説明

作業機の操作装置

【課題】十字型のジョイスティックを用いた操作装置において、容易且つ的確な複合操作を可能とし、安全性及び信頼性の高い作業を実現し得る作業機の操作装置を提供する。
【解決手段】十字型のジョイスティックを備えた作業機の操作装置において、上記ジョイスティックの可動範囲内に、該ジョイスティックの操作を固定できる操作固定位置を設定し、該操作固定位置への上記ジョイスティックの操作固定状態において作業機に対する特定の操作が実行されるように構成する。係る構成によれば、上記操作固定位置に上記ジョイスティックを固定することで、上記特定の操作を的確に且つ安定的に実行することができ、作業の安全性及び信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、クレーン車、高所作業車等の伸縮・起伏自在の伸縮ブームを備えた作業機における操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載クレーンにおいては、フック高さを一定に維持した移動操作、即ち、水平移動操作とか、ブームに対するフック位置を一定に維持した移動操作、即ち、平行移動操作が、作業上の安全性あるいは利便性という面において有用である。
【0003】
この水平移動操作は、ブームの伸縮操作とウィンチの巻上・巻下操作を連動して行なう場合と、ブームの起伏操作とウィンチの巻上・巻下操作を連動して行なう場合があるが、前者においてはブームを伸縮させながらウィンチの巻上・巻下操作を行なう必要があり、後者においてはブームを起伏させながらウィンチの巻上・巻下操作を行なう必要がある。また、平行移動操作においては、ブームを起伏させながらウィンチの巻上・巻下操作を行なう必要がある。
【0004】
これら何れの場合も、ブームの作動に関与するアクチュエータとウィンチの作動に関与するアクチュエータを同時に連動させて操作することが必要であり、そのための手法として、例えば、フック高さを一定に維持するようにブームの伸縮操作量とウィンチの巻上・巻下操作量を自動的に演算して制御する手法とか、直交する二方向のそれぞれに異なる操作を割り付けた十字型のジョイスティックを用いてオペレータが調整しながら操作するマニュアル操作手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−178978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前者の演算制御による手法では、連動自動制御モードと個別操作制御モードという二つの制御モードを備える必要があることから、実際の荷の移動操作においては上記各モード間の切換操作が煩雑であるとともに、連動自動制御モードでの操作中にフック高さを変更するための操作が難しいという問題がある。
【0007】
一方、後者の十字型ジョイスティックによるマニュアル操作手法では、オペレータがフックの上下動を視認し、この上下動が解消されるように操作レバーの傾倒方向を補正する必要があることから、フック位置を確認しながら補正操作を行うこと自体が煩わしいものとなる。また、伸縮ブームの起伏角度によってウィンチの操作量が異なり(例えば、起伏角度が45度以上では伸縮ブームの縮小に伴うウィンチの巻下操作量が大きく、起伏角度が45度以下では伸縮ブームの縮小に伴うウィンチの巻上操作量が小さくなる)、フックを水平移動させるに最適な操作レバーの傾動量の判断が難しいという問題もある。
【0008】
そこで本願発明は、十字型のジョイスティックを用いた操作装置において、容易且つ的確な複合操作を可能とし、安全性及び信頼性の高い作業を実現し得るようにした作業機の操作装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0010】
本願の第1の発明では、作業機の駆動に係る二つのアクチュエータを同時に駆動させる複合操作を可能とした十字型のジョイスティックを備えた作業機の操作装置において、上記ジョイスティックの可動範囲内に、該ジョイスティックの操作を固定できる操作固定位置を設定し、該操作固定位置への上記ジョイスティックの操作固定状態において上記作業機に対する特定の操作が実行されるように構成したことを特徴としている。
【0011】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る作業機の操作装置において、上記ジョイスティックに開口を備えた可動範囲規制部材を該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設し、該開口の内周縁を上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能させる一方、該開口の角部を上記操作固定位置として機能させるように構成したことを特徴としている。
【0012】
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る作業機の操作装置において、上記ジョイスティックに多角形状の開口を備えた可動範囲規制部材を該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設し、該開口の内周縁を上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能させる一方、該内周縁上に凹部を設けて該凹部を上記操作固定位置として機能させるように構成したことを特徴としている。
【0013】
本願の第4の発明では、上記第2又は第3の発明に係る作業機の操作装置において、上記作業機が、伸縮及び起伏が可能なブームと該ブームの先端から吊り下げられたフックの巻上及び巻下を行なうウィンチを備え、上記特定の操作が、上記フックを水平方向へ移動させるための、又は上記フックを上記ブームとの上下方向の間隔を一定に維持して移動させるための上記複合操作であることを特徴としている。
