説明

作動油タンク装置

【課題】 タンク本体からフィルタを分離して設けることにより、全体の構造を簡素化することができ、メンテナンス時の作業性を向上できるようにする。
【解決手段】 タンク本体11と別体のフィルタケース18を、タンク本体11の外部で着脱可能に接続して設ける。フィルタケース18の内部には、リターンフィルタ室19とサクションフィルタ室20とを画成して設ける。フィルタケース18のリターンフィルタ室19内にはリターンフィルタ21を収納して設け、サクションフィルタ室20内にはサクションフィルタ22を収納して設ける。タンク本体11とフィルタケース18とを別体に形成することにより、従来技術に比較してタンク本体11の構造を大幅に簡素化できる。しかも、タンク本体11を樹脂タンクとして単純なボックス形状(箱形状)に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械を含めた種々の産業機械に油圧機器の一部として好適に用いられる作動油タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。また、上部旋回体は、旋回フレームの後部に油圧ポンプを駆動するためのエンジンを搭載し、前記旋回フレームの前側にキャブ、燃料タンク、作動油タンク等を搭載している。
【0003】
そして、この種の従来技術で採用している作動油タンクは、作動油を収容するタンク本体と、該タンク本体内に戻される作動油中から異物を除去するリターンフィルタと、前記タンク本体内から油圧ポンプにより吸出される作動油中の異物を除去するためのサクションフィルタとを含んで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−73402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術では、タンク本体内にリターンフィルタおよびサクションフィルタを配置する構成としている。このため、作動油タンクの構造が複雑化し、保守・点検時の作業性が悪いという問題がある。特に、タンク本体内でリターンフィルタ、サクションフィルタを保守・点検しようとすると、フィルタ内に付着した異物の一部が脱落し、タンク本体内の作動油中に混入する虞れがあり、作業者の負担が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、タンク本体からフィルタを分離して設けることにより、全体の構造を簡素化することができ、メンテナンス時の作業性を向上することができるようにした作動油タンク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、作動油を収容するタンク本体と、該タンク本体とは別体に形成され該タンク本体に着脱可能に接続されるフィルタケースを備え、該フィルタケース内には、前記タンク本体内に戻される作動油中から異物を除去するリターンフィルタを収納するリターンフィルタ室と、前記タンク本体内から油圧ポンプにより吸出される作動油中の異物を除去するためのサクションフィルタを収納するサクションフィルタ室とを形成する構成としている。
【0008】
また、請求項2の発明によると、前記フィルタケースは、内部が中空な筒状体として形成され前記タンク本体の外部に配置されるケース体と、該ケース体内を上,下の2室に画成する仕切り部とを有し、前記上室を前記リターンフィルタ室とし、前記下室を前記サクションフィルタ室とする構成としている。
【0009】
また、請求項3の発明によると、前記フィルタケースには、外部の油圧機器から戻される作動油を前記リターンフィルタ室に流入するための外部流入口と、前記リターンフィルタで異物を除去した後の作動油を前記タンク本体に戻すケース流出口と、前記タンク本体内の作動油を前記サクションフィルタ室に流入するためのケース流入口と、前記サクションフィルタで異物を除去した前記作動油を前記油圧ポンプの吸込み側に導く外部流出口とを設ける構成としている。
【0010】
また、請求項4の発明によると、前記タンク本体には、前記フィルタケース内のリターンフィルタを介して作動油を導入する本体流入口と、前記タンク本体内の作動油を前記サクションフィルタ室に導出する本体流出口とを設ける構成としている。
【0011】
また、請求項5の発明によると、前記本体流入口は、前記フィルタケース側から流入してくる作動油を前記タンク本体の内壁面に沿って流入させるため前記内壁面の近傍に開口する構成としている。
【0012】
さらに、請求項6の発明によると、前記タンク本体は樹脂材料を用いて形成し、該タンク本体の壁面には、内部に収容した作動油の油量を確認するためのゲージ線を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0013】
