説明

低輻射率および高透湿性を有する、無機層でコーティングされた多孔質金属化シート

金属化透湿性シートに少なくとも1つの外部無機コーティング層をコーティングすることによって形成された、低輻射率を有する金属化複合シートであって、この複合シートの透湿性は、出発シートの透湿性の少なくとも約80%である、金属化複合シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層の腐食を防止するための無機表面層を有する金属化透湿性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野においては、建築構造内のハウスラップとして透湿性(通気性)金属化シートを使用することが知られている。金属化シートでは、水蒸気がシートを通過することができ、そのため、シートの裏側に取り付けられる断熱材中での水分の凝縮が防止され、同時に、空気および液体の水のバリアとなり、さらに、建築物のエネルギー効率が高められる。ジョーンズ(Jones)らに付与された特許文献1には、プレキシフィラメント状(plexifilamentary)フィルム−フィブリルシートをカレンダー加工した後に真空金属化を行うことによって製造された、低輻射率の透湿性金属化ポリエチレンシートが記載されている。アベラネット(Avellanet)に付与された特許文献2には、少なくとも1つの金属化層を上に有し、蒸気が透過性または不透過性となることができる、浸透およびエネルギーの障壁が記載されている。スクワイアーズ(Squires)らに付与された特許文献3には、微孔質フィルムの下層と、スパンボンド布などのフィラメント状ポリマー布で形成され、透湿性反射性金属コーティングが設けられた最上層とを含む、通気性建築用膜が記載されている。上記の通気性金属化シートは、赤外線を反射することによって熱障壁となるが、空気および湿気に曝露すると金属層の酸化が起こりやすい。酸化した金属層は一般に、対応する金属よりも輻射率が高くなり、熱障壁としての有効性が低くなる。さらに、露出した薄い金属層は、加工、取り付けなどの間に損傷する可能性がある。
【0003】
アブリル(Avril)らに付与された特許文献4には、第1のポリマーフィルム層の上に金属層を蒸着し、その金属層を第1のポリマーフィルム層と第2のポリマーフィルム層との間に挟むことによって形成された反射フィルム層を含むハウスラップや屋根下敷材などの建築用布としての使用に適した液体不透過性で水蒸気/ガス透過性の積層布が記載されている。これらのフィルム層は、使用時に金属層を損傷から保護するが、不透湿性であるため、金属化の後で微小な孔が開けられることで、所望の透湿性が得られる。
【0004】
有機ポリマーがコーティングされた金属化不織布も、ハウスラップなどの建築最終用途で知られている。しかし、このポリマーコーティングは、コーティングされていない金属化不織シートよりも透湿性が大きく低下する方法を使用して適用されている。ブラウン(Brown)らに付与された特許文献5には、外部クラッディング層とフレームとの間の空隙内に、反射層と通気性織物層とを含んでなる断熱膜を導入するステップを含む建築物の断熱方法が記載されている。場合により、この金属化層には、金属表面を保護するためにプラスチックまたはワニスの保護層をコーティングすることができる。
【0005】
エアナイフコーティング、フレキソ印刷、グラビアコーティングなどの従来方法を使用して実質的に全面にわたって透湿性シートにコーティングされる場合、そのコーティングによってシートの透湿性が低下する。最初のシートが開放構造を有し高い通気性である場合は、コーティング後もそのシートは、衣服などのある種の最終用途において有用となるのに十分な透湿性を維持することができる。たとえば、カラー(Culler)に付与された特許文献6に記載される布は、金属化および疎油性コーティングのコーティングの後で通気性と透湿性との両方を有する。しかし、建設業界においてハウスラップまたはルーフライニングとして使用される不織シートおよびその他のシートなど、最初の透湿性シートが非常に閉鎖した構造を有し通気性が非常に低い場合、従来のコーティングはシート表面上の孔隙を実質的に覆ってしまう。この結果、最初のシートよりも実質的に低い透湿性を有するコーティング済みシートが得られる。このことは、水蒸気が透過性であり、同時に空気および液体の水の浸入に対する障壁を形成することが好ましいハウスラップおよびルーフライニング製品においては望ましくない。さらにこの方法では、コーティングされていない金属層よりも実質的に高い輻射率を有するコーティング済みシートが得られる。
【0006】
特許文献7(ミハエル(Mikhael)ら)には、ポリマー層、および場合により金属またはセラミックの層で、不織布または紙などの多孔質基材に機能付与する方法が開示されている。一実施形態によると、この方法は、所望の官能性を有するモノマーを真空チャンバー中でフラッシュ蒸発させて蒸気を発生させるステップと、その蒸気を多孔質基材上で凝縮させて、そのモノマーのフィルムを多孔質基材上に形成するステップと、そのフィルムを硬化させて官能化ポリマー層を多孔質基材上に形成するステップと、そのポリマー層の上に無機層を真空蒸着させるステップと、その無機層の上に、第2のモノマーのフィルムのフラッシュ蒸発および凝縮を行い、その第2のフィルムを硬化させて第2のポリマー層を無機層の上に形成するステップとを含む。ミハエル(Mikhael)らは、多孔質基材上で第1のモノマーのフィルムのフラッシュ蒸発および凝縮を行って、第1のモノマーのフィルムを多孔質基材上に形成するステップと、そのフィルムを硬化させて官能化ポリマー層を多孔質基材上に形成するステップと、そのポリマー層の上に金属層を真空蒸着するステップと、その金属層の上で第2のモノマーのフィルムのフラッシュ蒸発および凝縮を行い、その第2のフィルムを硬化させて、金属層の上に第2のポリマー層を形成するステップとを含む、別の一実施形態も開示している。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,999,222号明細書
【特許文献2】米国特許第4,974,382号明細書
【特許文献3】国際公開第01/28770号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1400348号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0136078号明細書
【特許文献6】米国特許第5,955,175号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0213918A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハウスラップおよびルーフライニングなどの建築用途、ならびに衣服およびテントなどの良好な熱障壁特性が要求される他の用途において、酸化に対する良好な防御を有しながら、高い透湿性および良好な熱障壁特性を犠牲にしない金属化シートの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、本発明は、透湿性可撓性多層複合材料であって、透湿性シートと、透湿性基材の第1の外面に隣接する金属層と、金属層の酸化が実質的に起こらず、また多層複合材料の輻射率が約0.2未満であるように金属層上に堆積された無機材料の外部コーティング層とを含んでなる、透湿性可撓性多層複合材料に関する。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、金属層を有する透湿性シートのコーティング方法であって、金属層を腐食から保護すると同時に、低輻射率および高水蒸気透過率を維持するための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「不織布」、「不織シート」、「不織層」、および「不織ウェブ」は、編物や織物とは対照的に、特定可能なパターンを有さずに不規則な方法で配置されて平面状の材料を形成する個別のストランド(たとえば、繊維、フィラメント、またはスレッド)の構造を意味する。本明細書において、用語「繊維」は、短繊維および連続フィラメントを含むために使用される。不織布の例としては、メルトブローンウェブ、スパンボンド不織ウェブ、フラッシュ紡糸ウェブ、カードウェブおよびエアレイドウェブなどの短繊維を主成分とするウェブ、スパンレースウェブ、ならびに2種類以上の不織ウェブを含んでなる複合シートが挙げられる。
【0012】
