説明

作業スケジュール出荷システムおよび作業スケジュール出荷プログラム

【課題】 負荷の偏りを平準化し、性能のよい作業支援を行うことのできる作業スケジュール出荷システムおよび作業スケジュール出荷プログラムを提供する。
【解決手段】 作業スケジュール出荷システムにおいて、配送先からの出荷要求による出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスを監視・制御する複数のコンピュータ1と、複数のコンピュータ1からの作業情報および負荷情報に基づき、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、そのシーケンス対応処理を複数のコンピュータに対して処理分担させる分散制御装置301とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流配送センタなどで作業支援・管理を行う作業スケジュール出荷システムおよび作業スケジュール出荷プログラムに関し、特に、各作業に関するコンピュータ処理の分散処理に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配送センタや営業倉庫での出荷を制御する作業スケジュール出荷システムとしては、1台もしくは、複数台の作業支援・管理用のコンピュータにより入荷から出荷までの作業を集中処理しており、全処理を処理すべき量として扱い、コンピュータ上のOSによる複数のプロセッサでの処理分担(分散処理)、もしくは、複数のコンピュータで処理分担(分散処理)を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−51301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の作業スケジュール出荷システムでは、以下の課題が存在する。
【0004】
(1)複数のコンピュータで処理分担した場合でも、各コンピュータは、所定の処理毎に処理分散しているため、ある処理に対する作業量が増加し、コンピュータの能力をオーバーする場合、処理遅れが発生し、作業者への作業指示が遅れるため、作業効率が低下する。
【0005】
(2)コンベアライン、ソータ等の設備に制御指示(分岐指示等)する場合、他の処理も実行処理しているため、コンピュータの処理量がオーバーすることもある。そのため、制御指示が遅れてしまい、設備にオンタイムで情報提供できなくなり、該設備が対応する機能が実現できない。例えば、出荷場のソータでは、方面別に分岐することができなくなり、異常方面へ分岐する等の問題が発生し、ソータとしての機能が実現できなくなる。
【0006】
(3)導入するコンピュータは、最大の作業量、処理量を想定して納入するため、大規模なコンピュータになる可能性ある。
【0007】
(4)導入段階、業務稼動推移において最大の処理量を想定することも困難である(例えば、現場作業者の一過的な画面操作が多発等)。そのため、コンピュータ処理能力をアップするために、プロセッサ追加、メモリ追加、コンピュータ追加による処理分散を進める必要がある。
【0008】
(5)各周辺機器とコンピュータとの情報交換を行うネットワーク情報もコンピュータに集中するため、ネットワーク処理能力の高いものを導入する必要ある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、各コンピュータの処理負荷を監視することにより、配送センタにおける出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスに対応した作業域範囲の処理を複数のコンピュータに分担して、負荷の偏りを平準化し、性能のよい作業支援を行うことのできる作業スケジュール出荷システムおよび作業スケジュール出荷プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明による作業スケジュール出荷システムは、配送先からの出荷要求に基づき、物品をピッキングする配送センタの作業スケジュール出荷システムであって、出荷要求による出荷指示〜ピッキング〜出荷作業シーケンスを監視・制御する複数のコンピュータと、複数のコンピュータからの作業情報および負荷情報に基づき、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、そのシーケンス対応処理を複数のコンピュータに対して処理分担させる分散制御装置とを備えたものである。
【0012】
また、本発明による作業スケジュール出荷プログラムは、配送先からの出荷要求に基づき、物品をピッキングする配送センタの作業スケジュール出荷プログラムであって、出荷要求による出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスを監視・制御する複数のコンピュータに対して処理分担させるために、処理装置を、複数のコンピュータからの作業情報および負荷情報に基づき、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、そのシーケンス対応処理を複数のコンピュータに対して処理分担させる手段として機能させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
本発明によれば、配送センタにおける出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業の各シーケンスに対応した処理に対する各コンピュータへの負荷の偏りを平準化でき、性能のよい作業支援を行うことができ、作業効率を落とさないマンマシンインターフェース、制御処理遅れによる設備機器への問題派生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
