説明

体液浄化カセットの成形方法

【課題】安価に且つ可及的に小型化された体液浄化カセットを成形することのできる成形方法を提供する。
【解決手段】体液浄化装置本体に対して、脱着される体液浄化カセット(U1)を合成樹脂製の箱状体(F1、F2)と、該箱状体に内蔵される基本要素(R1、1、PT1)と、ダイアライザ(2)、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素(2)と、基本要素と選択要素を接続する体液流路(R1〜R7)とから構成する。箱状体(F1、F2)と、体液流路(R1〜R7)は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化してカセット化する。二つ割り構造の体液流路を2次成形により一体化するときに、基本要素(R1、1、PT1)と選択要素(2)とを体液流路(R1〜R7)に液密的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路中の気泡を検出する気泡検出器、流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、少なくとも1個のローラ型ポンプのポンプロータ、制御装置等が設けられている体液浄化装置本体に、選択的に装着される体液浄化カセットが、少なくとも体液流路とエアトラップと複数個のポンプ送液チューブとからなる基本要素と共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、前記基本要素と選択要素を接続している体液流路とを内蔵し、これらを内蔵している体液浄化カセットを前記体液浄化装置本体に装着すると、前記体液浄化装置本体のポンプロータが前記基本要素のポンプ送液チューブと共働してローラ型ポンプが構成され、血液透析、腹膜透析、血漿交換、免疫吸着等の所望の体液浄化ができるようになっている体液浄化カセットの成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液等の体液処理装置あるいは体液浄化装置は、腹膜透析装置、血液透析装置、血液透析濾過装置等として従来周知であり、例えば特許文献1により血液透析装置が提案されている。また、特許文献2には、血液浄化装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−305118
【特許文献2】特開平9−239024号
【0004】
特許文献1に示されている血液透析装置は、血液透析要素すなわちダイアライザを備えている。このダイアライザの中には、該ダイアライザを軸方向に二分する形で透析膜が設けられ、その一方が血液流路となり、他方が透析液流路となっている。したがって、血液流路に血液を、そして透析液流路に透析液を対向流れとして流すと従来周知のようにして血液は透析処理される。上記のようなダイアライザにより血液を透析処理するためには、フィルタ、エアトラップ、血液ポンプ、透析液供給・受入要素、開閉弁、流量計、制御装置等も必要としている。そして、これらは特許文献1には明確な説明はないが、ダイアライザと共に一つの筐体に収納され、比較的大きな血液透析装置が構成されている。
【0005】
また、特許文献2により提案されている血液浄化装置には、透過膜が設けられている血液浄化器が備わっている。この血液浄化器に、患者から取り出される血液が導入され、そして血液成分が濾過された血液は置換液と共に患者に戻されるようになっている。このとき、血液成分あるいは濾過液は透析液と共に体外へ排出される。このような血液の浄化処理をするためには、血液ポンプ、濾過液ポンプ、補液ポンプ、透析液ポンプ、制御装置等も必要とし、これらも一つの筐体内に収納され、血液浄化装置が構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1により提案されている血液透析装置にはダイアライザと共に血液の透析処理に必要な上記したような種々の要素が筐体に収納されているので、同様に特許文献2に示されている血液浄化装置にも血液浄化器と共に他の複数の要素が一つの筐体に収納されているので、色々な利点もある。例えば、血液透析装置、血液浄化装置等の複数種の体液処理装置を医療施設に設置しておけば、患者は必要に応じて血液の透過処理も浄化処理もできる。また、病気が異なる複数の患者は、それぞれの体液処理装置により同時に治療を受けることもできる。さらには、専用装置であるので、医療関係者の取り扱いも容易にできる利点も認められる。
しかしながら、問題点あるいは欠点もある。例えば、病気の異なる複数人の患者に対応するためには、種々の複数個の体液処理装置を設置しなければならないので、コスト高になる欠点がある。また、例えば血液の透析を必要とする患者数と、血液の浄化を必要とする患者数は必ずしも同数ではないにも拘わらず、二種の体液処理装置を設置しなければならないので、すなわち使用頻度が異なり遊んでいる時間の多い体液処理装置も設置しなければならないので、この点からもコスト高になる。さらには、複数個の体液処理装置を設置するスペースの問題もある。また、上記したようなコストの問題等により、少ない患者用の体液処理装置は、小さな医療施設では用意することができず、患者は設備のある遠方の医療施設に赴かなければならないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記したような従来の問題点を解決した体液処理装置を提供しようとするものである。上記したような問題を解決するために、血液透析装置について検討すると、血液透析装置は作用面から見て、ダイアライザを主とする第1の部分と、体液が流れる流路中の気泡を検出する気泡検出器、圧力値を測定する圧力計、透析液供給装置、ヒータ、温度計、制御装置等からなる第2の部分とに分けることができる。また、血液浄化装置についても、血液浄化器を主とした第1の部分と、血液ポンプ、濾過液ポンプ、補液ポンプ、透析液ポンプ、制御装置等からなる第2の部分とに分けることができる。血液透析装置の第2の部分と、血液浄化装置の第2の部分は、名称は異なるが実質的に同じ機能あるいは作用を奏する要素からなっていることが分かる。そこで、第2の部分を装置本体に収納し、そして第1の部分をそれぞれ体液浄化カセットあるいはユニットとして構成し、体液浄化カセットを装置本体に装着することにより、それぞれ異なる体液処理ができるようにすると、前記したような従来のコストの問題、設置スペース等の問題は解決される。