本明細書において、用語「織物シート」は、交差する経糸および緯糸のパターンで織ることによって形成されたシート構造を意味するために使用される。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「スパンボンド繊維」は、押し出される繊維の直径を有する、複数の微細で通常は円形の紡糸口金のキャピラリーから溶融した熱可塑性ポリマー材料を繊維として押し出した後、引き抜くことにより急速に細くして、次にそれらの繊維を冷却することによって溶融紡糸される繊維を意味する。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「メルトブローン繊維」は、複数のキャピラリーから溶融加工可能なポリマーを溶融物流として高速ガス(たとえば空気)流に押し出すことを含んでなるメルトブローによって溶融防止される繊維を意味する。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布」(「SMS」)は、2つのスパンボンド層の間に挟まれて接合されたメルトブローン繊維のウェブを含んでなる多層複合シートを意味する。スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンドウェブ(「SMMS」)などのように、追加のスパンボンド層および/またはメルトブローン層を、この複合シート中に組み込むことができる。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「プレキシフィラメント状」は、約4ミクロン未満の平均フィルム厚さおよび約25ミクロン未満のメジアンフィブリル幅を有する、不規則な長さの多数の薄いリボン状フィルム−フィブリル要素の三次元一体型網目構造またはウェブを意味する。プレキシフィラメント状構造においては、フィルム−フィブリル要素は、その構造の長手方向軸にほぼ同一の広がりで配列しており、これらは、その構造の長さ、幅、および厚さの全体のさまざまな位置の不規則な間隔で断続的に結合および分離が起こることで、連続的な三次元網目構造を形成している。本明細書においては、プレキシフィラメント状フィルム−フィブリル要素の不織ウェブを「フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート」と呼ぶ。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「テープ」は、スリットフィルムから形成された偏平なストランドなどの偏平なストランドを意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「金属」は、金属だけでなく合金も含んでいる。
【0019】
一実施形態において、本発明は、透湿性シート層の少なくとも一方の面に少なくとも1つの金属層をコーティングし、シート層とは反対側の金属層の面の上に薄い無機コーティング層をコーティングすることによって形成された、金属化透湿性複合シートに関する。驚くべきことに、この無機コーティング層は、金属化透湿性シート層の輻射率または水蒸気透過率に対して悪影響を与えない。さらに驚くべきことに、金属層を腐食から保護するためには非常に薄いコーティングで十分である。これらのコーティングは、好ましくは、透湿性を実質的に低下させずにシート層を実質的にコーティングする条件下で蒸着技術を使用して真空下で形成される。本発明の複合シートは、高い透湿性および良好な熱障壁特性を有する。本発明の複合シートは、液体の水の浸入に対して高い障壁(高い静水頭)が得られるように選択することもでき、このこともハウスラップおよびルーフライニングなどの建築最終用途において重要である。本発明の複合シートによって得られる諸性質のバランスは、建設業界において現在利用可能な金属化シートよりも優れている。本発明の複合シートは、既存のまたは新しい建造物中に使用すると好適な薄くて丈夫な透湿性で空気および熱の障壁となる。出願中の米国特許出願第10/924,218号明細書に記載されるように壁および/または屋根システム中に使用する場合、本発明の複合シートは、新しき建造物および改装された建築物に対して、より高いエネルギー効率が要求される建築法規に適合させるために好都合である。米国特許出願第10/924,218号明細書は、デラウェア州ウィルミントンのイーアイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE)(以降デュポン(DuPont)とする)にも譲渡されている。
【0020】
本発明の複合シートは、衣服、テント、および寝袋などの物品などの高いエネルギー効率が要求される品目中の熱障壁として使用することもできる。
【0021】
本発明の複合シートは、シート/M/IL、シート/L1/M/IL、およびシート/L1/M/L2/M/ILなどの構造を含み、ここで、シートは透湿性シート層であり、Mは低輻射率金属層であり、ILは無機外部層であり、L1およびL2は有機または無機コーティング層である(有機コーティング層は、有機ポリマー、または有機オリゴマー、あるいはそれらのブレンドを含んでなる)。本明細書において略語「L1」は、金属層が堆積される前にシート層の表面上に堆積される場合による中間の有機または無機コーティング層を意味するために使用される。この中間コーティング層は、中間コーティング層を含まない複合シートよりも、複合シートの熱障壁特性を改善すると考えられている。本発明の複合シートは、前述の構造で「IL」で示されるように、金属層の上に重ねられる外部無機コーティング層を含む。シート層は、前述の構造のように一方の側にコーティングすることもできるし、あるいは、IL/M/シート/M/IL、IL/M/L1/シート/L1/M/ILなどの構造のように両側にコーティングすることもできる。2つ以上の金属層を有する複合シート構造においては、個々の金属層は、同じまたは異なる金属から形成することができるし、同じまたは異なる厚さを有することができる。同様に、2つ以上の無機および/または有機コーティング層を有する構造においては、個々のコーティング層が、同じまたは異なる組成および/または厚さを有することができる。各金属層は、2つ以上の隣接金属層を含んでなることができ、それらの隣接金属層は同じ場合も異なる場合もある。同様に、各無機および/または有機層は、2つ以上の隣接層を含んでなることができ、それらの隣接層は同じ場合も異なる場合もある。
【0022】
本発明の一実施形態においては、透湿性シート層の片面または両面は、繊維状表面または多孔質フィルムなどの多孔質外面を含んでなり、この外面に無機層および金属層がコーティングされる。コーティングされる面上の繊維またはフィルムの露出面または「外」面のみがコーティングされ、孔隙は覆われないように、これらの有機または無機層および金属層が多孔質表面上に堆積される。
【0023】
本発明の複合シートの形成に好適な透湿性シート層は、空気の浸入に対する障壁となると一般に見なされる、約5〜約12,000ガーレー秒(Gurley second)の間、さらには約20〜約12,000ガーレー秒の間、さらには約100〜約12,000ガーレー秒の間、さらには約400〜約12,000ガーレー秒の間などの比較的低い透気度を有することができる。あるいは、本発明の透湿性シート層は、ガーレー・ヒル(Gurley Hill)透気度が5秒未満となり、透気度がフラジール(Frazier)通気度の範囲内となるシートなどの比較的高い透気度を有するように選択することもできる。比較的高い透気度を有する複合シートは、少なくとも約35g/m/24時間、さらには少なくとも約200g/m/24時間、さらには少なくとも約600g/m/24時間、さらには約1000g/m/24時間を超える透湿度(「水蒸気透過率」またはMVTRとも記載する)と、少なくとも約20cmHO、さらには少なくとも約50cmHO、さらには少なくとも約100cmHO、さらには少なくとも約130cmHOの静水頭とを有することができる。ハウスラップとして使用する場合、本発明の複合シートは好ましくは少なくとも約35N/cmの引張強度を有する。
【0024】
