説明

体液用容器システムを備える装置

【課題】遠心力下で体液、特に血小板濃厚液を各画分に分離するための装置を提供する。
【解決手段】本装置は、少なくとも分離される流体用の第1の容器(2)と分離された画分用の第2の容器(4)とを備える可撓性容器システム(1)を備え、この容器(2、4)は流体用の接続導管(3)を使用して互いに接続され、第1の容器(2)と第2の容器(4)との間の接続導管(3)には拡張部分(30)が配置され、使用中、この拡張部分に検出可能な分離層が生じる。本装置のための可撓性容器システム、遠心力下で血小板濃厚液を各画分に分離するための方法、及び白血球含量が低い血小板濃厚液も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力下で体液を各画分に分離するための装置に関し、この装置は可撓性容器システムを備え、この容器システムは少なくとも分離される流体用の第1の容器と分離された画分用の第2の容器とを備え、ここでこれらの容器は流体用の接続導管を使用して互いに接続される。本発明はまた、遠心力下で血小板濃厚液を各画分に分離するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト血液は実質的に4つの構成成分、すなわち、血漿、血小板(栓球)、白血球細胞(白血球)及び赤血球細胞を含む。白血球細胞及び血小板はまとめてバフィーコートとも称され、通常は血液の約1%を形成する。赤血球細胞は血液の約45%を形成し、一方、残りの部分、すなわち約54%は血漿により形成される。可能な限り純粋な形の種々の血液成分に対する需要は考慮すべきものであり、高まり続けている。先行技術により、種々の成分を互いに分離することにより血液製剤を生成する種々の方法が公知である。全血を種々の画分、例えば、赤血球細胞、血小板及び血漿などに分離するための公知の方法は、遠心力を付与することからなる。かかる方法では、例えば400〜550mlの一単位の全血の入ったプラスチック容器が遠心機に置かれる。遠心力を付与することにより、血液の構成成分が互いに各層に分離され、ここで層の分布は血液の成分の比重量によって決定される。続いて種々の層を含む容器が遠心機から慎重に取り出されて押圧装置に置かれ、この押圧装置によって各層が異なる容器に押し出される。この容器システムを使用すると、血液を遠心中に種々の血液成分に分離することが可能となり、ここでは各血液成分が異なる容器に入る。かかる分離技術を使用すると、血液製剤、すなわち血液成分が比較的純粋な形で、且つ十分な収率で得られる。上述の方法は供血者の場合にも直接適用でき、ここでは血液が採取され、次に分離される。所望の血液製剤が押し出され、回収されたうえ、他の成分は供血者に直接戻される。この方法はアフェレーシスという名で当業者に周知である。こうして得られた血液製剤は、その品質を所望のレベルにまで高めるため、ろ過することによって特に白血球含量を低減する必要がある。臨床効果がより高いことから、白血球の含量が低減された血液製剤はより高価値であり、従ってより高価でもある。特に上記の方法に従い得られた血小板濃厚液は、白血球含量が高過ぎる。全血から血小板濃厚液を作製するには、追加的なステップが必要とされる。このため、一般的には多くの血小板濃厚液が混和されたうえ再び個別に遠心され、それによって白血球の少なくとも一部が分離される。遠心後、白血球の遊離した血小板濃厚液が導管を介して個別の容器に押し出される。このステップの後、次に血小板濃厚液は血液製剤の現行の基準に適合するよう再びろ過され、ここで低白血球の血液構成成分についての限度は、一般的に1治療単位当たりの白血球数が100万未満である白血球含量に設定される。しかしながら、文献からは、一般的に血液成分が白血球フィルターのフィルター材料と接触することで、当該血液成分の品質に対し有害な影響が及ぶことが知られている。例えば、ひいては白血球から酵素及びサイトカインが放出される可能性があり、これは望ましくない。一般的には成分の一部もフィルターに残って失われる。血小板は特にかかる追加的なろ過から非常に影響を受け易いことが分かっており、これは、他にも理由はあるが、とりわけ活性化の感受性が高いことによる。文献には他の副次的な影響も記載されている。指摘した血小板の品質面に加え、他の要因としては、追加的な処理ステップを行わなければならないことである。さらなる白血球フィルターの使用は、コストの増加に影響を与える。
【0003】
