説明

作業車両の横転防護装置

【課題】車体の転倒時にヘッドガードを効果的に保護する。
【解決手段】車体11上の運転席14に設置されたヘッドガード15と、車体11の後部に立設されたリアピラー部16と、基端部がリアピラー部16に上下方向に回動自在に支持されるとともに運転席14の両側部を通って車体11の前部に伸びる左右一対の作業ブーム18と、作業ブーム18の先端部に上下回動自在に支持されたバケット22とを具備し、前記作業ブーム16を側面視で台形山形状に形成して、下降限で、その頂部上辺22bがヘッドガード16の天井面16Uに対応する高さになるように形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の横転防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両が転倒した時に、運転席の運転者を保護するものとして、たとえば特許文献1に示される「車両転倒保護装置」が提案されている。これは、車体後部に左右のショベルアームを上下揺動自在に支持する一対のリアピラーを立設し、車体中央部に左右のショベルアーム間に設置されたヘッドガード(キャノピーともいう)を設置した作業車両において、リアピラー間にヘッドガードと同一高さとなる安全支持バーを架設したものである。
【0003】
上記作業車両では、リアピラーの高さがヘッドガードの天井部近くまであることから、ある程度のヘッドガードの保護機能があり、さらにリアピラー間に安全支持バーを掛け渡すことにより、リアピラーの強度を高めて、反転時のヘッドガードの圧壊を防止することができる。
【特許文献1】実開昭63−114752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反転時にヘッドガードの圧壊を防止できるものの、ヘッドガードの前部が保護されず、特に横転時にヘッドガードの前部への保護が不十分であるという問題があった。このため、ヘッドガードに十分な強度を持たせておく必要があり、重量とコストの増大が問題となっていた。
本発明は上記問題点を解決して、車体の転倒時にも、ヘッドガードを効果的に保護できて、重量とコストを削減できる作業車両の横転防護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、走行装置を有する車体上に設置された運転席にヘッドガードを設け、車体の後部に設置されたリアピラー部に、基端部が上下方向に回動自在に支持されるとともに前記運転席の両側部を通って先端部が車体前部に達する左右一対の作業ブームを設け、これら作業ブームの先端部に作業具を設けた作業車両の横転防護装置であって、前記作業ブームを側面視で山形状で、かつ下降限で頂部がヘッドガードの天井部に対応する高さに形成したものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1の構成において、作業ブームを、後部斜辺と頂部上辺と前部斜辺からなる台形山形状としたものである。
請求項3記載の発明は、走行装置を有する車体上に設置された運転席にヘッドガードを設け、車体の後部に設置されたリアピラー部に、基端部が上下方向に回動自在に支持されるとともに前記運転席の両側部を通って先端部が車体前部に達する左右一対の作業ブームを設け、これら作業ブームの先端部に作業具を設けた作業車両の横転防護装置であって、作業ブームの基端側から先端側にわたって取り付けられて側面視が台形山形状に形成され、下降限で頂部上辺がヘッドガードの天井部に対応する高さに形成されたロッド状のサイドガードを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、作業車両が横転した場合に、山形状の作業ブームによりヘッドガードおよび運転席を防護することができる。これにより、ヘッドガードの強度を軽減することが可能となり、また特別な防護部材を設置しなくてよいので、軽量化とコストの低減を図ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、台形山形状の作業ブームを設けたことにより、運転席から左右下方の視界が遮られることがなくなり、荷役作業中に、運転席から広い視界を確保できて安全性と作業性の向上を図ることができる。さらに、山形台形状の作業ブームにより、転倒時の防護ができることから、ヘッドガードの強度を軽減することが可能となり、ヘッドガードの軽量化と、コストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、作業車両が横転したり、反転した場合に、サイドガードによりヘッドガードおよび運転席を防護することができる。これにより、ヘッドガードの強度を軽減することが可能となり、ヘッドガードの軽量化およびコストの低減を図ることができる。また車体の左右側部に露出する作業ブームにサイドガードを容易に設置できるとともに、既存の作業車両に容易に増設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態]
本発明に係る作業車両の横転防護装置の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0011】
図1〜図3に示すように、この作業車両は、たとえば小型の土工車両であるスキッドステアローダで、車体11の両側に、エンジンにより駆動される独立駆動式の前輪12と後輪13とを具備し、左右の前後輪12,13を同一方向に回転させて走行する前後走行と、左右の一方の前後輪12,13を他方より高速で回転させて旋回する旋回走行と、左右の前後輪12,13の相対方向の回転させて旋回するその場旋回とが可能な走行装置が装備されている。
【0012】
車体11の中央部に運転席14が設けられ、この運転席14には、左右側面と背面と天井部15Uとを覆うヘッドガード15が設置され、その前面が乗降口として開放されている。またヘッドガード15の左右側面には、安全格子を有する窓15Wが設けられ、また背面に開口部15Sが形成されて、それぞれ視界が確保されている。
【0013】
車体11の後部両側に左右一対のリアピラー部16が立設され、基端部がそれぞれリアピラー部16に水平方向の支軸17を介して上下回動自在に支持された左右一対の作業ブーム18が設けられている。これら作業ブーム18は、ヘッドガード15の両側部に配置されて横転防護部材を兼ねるブーム本体20と、作業具であるバケット22を上下回動自在に支持する作業部材21とを具備している。このブーム本体20は角筒状に形成され、下降限で、支軸17に支持された基端部から前部上方に傾斜して立ち上がる後部斜辺20aと、ヘッドガード15の天井部15Uとほぼ同一高さの頂部上辺20bと、頂部上辺20bの前端から前部下方に傾斜する前部斜辺20cとで側面視で台形山形状に形成されている。
