説明

作業機械の駆動装置

【課題】作動効率を向上させつつ、エンジン出力の低下に伴うエンジンストールを確実に防止できる作業機械の駆動装置を提供する。
【解決手段】
エンジンEと、エンジンEにより駆動される油圧ポンプPと、油圧ポンプPから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータ33とを備えたパワーショベルの駆動装置であって、油圧ポンプPは、押しのけ容積が一定の固定容量型の油圧ポンプであり、エンジンEの出力軸38と接続されるとともに油圧ポンプPの入力軸39と接続され、入力されたエンジンEの回転駆動力を油圧ポンプPに伝達するトルクコンバータTを有し、トルクコンバータTは、油圧ポンプPの回転に応じてエンジンEの回転駆動トルクを変更して入力軸39に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータを作動させることにより作業を行うように構成された作業機械の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業機械の一例として、掘削作業を行うように構成されたパワーショベルがある。一般にパワーショベルは、走行装置、旋回装置、ブーム、アーム、バケット等の各々に対応させて設けられた油圧アクチュエータ(油圧モータや油圧シリンダ)に対して、油圧ポンプからの圧油を供給して駆動させることにより、掘削作業を行うように構成されている。このパワーショベルの駆動装置として、駆動源としてのエンジンに可変容量型の油圧ポンプを直結して搭載し、作業状態に応じて油圧ポンプの押しのけ容積を制御することにより圧油の吐出量を制御する構成が知られている。
【0003】
このように構成されるパワーショベルは、街中の工事現場で使用されることがある一方、場合によっては標高の高い高地で使用されることもある。例えば標高数千メートルに達する高地でパワーショベルを使用する場合、平地と比べて大気圧が低いためエンジンへの吸入空気の密度が低下し、エンジンに取り込まれる空気量が減少する。そのため、燃料噴射量と空気量との比率が適正値から外れ、結果としてエンジン出力(エンジン出力トルク)の低下を招くことがある。このようなときに、ポンプ駆動トルクがエンジン出力トルクを上回ってエンジンストールが発生する場合がある。
【0004】
このエンジン出力の低下に伴うエンジンストールの発生を防止するために、従来、例えば図6(a)に示すように、エンジン出力トルクが低下した場合であってもポンプ駆動トルクを下回ることがないように、予め高出力のエンジンを選定して搭載していた。また、従来の別の方法として、図6(b)に示すように、油圧ポンプの吐出量を下げてポンプ駆動トルクを強制的に低下させることにより、ポンプ駆動トルクがエンジン出力トルクを越えないように制御する方法も知られている。例えば特許文献1には、手動つまみ等を介して海抜高度をコントローラに入力し、入力された海抜高度に応じて油圧ポンプの吐出量を下げることにより、ポンプ駆動トルクを下げる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−132195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成で、例えば高地での作業において作業者が手動つまみの操作を忘れていた場合には、高地に位置していることがコントローラに入力されないため、ポンプ駆動トルクを低下させる制御がなされないこととなる。そのため、このような作業者の単純な操作ミスにより、直ちにエンジンストールが発生してしまうという課題があった。
【0007】
