説明

体積ホログラム記録用感光性組成物および媒体製造法

【課題】回折効率が高く、硬化収縮率の小さく、保存安定性に優れたホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】カチオン重合性化合物(C)と熱酸発生剤(F)とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)と、2種以上のラジカル重合性化合物(X)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、増感色素(G)とを含有することを特徴とする体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。好ましくは、前記ラジカル重合性化合物(X)が、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基またはカルボシキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)と、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基及びカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積ホログラム記録用感光性組成物、該組成物から得られる体積ホログラム記録媒体、該記録媒体の製造方法、ならびに該記録媒体を用いたホログラム記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報をホログラムとして記録するホログラフィックメモリーは、大容量かつ高速転送が可能な次世代情報記録媒体として注目されている。ホログラム記録媒体としては、例えばラジカル重合性モノマー、熱可塑性バインダー樹脂、光ラジカル重合性化合物、および増感色素を主成分とするものが広く知られている。
【0003】
ホログラム記録用感光性組成物をフィルム状にし、干渉光露光を行うことによって情報が記録される。光が強く照射された部分で、ラジカル重合性モノマーが重合し、光が弱く照射された部分から光が強く照射された部分に向かってラジカル重合性モノマーが拡散して、濃度勾配が発生する。これにより、光の強弱に応じた屈折率差が生じ、ホログラムが形成される。
【0004】
従来技術として、三次元架橋エポキシマトリックス中に重合性モノマーを分散させた媒体が提案されている。このような媒体では、ある程度の硬さを有することが必要とされるが、マトリックスを硬くすると光重合性モノマーが拡散できうるマトリックス中の自由空間が十分に得られず、十分な屈折率差を得ることができない。また、マトリックスを柔らかくし、マトリックス中の自由空間を大きくすると重合性モノマーの重合に伴って、記録層が局所的に収縮し、記録データの正確な再生が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152170号公報
【特許文献2】特開2006−30661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ホログラム記録に用いる反応性化合物として2種以上のラジカル重合性化合物と、三次元架橋ポリマーマトリックスを用いることにより、回折効率が高く、硬化収縮率の小さく、保存安定性に優れたホログラム記録媒体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記組成物を用いて、優れた耐湿性、熱安定性を有し、さらに、硬化収縮が抑制された体積ホログラム記録媒体を得ることにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記記録媒体の製造法ならびに上記記録媒体を用いた記録方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、カチオン重合性化合物(C)と熱酸発生剤(F)とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)と、2種以上のラジカル重合性化合物(X)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、増感色素(G)とを含有することを特徴とする体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0008】
前記三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)は、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物(Ia)と、前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)、オキセタン化合物(Ib−2)、ビニルエーテル化合物(Ib−3)からなる群から選択されたいずれか1種または2種以上のカチオン重合性化合物を含有することが好ましい。
【0009】
また、前記ラジカル重合性化合物(X)は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)と、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基及びカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)とを含有することが好ましい。
【0010】
さらに、前記ラジカル重合性化合物(X)は、前記不飽和結合の総量に対するヒドロキシル基及びカルボキシル基の総量のモル比率(OH基及びCOOH基/不飽和結合)が0.01〜0.5の範囲内になるようにラジカル重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)とを組み合わせることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理することにより得られるラジカル重合性化合物、三次元架橋ポリマーマトリックス、光ラジカル重合開始剤、および増感色素を含有する体積型ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることによって得られる体積ホログラム記録媒体を提供する。
【0013】
また、本発明は、基板と、該基板間に挟持された請求項5記載の体積ホログラム記録用感光性組成物からなる体積ホログラム記録層とを有する体積ホログラム記録媒体を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射させて前記ラジカル重合性化合物を重合させることを特徴とするホログラム記録方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記方法でホログラムを記録した後の透過率が80%以上であることを特徴とする体積ホログラム記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のホログラム記録媒体は、三次元架橋ポリマーマトリックスとラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤と増感色素とを含有する記録層を有し、2種以上のラジカル重合性化合物を組み合わせることでラジカル重合型ホログラム記録媒体の問題である硬化収縮を著しく抑制することができる。本発明によれば、高記録容量、高屈折率変調かつ光照射による体積変化の少ないホログラム記録媒体ならびにそれを用いたホログラム記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例及び比較例において回折効率及び二次回折光の一次回折光に対する割合を求めるために用いた光学系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[体積ホログラム記録用感光性組成物]
