説明

作業車両

【課題】燃料カットソレノイドにおける電力消費を抑えつつ、燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に何らかの異常が発生した場合には確実に走行を停止することが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両1に、ディーゼルエンジン17、キースイッチ66、スタータモータ61、ストップバルブ62、電力供給時にストップバルブ62を開くとともに電力非供給時にストップバルブ62を閉じる燃料カットソレノイド63、バッテリ26、バッテリ26から燃料カットソレノイド63への電力の供給およびその停止を切り替えるタイマー回路64、およびバッテリ26から燃料カットソレノイド63へ電力を供給する配線の印加電圧に基づいて当該配線に異常が発生していると判定した場合にはキースイッチ66からディーゼルエンジン17の始動を指示する信号を受信してもスタータモータ61に動作する旨の信号を送信しない制御部50、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストップバルブを開閉するための燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に異常が発生した場合におけるディーゼルエンジンの動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両に搭載されたディーゼルエンジンを停止させる方法としては、ディーゼルエンジンに燃料を供給する経路の中途部に配置されるストップバルブを閉じる方法が知られている。また、ストップバルブを開閉させる方法としては、燃料カットソレノイドを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
燃料カットソレノイドにおける電力消費を抑える観点からは、燃料カットソレノイドに電力が供給されていないときはストップバルブが開き、燃料カットソレノイドに電力が供給されているときはストップバルブが閉じるように燃料カットソレノイドおよびストップバルブを配置し、ディーゼルエンジンを停止させるときに燃料カットソレノイドに電力を供給し、ディーゼルエンジンが停止した後は燃料カットソレノイドへの電力の供給を停止することが望ましい。
しかし、上記方法では、燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に何らかの異常が発生した場合(例えば、配線が断線した場合、配線の中途部に設けられたヒューズが切れた場合等)にストップバルブが開いた状態に保持され、ディーゼルエンジンを停止させることが出来なくなる恐れがある。
【0004】
このような問題を解消する方法としては、燃料カットソレノイドに電力が供給されているときはストップバルブが開き、燃料カットソレノイドに電力が供給されていないときはストップバルブが閉じるように燃料カットソレノイドおよびストップバルブを配置し、ディーゼルエンジンを駆動しているときは燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に常時電圧を印加する方法が挙げられる。この方法によれば燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に何らかの異常が発生した場合には燃料カットソレノイドに電力が供給されなくなり、ストップバルブが閉じてエンジンが停止する。
しかし、上記方法は通常の使用時に燃料カットソレノイドに電力を供給し続けることとなるため、燃料カットソレノイドにおける電力消費が大きくなり、特に燃料カットソレノイドに電力を供給するバッテリの容量が小さい場合には好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2507320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みて為されたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする問題は、燃料カットソレノイドにおける電力消費を抑えつつ、燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に何らかの異常が発生した場合には確実に走行を停止することが可能な作業車両を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ディーゼルエンジンと、前記ディーゼルエンジンの始動および停止を指示するキースイッチと、前記ディーゼルエンジンを始動するスタータと、前記ディーゼルエンジンに燃料を供給する経路の中途部に設けられるストップバルブと、前記ストップバルブを開閉する燃料カットソレノイドと、電力を供給するバッテリと、前記バッテリと前記燃料カットソレノイドとを接続する配線の間に設けられ、これらの接続のオン・オフ状態を切り替える電力切り替え部と、前記配線において前記バッテリから前記電力切り替え部への印加電圧を検知し、前記印加電圧に基づいて、前記燃料カットソレノイドに電力を供給可能であると判定した場合には前記キースイッチの操作による前記ディーゼルエンジンの始動を可能とし、前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記キースイッチの操作による前記ディーゼルエンジンの始動を牽制する制御部と、を具備する。
【0009】
請求項2においては、前記ディーゼルエンジンにより駆動される走行部と、前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達する駆動力伝達経路の中途部に設けられ、前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達可能な状態と伝達不能な状態とを切り替える駆動力切り替え部と、を具備し、前記制御部は、前記ディーゼルエンジンの駆動中において、前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記駆動力切り替え部に信号を送信することにより駆動力切り替え部を前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達不能な状態に切り替える。
【0010】
請求項3においては、光、音、振動、あるいはこれらの組み合わせにより作業者の知覚を刺激することが可能な報知部を具備し、前記制御部は、前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記報知部に信号を送信することにより前記報知部を動作させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、燃料カットソレノイドにおける電力消費を抑えつつ、燃料カットソレノイドに電力を供給する配線に何らかの異常が発生した場合には確実に走行を停止することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】除雪機を示す左側面図。