したがって、本発明は、上記のような体液浄化カセットを安価に且つ可及的に小型化された体液浄化カセットとして成形することのできる体液浄化カセットの成形方法を提供することを目的としている。また、自動的に且つ衛生的に成形することのできる成形方法を提供することも目的としている。さらには、使い捨てに適した体液浄化カセットの成形方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、合成樹脂製の中空容器内に体液流路とエアトラップと複数個のポンプ送液チューブとからなる基本要素を内蔵すると共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から選択される選択要素とを内蔵するように構成される。そして、前記中空容器と、前記基本要素と選択要素とを接続している体液流路は、1次成形により二つ割り構造体として成形し、2次成形により二つ割り構造体を一体化するように構成される。かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、流路中の気泡を検出する気泡検出器、流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、少なくとも1個のローラ型ポンプのポンプロータ、制御装置等が設けられている体液浄化装置本体に、選択的に装着される体液浄化カセットが、少なくとも体液流路とエアトラップと複数個のポンプ送液チューブとからなる基本要素と共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、前記基本要素と選択要素を接続している体液流路とを内蔵し、これらを内蔵している体液浄化カセットを前記体液浄化装置本体に装着すると、前記体液浄化装置本体のポンプロータが前記基本要素のポンプ送液チューブと共働してローラ型ポンプが構成され、血液透析、腹膜透析、血漿交換、免疫吸着等の所望の体液浄化ができるようになっている体液浄化カセットの成形方法であって、前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵する合成樹脂製の中空容器と、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化して合成樹脂製の中空容器内に前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵した体液浄化カセットを成形するに当たり、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品と略板状を呈する仕切部材とを、前記一対の第1、2の半成形品はその突合部に接合用のフランジ部を有するように射出成形し、2次成形により前記仕切部材を前記一対の第1、2の半成形品の突合部で挟んで、前記一対の第1、2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間に溶融樹脂を射出して、前記一対の第1、2の半成形品と前記仕切部材とを液密的に一体化して2つの流路からなる体液流路を成形するように構成される。
請求項2に記載の発明は、流路中の気泡を検出する気泡検出器、流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、少なくとも1個のローラ型ポンプのポンプロータ、制御装置等が設けられている体液浄化装置本体に、選択的に装着される体液浄化カセットが、少なくとも体液流路とエアトラップと複数個のポンプ送液チューブとからなる基本要素と共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、前記基本要素と選択要素を接続している体液流路とを内蔵し、これらを内蔵している体液浄化カセットを前記体液浄化装置本体に装着すると、前記体液浄化装置本体のポンプロータが前記基本要素のポンプ送液チューブと共働してローラ型ポンプが構成され、血液透析、腹膜透析、血漿交換、免疫吸着等の所望の体液浄化ができるようになっている体液浄化カセットの成形方法であって、前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵する合成樹脂製の中空容器と、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化して合成樹脂製の中空容器内に前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵した体液浄化カセットを成形するに当たり、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品を、その突合部にはフランジ部を、その端部には拡径された接合段部を有するように成形し、そして前記第1,2の半成形品の接合段部に前記基本要素と前記選択要素の接続部分をインサートして型締めし、そして2次成形により前記第1,2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間と、前記接続部分の外周部と前記第1、2の半成形品の接合段部の内周部との間に溶融樹脂を射出充填して、前記体液流路に前記基本要素と選択要素を液密的に接続するように構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の成形方法において、同一金型により体液浄化カセットを成形するように、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の成形方法において、基本要素と選択要素を2次成形前に同一金型内で予熱するように、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の成形方法において、1次成形により第1,2の半成形品を成形するとき、その突合部を突き合わせることによりフランジ部により構成される接合用空間の断面形状は、角が取れた略三角形を呈するように、そして突合部の内周面側は断面形状が略三角形状を呈するように半径外側へ窪んでいるように、そして請