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、カチオン重合性化合物(C)と熱酸発生剤(F)とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)と、2種以上のラジカル重合性化合物(X)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、増感色素(G)とを含有することを特徴とする。
【0020】
[三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)]
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物に含まれる三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)は、カチオン重合性化合物(C)と熱酸発生剤(F)とを含有する。
【0021】
[カチオン重合性化合物(C)]
カチオン重合性化合物(C)としては、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物(Ia)、前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)、オキセタン化合物(Ib−2)、ビニルエーテル化合物(Ib−3)などのカチオン重合性化合物が挙げられる。
【0022】
上記脂環エポキシ化合物(Ia)としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物の何れであってもよいが、多官能エポキシ化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
上記脂環エポキシ化合物(Ia)の代表的な例としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。脂環式エポキシ樹脂の市販品として、例えば、ダイセル化学工業社製のセロキサイド2000、セロキサイド2021、セロキサイド3000、EHPE3150;三井化学社製のエポミックVG−3101;油化シェルエポキシ社製のE−1031S;三菱ガス化学社製のTETRAD―X、TETRAD−C;日本曹達社製のEPB−13、EPB−27などが挙げられる。
【0024】
前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)としては、例えば、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル,ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテルなどのグリシジル基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
オキセタン化合物(Ib−2)としては、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能オキセタン化合物及び多官能オキセタン化合物の何れであってもよいが、多官能オキセタン化合物が好ましい。オキセタニル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
オキセタニル基を有する化合物の代表的な例として、東亞合成社製の3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(POX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX)、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン(TESOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、フェノールノボラックオキセタン(PNOX−1009)等が挙げられる。また、オキセタニル基とビニルエーテル基を持つ3,3−ジメタノールジビニルエーテルオキセタンのような異種カチオン重合性基を分子内に有する化合物も使用できる。
【0027】
ビニルエーテル化合物(Ib−3)としては、ビニルエーテル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能ビニルエーテル化合物及び多官能ビニルエーテル化合物の何れであってもよいが、多官能ビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
ビニルエーテル基を有する化合物の代表的な例として、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテルなどが挙げられる。また、丸善石油化学社製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を使用することもできる。また、α及び/又はβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物も使用できる。
【0029】
カチオン重合性化合物(C)としては、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物(Ia)と、前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)、オキセタン化合物(Ib−2)、ビニルエーテル化合物(Ib−3)からなる群から選択されたいずれか1種または2種以上のカチオン重合性化合物を含有していることが好ましい。
【0030】
上記脂環エポキシ化合物(Ia)と、前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)、オキセタン化合物(Ib−2)、ビニルエーテル化合物(Ib−3)からなる群から選択されたいずれか1種または2種以上のカチオン重合性化合物との割合は、重量比で、例えば、前者/後者=5/95〜95/5、好ましくは、前者/後者=20/80〜80/20、さらに好ましくは、前者/後者=30/70〜70/30、特に好ましくは、前者/後者=40/60〜60/40である。
【0031】
[熱酸発生剤(F)]
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物に含まれる熱酸発生剤(F)としては、熱カチオン重合を活性化する化合物であれば特に限定されず、例えば、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−150L(三新化学社製)などの芳香族スルホニウム塩を用いることができる。熱酸発生剤は、カチオン重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で使用される。
【0032】
[ラジカル重合性化合物(X)]
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物に含まれるラジカル重合性化合物(X)は、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物等のラジカル重合性基を有するラジカル重合可能な不飽和二重結合を持つ化合物を2種以上組み合わせたものである。ラジカル重合性化合物(X)は、単官能であっても多官能であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル化合物、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物などが好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物(X)としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)と、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基及びカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)とを含有する化合物とすることができる。