また、一般的な可変容量型の油圧ポンプの効率曲線を図6(c)に示している。このグラフから分かるように、例えば吐出圧力P1で駆動させる場合、容積比(最大容積に対する押しのけ容積の割合)が小さくなるにつれて効率が低下する傾向がある。そのため、容積比(押しのけ容積)を小さく制御した状態で可変容量型の油圧ポンプを駆動させると、駆動装置全体としての作動効率が低下しがちであるという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、作動効率を向上させつつ、エンジン出力の低下に伴うエンジンストールを確実に防止できる作業機械の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る作業機械の駆動装置は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備え、前記油圧ポンプは、押しのけ容積が一定の固定容量型の油圧ポンプであり、前記エンジンの出力軸と接続されるとともに前記油圧ポンプの入力軸と接続され、入力された前記エンジンの回転駆動力を前記油圧ポンプに伝達するトルクコンバータを有し、前記トルクコンバータは、前記油圧ポンプの回転に応じて前記エンジンの回転駆動トルクを変更して前記入力軸に伝達するように構成されている。
【0010】
また、本発明に係る作業機械の駆動装置は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備え、前記油圧ポンプは、押しのけ容積が一定の固定容量型の油圧ポンプであり、前記エンジンの出力軸と接続されるとともに前記油圧ポンプの入力軸と接続され、入力された前記エンジンの回転駆動力を前記油圧ポンプに伝達する無段階変速機を有し、前記無段階変速機が、前記出力軸と接続された駆動プーリと、前記入力軸と接続された従動プーリと、前記駆動プーリおよび前記従動プーリに巻き掛けられた無端状ベルトとを備え、前記油圧ポンプの回転に応じて前記駆動プーリおよび前記従動プーリのプーリ幅を変更して前記エンジンの回転駆動トルクを変更して前記入力軸に伝達するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る作業機械の駆動装置は、トルクコンバータ内において、油圧ポンプの駆動トルク(油圧ポンプの回転)に応じてエンジンの出力トルクが自動的に増幅されて伝達される構成となっているので、エンジン出力が低下するような使用環境においてもエンジンストールを確実に防止できる。また、従来は比較的作動効率の低い可変容量型の油圧ポンプを一般に用いていたが、これに対し本発明に係る作業機械の駆動装置では、可変容量型の油圧ポンプと比較して作動効率の高い固定容量型の油圧ポンプを用いている。そのため、可変容量型の油圧ポンプを用いる場合と比較して作動効率の低下を抑え、駆動装置全体としての作動効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る作業機械の駆動装置は、入力されたエンジンの回転駆動力を油圧ポンプに伝達する無段階変速機を有している。そのため、無段階変速機内において、油圧ポンプの駆動トルク(油圧ポンプの回転)に応じてエンジンの出力トルクが増幅されて伝達されるので、エンジン出力が低下するような使用環境においてもエンジンストールを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した作業機械の一例としてのパワーショベルの斜視図である。
【図2】本発明を適用した油圧ユニットのブロック図である。
【図3】エンジンの出力トルクとポンプの駆動トルクとを示したグラフである。
【図4】エンジンの出力特性を示したグラフである。
【図5】油圧ポンプの吐出量と吐出圧との関係を示したグラフである。
【図6】(a)および(b)は、従来の構成におけるエンジン出力トルクとポンプ駆動トルクとを示したグラフであり、(c)は、一般的な可変容量型の油圧ポンプの効率曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。まず、本発明に係る作業機械の駆動装置を適用した建設機械の一例としてのクローラ型のパワーショベル1(以下、パワーショベル1と称する)の全体構成について、図1および2を参照しながら説明する。
【0015】
このパワーショベル1は、平面視略H字状の走行台車4(車体)の左右に走行機構3,3が設けられて構成される走行装置2と、走行台車4の後部に上下に揺動自在に設けられたブレード9と、走行台車4の上部に旋回可能に設けられた旋回台11と、旋回台11の前部に設けられたショベル機構12と、旋回台11の上部に立設された運転者搭乗用の作業者キャビン15(車体)とから構成されている。
