説明

体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の製造方法

【課題】体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物及その製造方法を開示し、該紅麹生成成分の組成物の製造は米とヤマイモを原料として使用し、製造方法が更に水及びアンコール類を溶液とすることを通じて紅麹を製造、生成でき、且つ、インビトロ方式、及び、動物実験を経た後、この紅麹生成成分の組成物が確かに体脂肪形成の阻害効果を持っていると証明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の製造方法に関し、特に、該紅麹生成成分の組成物の製造について紅麹米及び紅麹ヤマイモを原料とすることができ、製造方法には更に水の製造方法とアルコール類の製造方法を含むことに関する。
【背景技術】
【0002】
経済的な隆盛、繁栄と食習慣の変化に伴い、肥満がすでに健康の一番の敵になってきた。肥満から派生する疾患は枚挙にいとまがない。いかにして肥満の発生を緩めるかは、現在注目されている課題となっている。
【0003】
紅麹は我が国における従来の発酵菌種で、古い書物にすでにその特殊な効能が記載されている。近年、健康至上主義の勢いが増し、邦人も徐々に予防医学の重要性を重視してきたため、天然の食材を合成医薬品に代替するようになってきた。健康食品のブームは紅麹の研究を更に活性化させ、現在すでに報道されているような生理的効果には血中脂質低下、血圧低下、血糖降下、癌予防などを含み、近年紅麹米の製造物が脂肪細胞の分化を抑制し、脂肪の蓄積を減らすことができることが発見されたため、肥満症状の改善に応用できる潜在力がある。
【0004】
モナコリンK(ロバスタチン)は紅麹から生成される血中脂質低下物質である。研究報道によると、この種のスタチン類化合物は、脂肪細胞の分化を調節できる。近年、更に文献においてモナコリンKのほかに、紅麹米の水層抽出物も3T3−L1前駆脂肪細胞の分化を抑制できると指摘している。これら紅麹の発酵生成物も体脂肪生成を減らす効果を持つ可能性があり、肥満症状の改善に応用できる潜在力がある。
【0005】
これに鑑み、体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物及その製造方法を開発できれば、必ず高い応用潜在力がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、上記の問題点に鑑み、本発明者は、長年に渡る累積してきた経験により、想像力と創造力を発揮させ、絶え間ない試験と鋭意検討した結果、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物及その製造方法を完成させるに至った。
【0007】
本発明の第1の目的は、先行文献において、紅麹の発酵生成物は脂肪細胞の分化を抑制する効果があると指摘していることで、本発明では紅麹米及び紅麹ヤマイモから紅麹生成成分の組成物抽出をそれぞれ行い、且つ体外細胞実験及び動物実験で該紅麹生成成分の組成物の効果を分析する体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、紅麹の発酵生成物が異なる抽出方法と抽出条件のもとで、紅麹生成成分の組成物の成分及び効果が非常に大きく異なるため、本発明では好適な抽出方法と条件を提供して、好適な紅麹生成成分の組成物を得る体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これにより、本発明が提供する体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法には、紅麹原料に乾燥ステップを施すステップ1と、乾燥後の該紅麹原料を粉末状にするステップ2と、水で粉末状の紅麹原料を特定の温度において特定時間の抽出動作を行うステップ3と、抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ4と、ろ過後の濾液を冷凍乾燥させるステップ5、及び乾燥後の生成物を特定の溶剤で特定濃度となるよう再溶解し、また特定の温度において保存するステップ6とを含む。
【0010】
本発明が更に提供する別の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法には、紅麹原料に乾燥ステップを施すステップ1と、乾燥後の該紅麹原料を粉末状にするステップ2と、水で粉末状の紅麹原料を特定の温度において特定時間抽出動作を行うステップ3と、抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ4と、ろ過後の非濾液部分を特定濃度のエタノールで再溶解し、且つ特定の温度において特定時間の抽出動作を行うステップ5と、抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ6と、ろ過後の濾液を排気できる空間に置き、エタノールを自然揮発させるステップ7、及びエタノールの揮発を終えてからエタノールで特定の濃度となるよう再溶解し、また特定の温度において保存するステップ8とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第1の好ましい製造方法である。
