1.23%に発生し、CPA 15 mg/日群では1.01%に発生した。この発生率はCPA 25 mg/日群では5.75%に増加した。呼吸困難は、CPA 5 mg/日群では被験者の3.70%に発生した。この発生率はCPA 15 mg/群では7.07%に増加し、CPA 25 mg/日群では8.05%に増加した。最後に、めまいは、CPA 5 mg/日群では被験者の2.47%に発生した。この百分率は、CPA 15 mg/日群では7.07%に増加した;しかし、この割合はCPA 25 mg/日群では増加し続けなかったもののCPA 5 mg/日群よりなおも高く、4.60%であった。
【0124】
(表8)有害事象:被験者の3%以上に発生した、治療により出現した有害事象の発生率

【0125】
3%以上の頻度で報告された、試験投薬に、ひょっとしたら、おそらく、または間違いなく関連すると判断されたAEの発生率を表9に表す。便秘の症例において、CPA 15 mg群では6例中2例が試験投薬に関連すると判断され、CPA 25 mg群では3例全てが関連すると判断された。呼吸困難に関して、CPA 15 mg群および25 mg群の双方における7例中4例が試験投薬に関連すると見なされた。
【0126】
(表9)有害事象:被験者の3%以上に発生した、治療関連有害事象の発生率

【0127】
本試験の結果を、CPA 50 mgおよび100 mgについての有効性を調べたこれまでの試験の結果と比較した。中等度から重度のホットフラッシュの毎日の回数の平均値の低減およびホットフラッシュの重症度の平均値の低減を示す、50 mgおよび100 mgについての試験に関する有効性のデータをそれぞれ、図6および7に示す。治療12週目において全ての試験で全てのホットフラッシュの完全な消失を示す患者の百分率の比較を、表10に示す。
【0128】
(表10)12週目/試験終了時において全てのホットフラッシュが完全に消失した全患者の百分率

【0129】
全ての試験において中止した割合の比較を表11に示す。
【0130】
(表11)全ての試験における12週間の二重盲検の中止割合

【0131】
結論
特定の態様に関する前述の説明は、本発明の全般的性質を完全に明らかにすると考えられるため、当業者の知識を適用することによって、本発明の全般的性質から乖離することなく、過度の実験なしに、そのような特定の態様を様々な用途のために容易に改変および/または適合させることができる。ゆえに、そのような適合および改変は、本明細書において示された教示および手引きに基づいて、本開示の態様の同等物の意味および範囲に含まれると意図される。本明細書における句または用語は、説明する目的のためであって制限するためではなく、本明細書の用語または句は、教示および手引きに照らして当業者によって解釈されるべきであると理解されるべきである。
【0132】
本明細書において言及した全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が具体的におよび個々に参照により本明細書に組み入れられることが示されるのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする去勢された前立腺癌患者に、1日当たり約15mg以下の酢酸シプロテロンを投与する段階を含む、前記患者において血管運動症状を治療するための方法。
【請求項2】
患者が1日当たり少なくとも3回の血管運動症状を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が1週間当たり少なくとも21回の血管運動症状を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
治療が血管運動症状の重症度を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
治療が1日当たりの血管運動症状の回数を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者が少なくとも14日間治療される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
患者が少なくとも60日間治療される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
患者が少なくとも12週間治療される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者が少なくとも6ヶ月間治療される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
患者が2から3年間治療される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
患者が少なくとも14日間継続的に治療される、請求項6記載の方法。
【請求項12】
1日当たり約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
1日当たり約5mgの酢酸シプロテロンが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
1日当たり約10mgの酢酸シプロテロンが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
1日当たり約15mgの酢酸シプロテロンが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
患者が化学的に去勢された前立腺癌患者である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
患者が精巣摘除された前立腺癌患者である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
投与が経口であり、かつ1日当たり1回である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
投与が経口であり、かつ1日当たり2〜5回の投薬に分割される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと、
約0.1%から約5.0%(wt/wt)の量の界面活性剤、約2%から約20%(wt/wt)の量の崩壊剤、および約20%から約95%(wt/wt)の量の充填剤を含む薬学的に許容される不活性物質と
を含む、薬学的剤形。
【請求項21】
酢酸シプロテロンと界面活性剤が約1:0.05から約0.1:1の比率で存在する、請求項20記載の薬学的剤形。
【請求項22】
約0.1%から約3.0%(wt/wt)の量の流動促進剤と約0.5%から約6.0%(wt/wt)の量の潤滑剤とをさらに含む、請求項20記載の薬学的剤形。
【請求項23】
酢酸シプロテロンのD90が約25ミクロン以下である、請求項20記載の薬学的剤形。
【請求項24】
900mLの水中に0.35%ラウリル硫酸ナトリウムを含むUSP II型パドル装置を使用して50rpmのパドル速度で試験した場合、75%を上回る酢酸シプロテロンが30分以内に放出される、請求項20記載の薬学的剤形。
【請求項25】
約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと、
ラウリル硫酸ナトリウム、クロスポビドン、無水ラクトース、および微結晶性セルロースを含む、薬学的に許容される不活性物質と
を含む、薬学的剤形。
【請求項26】
約1mgから約15mgの酢酸シプロテロンと薬学的に許容される不活性物質とをそれぞれ含む複数の薬学的剤形を含む、パッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−505253(P2012−505253A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531244(P2011−531244)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/060381
【国際公開番号】WO2010/042930
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507115698)テバ ウィメンズ ヘルス インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】