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載の成形方法において、基本要素と選択要素と体液流路とが、縦が220mm、横が300mm、高さが80mm以内の合成樹脂製の中空容器内に収まるように成形される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によると、少なくとも体液流路とエアトラップとポンプ送液チューブとからなる基本要素と、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、基本要素と選択要素とを接続している体液流路とを内蔵する合成樹脂製の中空容器と、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化して合成樹脂製の中空容器内に前記基本要素と選択要素とを内蔵した体液浄化カセットを成形するに当たり、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品と略板状を呈する仕切部材とを、前記一対の第1、2の半成形品はその突合部に接合用のフランジ部を有するように射出成形し、2次成形により前記仕切部材を前記一対の第1、2の半成形品の突合部で挟んで、前記一対の第1、2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間に溶融樹脂を射出して、前記一対の第1、2の半成形品と前記仕切部材とを液密的に一体化して2つの流路からなる体液流路を成形するので、すなわち体液浄化カセットを射出成形により成形するので、容易に自動化でき、安価に成形することができる。さらには、金型により成形するので、衛生的に成形することもできる。以上のように、本発明によると体液浄化カセットを安価に且つ衛生的に自動成形あるいは製造することができるという、本発明に特有の効果が得られる。また、本成形方法により得られる体液流路は、往復路としても利用でき、体液浄化カセットを一層小型化できる効果も得られる。
また、他の発明によると、体液浄化カセットの体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品を、その突合部にはフランジ部を、その端部には拡径された接合段部を有するように成形し、そして前記第1,2の半成形品の接合段部に前記基本要素と選択要素の接続部分をインサートして型締めし、そして2次成形により前記第1,2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間と、前記基本要素と選択要素の接続部分の外周部と前記第1、2の半成形品の接合段部の内周部との間に溶融樹脂を射出充填して、前記体液流路に前記基本要素と選択要素とを液密的に接続するので、上記のような効果に加えて、基本要素と選択要素が体液流路の成形時に、該体液流路に液密的に一体化される効果がさらに得られる。また、基本要素と選択要素とを2次成形前に同一金型内で予熱する発明によると、成形品を取り出すために金型を冷却しなければならない熱を有効に利用して予熱することができ、省エネ的に基本要素と選択要素を体液流路に接合することができる。さらには、1次成形により第1,2の半成形品を成形するとき、その突合部を突き合わせることによりフランジ部により構成される接合用空間の断面形状は、角が取れた略三角形を呈するように、そして突合部の内周面側は断面形状が略三角形状を呈するように半径外側へ窪んでいるように成形する発明によると、2次成形時に接合用空間に充填される樹脂の圧力により、接合用空間は膨張あるいは変形し、突合部の内周面は互いに圧接される。これにより、突合部の隙間の極めて小さい、あるいは隙間の無い体液流路が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態によると、図1の(イ)、(ロ)に示されているように、体液浄化装置本体Bと、この体液浄化装置本体Bに対して選択して脱着される複数個の体液浄化カセットU1、U2、…とからなっている。体液浄化装置本体Bは、略箱体を呈し、その前方の上方位置に体液浄化カセットU1、U2、…が装着される装着用凹部SBが設けられている。また、側部には制御装置に連なっている複数個の操作スイッチSW1、SW2、…が設けられている。一方、体液浄化装置本体Bの内部には、図には示されていないが、従来周知の体液流路中の気泡を検出する気泡検出器、体液流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、複数個のローラ型ポンプの構成要素、制御装置等が設けられている。
【0011】
ローラ型ポンプは、従来周知のように、概略、略円弧状を呈するポンプチューブと、このポンプチューブ内で回転駆動されるポンプロータとから構成されている。ポンプロータの駆動部は、体液浄化装置本体Bの内部に設けられているが、それぞれのポンプロータPR1〜PR4は、装着用凹部SBの底壁から外方へ突き出ている。突き出ているので、体液浄化カセットU1、U2、…を装着すると、詳しくは後述するように、ポンプロータPR1〜PR4が体液浄化カセットU1、U2、…のそれぞれのローラ型ポンプ要素PY1〜PY4内に収まる。したがって、体液浄化装置本体BのポンプロータPR1〜PR4が回転駆動されると、体液浄化カセットU1、U2、…の方に設けられているポンプチューブPT1〜PT4はステータとの間で順次押し潰され、ポンプチューブPT1〜PT4中の体液あるいは透析液は圧送されることになる。
【0012】
体液浄化カセットU1、U2、…の異なる実施の形態が、図2、3にそれぞれ示されている。すなわち、図2には血液透析カセットU1の、そして図3には腹膜透析カセットU2の実施の形態が示されている。本実施の形態に係わる血液透析カセットU1は、後述するようにダイアライザ2等の複数個の透析要素1〜4と、4個のローラ型ポンプ要素すなわちポンプ送液チューブPY1〜PY4とからなり、これらは体液流路R1〜R7で接続されている。そして、図2の(ロ)に示されているように、例えば比較的容積の大きいダイアライザ2を除いた他の要素は、上下の箱状体F1、F2からなる容器内に収納され、カセット化あるいはユニット化されている。
【0013】