上述の如く、請求項1の発明によれば、内部にリターンフィルタとサクションフィルタとを収納するフィルタケースを、タンク本体に対して別体に形成し、両者の間を着脱可能に接続する構成としているので、従来技術のように複数のフィルタをタンク本体に設ける必要がなくなり、タンク本体の構造を簡素化することができる。また、フィルタケースのリターンフィルタ室内にはリターンフィルタを収納することができ、サクションフィルタ室内にはサクションフィルタを収納することができる。そして、前記フィルタを保守・点検するメンテナンス時には、タンク本体内からフィルタを取外す必要がなくなるので、メンテナンス時の作業性を向上することができる。しかも、フィルタに付着した異物が仮に脱落しても、この異物がタンク本体内の作動油に混入するのを防ぐことができ、タンク本体内の作動油を清浄な状態に保つことができる。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、フィルタケースはケース体と仕切り部とを有する構成とし、該仕切り部によりケース体内をリターンフィルタ室とサクションフィルタ室とに画成することができる。そして、ケース体のリターンフィルタ室内にはリターンフィルタを収納することができ、サクションフィルタ室内にはサクションフィルタを収納することができる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、フィルタケースの外部流入口をホース等の配管を介して外部の油圧機器に接続することにより、該油圧機器から戻される作動油をフィルタケースのリターンフィルタ室内に導くことができる。そして、フィルタケース内ではリターンフィルタで異物を除去し清浄化した作動油をケース流出口からタンク本体に向けて戻すことができる。一方、前記タンク本体内の作動油を外部の油圧ポンプにより吸引すると、フィルタケースのケース流入口からサクションフィルタ室に作動油を導くことができ、このサクションフィルタで異物を除去し清浄化した作動油を外部流出口から前記油圧ポンプの吸込み側に導出することができる。
【0016】
また、請求項4の発明によれば、フィルタケース内でリターンフィルタにより異物が除去された作動油を本体流入口からタンク本体内に導入することができる。そして、タンク本体内の作動油を本体流出口からフィルタケースのサクションフィルタ室側へと導出することができる。
【0017】
また、請求項5の発明によれば、本体流入口はタンク本体の内壁面の近傍に開口する構成としているので、これによりフィルタケースからの作動油をタンク本体の内壁面(側面)に沿って流入させ、タンク本体内での作動油の流れを滑らかにすることができ、作動油中に泡が発生するのを抑える消泡効果を発揮することができる。
【0018】
さらに、請求項6の発明によると、タンク本体は樹脂材料を用いた樹脂タンクとして形成することができ、該タンク本体の壁面にはゲージ線を設けることにより、内部に収容した作動油の油量、または残量をゲージ線と比較して目視により確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による作動油タンク装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】作動油タンク装置を拡大して示す正面図である。
【図3】作動油タンク装置を図2中の矢示 III−III 方向からみた断面図である。
【図4】作動油タンク装置を図3中の矢示IV−IV方向からみた断面図である。
【図5】作動油タンク装置のタンク本体とフィルタケースとを接続する前の状態でそれぞれ示す斜視図である。
【図6】第2の実施の形態による作動油タンク装置を示す図3と同様位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による作動油タンク装置を、小型の油圧ショベルに搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は土砂の掘削作業等に用いられる小型の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0022】
そして、上部旋回体3は下部走行体2と共に車体を構成している。また、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト6、外装カバー7およびキャブ8等により構成されている。
【0023】
5は上部旋回体3の旋回フレームで、該旋回フレーム5は、旋回装置(図示せず)を介して下部走行体2上に取付けられている。そして、旋回フレーム5の後部側には、カウンタウエイト6が設けられ、左前側には後述のキャブ8が設けられている。また、旋回フレーム5には、カウンタウエイト6とキャブ8との間に位置して外装カバー7が設けられている。そして、この外装カバー7は、旋回フレーム5、カウンタウエイト6およびキャブ8と共に、後述のエンジン9、作動油タンク装置10等を内部に収容する空間を画成するものである。