【0033】
<ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)>
ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)としては、好ましくは、フッ素原子を含有しないものが使用され、具体的には、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレンなどのスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどのビニルナフタレン類;ビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどのビニルベンゼン類;2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しておらず、フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0034】
<ヒドロキシル基又はカルボキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)>
ヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)としては、好ましくは、フッ素原子を含有しないものが使用され、具体的には、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオール−1−(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,2,2−トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸などのヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有し、フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0035】
本発明のホログラム記録媒体は、三次元架橋ポリマーマトリックスとラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤と増感色素とを含有する記録層を有し、好ましくは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物とヒドロキシル基及びカルボキシル基を持たないラジカル重合性化合物とを一定の比率で組み合わせることでラジカル重合型ホログラム記録媒体の問題である硬化収縮を著しく抑制することができる。すなわち、前記ラジカル重合性化合物(X)がラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有しており、この不飽和結合に対する、ヒドロキシル基及びカルボキシル基の総量のモル比率(OH基及びCOOH基/不飽和結合)が0.01〜0.5の範囲内になるようにラジカル重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)とを組み合わせることが好ましい。
【0036】
体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物は、カチオン重合性化合物(C)100重量部に対して、例えば10〜500重量部、好ましくは50〜300重量部の割合で使用できる。
【0037】
[光ラジカル重合開始剤(E)]
光ラジカル重合開始剤(E)としては光ラジカル重合を活性化する化合物であれば特に限定されず、例えば、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(製品名「BTTB」、日本油脂社製)、3,3’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3’,4−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンの位置異性体混合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート(商品名:「パーブチルZ」、日本油脂社製)などの過酸化エステル類;t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドなどの過酸化物類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類;1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン;Irgacure784(CIBA社製)などのチタノセン化合物;芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩;などの公知の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
光ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性化合物(E)の総量100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で使用され、光ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で使用される。
【0039】
[増感色素(G)]
増感色素(G)としては、光重合開始剤を増感するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。増感色素として、例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。可視光増感色素は、光学素子のような高透明性が要求される場合には、ホログラム記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解し無色透明になるものが好ましい。増感色素は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なかでも、シアニン系色素が好ましく用いられ、具体的には、下記式(1)で表される3−エチル−2−[3−(3−エチル−5−フェニル−2−ベンゾキサゾリニリデン)プロペニル]−5−フェニルベンゾキサゾィウムブロミド{3-Ethyl-2-[3-(3-ethyl-5-phenyl-2-benzoxazolinylidene)propenyl]-5-phenylbenzoxazolium bromide、シアニン色素1}が挙げられる。
【化1】

【0040】
さらに、本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、必要に応じて、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、セバシン酸ジエチルなどが使用できる。
【0041】
[体積ホログラム記録媒体]
本発明の体積ホログラム記録媒体は、基板と、該基板間に挟持された上記体積ホログラム記録用感光性組成物からなる体積ホログラム記録層とを有する。体積ホログラム記録媒体は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることによって得られる。本発明の体積ホログラム記録媒体は、硬化収縮が著しく抑制され、高記録容量、高屈折率変調かつ光照射による体積変化の少ないホログラム記録媒体である。