以下、さらに詳しく説明する。血液透過カセットU1は、図2に示されている実施の形態では、第1〜4の4個のローラ型ポンプ要素PY1〜PY4を備えている。これらのローラ型ポンプ要素PY1〜PY4は、略半周を呈するポンプ送液チューブPT1〜PT4と、これらのポンプ送液チューブPT1〜PT4に対応してその外側に設けられているステータS1〜S4とからなっている。そして、血液透析カセットU1を体液浄化装置本体Bに装着すると、装置本体B側に設けられているポンプロータPR1〜PR4が血液透析カセットU1のそれぞれのポンプ送液チューブPT1〜PT4内に収まる。これにより、第1〜4のローラ型ポンプP1〜P4が構成される。したがって、体液浄化装置本体Bの所定のポンプロータPR1〜PR4が所定方向に回転駆動すると、ポンプロータPR1〜PR4はポンプ送液チューブPT1〜PT4をステータS1〜S4に対して押し潰しながら回転し、ポンプ送液チューブPT1〜PT4中の血液あるいは透析液は圧送されることになる。血液透析カセットU1は、さらに血液中の空気を分離するエアトラップ1、血液中の毒素を除去するための血液透析濾過フイルタすなわちダイアライザ2、菌体毒素であるエンドトキシンを除去する精密濾過フイルタ3、血液中に生じるフイブリン塊を取り除くためのメッシュフイルタ4等を備えている。そして、これらの透析要素1〜4は、作用の項で説明するように体液流路R1〜R7により接続されている。体液流路R1〜R7の分岐点J1〜J3には、体液流路R1〜R7を適宜切り替える3方弁を設けてもよいが、本実施の形態では第1〜4のローラ型ポンプP1〜P4を適宜起動あるいは停止することにより、体液流路R1〜R7が切り替わるようになっている。
【0014】
本実施の形態に係わる血液透析カセットU1は、上記のように構成されているので、体液浄化装置本体Bに装着し、患者の動脈と静脈とにそれぞれ接続されているカテーテルをコネクタ6、7に接続し、そして体液浄化装置本体Bの血液透析用の、例えば操作スイッチSW1を押す。そうすると、選ばれたポンプロータPR3、PR4が回転し、第3、4のローラ型ポンプP3、4が作動する。血液は、第3のローラ型ポンプP3により体液流路R1から吸引され、体液流路R2に吐出される。そして、エアトラップ1を通り体液流路R3から分岐点J1を通り、体液流路R4からダイアライザ2に圧送され、ダイアライザ2の中を下方へと流れる。一方、精密濾過フイルタ3の上方の供給孔8から透析液を供給する。(この透析液の供給ポンプは?)透析液は、ダイアライザ2を下方から上方へと流れ、そしてダイアライザ2の上方の排出口9から血液透析カセットU1外へ排出される。ダイアライザ2には、従来周知のように、また前述もしたように透析膜が設けられているので、血液と透析液とが対向流として流れる間に透析される。そして、体液流路R5、分岐点J3および体液流路R6を通ってメッシュフイルタ4に圧送される。メッシュフイルタ4により血液中に生じるフイブリン塊が除去され、第4のローラ型ポンプP4により昇圧されて体液流路R7からコネクタ7を介して患者の静脈側に戻される。このようにして、透析しているときに第4のローラ型ポンプP4のポンプロータPR4がポンプ送液チューブPT4を解放している位置にあるときは、この第4のローラ型ポンプP4は休止しておくこともできる。
【0015】
本実施の形態に係わる血液透析カセットU1によると、上記のようにして、血液の透析処理を実施することができ、また血液透析濾過処理および血液濾過処理さらには上記血液透析カセットを用いるためのプライミング操作も第1〜第4のローラ型ポンプP1〜P4を適宜運転あるいは停止することにより実施することができるが、このような処理は当業者には明らかであるので、説明はしない。
【0016】
図3に、体液処理カセットの他の実施例として腹膜透析カセットU2が示されている。前述した血液透析カセットU1の構成要素と同じ要素には同じ参照数字を付けて重複説明はしないが、本実施の形態に係わる腹膜透析カセットU2は、第2および第4のローラ型ポンプP1、P4のみを備えている。したがって、本腹膜透析カセットU2を体液浄化装置本体Bに装着すると共に、患者の腹腔に接続されている腹腔カテーテルをコネクタ6に接続し、そして体液浄化装置本体Bの腹膜透析用の操作スイッチSW2をオンすると、第4のローラ型ポンプP4が起動する。患者の腹腔内に滞留している透析液は、体液流路R20を通って第4のローラ型ポンプP4により吸引され、そして体液流路R21、分岐路J20および体液流路R22を通って腹膜透析カセットU2外へ排水孔9から排出される。透析液の排出後、体液浄化装置本体Bの、例えば他の操作スイッチSW3を押すと、今度は第4のローラ型ポンプP4は停止し、第2のローラ型ポンプP2が起動する。透析液は、透析液入り口8から精密濾過フイルタ3に入り、体液流路R23から第2のローラ型ポンプP2に吸引され、そして昇圧されて、エアトラップ1を経て体液流路R24を通ってコネクタ6から患者の腹腔へ送られる。
【0017】
本発明は、前述したような血液透析カセットU1、腹膜透析カセットU2等の体液浄化カセットを1次および2次射出成形により成形しようとするものである。すなわち、体液浄化要素を内蔵している合成樹脂製の中空容器と、体液浄化要素を接続している体液流路とを二つ割りの構造体として射出成形により成形する成形方法、あるいは体液流路の成形時に体液浄化要素を体液流路に一体的に接続する成形方法を提供しようとするものである。
【0018】
初めに、体液流路Rの成形方法の実施の形態を説明する。体液浄化カセットU1、U2、…の構成要素は、例えばダイアライザ2を除いて、図2の(ロ)に示されているように上下の箱状体F1、F2内に収納されるようになっているが、全体として可及的に小型例えば縦220mm、横300mm、高さ80mm以内に収まるように構成されることが望ましい。そのような目的に沿う小さな液体流路Rが図4の(イ)に、そしてその成形金型あるいは成形例が図4の(ロ)および図5に示されている。すなわち、本実施の形態によると、図4の(イ)に示されているように、断面が半円形を呈する一対の二つ割り構造の第1、2の半成形品20、20’と、これらの第1、2の半成形品20、20’を仕切っている仕切部材25とから第1、2の体液流路28、29が構成されている。このような第1、2の半成形品20、20’と仕切部材25は、次に説明するように、1次成形により実質的に同時に成形され、そして2次成形により、一対の二つ割り構造の第1、2の半成形品20、20’が仕切部材25を挟んで付き合わされ、そして突合部あるいは接合用のフランジ部の間に構成される接合用空間に溶融樹脂を射出することにより一体化されている。