【0014】
本願の第5の発明では、上記第2又は第3の発明に係る作業機の操作装置において、上記作業機が伸縮及び起伏が可能なブームを備え、上記特定の操作が、上記ブームの先端部を水平方向へ移動させるための、又は上記ブームの先端部を鉛直方向へ移動させるための上記複合操作であることを特徴としている。
【0015】
本願の第6の発明では、上記第3の発明に係る作業機の操作装置において、上記特定の操作に、上記各アクチュエータの単独操作を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0017】
(a)本願の第1の発明に係る作業機の操作装置によれば、作業機の駆動に係る二つのアクチュエータを同時に駆動させる複合操作を可能とした十字型のジョイスティックを備えたものにおいて、上記ジョイスティックの可動範囲内に、該ジョイスティックの操作を固定(ジョイスティックの少なくとも二方向の動きを拘束することによる固定)できる操作固定位置を設定し、該操作固定位置への上記ジョイスティックの操作固定状態において上記作業機に対する特定の操作が実行されるように構成しているので、上記操作固定位置に上記ジョイスティックを固定することで、上記特定の操作を的確に且つ安定的に実行することができ、作業の安全性及び信頼性が向上する。
【0018】
(b)本願の第2の発明に係る作業機の操作装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記ジョイスティックに多角形状の開口を備えた可動範囲規制部材を該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設し、該開口の内周縁を上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能させる一方、該開口の角部を上記操作固定位置として機能させるように構成しているので、上記ジョイスティックの機能上必須の上記可動範囲規制部材の一部、即ち、上記開口の角部を上記操作固定位置として利用でき、例えば、操作固定位置として機能する部材を別個に設ける場合に比して、操作部分の構造の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
(c)本願の第3の発明に係る作業機の操作装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記ジョイスティックに多角形状の開口を備えた可動範囲規制部材を該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設し、該開口の内周縁を上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能させる一方、該内周縁上に凹部を設けて該凹部を上記操作固定位置として機能させるように構成しているので、該凹部の上記内周縁上における形成位置及び個数を適宜設定することで、上記特定の操作の種類の多様化とか操作パターンの多様化に容易に対応でき、延いては上記ジョイスティックを用いる操作装置全体としての操作性が向上する。
【0020】
(d)本願の第4の発明に係る作業機の操作装置によれば、上記(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記作業機が、伸縮及び起伏が可能なブームと該ブームの先端から吊り下げられたフックの巻上及び巻下を行なうウィンチを備え、上記特定の操作によって、上記フックを水平方向へ移動させるための、又は上記フックを上記ブームとの上下方向の間隔を一定に維持して移動させるための上記複合操作が行われるようにしているので、オペレータは上記ジョイスティックを上記操作固定位置に固定すれば、上記フックの水平方向への移動、又は上記フックの上記ブームとの上下方向間隔を一定に維持した移動が容易且つ確実に実現され、例えば、従来のように上記伸縮用又は起伏用アクチュエータと上記ウィンチ用アクチュエータの相対関係を調整しながらジョイスティックの操作を行う必要がある場合に比して、作業性の格段の向上が図れる。
【0021】
(e)本願の第5の発明に係る作業機の操作装置によれば、上記(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記作業機が伸縮及び起伏が可能なブームを備え、上記特定の操作によって、上記ブームの先端部を水平方向へ移動させるための、又は上記ブームの先端部を鉛直方向へ移動させるための上記複合操作が行われるようにしているので、オペレータは上記ジョイスティックを上記操作固定位置に固定すれば、上記ブームの先端部の水平方向へ移動、又は上記ブームの先端部の鉛直方向への移動が容易且つ確実に実現され、例えば、従来のように上記伸縮用と起伏用アクチュエータの相対関係を調整しながらジョイスティックの操作を行う必要がある場合に比して、作業性の格段の向上が図れる。
【0022】
(f)本願の第6の発明に係る作業機の操作装置によれば、上記(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記特定の操作に、上記各アクチュエータの単独操作を含むことから、この単独操作位置に対応する開口外周縁に上記凹部を設け、ここに上記ジョイスティックを固定することで、該各アクチュエータの単独操作を的確に且つ安定的に行なうことができ、操作性及びその信頼性がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0024】
I:第1の実施形態
A:全体構成