【0016】
走行装置2を構成する左右一対の走行機構3,3は、走行台車4の左右前部に設けられた駆動用スプロケットホイール5と、走行台車4の左右後部に設けられたアイドラホイール6との間に履帯7が巻き掛けられて構成される。駆動用スプロケットホイール5は、走行用油圧モータ(不図示)により回転駆動される。ブレード9は、油圧駆動式のブレードシリンダ(不図示)の作動により揺動される。旋回台11は、油圧モータからなる旋回モータ(不図示)により旋回動される。
【0017】
ショベル機構12は、旋回台11の前部に起伏動自在に枢結されたブーム21と、ブーム21の先端部にブーム21の起伏面内で上下に揺動自在に枢結されたアーム22と、アーム22の先端に上下で揺動自在に枢結されたバケット23と、油圧駆動式のブームシリンダ24、アームシリンダ25、およびバケットシリンダ26とから構成されている。ブーム21はブームシリンダ24により起伏動され、アーム22はアームシリンダ25により揺動され、バケット23はバケットシリンダ26により揺動される。以降の説明では、これらのシリンダ24〜26、走行用油圧モータ、ブレードシリンダ、および旋回モータを纏めて「油圧アクチュエータ33」と呼ぶ(図2参照)。また、作業者キャビン15は、上下前後左右が囲まれた矩形箱状に形成されており、内部に運転者が着座するための作業者シート16と、走行装置2やショベル機構12の作動操作を行うための操作装置17とが設けられている。
【0018】
図2に示すように、パワーショベル1には、油圧アクチュエータ33に作動油を供給し作動させる油圧ユニット30が設けられている。油圧ユニット30は、例えばディーゼルエンジンであるエンジンE、トルクコンバータT、油圧ポンプP、作動油を貯留するタンク31、および油圧ポンプPから吐出される作動油を操作装置17の操作に応じた供給方向および供給量で油圧アクチュエータ33に供給させる制御を行うコントロールバルブ32から構成されている。エンジンEおよびトルクコンバータTにより、特許請求の範囲における駆動装置が構成される。
【0019】
油圧ポンプPは、タンク31に貯留された作動油を吸い上げてコントロールバルブ32に供給する押しのけ容積が一定となった固定容量型の油圧ポンプである。例えばロータに放射状に挿入された羽根状の部品と周囲のリング状の部品との相対運動によりポンプ作用を生み出すように構成されたベーンポンプや、一組の外接または内接歯車が噛合した状態で回転駆動されて作動油の吸い込みおよび吐出を行うように構成されたギアポンプを用いることが可能である。この油圧ポンプPは、パワーショベル1の作業の負荷状態に応じて作動油の圧力(吐出圧)の要求値が決まり、この吐出圧の要求値に基づいてポンプ回転数に応じたポンプ駆動トルクの要求値が決定される。
【0020】
トルクコンバータTは、例えばおわん型に形成されたタービンランナー(不図示)とポンプインぺラー(不図示)とを向かい合わせて配置し、その間にステーター(不図示)を挟持するとともにフルード(作動流体)を充満させて構成される。エンジンEの出力軸38がポンプインぺラーに接続され、油圧ポンプPの入力軸39がタービンランナーに接続されている。そのため、エンジンEが駆動されてポンプインぺラー(出力軸38)が回転駆動されると、出力軸38と入力軸39との回転速度差(ポンプ駆動トルクの要求値、または油圧ポンプPの回転)に応じて、エンジンEの出力トルクが自動的に変更(増加または減少)されてタービンランナー(入力軸39)に伝達される。
【0021】
このトルクコンバータTのストール比は、例えばエンジンEの最大出力トルクを100N・m、油圧ポンプPの最大駆動トルクを150N・m、使用環境によるエンジン出力の低下割合を20%と仮定した場合、150/100×(1−0.2)=1.875以上の値となるように設計されている。このため、エンジンEの出力が使用環境により低下した場合であっても、エンジンの出力トルクがポンプ駆動トルクを上回るようにトルクコンバータTで増幅されるので、エンジンストールを確実に防止できる(詳細は後述)。
【0022】
