説明

作業機械のエンジン回転数制御装置

【課題】余分な燃料の消費を抑えることができ、また作業モードの変更を容易に行うことができる作業機械のエンジン回転数制御装置の提供。
【解決手段】エコノミーモード、及びエコノミーモードの回転数より高回転数の高負荷モードのうちいずれか1つを選択する作業モード切替スイッチ12と、この作業モード切替スイッチ12で選択された作業モードをエンジン回転数演算部10に出力する作業モード制御部13とを備え、エンジン回転数演算部10は、選択された作業モードの回転数を目標回転数として出力するものであり、作業モード制御部13は、油圧ショベル1の始動時に作業モード切替スイッチ12でどの作業モードが選択されていてもエコノミーモードをエンジン回転数演算部10に出力する始動時処理を行う始動時処理手段13aを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に備えられ、エンジンの回転数を制御する作業機械のエンジン回転数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械は、搭載されたエンジンの回転数を制御するために作業機械のエンジン回転数制御装置を備えている。この種のエンジン回転数制御装置は、エンジンの目標回転数を演算するエンジンコントローラ(エンジン回転数演算部)と、複数の作業モードのそれぞれに応じた回転数を記憶する作業モード記憶部と、これら作業モードのうちいずれか1つを選択する作業モード切替スイッチ(作業モード切替手段)と、選択された作業モードをエンジンコントローラに出力する作業モード制御部とを備えている。
【0003】
また、作業モードには軽負荷作業時のモードであるエコノミーモードと、このエコノミーモードの回転数より高回転数の高負荷モードとがあり、例えば、作業内容が、軽掘削等の作業である場合にエコノミーモードを使用し、通常掘削や根起こし又は深部掘削その他の重掘削の作業である場合に高負荷モードを使用している。
【0004】
この種の作業機械を操作するオペレータが作業モード切替スイッチで作業モードをエコノミーモードあるいは高負荷モードを選択すると、作業モード制御部は選択された作業モードをエンジンコントローラに出力する。この出力を受信したエンジンコントローラは、作業モード制御部から出力された作業モードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する。
【0005】
このように、オペレータが作業モード切替スイッチで作業内容に適した作業モードを自由に選択することで、エンジンの回転数を制御し、余分に消費する燃料を節約することができる。しかし、実際の作業現場において作業モードの選択をオペレータに一任すると、たとえ作業内容が軽負荷作業であっても、オペレータがエコノミーモードよりも作業性の高い高負荷モードに作業モードを自由に変更して使用する虞がある。
【0006】
そこで、作業機械の作業中に度重なる作業モードの変更を制限するために、作業モード切替スイッチで選択された作業モードの変更を制限あるいは許可する変更管理手段を備えた作業機械のエンジン回転数制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−226255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された作業機械のエンジン回転数制御装置では、一度作業モードの変更が制限されると、作業機械を使用するときに前回使用した作業モードが継続される。そのため、前回の作業モードが高負荷モードで制限されたまま作業が終了し、今回の作業内容が軽負荷作業である場合に、作業機械の開始時に高負荷モードにおけるエンジンの回転数にエンジンが制御されるので、余分な燃料を消費し、経済性が低いという問題があった。また、前回の作業モードがエコノミーモードで制限されたまま作業が終了し、今回の作業内容が高負荷作業である場合に、高負荷モードを使用する度に作業機械の管理者等に作業モードの変更の許可を得、変更管理手段が作業モードの変更を制限しないように変更管理手段を設定する必要がある。そのため、作業機械の管理者等が不在のときに作業モードを変更できない虞があると共に、変更管理手段の設定が煩雑となって利便性が低いという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、余分な燃料の消費を抑えることができ、また作業モードの変更を容易に行うことができる作業機械のエンジン回転数制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の作業機械のエンジン回転数制御装置は、エンジンを有する作業機械に設けられ、前記エンジンの目標回転数を演算するエンジン回転数演算部と、軽負荷作業時のモードであるエコノミーモード、及びこのエコノミーモードの回転数より高回転数の高負荷モードとを含む複数の作業モードのそれぞれに応じた回転数を記憶する作業モード記憶部と、前記複数の作業