【0024】
8は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブを示し、該キャブ8は、オペレータが搭乗するものである。また、キャブ8の内部には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー(いずれも図示せず)が配設されている。
【0025】
9は旋回フレーム5の後側に横置き状態で配置された原動機としてのエンジンで、該エンジン9は、例えばディーゼルエンジン等を用いて構成され、油圧ポンプ(図示せず)等を回転駆動するものである。そして、油圧ポンプは、後述の作動油タンク装置10から作動油を吸込んで、高圧の圧油を油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給する。
【0026】
10は本実施の形態で採用した作動油タンク装置で、該作動油タンク装置10は、図2〜図5に示すように、後述のタンク本体11と、フィルタケース18とを含んで構成されている。そして、作動油タンク装置10は、図1に示す如く上部旋回体3の旋回フレーム5上に位置して外装カバー7内に配置されるものである。
【0027】
11は内部に作動油を収容するタンク本体で、該タンク本体11は、図2〜図4に示すように、例えばポリプロピレン、アクリル樹脂等の合成樹脂材料を用いて四角形のボックス形状(箱形状)をなす樹脂タンクとして形成されている。そして、タンク本体11は、底面11A、上面11B、前,後の側面11C,11Dおよび左,右の側面11E,11Fを有している。このうち、前,後の側面11C,11Dおよび左,右の側面11E,11Fは、タンク本体11の内壁面を構成するものである。
【0028】
また、タンク本体11の上面11Bには、作動油Lをタンク本体11内に注入するための注入口12が上向きに突出して設けられ、この注入口12にはキャップ13が着脱可能に螺着されている。そして、キャップ13は、エアブリーザ付のキャップとして構成され、タンク本体11内の空気を外部に排出して内部の圧力を大気圧状態に保つ機能を有している。
【0029】
また、タンク本体11の壁面(例えば、側面11F)には、図2に示す如く内部に収容した作動油Lの油量を確認するため覗き窓14が形成され、該覗き窓14の近傍には、例えば3本のゲージ線15A,15B,15Cが一定の間隔をあけて設けられている。
【0030】
この場合、タンク本体11内には、ゲージ線15A〜15Cのうち最も上側のゲージ線15Aのレベルまで作動油Lが充填されている。しかし、長期間にわたる使用(油圧ショベル1の稼動)で作動油の油量が徐々に減少し、最も下側のゲージ線15Cのレベルまで作動油Lの液面が下がると、タンク本体11内には、キャップ13を取外した状態で注入口12から作動油Lが補給される。
【0031】
16はタンク本体11内に作動油を導入する本体流入口で、該本体流入口16は、例えばタンク本体11の側面11Dから後方(後述のフィルタケース18側)に向けて直線状に突出し、その高さ位置は図2に示す如くゲージ線15Aと同等か、または僅かに低い位置となっている。そして、本体流入口16は、図3に示すようにタンク本体11の側面11Dと側面11Eとの角隅に近い位置に配置され、側面11Eの近傍位置で側面11D内に開口している。
【0032】
このため、本体流入口16からタンク本体11内に流入する作動油は、図3中に矢印Aで示すように、タンク本体11の内壁面としての側面11E,側面11Cに沿って流れることにより、後述の消泡効果を発揮するものである。また、本体流入口16の内側には、補強用の金属パイプ16Aがインサート成形等の手段により一体形成されている。
【0033】
17はタンク本体11内の作動油を導出する本体流出口で、該本体流出口17は、図2、図4に示すように本体流入口16よりも下方となる位置、即ちタンク本体11の底面11Aよりも僅かに上側となる位置に配置されている。そして、本体流出口17は、例えばタンク本体11の側面11Dから後方(後述のフィルタケース18側)に向けて直線状に突出し、後述のケース流入口26に連結ホース27を介して接続されている。また、本体流出口17の内側には、補強用の金属パイプ17Aがインサート成形等の手段により一体形成されている。
【0034】