<作業スケジュール出荷システムの概要構成>
本実施の形態では、作業スケジュール出荷システムの概要構成として、以下に示すような構成とした。
【0017】
(1)ハードウエアとしては、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスに対応した処理を分散処理するために複数コンピュータを導入する。
【0018】
(2)各コンピュータには、配送センタにおける出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスに対応した全ての処理プログラムが入っているか、または必要に応じて導入(ダウンロード等)することができる構成とする。
【0019】
(3)分散制御装置により、各コンピュータの処理負荷を監視し、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスに応じた作業域範囲を各コンピュータに分担させることにより、全体の処理能力を確保する。
【0020】
(4)各作業領域での処理量を事前に他の作業領域に対応したコンピュータに伝達することにより事前に処理を実施する。
【0021】
(5)コンピュータ全体の処理能力以上の作業処理を必要とする場合、表示操作→作業指示→設備指示といった実稼動への影響度を考慮して、処理を制限し、局所的な問題を防ぐ。
【0022】
(6)必要なネットワーク情報のみを必要とするコンピュータへ送ることにより、高いネットワーク性能を実現する。この場合、コンピュータ、ネットワーク、端末・設備との物理的構成および作業領域と対応コンピュータとの関連を考慮する。
【0023】
<作業スケジュール出荷システムの適用先の一例>
図1により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの適用先の一例について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの適用先の構成を示す図である。
【0024】
図1において、本実施の形態の作業スケジュール出荷システムは、配送品をトラックに積み込み出荷する、いわゆる物流センタでの配送制御を対象としている。
【0025】
この物流センタは、コンベア4上を、配送品を格納するコンテナ(箱)(5−1〜5−N)が、挿入口から出荷口まで流れていく。この間、発送リストに従った配送品がピッキングゾーンA〜Cでコンテナ(5−1〜5−N)に積み込まれる。
【0026】
また、各ピッキングゾーンでは、棚に保管された配送品が人手もしくは自動的にコンテナに積み込まれる。また、各ピッキングゾーンや出荷口には、配送品をカウントする検出器などの端末装置(3−1〜3−4)が設置され、コンベアの状況を判断できるようになっている。このように、配送品が積み込まれたコンテナは出荷口でコンベア4上から下ろされ、トラックなど運送手段に積み込まれ出荷される。
【0027】
これらの作業シーケンスの動作は、作業スケジュール出荷システムを構成する複数台のコンピュータ1により制御され、特に、コンピュータ1から発行される発送リストに従って実行される。この発送リストの発行は、作業スケジュール出荷システムにネットワーク2を介して接続された計算機等20から入力される要求に従って、コンピュータ1により実行される。
【0028】
コンピュータ1は、一般のPC、WS等と同様の構成を有し、処理部10と記憶装置(媒体)11を有し、記憶装置(媒体)11には、作業スケジュール出荷システムの処理プログラム111や各種データが格納されたデータベース(以下、DBという)112が格納され、記憶装置(媒体)11に格納されたプログラム111に従って、DB112内の情報を用いることにより情報処理を実行する。
【0029】
<DBの構成>
次に、図2により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムのDB112の一例について説明する。図2は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムのDBの一例を示す図である。
【0030】
図2において、DBは、顧客からの受注情報であるオーダDB30と、各商品を管理するマスタDB31および顧客情報を管理する顧客DB32から構成される。
【0031】
マスタDB31には、出荷センタに入庫されている全ての商品の商品コード、在庫員数、在庫位置(場所)、商品サイズや賞味期限等が格納されており、商品入庫と共に、更新・追加されるDBである。
【0032】
顧客DB32には、出荷対象となる顧客コード、顧客名、住所、TEL等が格納されており、顧客からの取引時に更新されるDBである。これらのマスタDB31および顧客DB32は、通常の出荷作業で、参照されるDBである。
【0033】
一方、出荷指示は、各顧客からのオーダDB30に格納されており、オーダDB30に格納されている“顧客コード”から顧客DB32を参照し、また、“注文商品コード”からマスタDB31を参照することにより、出荷作業支援を行う。
【0034】
ここで判るように、オーダDB30そのものが、実際の作業指示であり、このオーダDB30を、各コンピュータ1へ分散配置することにより、作業指示を処理分担するコンピュータを決定することになる。
【0035】
<作業スケジュール出荷システムの各端末装置への基本処理>