モードのうちいずれか1つを選択する作業モード切替手段と、この作業モード切替手段で選択された作業モードを前記エンジン回転数演算部に出力する作業モード制御部とを備え、前記エンジン回転数演算部は、前記作業モード制御部から出力された作業モードに応じた前記エンジンの回転数を前記作業モード記憶部から読み出し、その読み出した前記エンジンの回転数を前記目標回転数として出力する作業機械のエンジン回転数制御装置において、前記作業モード制御部は、前記作業機械の始動時に前記作業モード切替手段でどのような前記作業モードが選択されていても前記エコノミーモードを前記エンジン回転数演算部に出力する始動時処理を行う始動時処理手段を含むことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明では、前回の作業モードが高負荷モードで作業が終了し、今回の作業内容が軽負荷作業である場合に、自動的に作業内容に適したエコノミーモードになるので余分な燃料を消費することがない。また、前回の作業モードがエコノミーモードで制限されたまま作業が終了し、今回の作業内容が高負荷作業である場合に、作業機械の始動後に作業モード切替スイッチでエコノミーモードに保たれている状態から高負荷モードに容易に作業モードを変更することができるので、作業機械の管理者等に作業モードの変更の許可を得る必要も煩雑な設定をする必要もない。
【0012】
また、本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置では、前記発明において、作業機械は、現在の作業モードを表示可能なモニタ表示装置を備え、作業モード制御部は、作業機械の始動時に作業モード切替手段によってエコノミーモード以外の作業モードが選択されている場合、エンジンの回転数がエコノミーモードの回転数で制御されている旨をモニタ表示装置に表示させる処理を行う表示処理手段を含むことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明では、オペレータが作業モード切替手段でエコノミーモード以外の作業モードを選択していても、モニタ表示装置によって現在の作業モードを知ることができるので、オペレータが違和感を感じたり、あるいは作業機械の故障を懸念することを防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置では、前記発明において、作業モード制御部に接続され、始動時処理手段による始動時処理を有効あるいは無効とする信号を出力する外部メンテナンス装置を設けたことを特徴としている。このように構成すると、オペレータが予め作業内容が高負荷作業で開始することが分かっている場合に、外部メンテナンス装置によって無効とする信号を出力させておくことにより、作業機械の始動時から高負荷モードを使用することができるので、利便性を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置では、前記発明において、作業モード制御部は、高負荷モードによる作業が実施されている状態から作業機械が停止し、その停止したときから一定時間が経過する前に作業機械が始動したとき、始動時処理手段による始動時処理を無効にして、作業モードとして高負荷モードをエンジン回転数演算部に出力する処理を行う無効処理手段を含み、外部メンテナンス装置は、前記一定時間を可変に設定可能な設定手段を含むことを特徴としている。このように構成すると、オペレータが高負荷モードで作業中に一度作業を中断しても一定時間内に作業機械を始動すれば、再び高負荷モードで作業することができるので、作業の継続性を確保できる。また、外部メンテナンス装置により作業に適した一定時間を容易に設定できる。
【0016】
また、本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置では、前記発明において、前記作業機械は、前記エンジンで駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向制御弁と、この方向制御弁を切替操作する操作装置とを有し、前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、この吐出圧検出手段で実際に実施されている作業内容が上記いずれの作業モードに対応するものであるかを判断し、その判断された作業モードを前記作業モード制御部に出力する作業負荷演算部とを備え、前記作業モード制御部は、前記作業負荷演算部から前記高負荷モードが出力されたとき、前記始動時処理手段による前記始動時処理を停止させ、前記高負荷モードを前記エンジン回転数演算部に出力する停止処理を行う停止処理手段を含むことを特徴としている。