オランダ国特許第1006731 C2号明細書は、遠心力下で体液を各画分に分離するための装置を記載している。この装置は、接続導管を使用して互いに接続される容器を有する可撓性容器システムを備える。このオランダ国特許第1006731 C2号明細書に記載される装置により妥当な程度の分離を達成できるが、しかしながらこれは所望されるレベルではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、遠心力下で体液、特に血小板濃厚液を各画分に分離するための装置及び方法を提供することであり、ここでは高品質の血液製剤が得られる。本発明は特に、低白血球の血小板濃厚液が得られるような、遠心力下で血小板濃厚液を各画分に分離するための装置及び方法を提供するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的上、本発明により前段に係る装置が提供され、本発明は、この装置が可撓性容器システムを備え、この容器システムが少なくとも分離される流体用の第1の容器と分離された画分用の第2の容器とを備え、これらの容器が流体用の接続導管を使用して互いに接続され、ここで第1の容器と第2の容器との間の接続導管に拡張部分が配置され、使用中、この拡張部分に検出可能な分離層が生じることを特徴とする。拡張部分は、とりわけ、種々の分離された構成成分のより良好な検出を提供するとともに、構成成分の正確な分離及び押出しを可能にする。以下の説明は限定的なものとして見なされてはならないが、本発明者は、この拡張部分により、付与される遠心力場の影響下で遠心機の外側から内側に押し出されるか、又は圧送される流体の流速が、結果として低下すると考える。流速の低下によって、より重い成分、例えば白血球などが遠心力場によってより軽い成分とより良好に分離されたまま保たれるか、又は再び分離される。第1の容器(第1の分離が起こるところ)と第2の容器との間の遠心力場にある導管に拡張部分を配置することにより、例えば、残留白血球含量が単位当たり500万未満、好ましくは単位当たり300万未満、最も好ましくは単位当たり100万未満の血小板濃厚液を調製することが可能となる。
【0006】
遠心力下で全血を各画分に分離するための装置は、米国特許出願公開第2003/195104 A1号明細書から公知であることが注記され、ここでは容器が、拡張部分を配置し得る接続導管を使用して互いに接続される。米国特許出願公開第2003/195104 A1号明細書によれば、この拡張部分はバフィーコートの回収容器として機能し、遠心中に体液構成成分間、特に血小板と白血球との間のより正確な第2の分離を得るための手段として機能するものではない。
【0007】
本発明に係る装置及び方法は、血小板濃厚液、及び特に白血球含量が低減された血小板濃厚液の調製に特に好適である。
【0008】
導管システムの拡張部分は多様な形をとることができる。従って拡張部分は、台形、円筒形、矩形であるか、又は任意の他の好適な形をとることが可能である。その形について設けられる唯一の制限は、拡張部分が流体の平均流速を導管中の平均流速と比べて低下させるものでなければならないことである。本発明に従えば、拡張部分は流入導管を介して第1の容器と、及び流出導管を介して第2の容器と接続される。本発明に係る容器システムが遠心機に収容されたとき、流入導管は好ましくは遠心機の最大半径のところに配置され、一方、流出導管は好ましくはより小さい半径のところに配置される。拡張部分は可撓性及び剛性の双方を有し得る。従って拡張部分は例えば射出成形プラスチックで製造でき、ここで拡張部分は好ましくは比較的平坦である。拡張部分はまた、好ましくは、例えば光学的手段により分離層を検出するのに十分な透明度も有する。
【0009】
本発明に係る装置の好ましい実施形態は、この装置に手段が提供され、この手段を使用して第1の容器と拡張部分との間の、及び/又は拡張部分と第2の容器との間の接続導管を遮断及び遮断解除できることを特徴とする。容器間の接続導管を遮断及び遮断解除できるこの手段は好ましくは、締付け手段を備える。かかる締付け手段は、各容器間の接続導管を所望の状態に応じて挟圧して閉じたり(遮断)、又は開け放したり(遮断解除)できる。締付け手段はまた、遠心装置との連結も可能であり、一方で本発明に係る装置には部材、例えば開口が提供され、これが締付け手段と協働し、ひいては接続部材の遮断(解除)に寄与できる。
【0010】
本装置の遮断手段は、容器間の接続導管の遮断(閉止)又は遮断解除(開放)を提供できる。本装置は、そこに連結される容器システムと共に、遠心装置における目的上好適な空間に設置することができる。好ましくは遠心機では複数の装置が同時に処理される。また、例えば第1の容器として環状の容器システムが利用される場合、遠心機では1つの装置のみを処理することも可能である。かかる遠心装置の例は、Orbisac(登録商標)型のものである。上述される容器システムが遠心機で利用される場合、まず初めに遮断手段が第1の容器と拡張部分との間、及び拡張部分と第2の容器との間の接続導管を、第1の容器で血液成分の分離が起こるまで閉止し得る。次に2つの容器間の接続導管の遮断を解除でき、それにより血液成分層の1つが第1の容器から拡張部分を介して第2の容器へと流出し得る。本発明に従えば、ここで拡張部分が、より厳密に限定された分離層を、従ってより良好な分離をもたらす。血小板濃厚液の場合には、血小板に富む血漿の実質的に全てが第1の容器から第2の容器に流れたときに、第1の容器と拡張部分との間、及び拡張部分と第2の容器との間の接続導管が1つ又は複数の遮断手段を使用して閉止され得る。第1の容器から第2の容器への流動を支援するため、本発明に係る装置は押出し手段を備え、これを使用することにより少なくとも第1の容器が当該容器の外部から加えられる圧力を受け得る。ポンプ装置を有する装置を提供することもまた可能であり、それにより流体は第1の容器から第2の容器へと遠心方向に逆らって圧送される。