次に、図3により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの各端末装置への基本処理について説明する。図3は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの各端末への基本処理を説明するための説明図である。
【0036】
図3において、物流センタ内のコンベア4上や各ピッキングゾーンなどに設置された各端末装置であるハンディーターミナル(HT)201、コンベアライン202、ディジタルピッキング装置(DPS)203、自動倉庫204、ソータ205は、複数のコンピュータ1とネットワーク2などの伝送回線を通して、各コンピュータ1内の通信処理部206と各種データの授受を行う。
【0037】
各コンピュータ1内では、各端末装置の処理を行うためのプロセスが実行されており、例えば、HT端末処理プロセス207、ライン分岐処理プロセス208、ソータ分岐処理プロセス209が、それぞれ分散されて実行されている。また、その他、DPS203の処理プロセスや自動倉庫204の処理プロセスも実行される。
【0038】
図3に示す例では、HT201がI台分のHT端末処理プロセス207、コンベアライン202がJ台分のライン分岐処理プロセス208、ソータ205がK台分のソータ分岐処理プロセス209が複数のコンピュータ1により実行され、各処理プロセスはDB112内の情報を参照して、各端末装置の処理を実行している。
【0039】
HT201は、現在の作業するための商品情報を送信し、作業すべき商品の位置、員数等を受信する。
【0040】
コンベアライン202は、コンベアラインでの出荷物の位置を送信し、分岐ライン(方向)を受信する。
【0041】
DPS203は、作業すべき、オーダ情報を受信し、その作業実績を送信する。
【0042】
自動倉庫204は、出すべき商品コードを受信し、出した商品実績を送信する。
【0043】
ソータ205とは、ソータでの出荷物の位置を送信し、分岐ソータ番号(方向)を受信する。
【0044】
このような各端末装置からのデータに基づき、HT端末処理プロセス207、ライン分岐処理プロセス208、ソータ分岐処理プロセス209などの処理プロセスでは、商品情報などを格納したDB112を参照しながら、各端末装置の操作に対応したプロセスを実行・処理する。
【0045】
例えば、HT端末処理プロセス207では、通信処理部206から受信した商品情報をHT端末受付処理部211が受け取り、その商品情報からDB112に格納されたオーダ情報をDBアクセス処理部212が検索し、DB抽出処理部213が取り出して、その情報を結果応答処理部214を介して、通信処理部206へ出力し、HT201へ送信する。
【0046】
また、ライン分岐処理プロセス208では、通信処理部206から受信した商品情報をライン受付処理部215が受け取り、その商品情報からDB112に格納されたオーダ情報をDBアクセス処理部216が検索し、分岐判定処理部217が分岐判定して、その分岐情報を結果応答処理部218を介して、通信処理部206へ出力し、コンベアライン202へ送信する。
【0047】
また、ソータ分岐処理プロセス209では、通信処理部206から受信した商品情報をソータ受付処理部219が受け取り、その商品情報からDB112に格納されたオーダ情報をDBアクセス処理部220が検索し、分岐判定処理部221が分岐判定して、その分岐情報を結果応答処理部222を介して、通信処理部206へ出力し、ソータ205へ送信する。
【0048】
これらの各処理は、通常、処理性を配慮して各端末装置単位等に複数の処理が同時に実行される構成(マルチプロセス)を取る場合が多く、1台のコンピュータ1に処理が集中した場合には、コンピュータ1の処理能力によっては、処理量がオーバーし、制御指示の遅れが生じる場合がある。
【0049】
このため、本実施の形態では、HT端末処理プロセス207、ライン分岐処理プロセス208、ソータ分岐処理プロセス209などの処理プロセスは、1台のコンピュータ1で実行されるのではなく、複数のコンピュータ1に分散されて実行されるようになっている。さらに、HT端末処理プロセス207、ライン分岐処理プロセス208、ソータ分岐処理プロセス209などの各処理プロセス毎に1台のコンピュータ1を割り当て処理を分散するのではなく、各処理プロセスにおける複数台の端末装置に対する複数の処理をコンピュータ1の負荷状態に基づき、複数のコンピュータ1に分散することもできるようになっている。
【0050】
例えば、I台分のHT端末処理プロセス207を、1台のコンピュータ1で処理するのではなく、コンピュータ1の負荷状態に基づき、複数のコンピュータ1で分散処理することもできる。
【0051】
このように各処理プロセスを分散処理することにより、本実施の形態では、例えば、HT201の端末装置による処理が多く、その他の端末装置の処理が少ないというような各端末装置の処理に偏りが生じた場合でも、HT201の処理を行うHT端末処理プロセス207が複数のコンピュータ1に分散処理され、負荷の偏りを平準化でき、性能のよい作業支援を行うことができる。
【0052】
<作業スケジュール出荷システムの構成>
次に、図4により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの構成の一例について説明する。図4は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの構成を示す構成図である。
【0053】
図4において、作業スケジュール出荷システムは、複数のコンピュータ1(PC−1〜4)と処理装置である分散制御装置301から構成されている。