このように構成すると、作業モード切替スイッチで選択した作業モードに関わらず、停止処理手段による停止処理によって自動的に作業負荷に適した作業モードに変更されるので、操作性を高めることができると共に、消費燃料を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の作業機械のエンジン回転数制御装置は、作業モード制御部は、作業機械の始動時に作業モード切替手段でどのような作業モードが選択されていてもエコノミーモードをエンジン回転数演算部に出力する始動時処理を行う始動時処理手段を含んでいるので、前回の作業モードが高負荷モードで作業が終了し、今回の作業内容が軽負荷作業である場合に、自動的に作業内容に適したエコノミーモードになるので余分な燃料を消費することがない。これにより、従来に比べて経済性を高めることができる。また、前回の作業モードがエコノミーモードで制限されたまま作業が終了し、今回の作業内容が高負荷作業である場合に、作業機械の始動後に作業モード切替スイッチでエコノミーモードから高負荷モードに容易に作業モードを変更することができるので、作業機械の管理者等に作業モードの変更の許可を得る必要も煩雑な設定をする必要もない。これにより、従来に比べて利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルに備えられる本実施形態に係るエンジン回転数制御装置の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に備えられる作業モード制御部における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る作業機械のエンジン回転数制御装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図、図2は図1に示す油圧ショベルに備えられる本実施形態に係るエンジン回転数制御装置の構成を示す図である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る作業機械のエンジン回転数制御装置は、作業機械、例えば油圧ショベル1に適用される。この油圧ショベル1は、図1に示すように、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とから構成されている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0022】
図2に示すように、この一実施形態に係る作業機械のエンジン回転数制御装置は、エンジンルーム5に備えられた図示しないエンジンの目標回転数を演算するエンジン回転数演算部10と、複数の作業モード、例えば3つの作業モードのそれぞれに応じた回転数を記憶する作業モード記憶部11と、これら3つの作業モードのうちいずれか1つを選択する作業モード切替手段、例えば作業モード切替スイッチ12と、選択された作業モードをエンジン回転数演算部10に出力する作業モード制御部13と、キャブ7に設けられ、作業モード制御部13からの出力によって現在動作中の作業モードを視認できるモニタ表示装置16とを備えている。
【0023】
上記の作業モードには軽掘削作業、ならし作業等の軽負荷作業時のモードであるエコノミーモードと、このエコノミーモードより高回転数の高負荷モードとがあり、高負荷モードには通常掘削等の作業に用いる通常モードと、この通常モードよりも高回転数であって根起こしや深部掘削等の重掘削の作業に用いる重掘削モードとがある。また、エンジン回転数演算部10にはこれら3つの各作業モードにおいてエンジンの回転数を調整できるエンジン回転数調整ダイヤル14が接続されている。
【0024】
一方、油圧ショベル1は、同図2に示すように、エンジンで駆動される油圧ポンプ20と、この油圧ポンプ20から吐出される圧油によって作動するブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータ、走行モータ等の図示しない油圧アクチュエータと、油圧ポンプ20から油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向制御弁21と、この方向制御弁21を切替操作する操作装置22とを備えている。そして、油圧ポンプ20の吐出圧を検出する吐出圧検出手段18と、操作装置22の操作量を検出する操作量検出手段19とを備えている。この操作量検出手段19は、操作装置22の操作に伴ってパイロットポンプ25から出されるパイロット一次圧が減圧弁22aで減圧されて生成され、方向制御弁21を切り替える圧力として導かれるパイロット2次圧を検出するものである。すなわち、操作量検出手段19によって検出された操作装置22の操作量に応じたパイロット二次圧の値、つまり操作量が後述の作業負荷演算部17に出力されるようになっている。
【0025】
さらに、本実施形態に係る作業機械のエンジン回転数制御装置は、これらの吐出圧検出手段18で検出された油圧ポンプ20の吐出圧と操作量検出手段19で検出された操作量とに基づいて実際に実施されている作業内容が上記いずれの作業モードに対応するものであるかを判断し、その判断された作業モードを作業モード制御部13に出力する作業負荷演算部17とを備えている。この作業負荷演算部17は操作装置22の操作量が所定量より大きく、かつ吐出圧検出手段18で検出された油圧ポンプ20の吐出圧が所定圧より大きいときに高負荷作業と判断する。