【0011】
さらに好ましい変形例において、本装置は、拡張部分内での分離された画分の位置を検出するための検出手段を備える。拡張部分の使用によってより厳密に限定された分離層が生じ、その位置はこの検出手段によってより単純且つより正確な方法で検出できる。さらに別の好ましい実施形態において、本装置は、拡張部分内の分離された画分、特に分離層の位置及び前進を検出するための一列の検出手段を備える。検出手段の列は本目的上、体液の流れの方向に、好ましくは拡張部分の全長又は部分長に沿って配置され、それにより分離層の前進を追跡できる。
【0012】
原則的に任意の好適な検出手段が利用可能であるが、検出手段が、拡張部分の一方の側に配置された光源と、拡張部分の他方の側に配置され、拡張部分に存在する流体によって散乱される光の強度を計測できる一列の感光センサとを備える場合には有利である。感光検出器はここでは好ましくは、第2の容器に回収されるべきではない特定の血液構成成分が拡張部分の出口導管に達すると信号を生成して装置に存在する手段を作動させるように設定される。次に作動手段が確実に1つ又は複数の遮断手段を作動、例えば起動し、それにより第2の容器への導管が閉止される。種々の分離された成分が押し出されるか、又は圧送され終わったら、それ以上の混合が起こらないよう、遠心機の停止に先立ち、第1の容器と第2の容器との間の供給導管が好ましくは挟圧して閉じられ、封止、溶着などによって密閉される。これはまた、遠心機が停止状態に達した際に手動で行われてもよく、このとき締付け具は閉止されたままである。
【0013】
本発明に係る装置は2つの容器を備える場合に非常に上手く機能するが、装置がより多くの容器を有する容器システムを備え、ここで少なくとも1つの拡張部分がそれらの容器のうち少なくとも2つの間の接続導管に配置されることを特徴とすることは有利であり得る。かかる装置によれば、血液のその各成分へのさらにより正確な分離が達成される。
【0014】
さらに好ましい実施形態において、本装置は、容器及び/又は拡張部分を格納するための1つ又は複数の収容部を備え、これらの収容部は、そこに容器及び/又は拡張部分が着脱可能に連結され得るように構成される。この好ましい変形例は、容器システムを格納する収容部によって、本装置は遠心作業が終了した際に遠心機から容易に取り外すことができるという利点を有する。ここでの顕著な利点は、各血液成分が異なる容器にあり、これらの容器間の通路が遮断手段を使用して閉止されるため、異なる血液成分の混合が起こり得ず、非常に純粋な血液製剤が得られることである。本発明に係る装置のもう1つの重要な利点は、装置は予め容器システムと連結させることができ、一方で容器システムが連結された1つ又は複数の他の同様の装置を遠心機に設置することができ、それらが遠心処理に供されることである。遠心作業が終了したら、容器システムが連結された装置は、容器システムを設置するために行わなければならない追加的な作業なしに、容易且つ迅速に交換できる。従ってこの好ましい変形例を使用することにより、上述の容器システムを使用した遠心作業の効率性は大幅に向上する。
【0015】
収容部の少なくとも1つは好ましくは、収容部と取り外し可能に連結される容器が容器の外部から加えられる圧力を受けることができるように実現される。収容部の少なくとも1つのかかる実施形態は、血液成分の押出しが第1の容器から拡張部分及び/又は第2の容器へと起こり得るために重要である。この押出しは、例えば、加圧液体又はガスで充填されて容器を押圧する圧力緩衝材を使用して引き起こされる。かかる圧力緩衝材−又は他の圧力手段−が容器を押圧できるよう、圧力緩衝材は好ましくは少なくとも片側で収容部の壁部に当接する。血液成分を圧送することもまた可能である。
【0016】
本発明は以下で添付の図を参照してさらに明らかにされる。図は単に略図であり、必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らない。明確にする目的から、一部の寸法は誇張されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】体液の分離に利用するのに好適な本発明に係る可撓性容器システムを概略的に示す。