【0054】
各コンピュータ1(PC−1〜4)は、それぞれが、例えば、HT端末処理プロセス207(機能1)、ライン分岐処理プロセス208(機能2)、ソータ分岐処理プロセス209(機能3)などの各処理プロセスを実行するプログラムやその他の処理プログラムを格納しており、各コンピュータ1(PC−1〜4)により、各種の処理プロセスを実行できるようになっている。
【0055】
分散制御装置301は、顧客からの出荷情報に基づき、配送センタ内の各ピッキングゾーンや出荷口などの作業領域1〜4(307〜310)の作業に係る作業指示を行う。
【0056】
各作業領域では、オーダスタート306から指示された出荷作業に基づき、各端末機器が制御され各作業領域に配置された商品を選出、ピッキングしてゆく。例えば、作業領域1(307)では、HT201とコンベアライン202が制御され、作業領域2(308)では、HT201とコンベアライン202が制御され、作業領域3(309)では、HT201とDPS203が制御され、作業領域4(310)では、自動倉庫204とソータ205が制御されている。
【0057】
また、図4に示す例では、各作業領域1〜4(307〜310)の作業は、配送センタのコンベア4上に沿って、作業フローが時間差をもって処理が実行されている。例えば、作業領域1〜4(307〜310)が、コンベア4上に沿って、時間差をもって作業領域1(307)では、商品Aのピッキングが行われ、作業領域2(308)では、商品Bのピッキングが行われ、作業領域3(309)では、商品Cのピッキングが行われ、作業領域4(310)では、商品Dのピッキングが行われる。
【0058】
また、各作業領域1〜4(307〜310)での作業量、作業進捗情報、商品在庫位置、作業領域情報、作業者配置情報といった情報は、各作業領域を支援するための各コンピュータ1(PC−1〜4)へ、ネットワーク2を介して入出力される。
【0059】
各コンピュータ1(PC−1〜4)は、上記各情報(作業量、作業進捗情報、商品在庫位置、作業領域情報、作業者配置情報等)の他、コンピュータ1内でのCPU負荷情報を分散制御装置301へ報告する。
【0060】
分散制御装置301は、これら各情報(作業量、作業進捗情報、商品在庫位置、作業領域情報、作業者配置情報等)およびCPU負荷情報に基づき、各コンピュータ1(PC−1〜4)に作業支援指示(オーダ指示)を行う。各コンピュータ1(PC−1〜4)で処理支援すべきオーダ指示は、各コンピュータ1(PC−1〜4)のCPU負荷を最適化し、各作業に優先レベルをつけたオーダ指示を行う。
【0061】
分散制御装置301の各処理動作は、例えば、分散制御装置301上の作業スケジュール出荷プログラムなどにより実施される。また、分散制御装置301の処理機能を各コンピュータ1(PC−1〜4)上のそれぞれで実行される作業スケジュール出荷プログラムにより実施し、各コンピュータ1(PC−1〜4)を相互に接続してCPU負荷情報やオーダ指示のやり取りを行い、各処理動作を行うようにしてもよい。
【0062】
<最適化処理の動作>
次に、図5および図6により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理の動作について説明する。図5は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理の動作を示すフローチャート、図6は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理における負荷分散処理の動作を示すフローチャートであり、ある1台のコンピュータ1に着目した処理を示し、該当コンピュータの処理を決定するためのものである。その他のコンピュータ1も同様な動作により最適化処理および負荷分散処理が行われ、各コンピュータ1(PC−1〜4)のそれぞれについて最適化処理が行われることにより、作業スケジュール出荷システム全体の最適化が実施される。
【0063】
最適化処理としては、図5に示すように、まず、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの流れに従い、該当コンピュータ1の担当作業領域よりも前段の作業領域での作業情報(オーダ数、進捗状況等)を入手し(S402)、該当コンピュータ1での予定負荷(LDt)を、出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスにおけるリードタイムをもって計算する(S403)。
【0064】
次に、予定負荷(LDt)が100%よりも小さいか否かを判断し、該当コンピュータ1にて処理ができるかどうか判定する(S404)。
【0065】
S404で、LDt<100%と判断され、処理ができると判定された場合には、図3にて示したように事前にDB112にアクセスして作業指示(オーダ)が該当作業域に到達する前に事前処理を実行する(S405)。
【0066】
また、S404で、LDt≧100%と判断され、処理ができないと判定された場合には、該当コンピュータ1に割り付けられたオーダ処理を他コンピュータ1へ割り付けて負荷分散を行う(S407)。その後、各コンピュータ1における予定負荷を再度計算し、該当負荷LDtが、100%未満となるように調整する。
【0067】
また、S407での他コンピュータへの負荷分散処理としては、図6に示すように、まず、全てのコンピュータ1がオーバーワークか否かを判断し(S410)、全てのコンピュータ1がオーバーワーク(LDt≧100%)でない場合(ある業務対応ができない場合)と、全てのコンピュータ1がオーバーワーク(LDt≧100%)である場合(全ての業務対応ができない場合)の2つの場合により負荷の調整を行う。