【0026】
ここで、作業モード制御部13は、始動時処理手段13a、表示処理手段13b、無効処理手段13c、及び停止処理手段13dの4つの処理手段を備えている。以下、順にこれら4つの処理手段について説明する。
【0027】
始動時処理手段13aは、油圧ショベル1に電源を入れて始動させると、このとき作業モード切替スイッチ12で3つのモードのうちどの作業モードが選択されていても、作業モード制御部13がエコノミーモードをエンジン回転数演算部10に出力する始動時処理を行う処理手段である。
【0028】
表示処理手段13bは、始動時処理手段13aによる始動時処理が有効である場合に、油圧ショベル1に電源を入れて始動させると、このとき作業モード切替スイッチ12によってエコノミーモード以外の通常モードあるいは重掘削モードが選択されていても、作業モード制御部13が現実に実施されるエコノミーモードの回転数でエンジンの回転数が制御されている旨をモニタ表示装置16に表示させる処理を行う処理手段である。
【0029】
無効処理手段13cは、油圧ショベル1のエンジンの回転数が高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードの回転数で作業が実施されている状態から電源を切ることによって油圧ショベル1を停止させ、その油圧ショベル1が停止した時から予め定められた一定時間Aが経過する前に電源を入れることによって油圧ショベル1を再び始動させたとき、作業モード制御部13が上述した始動時処理手段13aによる始動時処理を無効にして、作業モードとして高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードをエンジン回転数演算部10に出力する処理を行う処理手段である。
【0030】
停止処理手段13dは、始動時処理手段13aによる始動時処理が有効である場合に、作業負荷演算部17から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードが出力されたとき、作業モード制御部13が始動時処理手段13aによる始動時処理を停止させ、高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードをエンジン回転数演算部10に出力する停止処理を行う処理手段である。
【0031】
また、作業モード制御部13には、始動時処理手段13aによる始動時処理を有効あるいは無効にする信号を出力する外部メンテナンス装置15が適宜接続される。この外部メンテナンス装置15はエンジン始動時のエコノミーモードを無効にする前述した一定時間Aを可変に設定可能な設定手段を含んでいる。
【0032】
以下、このように構成した本実施形態に係る作業機械のエンジン回転数制御装置の動作について説明する。
【0033】
図3は本実施形態に備えられる作業モード制御部における処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、電源を入れて油圧ショベル1を始動させると、作業モード制御部13が始動時処理手段13aによる始動時処理が有効あるいは無効であるかどうか判断する(S1)。始動時処理手段13aによる始動時処理が有効であれば、作業モード制御部13が作業モード切替スイッチ12からの作業モードの出力から作業モード切替スイッチ12がエコノミーモード以外の高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードであるかどうか判断する(S2)。
【0035】
作業モード切替スイッチ12がエコノミーモード以外の高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードであれば、作業モード制御部13が作業モード切替スイッチ12が他のモードに切り替えられていないかどうか判断する(S3)。例えば、油圧ショベル1が始動時処理によってすでにエコノミーモードで運転されている場合に、オペレータが作業モード切替スイッチ12で選択した作業モードと運転状態の相違に違和感を感じるときには、再度作業モード切替スイッチ12を操作して通常モードあるいは重掘削モードに切り替える等の操作が行われていないかどうかを作業モード制御部13が判断する。
【0036】
作業モード切替スイッチ12が他のモードに切り替えられていなければ、作業負荷演算部17が操作装置22の操作量が所定量以下で、かつ吐出圧検出手段18で検出された油圧ポンプ20の吐出圧が所定圧以下であるかどうかを判断する。すなわち、作業モード制御部13が作業負荷演算部17から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードの出力がなされているかどうかを判断する(S4)。
【0037】