【図2】本発明の本発明体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第2の好ましい製造方法である。
【図3】本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第3の好ましい製造方法である
【図4】本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第4の好ましい製造方法である。
【図5A】紅麹米水製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である。
【図5B】紅麹米エタノール製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である。
【図5C】紅麹ヤマイモのエタノール製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である
【図5D】モナコリンKの3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である。
【図5E】モナスシンの3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である。
【図5F】アンカフラビンの3T3−L1前駆脂肪細胞増殖に対する影響である。
【図6A】紅麹米の水製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図6B】紅麹ヤマイモの水製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図6C】紅麹米のエタノール製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図6D】紅麹ヤマイモのエタノール製造物の3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図6E】アンカフラビンの3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図6F】モナスシンの3T3−L1前駆脂肪細胞分化に対する影響である。
【図7A】紅麹の発酵生成物を与えて飼育し、高脂肪食Wistar雄ラットの腎臓周囲脂肪組織の脂肪分解作用に対する影響である。
【図7B】紅麹の発酵生成物を与えて飼育し、高脂肪食Wistar雄ラットの副睾丸周囲脂肪組織の脂肪分解作用に対する影響である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の目的と効果を達成するため、本発明者は、それぞれ紅麹米及び紅麹ヤマイモを原料とし、各種製造方法を試し、且つ絶え間ない製造条件の改良と修正を行ったことで、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の製造方法を見出すことに至った。
【0013】
まず、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第1好ましい製造方法で、その製造方法には次のステップが含まれる。即ち、紅麹米に乾燥ステップ(ステップ101)を施す。乾燥後の該紅麹米を粉末状(ステップ102)にする。粉末状の紅麹米を逆浸透水で特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ103)を行い、逆浸透水のほかに、普通の水でも代替でき、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ104)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の濾液を冷凍乾燥(ステップ105)する。及び乾燥後の生成物を特定の溶剤で特定の濃度になるよう再溶解し、また特定の温度において保存(ステップ106)し、該特定の溶剤がリン酸緩衝液(PBS)で、該特定の濃度が50μg/mL〜200μg/mLで、該特定の温度を−20℃〜7℃とし、これで製造ステップの終了となる。
【0014】
上記該紅麹米の有効成分には、少なくとも1つの紅麹菌の色素(モナスシン)と1つの紅麹色素(アンカフラビン)を含有する。該モナスシンの重量比は1g当たりの紅麹米の中に1〜30mgのモナスシンを含有し、該アンカフラビンの重量比は1g当たりの紅麹米の中に0.5〜25mgのアンカフラビンを含有する。
【0015】
次に、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第2の好ましい製造方法で、その製造方法には次のステップが含まれる。即ち、紅麹米に乾燥ステップ(ステップ201)を施す。乾燥後の該紅麹米を粉末状(ステップ202)にする。粉末状の紅麹米を逆浸透水で特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ203)を行い、逆浸透水のほかに、普通の水でも代替でき、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ204)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の非濾液部分を特定濃度のエタノールで再溶解し、且つ特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ205)を行い、該特定の濃度が50%〜95%で、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ206)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の濾液をドラフトチャンバーに置き、エタノールを自然揮発(ステップ207)させ、排気可能な空間にも置くことができ、エタノールの揮発を終えてからエタノールで特定の濃度となるよう再溶解し、また特定の温度において保存(ステップ208)し、該特定の濃度が50μg/mL〜200μg/mLで、該特定の温度を−20℃〜7℃とし、これで製造ステップの終了となる。