【0042】
<体積ホログラム記録層>
体積ホログラム記録層の厚みは、例えば、1〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。一般に、この厚みが薄すぎると、角度選択性の低いホログラムになりやすく、逆に厚い場合には、角度選択性が高いホログラムが得られる。
【0043】
<基材(基板)>
基材(基板)としては、可視光に対して透明性を有するものであればよく、例えば、ガラス板;シクロオレフィン系ポリマーフィルム(例えば、ダイセル化学工業社製の「TOPAS」等)、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム(シートを含む)などが挙げられ、これらの基材は、同一、又は異種の組合せで用いることができる。
【0044】
また、本発明の体積ホログラム記録媒体は、例えば、透過型体積ホログラム記録媒体とすることができる。本発明の体積ホログラム記録媒体では、好ましくはホログラム記録後増感色素が分解し、透過率が80%以上である。
【0045】
[体積ホログラム記録媒体の製造方法]
本発明の体積ホログラム記録媒体は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を上記基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることにより製造する。加熱処理及び熟成の時間は、系内の三次元ポリマーマトリックス前駆体材料の構成成分の硬化反応が終了する時間とすることができる。加熱処理後に熟成することにより、優れた耐湿性、熱安定性を有し、さらに硬化収縮が抑制された体積ホログラム媒体を得ることができる。
【0046】
<加熱処理>
具体的には、加熱処理は、40℃以上300℃以下で行うことが好ましく、特に40℃以上150℃以下で行うことがより好ましい。加熱時間は、例えば、10分〜5時間であり、好ましくは10分〜3時間である。加熱時間が10分より短いと、後の熟成工程を施しても硬化反応が終了しないので、好ましくない場合がある。加熱時間が5時間を超えると、ラジカル重合性化合物の反応が進行することがあり、十分なホログラム特性を得ることができない場合がある。
【0047】
<熟成>
熟成は、例えば、−15℃以上40℃未満、好ましくは、0℃以上35℃以下(室温)にて、遮光条件下でカチオン重合反応性化合物を暗反応させて行う。熟成することにより、媒体中での反応を落ち着かせることができる。また、上記加熱処理で硬化が不十分な場合に、熟成することにより体積ホログラム記録層の硬化反応を終了させることができる。本願において硬化反応の終了は、例えば、形成された膜を、赤外スペクトル測定器(IR)やDSC等を用いて評価することにより、マトリックスの硬化状態を確認することができる。また、熟成工程は、加熱処理後の体積ホログラム記録媒体を十分に室温まで戻す工程も含む。加熱後、体積ホログラム記録媒体を十分に室温まで戻すことにより、安定したホログラム特性を得ることができる。
【0048】
熟成時間は、上記の硬化反応が終了するのに要する時間により定められ、5分〜1週間程度、好ましくは、10分〜4日間程度、より好ましくは、30分〜48時間程度である。加熱処理及び熟成時間は、感光性組成物の組成によりエポキシ基を完全硬化させる時間が異なるため、感光性組成物毎に適当な時間を選択する。
【0049】
[ホログラム記録方法]
本発明のホログラム記録方法では、体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射させて前記ラジカル重合性化合物を重合させる。本発明のホログラム記録方法でホログラムを記録した後、好ましくは増感色素が分解し、記録後の透過率が80%以上とできる。体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、体積ホログラム記録媒体の体積ホログラム記録材料層に原版を密着させ、透明な基材フィルムの側から可視光、あるいは紫外光や電子線のような電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより体積ホログラムを記録する方法(密着露光方式)や、媒体がガラスやフィルムに挟まれている場合に、媒体側からレーザー光を入射し、原版からの反射レーザー光と入射レーザー光との干渉により記録する方法(1光束干渉)や、レーザー光を2方向に分割し、一方を感材に直接入射し、他方は記録したい情報を持つ物体を通した光(情報光)を入射することにより記録する方法(2光束干渉)、情報光と参照光を同軸から照射する方法(コリニア方式)などが挙げられる。
【0050】
なお、このようなホログラム記録には、可視レーザー光、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンイオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等からのレーザー光を使用することができる。
【0051】
また、屈折率変調の促進、重合反応完結のために、干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0052】
体積ホログラム記録用感光性組成物を用いたホログラムの記録メカニズムは、以下のように説明される。すなわち、フィルム状に形成された当該感光性組成物(体積ホログラム記録層)をレーザーにより干渉露光すると、光が強い部分にて光硬化性化合物の重合が開始され、それに伴い、光重合性化合物の濃度勾配ができ、光が弱い部分から光が強い部分に当該光重合性化合物の拡散移動が起こる。その結果、干渉縞の強弱に応じて、光重合性化合物の疎密ができ、屈折率差として現れる。その屈折率差により、ホログラムが記録される。
【0053】
なお、体積ホログラム記録用感光性組成物中にモノマーの流動性を抑制するためにマトリックスポリマーを用いることができる。マトリックスポリマーは、感光性組成物中に反応性の異なる化合物を入れておき、記録媒体を作製する段階において、三次元架橋させることにより作製することができる。例えば、カチオン硬化系においては、ラジカル重合を用いてマトリックスポリマーを記録媒体中に作製することができる。一方、ラジカル硬化系においては、カチオン重合を用いてマトリックスポリマーを記録媒体中に作製することができる。光重合性化合物とマトリックスポリマーの屈折率差により、ホログラムが記録される。レーザーによる干渉露光後の加熱により屈折率変調を促進することができるが、特に、マトリックスポリマーを含有する場合には、加熱温度をマトリックスポリマーのガラス転移温度付近にすることにより、よりモノマー移動が促進され、屈折率変調量を増加させることができる。
【0054】
本発明の体積ホログラム記録媒体は、三次元架橋ポリマーマトリックスを形成させ、記録モノマーに2種以上のラジカル重合性化合物(X)を含有させることにより、回折効率を10%以上、好ましくは50%以上、特に80%以上とすることができる。特に、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物とヒドロキシル基及びカルボキシル基を持たないラジカル重合性化合物とを一定の比率で組み合わせることが好ましい。さらに、硬化収縮は、記録モノマーに2種以上のラジカル重合性化合物(X)を含有させることにより、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を持たないラジカル重合性化合物(A)を単独で用いた場合の硬化収縮率から10%以上、好ましくは50%以上、特に80%以上の割合で硬化収縮率を逓減することができる。特に、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物(B)とヒドロキシル基及びカルボキシル基を持たないラジカル重合性化合物(A)とを一定の比率で組み合わせることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0056】