操作装置22の操作量が所定量以下で、かつ油圧ポンプ20の吐出圧が所定圧以下であれば、すなわち作業モード制御部13が作業負荷演算部17から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードが出力されていなければ、作業モード制御部13は始動時処理手段13aによる始動時処理を行い、エコノミーモードをエンジン回転数演算部10に出力する。そして、エンジン回転数演算部10は、エコノミーモードのエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、この読み出したエンジンの回転数を目標回転数としてエンジンへ出力する(S5)。そして、作業モード制御部13は表示処理手段13bによる表示処理に基づいてエンジンの回転数がエコノミーモードの回転数で制御されている旨をモニタ表示装置16に表示させる(S6)。この状態において、エコノミーモードに対応するエンジンの回転数で例えばフロント作業機4による軽掘削作業等が実施される。
【0038】
一方、手順S1において始動時処理手段13aによる始動時処理が有効でなければ、作業モード制御部13は、作業モード切替スイッチ12で選択された作業モードをエンジン回転数演算部10に出力する。この出力を受信したエンジン回転数演算部10は、作業モード制御部13から出力された作業モードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する(S7)。
【0039】
また、手順S2において作業モード切替スイッチ12がエコノミーモード以外の高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードでなければ、すなわち作業モード切替スイッチ12がエコノミーモードであれば、作業モード切替スイッチ12で選択されたエコノミーモードをエンジン回転数演算部10に出力する。この出力を受信したエンジン回転数演算部10は、エコノミーモードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する(S7)。
【0040】
同様に、手順S3において作業モード切替スイッチ12が他のモードに切り替えられていれば、作業モード切替スイッチ12で選択された作業モードをエンジン回転数演算部10に出力する。この出力を受信したエンジン回転数演算部10は、作業モード制御部13から出力された作業モードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する(S7)。
【0041】
手順S4において操作装置22の操作量が所定量以下で、かつ油圧ポンプ20の吐出圧が所定圧以下でなければ、すなわち作業モード制御部13が作業負荷演算部17から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードが出力されていれば、作業モード制御部13は停止処理手段13dによる停止処理に基づいて始動時処理手段13aによる始動時処理を停止させ、作業モード切替スイッチ12で選択された高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードをエンジン回転数演算部10に出力する。そして、この出力を受信したエンジン回転数演算部10は、作業モード制御部13から出力された高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する(S7)。以下、手順S6または手順S7の処理を終えた後は再び手順S1から繰り返す。
【0042】
ここで、手順S3又は手順S4から手順S7へのステップが繰り返されている場合において、油圧ショベル1を運転するオペレータが一度作業を中断するために、油圧ショベル1の例えばフロント作業機4の駆動を停止させると、作業モード制御部13で計時処理が開始される。この計時処理された時間が前述の一定時間Aに至る前に再び例えばフロント作業機4が駆動したときには、作業モード制御部13は、無効処理手段13cによる無効処理を行い、始動時処理手段13aによる始動時処理を無効にし、それまでの作業で活用されていた高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードをエンジン回転数演算部10に出力する。そして、この出力を受信したエンジン回転数演算部10は、作業モード制御部13から出力された高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードに応じたエンジンの回転数を作業モード記憶部11から読み出し、その読み出したエンジンの回転数を目標回転数として出力することによって、エンジンの回転数を制御する。
【0043】
このように構成した本実施形態によれば、前回の作業モードが高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードで作業が終了し、今回の作業内容が軽負荷作業である場合に、手順S1から手順S6において作業モード制御部13は始動時処理手段13aによる始動時処理を行うことによって、エンジン回転数演算部10がエコノミーモードのエンジンの回転数を目標回転数としてエンジンを制御することができる。そのため、油圧ショベル1の始動時に自動的に作業内容に適したエコノミーモードになり、余分な燃料を消費することがないので、経済性を高めることができる。