18はタンク本体11とは別体で形成されたフィルタケースで、該フィルタケース18は、図4に示す如く内部が中空な筒状体として形成され、タンク本体11の外部に配置されるケース体18Aと、該ケース体18Aの高さ方向中間位置に設けられた隔壁からなる仕切り部18Bとを含んで構成されている。そして、仕切り部18Bは、ケース体18A内を上,下2つの室、即ち上室としてのリターンフィルタ室19と、下室としてのサクションフィルタ室20とに画成している。
【0035】
また、フィルタケース18は、ケース体18Aの上端側をボルト、ナット等を用いて着脱可能に閉塞した上蓋部18Cと、ケース体18Aの下端側を他のボルト、ナット等を用いて着脱可能に閉塞した底蓋部18Dとを有している。そして、ケース体18A内のリターンフィルタ室19は、仕切り部18Bと上蓋部18Cとの間に形成され、サクションフィルタ室20は、仕切り部18Bと底蓋部18Dとの間に形成されるものである。
【0036】
21はフィルタケース18のリターンフィルタ室19内に収納して設けられたリターンフィルタで、該リターンフィルタ21は、図4に示す如く筒状のフィルタエレメントを用いて構成され、その上面側が上蓋部18Cの下面に取付けられている。そして、リターンフィルタ21は、リターンフィルタ室19内で上蓋部18Cから下向きに垂下して配置され、その下面側は閉塞板21Aにより閉塞されている。
【0037】
ここで、後述の外部流入口23からリターンフィルタ室19内に導かれた作動油は、リターンフィルタ21の径方向内側から外側に向けて流通することにより、異物が除去(ろ過)されて清浄化される。そして、リターンフィルタ21を保守・点検するときには、フィルタケース18の上蓋部18Cをケース体18Aからボルト等を介して脱着することにより、リターンフィルタ21をケース体18A内から取出すものである。
【0038】
22はフィルタケース18のサクションフィルタ室20内に収納して設けられたサクションフィルタで、該サクションフィルタ22は、図4に示すように筒状のフィルタエレメントを用いて構成され、その下面側が底蓋部18Dの上面に取付けられている。そして、サクションフィルタ22は、底蓋部18Dから上向きに突出してサクションフィルタ室20内に配置され、その上面側は閉塞板22Aにより閉塞されている。
【0039】
ここで、後述のケース流入口26からサクションフィルタ室20内に導かれた作動油は、サクションフィルタ22の径方向外側から内側に向けて流通することにより、異物が除去(ろ過)されて清浄化される。そして、サクションフィルタ22を保守・点検するときには、フィルタケース18の底蓋部18Dをケース体18Aからボルト等を介して脱着することにより、サクションフィルタ22をケース体18A内から取出すものである。
【0040】
23はフィルタケース18の上端側に設けられた外部流入口で、該外部流入口23は、図4に示すように上蓋部18Cから上向きに突出して設けられている。そして、外部流入口23は、外部の油圧機器(例えば、油圧シリンダ、油圧モータ、方向制御弁等)から戻される作動油をフィルタケース18のリターンフィルタ室19内に導くものである。
【0041】
24はフィルタケース18の側面に設けられたケース流出口で、該ケース流出口24は、図3に示すようにケース体18Aから径方向外向きに突出して設けられ、タンク本体11の本体流入口16と同等の高さ位置に配設されている(図2参照)。そして、ケース流出口24は、接続具としての連結ホース25を用いてタンク本体11の本体流入口16に接続されている。また、連結ホース25は、本体流入口16とケース流出口24との間で略「く」字状に折曲げられた状態で両者の間を接続している。
【0042】
ここで、フィルタケース18内でリターンフィルタ21により異物が除去されて清浄化された作動油は、ケース流出口24からタンク本体11の本体流入口16側に向けて流入し、図3中に矢印Aで示すようにタンク本体11の側面11E,側面11Cに沿って流れるものである。
【0043】
26はフィルタケース18の側面に設けられたケース流入口で、該ケース流入口26は、図3に示すようにケース流出口24とは異なる位置と方向で、ケース体18Aから径方向外向きに突出して設けられている。そして、ケース流入口26は、図2、図4に示す如くケース流出口24よりも下方に位置してタンク本体11の本体流出口17と同等の高さ位置に配設されている。
【0044】
ここで、ケース流入口26は、接続具としての連結ホース27を用いてタンク本体11の本体流出口17に接続されている。そして、タンク本体11内の作動油は、本体流出口17から連結ホース27、ケース流入口26を介してフィルタケース18のサクションフィルタ室20内に導かれ、このサクションフィルタ室20内でサクションフィルタ22により作動油中の異物が除去(ろ過)される。
【0045】