本発明の透湿性シート層は、水蒸気が透過できるあらゆる可撓性シートであってよい。好適な透湿性シート層は、多孔質シートであり、たとえば、織成された繊維またはテープのシートなどの織布;あるいはフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート、スパンボンド不織シート、スパンボンド−メルトブローン不織シート、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織シートなどの不織布;あるいは微孔質フィルム、微細穿孔フィルム、または透湿性モノリスフィルムなどの透湿性フィルム;あるいは紙、あるいは不織布または織布またはスクリム層と、微孔質フィルム、微細穿孔フィルム、または透湿性モノリスフィルムなどの透湿性フィルム層とを含む積層体などの多孔質シートである。最初のシート層は、従来のコーティング方法を使用してコーティングされた透湿性シートを含んでなることができる。たとえば、建設業界において現在使用されているシートとしては、ポリマーフィルム層がコーティングされ微細穿孔された織成テープのシートが挙げられる。シート層は、種々のポリマー組成物から形成することができる。たとえば、建設業界において使用されるシートは、通常、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、あるいはポリアミドから形成される。透湿性シート層は、通常、約10g/m〜約100g/mの間、または約40g/m〜約100g/mの間の坪量を有する。しかし、透湿性層は、積層構造であってもよく、たとえば、坪量が約60g/mのポリエチレンのフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートと、坪量が約70g/mのスパンボンドポリプロピレンのシートとの積層体であり、デラウェア州ウィルミントンのイーアイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE)(以降デュポン(DuPont)とする)より入手可能なタイベック(TYVEK)(登録商標)SUPROなどであってよい。好適な積層体は、接着剤を含めて、約140 g/m〜約300g/mの間の坪量を有することができる。
【0025】
一実施形態において、透湿性シートは、デュポン(DuPont)より入手可能なタイベック(Tyvek)(登録商標)フラッシュ紡糸高密度ポリエチレンなどのフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状ポリオレフィンシートである。好適なフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状フィルム−フィブリル材料は、ポリプロピレンからできていてもよい。透湿性シートは、フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートと溶融紡糸スパンボンドシートとを含んでなる積層体などの、1つもしくはそれ以上の追加層を有するフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートの積層体であってよい。プレキシフィラメント状フィルム−フィブリルストランド材料のウェブ層を形成するためのフラッシュ紡糸法は、米国特許第3,081,519号明細書(ブレーズ(Blades)ら)、第3,169,899号明細書(シュトイバー(Steuber))、第3,227,784号明細書(ブレーズ(Blades)ら)、第3,851,023号明細書(ブレトハウア(Brethauer)ら)に開示されている。
【0026】
透湿性シートは、市販のハウスラップまたはルーフライニング製品であってもよい。建築構造中に使用されるポリエチレンフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートとしては、タイベック(Tyvek)(登録商標)SUPROルーフライニング、タイベック(Tyvek)(登録商標)ホーム・ラップ(HomeWrap)(登録商標)、およびタイベック(Tyvek)(登録商標)コマーシャル・ラップ(CommercialWrap)(登録商標)が挙げられる。タイベック(Tyvek)(登録商標)ホーム・ラップ(HomeWrap)(登録商標)およびコマーシャル・ラップ(CommercialWrap)(登録商標)は、デュポン(DuPont)の登録商標である。透湿性シート層として好適な他のハウスラップ製品としては、白色に着色されたポリエチレンが一方の側にコーティングされ、さらに穿孔された高密度ポリエチレンスリットフィルムの織布であるエア・ガード(Air−Guard)(登録商標)ビルディングラップ(Buildingwrap)(オンタリオ州ノースベイのファブレン・インコーポレイテッド(Fabrene,Inc.,North Bay,Ontario)製造)、一方の側にコーティングされ、さらに穿孔されたポリプロピレンスリットフィルムの織布であるピンクラップ(Pinkwrap)(登録商標)ハウスラップ(Housewrap)(オハイオ州トレドのオーウェンス・コーニング(Owens Corning,Toledo,OH)製造)、微小穿刺され波形表面を有するクロスプライ積層ポリオレフィンフィルムであるピンクラップ・プラス(Pinkwrap Plus)(登録商標)ハウスラップ(Housewrap)(オハイオ州トレドのオーウェンス・コーニング(Owens Corning,Toledo,OH)製造)、一方の側にコーティングされ、さらに穿孔された高密度ポリエチレンフィルムの織布であるタフ・ラップ(Tuff Wrap)(登録商標)ハウスラップ(Housewrap)(フロリダ州タンパのセロテックス・コーポレーション(Cellotex Corporation,Tampa,FL)製造)、エンボス加工によって表面に小さなくぼみが形成された不織スクリムに接合されたポリオレフィンシートであるタフ・ウェザー・ラップ(Tuff Weather Wrap)(登録商標)(フロリダ州タンパのセロテックス・コーポレーション(Cellotex Corporation,Tampa,FL)製造)、一方の側にコーティングされ、さらに穿孔されたポリプロピレンスリットフィルムの織布であるグリーンガード・ウルトラ・アモラップ(Greenguard Ultra Amowrap)(登録商標)(ジョージア州スマーナのアモコ(Amoco,Smyrna,GA)製造)、クリアコーティングがコーティングされた非穿孔不織膜であるウェザーメイト(Weathermate)(登録商標)プラス・ハウスラップ(Plus Housewrap)(ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company,Midland,MI)製造)、およびコーティングされたスパンボンドポリプロピレンシートであるタイパー(Typar)(登録商標)ハウスラップ(Housewrap)(テネシー州オールドヒッコリーのリーメイ(Reemay,Old Hickory,TN)製造)が挙げられる。
【0027】
場合によっては、実質的に空気不透過性である透湿性シート層の使用が望ましいことがある。たとえば、透湿性シート層は、不織布または織布またはスクリムと透湿性フィルム層との積層体を含んでなることができ、この透湿性フィルム層は微孔質フィルムまたはモノリスフィルムである。一般に、1つもしくはそれ以上の透湿性フィルム層は、外部の不織布または織布またはスクリム層の間に挟まれ、少なくとも1つの外部層の上に金属および無機コーティング層を堆積することによって、外部の無機コーティング層が複合シートの外面を形成する。このような一実施形態においては、1つの透湿性フィルム層が、2つの短繊維不織層の間、または2つの連続フィラメント不織層の間、または2つの織布の間に挟まれる。複数の外部の布またはスクリム層は、同じ場合もあるし、異なる場合もある。
【0028】
透湿性モノリス(非多孔質)フィルムは、薄くて連続した透湿性であり実質的に液体不透過性であるフィルムとして押し出すことができるポリマー材料から形成される。このフィルム層は、従来の押出コーティング方法を使用して、第1の不織布基材層または織物基材層の上に直接押し出すことができる。好ましくは、このモノリスフィルムは、厚さが約3ミル(76マイクロメートル)以下であり、さらには厚さが約1ミル(25マイクロメートル)以下であり、さらには厚さが約0.75ミル(19マイクロメートル)以下であり、さらには厚さが約0.60ミル(15.2マイクロメートル)以下である。ある押出コーティング方法においては、層間の接合を改善するために、一般にフィルム層が完全に固化する前に、押し出された層と基材層とが、一般に、2つのロール(加熱または非加熱)の間に形成されるニップに通される。第1の基材とは反対側にあるフィルム面上で、第2の不織基材層または織物基材層を上記ニップに導入することによって、透湿性で実質的に空気不透過性の積層体を形成することができ、この場合モノリスフィルムは2つの基材層の間に挟まれている。
【0029】