図1及び図2には、本願発明の第1の実施形態に係る操作装置を備えたクレーン車1を示している。このクレーン車1は、車両2上に旋回可能に搭載された旋回台3に、内蔵された伸縮用シリンダ11によって伸縮駆動される伸縮ブーム4を取付けるとともに、該伸縮ブーム4を上記旋回台3との間に配置した起伏用シリンダ12によって起伏駆動させるようになっている。また、上記旋回台3にはウィンチ8が備えられ、該ウィンチ8から繰出されるワイヤロープ6を、上記伸縮ブーム4の先端のブームヘッド5部分から吊り下げてこれにフック7を装着している。
【0025】
そして、このクレーン車1は、上記伸縮ブーム4の伸縮操作と起伏操作及び上記ウィンチ8の巻上・巻下操作が単独で、あるいは相互に関連して行われることで、上記フック7に吊下された吊荷(図示省略)を三次元上の任意位置に移動させるもので、その移動形態は多様であるが、この第1の実施形態においては、特に上記伸縮ブーム4の伸縮動によってフック7を水平移動又は平行移動させることを主たる目的としている。
【0026】
ここで、上記「水平移動」とは、図1に示すように、上記伸縮ブーム4をその起伏角を固定した状態で、該伸縮ブーム4の伸縮動によって上記フック7を所定高さで水平に移動させる移動形態である。また、上記「平行移動」とは、図2に示すように、上記伸縮ブーム4をその起伏角を固定した状態で、該伸縮ブーム4の伸縮動によって上記フック7を、上記伸縮ブーム4との上下方向間隔を一定に維持したまま該伸縮ブーム4の伸縮方向と平行に移動させる移動形態である。
【0027】
これら水平移動及び平行移動においては、上記伸縮ブーム4の伸縮動に基づく上記ブームヘッド5の高さの変化を、上記ウィンチ8の巻上・巻下操作によって補正し、これによって水平移動又は平行移動を実現するもので、上記伸縮用シリンダ11の伸縮操作と上記ウィンチ8の巻上・巻下操作を、上記伸縮ブーム4の起伏角度に対応した一定の相対関係をもって同時操作することが必要であり、これを実現するのが次述の操作装置であって、この実施形態では該操作装置に、ハード面及びソフト面の双方において特有な構成を採用しており、以下においてこれを具体的に説明する。
【0028】
B:操作装置の構成
B−1:操作部の構成
上記クレーン車1には、図3に示すような操作部20が備えられている。この操作部20は、全周回りに傾動自在な操作レバー部22を備えた第1ジョイスティック21と、同じく全周回りに傾動自在な操作レバー部24を備えた第2ジョイスティック23を左右に並置して構成される。これら各ジョイスティック21,23は、中立位置を通って直交する二方向に単独操作位置をもった十字型ジョイスティックで構成される。
【0029】
そして、この実施形態では、後述するように、上記第1ジョイスティック21に、上記伸縮ブーム4の伸縮単独操作位置と上記ウィンチ8の巻上・巻下単独操作位置をそれぞれ割り付けて「伸縮及びウィンチ操作用ジョイスティック」として用いるとともに、これに加えて水平操作位置と平行操作位置をそれぞれ割り付けて「水平操作及び平行操作用ジョイスティック」として用いるようにしている。
【0030】
上記第1ジョイスティック21は、図3〜図5に示すように、ロッド状の操作レバー部22の下端寄り部分をボール軸受25によって任意方向に傾動可能に支承するとともに、図示しない付勢手段によって中立位置(図4に実線図示する位置)に復帰付勢し、該ボール軸受25を傾倒中心として任意方向に傾動操作可能としている。
【0031】
また、上記第1ジョイスティック21の操作レバー部22の上記ボール軸受25よりも上端寄り部位には、正方形状の平面形体をもつ規制用開口30を備えた可動範囲規制部材28が、該規制用開口30の内側軸心部に上記操作レバー部22を挿通させた状態で取付けられている。この規制用開口30は、図6に示すように、四つの外周縁30A〜30Dを備えており、これら各外周縁30A〜30Dは、上記第1ジョイスティック21の傾倒操作によってその操作レバー部22が当接することで、該第1ジョイスティック21のそれ以上の傾動を規制する(最大傾動量を規定する)機能を有する。
【0032】
ここで、本願発明はこの規制用開口30の各外周縁30A〜30Dの適所に上記操作レバー部22を係入せしめてこれを固定する凹部を設けたことをその特徴の一つとしているが、この凹部の配置パターンは種々考えられる。以下、この凹部の配置パターンを幾つか説明する。
【0033】
「第1の配置パターン」
第1の配置パターンは、図6に示すパターンである。即ち、上記規制用開口30の中心Qを通って上記各外周縁30A〜30Dのそれぞれに垂直な二本の直線L1,L2と該各外周縁30A〜30Dとの四つの交点部分と、上記中心Qを通る一つの対角上の直線L3から該中心Q回りに所定角度(<45°)だけ回転した位置にある直線L4と外周縁30A,30Cとの二つの交点部分に、それぞれ円弧状の底面をもって外周縁上に拡開状に開口する凹部31A〜31D,及び31F、31Hを設け、これらを上記第1ジョイスティック21を固定保持する固定部として機能させるとともに、さらに、上記直線L3上の一対の角部をも凹部31E,31Gとして機能させるようにしている。
【0034】
なお、上記各凹部31A〜31D,及び31F、31Hを円弧状の底面をもって外周縁上に拡開状に開口する形状としたことで、上記第1ジョイスティック21の上記操作レバー部22が特定の凹部に係入固定された状態から、該操作レバー部22を離脱させ且つ側方へ移動させる場合、その操作がよりスムーズとなり、操作性の向上に寄与できる。
【0035】
そして、この第1の配置パターンでは、上記直線L1に沿う操作方向を上記伸縮ブーム4の伸縮の単独操作方向とし、この直線L1上での操作ではウィンチ操作量は零とされる。そして、上記直線L1上の第1凹部31Aを伸長側への最大傾動量とし、第3凹部31Cを縮小側への最大傾動量としている。