【図2】除雪機の要部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では図面を参照しつつ、本発明に係る作業車両の実施の一形態である除雪機1について説明する。
図1に示す除雪機1は走行経路上に積もっている雪を取り除き、当該走行経路から離れた位置に移動させる装置である。本実施形態の除雪機1はいわゆる歩行型の除雪機であり、作業者は、走行する除雪機1の後方を歩きつつ、除雪機1の各部の操作を行う。
図1および図2に示す如く、除雪機1は機体2、除雪部12、ディーゼルエンジン17、回転数センサ70、スタータモータ61、ストップバルブ62、燃料カットソレノイド63、除雪クラッチ18、HST19、斜板モータ20、走行クラッチ21、差動機構22、左旋回モータ23L、右旋回モータ23R、昇降シリンダ24、発電機25、バッテリ26、昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、回転数センサ29、タイマー回路64、ヒューズ65、操作ユニット30および制御部50を具備する。
【0014】
機体2は除雪機1の主たる構造体を成す部材である。機体2はメインフレーム3、ミッションケース4、一対のクローラ5L・5R、昇降フレーム9および機体カバー11を備える。メインフレーム3は機体2の主たる構造体を成す部材である。ミッションケース4はメインフレーム3の後端部に固定される。一対のクローラ5L・5Rは本発明に係る走行部の実施の一形態であり、ディーゼルエンジン17により駆動される。クローラ5Lはメインフレーム3の左側に設けられ、クローラ5Rはメインフレーム3の右側に設けられる。クローラ5Lは駆動輪6L、従動輪7L、およびこれらに巻回されるクローラベルト8Lを備える。同様に、クローラ5Rは駆動輪6R、従動輪7R、およびこれらに巻回されるクローラベルト8Rを備える。昇降フレーム9はメインフレーム3とともに機体2の主たる構造体を成す部材である。昇降フレーム9はメインフレーム3に対して昇降可能に支持される。機体カバー11は昇降フレーム9に固定され、機体2の上部を覆う。
【0015】
除雪部12は除雪カバー13、オーガ14、ブロワ15およびシュータ16を備える。
除雪カバー13は機体2の前方に配置され、昇降フレーム9の前端部に固定され、オーガ14およびブロワ15を収容する。オーガ14は除雪機1の走行経路上に積もっている雪を破砕しつつ後方に掻き込む(搬送する)。ブロワ15はオーガ14により掻き込まれた雪を上方に跳ね飛ばす。シュータ16はブロワ15により跳ね飛ばされた雪をガイドしつつ除雪カバー13の外部に放出し、放出された雪が落下する方向および距離を調整する。
昇降フレーム9がメインフレーム3に対して上下移動することにより、昇降フレーム9の前端部に固定された除雪カバー13(ひいては除雪部12)もメインフレーム3(ひいては、機体2)に対して上方あるいは下方に移動する。このように、除雪部12は機体2に昇降可能に支持される。
【0016】
ディーゼルエンジン17は除雪機1の主たる駆動源であり、一対のクローラ5L・5Rおよび除雪部12を駆動する。ディーゼルエンジン17は防振ゴムを介して昇降フレーム9に固定される。ディーゼルエンジン17の出力軸は図示せぬ駆動力伝達機構を介して除雪部12(厳密には、オーガ14およびブロワ15)に接続され、ディーゼルエンジン17の駆動力により駆動される。
【0017】
回転数センサ70はディーゼルエンジン17の回転数(厳密には、ディーゼルエンジン17の出力軸の回転数)を検知するタコメータであり、当該回転数に係る情報を電気信号として送信する。
【0018】
スタータモータ61は本発明に係るスタータの実施の一形態である。本実施形態のスタータモータ61は電動式のモータであり、ディーゼルエンジン17の出力軸を回転駆動することによりディーゼルエンジン17を始動する。
【0019】
ストップバルブ62は本発明に係るストップバルブの実施の一形態である。ストップバルブ62はディーゼルエンジン17に燃料を供給する経路(不図示)の中途部に設けられ、回動アーム62aに連結される。回動アーム62aの回動に応じてストップバルブ62が移動(摺動)することにより、「開いた状態(当該経路が閉塞されず、燃料がディーゼルエンジン17に供給可能な状態)」および「閉じた状態(当該経路が閉塞され、燃料がディーゼルエンジン17に供給不能な状態)」を切り替えることが可能である。
【0020】
燃料カットソレノイド63は本発明に係る燃料カットソレノイドの実施の一形態であり、ストップバルブ62を開閉するものである。本実施形態の燃料カットソレノイド63の一端部は回動アーム62aに連結され、他端部はディーゼルエンジン17の外部に固定される。燃料カットソレノイド63に電力が供給されている(通電されている)とき、燃料カットソレノイド63は収縮し、回動アーム62aは一方に回動し、ストップバルブ62は閉じる(閉じた状態に保持される)。燃料カットソレノイド63に電力が供給されていない(通電されていない)とき、燃料カットソレノイド63は伸長し、回動アーム62aは他方に回動し、ストップバルブ62は開く(開いた状態に保持される)。
【0021】
除雪クラッチ18はディーゼルエンジン17と除雪部12との間で駆動力を伝達する図示せぬ駆動力伝達機構の中途部に設けられる。本実施形態の除雪クラッチ18はいわゆる電磁クラッチであり、ディーゼルエンジン17から除雪部12への駆動力の伝達およびその停止を切り替える。
【0022】
HST(Hydraulic Static Transmission;静油圧式無段変速機)19はいわゆる斜板式の無段変速機であり、斜板の角度を変更することにより入力軸に対する出力軸の回転方向(正転、逆転)を変更するとともに入力軸の回転数に対する出力軸との回転数の比率を変更する。HST19の入力軸は図示せぬ駆動力伝達機構を介してディーゼルエンジン17の出力軸に接続される。HST19の入力軸からHST19に入力されたディーゼルエンジン17の駆動力は変速された後、HST19の出力軸から出力される。なお、HST19の斜板の角度を所定の角度に保持することにより、HST19はHST19の入力軸が回転してもHST19の出力軸が回転しない中立状態(駆動力が伝達されない状態)に保持することが可能である。
【0023】