【0016】
上記該紅麹米の有効成分には、少なくとも1つの紅麹菌の色素(モナスシン)と1つの紅麹色素(アンカフラビン)を含有する。該モナスシンの重量比は1g当たりの紅麹米の中に1〜30mgのモナスシンを含有し、該アンカフラビンの重量比は1g当たりの紅麹米の中に0.5〜25mgのアンカフラビンを含有する。
【0017】
次に、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第3の好ましい製造方法で、その製造方法には次のステップが含まれる。即ち、新鮮なヤマイモをきれいに洗い、また一定の大きさに角切り(ステップ301)、該角切りの一定の大きさとは2mm〜20mmである。該新鮮なヤマイモの角切りを乾燥化させ、乾燥後のヤマイモを特定の水分含有量(ステップ302)にさせ、該特定の水分含有量を15%以下とする。特定水量を乾燥ヤマイモ内に加え、乾燥ヤマイモと該水量を特定比率にさせ、また特定時間(ステップ303)浸け置き、乾燥ヤマイモと水の該特定比率とは1:0.5%〜1:1.5%とし、該浸け置く特定時間を0〜60分間とする。浸け込んだヤマイモに滅菌ステップを施し、また特定の温度(ステップ304)まで冷やし、該滅菌方法には高温滅菌法を用いることができ、該滅菌法の滅菌温度が121℃で、滅菌時間を10〜60分間とする。紅麹種菌をヤマイモ内(ステップ305)に接種する。また種菌接種済みヤマイモを特定の培養温度及び特定の培養湿度で特定の培養時間(ステップ306)培養し、該特定の培養温度を25〜37℃とし、該特定の培養湿度を50%〜80%とし、該特定の培養時間を8〜20日間とする。前ステップの生成物に特定処理時間の嫌気性処理ステップ(ステップ307)を施し、該特定処理時間を0〜3日以内とする。前ステップの生成物に乾燥ステップ(ステップ308)を施す。前ステップの生成物を粉末状(ステップ309)にする。粉末を逆浸透水で特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ310)を行い、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ311)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の濾液を冷凍乾燥(ステップ312)する。及び乾燥後の生成物を特定の溶剤で特定の濃度になるよう再溶解し、また特定の温度において保存(ステップ313)し、該特定の溶剤がリン酸緩衝液(PBS)で、該特定の濃度が50μg/mL〜200μg/mLで、該特定の温度を−18℃〜7℃とし、これで製造ステップの終了となる。
【0018】
次に、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第4の好ましい製造方法で、その製造方法には次のステップが含まれる。即ち、新鮮なヤマイモをきれいに洗い、また一定の大きさに角切り(ステップ401)、該角切りの一定の大きさとは2mm〜20mmである。該新鮮なヤマイモの角切りを乾燥化させ、乾燥後のヤマイモを特定の水分含有量(ステップ402)にさせ、該特定の水分含有量を15%以下とする。特定水量を乾燥ヤマイモ内に加え、乾燥ヤマイモと該水量を特定比率にさせ、また特定時間(ステップ403)浸け置き、乾燥ヤマイモと水の該特定比率とは1:0.5%〜1:1.5%とし、該浸け置く特定時間を0〜60分間とする。浸け込んだヤマイモに滅菌ステップを施し、また特定の温度(ステップ404)まで冷やし、該滅菌方法には高温滅菌法を用いることができ、該滅菌法の滅菌温度が121℃で、滅菌時間を10〜60分間とする。紅麹種菌をヤマイモ内(ステップ405)に接種する。また種菌接種済みヤマイモを特定の培養温度及び特定の培養湿度で特定の培養時間(ステップ406)培養し、該特定の培養温度を25〜37℃とし、該特定の培養湿度を50%〜80%とし、該特定の培養時間を8〜20日間とする。前ステップの生成物に特定処理時間の嫌気性処理ステップ(ステップ407)を施し、該特定処理時間を0〜3日以内とし、このステップを経由して紅麹ヤマイモの製造を完成する。前ステップの生成物に乾燥ステップ(ステップ408)を施す。前ステップの生成物を粉末状(ステップ409)にする。粉末を逆浸透水で特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ410)を行い、若しくは普通の水を使用でき、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ411)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の非濾液部分を特定濃度のエタノールで再溶解し、且つ特定の温度において特定時間の抽出動作(ステップ412)を行い、該特定の濃度が50%〜95%で、該特定の温度が25℃〜65℃で、該特定時間を24時間以内とする。抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過(ステップ413)し、該特定の孔径が0.22μm〜0.45μmである。ろ過後の濾液をドラフトチャンバーに置き、エタノールを自然揮発(ステップ414)させ、或いは排気可能な空間にも置くことができ、エタノールの揮発を終えてからエタノールで特定の濃度となるよう再溶解し、また特定の温度において保存(ステップ415)し、該特定の濃度が50μg/mL〜200μg/mLで、該特定の温度を−18℃〜7℃とし、これで製造ステップの終了となる。
【0019】
紅麹生成成分組成物の体脂肪生成減少と体重降下に対する効果を評価するため、以下にそれぞれインビトロ試験とインビボの評価実験により分析を行った。インビトロ試験は3T3−L1前駆脂肪細胞を試験材料とし、紅麹生成成分組成物の前駆脂肪細胞の増殖、分化に対する影響を探究した。インビボの評価実験は、Wistar雄ラットを試験動物とし、研究中、同時に高脂肪飼料と紅麹発酵生成物の組成物を8週間飼育した後、各種評価指標でその体脂肪生成を緩める効果を判定した。
【0020】
[インビトロ試験]
1.前駆脂肪細胞の増殖率の測定
図5Aを参照しながら説明すると、図5Aに示すように3T3−L1前駆脂肪細胞が高用量(200μg/mL)の紅麹米水製造物で24時間処理した後、コントロール群と比較したところ、その増殖率が明らかに約23.5%降下した。各処理用量(50、100、200μg/mL)で48時間作用させた後、いずれも明らかに増殖抑制効果があり、抑制率がそれぞれ14.2%、17.8%及び22.2%であった。図5Bを参照しながら説明すると、図5Bに示すように紅麹米のエタノール製造物の処理用量が100、200μg/mLになった時、3T3−L1前駆脂肪細胞の増殖を効果的に抑制した。24時間作用させた時、抑制率がそれぞれ10.4%及び38.4%となり、48時間作用させた時、抑制率がそれぞれ12.2%及び31.8%となった。図5Cを参照しながら説明すると、図5Cに示すように100、200μg/mLの紅麹ヤマイモのエタノール製造物で24時間処理させた時、細胞の増殖率がそれぞれ15.7%及び45.1%降下した。各処理用量(50、100、200μg/mL)で48時間作用させた後、いずれも明らかに細胞の増殖を抑制でき、抑制率がそれぞれ13.8%、25.4%及び69.1%となった。図5Dを参照しながら説明すると、図5Dに示すように1.25、2.5、5、10μmモナコリンK(ロバスタチン)で細胞を24時間処理した結果、各用量でいずれも明らかに細胞の増殖を効果的に抑制したことを示し、抑制率がそれぞれ13.0%、18.2%、23.9%及び28.6%となった。本実験において、紅麹米の水製造物、紅麹米のエタノール製造物、紅麹ヤマイモのエタノール製造物及びモナコリンKは、いずれも3T3−L1前駆脂肪細胞の増殖を抑制できた。
【0021】
本発明は、更に紅麹の二次代謝産物であるモナスシンとアンカフラビンの脂肪細胞の増殖に対する影響を探究した。図5Eを参照しながら説明すると、図5Eに示すように各種濃度のモナスシンで24、48時間処理した後、顕著な差異がなかった。濃度1mg/mLの場合、72時間処理した後、顕著な影響があり、抑制率が8.0%となった。図5Fの結果から濃度が1mg/mLのアンカフラビンで24〜72時間処理した後、前駆脂肪細胞の増殖を抑制する顕著な効果を示した。この部分はアンカフラビンとモナスシンが紅麹の体脂肪を減らす効能においてその有効成分の1つであることを実証した。
【0022】
2.前駆脂肪細胞の分化率の測定(中性脂肪含量の測定)
分化を誘導する過程中において50、100、200μg/mLの紅麹米及び紅麹ヤマイモの水製造物を添加し、分化後8日目に細胞を収集して中性脂肪(Triglyceride, TG)含量を分析した。合成TG油滴は、脂肪細胞分化の晩期指標となり、このため細胞中のTG含量が分化効率の判断によく用いられている。図6A及び図6Bを参照しながら説明すると、図6A及び図6Bに示すように研究の結果で各用量群はいずれも明らかに3T3−L1前駆脂肪細胞の分化を抑制でき、TG含量が約50%降下したことを示した。
【0023】
図6C及び図6Dを参照しながら説明すると、図6C及び図6Dに示すように50、75、100μg/mLの紅麹米のエタノール製造物は、明らかに3T3−L1前駆脂肪細胞の分化を抑制する効果があり、抑制率がそれぞれ26%、49.3%及び53%となった。50μg/mLの紅麹ヤマイモのエタノール製造物が明らかに細胞分化を抑制でき、抑制率が約54.9%であった。
【0024】
次に、図6Eを参照しながら説明すると、図6Eに示すように紅麹の二次代謝産物であるアンカフラビンが濃度0.125mg/mL、0.25mg/mLの場合、明らかに3T3−L1前駆脂肪細胞の分化を抑制でき、抑制率がそれぞれ41.2%、29.9%であった。図6Fを参照しながら説明すると、図6Fに示すように紅麹の二次代謝産物であるモナスシンが濃度0.125mg/mLの場合、前駆脂肪細胞についての抑制率が31.2%であった。
【0025】