【0044】
また、前回の作業モードがエコノミーモードで制限されたまま作業が終了し、今回の作業内容が高負荷作業である場合に、油圧ショベル1の始動後に手順S3において作業モード切替スイッチ12でエコノミーモード以外の作業モードに変更することによって、手順S7において作業モード制御部13は作業モード切替スイッチ12で選択された高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードをエンジン回転数演算部10に出力し、エンジン回転数演算部10は高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードのエンジンの回転数を目標回転数としてエンジンを制御することができる。そのため、エンジンの回転数がエコノミーモードに制御されている状態から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードに容易にエンジンの回転数を変更することができ、油圧ショベル1の管理者等に作業モードの変更の許可を得る必要も煩雑な設定をする必要もないので、利便性を向上することができる。
【0045】
また、手順S6において作業モード制御部13は表示処理手段13bによる表示処理によって、エンジンの回転数がエコノミーモードの回転数で制御されている旨をモニタ表示装置16に表示させることができるので、手順S5において作業モード制御部13が始動時処理手段13aによる始動時処理によってエンジンの回転数がエコノミーモードに制御されており、作業モード切替スイッチ12でエコノミーモード以外の高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードが選択されていても、モニタ表示装置16によって現在の状態がエコノミーモードであることを知ることができ、オペレータが違和感を感じたり、あるいは油圧ショベル1の故障を懸念することを防止することができる。
【0046】
また、作業モード制御部13は無効処理手段13cを備えているので、手順S3又は手順S4から手順S7へのステップが繰り返されている場合において、オペレータが高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードで作業中に一度作業を中断するために、油圧ショベル1の例えばフロント作業機4を停止させても、一定時間Aに至る前に作業を再開させたときには作業モード制御部13が無効処理手段13cによる無効処理を行うことによって、引続き高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードで作業を行うことができる。これにより、作業の継続性を確保できる。
【0047】
また、外部メンテナンス装置15は作業モード制御部13の始動時処理手段13aによる始動時処理を有効あるいは無効にすることができるので、外部メンテナンス装置15を作業モード制御部13に接続し、始動時処理手段13aによる始動時処理を無効にすることによって、手順S1において作業モード制御部13が始動時処理手段13aによる始動時処理が無効であると判断してそのまま手順S7へ進む。そのため、オペレータが予め作業内容が高負荷作業であることが分かっている場合に、油圧ショベル1の始動時から高負荷モードの通常モードあるいは重掘削モードを使用することができ、利便性を高めることができる。
【0048】
また、操作装置22の操作量が所定量より大きく、かつ油圧ポンプ20の吐出圧が所定圧より高い、すなわち作業負荷が大きいときには、作業負荷演算部17から出力される作業モードに応じて、作業モード制御部13は停止処理手段13dによる停止処理を行い、作業モード切替スイッチ12で選択された作業モードに関わらず、自動的に作業負荷に適した作業モードをエンジン回転数演算部10に出力するので、操作性を高めることができると共に、消費燃料を抑えることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、作業モード制御部13の始動時処理手段13aによる始動時処理を有効あるいは無効に変更する場合に、外部メンテナンス装置15を適宜接続する場合について説明したが、予めこの外部メンテナンス装置15を油圧ショベルのキャブ7等に設け、暗証番号等を入力することによって始動時処理手段13aによる始動時処理を有効あるいは無効に変更するようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、作業負荷演算部17が操作装置22の操作量が所定量より大きく、かつ吐出圧検出手段18で検出された油圧ポンプの吐出圧が所定圧より大きいときに高負荷作業と判断する場合について説明したが、作業負荷演算部17が操作装置22の操作量を見ずに、吐出圧検出手段18で検出された油圧ポンプ20の吐出圧のみで高負荷作業かどうかを判断しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧ショベル
2 走行体
3 旋回体
3a 旋回フレーム
4 フロント作業機
5 エンジンルーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
10 エンジン回転数演算部
11 作業モード記憶部
12 作業モード切替スイッチ(作業モード切替手段)
13 作業モード制御部
13a 始動時処理手段
13b 表示処理手段
13c 無効処理手段
13d 停止処理手段
14 エンジン回転数調整ダイヤル
15 外部メンテナンス装置
16 モニタ表示装置
17 作業負荷演算部
18 吐出圧検出手段
19 操作量検出手段
20 油圧ポンプ
21 方向制御弁
22 操作装置
22a 減圧弁
25 パイロットポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する作業機械に設けられ、
前記エンジンの目標回転数を演算するエンジン回転数演算部と、軽負荷作業時のモードであるエコノミーモード、及びこのエコノミーモードの回転数より高回転数の高負荷モードとを含む複数の作業モードのそれぞれに応じた回転数を記憶する作業モード記憶部と、前記複数の作業モードのうちいずれか1つを選択する作業モード切替手段と、この作業モード切替手段で選択された作業モードを前記エンジン回転数演算部に出力する作業モード制御部とを備え、前記エンジン回転数演算部は、前記作業モード制御部から出力された作業モードに応じた前記エンジンの回転数を前記作業モード記憶部から読み出し、その読み出した前記エンジンの回転数を前記目標回転数として出力する作業機械のエンジン回転数制御装置において、
前記作業モード制御部は、前記作業機械の始動時に前記作業モード切替手段でどのような前記作業モードが選択されていても前記エコノミーモードを前記エンジン回転数演算部に出力する始動時処理を行う始動時処理手段を含むことを特徴とする作業機械のエンジン回転数制御装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記作業機械は、現在の作業モードを表示可能なモニタ表示装置を備え、前記作業モード制御部は、前記作業機械の始動時に前記作業モード切替手段によって前記エコノミーモード以外の作業モードが選択されている場合、前記エンジンの回転数が前記エコノミーモードの回転数で制御されている旨を前記モニタ表示装置に表示させる処理を行う表示処理手段を含むことを特徴とする作業機械のエンジン回転数制御装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記作業モード制御部に接続され、前記始動時処理手段による前記始動時処理を有効あるいは無効とする信号を出力する外部メンテナンス装置を設けたことを特徴とする作業機械のエンジン回転数制御装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記作業モード制御部は、前記高負荷モードによる作業が実施されている状態から前記作業機械が停止し、その停止したときから一定時間が経過する前に前記作業機械が始動したとき、前記始動時処理手段による前記始動時処理を無効にして、作業モードとして前記高負荷モードを前記エンジン回転数演算部に出力する処理を行う無効処理手段を含み、
前記外部メンテナンス装置は、前記一定時間を可変に設定可能な設定手段を含むことを特徴とする作業機械のエンジン回転数制御装置。
【請求項5】
請求項1の記載において、前記作業機械は、前記エンジンで駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向制御弁と、この方向制御弁を切替操作する操作装置とを有し、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、この吐出圧検出手段で実際に実施されている作業内容が上記いずれの作業モードに対応するものであるかを判断し、その判断された作業モードを前記作業モード制御部に出力する作業負荷演算部とを備え、
前記作業モード制御部は、前記作業負荷演算部から前記高負荷モードが出力されたとき、前記始動時処理手段による前記始動時処理を停止させ、前記高負荷モードを前記エンジン回転数演算部に出力する停止処理を行う停止処理手段を含むことを特徴とする作業機械のエンジン回転数制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−163995(P2010−163995A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7513(P2009−7513)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】