透湿性モノリスフィルムの形成に好適なポリマー材料としては、ブロックポリエーテルエステルコポリマーなどのブロックポリエーテルコポリマー、ポリエーテルアミドコポリマー、ポリウレタンコポリマー、ポリ(エーテルイミド)エステルコポリマー、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましいコポリエーテルエステルブロックコポリマーは、ハグマン(Hagman)の米国特許第4,739,012号明細書に開示されているようなソフトポリエーテルセグメントとハードポリエステルセグメントとを有するセグメント化エラストマーである。好適なコポリエーテルエステルブロックコポリマーとしては、デュポン(DuPont)販売のハイトレル(Hytrel)(登録商標)コポリエーテルエステルブロックコポリマー、およびDSMエンジニアリング・プラスチックス(DSM Engineering Plastics)(オランダのヘールレン(Heerlen,Netherlands))製造のアーニテル(Arnitel)(登録商標)ポリエーテル−エステルコポリマーが挙げられる。好適なコポリエーテルアミドポリマーは、米国ニュージャージー州グレンロック(Glen Rock,N.J.,USA)のアトケム・インコーポレイテッド(Atochem Inc.)よりペバックス(Pebax)(登録商標)の名称で入手可能なコポリアミドである。ペバックス(Pebax)(登録商標)は、フランスのパリ(Paris,France)のアルケマ(Arkema)の登録商標である。好適なポリウレタンは、米国オハイオ州クリーブランド(Cleveland,Ohio,USA)のB.F.グッドリッチ・カンパニー(The B.F.Goodrich Company)よりエスタン(Estane)(登録商標)の名称で入手可能な熱可塑性ウレタンである。好適なコポリ(エーテルイミド)エステルは、ヘスケル(Hoeschele)らの米国特許第4,868,062号明細書に記載されている。モノリスフィルム層は、透湿性フィルム層の複数の層から構成することができる。このようなフィルムは、1つもしくはそれ以上の上述の通気性熱可塑性フィルム材料で構成される層と同時押出することができる。
【0030】
微孔質フィルムは、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン)と微粒子フィラーとの混合物を、溶融押出、流延、またはインフレーションによって薄いフィルムに成形し、一軸延伸または二軸延伸のいずれかを行ってフィルムの上面から底面まで連続的に延在する不規則な形状の細孔を形成することによって形成されるものなどが、当技術分野において周知である。米国特許第5,955,175明細書には、約0.2マイクロメートルの公称孔径を有する微孔質フィルムが開示されている。微孔質フィルムは、熱または接着剤による積層などの当技術分野において周知の方法を使用して不織層または織物層の間に積層することができる。
【0031】
微細穿孔フィルムは、ポリマーの流延またはインフレーションによりフィルムにした後、フィルムに機械的に穿孔することによって形成され、このことは欧州特許出願公開第1 400 348 A2号明細書に概略的に開示されており、この文献中、微細穿孔は通常で直径0.1mm〜1.0mm程度であると記載されている。
【0032】
本発明によると、シートの透湿性を実質的に低下させない方法を使用して、透湿性シート上に金属および無機のコーティング層が堆積される。これらのコーティングはシート材料の実質的に全面にわたって堆積されるが、材料の孔隙は実質的に覆われていな状態のままとなる。本発明の一実施形態によると、透湿性シート層は、繊維状不織布または織布を含んでなる。あるいは、透湿性シート層は、布−フィルム積層体であってもよく、この場合、布が積層体の外面を含んでなる、あるいは積層体の外面が微細穿孔フィルムであってもよい。金属および無機(および場合による有機)のコーティング層は、布または微細穿孔フィルムの上に堆積される、布の場合には、複合シートのコーティングされた表面上の布の個々のストランドの露出面が実質的に覆われるが、ストランドの隙間にある空隙または孔隙はコーティング材料によって実質的に覆われないままとなる。「実質的に覆われない」は、繊維の隙間の少なくとも35%にコーティングが存在しないことを意味する。一実施形態において、有機コーティング層の厚さの合計は、不織ウェブの繊維の直径未満となる。非繊維状シートの場合、シート表面上の表面孔隙の少なくとも35%が実質的に覆われない。これによって、最初のシート材料と比較して透湿性の低下が20%以下、さらには15%以下、さらには5%以下であるコーティング済み複合シートが得られる。逆の言い方をすると、これによって、最初のシート材料の透湿性の少なくとも約80%、さらには少なくとも約85%、さらには少なくとも約95%の透湿性を有するコーティング済み複合シートが得られる。
【0033】
コーティングは孔隙上で不連続となるため、本発明の複合シートの透湿性に対して大きな影響は生じない。金属および無機(あるいは無機および有機)のコーティングを堆積するためには、当技術分野において周知の真空蒸着方法が好ましい。金属および無機(あるいは無機および有機)のコーティングの厚さは、好ましくは、輻射率が約0.2以下、さらには約0.15以下、さらには約0.12以下、さらには約0.10以下となる複合シートが得られる範囲内に制御される。
【0034】
シート層の透湿性を実質的に変化させないことに加えて、金属化された基材の輻射率をあまり増加させないように、無機コーティング層の厚さおよび組成が選択される。無機コーティング層は約25〜500ナノメートル(nm)の間の厚さを有することができ、これは約0.06g/mおよび1.2g/mの間の無機コーティング材料に相当する。無機コーティング層は、好ましくは、約60nm〜300nmの間の厚さを有する。無機コーティング層が薄すぎると、金属層を酸化から保護できなくなって、複合シートの輻射率が経時により増加する可能性がある。無機コーティング層が厚すぎると、複合シートのMVTRが減少し、その輻射率が増加して、熱障壁特性が低下する可能性がある。
【0035】
場合によっては、中間有機コーティング層が非常に薄いこと、たとえば約0.02〜0.2マイクロメートルの間(約0.015g/m〜0.15g/mに相当)であることが望ましい場合がある。このような例の1つは、シート層がフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状またはその他の不織シートを含んでなり、それらの表面上でプレキシフィラメントまたは繊維が約500nm以下の特徴を有する場合である。これは、不織シートの表面の「マクロ粗さ」よりもはるかに微細であり、マクロ粗さの特徴は、繊維自体(山および谷)と繊維間の間隙とによって生じる。シートのマクロ粗さが、金属化およびコーティングによって大きく変化しないことが重要であるが、その理由は、そのようなことが起こると、繊維間の間隙の減少または閉鎖が起こり、シートの透湿性が低下するからである。非常に薄いポリマー層によって、繊維状シートのマクロ粗さには影響を与えずに、個々の繊維の表面上に存在するミクロ粗さは平滑になる。フラッシュ紡糸ポリエチレンの場合、コーティング層は、厚さ約25nmであるポリエチレンの層状微結晶と少なくとも同じ厚さとなる必要がある。この平滑化の効果によって、個々の繊維表面上の金属層がより平滑になることができ、それによってL1を含まないシートよりも複合シートの輻射率を低下させることができる。たとえば、フラッシュ紡糸ポリエチレンシートの場合には、約0.025〜0.2マイクロメートルの間の厚さの中間コーティング層L1が適している。
【0036】
中間有機コーティング層に好適な組成物としては、米国特許出願第10/924,218号明細書に記載されるようなポリアクリレートポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。
【0037】
本発明の複合シートの金属層を形成するのに好適な金属としては、アルミニウム、金、銀、亜鉛、スズ、鉛、銅、およびそれらの合金、あるいは、所望の低輻射率が得られるのであればその他の金属およびそれらの合金が挙げられる。金属は、蒸着可能であるか、またはシート上に薄層として堆積するための他の方法に好適であることも望ましい。合金は、その合金組成物によって低輻射率複合シートが得られるのであれば、他の金属を含むことができる。各金属層は、約15nm〜200nmの間、または約30nm〜60nmの間の厚さを有する。一実施形態において、金属層が、約15〜150nmの間、または約30〜60nmの間の厚さを有するアルミニウムを含んでなる。金属層を形成するための方法は当技術分野において周知であり、そのような方法としては、抵抗蒸発、電子ビーム金属蒸着、またはスパッタリングが挙げられる。金属層が薄すぎると、所望の熱障壁特性が得られない。金属層が厚すぎると、亀裂および剥落が生じうる。一般に、所望の熱障壁特性が得られる最小金属厚さを使用することが望ましい。本発明複合シートがハウスラップまたはルーフライニングとして使用される場合、金属層は、赤外線を反射するか、わずかな赤外線を輻射するかであり、それによって、エネルギー損失が減少し、建築物を夏にはより涼しく冬にはより暖かく維持する熱障壁が得られる。
【0038】
