説明

作業車両の走行変速装置

【課題】本発明は、ギヤで多段に変速する作業車両の走行変速装置を、変速制御が行い易い多板クラッチとシンクロクラッチを用いて左右幅が狭く前後長が短いトランスミッションケースで構成することを課題とする。
【解決手段】エンジン出力軸20から入力した入力軸21の回転を同一構成の高・低油圧多板クラッチ24,25で低速伝動軸34と高速伝動軸32に分岐し、その低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転をそれぞれ複数の変速装置36,42,58,71で変速して後輪3に伝動するよう構成した作業車両の走行変速装置において、前記高・低油圧多板クラッチ24,25をトランスミッションケース8の前部でその上面が後方へ向かって下り傾斜した下り傾斜部8cの下側内部で左右に配置したことを特徴とする作業車両の走行変速装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクター等の作業車両における走行速度の変速装置に関し、エンジンの略一定回転出力を多段のギヤ変速で変速し車輪に伝動して走行速度を低速から高速まで変更出来るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両はディゼルエンジンが多く用いられているが、ディゼルエンジンは変速域が比較的狭いために多段のギヤ変速を行う走行変速装置が使われている。例えば、特許文献1に記載のトラクターでは、油圧クラッチと爪クラッチを組み合わせて計12段に変速する変速装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−343713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の変速装置は、油圧クラッチと爪クラッチを組み合わせているために、爪クラッチの変速タイミングが微妙で滑らかな変速を行うための変速切換制御が難しく複雑になる。
本発明は、ギヤで多段に変速する作業車両の走行変速装置を、変速制御が行い易い多板クラッチとシンクロクラッチを用いて左右幅が狭く前後長が短いトランスミッションケースで構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、エンジン出力軸20から入力した入力軸21の回転を同一構成の高・低油圧多板クラッチ24,25で低速伝動軸34と高速伝動軸32に分岐し、その低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転をそれぞれ複数の変速装置36,42,58,71で変速して後輪3に伝動するよう構成した作業車両の走行変速装置において、前記高・低油圧多板クラッチ24,25をトランスミッションケース8の前部でその上面が後方へ向かって下り傾斜した下り傾斜部8cの下側内部で左右に配置したことを特徴とする作業車両の走行変速装置とする。
【0006】
この構成で、高・低油圧多板クラッチ24,25がトランスミッションケース8の内部で前側に収納され、トランスミッションケース8の前後長を短く出来る。また、トランスミッションケース8の下り傾斜部8cはシートに座った操縦者が足を置く位置になるが、後方へ向かって下り傾斜していることで、足元を広くすることが出来る。さらに、同一構成の高・低油圧多板クラッチ24,25を使用することで、製作コストを低減出来る。
【0007】
請求項2に記載の発明は、PTO出力軸111の動力伝動を断続するPTOメインクラッチ97を左右に配置する高・低油圧多板クラッチ24,25の下側左右中央に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の走行変速装置とした。
【0008】
この構成で、比較的に大きなPTOメインクラッチ97を左右に配置する高・低油圧多板クラッチ24,25の左右幅内に収められることになって、ミッションケース8の左右幅を狭く出来る。
【0009】
請求項3に記載の発明は、高・低油圧多板クラッチ24,25の高速伝動軸32と低速伝動軸34を変速する第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36の下側にPTO出力軸111を変速するPTO変速部157を設けたことを特徴とする請求項1か請求項2の何れか1項に記載の作業車両の走行変速装置とした。
【0010】
この構成で、幅が広くなるPTO変速部157を高・低油圧多板クラッチ24,25の下側に収めて、トランスミッションケース8の左右幅を狭く出来る。
請求項4に記載の発明は、トランスミッションケース8の外壁を通して主変速部150の第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36を変速操作するシフトアームの取付開口部を、トランスミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも高い位置に設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業車両の走行変速装置とした。
【0011】