以上、パワーショベル1の全体構成について説明した。以下において、標高の低い平地等のエンジン出力に影響を与えない使用環境で、比較的負荷の軽い掘削作業を行う場合の油圧ユニット30の作動について、図3および4を追加参照して説明する。なお、この使用環境で高負荷な掘削作業を行う場合の油圧ユニット30の作動については、後述する。
【0023】
図3において、出力特性ラインETはエンジンEの出力トルクを、出力特性ラインPTは油圧ポンプPの駆動トルクをそれぞれ示している。ここで説明する比較的負荷の軽い掘削作業は、油圧ポンプPの吐出圧がP1よりも小さな領域で行われるものとする。この図3から分かるように、上記領域において、油圧ポンプPの駆動トルクは吐出圧の要求値に比例して上昇するが、エンジンEの出力トルクT1を下回っている。そのため、出力軸38と入力軸39との回転速度がほぼ一致して例えばトルク比e=0.8の伝達ロスの少ない状態で、エンジンストールが発生することなく、効率良くエンジンEの出力トルクが油圧ポンプPに伝達される。
【0024】
図4は、縦軸にトルクコンバータTにより変更されたエンジンEの出力トルクを、横軸にエンジンEの回転数をとり、各トルク比におけるエンジンEの出力トルクを示している。上述したエンジンEの出力トルクが油圧ポンプPに伝達されている状態を図4上に示すと、出力特性ラインETとトルク比e=0.8との交点D1で示される。
【0025】
ところで、パワーショベル1は、街中の工事現場で使用されることがある一方、場合によっては標高の高い高地で使用されることもある。例えば標高数千メートルに達する高地でパワーショベルを使用する場合、平地と比べて大気圧が低いためエンジンへの吸入空気の密度が低下し、エンジンに取り込まれる空気量が減少する。そのため、燃料噴射量と空気量との比率が適正値から外れてしまい、結果としてエンジン出力(エンジン出力トルク)の低下を招くことがある。このような場合、エンジン出力の低下度合いによっては、油圧ポンプPにおいて高い吐出圧が必要とされる高負荷の掘削作業を行おうとすると、油圧ポンプPの駆動トルクがエンジンEの出力トルクを上回ってエンジンストールが発生することがあった。エンジンストールは発生すると、作業者の意志に反してエンジンが停止してしまうので、継続して掘削作業が行えず作業効率の低下に繋がる。そこで、本発明に係る駆動装置を適用したパワーショベル1は、エンジン出力が低下するような作業環境においても、エンジンストールが発生することなく継続して作業を行える構成となっている。
【0026】
以下においては、パワーショベル1を用いて標高の高い高地で掘削作業を行う場合を例に挙げて、油圧ユニット30の作動について説明する。なお、通常の使用状態と比較してエンジン出力が低下する場合として、上記の他に例えば極端に高温となった地域での使用、低温で且つエンジンEが十分に暖まっていない状態での使用、粗悪な燃料が用いられる場合等が想定される。
【0027】
上述したように高地においてはエンジン出力の低下するため、図3に示すように、エンジンEの出力トルクの出力特性ラインが2点鎖線の出力特性ラインET'へと低下する。図3から分かるように、比較的負荷の軽い掘削作業を行う場合、すなわち油圧ポンプPの吐出圧がP2よりも低い領域においては、油圧ポンプPの駆動トルクがエンジンEの出力トルクT2を下回っている。そのため、この領域においては、出力軸38と入力軸39との回転速度がほぼ一致して例えばトルク比e=0.8の伝達ロスの少ない状態で、エンジンストールが発生することなく、効率良くエンジンEの出力トルクが油圧ポンプPに伝達される。この伝達状態を図4上に示すと、出力特性ラインET'とトルク比e=0.8との交点D2で示される。
【0028】
ところで、上記作業環境のもとで高負荷な作業を行う場合、油圧ポンプPの吐出圧としてP2よりも高い吐出圧が要求されるとともに、それに伴って油圧ポンプPの駆動トルクがエンジンEの出力トルクT2を上回ることとなる。このとき、油圧ポンプPの駆動トルクに応じてトルクコンバータT内におけるフルードのすべりが増大(例えばトルク比e=0.6に低下)するとともに、エンジンEの回転速度(回転数)が低下する。そのため、トルクコンバータTにおいて、油圧ポンプPの駆動トルクに対してエンジンEの出力トルクが上回るように自動的に増幅させることができる。このときの伝達状態を図4上に示すと、出力特性ラインET'とトルク比e=0.6との交点D3で示される。このように、エンジン出力が低下するような使用環境においても、油圧ポンプPの駆動トルクに対してエンジンEの出力トルクが下回ることがないように、エンジンEの出力トルクが自動的に増幅されるので、エンジンストールを確実に防止できる。