【0068】
S410で、全てのコンピュータ1がオーバーワーク(LDt≧100%)でないと判断された場合には、オーバーワークしたコンピュータ1に割り付けてあるオーダの内、任意のオーダを保護ゾーン対象コンピュータ1以外のコンピュータ1へ割り付ける(S414)。また、S414では、さらに、任意のオーダをネットワークパスの近いコンピュータ1へ割り付けることもできる。
【0069】
ここで、保護ゾーンとは、例えば、出荷ソータ装置などの分岐指示を支援しなければならないゾーンであり、ここでの処理遅れは、即刻、問題を引き起こすゾーンである。一方、非保護ゾーンとは、HT201への操作指示対象ゾーンにように、多少の処理遅れがあっても、作業効率は、低下するものの、問題発生に直結しない作業対象ゾーンを示す。
【0070】
また、S410で全てのコンピュータがオーバーワーク(LDt≧100%)と判断された場合には、オーバーしている任意オーダを保護ゾーン対象コンピュータ1以外のコンピュータ1に割り付ける(S411)。また、S411では、さらに、任意のオーダをネットワークパスの近いコンピュータ1へ割り付けることもできる。
【0071】
そして、S411で割り振られた保護ゾーン以外のコンピュータ1の処理レベルを下げることによって該当コンピュータ1の負荷を下げる(S412)。
【0072】
すなわち、オーダに対する処理作業量を処理する実行時間を長くすることにより単位時間当たりの処理量を減らすものである。弊害として、対応作業処理量が少なくなるため、例えば、HT201への作業指示の時間が遅くなる(レスポンス低下)等の問題が発生する。
【0073】
しかしながら、実作業が実施できないといった事態に即刻遷移するのではなく、ある作業性低下を伴って遷移するため、実質上、問題とならない。
【0074】
そして、全てのコンピュータ1がオーバーワークか否かを判断し(S413)、S413で全てのコンピュータ1がオーバーワークと判断された場合には、S412に戻り、全てのコンピュータ1に対して、適切なCPU負荷となるように全コンピュータ1の処理実行時間を調整する。
【0075】
<最適化処理によるオーダの分散の具体例>
次に、図7〜図9により、本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理によるオーダの分散の具体例について説明する。図7〜図9は本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理によるオーダの分散の具体例を説明するための説明図であり、図7は最適化処理前の各コンピュータ1とオーダの関係を示し、図8は第1段階の最適化処理後の各コンピュータ1とオーダの関係を示し、図9は最終的な最適化処理後の各コンピュータ1とオーダの関係を示している。
【0076】
図7において、オーダがオーダ1からオーダ3まであり、各オーダの注文内容を、例えばオーダ1では、商品Aが5個、商品Bが10個、商品Dが1000個出荷するものをオーダ1(A:5,B:10,D:1000)と表現すると、各オーダは、下記のように表現できる。
オーダ1(A:5,B:10,D:1000)
オーダ2(B:1000)
オーダ3(C:10,D:500)
また、これら商品は、作業領域1から作業領域4に分布しており、各作業領域での処理は、各作業領域に対してコンピュータ1(PC−1)からコンピュータ1(PC−4)が分担処理する場合を考える。
【0077】
図7に示すように、作業指示であるオーダは、オーダ1からオーダ3の順番に開始すると、オーダ内容において、時刻T2では、オーダ1の商品Bの処理と、オーダ2の商品Bの処理が重なるため、コンピュータ1(PC−2)の負荷が高くなり、時刻T3では、オーダ1の商品Dの処理と、オーダ3の商品Dの処理が重なるため、コンピュータ1(PC−4)の負荷が高くなる。一方、その他の時刻でその他のコンピュータ1(PC−1,PC−3)の負荷は、少ない状態となっている。
【0078】
そこで、図5および図6に示すような処理により、まずは、図8に示すように、時刻T2におけるオーダ2の処理をコンピュータ1(PC−3)で処理させ、また、時刻T3におけるオーダ1をコンピュータ1(PC−1)で処理させることにより、各コンピュータ1の負荷を平準化・低減させることができる。しかしながら、例えば、作業領域4から取り込んだオーダ1の情報は、作業領域3,2に接続されたネットワークを経由するため、コンピュータ3,2で不要なオーダ1の情報伝送の影響を受け、ネットワーク性能に影響する。
【0079】
そこで、さらに、ネットワークパスを考慮し、図9に示すように、時刻T2におけるオーダ2の処理をコンピュータ1(PC−1)で処理させ、また、時刻T3におけるオーダ1をコンピュータ1(PC−3)で処理させることにより、各コンピュータ1の負荷を平準化・を実現し、かつ、接続上、他コンピュータ1を極力通過せずに、ネットワーク2上には、必要な情報のみが、目的のコンピュータ1に伝送されるので、例えば、作業領域4から取り込んだオーダ1の情報は、コンピュータ1(PC−3)に伝送されるため、他コンピュータ1のネットワークへの影響なくなり、全体的には、高性能なネットワークを実現できる。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの適用先の構成を示す図である。