斜板モータ20は電動式のサーボモータであり、その出力軸は図示せぬリンク機構を介してHST19の斜板に連結される。斜板モータ20の出力軸が回動することにより、HST19の斜板の角度を変更することが可能である。
本実施形態ではHST19はディーゼルエンジン17の駆動力を一対のクローラ5L・5Rに伝達する駆動力伝達経路の中途部に設けられる。また、斜板モータ20がHST19の斜板の角度を変更することにより、「ディーゼルエンジン17の駆動力を一対のクローラ5L・5Rに伝達可能な状態」とディーゼルエンジン17の駆動力を一対のクローラ5L・5Rに伝達不能な状態」とが切り替えられる。従って、HST19および斜板モータ20を合わせたものは本発明に係る駆動力切り替え部の実施の一形態に相当する。
【0024】
走行クラッチ21はディーゼルエンジン17とHST19との間で駆動力を伝達する図示せぬ駆動力伝達機構の中途部に設けられる。本実施形態の走行クラッチ21はいわゆる電磁クラッチであり、ディーゼルエンジン17からHST19への駆動力の伝達およびその停止を切り替える。
差動機構22はHST19により変速されたディーゼルエンジン17の駆動力を更に変速して一対のクローラ5L・5R(駆動輪6L・6R)に伝達する。本実施形態の差動機構22は一対の遊星歯車機構22L・22Rを備える。本実施形態の一対の遊星歯車機構22L・22Rは互いに左右対称な形状を有し、いずれもサンギア、キャリア、アウターギアおよび複数のプラネタリギアを備える。一対の遊星歯車機構22L・22Rはミッションケース4に収容される。一対の遊星歯車機構22L・22Rのサンギアはいずれも図示せぬ駆動力伝達機構を介してHST19の出力軸に接続され、一対の遊星歯車機構22L・22Rのキャリアはそれぞれ一対のクローラ5L・5Rに接続される。
【0025】
左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rは除雪機1を旋回させるための電動式のモータである。本実施形態では、左旋回モータ23Lの出力軸に設けられたウォームギアがウォームホイールとしての遊星歯車機構22Lのアウターギアに噛合することにより、左旋回モータ23Lが遊星歯車機構22Lに接続される。同様に、右旋回モータ23Rの出力軸に設けられたウォームギアがウォームホイールとしての遊星歯車機構22Rのアウターギアに噛合することにより、右旋回モータ23Rが遊星歯車機構22Rに接続される。左旋回モータ23Lを回転駆動し、遊星歯車機構22Lに駆動力を入力する(遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させる)ことにより、遊星歯車機構22Lのキャリア(クローラ5Lの回転数)を変更可能である。同様に、右旋回モータ23Rを回転駆動し、遊星歯車機構22Rに駆動力を入力することにより、遊星歯車機構22Rのキャリア(クローラ5Rの回転数)を変更可能である。左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給する電力を適宜調整し、左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rの回転数の間に差分を発生させることにより、一対のクローラ5L・5Rの回転数の間に差分が発生し、除雪機1は一対のクローラ5L・5Rのうち回転数が小さい方を内側として旋回する。
【0026】
昇降シリンダ24は複動式の油圧シリンダ、ポンプおよび電動式モータを備え、これらを一つのユニットとして組み上げたものである。昇降シリンダ24の電動式モータに通電することにより昇降シリンダ24のポンプが回転駆動され、当該ポンプが当該油圧シリンダに作動油を圧送し、当該油圧シリンダが伸長または収縮する。
図1に示す如く、昇降シリンダ24の油圧シリンダの一端部および他端部は、それぞれ「メインフレーム3に設けられたブラケット3a」および「昇降フレーム9に設けられたブラケット9a」に回動可能に連結される。昇降シリンダ24が伸長したとき除雪部12は機体2に対して上昇し、昇降シリンダ24が収縮したとき除雪部12は機体2に対して下降する。このように、昇降シリンダ24は機体2に対して除雪部12を昇降させる。
【0027】
発電機25はディーゼルエンジン17の駆動力により除雪機1の各部に供給するための電力を発生させるものである。ディーゼルエンジン17の出力軸は発電機25の入力軸に接続される。ディーゼルエンジン17の出力軸の回転に伴って発電機25の入力軸が回転することにより、発電機25は電力を発生させる。
【0028】
バッテリ26は本発明に係るバッテリの実施の一形態である。バッテリ26は発電機25に接続され、発電機25により発生した電力を蓄える。バッテリ26は蓄えた電力を後述する制御部50により制御されるドライバ群(昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R等)を介して昇降シリンダ24(厳密には、昇降シリンダ24の電動式モータ)、左旋回モータ23L、右旋回モータ23Rおよび斜板モータ20に供給する。また、バッテリ26は後述するヒューズ65およびタイマー回路64を経て、燃料カットソレノイド63に電力を供給する。
【0029】
昇降用ドライバ27はバッテリ26と昇降シリンダ24とを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から昇降シリンダ24への電力の供給およびその停止を切り替えることにより、昇降シリンダ24の伸長、収縮および長さの保持を行う。
【0030】
左旋回用ドライバ28Lはバッテリ26と左旋回モータ23Lとを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から左旋回モータ23Lへの電力の供給およびその停止を切り替える。右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26と右旋回モータ23Rとを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給およびその停止を切り替える。左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28RはいずれもPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)制御を行うためのスイッチング素子を備え、制御部50から受信したパルス信号(電気信号)に対応するデューティ比でスイッチング動作する。制御部50が当該パルス信号のデューティ比を変更することにより、左旋回用ドライバ28Lを経て左旋回モータ23Lに供給される電力量および右旋回用ドライバ28Rを経て右旋回モータ23Rに供給される電力量を変更することが可能である。
【0031】