【0014】
ブーム本体20の頂部上辺20bは、ヘッドガード15の天井部15Uから所定距離隔てて天井部15Uの長さLGより少し長い長さLBに形成されて、天井部15Uの側方に対応する位置に配置されるが、頂部上辺20bの長さLBは、天井部15Uの長さLGと同じでもよいし、また幾分短くても、十分に防護機能を奏することができる。
【0015】
作業部材21は、左右の前部斜辺20cの前端にそれぞれ固定された側面視L字形の支持プレート21Pと、左右の支持プレート21Pを連結する横架フレーム21Fとを具備している。そして車体11の後部でリアピラー部16の取付部と支持プレート21Pの基端部との間に、ブームシリンダ23が連結されている。さらに横架部材21Fの先端部に支持ピン24を介して着脱装置25が上下揺動自在に支持され、この着脱装置25にバケット22が着脱可能に装着されている。さらに支持プレート21Pの基端側と着脱装置25の間に左右一対のバケットシリンダ26が連結されている。
【0016】
したがって、図4に示すように、ブームシリンダ23を進展することにより、作業ブーム18を下降限から支軸17を中心に上方に回動させてバケット22を上昇限まで持ち上げ、バケットシリンダ26を伸縮することにより、バケット22を上下方向に揺動させて荷役作業を行うことができる。
【0017】
上記構成によれば、図3に示すように、スキッドステアローダが横転したり、反転した場合には、山形台形状の作業ブーム18によりヘッドガード15および運転席14を防護することができる。また従来では、荷役作業中に、運転席14の座席シート14aから運転者が見る左右の斜め下方の視界が作業ブームに遮られて十分に確保できなかったが、この実施の形態では、作業ブーム18のブーム本体20が山形台形状に形成されて、荷役作業中に作業ブーム18のブーム本体20が運転席14より上方に位置するので、左右の斜め下方の視界が遮られることがない。この広い視界により、安全性および作業性を向上させることができる。さらに、山形台形状の作業ブーム18により、転倒時の防護ができることから、ヘッドガード15の強度を軽減することが可能となり、また特別な防護部材を設置しなくてよいので、軽量化およびコストの低減を図ることができる。
【0018】
[他の実施の形態]
本発明に係る作業車両の横転防護装置の他の実施の形態を図5を参照して説明する。なお、先の実施の形態と同一部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
従来と同様に直線状に形成された作業ブーム31のブーム本体32の上部に、ロッド状のサイドガード33が取り付けられている。このサイドガード33は、ブーム本体32の基端部上面に取り付けられる後連結具33dから前部上方に傾斜して立ち上がる後部斜辺33aと、ヘッドガード15の天井部15Uとほぼ同一高さの頂部上辺33bと、頂部上辺33bの前端から前部下方に傾斜する前部斜辺33cと、前部斜辺33cの前端部をブーム本体32の先端部上面に取り付ける前連結具33eとで側面視で台形山形状に形成されている。このサイドガード33の頂部上辺33bは、作業ブーム31の下降限で、ヘッドガード15の天井部15Uとほぼ同じ高さに配置される。
【0020】
この実施の形態によれば、スキッドステアローダが横転したり、反転した場合に、サイドガード33によりヘッドガード15および運転席14を防護することができる。これにより、ヘッドガード15の強度を軽減することが可能となるので、ヘッドガード15の軽量化およびコストの低減を図ることができる。また車体11の左右側面に露出する作業ブーム31にサイドガード33を取り付けたので、サイドガード33の取付部を別途設置する必要がなく、容易に設置できるとともに、既存のスキッドステアローダに容易に増設できる。さらにサイドガード33により作業ブーム31を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るスキッドステアローダの実施の形態を示す側面図である。
【図2】スキッドステアローダの前方斜視図である。
【図3】スキッドステアローダの背面図で、(a)は正立姿勢、(b)は横転姿勢を示す。
【図4】作業ブームを上昇限まで上げた状態の側面図である。
【図5】本発明に係るスキッドステアローダの他の実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0022】
11 車体
14 運転席
15 ヘッドガード
15U 天井部
16 リアピラー部
17 支軸
18 作業ブーム
20 ブーム本体
20a 後傾斜部
20b 頂部上辺
20c 前部斜辺
21 作業部材
22 バケット
23 ブームシリンダ
26 バケットシリンダ
31 作業ブーム
32 ブーム本体
33 サイドガード
33a 後部斜辺
33b 頂部上辺
33c 前部斜辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を有する車体上に設置された運転席にヘッドガードを設け、車体の後部に設置されたリアピラー部に、基端部が上下方向に回動自在に支持されるとともに前記運転席の両側部を通って先端部が車体前部に達する左右一対の作業ブームを設け、これら作業ブームの先端部に作業具を設けた作業車両の横転防護装置であって、
前記作業ブームを側面視で山形状で、かつ下降限で頂部がヘッドガードの天井部に対応する高さに形成した
ことを特徴とする作業車両の横転防護装置。
【請求項2】
作業ブームを、後部斜辺と頂部上辺と前部斜辺からなる台形山形状とした
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両の横転防護装置。
【請求項3】
走行装置を有する車体上に設置された運転席にヘッドガードを設け、車体の後部に設置されたリアピラー部に、基端部が上下方向に回動自在に支持されるとともに前記運転席の両側部を通って先端部が車体前部に達する左右一対の作業ブームを設け、これら作業ブームの先端部に作業具を設けた作業車両の横転防護装置であって、
作業ブームの基端側から先端側にわたって取り付けられて側面視が台形山形状に形成され、下降限で頂部上辺がヘッドガードの天井部に対応する高さに形成されたロッド状のサイドガードを設けた
ことを特徴とする作業車両の横転防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138563(P2010−138563A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313804(P2008−313804)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】