【図2】発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムのDBの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの各端末への基本処理を説明するための説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの構成を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理における負荷分散処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理によるオーダの分散の具体例を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理によるオーダの分散の具体例を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る作業スケジュール出荷システムの最適化処理によるオーダの分散の具体例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1…コンピュータ、2…ネットワーク、3−1〜3−4…端末装置、4…コンベア、5−1〜5−N…コンテナ、10…処理部、11…記憶装置(媒体)、111…プログラム、112…データベース(DB)、30…オーダDB、31…マスタDB、32…顧客DB、201…ハンディーターミナル(HT)、202…コンベアライン、203…ディジタルピッキング装置(DPS)、204…自動倉庫、205…ソータ、206…通信処理部、207…HT端末処理プロセス、208…ライン分岐処理プロセス、209…ソータ分岐処理プロセス、211…HT端末受付処理部、212…DBアクセス処理部、213…DB抽出処理部、214…結果応答処理部、215…ライン受付処理部、216…DBアクセス処理部、217…分岐判定処理部、218…結果応答処理部、219…ソータ受付処理部、220…DBアクセス処理部、221…分岐判定処理部、222…結果応答処理部、301…分散制御装置(処理装置)、307…作業領域1、308…作業領域2、309…作業領域3、310…作業領域4。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配送先からの出荷要求に基づき、物品をピッキングする配送センタの作業スケジュール出荷システムであって、
前記出荷要求による出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスを監視・制御する複数のコンピュータと、
前記複数のコンピュータからの作業情報および負荷情報に基づき、前記出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、そのシーケンス対応処理を前記複数のコンピュータに対して処理分担させる分散制御装置とを備えたことを特徴とする作業スケジュール出荷システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業スケジュール出荷システムにおいて、
前記分散制御装置は、予め前記出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの作業の優先度を設定し、前記出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスによる全処理量が前記複数のコンピュータの処理量を上回る場合、前記出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、優先度の高い作業以外の作業に対する処理を制限することを特徴とする作業スケジュール出荷システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の作業スケジュール出荷システムにおいて、
前記分散制御装置は、前記複数のコンピュータに対して処理分担させる際、ネットワークパスの近いコンピュータに処理分担させることを特徴とする作業スケジュール出荷システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の作業スケジュール出荷システムにおいて、
前記分散制御装置は、前記複数のコンピュータに事前に割り振られた作業に対し、その出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの順序に基づき、前記複数のコンピュータに対して事前に1部の処理を実行させ、時系列的な処理負荷を平準化することを特徴とする作業スケジュール出荷システム。
【請求項5】
配送先からの出荷要求に基づき、物品をピッキングする配送センタの作業スケジュール出荷プログラムであって、
前記出荷要求による出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスを監視・制御する複数のコンピュータに対して処理分担させるために、処理装置を、
前記複数のコンピュータからの作業情報および負荷情報に基づき、前記出荷指示からピッキング作業を経由して出荷までの作業シーケンスの内容に対応して、そのシーケンス対応処理を前記複数のコンピュータに対して処理分担させる手段として機能させることを特徴とする作業スケジュール出荷プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−36396(P2006−36396A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215530(P2004−215530)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】