回転数センサ29はHST19の出力軸と差動機構22との間で駆動力を伝達する駆動力伝達機構を構成する図示せぬ伝動軸の回転数を検知するタコメータであり、当該回転数に係る情報(除雪機1が直進している場合における一対のクローラ5L・5Rの回転数、ひいては除雪機1の走行速度に係る情報)を電気信号として送信する。
【0032】
タイマー回路64は本発明に係る電力切り替え部の実施の一形態である。タイマー回路64はバッテリ26と燃料カットソレノイド63とを接続する配線(バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線)の中途部に設けられる。タイマー回路64はバッテリ26および燃料カットソレノイド63の接続のオン・オフ状態を切り替える。より詳細には、タイマー回路64はバッテリ26および燃料カットソレノイド63が電気的に接続された(バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給可能な)「オン状態」と、バッテリ26および燃料カットソレノイド63が電気的に遮断された(バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給不能な)「オフ状態」とを切り替える。
本実施形態のタイマー回路64は四つの端子64a・64b・64c・64dを有し、端子64aは後述する制御部50に接続され、端子64bは基準電位点に接続され、端子64cは後述するヒューズ65に接続され、端子64dは燃料カットソレノイド63に接続される。端子64aに電気信号(信号)が入力されたとき、端子64cと端子64dとが電気的に接続される(タイマー回路64がオンになる)。そして、端子64aに電気信号が入力された時点から予め設定された時間が経過するまでは端子64cと端子64dとが電気的に接続された状態が保持され、当該設定された時間が経過した後は端子64cと端子64dとが電気的に遮断される(タイマー回路64がオフになる)。
【0033】
ヒューズ65はバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線の中途部かつタイマー回路64よりもバッテリ26寄りとなる部分に設けられ、当該配線に定格以上の電流が流れた場合に溶断することにより「バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給するための電気回路」を保護する。
【0034】
操作ユニット30は作業者が除雪機1の各部を操作するためのものであり、機体2の後部に設けられる。操作ユニット30はハンドル31、キースイッチ66、変速レバー32、変速操作センサ33、昇降レバー34、昇降操作センサ35、左旋回レバー36L、左旋回操作センサ37L、右旋回レバー36R、右旋回操作センサ37R、走行クラッチレバー38、走行クラッチスイッチ39、除雪クラッチスイッチ41、手動エンジン停止レバー67および警告ランプ68を備える。
【0035】
ハンドル31は除雪機1による除雪作業を行う際に作業者が手で持って姿勢を保持するための部材である。本実施形態のハンドル31は金属管を適宜屈曲することにより製造される。ハンドル31の前下端部は昇降フレーム9の後端部に固定され、ハンドル31の後上部は除雪機1の機体2の後方に突出する。
【0036】
キースイッチ66は本発明に係るキースイッチの実施の一形態であり、作業者がディーゼルエンジン17の始動および停止を指示するためのものである。
本実施形態のキースイッチ66はハンドル31を覆うハンドルカバー45に設けられる。作業者がキースイッチ66に形成された鍵穴に鍵を差し込んで回動させることにより、キースイッチ66は「オフ状態」、「アクセサリーオン状態」、「イグニッション状態」のいずれかの状態に切り替わり、これらの状態に対応する信号(電気信号)を除雪機1の各部に送信することが可能である。本実施形態のキースイッチ66は「オフ状態」のときにのみキースイッチ66から鍵を着脱することが可能であり、「オフ状態」と「イグニッション状態」との間の切り替えは必ず「アクセサリーオン状態」を経由する。
【0037】
変速レバー32は作業者が後述する制御部50に除雪機1の前進、後進および走行停止を指示し、かつ前進時または後進時における除雪機1の走行速度を指示するための部材である。変速レバー32はハンドル31に回動可能に連結される。作業者が変速レバー32を回動させ(操作し)、ハンドル31に対する変速レバー32の回動角度を変更することにより、変速レバー32は除雪機1の前進、後進および走行停止を指示し、前進時または後進時における除雪機1の走行速度を設定(指示)することが可能である。
変速操作センサ33は変速レバー32をハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられ、変速レバー32の回動角度、ひいては「変速レバー32が前進、後進および走行停止のいずれを指示しているか、ならびに前進時または後進時における除雪機1の走行速度の指示値」を検知する。本実施形態の変速操作センサ33はポテンショメータであり、変速レバー32の回動角度に係る情報を電気信号として送信する。
【0038】
昇降レバー34は作業者が除雪部12の上昇、下降および昇降停止を後述する制御部50に指示するための部材である。昇降レバー34はハンドル31に回動可能に連結される。作業者が昇降レバー34を回動させ(操作し)、昇降レバー34を予め設定された「上昇位置」、「下降位置」および「昇降停止位置」の三つの位置のいずれかに移動させることにより、昇降レバー34は除雪部12の上昇、下降および昇降停止を指示可能である。
【0039】
昇降操作センサ35は「昇降レバー34が予め設定された上昇位置、下降位置および昇降停止位置のいずれに配置されているか(昇降レバー34が除雪部12の上昇、下降および昇降停止のいずれを指示しているか)」を検知する。昇降操作センサ35は昇降レバー34が上昇位置に配置されていると検知した場合には「上昇信号」を電気信号として送信し、下降位置に配置されていると場合には「下降信号」を電気信号として送信し、昇降停止位置に配置されていると検知した場合には電気信号(信号)を送信しない。
本実施形態の昇降操作センサ35は昇降レバー34に設けられる一対のスイッチであり、昇降レバー34が上昇位置に配置されたときには当該一対のスイッチの一方がオンになり、昇降レバー34が下降位置に配置されたときには当該一対のスイッチの他方がオンになり、昇降レバー34が昇降停止位置に配置されたときには当該一対のスイッチがいずれもオフになる。本実施形態では、昇降操作センサ35を構成する一対のスイッチのオン・オフの組み合わせがそれぞれ「上昇信号を送信する」、「下降信号を送信する」、および「信号を送信しない」に相当する。
【0040】