【0029】
図5には、縦軸に吐出量、横軸に吐出圧をそれぞれとり、油圧ポンプPの出力特性ラインをR、エンジンEの出力特性ラインをET'で示している。図5に示した交点D2,D3は、図4のそれと対応している。図4に示すように、エンジンEの回転数が低下して出力トルクが増幅されながら交点D2から交点D3へと移行するとき、図5に示すように、油圧ポンプPの吐出圧が上昇する一方で吐出量が僅かながら減少する。このように、油圧ポンプPにおいては、要求された吐出圧を確保できる一方で吐出量が僅かながら減少するが、この吐出量の減少はパワーショベル1の掘削作業の支障とはならない。
【0030】
また、図3に示すように、標高の低い平地等のエンジン出力に影響を与えない使用環境(出力特性ラインET)において高負荷な掘削作業を行う場合には、P1よりも高い吐出圧が要求される。この吐出圧P1よりも高い領域においては、油圧ポンプPの駆動トルクがエンジンEの出力トルクT1を上回ることとなる。この場合も上述のように、トルクコンバータTにおいて、油圧ポンプPの駆動トルクに対してエンジンEの出力トルクが上回るように自動的に増幅されるので、エンジンストールを自動で防止できる。
【0031】
従来は、例えば作業者が手動つまみを操作することで、ポンプの駆動トルクを強制的に低下させてエンジンストールを防止する構成となっており、そのため単純な操作忘れによるエンジンストールが発生することがあった。これに対し本発明に係る油圧ユニット30では、油圧ポンプPの駆動トルクに応じてトルクコンバータT内においてエンジンEの出力トルクが自動的に増幅される構成となっているので、エンジン出力の低下に伴うエンジンストールを確実に防止できる。また、従来は比較的作動効率の低い可変容量型の油圧ポンプを用いていたが、これに対し本発明に係る油圧ユニット30では、可変容量型の油圧ポンプと比較して作動効率の高い固定容量型の油圧ポンプPを用いる構成となっている。そのため、可変容量型の油圧ポンプを用いる場合と比較して作動効率の低下を抑えることで、駆動装置全体としての作動効率を向上させることが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る油圧ユニット30においては、トルクコンバータTを用いることによりフルードを介して回転駆動力を伝達する構成となっているので、例えば油圧ポンプPの駆動トルクが急激に変動した場合であっても、フルードにおいてこのトルク変動を吸収することができる。そのため、トルク変動に伴う振動等が発生しないので、パワーショベル1の故障を低減できるとともに作業者に不快感を与えることがない。
【0033】
さらに、本発明に係る油圧ユニット30においては、トルクコンバータTを用いることによりトルクコンバータTにおいてエンジンEの出力トルクが増幅できるので、例えば出力の小さい小型のエンジンEを搭載した構成でありながらエンジンストールを確実に防止できる。また、従来の手動つまみ等を介して海抜高度をコントローラに入力する構成に対し、本発明に係る油圧ユニット30は複雑な制御部品等が不要なので、その分省スペース化およびコストダウンを図ることが可能となる。
【0034】
なお、図5に示す2点鎖線は、油圧ポンプの一例としてのギアポンプの出力特性ラインGPと、このギアポンプに対してトルクコンバータTを介することなく直結されたエンジンの出力特性ラインESとを示している。すなわち、トルクコンバータTを備えていない従来の構成の出力特性ラインを示したものである。従来は、ギアポンプの吐出圧Pと吐出量Qとの積の最大値(出力特性GPライン上の点G1)をエンジンの出力特性ラインESが下回ることがないように、予め高出力のエンジンを選定していた。これに対し本発明に係る油圧ユニット30においては、トルクコンバータTを備えた構成とすることにより、油圧ポンプの出力特性を湾曲した形状の出力特性ラインRに変更することができる。そのため、従来の構成と比較してより小型(低出力)のエンジンで油圧ポンプを駆動可能となり、コスト面およびパワーショベル1の小型化の面で有効である。また、出力特性ラインGPと出力特性ラインRとを比較すると分かるように、本発明に係る油圧ユニット30においては、吐出圧Pが比較的低い領域における吐出量Qを増大させることができるので、吐出圧Pが低い低負荷での作業時の作業効率を向上させることが可能となる。