28はフィルタケース18の下端側に設けられた外部流出口で、該外部流出口28は、図4に示すように底蓋部18Dから下向きに突出して設けられている。そして、外部流出口28は、油圧ポンプの吸込み側に吸込み配管(図示せず)を介して接続される。ここで、フィルタケース18内でサクションフィルタ22により清浄化された作動油は、前記油圧ポンプの回転により外部流出口28から油圧ポンプの吸込み側へと吸引(導出)されるものである。
【0046】
本実施の形態による油圧ショベル1に搭載された作動油タンク装置10は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0047】
まず、油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ8に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ(図示せず)を駆動する。これにより、タンク本体11内の作動油は、本体流出口17から連結ホース27、ケース流入口26を介してフィルタケース18のサクションフィルタ室20内に導かれ、フィルタケース18の外部流出口28から油圧ポンプの吸込み側へと吸引(導出)される。
【0048】
このとき、フィルタケース18のサクションフィルタ室20内では、サクションフィルタ22により作動油中の異物が除去(ろ過)され、清浄化された作動油がフィルタケース18の外部流出口28から前記油圧ポンプへと吸引される。そして、油圧ポンプは、吸込んだ作動油を圧油として吐出することにより、この圧油を外部の油圧機器(例えば、油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータ)に供給する。
【0049】
一方、油圧アクチュエータから戻り油となって戻される作動油は、例えばオイルクーラ、戻し配管(いずれも図示せず)等を介してフィルタケース18の外部流入口23側からリターンフィルタ室19内に導かれる。ここで、フィルタケース18のリターンフィルタ室19内に導かれた作動油(戻り油)は、このリターンフィルタ室19内でリターンフィルタ21により油液中の異物が除去(ろ過)され、清浄化された状態でフィルタケース18のケース流出口24から連結ホース25、本体流入口16を介してタンク本体11内に流入する。
【0050】
そして、本体流入口16からタンク本体11内に流入する作動油は、図3中に示すように側面11E,側面11Cに沿って矢示A方向に流れることにより、タンク本体11内での作動油の流れを滑らかにすることができ、作動油中に泡が発生するのを抑える消泡効果を発揮することができる。
【0051】
また、タンク本体11の壁面(例えば、側面11F)には、図2に示す如く内部に収容した作動油Lの油量を確認するため覗き窓14が形成されている。この覗き窓14の近傍には、複数本のゲージ線15A,15B,15Cが一定の間隔をあけて設けられている。これにより、タンク本体11内に貯留した作動油の油量、または残量をゲージ線15A,15B,15Cと比較して目視により確認することができる。
【0052】
かくして、本実施の形態によれば、タンク本体11と別体のフィルタケース18を、タンク本体11の外部に配置して設け、該フィルタケース18の内部にはリターンフィルタ21とサクションフィルタ22とを別々に収納して設ける構成としている。これにより、従来技術に比較してタンク本体11の構造を大幅に簡素化することができ、タンク本体11を樹脂タンクとして単純な形状のボックス体として形成することができる。
【0053】
そして、前記フィルタ21,22を保守・点検するメンテナンス時には、タンク本体11内からフィルタ21,22を取外す必要がなくなるので、メンテナンス時の作業性を向上することができる。しかも、フィルタ21,22に付着した異物が仮に脱落しても、この異物がタンク本体11内の作動油に混入するのを防ぐことができ、タンク本体11内の作動油を清浄な状態に保つことができる。
【0054】
また、本実施の形態で採用したフィルタケース18は、ケース体18A、仕切り部18B、上蓋部18Cおよび底蓋部18Dを有する構成としているので、ケース体18A内には、仕切り部18Bと上蓋部18Cとの間にリターンフィルタ21が収納されるリターンフィルタ室19を画成でき、仕切り部18Bと底蓋部18Dとの間には、サクションフィルタ22が収納されるサクションフィルタ室20を画成することができる。
【0055】
そして、フィルタケース18内のリターンフィルタ21を保守・点検するときには、フィルタケース18の上蓋部18Cをケース体18Aからボルト等を介して脱着する。これにより、リターンフィルタ21をケース体18A内から容易に取出すことができ、リターンフィルタ21に対するメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
【0056】