この構成で、トランスミッションケース8の内部からシフトアームを通じて漏れだす潤滑オイルを無くすることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、請求項1から請求項4に記載の何れか1項に記載の構成で、変速段数が多くて幅広く長くなりがちなトランスミッションケース8の左右幅を狭くして前後長を短くした作業車両の走行変速装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両として、トラクターの全体側面図である。
【図2】エンジンから前後輪及びPTO軸への動力伝動線図である。
【図3】トランスミッションケースの断面展開図である。
【図4】トランスミッションケースの正断面図である。
【図5】トランスミッションケースの断面斜視図である。
【図6】自動制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
作業車両の一例としてトラクターにおける実施例を以下に説明する。
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0015】
トラクター1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5のエンジン出力軸20の回転をトランスミッションケース8内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0016】
機体中央でのハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側にシフトすると機体は前進し、後側へシフトすると後進する構成である。
【0017】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル18と、左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0018】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、一速から八速まで変速する主変速レバー14はシート9の左前側部にあり、超低速、低速、中速、高速の四段及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15はその後方にあり、さらにその右側に四段に変速するPTO変速レバー12を設けている。
【0019】
トラクター1の機体後部には、ロータリ作業機17を装着して、トランスミッションケース8から後方へ突出するPTO出力軸111で駆動するようにしている。
図2は、トランスミッションケース8内変速装置の動力伝動機構を示す伝動線図で、エンジン5から前輪2と後輪3及びロータリ作業機17へのPTO出力軸111への変速伝動を説明する。
【0020】
エンジン5のエンジン出力軸20の回転がメインクラッチ112を介して入力軸21に伝動され、この入力軸21に固着の第一入力ギヤ22と第二入力ギヤ23の回転がそれぞれ第一高・低クラッチ24の第一低速ギヤ26と第二高・低クラッチ25の第二低速ギヤ27及び第一高・低クラッチ24の第一高速ギヤ30と第二高・低クラッチ25の第二高速ギヤ31に噛み合っている。
【0021】
そして、第一高・低クラッチ24を第一低速ギヤ26側に繋ぐと第一低速ギヤ26から第一クラッチ軸28に伝動され、第一高速ギヤ30側に繋ぐと第一高速ギヤ30から第一クラッチ軸28に伝動され、第二高・低クラッチ25を第二低速ギヤ27側に繋ぐと第二低速ギヤ27から第二クラッチ軸29に伝動され、第二高速ギヤ31側に繋ぐと第二高速ギヤ31から第二クラッチ軸29に伝動される。
【0022】
第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は同一の油圧多板クラッチで、それぞれ入力軸21の回転を同一減速比で高・低の二段に減速して第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29に伝動することになる。
【0023】
また、図4に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、潤滑オイルに浸かり、その第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29が潤滑オイルの液面OLより若干上に位置している。
【0024】
また、第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29をトランスミッションケース8に支持する内壁ボス部8aには、ケースの左右開口部側からドリルで加工可能な給油孔8bを設けて、この給油孔8bに繋ぐ給油パイプ155をケースの左右開口部の閉じる蓋板を通して、Oリングでシールして設けている。
【0025】
また、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、トランスミッションケース8の下り傾斜部8cの下部で、左右に配置している。
第一クラッチ軸28に固着の第一ギヤ113が低速伝動軸34に固着の第二ギヤ35と噛み合って減速して伝動され、第二クラッチ軸29に固着の第三ギヤ149が高速伝動軸32に固着の第四ギヤ33と噛み合って増速して伝動される。
【0026】
ここまでの変速伝動で、低速伝動軸34が低速で二段に、高速伝動軸32が高速で二段にそれぞれ変速されることで、計四段に変速されることになる。