【図2】本発明に係る装置の上面図を概略的に示す。
【図3】遠心装置内に設置された本発明に係る装置の別の実施形態の上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、体液、例えば血液、及び特に血小板濃厚液を遠心によって分離するための可撓性容器システム1の実施形態を示す。示される実施形態の変形例において、容器システム1は第1の容器2と第2の容器4とを備える。容器2、4の容積は、ホース又はチューブ様接続導管3を使用して相互接続されている。本発明に従えば、拡張部分30が第1の容器2と第2の容器4との間の接続導管3に組み込まれる。必要に応じて、複数の接続導管も利用され得る。容器2、4、接続導管3の拡張部分30並びに接続導管3それ自体は、好ましくは可撓性材料、一般的には透明なプラスチックで形成される。容器システム1の使用中、採取された血液をその各成分に分離することによる周知の方法で得られる血小板濃厚液が第1の容器2に収容され、その後容器システム1が、例えばRotomat(登録商標)型の遠心装置に設置され、発生する遠心力の影響下に血小板濃厚液が個々の構成成分に分離される。必要に応じて、複数の、例えば4〜6つのバフィーコートの混合物もまた、第1の容器2に収容され得る。これらのプールされたバフィーコートを遠心する間、血小板濃厚液は血小板及び白血球細胞の白色から帯黄色の層と血漿及び血小板の黄色の最上層とに分離される。構成成分の分離が生じると、血漿及び血小板の最上層(これは遠心後、容器2の出口に最も近いところにくる層である)が拡張部分30を介して第2の容器4へと押し出される。この押出しは、加圧液体又はガスを使用する押出し手段20によって第1の容器2に圧力を加えることにより起こり得るもので、好ましくは、遠心機の回転速度は低くして行われる。本発明に従えば、このようにまず初めに比較的高い血小板濃度の血漿が第2の容器4に回収される。白色から帯黄色の層が導管3の拡張部分30に達したところで、白色から帯黄色の層中に存在するより重い白血球の遠心力による速度は血漿中の血小板より遅くなる。これによってより正確な分離層が拡張部分30に生じる。本発明の好ましい実施形態において、本装置にはさらに締付け手段15が設けられ、図2に示されるとおり、これを用いて容器2と4との間の接続導管3が遮断及び/又は遮断解除され得る。示される好ましい変形例において、本装置は、第1の容器2と拡張部分30との間、及び拡張部分30と第2の容器4との間に締付け具15を備える。本装置はさらに、拡張部分30内での分離された画分の位置、及びより具体的には、さもなければ双方とも血小板を含んでなり得る白血球画分と血漿画分との間の分離層の位置を検出するための検出手段25を備える。第1の容器における分離に加え、本発明に従えばそこにある拡張部分の使用により、追加的な第2のより正確な分離が起こる。検出手段はより正確には、拡張部分30の一方の側(図2の平面の前側又は後側)に配置された光源と、拡張部分30の他方の側に配置され、拡張部分30に存在する流体により散乱される光の強度を計測できる一列の感光センサとを備える。血小板濃厚液の流れの方向に、好ましくは拡張部分の全長に沿って一列のセンサを配置することにより、分離層の前進を計測できる。これにより、例えば、分離層の計測された位置に従い遠心機の回転速度を精密に調整することが可能となる。ひいては、例えば、分離層が第2の容器側の外端に接近するに従い、回転速度を段階的に低下させることが可能となる。血液構成成分の相対密度に違いはほとんどない。すなわち、赤血球細胞の密度は1.10g/ml、白血球細胞の密度は1.07g/ml、血小板の密度は1.05g/ml、及び血漿の密度は1.03g/mlである。特に、血小板と白血球との密度の差は極めて小さいため、圧送/押出しの間に泡立って上方へ向かう白血球細胞と、血小板の間になお閉じ込められている白血球細胞とが、第1の分離ステップより低い回転速度の第2の分離ステップの間にも、なお遠心機の外側に向かって移動することになる。密度の差は非常に小さいため、回転速度を精密に制御可能であることは極めて有利である。
【0019】
感光センサ25の配列の調整に応じて締付け具15を機能させることにより、拡張部分30と回収容器4との間のホース導管3が閉止され、及び場合により、白色から帯黄色の層が拡張部分30の端部に近付いたときに密閉される。遠心機21が停止したら、回収容器4(導管3の密閉後)並びに第1の容器2及び拡張部分30は取り外すことができる。遠心分離装置21のタイプに応じて、上記は単一の作業又は複数の同時作業として実行され得る。第1の容器2及び第2の容器4は、利用される装置のタイプによって多様な形をとることができる。従って、技術分野で一般的で、上部及び/又は底部から充填可能であり、比較的平坦且つ円形で、側面開口が設けられている形の容器などを利用することが可能である。また、本発明に従えば、単一のバフィーコート又は一単位の血小板に富む血漿を用いて本方法を実施することも可能である。
