説明

作業機械

【課題】作業機械の休止状態における、運転室の室温の上昇を抑制するとともに、バッテリーの放電を抑制することができるようにする。
【解決手段】作業機械が、太陽電池と、この太陽電池の発電電力によって駆動され運転室を換気するファンと、この太陽電池とファンとの間に逆流防止ダイオードを介して接続され、太陽電池の発電電力が蓄電される、機体の電装品用電源のバッテリーを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、さらに詳しくは、運転室の室温上昇およびバッテリーの放電を抑制することができる作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械、例えばホイールローダ、ブルドーザなどは、運転室に空調装置を備えるとともに、電子制御用コントローラを含む多くの電装品を備えている。この種の作業機械は、エンジンを停止させた休止状態で屋外に放置されることが多い。また、運転室は周囲の作業視界を良好にするためにガラス面を多く備えている。したがって、特に夏場などの炎天下において機械を休止状態で屋外に放置しておくと、運転室内が高温になり、再稼動時には空調装置を用いて室内温度を下げるのに、エンジン動力、バッテリー電力などを多く消費することになり、燃料消費が増加する問題がある。
【0003】
室温抑制対策として、太陽電池の発電電力によって運転室の換気扇を駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−104128号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽電池を用いる上述の作業機械には、次のとおりの解決の望まれている課題がある。
【0005】
すなわち、作業機械は、電子制御用コントローラのような、作業機械が休止状態のときにもメモリ内データ保持や通信用などに常時微小電流が消費される電装品を多数備えている。したがって、作業機械が長期間休止すると、あるいは休止が重なると、バッテリーが放電してしまう。特に、運転室の換気扇を太陽電池とバッテリーの電力によって駆動できるようにした場合には、バッテリーの放電が早められてしまう。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、作業機械の休止状態における、運転室の室温の上昇を抑制するとともに、バッテリーの放電を抑制することができる、作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記技術的課題を解決する作業機械として、太陽電池と、この太陽電池の発電電力によって駆動され運転室を換気するファンと、この太陽電池とファンとの間に逆流防止ダイオードを介して接続され、太陽電池の発電電力が蓄電される、機体の電装品用電源のバッテリーと、を備えていることを特徴とする作業機械が提供される。
【0008】
好適には、上記太陽電池とファンの間に、ファンへの電力を断続する手動スイッチを備えている。また、上記太陽電池とファンの間に、運転室内の温度を検知し、検知温度が所定の温度を越えたときにはファンを作動させ、所定温度以下のときには電力を断って作動を止める自動スイッチを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って構成された作業機械は、太陽電池と、この太陽電池の発電電力によって駆動され運転室を換気するファンと、この太陽電池とファンとの間に逆流防止ダイオードを介して接続され、太陽電池の発電電力を蓄電する機体の電装品用電源のバッテリーを備えている。
【0010】
したがって、作業機械の休止状態においては、太陽電池の発電電力によってファンを駆動し運転室を換気するので運転室の室温の上昇が抑制され、さらに太陽電池の発電電力でバッテリーの充電を補足するとともにバッテリーの電力をファンの駆動に用いないので、バッテリーの放電を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された作業機械について、代表的な作業機械であるホイールローダにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0012】
図2を参照してホイールローダについて説明する。全体を番号2で示すホイールローダは、前車輪4および作業装置6を備えた前車体8と、後車輪10、エンジン室12およびに運転室14を備えた後車体16を具備している。運転室14は前後左右の略全面がガラス面で形成されている。
【0013】
図2とともに図1を参照して説明する。ホイールローダ2は、運転室14の屋根の上に取付けられた太陽電池18と、太陽電池18の発電電力によって駆動され運転室14を換気する運転室14の後面上部に取付けられたファン20と、太陽電池18とファン20の間に逆流防止ダイオード22を介して接続され太陽電池18の発電電力が蓄電される機体の電装品用電源のバッテリー24を備えている。
【0014】
バッテリー24は、運転室14の座席の下方に設置されている。バッテリー24は、ホイールローダ2の電子制御用コントローラを含む電装品類26に電力を供給する周知のものであり、エンジンなどの動力源の充電手段(図示していない)にも接続されている。かくしてバッテリー24は、太陽電池18の発電電力によって充電が補足される。