材料の熱障壁特性は、その輻射率によって特徴付けることができる。輻射率は、表面から輻射される単位面積当たりの出力の、同じ温度において黒体から輻射される単位面積当たりの出力に対する比である。したがって、黒体は輻射率が1であり、完全反射体は輻射率が0である。輻射率が低いほど、熱障壁が高くなる。また無機コーティング層は、ロール処理、輸送、および最終用途での取り付け中の機械的摩耗から金属を保護する。
【0039】
本発明の金属化可撓性多孔質基材には、数種類の周知の堆積方法のいずれかによって無機材料層をコーティングすることができる。堆積方法は、熱蒸発、電子ビーム蒸発、およびスパッタリングを使用する堆積方法などの物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、あるいはプラズマ化学気相成長(PECVD)などの場合に真空チャンバー中で実施することができる。堆積方法は、大気条件下で実施することもでき、たとえば、大気圧グロー放電(APG)または大気圧プラズマ化学気相成長(AP−PECVD)を実施することもできる。
【0040】
物理蒸着法としては、基材表面に適用される化合物を真空チャンバー内で蒸発させ、冷却ドラム上に通すことで基材上で凝縮させる蒸発法、および、これも真空方法であり、高速イオンを材料表面に衝突させ、運動量移行過程によってその材料の原子を飛び出させるスパッタリングが挙げられる。蒸発の場合と同様に、飛び出した分子は基材上で凝縮して表面コーティングを形成する。
【0041】
蒸発を利用するPVD法は、本発明における使用に適していることが分かっている。基材上に凝縮する前に実質的に無衝突で見通し線を移動するように、蒸発は、典型的には約5×10−4ミリバール(5×10−5kPa)未満の真空で通常は実施される。蒸発過程中、抵抗加熱または電子ビームなどの種々の方法で加熱することができるソース中にある材料から蒸気が発生する。抵抗加熱では、多孔質基材の表面に適用される無機化合物は、真空チャンバー内の抵抗加熱によって蒸発させることができる。無機材料のごく近くに配置されたグラファイト電極、または無機材料が収容されたタンタルボートに電流を流すことによって、堆積させる無機材料は昇華するまで加熱される。次に、蒸発した材料は基材上で凝縮する。一例として、SiOの蒸発過程は、約900℃および約5×10−4ミリバール(5×10−5kPa)の圧力下で起こる[デンラー(Dennler)、ウェルトハイマー(Wertheimer)ウーデイヤー(Houdayer)、レイノー(Raynaud)、セギ(Segui)、「ポリマー基材上のSiO薄膜の成長形態」(Growth Modes of SiO Films on Polymeric Substrates)、ソサイエティ・バキューム・コーターズ(SVC)第45回年次技術会議予稿集(45th Annual Technical Conference Proceedings of the Society Vacuum Coaters(SVC))(2002),p.465に開示されている]。
【0042】
好ましくは、この蒸発方法が使用される場合、多孔質基材の表面は、表面の清浄にして活性化させるために、プラズマで前処理が行われる。理論によって束縛しようと望むものではないが、無機層の結晶構造が変化し、プラズマ処理によって接着性が改善されることによって、金属層の上の無機層の保護効果が増大すると考えられる。この前処理工程では、ドイツのレイボルド・システムズ社(Leybold Systems GmbH)のG.レビッヒ(Loebig)、R.ルドウィッヒ(Ludwig)、P.セサーコ(Seserko)、およびG.スタイニガー(Steiniger)による「トリートマグ、包装用途のウェブコーター中のインラインプラズマ前処理用の新しいツール」(Treatmag, a New Tool for Inline Plasma Pre−Treatment in Web Coaters for Packaging Applications)に記載されるような水冷DCマグネトロンカソードによって発生させたプラズマが使用される。
【0043】
本発明における使用に適した第2の蒸発方法では、真空チャンバー(約10−3mbar(10−4kPa)以下まで減圧)中で高電圧電子ビーム銃からの電子ビームを、るつぼ(またはトレイ)に入れた無機材料に当てることによって、多孔質基材の表面に適用される無機化合物を蒸発させる。電子ビーム銃は、ビーム発生器とビームガイドシステムとからなる。このビームは、カソード表面から電子を放射し、その電子をアノードに向けて加速することによって発生させることができる。ビームを集束させ、ビームをるつぼ(またはトレイ)まで案内するために磁界が使用される。幅広のウェブをコーティングするための方法は様々である。その方法の1つは、標準的な蒸発メタライザー中のボートの配列と類似した複数の小型EB銃の蒸発器群を使用することである[マッテウチ(Matteuchi),「ロールコーティングにおける電子ビーム蒸発およびDCマグネトロンスパッタリング」(Electron Beam Evaporation and DC−Magnetron Sputtering in Roll Coating)、SVC第30回年次技術会議予稿集(30th Annual Technical Conference Proceedings of the SVC)(1987),p.91に開示されている]。その第2の方法は、直線状高性能ビーム発生器(linear upscaled beam generator)を使用することである[クズネツォフ(Kuznetsov)、「ソビエト連邦における電子ビーム蒸発法」(Electron Beam Evaporation Process in the Soviet Union)、SVC年次技術会議予稿集(Annual Technical Conference Proceedings of the SVC)(1978)、p.12に開示されている]。第3の方法は、るつぼ表面全体にわたってビームを移動させるために電磁コイルシステムを使用する走査型銃である[ホフマン(Hoffmann),ククラ(Kukla)、レビッヒ(Loebig)、ルドウィッヒ(Ludwig),セサーコ(Seserko),スタイニガー(Steiniger)、SVC第42回年次技術会議予稿集(42nd Annual Technical Conference Proceedings of the SVC)(1999)、p.425]。
【0044】
蒸着に好適な無機材料は、基本的には、化学反応を使用または使用せずに気相から析出した後で、気体および湿気に対する障壁として機能する層を形成するあらゆる新規な材料である。そのようなものの例は、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、その他の酸化ケイ素(SiOと記載され、xは1から2未満までの範囲であり、xは、化合物1分子中のケイ素原子1つ当たりの酸素原子数である)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムなどの金属酸化物である。SiO層は、それらが可撓性、化学的に不活性、および水に関する腐食に対して抵抗性であるという利点が得られる。これらの酸化物は、混合したり、ドープしたりすることができる。さらに、これらの金属を気化させて、コーティングプロセス中に、少なくとも1種類の反応性ガス、たとえば酸素、窒素、水素、および/またはアセチレンを導入することで、対応する酸化物、窒化物、炭化物、または混合成分を形成することができる。当然ながら、気化させる材料がすでに酸化物、窒化物、および/または炭化物として存在する場合でも、反応性ガスを加えることができる。蒸着方法は、反応性であってもなくてもよい。反応性蒸着は、微量の活性ガスを真空チャンバーに加え、蒸着させる材料をそのガスと化学反応させて、その化合物を基材上に堆積させる方法である。
【0045】
多孔質基材の表面に無機化合物を適用するために、本発明の方法において化学蒸着(CVD)を使用することもできる。CVDは、基材のごく近くまたは基材上の気相中で行われることで、反応生成物が基材上に堆積される化学的方法である。特に、プラズマ化学蒸着を使用することができる。その場合、反応物質間の反応は、気相中でプラズマを発生させることによって刺激されたり活性化したりする。
【0046】
薄いフィルムを堆積するためにプラズマを形成するいくつかの周知の方法が存在する。その1つでは、1対の電極が定圧ガス中に配置され、AC電圧またはDC電圧のいずれかが印加されることでグロー放電を発生させる。第2の方法は、ガスを収容する非導電性チューブの周囲に巻き付けたコイルを使用する。次に、AC電流場によって、チューブの内側に強い場を励起させて、放電を発生させる。第3の方法では、ガスを充填した誘電性チューブの両側に1対の電極の1つずつを配置することができ、この場合もAC電圧を印加することができる。この場合もチューブの内側に強い場が発生し、放電を発生させることができる[バンシャー(Bunshah)、R.F.(編著)、フィルムおよびコーティングのための堆積技術ハンドブック−科学、技術、および応用(Handbook of Deposition Technologies for Films and Coatings − Science,Technology and Applications)(第2版(2nd Edition))、1994 ウィリアム・アンドリュー・パブリッシング/ノイズ(William Andrew Publishing/Noyes)に開示されている]。