【0019】
上記の体液流路Rの成形用金型の実施の形態が、図4の(ロ)に金型を閉じた状態で示されている。本実施の形態によると、固定盤40に取り付けられている固定金型41と、可動盤50に、ピストンシリンダユニット51により図4の(ロ)において上下方向にスライド的に駆動されるスライド金型52とからなっている。固定金型41のパーテイングラインPの上方位置には、第2の半成形品20’を成形するための所定大きさの断面が略半円を呈する凹部42が形成されている。そして、この凹部42の周囲には半径外方へ所定量だけ広がった浅い凹部43が形成されている。この浅い凹部43により、第2の半成形品20’の開口部あるいは突合部に接合用のフランジ21が成形されることになる。固定金型41のパーテイングラインPの下方位置には、第1の半成形品20を成形するための所定大きさの断面が略半円形を呈するコア44が形成されている。このコア44の周囲には、低いコア45が設けられている。この低いコア45により、図4の(イ)に示されている仕切部材25が装着される段部26が形成されることになる。このように、固定金型41のパーテイングラインP側には、凹部42とコア44が上下方向に所定の間隔をおいて設けられているが、これらの間の固定金型41の方に、仕切部材25を成形するための断面が略方形を呈する方形凹部46が形成されている。固定盤40および固定金型41の方には、従来周知のようなスプル47およびランナ48が設けられ、スプル47’、47’、47’はそれぞれのゲートを介して凹部42、方形凹部46および後述するスライド金型52の凹部にそれぞれ開口している。
【0020】
図4の(ロ)は、1次成形位置でスライド金型52を固定金型41に対して型締された状態を示す断面図であるが、この断面図に示されているように、スライド金型52のパーテイングラインP側には、固定金型41の凹部42に対応するコア53が形成されている。このコア53は、固定金型41の凹部42よりも所定量だけ小さい。これにより、所定肉厚の第2の半成形品20’が成形されることになる。このコア53の周囲には、小さな小コア54が設けられている。この小コア54により、図4の(イ)に示されている仕切部材25が装着される段部22が形成される。スライド金型52のパーテイングラインPの下方位置には、第1の半成形品20を成形するための所定大きさの断面が略半円を呈する凹部55が形成されている。この凹部55の周囲には半径外方へ所定量だけ広がった浅い凹部56が形成されている。この浅い凹部56により、第1の半成形品20に接合用のフランジ部23が成形されることになる。
【0021】
次に、上記金型41、52を使用して図4の(イ)に示されている体液流路Rを成形する成形例について説明する。スライド金型52を、図4の(ロ)に示されている1次成形位置に移動して型締めする。そうすると、固定金型41の凹部42とスライド金型52のコア53とにより第2の半成形品20’を成形するための第2のキャビテイC2が構成される。このとき、第2の半成形品20’の開口部あるいは突合部にも接合用のフランジ部21を成形するためのキャビテイも構成される。また、固定金型41のコア44とスライド金型52の凹部55とにより第1の半成形品20を成形するための第1のキャビテイC1が構成される。このとき、第1の半成形品の開口部にも接合部すなわちフランジ部23を成形するためのキャビテイも構成される。さらには、固定金型41の方形凹部46とスライド金型52のパーテイングラインP面とにより仕切部材25を成形するためのキャビテイC3が構成される。このようなキャビテイC1〜C3が構成された状態が図4の(ロ)に示されている。
【0022】
図4、5には示されていないが、射出ユニットから溶融樹脂をスプル47、ランナ48、スプル47’、…およびそれぞれのゲートを介してキャビテイC1〜C3に射出充填する。この1次成形により、一対の第1、2の半成形品20、20’と仕切部材25とが成形される。このようにして1次成形された状態が、図5の(イ)に示されている。ある程度の冷却固化を待って、図5の(ロ)に示されているように、スライド金型52を開く。成形品の形状、大きさ等の違いにより、第1の半成形品20はスライド金型52の凹部55の方に、第2の半成形品20’と仕切部材25は固定金型41の凹部42,46の方にそれぞれ残って開かれる。
【0023】
仕切部材25を、例えばロボットにより取り出し、そして第2の半成形品20’にインサートする。すなわち、仕切部材25の端部を第2の半成形品20’の接合部の段部22に載せる。ピストンシリンダユニット51により、スライド金型52を図5の(ハ)に示されている2次成形位置へ駆動する。そして、型締めする。型締めした状態が、図5の(ニ)に示されている。次いで、2次成形用のランナ27”等から溶融樹脂を、図5の(ホ)に拡大して示されているようにフランジ部21、23間の接合用空間27に射出充填する。これにより、第1、2の半成形品20、20’と仕切部材25とが一体化される。冷却固化を待ってスライド金型52を開くと、図4の(イ)に示されているような第1、2の流路28、29からなる体液流路Rが成形される。以下同様にして成形する。他の体液流路R1〜R23も同様にして成形する。
【0024】
上記の実施の形態では、仕切部材25が設けられているので、仕切部材25により2個の第1、2の流路28、29が成形されているが、仕切部材25がなくて、1個の流路からなる体液流路を、前述したようにして第1、2の半成形品20a、20’aから成形できることは明らかである。このような1個の流路からなる体液流路R’の断面図が、図6の(イ)に示されている。本実施の形態によると、フランジ部あるいは接合用空間27aの構造が相違するが、このような構造の接合用のフランジ部21’、23’も金型の形状を変更することにより成形できることは明らかである。図6の(ロ)に、接合部の形状がさらに異なる実施の形態が示されている。図6の(ロ)において、下方は2次成形前の接合空間部27bの形状を示し、上方は2次成形が終わった状態を示している。本実施の形態によると、一対の第1、2の半成形品20b、20’bの開口部あるいは接合部を付き合わせると、接合用空間27bの断面は、角が取れた略三角形を呈している。そして、突合部の内側は、断面形状が略三角形状を呈するように半径外側へ窪んでいる。窪んでいる箇所は矢印Aで示されている。したがって、接合用空間27bに2次成形用の溶融樹脂を射出充填すると、突合部は矢印方向b、bの力を受け、変形する。このような変形により、2次成形用の樹脂圧力、突合部の材質、形状等にもよるが、突合部の隙間は例えば2μ以内になる。このように突合部の内側部分が密着した状態が、図6の(ロ)において上方で示されている。