左旋回レバー36Lはハンドル31の左側部に回動可能に連結され、右旋回レバー36Rはハンドル31の右側部に回動可能に連結される。左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rはいずれも、これらのレバーの先端部(後端部)がハンドル31の下方に移動する方向に(左側面視で時計回りに)回動するように図示せぬバネで付勢されている。
作業者が左手で左旋回レバー36Lまたは右旋回レバー36Rのいずれかとハンドル31とを合わせて握り、適宜回動させる(これらのレバーを操作する)ことにより、左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rは除雪機1の機体2の左旋回、右旋回および旋回停止(直進)を後述する制御部50に指示することが可能である。
【0041】
左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lをハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられるポテンショメータであり、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rをハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられるポテンショメータである。
左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lの回動角度を検知し、当該回動角度に応じた電気信号(電圧)を送信する。同様に、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rの回動角度を検知し、当該回動角度に応じた電気信号(電圧)を送信する。
本実施形態の場合、後述する制御部50は左旋回レバー36Lの回動角度が大きい(作業者が左旋回レバー36Lを強く握り込む)ほどクローラ5Lの回転数を減少させ、右旋回レバー36Rの回動角度が大きい(作業者が右旋回レバー36Rを強く握り込む)ほどクローラ5Rの回転数を減少させる制御を行う。
【0042】
走行クラッチレバー38は作業者が走行クラッチ21を操作するための部材である。
走行クラッチレバー38はハンドル31の後端部の上側に回動可能に連結される。
走行クラッチレバー38は走行クラッチレバー38の先端部(後端部)が上方に回動する向きに(左側面視で反時計回りに)図示せぬバネで付勢される。作業者がハンドル31および走行クラッチレバー38を一緒に握ったとき(走行クラッチレバー38の先端部が下方に回動しているとき)、走行クラッチレバー38は「クラッチ入」を指示する。作業者が走行クラッチレバー38に触れずに走行クラッチレバー38の先端部が上方に回動しているとき、走行クラッチレバー38は「クラッチ切」を指示する。
走行クラッチスイッチ39は走行クラッチレバー38に設けられるスイッチであり、走行クラッチレバー38が「クラッチ入」および「クラッチ切」のいずれを指示しているかを検出する。走行クラッチスイッチ39は走行クラッチレバー38が「クラッチ入」を指示しているときにその旨を示す電気信号(オン信号)を送信し、「クラッチ切」を指示しているときに電気信号を送信しない。
【0043】
除雪クラッチスイッチ41はボタンと一体的に構成されるスイッチであり、ハンドルカバー45に設けられる。除雪クラッチスイッチ41が「クラッチ入」を指示しているときにはその旨を示す電気信号(オン信号)を送信し、除雪クラッチスイッチ41は「クラッチ切」を指示しているときには電気信号を送信しない。
【0044】
手動エンジン停止レバー67はディーゼルエンジン17を手動で停止させるためのレバーである。手動エンジン停止レバー67は制御部50およびバッテリ26を収容するとともにハンドル31に固定されるカバー46に回動可能に支持される。手動エンジン停止レバー67は図示せぬワイヤにより回動アーム62aに接続される。
作業者が手動エンジン停止レバー67を回動させたとき、当該ワイヤは後方に引き寄せられ、回動アーム62aは一方に回動し、ストップバルブ62が閉じてディーゼルエンジン17への燃料の供給が停止されるので、ディーゼルエンジン17が停止する。
【0045】
警告ランプ68は本発明に係る報知部の実施の一形態である。警告ランプ68は後述する制御部50から電気信号を受信することにより発光し、作業者に「燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線(本実施形態の場合、厳密にはバッテリ26からヒューズ65を経てタイマー回路64に至る配線)に何らかの異常が発生した」旨を報知する。
【0046】
制御部50は除雪機1の各部の動作(除雪機1の走行、除雪機1の旋回(操向)、除雪部12の駆動、除雪部12の昇降、ディーゼルエンジン17の始動および停止等)を制御するものであり、ハンドル31に固定される。
制御部50は種々のプログラム等を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、当該演算の結果等を記憶することができる。本実施形態の制御部50はバスで接続されたCPU、ROM、RAM等を備える。
【0047】
制御部50は除雪クラッチ18、斜板モータ20、走行クラッチ21、昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、スタータモータ61、タイマー回路64(厳密には、タイマー回路64の端子64a)および警告ランプ68に接続され、これらに電気信号を送信することが可能である。
また、制御部50は回転数センサ70、斜板モータ20、回転数センサ29、変速操作センサ33、昇降操作センサ35、左旋回操作センサ37L、右旋回操作センサ37R、走行クラッチスイッチ39、除雪クラッチスイッチ41およびキースイッチ66に接続され、これらから電気信号を受信することが可能である。
【0048】
制御部50は電圧検出線69を介して「バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線」に接続される。より詳細には、電圧検出線69の一端部は制御部50に接続されるとともに電圧検出線69の他端部は「バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線においてヒューズ65とタイマー回路64とで挟まれる部分」に接続される。従って、制御部50は「バッテリ26と燃料カットソレノイド63とを接続する配線においてバッテリ26からタイマー回路64への印加電圧(本実施形態の場合、バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線においてバッテリ26からタイマー回路64までの部分に印加されている電圧)を検知することが可能である。