(光学系)
図1に実験で用いた光学系の概略図を示す。光源は532nm半導体レーザーを用い、ミラー(M)、スペーシャルフィルター(OL及びPh)、平凸レンズ(PCL)、波長板(PP)を介し、ビームスプリッター(BS)で2つの光に分けた。BSで分けられた2つの光をミラーを介し、サンプルに対してそれぞれ30°、30°で入射、干渉させた。回折光及び透過光の強度はパワーメーター(PM:株式会社エーディーシー社製)にてそれぞれ検出した。
【0057】
なお、回折効率及び二次回折光の一次回折光に対する割合は以下の方法により求めた。
(回折効率)
二光束干渉法で記録したホログラムの回折効率をパワーメーターを用いて測定した。口径5φの532nm半導体レーザーを30°の角度で入射し、透過光と回折光を検出した。体積ホログラム記録媒体を−5°〜5°の範囲で軸回転させ、回折光強度が最も高くなる位置で回折効率ηを下記(式1)を用いて算出した。
η=L1/(L0+L1) (式1)
(透過光強度:L0、回折光強度:L1
【0058】
(硬化収縮)
体積ホログラム記録媒体を10°傾けて設置し、記録光と参照光の角度をそれぞれ20°と40°でホログラム記録を行った。その後、参照光を40°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度を検出した(θ1)。収縮がない場合には、その際に得られる最大回折効率の示す角度は40°であるが、収縮が起こることで40°からのずれが生じる。また、同様にして、記録光のみを20°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度(θ2)を検出した。これらの角度を用いて、以下の(式2)、(式3)より記録媒体の厚み方向のグレーティングベクトル(K1およびK2)を求め、(式4)より収縮率を算出した。
1=(2π/λ){(n2−sin2θ11/2)−(n2−sin2θ21/2)}
… (式2)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1,θ2:記録前の入射角:40°,20°)
2=(2π/λ){(n2−sin2θ1'1/2)−(n2−sin2θ2'1/2)}
… (式3)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1',θ2':回折効率が最大となる入射角)
収縮率(%)=(K1−K2)/K1 × 100 … (式4)
(記録前:K1、記録後:K2
【0059】
<実施例1>
ラジカル重合性化合物としてOH基を持つ単官能のアクリレート化合物である1,2−プロパンジオール−1−アクリレートを10重量部、4官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールテトラアクリレートを40重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物(3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル)を25重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチルを25重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物50重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物25重量部に対して1重量部、増感色素として上記式(1)で表される構造を有するシアニン色素1を0.025重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液1とした。この時のOH基/アクリロイル基の比率は、0.14である。
【0060】
この感光液1を2枚の3×3cmの1mm厚ガラス基板で100μm厚のスペーサーフィルム(PET)とともに挟み込み、周囲を封止した後、90℃のオーブンにて1時間加熱することでホログラム記録媒体1を得た。このホログラム記録媒体1に対して、半導体レーザーを用いて透過型ホログラムを記録した結果、最大回折効率は52%、硬化収縮率は0.29%であった。(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2)。
【0061】
<比較例1>
ラジカル重合性化合物として4官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールテトラアクリレートを50重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物(3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル)を25重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチルを25重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物50重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物25重量部に対して1重量部、増感色素としてシアニン色素1を0.1重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液C1とした。
この感光液C1を用いて実施例1と同様にし透過型ホログラムを記録すると最大回折効率60%、硬化収縮率1.01%であった(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2)。
【0062】
<比較例6>
ラジカル重合性化合物としてOH基を持つ単官能のアクレート化合物である1,2−プロパンジオール−1−アクリレートを50重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物(3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル)を25重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチルを25重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物50重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物25重量部に対して1重量部、増感色素としてシアニン色素1を0.1重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液C6とした。
この感光液C6を用いて実施例1と同様にして透過型ホログラムを記録すると最大回折効率20%、硬化収縮率1.59%であった(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2
【0063】
<実施例22>
ラジカル重合性化合物としてOH基を持つ単官能のアクレート化合物である1,2−プロパンジオール−1−アクリレートを40重量部、4官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールテトラアクリレートを10重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物(3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル)を25重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチルを25重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物50重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物25重量部に対して1重量部、増感色素としてシアニン色素1を0.1重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液22とした。