【0025】
次に、上記のようにして体液流路Rを成形するときに、別途入手されるエアトラップ1、精密濾過フイルタ3、ローラ型ポンプの構成要素であるポンプ送液チューブPT1〜PT4等のインサート品すなわち体液浄化要素を体液流路Rに一体的に接合する成形例について説明する。体液流路Rにインサート品が一体化された成形品の例が、図7の(イ)、(ロ)に示されている。すなわち、この成形品は、前述したようにして1次成形により二つ割り構造の一対の第1、2の半成形品20c、20’cを、その開口部あるいは突合部にフランジ部30、31を有するように成形し、そして第2の半成形品20’cにインサート品ISの体液出入口IP部分を載せ、次いで第1の半成形品20cを重ねて型締めし、そして2次成形によりフランジ部30、31間に構成される接合用空間27cに溶融樹脂を射出充填して一体化されている。このようにして、一体化されるときに、2次成形用の溶融樹脂は、詳しくは後述するようにインサート品ISの体液出入口IPの外周部と第1、2の半成形品20c、20’cの内周部との間にも充填される。これにより、インサート品ISと体液流路Rは液密的に接合される。
【0026】
上記のようなインサート品の成形方法の実施に使用される成形用金型の実施の形態が、図8に示されている。本実施の形態に係わる金型は、固定金型60と、この固定金型60に対して型開閉されると共に、軸Xを中心に回転される移動金型70とからなっている。図8の(イ)は、移動金型70を開いた状態で示す断面図で、その(ロ)は、(イ)において移動金型70を型締めした状態において矢視ローロで、そしてその(ハ)は同様に型締めした状態において矢視ハーハで見た図に相当する断面図であるが、図8の(ロ)にも示されているように、固定金型60のパーテイングラインP側には、第2の半成形品20’cを成形するための断面が略半円を呈する凹部61が形成されている。また、この凹部61の右方には第1の半成形品20cを成形するための、断面が略半円を呈するコア63が設けられている。凹部61の周囲には、図8の(ロ)に示されているように、小さな浅い小凹部62が形成されている。この小凹部62により、第1の半成形品20cの突合部に接合用のフランジ31が形成される。固定金型60のコア63の周囲には、図8の(ハ)に断面図で示されているように、コア63と所定の間隔をおいて小さな低いコア64が設けられている。このように構成されているコア63の右端部寄りに、所定幅の段部成形用のコア65が設けられている。この段部成形用のコア65の高さは、インサート品ISの体液出入口IPの肉厚と同じになっている。これにより、第1の半成形品20cの内周面側に拡径された段部が成形され、インサート品ISの体液出入口IPがはまる。また、この段部成形用のコア65の頂部には小さな小コア66が設けられている。この小コア66は、パーテイングラインPまで達している。これにより、2次成形時に溶融樹脂が充填される半円周溝28’が成形される。
【0027】
移動金型70は、固定金型60と対をなすもので、そのパーテイングラインP側には、第2の半成形品20’cを成形するための断面が略半円を呈するコア73が設けられている。また、このコア73の右方には第1の半成形品20cを成形するための、断面が略円を呈する凹部71が設けられている。凹部71の周囲には、図8の(ハ)に示されているように、小さな浅い凹部72が形成されている。この小さい浅い凹部72により、第1の半成形品20cの突合部に接合用のフランジ30が形成される。移動金型70のコア73にも、図8の(ロ)に断面図として示されているように、その周囲には、所定の間隔をおいて低い小コア74が設けられている。このように構成されているコア73の左端部寄りには、所定幅の段部成形用のコア75が形成されている。この段部成形用のコア75の高さは、インサート品ISの体液出入口IPの肉厚と同じになっている。これにより、第2の半成形品20’cの内周面側に拡径された段部が成形され、インサート品ISの体液出入口IPがはまる。また、この段部成形用のコア75の頂部には小さな小コア76が設けられている。この小コア76は、パーテイングラインPまで達している。これにより、2次成形時に溶融樹脂が充填される半円周溝28が成形される。なお、固定金型60と移動金型70の両端部には、インサート品ISを装着するときの、切り欠き状の逃げ67、67、77、77が形成されている。また、本実施の形態によると、作用の項で説明する1次成形時に使用される一対の移動コア80、80’も備えている。
【0028】
次に、上記金型60、70および移動コア80、80を使用して図7に示されているような成形品の成形例について説明する。図8に示されている1次成形位置で型締めする。また、一対の移動コア80、80’を図8に示されている位置へ駆動する。これにより、図9の(イ)に示されているように、固定金型60の凹部61と移動金型70のコア73と移動コア80とにより、第2の半成形品20’cを成形するためのキャビテイC’2が構成される。また、固定金型60のコア63と移動金型70の凹部71と移動コア80’とにより、第1の半成形品20cを成形するためのキャビテイC’1が構成される。また、型締めすることにより、図9の(イ)には示されていないが、第1、2の半成形品20c、20’cにフランジ部30、31を一体的に成形するためのキャビテイも、インサート品ISの体液出入口IPが装着される段部形成用のキャビテイも構成される。さらには、第1、2の半成形品20c、20’cの段部の内周面には2次成形時に溶融樹脂が充填される樹脂路28、28’を成形するためのキャビテイも構成される。
【0029】