【0047】
無機コーティングを堆積するための本発明において有用な別の方法が、ケーシー(Casey)、スミス(Smith),およびエリス(Ellis)、「透明バリアコーティング」(Clear Barrier Coatings)、SVC第42回年次技術会議予稿集(42nd Annual Technical Conference Proceedings of the SVC)(1999)[p.425]に開示されている。この方法は、実質的には、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)蒸気、酸素、およびヘリウムを伴う低圧(3×10−2〜8×10−2mbar(3×10−3〜8×10−3kPa)プラズマCVD法である。このプラズマは、ドラム電極と対電極との間で容量結合する中波(たとえば、40kHz)電力によって発生される。コーティングされるポリマーウェブを、ドラム上で移動させ、近接する磁気強化プラズマから堆積させることによってコーティングする。利用可能なケイ素の約50%が堆積させたフィルム上に含まれる。このプロセス中、ある程度の排気ガス(たとえば、HO、CO、CO、HC)が発生する。
【0048】
プラズマCVD(PECVD)において使用すると好適な材料は、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含有することができる有機ケイ素化合物である。この目的に適した物質は、主として、シラン類、シロキサン類、シラザン類、およびシラチアン類であり、好ましくはシロキサン類である。ヘキサメチルジシロキサンの利用が特に好ましい。このような化合物の混合物、あるいはそれらの部分または完全フッ素化誘導体を使用することもできる。
【0049】
多孔質基材の金属層上に無機化合物を堆積するさらに別の方法は、大気圧グロー放電(APG)または大気圧プラズマ化学気相成長(AP−PECVD)である。
【0050】
国際公開第03/086031 A1号パンフレットには、垂直に配列され、平行に間隔を開けて配置された2組の平坦電極によって提供される2つのプラズマゾーンと、噴霧化した液体または固体のモノマーを導入してプラズマと反応させるように適合させた噴霧器とを含んでなる大気プラズマ(atmopspheric plasma)組立体が記載されている。SiOバリアを形成するための例が記載されており、それによると、最初に、基材のヘリウム洗浄/活性化によって基材の前処理を行った後、第1のプラズマ領域内でポリジメチルシロキサン前駆体からSiOを堆積させる。さらにヘリウムプラズマ処理を行ってSiO層をさらに架橋させ、最後に過フッ素化前駆体を使用してコーティングを適用する。あらゆる適切な前処理を行うことができる。上述の方法は、コーティングされる表面の洗浄または活性化を行うことによって強化される。
【0051】
図1は、PVD(熱蒸発)法を使用することによって真空下で金属化シート層に無機層をコーティングするのに好適な装置10の概略図である。所望の圧力で真空チャンバー11が設けられている。好適な圧力は2×10−4〜2×10−5Torr(2.66×10−5〜2.66×10−6kPa)の間である。金属化透湿性シート13は、矢印によって示される方向に、巻き出しロール12からガイドロール16および17を介して供給される。ロール12から巻き出された後、シート13はプラズマ処理ユニット4に通され、ここでシート表面がプラズマ5に曝露することによって、シート表面上に吸着した酸素、水分、およびあらゆる低分子量化学種が除去される。このプラズマ処理ユニットは、低周波数RF、高周波数RF、DC、またはACであってよい。好適なプラズマ処理方法は、米国特許第6,066,826号明細書、国際公開第99/58757号パンフレット、および国際公開第99/59185号パンフレットに記載されている。次にシート13は、ガイドロール16および17を介して、1〜1000cm/秒の範囲内の表面速度で回転する冷却回転ドラム18上に供給される。次に、シートは無機材料22が収容されたトレイ24上を通過する。一例として、酸化ケイ素塊を使用することができる。ドラム18は、無機材料の凝縮を促進するために−20℃まで冷却することができる。トレイの数センチメートル上に配置され、機械の幅全体にわたって広がる黒鉛ヒーター20を使用して、無機材料を抵抗加熱して蒸発させる。蒸発または昇華した無機材料25は、シート13の表面上で凝縮して、シート層の孔隙を実質的に覆わない十分な薄さの層を形成し、それによって複合シート19は、コーティングされていない出発シート層の少なくとも約80%の透湿性を有する。複合シート19は、ガイドローラー26によってドラム18の表面から持ち上げられ、巻き取りロール26によって巻き取られる。
【0052】
図2は、無機材料を加熱し蒸発させるのに好適な別の装置100を示しており、所望の圧力で提供される真空チャンバー111を含んでいる。好適な圧力は2×10−4〜2×10−5Torr(2.66×10−5〜2.66×10−6kPa)の間である。金属化透湿性シート113は、矢印によって示される方向に、巻き出しロール112からガイドロール116および117を介して冷却回転ドラム118上まで供給される。ドラム118の表面速度は一般に1〜1000cm/秒の範囲内である。シート113は、無機材料122が収容されたトレイ124上を通過する。一例として、酸化ケイ素片を使用することができる。ドラム118は、無機材料の凝縮を促進するために−20℃まで冷却することができる。走査電子ビーム銃120が電子ビーム123を発生することによって、トレイ124内に収容された無機材料122が蒸発する。蒸発または昇華した無機材料125は、シート113の表面上で凝縮して、シート層の孔隙を実質的に覆わないために十分な薄さの層を形成し、それによって複合シート119は、コーティングされていない出発シート層少なくとも約80%の透湿性を有する。コーティングされた複合シート119は、ガイドローラー120によってドラム118の表面から持ち上げられ、巻き取りロール126によって巻き取られる。
【0053】
本発明の金属化複合シートは、建築構造の屋根および壁システム中に使用すると特に好適である。複合シートの高反射性金属化表面によって、低輻射率表面が得られ、それによって断熱性が高まり、壁および屋根システムのエネルギー効率が改善され、そのため建築物の所有者による燃料費が削減される。さらなる利点としては、寒冷気候における壁および屋根構造の内側での結露が最小限となること、および夏季における激しい厚さから建築物が遮断されることが挙げられる。本発明の金属化複合シートは、衣服、テント、寝袋、および良好な熱障壁が必要とされる他の用途において使用される層としても好適である。
【0054】
試験方法
以下の非限定的な実施例において、報告する種々の特性および性質を求めるために以下の試験方法を使用した。ASTMは米国材料試験協会(American Society of Testing Materials)を意味する。ISOは国際標準化機構(International Standards Organization)を意味する。TAPPIは紙パルプ技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を意味する。
【0055】
耐酸化性は、蒸気浴中で1.5時間、基材の金属化側に蒸気を当てることによって求める。浴の水温は80℃である。金属化層の酸化量は目視で評価する。保護されていない金属は白色に変化する。十分に保護された金属は、外観に有意な変化が生じない。酸化量は、蒸気に曝露した試料の光学濃度を測定することによっても評価される。この性質は、ANSI PH2.19−1986に準拠してエックスライト(X−Rite)製の透過濃度計モデル(Model)361Tを使用して測定される。金属酸化の程度は、光学濃度に反比例する。金属が金属酸化物に変化すると、金属化シートの光学濃度が低下する。「蒸気曝露後の金属層の残留光学濃度のパーセント値」は:(蒸気曝露後の金属化基材の光学濃度−非金属化基材の光学濃度)/(蒸気曝露前の金属化基材の光学濃度−非金属化基材の光学濃度)×100で定義される。
【0056】