【0015】
ファン20は、運転室14の床下部分から外気を運転室14に吸入し、運転室14内の空気を室外に排出する。
【0016】
主として図1を参照して説明する。太陽電池18とファン20の間には、ファン20への電力を断続する手動スイッチ28が備えられている。手動スイッチ28とファン20の間には自動スイッチ30が備えられている。自動スイッチ30は、運転室14内の温度を検知し、検知温度が所定の温度を越えたときにはファン20と手動スイッチ28を「続」にし、所定温度以下のときには「断」にする。
【0017】
自動スイッチ30は、周知のサーモスイッチである。所定の温度は、ホイールローダ2の稼動環境などによって設定を調整するための調整手段30aを備えている。すなわち、所定温度は、炎暑の時期、場所においては低目に、寒冷の時期、場所においては高目に設定される。
【0018】
上述したとおりの作業機械(ホイールローダ)2の作用について説明する。
【0019】
作業機械2は、太陽電池18と、太陽電池18の発電電力によって駆動され運転室14を換気するファン20と、太陽電池18とファン20との間に逆流防止ダイオード22を介して接続され、太陽電池18の発電電力を蓄電する機体の電装品用電源のバッテリー24を備えている。
【0020】
したがって、作業機械2の休止状態においては、太陽電池18の発電電力によってファン20を駆動し運転室14を換気するので運転室14の室温の上昇が抑制され、さらに太陽電池18の発電電力でバッテリー24の充電を補足するとともにバッテリー24の電力をファン20の駆動に用いないので、バッテリー24の放電を抑制することができる。
【0021】
炎天下において休止中の作業機械2の運転室14内は、太陽電池18の発電電力によりファン18が作動され、床下の冷気が吸込まれ室内の暖気が排出されるので、運転室14の室温の上昇が抑制される。さらに、作業機械2が休止中であっても、電子制御用コントローラを含む電装品類26に電力を供給するためのバッテリー24は太陽電池18の発電電力によって充電されるので、また逆流防止ダイオード22によってバッテリー24の電力はファン20に流れないので、バッテリー24の放電が抑制される。
【0022】
さらに、太陽電池18とファン20の間に、ファン20への電力を断続する手動スイッチ28を備えているので、ファン20の駆動が必要のないような外気温度の低いとき、また空調装置を作動させているなど、のときには、手動スイッチ28を「断」にし、太陽電池18の発電電力を全量バッテリー24の充電に充てることができる。
【0023】
また、手動スイッチ28とファン20の間に、運転室14内の温度を検知し、検知温度が所定の温度を越えたときにはファン20を作動させ、所定温度以下のときには電力を断って作動を止める自動スイッチ30を備えたので、手動スイッチ28が「続」の状態であっても所定の温度においてファン20の作動を止め、太陽電池18の発電電力をバッテリー24に充電することができる。
【0024】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0025】
本実施の発明の形態においては、太陽電池18とファン20の間に、手動スイッチ28と自動スイッチ30を備えたが、いずれか一方のみを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従って構成された作業機械の構成の要部説明図。
【図2】図1に示す構成を備えた作業機械の代表例であるホイールローダの側面図。
【符号の説明】
【0027】
2:ホイールローダ(作業機械)
14:運転室
18:太陽電池
20:ファン
22:逆流防止ダイオード
24:バッテリー
28:手動スイッチ
30:自動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、
この太陽電池の発電電力によって駆動され運転室を換気するファンと、
この太陽電池とファンとの間に逆流防止ダイオードを介して接続され、太陽電池の発電電力が蓄電される、機体の電装品電源用のバッテリーと、
を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
上記太陽電池とファンの間に、ファンへの電力を断続する手動スイッチを備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
上記太陽電池とファンの間に、運転室内の温度を検知し、検知温度が所定の温度を越えたときにはファンを作動させ、所定温度以下のときには電力を断って作動を止める自動スイッチを備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−164529(P2009−164529A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3177(P2008−3177)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】