図には示されていないが、射出ユニットからキャビテイC’1、C’2に向けて固定金型60の方から1次成形用の溶融樹脂を射出する。この1次成形により、図9の(ロ)に示されているように、二つ割り構造の一対の第1、2の半成形品20c、20’cが成形される。冷却固化を待って移動コア80、80’を待避させると共に、移動金型70を開く。第2の半成形品20’cは固定金型60の方に、そして第1の半成形品20cは移動金型70の方に残って開かれる。このようにして開かれた状態が、図9の(ハ)に示されている。別途入手したインサート品ISを、例えば多関節ロボットにより、その体液出入口IPを第2の半成形品20’cの段部にインサートする。移動金型70を軸Xを中心として2次成形位置へ180度回転させる。この2次成形位置へ回転移動させると、第1の半成形品20cは、第2の半成形品20’cと整合するようになる。すなわち、第1、2の半成形品20c、20’cの開口部は突き合わされる。この位置で、図9の(ニ)に示されているように型締めする。そうすると、第1、2の半成形品20c、20’cの突合部には、詳しくは図7の(ロ)に示されているように、フランジ部30、31により2次成形用の充填空間27cが構成される。また、充填空間27cに連通した樹脂路28、28’も形成される。2次成形用の溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、充填空間27cと樹脂路28、28’に充填され、一対の第1、2の半成形品20c、20’cおよびインサート品ISは、液密的に一体化される。冷却固化を待って移動金型を開いて、体液流路Rにインサート品ISが一体化された成形品を取り出す。以下同様にして成形する。
【0030】
本発明は、色々な形で実施できる。例えば、上記実施の形態では移動金型70は回転するようになっているが、図4の(ロ)に関して説明したようにスライド的に移動する金型で実施できる。また、二つ割り構造の第1、2の半成形品20c、20’cを成形するとき、突合部の形状を図6の(ロ)に示されているように実施できることも明らかである。
【0031】
前記説明においては、血液透析カセット、腹膜透析カセット等の体液浄化カセットの体液流路の成形に使用される金型と、体液流路の成形時にインサート品を一体化する金型は、別の金型であるかのように説明されているが、1個の金型によりこれらの成形ができることは明らかである。また、このような金型のパーテイングライン側に別途比較的大きな凹部を形成し、この凹部に1次成形時にインサート品を入れて、予熱することができることも明らかである。
【0032】
上記のようにして成形される体液浄化カセットを、図2の(ロ)に示されているように、一対の箱状体F1、F2内に収納し、カセット化する。すなわち、固定金型とスライド金型とを使用し、これらの金型のパーテイングラインの異なる位置で、一対の箱状体F1、F2を1次成形する。この1次成形時に、前述したような体液流路も二つ割り構造の分割体として成形する。1次成形後、スライド金型を開いて一方の箱状体F1内に体液浄化要素をインサートし、他方の箱状体F2と他方の分割体が残っているスライド金型を2次成形位置へスライドさせて、一対の箱状体F1、F2の開口部すなわち突合部を突き合わせると共に、二つ割り構造の分割体を突き合わせ、そして型締めする。次いで、一対の箱状体F1、F2の突合部と、二つ割り構造の分割体の突合部とに2次成形用の溶融樹脂を射出する。そうすると、図2の(ロ)に示されているように、箱状体F1、F2は、突合部TSで接合され、また二つ割り構造の分割体も同時に接合され、カセット化される。なお、このようにしてカセット化できるが、比較的大きなダイアライザ2は、箱状体F1の上に後付することもできる。このように後付けすると、必要な体液流路等の一部も後付けすることになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】体液浄化装置を示す図で、その(イ)は本発明の実施により成形あるいは製造される体液浄化カセットが装着される体液浄化装置本体の斜視図、その(ロ)は、それぞれ異なる複数個の体液浄化カセットを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施により成形される血液浄化カセットを模式的に示す図で、その(イ)は平面図、その(ロ)は断面図である。
【図3】本発明の実施により成形される腹膜浄化カセットを模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、その(イ)は本発明の実施により得られる体液流路の斜視図、その(ロ)は本発明の実施に使用される金型の断面図、その(ハ)は(ロ)において矢視ハで示す部分の拡大断面図である。
【図5】図4の(ロ)に示されている金型を使用して、図4の(イ)に示されている体液流路の成形例を模式的に示す図で、その(イ)は1次成形が終わった状態を、その(ロ)はスライド金型を開いた状態を、その(ハ)はスライド金型を2次成形位置へスライドさせた状態で、その(ニ)は2次成形が終わった状態をそれぞれ示す断面図で、その(ハ)は一対の半成形品の突合部の拡大断面図である。
【図6】その(イ)、(ロ)は、本発明の実施により得られる体液流路のそれぞれ異なる断面図である。
【図7】本発明の実施により得られる他の体液流路を模式的に示す図で、その(イ)は体液流路にインサート品が接続された状態を示す正面図、その(ロ)は(イ)において矢視ローロ方向に見た断面図である。
【図8】本発明の実施に使用される金型を模式的に示す図で、その(イ)は金型を開いた状態で示す断面図、その(ロ)は金型を閉じた状態で(イ)において矢視ローロ方向に見た断面図、その(ハ)は金型を閉じた状態で(イ)において矢視ハーハ方向に見た断面図である。
【図9】図8に示されている金型を使用して、図7の(イ)に示されている体液流路の成形例を模式的に示す図で、その(イ)は1次成形位置で型締めした状態を、その(ロ)は1次成形が終わった状態を、その(ハ)は移動金型を開いた状態を、その(ニ)は移動金型を2次成形位置へ移動させ2次成形が終わった状態をそれぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
B 体液浄化装置本体
U1、U2・・・ 体液浄化カセット
R、R1、R2・・・ 体液流路
PR1、PR2、・・・ポンプロータ
PT1、PT2、・・・ポンプ送液チューブ
P1、P2・・・ ローラ型ポンプ
F1、F2 一対の箱状体
IS インサート品