【0036】
また、上記直線L2に沿う操作方向をウィンチ8の巻上・巻下の単独操作方向とし、この直線L2上での操作では伸縮ブーム4の伸縮操作量は零とされる。そして、上記直線L2上の一方の第2凹部31Bを巻上側への最大傾動量とし、他方の第4凹部31Dを巻下側への最大傾動量としている。
【0037】
さらに、上記直線L3に沿う操作方向を上記フック7の水平移動を実現するための操作方向とし、この直線L3上での操作では伸縮ブーム4の伸縮動と上記ウィンチ8の巻上・巻下動が所定の比率で連動される。そして、上記直線L3上の一方の第5凹部31Eを伸縮ブーム4の縮小動に伴う水平移動の最大傾動量とし、他方の第7凹部31Gを伸縮ブーム4の伸長動に伴う水平移動の最大傾動量としている。
【0038】
また、上記直線L4に沿う操作方向を上記フック7の平行移動を実現するための操作方向とし、この直線L4上での操作では伸縮ブーム4の伸縮動と上記ウィンチ8の巻上・巻下動が所定の比率で連動される。そして、上記直線L4上の一方の第6凹部31Fを伸縮ブーム4の縮小動に伴う平行移動の最大傾動量とし、他方の第8凹部31Hを伸縮ブーム4の伸長動に伴う平行移動の最大傾動量としている。
【0039】
従って、
(a)上記第1ジョイスティック21が上記直線L1に沿って操作される場合には伸縮ブーム4の伸縮動のみが行なわれ、
(b)上記第1ジョイスティック21が上記直線L2に沿って操作される場合にはウィンチ8の巻上・巻下動のみが行なわれ、
(c)上記第1ジョイスティック21が上記直線L3に沿って操作される場合にはフック7の水平移動が行なわれ、
(d)上記第1ジョイスティック21が上記直線L4に沿って操作される場合にはフック7の平行移動が行なわれる。
【0040】
なお、上記各操作における上記伸縮用シリンダ11及びウィンチ8の作動量の設定については後述する。
【0041】
なお、図4、図5に示すように、上記第1ジョイスティック21の下側に配置されたガイド板27に、略半球状の凹面で構成されるガイド面27aを形成しても良い。このガイド面27aには、その中心Qを通る4本のガイド溝34A〜34Dが設けられている。これら各ガイド溝34A〜34Dは、上記各直線L1〜L4に対応して設けられており、該各ガイド溝34A〜34Dに上記第1ジョイスティック21の操作レバー部22の下端に進退可能に設けられたスライド係合子26が係入することで、該第1ジョイスティック21に操作方向性が付与され、的確な操作が可能となる。上記第1ジョイスティック21の旋回方向への操作時には、上記スライド係合子26は上記各ガイド溝34A〜34Dを乗り越えて移動することになる。
【0042】
また、図6に示すように、上記伸縮ブーム4の伸縮単独操作に対応する上記直線L1と、上記ウィンチ8の巻上・巻下単独操作に対応する上記直線L2に沿ってそれぞれ所定幅の不感帯32,33を設けることもできる。これらの不感帯32,33は、上記第1ジョイスティック21を伸縮単独操作する場合、及び巻上・巻下単独操作する場合において、例えば、伸縮単独操作時に第1ジョイスティック21の僅かな縦揺れによって、本来予定しないウィンチ8の巻上・巻下動が付加されて伸縮ブーム4単独での伸縮動が阻害されるとか、逆に、巻上・巻下単独操作時に第1ジョイスティック21の僅かな横揺れによって、本来予定しない伸縮ブーム4の伸縮動が付加されてウィンチ8単独での巻上・巻下動が阻害されるという事態の発生を未然に回避するためのものであって、上記不感帯32の領域内では上記ウィンチ8の巻上・巻下操作が無効とされ、上記不感帯33では上記伸縮ブーム4の伸縮操作が無効とされる。
【0043】
「第2の配置パターン」
第2の配置パターンは、図7に示すパターンである。この第2の配置パターンは、上記第1の配置パターンを基本とするものであって、これと異なる点は、上記第1の配置パターンでは水平操作に係る上記直線L3上の第5凹部31E及び第7凹部31Gを共に上記規制用開口30の角部で構成していたのに対して、該各角部に追加的に凹部を設けてこれを第5凹部31E及び第7凹部31Gとしたものである。係る構成とした場合には、上記第5凹部31E及び第7凹部31Gによる上記第1ジョイスティック21の操作レバー部22に対する固定機能が、上記角部を凹部として利用する場合よりも優れることから、水平操作時における操作の的確さが良好となる。
【0044】
「第3の配置パターン」
第3の配置パターンは、図8に示すパターンである。この第3の配置パターンは、上記第1の配置パターン及び第2の配置パターンにおいては、共に上記規制用開口30を正方形状の開口で構成していたのに対して、この第3の配置パターンでは該規制用開口30を、正方形の四つの角部のそれぞれを斜めに切り落として斜辺部とした八角形状に形成したものであって、8個の外周縁30A〜30Hを備えている。
【0045】
そして、中心Qを挟んで対向する二組の外周縁、即ち、第1外周縁30Aと第3外周縁30C、及び第2外周縁30Bと第4外周縁30Dのうち、前者側には伸縮操作に係る第1凹部31Aと第3凹部31Cを、後者側には巻上・巻下操作に係る第2凹部31Bと第4凹部31Dを設けた点は上記第1及び第2の配置パターンの場合と同様である。しかし、この第3の配置パターンでは、水平操作に係る第5凹部31Eと第7凹部31Gを、対角線状の直線L3上に位置する角部で構成し、また平衡操作に係る第6凹部31Fと第8凹部31Hを、対角線状の直線L4上に位置する角部で構成しており、この点が上記第1、第2の配置パターンと異なっている。
【0046】
なお、これまで説明した実施形態では、上記操作部20には適宜の速度調整手段(図示省略)が付設されており、上記操作部20における各ジョイスティック21,23の操作方向及び操作量(傾倒量)に基づいて設定される上記伸縮用シリンダ11と上記ウィンチ8の操作比率と、上記速度調整手段の設定速度に基づいて、上記伸縮用シリンダ11と起伏用シリンダ12の出力が決定されるようになっている(これについては、後述する)。