輻射率は、材料の熱吸収率および反射率特性の指標の1つである。この性質は、積分球と、熱放射線源としてのグローバー(glowbar)と、8μm〜14μmの範囲内の波長に敏感な検出器とよりなるオプトソル球状輻射計モデル02K(Optosol sphere emissiometer Model 02K)(オプトソル社(Optosol GmbH)、エーバッハシュトラッセ(Ehebachstrasse)19、D−79379 ミュルハイム(Muellheim)、ドイツ(Germany)より入手可能)を使用して測定する。グローバーからの放射線は、拡散放射線源として機能する積分球の内側に均一に分散する。検出器は、試料表面に対する垂直方向から10度の角度で取り付けられる。試料によって反射される放射線が測定される。測定信号の較正は、ガラスなどの高い輻射率を有する試料と、低輻射力を有する試料、または理想的には測定すべき試料の輻射率に近い輻射率を有する試料との、既知の輻射率を有する2つの試料を上記の波長範囲内で測定することによって行われる。
【0057】
熱抵抗(R)は、平行な複数の境界表面を有する1つの反射エアスペース(「エアキャビティ」)を通過する熱流の指標の1つであり、EN ISO 6946に準拠して輻射率から計算され、mK/Wの単位で報告される:
=1/(h+h
上式中、h:熱転移係数(heat transition coefficient)(伝導、対流)
:熱転移係数(輻射)
=Ehro
E=(1/ε+1/ε−1)−1およびhro=4σT
E:輻射率等級(emissivity grade)
ro:黒体の放射線による熱転移係数
σ:ステファン−ボルツマン(Stefan−Boltzmann)定数(5.67×10−8Wm−2−4
:表面およびその周辺の平均熱力学的温度
水平熱伝達:h=1.25W/m2K、または>1.25W/m2Kの場合にはh=0.025/d、
垂直上昇熱伝達:h=1.95W/m2K、または>1.95W/m2Kの場合にはh=0.025/d
d:エアキャビティの厚さ
ε、ε=エアキャビティを囲む表面の輻射率
【0058】
実施例では、Rは、T=283°K、d=50mm、ε=シートの輻射率、およびε=0.9(れんが壁の輻射率)で計算される。ミネラルウール相当の厚さを計算するために、ミネラルウールの熱伝導率0.038W/mKを使用した。
【0059】
水蒸気透過率(MVTR)は、材料の透湿性の指標の1つであり、ASTM E398−83に準拠しリッシー(Lyssy)測定機を使用して測定した。試料は、23℃において相対湿度100%の湿潤チャンバーと相対湿度15%の乾燥チャンバーとの間に配置し、それによって85%の相対湿度勾配に曝露する。MVTRはg/m/24時間の単位で報告される。
【0060】
静水頭(または水ヘッドまたはHH)は、静荷重下の液体の水の浸透に対するシートの抵抗性の指標の1つである。HH測定には、DIN EN 20811:1992が使用され、水のcm数で報告される。100cm試料をテクステストAG静水頭試験機(Textest AG Hydrostatic Head Tester)中に取り付ける。試料の一方の側に水を圧送し、表面上の3点で漏れが見られるようになるまで、静水圧荷重60cm水/分で増加させる。
【0061】
坪量(BW)は、ASTM D−3776によって測定し、g/mの単位で報告している。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、特に明記しない限り、使用した金属化可撓性多孔質基材は、坪量が約60g/m、厚さが約180μmであり、アプライド・フィルムズ(Applied Films)(コロラド州ロングモント(Longmont,Colorado))製造のトップメット(TopMet)(登録商標)メタライザーを使用して適用したアルミニウム表面層を有する、タイベック(Tyvek)(登録商標)プレキシフィラメント状フィルム−フィブリル高密度ポリエチレンシート(スタイル(style)1560B)(デラウェア州ウィルミントンのイーアイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware)より入手可能)であった。アルミニウムの表面層の平均厚さは約30〜約40nmであった。
【0063】
真空電子ビーム蒸発および真空熱蒸発の2つの異なる方法を使用して、金属化したタイベック(Tyvek)(登録商標)上にSiOxコーティングを堆積した。どちらの方法でも、SiOxは、約5×10−4〜約3×10−5mbar(約5×10−5〜約3×10−6kPa)の減圧下で蒸発(昇華)させ、約−15℃の温度の冷却ドラム上を通過する金属化基材上で凝縮させることによって堆積させた。
【0064】
実施例1〜5および比較例6
これらの実施例では、真空電子ビーム蒸発堆積によって作製した本発明のコーティングされた金属化シートを示し、得られたシートを、コーティングされていない金属化シート、およびハウスラップとしての使用に適した現在市販されている金属化シートと比較している。
【0065】
アプライド・フィルムズ(Applied Films)(ドイツのアルゼナウ(Alzenau,Germany))の市販のトップビーム(TopBeam)(登録商標)1100ウェブコーティングシステムを使用してトレイ中の固体SiOx塊に電子ビームを照射することによってSiOx(x=1.1〜1.2)を昇華させ、幅600mmの金属化タイベック(Tyvek)(登録商標)上に堆積させた。電子ビームの出力は約41.9kWに維持した。真空チャンバー内に酸素が残存したため、SiOxはxが1.4〜1.7となるまでさらに酸化された。金属化基材の巻き取り速度、すなわち基材が冷却ドラム上を通過する速度を変化させることによって、種々の厚さのSiOx層を得た。4つの異なる速度:3m/秒、5m/秒、7.5m/秒、および10m/秒を使用した。
【0066】
金属化基材に対してプラズマ前処理は行わなかった。プラズマ後処理によって、SiOx表面の残留電荷を除去した。
【0067】
耐酸化性、輻射率、熱抵抗、MVTR、およびHHを測定した。それらの結果を表1に示す。実施例2〜5はすべて、良好な輻射率、MVTR、およびHHを示した。SiOxでコーティングしていない比較例1と比較して、3m/秒の巻き取り速度(実施例2)で得られたSiOxコーティング層では、アルミニウム層を酸化から保護し、基材のMVTRを維持し、試料の輻射率の増加がわずかとなったSiOxコーティング層が得られた。この低速では、比較的厚い層のSiOxがアルミニウム層に適用されたため、その耐酸化性が比較的高かった。しかし、蒸気曝露後の金属層の残留光学濃度のパーセント値を比較例1と比較すれば分かるように、より速い巻き取り速度における実施例3〜5では、酸化に対する保護は幾分低下した。
【0068】
比較例6は、坪量が約62g/m、厚さが約185マイクロメートルであり、フレキソ印刷法を使用して1μm〜1.5μmの厚さでアクリレートラッカーがコーティングされた、市販の金属化タイベック(Tyvek)(登録商標)、スタイル(style)3460M、プレキシフィラメント状フィルム−フィブリルシート(デュポン(DuPont)より入手可能)である。この市販のコーティング済み金属化シートの典型的な性質は表1に示している。これから分かるように、本発明により作製した試料の輻射率は、現行のラッカーがコーティングされた金属化シートの輻射率も約50%低く、本発明により作製した試料のMVTRは、現行のラッカーがコーティングされた金属化シートのMVTRよりも約30%高い。これより、ハウスラップおよびルーフライニングなどの建築最終用途、ならびに衣服、テント、および寝袋などの熱障壁が要求される他の最終用途において重要なシートの他の特性に大きな影響を与えることなく、本発明のコーティングされた試料は、現行のラッカーがコーティングされた金属化シートよりもはるかに優れた熱抵抗(低い輻射率)が得られることを示している。
【0069】
【表1】

【0070】
比較例6よりも有意に高いMVTRを有することに加えて、本発明の実施例は約42〜53%低い輻射率を有する。さらにこれは、比較例6とは対照的に、本発明の実施例を使用した場合、約43〜46%のエアキャビティの熱抵抗の改善に相当する。本発明は、20〜22mmのミネラルウールの断熱と同等の断熱特性の改善が得られ、比較例6の12mmとは対照的である。
【0071】
比較例7および実施例8〜13
これらの実施例では、真空熱蒸発堆積によって作製した本発明コーティングされた金属化シートを示し、得られたシートをコーティングされていない金属化シートと比較する。
【0072】
アプライド・フィルムズ(Applied Films)より市販のトップメット(TopMet)(登録商標)ウェブコーティングシステム中のグラファイト電極を、SiOx塊(x=1.1〜1.2)を充填したトレイの上に配置した。電極によってSiOxを930℃〜950℃の温度まで加熱すると、その温度でSiOx分子が昇華した。これは、各電極上9kW電力で起こった。基材の巻き取り速度を変化させることによってSiOx層の厚さを調整した。2m/秒(実施例8〜9)、3m/秒(実施例10〜12)、および4m/秒(実施例13)の巻き取り速度を使用した。