【0035】
上述の実施形態において、トルクコンバータTに代えて、例えばプーリ幅が可変となって出力軸38と接続された駆動プーリ、プーリ幅が可変となって入力軸39と接続された従動プーリ、駆動プーリおよび従動プーリに巻き掛けられた無端状ベルトとから構成されたCVT(無段階変速機)を用いることも可能である。この構成における駆動プーリおよび従動プーリのプーリ幅の制御は、上述したトルクコンバータTと同様に、油圧ポンプPの駆動トルクがエンジンEの出力トルクを上回ろうとするときに、エンジンEの出力トルクを増幅させるようになっている。そのため、CVTを用いた構成においてもトルクコンバータTと同様に、エンジン出力が低下するような使用環境でも、エンジンストールが発生することなく継続して掘削作業を行うことができる。
【0036】
また上述の実施形態においては、油圧ポンプPが1台の構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、油圧アクチュエータ33の構成等に応じて複数台の油圧ポンプPを直結した構成でも良い。
【0037】
上述の実施形態においては、本発明に係る駆動装置をパワーショベル1に適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定して適用されるものではない。油圧ポンプから作動油の供給を受けて作動する油圧アクチュエータを備えた作業機械全般に適用可能であり、例えばローダ等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
E エンジン(駆動装置)
P 油圧ポンプ
T トルクコンバータ(駆動装置)
1 パワーショベル(作業機械)
33 油圧アクチュエータ
38 エンジンの出力軸
39 油圧ポンプの入力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備えた作業機械の駆動装置であって、
前記油圧ポンプは、押しのけ容積が一定の固定容量型の油圧ポンプであり、
前記エンジンの出力軸と接続されるとともに前記油圧ポンプの入力軸と接続され、入力された前記エンジンの回転駆動力を前記油圧ポンプに伝達するトルクコンバータを有し、
前記トルクコンバータは、前記油圧ポンプの回転に応じて前記エンジンの回転駆動トルクを変更して前記入力軸に伝達するように構成されたことを特徴とする作業機械の駆動装置。
【請求項2】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータとを備えた作業機械の駆動装置であって、
前記油圧ポンプは、押しのけ容積が一定の固定容量型の油圧ポンプであり、
前記エンジンの出力軸と接続されるとともに前記油圧ポンプの入力軸と接続され、入力された前記エンジンの回転駆動力を前記油圧ポンプに伝達する無段階変速機を有し、
前記無段階変速機が、
前記出力軸と接続された駆動プーリと、
前記入力軸と接続された従動プーリと、
前記駆動プーリおよび前記従動プーリに巻き掛けられた無端状ベルトとを備え、
前記油圧ポンプの回転に応じて前記駆動プーリおよび前記従動プーリのプーリ幅を変更
して前記エンジンの回転駆動トルクを変更して前記入力軸に伝達するように構成されたこ
とを特徴とする作業機械の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−72591(P2012−72591A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217879(P2010−217879)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】