【0047】
B−2:制御系の構成
次に、上記操作部20の操作に基づく制御系の構成を、上記第1の配置パターンを例にとって具体的に説明する。
【0048】
先ず、図6に示す上記第1の配置パターンにおける第1ジョイスティック21の操作と制御出力の相関関係を説明する。
【0049】
「伸縮用シリンダ11又はウィンチ8の単独操作」
上記第1ジョイスティック21が上記直線L1に沿って傾動操作される場合(即ち、伸縮用シリンダ11の単独操作時)は、中心Q(中立点)から第1ジョイスティック21を右方向へ傾動させると、その傾動量の増加に伴って上記伸縮用シリンダ11の伸長操作量が零から次第に増加し、上記第1係止部31Aによって傾動が規制された時点で最大伸長操作量(100%)となる。逆に、上記第1ジョイスティック21を中心Q(中立点)から左方向へ傾動させると、その傾動量の増加に伴って上記伸縮用シリンダ11の縮小操作量が零から次第に増加し、上記第3係止部31Cによって傾動が規制された時点で最大縮小操作量(100%)となる。
【0050】
また、上記第1ジョイスティック21が上記直線L2に沿って傾動操作される場合(即ち、上記ウィンチ8の単独操作時)は、中心Q(中立点)から第1ジョイスティック21を上方向(前方側)へ傾動させると、その傾動量の増加に伴って上記ウィンチ8の巻上操作量が零から次第に増加し、上記第2係止部31Bによって傾動が規制された時点で最大巻上操作量(100%)となる。逆に、上記第1ジョイスティック21を中心Q(中立点)から下方向(手前側)へ傾動させると、その傾動量の増加に伴って上記ウィンチ8の巻下操作量が零から次第に増加し、上記第4係止部31Dによって傾動が規制された時点で最大巻下操作量(100%)となる。
【0051】
ここで、この単独操作における伸縮用シリンダ11及びウィンチ8の速度調整について説明する。例えば、伸縮用シリンダ11の単独操作にあっては、上記速度調整手段を最大速度位置に設定した状態で、上記第1ジョイスティック21を上記第1凹部31A又は第3凹部31Cに押し当て(即ち、第1ジョイスティック21を最大傾動量(100%)に設定し)、このときの上記伸縮用シリンダ11の作動速度を最大速度[Vmax]と規定する。そして、上記速度調整手段の設定量が最大速度[Vmax]に対してVa%であれば、上記伸縮用シリンダ11の作動速度は、「[Vmax]×Va×(実傾動量/最大傾動量)」
として演算により求められる。
【0052】
例えば、第1ジョイスティック21の傾動量が[50%」である場合には、いくら速度調整手段を最大速度位置(100%位置)に設定したとしても、伸縮用シリンダ11の作動速度は「Vmax/2」となり、逆に第1ジョイスティック21の傾動量が[100%」であっても、上記速度調整手段が中間速度位置(例えば、50%位置)に設定されれば、伸縮用シリンダ11の作動速度は「Vmax/2」とされる。
【0053】
なお、上記伸縮操作側に不感帯32を、ウィンチ操作側に不感帯33を、それぞれ設ければ、上記伸縮用シリンダ11の単独操作においては上記ウィンチ8に対する操作要素は関与せず、また、上記ウィンチ8の単独操作においては上記伸縮用シリンダ11に対する操作要素は関与せず、これら何れの操作においても、信頼性の高い単独操作を実現できる。
【0054】
「伸縮用シリンダ11及びウィンチ8の複合操作」
(a) 旋回操作角度「0°〜90°」の範囲内での複合操作
この範囲内では、上記伸縮用シリンダ11の伸長操作と上記ウィンチ8の巻上操作が同時に行われる。第1ジョイスティック21が上記第1係止部31Aから上記第1外周縁30Aに沿って旋回操作角度増加側へ操作される場合には、伸長操作量「100%」且つ巻上操作量「0%」の状態から、伸長操作量「100%」を維持したまま巻上操作量が「0%」から次第に増加して第1外周縁30Aと第2外周縁30Bの角部に達した時点で、伸長操作量「100%」且つ巻上操作量「100%」の状態となる。
【0055】
さらに、上記第1ジョイスティック21の回動操作が継続され、該第1ジョイスティック21が上記角部から上記第2外周縁30Bに沿って上記第2凹部31B側へ操作される場合には、伸長操作量「100%」且つ巻上操作量「100%」の状態から、巻上操作量「100%」を維持したまま、伸長操作量が「100%」から次第に減少して上記第2凹部31Bに達した時点で、伸長操作量「0%」且つ巻上操作量「100%」の状態となる。
【0056】
なお、旋回操作角度「180°〜270°」の範囲内での複合操作は、上述の旋回操作角度「0°〜90°」の範囲内での複合操作と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
以上の場合における傾動角度の変化状態を図10の(イ)に曲線「Lc1」で示している。また、この場合の伸縮操作量の変化状態を図10の(ロ)に実線曲線「La1」に、また巻上・巻下操作量の変化状態を図10の(ロ)に破線曲線「Lb1」に示している(旋回操作角度0°〜90°、180°〜270°の範囲を参照)。
【0058】
一方、上記第1ジョイスティック21を上記規制用開口30の外周縁に沿わせることなく、中間の傾動角度で回動操作する場合(例えば、図6の矩形線Pに沿って回動操作するような場合)は、(図10(イ)の線「Lc2」参照)、伸縮操作量及び巻上・巻下操作量は、外周縁に沿った操作の場合よりも全体的に減少したものとなる(図10(ロ)の線「La2」の対応角度範囲を参照)。
【0059】
(b) 旋回操作角度「90°〜180°」の範囲内での複合操作