低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転がそれぞれ第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36に伝動され、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37が第一伝動軸39の第五ギヤ40と噛み合い、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロギヤ大44と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38が第一伝動軸39の第六ギヤ41と噛み合って伝動する。
【0027】
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第一シンクロギヤ大44及び第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37と第二シンクロ大ギヤ38は、全く同一のギヤで、低速伝動軸34が低速回転し高速伝動軸32が高速回転しているので、第一シンクロチェンジ42を切換えると低速でさらに二段に変速され、第二シンクロチェンジ36を切換えると高速でさらに二段に変速される。すなわち、第一入力軸21の回転が第一伝動軸39で低速四段と高速四段に変速されることになる。
【0028】
この第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36はシフタステーとシフタをサブ組付けしてトランスミッションケース8内に収められ、その変速操作部のケース開口部がケースの左右側面に設けられ、トランスミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも上側に設けられる。
【0029】
ここまでの主変速部150で、操縦者が操作する主変速レバー14の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に高・低油圧多板クラッチ24,25と第一・第二シンクロチェンジ36,42を制御して低速四段と高速四段まで変速される。
【0030】
また、トランスミッションケース8内で、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25が左右に配置され、その下側に第一シンクロチェンジ42を装着する低速伝動軸34と第二シンクロチェンジ36を装着する高速伝動軸32が左右に配置されることで、トランスミッションケース8の左右幅が狭く高さの低いコンパクトな構成に出来る。
【0031】
第一伝動軸39は第二伝動軸45に軸連結で連結されている。この第二伝動軸45には、第七ギヤ46と第八ギヤ47が固着され、油圧多板の正逆クラッチ48の正転クラッチギヤ49と逆転軸52の逆転ギヤ51に噛み合わされ、逆転ギヤ51が正逆クラッチ48の逆転クラッチギヤ50と噛み合っている。
【0032】
従って、正逆クラッチ48を正転クラッチギヤ49に繋ぐと、正転状態で正逆クラッチ48に連結の副変速軸53に伝動され、正逆クラッチ48を逆転クラッチギヤ50に繋ぐと、逆転状態で副変速軸53に伝動される。正転と逆転では減速比が異なり、逆転の方が低速になる。
【0033】
次に、副変速部154を説明する。
副変速軸53には第九ギヤ54と第十ギヤ55が固着され、それぞれ第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ大ギヤ56と第三シンクロ小ギヤ59に噛み合っている。従って、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側に繋ぐと第九ギヤ54から第三シンクロ大ギヤ56に伝動した回転で第5伝動軸60が増速して高速で駆動され、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐと第十ギヤ55から第三シンクロ小ギヤ59に伝動した回転で第5伝動軸60が減速して中速で駆動される。
【0034】
さらに、第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ小ギヤ59側には第十一ギヤ57を固着して、第四シンクロチェンジ71の第四シンクロ小ギヤ69と噛み合っている。そして、第四シンクロ小ギヤ69側には第十五ギヤ70を固着し、この第十五ギヤ70が第二筒軸114の第十七ギヤ75と噛み合って第二筒軸114に固着の第十八ギヤ76から第四シンクロ大ギヤ72に伝動している。第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73には、第十六ギヤ74を固着している。
【0035】
従って、第三シンクロチェンジ58を中立にすると、第十ギヤ55の回転が第三シンクロ小ギヤ59に伝動され、第三シンクロ小ギヤ59側に固着の第十一ギヤ57から第四シンクロ小ギヤ69に伝動される。
【0036】
この状態で、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ小ギヤ69側に繋ぐと、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十六ギヤ74の回転となって低速となり、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ大ギヤ72側に繋ぐと第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十五ギヤ70から第十七ギヤ75と第十八ギヤ76と第四シンクロ大ギヤ72に伝動されて第十六ギヤ74が極低速となる。