【0049】
以下では、制御部50による除雪機1の走行制御について説明する。
作業者がハンドル31および走行クラッチレバー38を一緒に握り、走行クラッチスイッチ39が制御部50に「オン信号」を送信したとき、「オン信号」を受信した制御部50は走行クラッチ21に「クラッチ入り信号」を送信し、「クラッチ入り信号」を受信した走行クラッチ21は「入」となってディーゼルエンジン17からHST19に駆動力を伝達可能な状態に切り替わる。作業者が走行クラッチレバー38から手を離したとき、走行クラッチスイッチ39は制御部50に電気信号を送信せず、走行クラッチスイッチ39から電気信号を受信しない制御部50は走行クラッチ21に電気信号を送信せず、制御部50から電気信号を受信しない走行クラッチ21は「切」となってディーゼルエンジン17からHST19への駆動力の伝達を停止する状態に切り替わる。
作業者が変速レバー32を回動させ、ある回動角度で保持したとき、変速操作センサ33は変速レバー32の回動角度に係る情報を制御部50に電気信号として送信する。制御部50は変速操作センサ33から受信した電気信号に基づき、変速レバー32が除雪機1の前進、後進および走行停止(中立)のいずれを指示しているか、並びに、前進時または後進時における除雪機1の走行速度の指示値(設定値)を判定し、その判定結果に対応する電気信号を斜板モータ20に送信する。斜板モータ20は制御部50から受信した電気信号に基づいてHST19の斜板の角度を変更し、HST19の入力軸に対する出力軸の回転方向(正転、逆転および停止)および入力軸の回転数に対する出力軸との回転数の比率を変更する。このように、制御部50は除雪機1の走行(前進、後進、走行停止および走行時の速度)を制御する。
【0050】
作業者が除雪クラッチスイッチ41を一度押すとオンとなり、制御部50に制御信号が送信され、制御部50は除雪クラッチ18を「入」とし、除雪部12に駆動力を伝達可能とする。作業者が除雪クラッチスイッチ41を再度押すとオフとなり、制御部50に制御信号が送信され、制御部50は除雪クラッチ18を「切」とし、除雪部12への駆動力の伝達を停止する。
作業者が昇降レバー34を「上昇位置」に回動したとき、昇降操作センサ35は「上昇信号」を制御部50に送信し、制御部50は昇降用ドライバ27に「上昇指令信号」を送信し、昇降シリンダ24を伸長させ、除雪部12を上昇させる。また、作業者が昇降レバー34を「下降位置」に回動したとき、昇降操作センサ35は「下降信号」を制御部50に送信し、制御部50は昇降用ドライバ27に「下降指令信号」を送信し、昇降シリンダ24を収縮させ、除雪部12を下降させる。作業者が昇降レバー34を「昇降停止位置」に回動したとき、昇降操作センサ35から制御部50に制御信号は送信されず、昇降シリンダ24は伸長も収縮もせず、除雪部12の高さは保持される。
左に旋回するために作業者が左旋回レバー36Lを握ったとき、左旋回レバー36Lの回動角度が左旋回操作センサ37Lにより検知され、その検知信号は制御部50に送信され、制御部50は当該検知信号に対応するデューティ比のパルス信号を左旋回用ドライバ28Lに送信し、左旋回用ドライバ28Lは受信したパルス信号と同じデューティ比でバッテリ26から左旋回モータ23Lに電力を供給して駆動し、遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させ、遊星歯車機構22Lのキャリア(クローラ5L)の回転数を減少させる。一方、右旋回モータ23Rは遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を減少させない。その結果、クローラ5Lの回転数はクローラ5Rの回転数よりも小さくなり、除雪機1は左に旋回する。
右に旋回するために作業者が右旋回レバー36Rを握ったとき、制御部50、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rの動作は先に説明した「除雪機1が左に旋回する場合」と左右対称となるため、説明を省略する。
作業者が左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rのいずれにも触れていない場合、左旋回操作センサ37Lおよび右旋回操作センサ37Rから制御部50に検知信号が送信されないため、左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rは駆動されず除雪機1は旋回しない(直進する)。
【0051】
以下では、制御部50によるディーゼルエンジン17の始動制御について説明する。
制御部50はディーゼルエンジン17の始動制御において、バッテリ26からタイマー回路64への印加電圧を検知し、当該印加電圧に基づいて、燃料カットソレノイド63に電力を供給可能であると判定した場合にはキースイッチ66の操作によるディーゼルエンジン17の始動を可能とし、燃料カットソレノイド63に電力を供給不能であると判定した場合にはキースイッチ66の操作によるディーゼルエンジン17の始動を牽制する。以下、ディーゼルエンジン17の始動制御の詳細を示す。
キースイッチ66が「オフ状態」に保持されているとき、キースイッチ66は除雪機1の各部に電気信号を送信しない(実質的には各部にオフ信号を送信することに相当する)。その結果、キースイッチ66が「オフ状態」のときにはバッテリ26から除雪機1の各部に電力を供給するための配線の中途部に設けられたリレースイッチ群(不図示)がオフとなり、除雪機1の各部の動作が停止する。
【0052】
作業者がキースイッチ66の鍵穴に鍵を差し込んで回動させることによりキースイッチ66を「オフ状態」から「アクセサリーオン状態」に切り替えたとき、バッテリ26から除雪機1の各部(この場合、昇降シリンダ24、斜板モータ20、左旋回モータ23L、右旋回モータ23R、制御部50等)に電力を供給するための配線の中途部に設けられたリレースイッチ群(不図示)に電気信号(オン信号)が送信され、当該リレースイッチ群がオンとなり、除雪機1の各部に電力が供給される。
【0053】