この範囲内の複合操作は、その範囲内に水平移動操作と平行移動操作を含むことから、同じ複合操作であっても、上述の旋回操作角度「0°〜90°」の範囲内での複合操作とは異なった態様をとる。
【0060】
この角度範囲内では、伸縮操作量と巻上・巻下操作量の比率を水平移動及び平行移動が実現されるように設定する必要があり、しかもこの比率は伸縮操作量と巻上・巻下操作量の何れか一方の操作量を基準に他方の操作量を決めるのが便宜的であり、さらにこの範囲内での作動の急激な変化の発生を回避する必要もある。
【0061】
このような事情を考慮して、この実施形態では、図10(ロ)の旋回操作角度「90」°から旋回操作角度「180°」の範囲において、伸縮操作量は実線La1で示すように、上記第1ジョイスティック21を上記規制用開口30の第2外周縁30Bから第3外周縁30Cに沿わせて移動させた場合における伸縮量をそのまま採用する一方、巻上・巻下操作量については、伸縮操作量との間に所定の比率をもつように旋回操作角度「90°」から「180°」まで滑らかに曲線を描いて変化するように設定している。そして、この場合、水平移動に対応する角度位置では、水平移動が実現できる比率に、平行移動に対応する角度位置では平行移動が実現できる比率に、それぞれ設定される。
【0062】
この操作量の比率の設定手法については後述するが、この比率は上記伸縮ブーム4の起伏角に対応して変化することは既述のとおりである。また、伸縮ブーム4の起伏角が同じであっても、フック7を吊下支持するワイヤロープ6のシーブへの掛け数によっても変化する。即ち、掛け数によって、ワイヤロープ6の巻き取り長さとフック7の移動量の関係が変化する。従って、実際的には、図10に示すような制御データは起伏角毎に、またワイヤー掛け数毎に用意されることになる。
【0063】
ここで、水平移動及び平行移動のそれぞれにおける伸縮操作量と巻上・巻下操作量の比率の設定手法について説明する。上記比率は、基本的には上記伸縮ブーム4と上記フック7との相関関係から幾何学的に設定される。例えば、水平移動においては、伸縮ブーム4の伸縮動に伴うブーム先端高さの変化量と、ウィンチ8の巻上・巻下操作に伴う上記フック7の高さの変化量が常時同一となるように、伸縮操作量と巻上・巻下操作量の比率が幾何学的に決定される。この場合、上記伸縮ブーム4の起伏角とワイヤロープ6の掛け数が加味されることは言うまでも無い。
【0064】
例えば、上記幾何学的手法によって水平移動時の伸縮移動量「B1」と巻上・巻下移動量「A1」の比率「A1/B1」が求められた場合、ジョイスティック21の傾動量がMAXのとき(図10(イ)の旋回操作角度135°における最大傾動量のとき、即ち、ジョイスティック21が図6の第5凹部31Eに位置させたとき)に、この比率「A1/B1」を実現するための伸縮操作量「B1a」と巻上・巻下操作量「A1a」の比率「A1a/B1a」が図10(ロ)に示すように決定される。
【0065】
このようにして決定された伸縮操作量「B1a」と巻上・巻下操作量「A1a」の下では、上記伸縮用シリンダ11と上記ウィンチ8の速度は上記速度調整手段の設定量によって決定される。例えば、上記速度調整手段の設定量が最大速度[Vmax]に対してVa%であれば、伸縮用シリンダ11の作動速度「Va1」は、
Va1=Vmax×Va/100×B1a
として求められる。また、ウィンチ8の作動速度「Va2」は、
Va2=Vmax×Va/100×A1a
として求められる。
【0066】
従って、上記ジョイスティック21を図6の第5凹部31Eに位置させると、上記伸縮用シリンダ11が上記速度調整手段の設定量に基づく作動速度「Va1」で、上記ウィンチ8が上記速度調整手段の設定量に基づく作動速度「Va2」で、それぞれ作動し、上記フック7の水平移動が実現される。この伸縮、巻上・巻下操作量の設定手法によると、上述のガイド面27aにガイド溝34a〜34Dが無くとも、上記ジョイスティック21を第5凹部31Eで固定して確実な水平移動を行なうことができる。しかも、上記ジョイスティック21の第5凹部31Eが凹状であって上記ジョイスティック21の位置設定が的確に行なわれ且つ安定的に保持されることから、確実な水平操作と速度制御が実現されることになる。
【0067】
なお、旋回操作角度「270°〜360°」の範囲内での複合操作は、上述の旋回操作角度「90°〜180°」の範囲内での複合操作の場合と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0068】
また、平行移動における速度制御は、上述の水平移動における速度制御の場合と同様であるので、該水平移動における速度制御に関する該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0069】
これらの制御系の機能を図9に示している。操作選択レバー40(即ち、上記第1ジョイスティック21)から、その傾動方向(即ち、伸縮用シリンダ11とウィンチ8の作動比率に関する信号)及び傾動量(即ち、伸縮用シリンダ11とウィンチ8の作動速度に関する信号)が演算手段42に入力される。この演算手段42では、起伏角度検出器43からの起伏角度に関する信号と掛数設定器からのワイヤロープ6の掛け数に関する信号に基づいて、上記操作選択レバー40からの入力情報を補正して、その補正後の操作量に関する信号を制御手段45に出力する。上記制御手段45では、上記演算手段42からの操作量に関する情報と、上記速度調整手段41からの設定速度に関する情報を受けて、伸縮駆動用アクチュエータ46(即ち、上記伸縮用シリンダ11)とウィンチ駆動用アクチュエータ(即ち、上記ウィンチ8の油圧モータ)を作動させるためのバルブ操作量を求め、これを該各アクチュエータに出力するものである。
【0070】