【0037】
なお、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側或いは第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐ場合には、第四シンクロチェンジ71を中立にしておく。
従って、主変速部150変速された副変速軸53の低速四段と高速四段が、副変速部154で四段に変速されることで、低速十六段と高速十六段に変速されることになる。
【0038】
第十六ギヤ74は前記第5伝動軸60に固着の第十二ギヤ61と噛み合って第5伝動軸60を駆動する。この第5伝動軸60の軸端に固着の第一ベベルギヤ62がリアベベルケース64の第二ベベルギヤ63と噛み合っていて、リアベベルケース64のベベル出力軸65から第十三ギヤ66と第十四ギヤ67を介して後輪出力軸68を回転して後輪3を駆動する。
【0039】
また、第5伝動軸60には第二十一ギヤ117が固着され、副変速軸53に軸支された第二筒軸119に固着の第二十二ギヤ118と第二十二ギヤ148を介して第一前輪駆動軸78の第十九ギヤ77に伝動して、前記第十六ギヤ74の低速十六段と高速十六段の回転が第一前輪駆動軸78に伝動されている。
【0040】
この第一前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ79を介して第二前輪駆動軸84に伝動し、第三前輪駆動軸85と第四前輪駆動軸86と前輪駆動ベベル軸87に引き継いで伝動し、前輪駆動ベベル軸87の軸端に固着の第一前ベベルギヤ88が前ベベルケース89の第二前ベベルギヤ115と噛み合っていて、前ベベルケース89の前ベベル出力軸90から第一前ベベルギヤ組91と前縦軸116と第二前ベベルギヤ組92を介して前輪出力軸93を回転して前輪2を駆動する。
【0041】
なお、前輪増速クラッチ79の第一増速クラッチギヤ82と第二増速クラッチギヤ80はそれぞれ第一増速ギヤ83と第二増速ギヤ81に噛み合って前輪増速クラッチ79の切換によって増速率を変更する。
【0042】
ここまでの副変速部154が副変速レバー15の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71を制御して変速される。
【0043】
また、第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73は、第三シンクロチェンジ58を装着した第5伝動軸60の下側に配置され、トランスミッションケース8の長さを短く出来る。
【0044】
次に、PTO出力軸111の伝動経路を説明する。
前記第二入力ギヤ23にPTOメインクラッチ97のメインクラッチギヤ96を噛み合わせて、PTOメインクラッチ97で動力の断続を行うようにしている。このPTOメインクラッチ97は、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の下側に位置して、トランスミッションケース8の内部に溜まる潤滑オイルで冷却・潤滑される。
【0045】
PTOメインクラッチ97を装着した第一PTO軸95には、次の如く、PTO変速部157が設けられている。
第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151の第五シンクロ小ギヤ100と第五シンクロ大ギヤ101を装着し、第二PTO軸104に第二十ギヤ102と第二十三ギヤ152をと第二十一ギヤ103と第二十四ギヤ153を固着し、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を軸支している。
【0046】
第一PTOギヤ98をスライドして第二十ギヤ102に噛み合わせると第三PTO軸107が二速になり、第一PTOギヤ98をスライドして第二PTOギヤ99に係合すると第一PTO軸95の回転が第二PTOギヤ99と第二十三ギヤ152を介して第三PTO軸107に伝わって四速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ小ギヤ100に繋ぐと第五シンクロ小ギヤ100から第二十一ギヤ103に伝動して一速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ大ギヤ101に繋ぐと第五シンクロ大ギヤ101から第二十四ギヤ153に伝動して三速となり、PTO逆転ギヤ105を第一PTOギヤ98と第二十ギヤ102に噛み合わせると第一PTO軸95の回転が第一PTOギヤ98からPTO逆転ギヤ105を経て第二十ギヤ102に伝動されて第三PTO軸107に伝わって逆回転となる。
【0047】
また、図5に示す如く、第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151は、前記第一高・低クラッチ24及び第二高・低クラッチ25と第一シンクロチェンジ42及び第二シンクロチェンジ36の間で、下側に配置している。
【0048】
第三PTO軸107の回転は、第四PTO軸156を介して第五PTO軸108に伝動し、第一PTO出力ギヤ109と第二PTO出力ギヤ110さらに減速してPTO出力軸111を駆動する。
【0049】