【0020】
図2は、本発明に係る装置の一部の上面図を概略的に示す。示される装置は、図1に係る容器システム1を格納するのに好適であり、図3に示されるとおりの遠心装置21に設置するためのものである。図2に示される装置部8は3つの互いに連結された収容部10、11及び12を備え、そのうち収容部10及び12は容器2、4を格納するためのものであり、収容部11は拡張部分30が設けられた導管3を格納するためのものである。全ての構成部品2、4、30は、収容部10、11及び12と取り外し可能に連結され得る。示される実施形態において、収容部10は容器システム1の第1の容器2を格納するよう構成される。収容部10は一方の側に実質的に開放する空間を備え、それを通じて第1の容器2が収容部10に設置され得るとともに、場合により連結手段を使用してそこに連結され得る。示される例示的実施形態において、収容部11は、そこに導管3及び拡張部分30を格納できるように実現される。この収容部11は実質的に平坦な要素を備え、この要素には凹部が設けられ、これはとりわけ拡張部分30の形をしているため、場合により拡張部分30の設置及び取着が容易に可能となる。必要に応じて、拡張部分30用の凹部にはカバー(図示せず)を設けることができ、それにより拡張部分30を収容部11と取り外し可能に連結できる。最後に、収容部12は第2の容器4を格納するためのものである。この収容部12は、場合によりヒンジ式フラップ(図示せず)を使用して閉止され得る中空の空間を備える。ここでは第2の容器4はこの空間に設置でき、その後フラップを使用して閉止される。装置部8はさらに手段15を備え、これを使用して容器2と4との間の接続導管3が遮断及び遮断解除され得る。こうした手段15は、遠心装置に連結された遮断手段と協働する開口を備え得る。しかしながら、別の選択肢としては、こうした手段15それ自体が締付け手段及び/又は溶着装置の形の遮断手段を備える。
【0021】
最後に、図3は、遠心装置21に設置された本発明に係る装置の別の好ましい実施形態を示す。遠心装置21の示される部分は凹部又は空洞32を備え、そこに比較的平坦で環状の容器2が格納され得る。図3は容器2を上面図として示す。遠心装置21にはさらに押圧部材(図示せず)が設けられ、これは液体又はガスが供給されると膨張し得るとともに、第1の容器2に圧力を加えることができるため、その押圧によって第1の容器2は−ほとんど−空になる。押圧部材は遠心装置のカバーに位置しても、又は凹部の底に位置してもよく、これは実質的に容器2の全表面積にわたり延在する。遠心装置21にはさらに第2の凹部34が設けられ、そこには第2の容器4が格納され得る。双方の容器は接続導管3を介して互いに接続される。本発明に従えば、接続導管3には拡張部分30が設けられる。感光センサ25も同様に装置21に格納され得る。遠心装置21はモータにより駆動され、モータは図3に示される方向Rの回転を可能にする。容器システム1と組み合わせた本発明に係る装置の動作は、次のとおりである。上記のとおり、容器2、4、及び拡張部分30を有する接続導管3が装置に格納され、装置と取り外し可能に連結される。ここでは容器2のみが血小板濃厚液で充填される。遠心装置21に設置後、遠心装置を始動させる。この状態では、遮断手段15が作動することにより接続導管3の遮断が起こり、その結果、濃厚液は第1の容器2から第2の容器4へと流れることができない。好ましい実施形態において、遮断手段15は締付け手段及び/又は溶着手段を備え、これは装置それ自体の中にあると同時に、遠心装置と連結され得る。示される実施形態では、締付け手段15は装置それ自体に設けられている。本装置はさらに検出手段及び作動手段と協働し、これらの手段は通常は遠心装置と連結され、遮断手段15を作動させることができる。始動状態では、検出手段及び作動手段は接続導管3が遮断されるように調整される。所定の遠心時間に血小板濃厚液の個別の構成成分への分離が起こった後、遮断手段15が作動されることにより接続導管3の遮断が解除され、第1の容器2から拡張部分30及び第2の容器4への流体の流動が起こり得る。この第1の容器2はさらに押圧部材により刺激され、押圧部材が供給される液体又はガスによって膨張して、第1の容器2に圧力を加える。本発明に従えば、こうしてまず初めに比較的高い血小板濃度の血漿が第2の容器4に回収される。ここで、本発明に従えば、導管3に拡張部分30が組み込まれることにより、血小板及び白血球細胞の白色から帯黄色の層の構成成分間の、従って血小板と白血球との間の比較的良好に限定された分離がもたらされることが分かる。白色から帯黄色の層が導管3の拡張部分30に達したところで、本発明に従えば、白色から帯黄色の層中に存在するより重い白血球の遠心力による速度は血漿中の血小板より遅くなる。