以上のように構成された操作装置を備えることで、上記クレーン車1においては、伸縮又は巻上・巻下の単独操作は勿論のこと、伸縮又は巻上・巻下の複合操作においても簡易且つ的確なクレーン操作が実現され、特に水平移動及び平行移動での複合操作においてはその効果が顕著なものとなる。
【0071】
II:第2の実施形態
図11には、本願発明の第2の実施形態に係る操作装置を備えたクレーン車1を示している。この実施形態では、上記伸縮ブーム4の起伏操作と上記ウィンチ8の巻上・巻下操作を連動させて吊荷の水平移動(水平送り出しと水平引き込み)を簡易且つ的確に実現せんとするものであって、その基本的な考え方は上記第1の実施形態の場合と同様である。従って、ここでは、上記第1の実施形態と同様な構成及び作用効果については第1の実施形態の該当説明を援用し、ここではこの第2の実施形態に特有の構成、具体的には、第1ジョイスティック21の操作形態についてのみ説明する。
【0072】
この第2の実施形態に係るクレーン車1においても、上記第1の実施形態の場合と同様に、操作部に一対のジョイスティックを備えるが、ここでは上述のように、伸縮ブーム4の起伏操作と上記ウィンチ8の巻上・巻下操作を連動させるものであることから、図12に示すように、第1ジョイスティック21には伸縮ブーム4の起伏操作とウィンチ8の巻上・巻下操作が直交方向にそれぞれ割り当てられている。
【0073】
即ち、この第2の実施形態では、図12に示すように、上記第1ジョイスティック21に付設された四角形上の規制用開口30に、その中心Qを通って四つの各外周縁30A〜30Dのそれぞれに垂直な二本の直線L1,L2と該各外周縁30A〜30Dとの四つの交点部分に、それぞれ円弧状の底面をもって外周縁上に拡開状に開口する凹部31A〜31Dを設け、これら各凹部31A〜31D凹部31A〜31Dを、上記第1ジョイスティック21を固定保持する固定部として機能させるとともに、さらに、上記中心Qを通る対角上の直線L3上に位置する一対の角部を凹部31E,31Fとして機能させるようにしている。
【0074】
そして、上記直線L1に沿う操作方向を上記伸縮ブーム4の起伏の単独操作方向とし、また、上記直線L2に沿う操作方向をウィンチ8の巻上・巻下の単独操作方向としている。さらに、上記直線L3に沿う操作方向を上記フック7の水平方向への送り出し・引き戻し(即ち、水平移動)を実現するための操作方向とし、この直線L3上での操作では伸縮ブーム4の伸縮動と上記ウィンチ8の巻上・巻下動が所定の比率で連動されるようにしている。
【0075】
このような構成としたことで、オペレータは、第1ジョイスティック21を上記第5凹部31Eに当ててこれを固定することで上記フック7の水平送り出しを、また第1ジョイスティック21を上記第6凹部31Fに当ててこれを固定することで上記フック7の水平引き込みを、それぞれ簡易且つ的確に行なうことができるものである。
【0076】
III:第3の実施形態
図13には、本願発明の第3の実施形態に係る操作装置を備えた高所作業車10を示している。この高所作業車10は、車両2上に旋回可能に搭載された旋回台3に、内蔵された伸縮用シリンダ11によって伸縮駆動される伸縮ブーム4を取付けるとともに、該伸縮ブーム4を上記旋回台3との間に配置した起伏用シリンダ12によって起伏駆動させるようになっている。そして、上記伸縮ブーム4の先端にはバケット9が取付けられている。このバケット9は、図示しないレベリング機構によって常時水平に姿勢保持されるように構成されている。
【0077】
この高所作業車10では、上記伸縮ブーム4の伸縮操作と起伏操作が単独で、あるいは相互に関連して行われることで、上記バケット9を三次元上の任意位置に移動させることができるもので、特に上記伸縮ブーム4の伸縮及び起伏動を連動させることで上記バケット9を水平方向へ移動させる(即ち、水平移動)ことと、鉛直方向へ移動させる(即ち、垂直移動)ことを主たる目的としているが、その基本的な考え方は上記第1の実施形態の場合と同様である。従って、ここでは、上記第1の実施形態と同様な構成及び作用効果については該第1の実施形態の該当説明を援用し、ここではこの第3の実施形態に特有の構成、具体的には、第1ジョイスティック21の操作形態についてのみ説明する。
【0078】
上記「水平移動」の水平引き込み操作では上記伸縮ブーム4の縮小操作と起仰操作を連動させ、水平送り出し操作では上記伸縮ブーム4の伸長操作と倒伏操作を連動させることになる。また、上記「垂直移動」の垂直上げ操作では上記伸縮ブーム4の伸長操作と起仰操作を連動させ、垂直下げ操作では上記伸縮ブーム4の縮小操作と倒伏操作を連動させることになる。
【0079】
この第3の実施形態に係る高所作業車10においても、上記第1及び第2の実施形態のクレーン車1の場合と同様に、操作部に一対のジョイスティックを備えるが、ここでは上述のように、伸縮ブーム4の起伏操作と伸縮操作を連動させるものであることから、図14に示すように、第1ジョイスティック21には伸縮ブーム4の伸縮操作と起伏操作が直交方向にそれぞれ割り当てられている。
【0080】
即ち、図14に示すように、上記第1ジョイスティック21に付設された四角形上の規制用開口30に、その中心Qを通って四つの各外周縁30A〜30Dのそれぞれに垂直な二本の直線L1,L2と該各外周縁30A〜30Dとの四つの交点部分に、それぞれ円弧状の底面をもって外周縁上に拡開状に開口する凹部31A〜31Dを設け、これら各凹部31A〜31D凹部31A〜31Dを、上記第1ジョイスティック21を固定保持する固定部として機能させるとともに、さらに、上記中心Qを通る二つの対角上の直線L3、L4上に位置する一対二組の角部をもそれぞれ凹部31E〜31Gとして機能させるようにしている。
【0081】