[動物実験]
1.体重及び体脂肪
開始した際の平均体重に顕著な差異がないことを原則とし、ラットをランダムに9群に分け、1群を8匹とした。実験中、同時に高脂肪食及び紅麹生成成分の組成物を投与し、6週間飼育した後、犠牲及び各種分析を行った。この試験において、次の試験群があり、即ち、Cが正常飲食群、HFが高脂肪食群、LがモナコリンK(ロバスタチン)を与えて飼育した群、Rが未発酵の米を与えて飼育した群、Dが未発酵のヤマイモを与えて飼育した群、RLが低用量紅麹米を与えて飼育した群、RHが高用量紅麹米を与えて飼育した群、DLが低用量紅麹ヤマイモを与えて飼育した群、DHが高用量紅麹ヤマイモを与えて飼育した群とした。
【0026】
結果は、下記の表1に示すように、高脂肪食群(HF)の体重が明らかに正常飲食群(C)より高く、紅麹発酵生成物を与えて飼育した群別(RL、RH、DL、DH)の体重がいずれも顕著な減少を示した。体重の変化量において低用量(RL)、高用量紅麹米群(RH)及び高用量紅麹ヤマイモ群(DH)はそれぞれ21.5%、30.5%及び20.0%と明らかに減少し、紅麹米及び高用量紅麹ヤマイモがいずれも体重上昇を緩める効果があることを示した。
【0027】
【表1】

【0028】
2.脂肪組織のリポリーシス作用の分析
図7A及び図7Bを参照しながら説明すると、図7A及び図7Bは、それぞれ紅麹の発酵生成物を与えて飼育し、高脂肪食のWistar雄ラットの腎臓及び副睾丸周囲脂肪組織の脂肪分解作用に対する影響である。紅麹米(RL及びRH)を与えて飼育すると、腎臓及び副睾丸周囲脂肪組織のリポリーシス効率を明らかに向上した。腎臓周圍脂肪組織の部分において、低用量(RL)と高用量(RH)群のリポリーシス効率がそれぞれ約12.3%及び17.3%向上した。副睾丸周囲脂肪組織の部分において、それぞれ約29.0%及び30.0%向上した。高用量紅麹ヤマイモ(DH)を与えて飼育すると、副睾丸周囲脂肪組織のリポリーシス効率が約29.0%向上できた。その他、正常飲食群(C)の腎臓周圍脂肪組織のリポリーシス効率が高脂肪食群(HF)より低く、これは一般的な正常状態においてリポリーシス作用が体脂肪量と正比例しているからであり、体脂肪が多ければ多いほど、組織代謝の活性化が益々活発化して代謝バランスのメカニズムを満足することにある。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上記の細胞試験及び動物実験を取りまとめ、本発明では紅麹の発酵生成物が高脂肪食によって起きていた体脂肪の蓄積を改善でき、且つリポリーシスの刺激効果を持ち、体脂肪を形成しにくい健康食品として発展できる。
【0030】
上記実施例は、本発明の技術思想と特徴のみを説明し、その目的は当該技術分野における熟練者が本発明の内容を理解させると共にこれをもって実施することであり、本発明の特許範囲を限定するものができない。本発明で開示した精神を逸脱しない範囲内において種々の改良変更をなし得ることは、本発明の特許範囲に含むものであるのが勿論である。
【符号の説明】
【0031】
101〜106 本発明の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物の第1の好ましい製造方法のステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法であって、
紅麹原料に乾燥ステップを施すステップ1と、
乾燥後の前記紅麹原料を粉末状にするステップ2と、
水で粉末状の紅麹原料を特定の温度において特定時間の抽出動作を行うステップ3と、
抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ4と、
ろ過後の濾液を冷凍乾燥させるステップ5、及び、
乾燥後の生成物を特定の溶剤で特定濃度となるよう再溶解し、また、特定の温度において保存するステップ6と、を含むことを特徴とする、
体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項2】
ステップ1、ステップ2、及び、ステップ3で記載する前記紅麹原料は、紅麹米、及び、紅麹ヤマイモから選んで使用することを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項3】
前記紅麹原料の有効成分には、少なくとも1つの紅麹菌の色素(モナスシン)と1つの紅麹色素(アンカフラビン)を含有することを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項4】
前記紅麹菌の色素(モナスシン)の重量比は、1g当たり紅麹原料の中に1〜30mgの紅麹菌の色素(モナスシン)を含有することを特徴とする請求項3に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項5】
前記アンカフラビンの重量比は、1g当たり紅麹原料の中に0.5〜25mgの紅麹色素(アンカフラビン)を含有することを特徴とする請求項3に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項6】
前記紅麹原料の有効成分には、少なくとも1つのモナコリンKを含有し、重量比が1g当たり紅麹原料の中に2mg〜15mgのモナコリンKを含有することを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項7】