キースイッチ66が「オフ状態」から「アクセサリーオン状態」に切り替えられたとき、動作(演算)可能となった制御部50は、電圧検出線69を介して検知された「バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線においてバッテリ26からタイマー回路64までの部分に印加されている印加電圧」に基づいて、「タイマー回路64が仮にオン状態であったならばバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給可能である」または「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である」のいずれであるか(換言すれば、バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に異常が発生しているか否か)を判定する。本実施形態では、制御部50は印加電圧が予め設定された値以上である場合(バッテリ26の定格電圧と同程度である場合)には「タイマー回路64が仮にオン状態であったならばバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給可能である(バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に異常は発生していない)」と判定する。また、制御部50は印加電圧が予め設定された値未満である場合(ゼロである場合)には「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である(バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に何らかの異常が発生している)」と判定する。
【0054】
作業者が鍵を回動させてキースイッチ66を「アクセサリーオン状態」から「イグニッション状態」に切り替えたとき、キースイッチ66は「アクセサリーオン状態」における除雪機1の各部の状態を保持し、更に制御部50に「ディーゼルエンジン17の始動を指示する信号(始動信号)」を送信する。
【0055】
制御部50は、「タイマー回路64が仮にオン状態であったならばバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給可能である」と判定しているときにキースイッチ66から始動信号を受信した場合には、スタータモータ61に信号(電気信号)を送信する。制御部50から信号を受信したスタータモータ61は駆動され、ディーゼルエンジン17を始動する。なお、キースイッチ66が「イグニッション状態」にあるときに作業者が鍵から手を離した場合、キースイッチ66の内部に設けられたバネ(不図示)の付勢力により鍵が回動し、キースイッチ66は「アクセサリーオン状態」に切り替わる。
【0056】
制御部50は、「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である」と判定しているときにキースイッチ66から始動信号を受信した場合には、スタータモータ61に信号(電気信号)を送信しない。
その結果、制御部50から信号を受信しないスタータモータ61は駆動されず、ディーゼルエンジン17の始動が牽制される(ディーゼルエンジン17は始動しない)。
【0057】
このように、本実施形態ではバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に何らかの異常が発生している状態で作業者がキースイッチ66を操作してディーゼルエンジン17の始動を指示した場合にはディーゼルエンジン17が始動されない。
従って、バッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に何らかの異常が発生しているにも関わらず作業者がディーゼルエンジン17を始動させ、ディーゼルエンジン17を停止させようとした時点でディーゼルエンジン17を停止させることが出来ないことに気づく」といった事態を回避することが可能である。換言すれば、本実施形態では、燃料カットソレノイド63の動作不良が原因でディーゼルエンジン17を停止出来ない状況にあるときにはディーゼルエンジン17の始動を未然に防ぎ、確実に除雪機1の走行を停止することが可能である。
【0058】
また、制御部50は、「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である」と判定しているときにキースイッチ66から始動信号を受信した場合には、警告ランプ68に信号を送信することにより警告ランプ68を動作(点灯)させる。本実施形態では制御部50が警告ランプ68に送信する電気信号が警告ランプ68を点灯させるための電力(直流電流)を兼ねる。
警告ランプ68が点灯することにより、作業者はバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に異常が発生していること(厳密には、制御部50がその旨の判定をしたこと)を視覚を通じて検知することが可能である。
【0059】
以下では、ディーゼルエンジン17の駆動中にバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に異常が発生した場合の制御部50による除雪機1の走行制御について説明する。
【0060】
制御部50が動作可能な状態にあるとき(キースイッチ66が「アクセサリーオン状態」または「イグニッション状態」にあるとき)、制御部50は予め設定された周期毎に回転数センサ70から受信した電気信号に基づいてディーゼルエンジン17の回転数を算出する。
制御部50は、算出されたディーゼルエンジン17の回転数に基づき、予め設定された周期毎にディーゼルエンジン17が駆動中であるか否かを判定する。
より詳細には、制御部50は、算出されたディーゼルエンジン17の回転数がゼロでない(正の値)である場合には「ディーゼルエンジン17は駆動中である」と判定し、算出された除雪機1の走行速度がゼロである場合には「ディーゼルエンジン17が停止している」と判定する。
また、制御部50が動作可能な状態にあるとき、制御部50は予め設定された周期毎に「タイマー回路64が仮にオン状態であったならばバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給可能である」または「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である」のいずれであるかを判定する動作を繰り返す。
【0061】
制御部50は、「ディーゼルエンジン17は駆動中である」と判定し、かつ「タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能である」と判定した場合(ディーゼルエンジン17の駆動中において、タイマー回路64が仮にオン状態であったとしてもバッテリ26が燃料カットソレノイド63に電力を供給不能であると判定した場合)には、変速操作センサ33から受信した電気信号に関わらず(変速操作センサ33から受信した電気信号に優先して)斜板モータ20に信号(電気信号)を送信することによりHST19を中立状態(ディーゼルエンジン17の駆動力を一対のクローラ5L・5Rに伝達不能な状態)に切り替える。
【0062】