また、フィルタケース18内のサクションフィルタ22を保守・点検するときには、フィルタケース18の底蓋部18Dをケース体18Aからボルト等を介して脱着する。これにより、サクションフィルタ22をケース体18A内から容易に取出すことができ、サクションフィルタ22に対するメンテナンス作業も簡略化することができる。
【0057】
一方、タンク本体11に設ける本体流入口16は、図3に示すようにタンク本体11の側面11Dと側面11Eとの角隅に近い位置に配置し、フィルタケース18のケース流出口24から連結ホース25、本体流入口16を介してタンク本体11内に流入する作動油を、タンク本体11の側面11E,側面11Cに沿って図3中の矢示A方向に流通させる構成としている。これにより、タンク本体11内での作動油の流れを滑らかにすることができ、作動油中に泡が発生するのを抑える消泡効果を発揮することができる。
【0058】
また、タンク本体11の壁面(例えば、側面11F)には、図2に示す如く覗き窓14を形成し、該覗き窓14の近傍には、複数本のゲージ線15A,15B,15Cを設ける構成としている。これにより、例えばメンテナンス作業者は、タンク本体11内に収容した作動油Lの油量を確認するときに、覗き窓14を通じた目視によりゲージ線15A,15B,15Cと比較して作動油の残量を確認することができる。
【0059】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、タンク本体に設ける本体流入口を、前記タンク本体から斜めに傾けて突出させる構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
図中、31は第2の実施の形態で採用した本体流入口で、該本体流入口31は、第1の実施の形態で述べた本体流入口16とほぼ同様に構成され、タンク本体11の側面11Dと側面11Eとの角隅に近い位置に配置されている。また、本体流入口31の内側には、補強用の金属パイプ31Aがインサート成形等の手段により一体形成されている。
【0061】
しかし、この場合の本体流入口31は、タンク本体11の側面11Dから後述のケース流出口32側に向けて斜めに傾いて突出している点で、第1の実施の形態とは異なっている。そして、タンク本体11の側面11Dに対して本体流入口31を傾斜させることにより、本体流入口31からタンク本体11内に流入する作動油は、図6中の矢示A方向へと側面11E,側面11Cに沿って滑らかに流れ、消泡効果を発揮するものである。
【0062】
32はフィルタケース18の側面に設けられたケース流出口で、該ケース流出口32は、第1の実施の形態で述べたケース流出口24とほぼ同様に、ケース体18Aから径方向外向きに突出して設けられ、タンク本体11の本体流入口31と同等の高さ位置に配設されている。しかし、この場合のケース流出口32は、タンク本体11の側面11Dから斜めに傾斜して突出した本体流入口31と同一の直線上に位置し、本体流入口31と間隔をもって対向するように形成されている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0063】
33は接続具としての連結ホースを示し、該連結ホース33は、タンク本体11の本体流入口31とフィルタケース18のケース流出口32とを接続するもので、両者の間を直線状に延びて形成されている。このため、フィルタケース18のケース流出口32からタンク本体11の本体流入口31に向けて流れる作動油は、連結ホース33内を直線状に滑らかに流れ、流動抵抗が小さく抑えられるものである。
【0064】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、本体流入口31をタンク本体11の側面11Dから斜めに傾いて突出させ、フィルタケース18のケース流出口32と直線上で対向させる構成としているので、下記のような効果を得ることができる。
【0065】
即ち、タンク本体11の本体流入口31とフィルタケース18のケース流出口32とを接続する連結ホース33を、両者の間で直線状に延ばして形成することができる。このため、フィルタケース18のケース流出口32からタンク本体11の本体流入口31に向けて流れる作動油を、連結ホース33内で円滑に流通することができ、流動抵抗を小さく抑えることができると共に、消泡効果も発揮することができる。
【0066】
さらに、フィルタケース18のケース流出口32から連結ホース33、本体流入口31を介してタンク本体11内に流入する作動油は、タンク本体11の側面11E,側面11Cに沿って図3中の矢示A方向に流通する。これにより、タンク本体11内での作動油の流れを滑らかにすることができ、作動油中に泡が発生するのを抑える消泡効果を発揮することができる。
【0067】