ステップ3で記載する前記特定の温度を25〜65℃とし、前記特定時間を24時間以内とすることを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項8】
ステップ4で記載する前記特定の孔径を0.22μm〜0.45μmとすることを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項9】
ステップ6で記載する前記特定の溶剤をリン酸緩衝液(PBS)とし、前記特定の濃度を50μg/mL〜200μg/mLとし、前記特定の温度を−20℃〜7℃とすることを特徴とする請求項1に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項10】
体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法であって、
紅麹米に乾燥ステップを施すステップ1と、
乾燥後の前記紅麹米を粉末状にするステップ2と、
粉末状の紅麹米を逆浸透水で特定の温度において特定時間の抽出動作を行うステップ3と、
抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ4と、
ろ過後の非濾液部分を特定濃度のエタノールで再溶解し、且つ、特定の温度において特定時間の抽出動作を行うステップ5と、
抽出した生成物を特定の孔径のある濾過膜でろ過するステップ6と、
ろ過後の濾液を排気可能な空間に置き、エタノールを自然揮発させるステップ7、及び、
エタノールの揮発を終えてからエタノールで特定の濃度となるよう再溶解し、また、特定の温度において保存するステップ8と、を含むことを特徴とする、
体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項11】
ステップ1、ステップ2、及びステップ3で記載する前記紅麹原料は、紅麹米、及び、紅麹ヤマイモから選んで使用することを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項12】
前記紅麹原料の有効成分には、少なくとも1つの紅麹菌の色素(モナスシン)と1つの紅麹色素(アンカフラビン)を含有することを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項13】
前記紅麹菌の色素(モナスシン)の重量比は、1g当たり紅麹原料の中に1〜30mgの紅麹菌の色素(モナスシン)を含有することを特徴とする請求項12に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項14】
前記アンカフラビンの重量比は、1g当たり紅麹原料の中に0.5〜25mgの紅麹色素(アンカフラビン)を含有することを特徴とする請求項12に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項15】
前記紅麹原料の有効成分には、少なくとも1つのモナコリンKを含有し、重量比が1g当たり紅麹原料の中に2mg〜15mgのモナコリンKを含有することを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項16】
ステップ3で記載する前記特定の温度を25〜65℃とし、前記特定時間を24時間以内とすることを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項17】
ステップ4で記載する前記特定の孔径を0.22μm〜0.45μmとすることを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項18】
ステップ5で記載する前記特定の濃度を50%〜95%とし、前記特定の温度を25〜65℃とし、前記特定時間を24時間とすることを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項19】
ステップ6で記載する前記特定の孔径を0.22μm〜0.45μmとすることを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。
【請求項20】
ステップ8で記載する前記特定の濃度を50μg/mL〜200μg/mLとし、前記特定の温度を−20℃〜7℃とすることを特徴とする請求項10に記載の体脂肪形成を阻害できる紅麹生成成分の組成物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−260844(P2010−260844A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6017(P2010−6017)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(507422828)サンウェイ バイオテック シーオー エルティディ (3)
【氏名又は名称原語表記】SUNWAY BIOTECH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】2F.,No.1,Alley 30,Lane 358,Rueiguang Rd.,Neihu District,Taipei City 114,Taiwan,R.O.C.
【Fターム(参考)】