これにより、拡張部分30において、検出手段25により比較的容易に検出できるより正確な分離層が生じる。検出手段25がかかる変化を検出すると、作動手段が確実に、それと協働する拡張部分30と第2の容器4との間の遮断手段15を作動させ、それにより接続導管3の当該部分が閉止され、流体の流れが停止する。ここで遠心処理は終了でき、装置を遠心機21から取り出すことができる。本発明によれば血小板濃厚液は第2の容器4内にあり、その白血球含量は従来一般的とされてきたものより低い。従って、白血球含量が単位当たり500万未満、好ましくは単位当たり300万未満、最も好ましくは単位当たり100万未満の血小板濃厚液を得ることが可能となる。単位は、治療単位について当業者により使用される一般用語である。ここでは、遠心によって得られた血小板濃厚液をろ過して、ひいてはそれにより白血球含量を所望の低いレベルにする必要がもはやないことから、これは大きな利点を有する。血小板濃厚液の成分の少なくとも一部に負の影響があるため、ろ過は望ましくない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力下で体液を各画分に分離するための装置であって、前記装置が遠心機と可撓性容器システム(1)とを備え、前記容器システム(1)が少なくとも分離される流体用の第1の容器(2)と分離された画分用の第2の容器(4)とを備え、前記容器(2、4)が流体用の接続導管(3)を使用して互いに接続され、前記第1の容器(2)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)に拡張部分(30)が配置され、及び遠心中、前記拡張部分に検出可能な分離層が生じ、前記装置が、体液の流れの方向に前記拡張部分の全長又は部分長の方向に沿って配置される検出手段の列(25)をさらに備えることにより、前記拡張部分(30)内での前記分離された画分、及び特に前記分離層の位置及び前進を検出する、装置。
【請求項2】
前記分離層の計測された位置に従う遠心機の回転速度の精密な調整を可能にする手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出手段(25)が、前記拡張部分(30)の一方の側に配置された光源と、前記拡張部分(30)の他方の側に配置され、前記拡張部分(30)に存在する流体により散乱される光の強度を計測できる一列の感光センサとを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記一列の感光センサが体液の流れの方向に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置に手段(15)が設けられ、前記手段(15)を使用して前記第1の容器(2)と前記拡張部分(30)との間、及び/又は前記拡張部分(30)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)を遮断及び遮断解除できることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記容器(2、4)間の前記接続導管(3)を遮断及び遮断解除できる前記手段(15)が、締付け手段及び/又は溶着手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記検出手段により生成される信号に反応して1つ又は複数の遮断手段を作動させる作動手段を備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が複数の容器を備える容器システム(1)を備え、前記容器のうち少なくとも2つの間の前記接続導管(3)に少なくとも1つの拡張部分(30)が配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が押圧手段(20)又は圧送手段を備え、それを使用して少なくとも前記第1の容器(2)が前記容器(2)の外側から加えられる圧力を受け得ることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、容器(2、4)及び/又は拡張部分(30)を格納するための1つ又は複数の収容部(10、11、12)を備え、前記収容部がそこに容器(2、4)及び/又は拡張部分(30)を取り外し可能に連結できるよう構成されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
遠心力下で体液、特に血小板濃厚液を各画分に分離するための可撓性容器システム(1)であって、前記容器システム(1)が遠心装置(21)に格納され得るとともに、少なくとも分離される流体用の第1の容器(2)と分離された画分用の第2の容器(4)とを備え、前記容器(2、4)が流体用の接続導管(3)を使用して互いに接続され、及び前記第1の容器(2)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)に拡張部分(30)が配置され、使用中、前記拡張部分に検出可能な分離層が生じる、容器システム。