なお、前記第1,第2の実施の形態では、フィルタケース18のケース体18Aを中空な円筒体として形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば三角形、四角形、五角形等の角筒体としてフィルタケースのケース体を形成してもよい。
【0068】
また、タンク本体11についても四角形のボックス形状に限るものではなく、例えば五角形、六角形等の角筒状ボックスとして形成することもできる。一方、タンク本体11は必ずしも樹脂タンクである必要はなく、例えば製缶構造をなすタンク本体を用いてもよいものである。
【0069】
さらに、各実施の形態では、小型の油圧ショベル1に搭載された作動油タンク装置10を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばタイヤ等からなるホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル、または中型、大型の油圧ショベルに搭載する作動油タンク装置に適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、ブルドーザ、油圧クレーン等、種々の建設機械に搭載する作動油タンク装置に適用してもよいものである。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 旋回フレーム
9 エンジン
10 作動油タンク装置
11 タンク本体
11A 底面
11B 上面
11C,11D,11E,11F 側面(内壁面)
13 キャップ
14 覗き窓
15A,15B,15C ゲージ線
16,31 本体流入口
17 本体流出口
18 フィルタケース
18A ケース本体
18B 仕切り部
18C 上蓋部
18D 底蓋部
19 リターンフィルタ室
20 サクションフィルタ室
21 リターンフィルタ
22 サクションフィルタ
23 外部流入口
24,32 ケース流出口
25,27,33 連結ホース
26 ケース流入口
28 外部流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を収容するタンク本体と、該タンク本体とは別体に形成され該タンク本体に着脱可能に接続されるフィルタケースを備え、
該フィルタケース内には、前記タンク本体内に戻される作動油中から異物を除去するリターンフィルタを収納するリターンフィルタ室と、前記タンク本体内から油圧ポンプにより吸出される作動油中の異物を除去するためのサクションフィルタを収納するサクションフィルタ室とを形成する構成としてなる作動油タンク装置。
【請求項2】
前記フィルタケースは、内部が中空な筒状体として形成され前記タンク本体の外部に配置されるケース体と、該ケース体内を上,下の2室に画成する仕切り部とを有し、前記上室を前記リターンフィルタ室とし、前記下室を前記サクションフィルタ室とする構成としてなる請求項1に記載の作動油タンク装置。
【請求項3】
前記フィルタケースには、外部の油圧機器から戻される作動油を前記リターンフィルタ室に流入するための外部流入口と、前記リターンフィルタで異物を除去した後の作動油を前記タンク本体に戻すケース流出口と、前記タンク本体内の作動油を前記サクションフィルタ室に流入するためのケース流入口と、前記サクションフィルタで異物を除去した前記作動油を前記油圧ポンプの吸込み側に導く外部流出口とを設ける構成としてなる請求項1または2に記載の作動油タンク装置。
【請求項4】
前記タンク本体には、前記フィルタケース内のリターンフィルタを介して作動油を導入する本体流入口と、前記タンク本体内の作動油を前記サクションフィルタ室に導出する本体流出口とを設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の作動油タンク装置。
【請求項5】
前記本体流入口は、前記フィルタケース側から流入してくる作動油を前記タンク本体の内壁面に沿って流入させるため前記内壁面の近傍に開口する構成としてなる請求項4に記載の作動油タンク装置。
【請求項6】
前記タンク本体は樹脂材料を用いて形成し、該タンク本体の壁面には、内部に収容した作動油の油量を確認するためのゲージ線を設ける構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載の作動油タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−38562(P2011−38562A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184585(P2009−184585)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】