この感光液22を用いて実施例1と同様にして透過型ホログラムを記録すると最大回折効率29%、硬化収縮率1.32%であった(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2
【0064】
<実施例2〜21,23、比較例2〜5,7〜17>
表1〜4に示す配合で種々のラジカル重合性モノマー、およびカチオン重合性化合物を用い、実施例1と同様にして感光液2〜21,23、C2〜C5,C7〜C17を調製した。なお、表において、各化合物の配合量は重量部で示した。
【0065】
実施例1〜23、比較例1〜17で得られた感光液1〜23、C1〜C17について、ホログラム特性の評価を実施した。(OH基又はCOOH基)/エチレン性不飽和結合の比率と加熱条件および回折効率、硬化収縮率等のホログラム特性評価結果を表1〜4に示した。また、実施例1〜21において、対応する比較例に対する硬化収縮の低減割合を下記式から求めた。これらの値を表1,3に示した。
【数1】

【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
以下に、表1〜4中の化合物を示す。
A1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
A2:o−フェニルフェノールアクリレート
A3:9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン
A4:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
A5:スチレン

B1:1,2−プロパンジオール−1−アクリレート
B2:ペンタエリスリトールトリアクリレート
B3:ビスフェノールAエポキシアクリレート
B4:2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルコハク酸

C1:3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル
C2:2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン
C3:2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン
C4:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン
C5:1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン
C6:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)
C7:シクロヘキセンオキサイド(和光純薬社製)
C8:オキサノルボルネンジビニルエーテル
C9:ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(商品名「DOX」、東亞合成社製)

D1:セバシン酸ジエチル(和光純薬社製)
E1:3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン
(商品名「BTTB」、日本油脂社製)
F1:サンエイドSI−60L(三新化学社製)
G1:シアニン色素1[上記式(1)の化合物]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物(C)と熱酸発生剤(F)とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)と、2種以上のラジカル重合性化合物(X)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、増感色素(G)とを含有することを特徴とする体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項2】
前記三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料(I)が、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物(Ia)と、前記脂環エポキシ化合物(Ia)以外のエポキシ化合物(Ib−1)、オキセタン化合物(Ib−2)、ビニルエーテル化合物(Ib−3)からなる群から選択されたいずれか1種または2種以上のカチオン重合性化合物を含有する、請求項1記載の体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物(X)が、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基またはカルボシキシル基を1つ以上有するラジカル重合性化合物(B)と、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、且つヒドロキシル基及びカルボキシル基を有していないラジカル重合性化合物(A)とを含有する、請求項1又は2記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物(X)が、前記不飽和結合の総量に対するヒドロキシル基及びカルボキシル基の総量のモル比率(OH基及びCOOH基/不飽和結合)が0.01〜0.5の範囲内になるようにラジカル重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)とを組み合わせる、請求項3記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理することにより得られるラジカル重合性化合物、三次元架橋ポリマーマトリックス、光ラジカル重合開始剤、および増感色素を含有する体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることによって得られる体積ホログラム記録媒体。
【請求項7】
基板と、該基板間に挟持された請求項5記載の体積ホログラム記録用感光性組成物からなる体積ホログラム記録層とを有する体積ホログラム記録媒体。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び/又は一定時間熟成させることを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7記載の体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射させて前記ラジカル重合性化合物を重合させることを特徴とするホログラム記録方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法でホログラムを記録した後の透過率が80%以上であることを特徴とする体積ホログラム記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−47787(P2012−47787A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186965(P2010−186965)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】