【請求項12】
遠心力下で血小板濃厚液を各画分に分離するための方法であって、
a)少なくとも分離される流体用の第1の容器(2)と分離された画分用の第2の容器(4)とを備える可撓性容器システム(1)であって、前記容器(2、4)が流体用の接続導管(3)を使用して互いに接続され、及び前記第1の容器(2)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)に拡張部分(30)が配置される、請求項11に記載の容器システムを提供するステップと、
b)前記容器システム(1)の前記第1の容器(2)を分離される流体で充填するステップと、
c)動作中に前記第1の容器(2)が最大遠心力を受けるように前記容器システム(1)を遠心装置(21)に格納するステップと、
d)前記遠心装置(21)を所望の分離が得られるまで回転させるステップと、
e)前記第1の容器(2)及び前記第2の容器(4)を前記遠心装置(21)から取り出すステップと、を含む、方法。
【請求項13】
前記拡張部分(30)内での前記分離された画分の位置が、少なくともステップd)の間に、前記拡張部分(30)の全長又は部分長の方向に沿って配置された検出手段の列(25)により検出されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記遠心装置(21)の回転速度が、前記拡張部分(30)内での前記分離層の計測された位置に従い調整されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記容器システム(1)のうち少なくとも前記第1の容器(2)が前記容器(2)の外側から加えられる圧力を受けることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記拡張部分の端部位置で前記第2の容器(4)に望ましくない画分が検出されると、前記第1の容器(2)と前記拡張部分(30)との間、及び/又は前記拡張部分(30)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)が遮断されることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の容器(2)と前記拡張部分(30)との間、及び/又は前記拡張部分(30)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)が、ステップd)の後に遮断されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法によってプールされたバフィーコートから直接得ることのできる、白血球含量が単位当たり100万未満の血小板濃厚液。
【請求項19】
白血球含量が単位当たり100万未満であり、ろ過することなく得られる、請求項18に記載の血小板濃厚液。
【請求項20】
可撓性容器システム(1)であって、前記容器システム(1)が少なくとも分離される流体用の第1の容器(2)と分離された画分用の第2の容器(4)とを備え、前記容器(2、4)が流体用の接続導管(3)を使用して互いに接続され、前記第1の容器(2)と前記第2の容器(4)との間の前記接続導管(3)に拡張部分(30)が配置される容器システム、を備える装置の、遠心力下で血小板濃厚液をさらに各画分に分離するための使用。
【請求項21】
使用中、検出可能な分離層が前記拡張部分において血漿の白血球に富む部分と血漿の血小板に富む部分との間に生じる、請求項19に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−542308(P2009−542308A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518017(P2009−518017)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050311
【国際公開番号】WO2008/002135
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508374117)クリップ コンサルタンシー ビー.ヴイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】KLIP CONSULTANCY B.V.
【住所又は居所原語表記】Noordwijk 5,NL−7751 AG Dalen,the Netherlands
【Fターム(参考)】