20、20’、20a、20’a、20b、20’b、20c、20’c 二つ割り構造の一対の半成形品
21、23、21’、23’、30、31
フランジ部
25 仕切部材
27、27a、27b、27c
接合用空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中の気泡を検出する気泡検出器、流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、少なくとも1個のローラ型ポンプのポンプロータ、制御装置等が設けられている体液浄化装置本体に、選択的に装着される体液浄化カセットが、少なくとも体液流路とエアトラップとポンプ送液チューブとからなる基本要素と共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、前記基本要素と選択要素を接続している体液流路とを内蔵し、これらを内蔵している体液浄化カセットを前記体液浄化装置本体に装着すると、前記体液浄化装置本体のポンプロータが前記基本要素のポンプ送液チューブと共働してローラ型ポンプが構成され、血液透析、腹膜透析、血漿交換、免疫吸着等の所望の体液浄化ができるようになっている体液浄化カセットの成形方法であって、
前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵する合成樹脂製の中空容器と、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化して合成樹脂製の中空容器内に前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵した体液浄化カセットを成形するに当たり、
前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品と略板状を呈する仕切部材とを、前記一対の第1、2の半成形品はその突合部に接合用のフランジ部を有するように射出成形し、
2次成形により前記仕切部材を前記一対の第1、2の半成形品の突合部で挟んで、前記一対の第1、2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間に溶融樹脂を射出して、前記一対の第1、2の半成形品と前記仕切部材とを液密的に一体化して2つの流路からなる体液流路を成形することを特徴とする体液浄化カセットの成形方法。
【請求項2】
流路中の気泡を検出する気泡検出器、流路中の体液の圧力を検出する圧力検出器、透析液供給装置、ヒータ、温度計、電気伝導度計、少なくとも1個のローラ型ポンプのポンプロータ、制御装置等が設けられている体液浄化装置本体に、選択的に装着される体液浄化カセットが、少なくとも体液流路とエアトラップと複数個のポンプ送液チューブとからなる基本要素と共に、ダイアライザ、血液濾過フイルタ、精密濾過フイルタ、メッシュフイルタ、血漿交換モジュール、免疫吸着筒等の体液浄化要素から必要な要素が選択されている選択要素と、前記基本要素と選択要素を接続している体液流路とを内蔵し、これらを内蔵している体液浄化カセットを前記体液浄化装置本体に装着すると、前記体液浄化装置本体のポンプロータが前記基本要素のポンプ送液チューブと共働してローラ型ポンプが構成され、血液透析、腹膜透析、血漿交換、免疫吸着等の所望の体液浄化ができるようになっている体液浄化カセットの成形方法であって、
前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵する合成樹脂製の中空容器と、前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が所定形状を有するように成形し、そして2次成形により二つ割り構造体を一体化して合成樹脂製の中空容器内に前記基本要素と選択要素と体液流路とを内蔵した体液浄化カセットを成形するに当たり、
前記体液流路は、1次成形により二つ割り構造の断面が略半円形を呈する一対の第1、2の半成形品を、その突合部にはフランジ部を、その端部には拡径された接合段部を有するように成形し、そして前記第1,2の半成形品の接合段部に前記基本要素と前記選択要素の接続部分をインサートして型締めし、そして2次成形により前記第1,2の半成形品のフランジ部により構成される接合用空間と、前記接続部分の外周部と前記第1、2の半成形品の接合段部の内周部との間に溶融樹脂を射出充填して、前記体液流路に前記基本要素と選択要素を液密的に接続することを特徴とする体液浄化カセットの成形方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形方法において、同一金型により体液浄化カセットを成形する体液浄化カセットの成形方法。
【請求項4】
請求項2に記載の成形方法において、基本要素と選択要素を2次成形前に同一金型内で予熱する体液浄化カセットの成形方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の成形方法において、1次成形により第1,2の半成形品を成形するとき、その突合部を突き合わせることによりフランジ部により構成される接合用空間の断面形状は、角が取れた略三角形を呈するように、そして突合部の内周面側は断面形状が略三角形状を呈するように半径外側へ窪んでいるように成形する、体液浄化カセットの成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の成形方法において、基本要素と選択要素と体液流路とが、縦が220mm、横が300mm、高さが80mm以内の合成樹脂製の中空容器内に収まるように成形する体液浄化カセットの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−97746(P2007−97746A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289600(P2005−289600)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(502218570)株式会社メディカルシード (5)
【出願人】(500065244)株式会社坂本金型工作所 (2)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】