このように、本実施形態ではディーゼルエンジン17の駆動中にバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に異常が発生した場合にはHST19を中立状態に切り替えることにより、燃料カットソレノイド63を動作させてディーゼルエンジン17を停止させることが出来ない状況下でも除雪機1の走行を確実に停止することが可能である。
なお、本実施形態では、上述した制御部50による除雪機1の走行制御により除雪機1が走行を停止した状態で作業者が手動エンジン停止レバー67を操作することにより、ディーゼルエンジン17を別途手動で容易に停止させることが可能である。
【0063】
以下では、制御部50によるディーゼルエンジン17の停止制御について説明する。
作業者が鍵を回動させることによりキースイッチ66を「アクセサリーオン状態」から「オフ状態」に切り替えたとき、バッテリ26から除雪機1の各部(この場合、昇降シリンダ24、斜板モータ20、左旋回モータ23L、右旋回モータ23R、制御部50等)に電力を供給するための配線の中途部に設けられたリレースイッチ群(不図示)に電気信号が送信されなくなり、当該リレースイッチ群がオフとなる。その結果、制御部50にも電力が供給されなくなり、制御部50は動作(演算)を停止する。
制御部50は動作(演算)を停止するとき(厳密には、制御部50に供給される電力の電圧値が低下したとき)、タイマー回路64に電気信号を送信する。
タイマー回路64が制御部50から電気信号を受信したとき(タイマー回路64の端子64aに電気信号が入力されたとき)、タイマー回路64がオンになって端子64cと端子64dとが電気的に接続され、端子64aに電気信号が入力された時点から予め設定された時間が経過するまでの間は端子64cと端子64dとが電気的に接続された状態が保持され、燃料カットソレノイド63に電力が供給される。その結果、ストップバルブ62が閉じて燃料が供給されなくなったディーゼルエンジン17は停止する。
タイマー回路64が制御部50からオフ信号を受信した時点から予め設定された時間が経過した後、タイマー回路64はオフになって端子64cと端子64dとが電気的に遮断され、燃料カットソレノイド63への電力の供給が停止される。その結果、ストップバルブ62は開くが、ディーゼルエンジン17が停止した状態が保持される。
本実施形態ではディーゼルエンジン17を停止させるために燃料カットソレノイド63に電力が供給されるのは「予め設定された時間」の間だけであり、燃料カットソレノイド63における消費電力を最小限に抑えることが可能である。
【0064】
本発明に係る作業車両は本実施形態の除雪機1には限定されず、ディーゼルエンジンを具備する他の種々の作業車両(例えば、トラクタ、管理機等の農業用作業車両等)を含む。
本発明に係る駆動力切り替え部は本実施形態のHST19および斜板モータ20を合わせたものには限定されない。例えば、走行クラッチ21は本発明に係る駆動力切り替え部の他の実施形態となり得る。
本発明に係る報知部は本実施形態の警告ランプ68に限定されず、光、音、振動、あるいはこれらの組み合わせにより作業者の知覚を刺激することが可能なものを広く含む。本発明に係る報知部の別実施例としては音を発生するブザー等が挙げられる。
本実施形態の制御部50は、自身がバッテリ26から燃料カットソレノイド63に電力を供給する配線に印加されている印加電圧を検知する(電圧計としての機能を備える)が、本発明はこれに限定されず、制御部とは別体の電圧計により印加電圧を検知し、制御部は当該電圧計から印加電圧を示す電気信号を受信しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 除雪機(作業車両)、5L・5R 一対のクローラ(走行部)、17 ディーゼルエンジン、19 HST(駆動力切り替え部)、20 斜板モータ(駆動力切り替え部)、26 バッテリ、50 制御部、61 スタータモータ(スタータ)、62 ストップバルブ、63 燃料カットソレノイド、64 タイマー回路(電力切り替え部)、66 キースイッチ、68 警告ランプ(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンの始動および停止を指示するキースイッチと、
前記ディーゼルエンジンを始動するスタータと、
前記ディーゼルエンジンに燃料を供給する経路の中途部に設けられるストップバルブと、
前記ストップバルブを開閉する燃料カットソレノイドと、
電力を供給するバッテリと、
前記バッテリと前記燃料カットソレノイドとを接続する配線の間に設けられ、これらの接続のオン・オフ状態を切り替える電力切り替え部と、
前記配線において前記バッテリから前記電力切り替え部への印加電圧を検知し、前記印加電圧に基づいて、前記燃料カットソレノイドに電力を供給可能であると判定した場合には前記キースイッチの操作による前記ディーゼルエンジンの始動を可能とし、前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記キースイッチの操作による前記ディーゼルエンジンの始動を牽制する制御部と、
を具備する作業車両。
【請求項2】
前記ディーゼルエンジンにより駆動される走行部と、
前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達する駆動力伝達経路の中途部に設けられ、前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達可能な状態と伝達不能な状態とを切り替える駆動力切り替え部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記ディーゼルエンジンの駆動中において、前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記駆動力切り替え部に信号を送信することにより駆動力切り替え部を前記ディーゼルエンジンの駆動力を前記走行部に伝達不能な状態に切り替える、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
光、音、振動、あるいはこれらの組み合わせにより作業者の知覚を刺激することが可能な報知部を具備し、
前記制御部は、
前記燃料カットソレノイドに電力を供給不能であると判定した場合には前記報知部に信号を送信することにより前記報知部を動作させる、
請求項1または請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−87656(P2013−87656A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227004(P2011−227004)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】