【0073】
トップメット(TopMet)(登録商標)メタライザーは、DCマグネトロンカソードによって発生させたプラズマで基材を前処理することができる。この処理の程度は、カソード上の電流、ならびに処理ガスの流動および性質を変化させることによって変更可能である。このプロセスは、本発明の実施例のプラズマ前処理を使用して進行させた。プラズマ前処理電流5A〜10Aを使用して、処理ガスとしてアルゴンまたはアルゴンと酸素との混合物を使用した。前処理電流は、巻き取り速度に合わせた。比較例7のようにプラズマ前処理を使用しないでプロセスを進行させた場合、金属層を蒸気に曝露し、金属層上に生じた酸化を目視および光学濃度で調べることにより検査すると、アルミニウム層の腐食からの保護は不十分であった。
【0074】
耐酸化性、輻射率、透湿性(MVTR)、および静水頭(HH)を測定した。それらの結果を表2に示す。実施例8〜12はすべて、出発シート層(比較例7)と比較して実質的に変化しない輻射率、MVTR、およびHHを示した。熱蒸発堆積法が使用される場合は、プラズマ前処理が好ましい。
【0075】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の複合シートを形成するのに好適な種類の装置の概略図である。
【図2】本発明の複合シートを形成するのに好適な別の種類の装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性シートと、透湿性シートの第1の外面に隣接する金属層と、金属層上に堆積された無機材料の外部コーティング層とを含んでなり、蒸気曝露後の金属層の残留光学濃度のパーセント値が25%を超える、透湿性可撓性多層複合材料。
【請求項2】
蒸気曝露後の金属層の残留光学濃度のパーセント値が35%を超える請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項3】
複合シートのMVTRが、金属層およびコーティング層の堆積の前に測定したシート層のMVTRの少なくとも80%である請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項4】
多層複合材料の輻射率が0.2未満である請求項1に記載の通気性の可撓性多層複合材料。
【請求項5】
透湿性シートが、不織布、織布、紙、微細穿孔フィルム、微孔質フィルム、透湿性モノリスフィルム、およびそれらの複合材料よりなる群から選択される請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項6】
透湿性シートが、スパンボンド布、スパンボンド−メルトブローン布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド布、フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート、およびそれらの複合材料よりなる群から選択される不織布である請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項7】
透湿性シートが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、およびポリアミドよりなる群から選択されるポリマーを含んでなるプレキシフィラメント状フィルム−フィブリルシートである請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項8】
金属層が、アルミニウム、銀、銅、金、スズ、亜鉛、およびそれらの合金よりなる群から選択される請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項9】
金属層が、複合材料の輻射率が0.2未満となるように金属を含んでなる請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項10】
無機材料が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金属窒化物、および金属炭化物よりなる群から選択される請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項11】
無機材料が酸化ケイ素である請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項12】
金属層が15ナノメートル〜200ナノメートルの間の厚さを有し、無機材料のコーティング層が25〜500ナノメートルの間の厚さを有する請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項13】
多層コーティングが、多孔質シートの外面を実質的に覆いながら、孔隙は実質的に覆われないまま維持される請求項1に記載の金属化複合シート。
【請求項14】
透湿性シートが、10g/m〜100g/mの間の坪量、および1000g/m/24時間を超えるMVTRを有する請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項15】
透湿性シートが、140g/m〜300g/mの間の坪量、および1000g/m/24時間を超えるMVTRを有する請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項16】
輻射率が0.15未満であり、MVTRが1000g/m/24時間を超え、静水頭が少なくとも20cm水である請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項17】
酸化ケイ素が、少なくとも1個かつ2個未満の酸素原子を各ケイ素原子ごとに含んでなる請求項11に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項18】
無機材料のコーティング層が25nm〜500nmの間の厚さを有する請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項19】
無機材料のコーティング層が60nm〜300nmの間の厚さを有する請求項18に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項20】
エアキャビティに取り付けると、少なくとも20ミリメートルのミネラルウールに相当する熱抵抗を有する請求項1に記載の可撓性多層複合材料。
【請求項21】
第1および第2の外面を有する多孔質フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート層と、
フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート層の第1の外面上に堆積された、アルミニウム、銀、銅、金、スズ、亜鉛、およびそれらの合金よりなる群から選択される金属の、15ナノメートル〜約ナノメートルの間の厚さを有する金属コーティング層および、
金属層上に堆積された、25ナノメートル〜500ナノメートルの間の厚さの酸化ケイ素の外部無機コーティング層
を含んでなる少なくとも1つの多層コーティングと
を含んでなる、金属化複合シートであって、
コーティングがなされたシートの輻射率が0.2未満であり、コーティングがなされたシートのMVTRが、コーティングされていないシートのMVTRの少なくとも80%である、金属化複合シート。
【請求項22】
請求項1または21に記載の金属化複合シートを含んでなる建築構造の屋根システム。
【請求項23】
請求項1または21に記載の金属化複合シートを含んでなる建築構造の壁システム。
【請求項24】
請求項1または21に記載の金属化複合シートを含んでなる衣類。
【請求項25】
請求項1または21に記載の金属化複合シートを含んでなるテント。
【請求項26】
請求項1または21に記載の金属化複合シートを含んでなる寝袋。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−504446(P2009−504446A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526171(P2008−526171)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/031105
【国際公開番号】WO2007/021783
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】