そして、上記直線L1に沿う操作方向を上記伸縮ブーム4の伸縮の単独操作方向とし、上記直線L2に沿う操作方向を上記伸縮ブーム4の起仰の単独操作方向としている。さらに、上記直線L3に沿う操作方向をバケット9の水平移動の複合操作方向とし、この直線L3上での操作と上記直線L4上での操作においては、伸縮ブーム4の伸縮動と起伏動が所定の比率で連動される。
【0082】
このような構成としたことで、オペレータは、第1ジョイスティック21を上記第6凹部31Fに当ててこれを固定することで上記バケット9の水平送り出しを、また上記第8凹部31Hに当ててこれを固定することで上記バケット9の水平引き込みを、それぞれ簡易且つ的確に行なうことができる。
【0083】
また、オペレータは、第1ジョイスティック21を上記第5凹部31Eに当ててこれを固定することで上記バケット9の垂直上げを、また上記第7凹部31Gに当ててこれを固定することで上記バケット9の垂直下げを、それぞれ簡易且つ的確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本願発明の第1の実施の形態に係る操作装置を備えたクレーン車の水平移動状態を示す全体図である。
【図2】上記クレーン車の平行移動状態を示す全体図である。
【図3】クレーン車に備えられた操作部を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【図6】図4のVI−VI矢視図であって、第1ジョイスティックの第1の操作パターンの説明図である。
【図7】操作レバーの第2の操作パターンの説明図である。
【図8】操作レバーの第3の操作パターンの説明図である。
【図9】本願発明の操作装置を備えたクレーン車の制御ブロック図である。
【図10】ジョイスティックの操作特性図である。
【図11】本願発明の第2の実施の形態に係る操作装置を備えたクレーン車の水平移動状態を示す全体図である。
【図12】上記クレーン車における操作レバーの操作パターン説明図である。
【図13】本願発明の第3の実施の形態に係る操作装置を備えた高所作業車の動作状態を示す全体図である。
【図14】上記高所作業車における操作レバーの操作パターン説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 ・・クレーン車
2 ・・車両
3 ・・旋回台
4 ・・伸縮ブーム
5 ・・ブームヘッド
6 ・・ワイヤロープ
7 ・・フック
8 ・・ウィンチ
9 ・・バケット
10 ・・高所作業車
11 ・・伸縮用シリンダ
12 ・・起伏用シリンダ
14 ・・支持アーム
20 ・・操作部
21 ・・第1ジョイスティック
22 ・・操作レバー部
23 ・・第2ジョイスティック
24 ・・操作レバー部
25 ・・ボール軸受
26 ・・スライド係合子
27 ・・ガイド板
28 ・・可動範囲規制部材
30 ・・規制用開口
31 ・・係止部
32 ・・不感帯
33 ・・不感帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の駆動に係る二つのアクチュエータを同時に駆動させる複合操作を可能とした十字型のジョイスティックを備えた作業機の操作装置であって、
上記ジョイスティックの可動範囲内に、該ジョイスティックの操作を固定できる操作固定位置が設定され、該操作固定位置への上記ジョイスティックの操作固定状態において上記作業機に対する特定の操作が実行されるように構成したことを特徴とする作業機の操作装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記ジョイスティックには多角形状の開口を備えた可動範囲規制部材が該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設され、該開口は、その内周縁が上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能する一方、その角部が上記操作固定位置として機能するように構成されていることを特徴とする作業機の操作装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記ジョイスティックには開口を備えた可動範囲規制部材が該開口の内側に上記ジョイスティックを挿通させた状態で付設され、該開口の内周縁が上記ジョイスティックの可動範囲規制部として機能する一方、該内周縁上に凹部を設けて該凹部を上記操作固定位置として機能するように構成されていることを特徴とする作業機の操作装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記作業機が、伸縮及び起伏が可能なブームと該ブームの先端から吊り下げられたフックの巻上及び巻下を行なうウィンチを備え、
上記特定の操作が、上記フックを水平方向へ移動させるための、又は上記フックを上記ブームとの上下方向の間隔を一定に維持して移動させるための上記複合操作であることを特徴とする作業機の操作装置。
【請求項5】
請求項2又は3において、
上記作業機が伸縮及び起伏が可能なブームを備え、
上記特定の操作が、上記ブームの先端部を水平方向へ移動させるための、又は上記ブームの先端部を鉛直方向へ移動させるための上記複合操作であることを特徴とする作業機の操作装置。
【請求項6】
請求項3において、
上記特定の操作が、上記各アクチュエータの単独操作を含むことを特徴とする作業機の操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−100389(P2010−100389A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272653(P2008−272653)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】