図4に示す如く、トランスミッションケース8の左右中央に入力軸21と第四前輪駆動軸86が位置し、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25、高速伝動軸32と低速伝動軸34及び第四PTO軸156と副変速軸53が左右対称位置に配置している。
【0050】
また、第四PTO軸156と副変速軸53と第四前輪駆動軸86は、トランスミッションケース8の内部下方位置で正面視略二等辺三角形の配置となっている。
図6は、トランスミッションケース8内の変速を制御する自動制御の制御ブロック図で、走行系ECU120への制御データの入力は、エンジン回転センサ121からのエンジン出力軸の回転数と、正逆クラッチ出力回転センサ122の出力軸回転数と、油温センサ123のトランスミッションケース8内オイル温度と、調整モードスイッチ124のモード選択信号と、主変速(1−2)位置センサ125の第一シンクロチェンジ42出力軸回転数と、主変速(3−4)位置センサ126の第二シンクロチェンジ36出力軸回転数と、正逆クラッチ48の前進クラッチ圧力スイッチ127と後進クラッチ圧力スイッチ128のオン信号と、第一高・低クラッチ24の第一低クラッチ圧力スイッチ129と第一高クラッチ圧力スイッチ130のオン信号と、第二高・低クラッチ25の第二低クラッチ圧力スイッチ131と第二高クラッチ圧力スイッチ132のオン信号と、クラッチペダルセンサ133のオン信号と、主変速レバー操作位置センサ134の操作位置と、副変速位置センサ135の操作位置と、前後進レバー操作位置センサ136の操作位置である。
【0051】
走行系ECU120からの制御出力は、前進切換ソレノイド137への前進切換信号と、後進切換ソレノイド138への後進切換信号と、前後進昇降ソレノイド139への昇降信号と、一速切換ソレノイド140への切換信号と、二速切換ソレノイド141への切換信号と、三速切換ソレノイド142への切換信号と、四速切換ソレノイド143への切換信号と、第一低クラッチ切換ソレノイド144への切換信号と、第一高クラッチ切換ソレノイド145への切換信号と、第二低クラッチ切換ソレノイド146への切換信号と、第二高クラッチ切換ソレノイド147への切換信号である。
【0052】
また、副変速部154の変速段数を変えることで、32段変速、24段変速になるが、その他のミッション内の歯車を共用とすることでコストダウンになる。
第二入力ギヤ23は、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の入力ギヤであり、PTO変速部157の入力ギヤとして共用しているので、ギヤの枚数を削減できる。このPTO変速部157の直上方の位置にPTO変速レバー(図示せず)を設けることで、簡素な構成になり変速フィーリングが向上する。
【符号の説明】
【0053】
8 ミッションケース
8c 下り傾斜部
20 エンジン出力軸
21 入力軸
24 高・低油圧多板クラッチ(第一高・低クラッチ)
25 高・低油圧多板クラッチ(第二高・低クラッチ)
32 高速伝動軸
34 低速伝動軸
36 第二シンクロチェンジ
42 第一シンクロチェンジ
58 第三シンクロチェンジ
71 第四シンクロチェンジ
97 PTOメインクラッチ
111 PTO出力軸
150 主変速部
157 PTO変速部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン出力軸(20)から入力した入力軸(21)の回転を同一構成の高・低油圧多板クラッチ(24),(25)で低速伝動軸(34)と高速伝動軸(32)に分岐し、その低速伝動軸(34)と高速伝動軸(32)の回転をそれぞれ複数の変速装置(36),(42),(58),(71)で変速して後輪(3)に伝動するよう構成した作業車両の走行変速装置において、前記高・低油圧多板クラッチ(24),(25)をトランスミッションケース(8)の前部でその上面が後方へ向かって下り傾斜した下り傾斜部(8c)の下側内部で左右に配置したことを特徴とする作業車両の走行変速装置。
【請求項2】
PTO出力軸(111)の動力伝動を断続するPTOメインクラッチ(97)を左右に配置する高・低油圧多板クラッチ(24),(25)の下側左右中央に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の走行変速装置。
【請求項3】
高・低油圧多板クラッチ(24),(25)の高速伝動軸(32)と低速伝動軸(34)を変速する第一シンクロチェンジ(42)と第二シンクロチェンジ(36)の下側にPTO出力軸(111)を変速するPTO変速部(157)を設けたことを特徴とする請求項1か請求項2の何れか1項に記載の作業車両の走行変速装置。
【請求項4】
トランスミッションケース(8)の外壁を通して主変速部(150)の第一シンクロチェンジ(42)と第二シンクロチェンジ(36)を変速操作するシフトアームの取付開口部を、トランスミッションケース(8)の潤滑オイルの液面OLよりも高い位置に設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業車両の走行変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11335(P2013−11335A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145980(P2011−145980)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】