説明

作業車輌の安全フレーム

【課題】 充分な強度を有すると共に組立てを容易にできるものでありながら、コストダウンと精度の向上を図ることができる構成とする。
【解決手段】 安全フレーム20はフェンダ7を亘るように門形に形成されたフレーム本体10と、該フレーム本体10を機体4に支持する下部フレーム11とを有している。該フレーム本体10の左右それぞれの下端は、フェンダ7の位置で該下部フレーム11に連結している。さらに、該下部フレーム11の下端は左右それぞれリヤアクスルケース25にブラケット17等を介して連結されている。また、左右の下部フレーム11は連結部材12で互いに連結されている。プレス加工を用いて板状の部材を左右の側端部にて折り曲げ、縁部28を形成しリブ構造とし、上端部を内方に折り曲げ、折曲部27を形成し、下部内面に結合部15となる部材を一体に固着させた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに代表される作業車輌の安全フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車輌には、作業車輌の転倒時等に、操作者を保護するための安全フレームがある。この安全フレームには、運転席の後部に左右の後部フェンダを亘るように門形に形成されたフレーム本体を有しており、さらに該フレーム本体を補強するために下部フレームと補強部材とを後部フェンダとリヤアクスルケースに固定する構成のもの(例えば特許文献1参照)や、補強部材が無くても下部フレーム自体の部材に別部材を溶接し強度を得ているものが提案されている。
【特許文献1】特開平9−315244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような安全フレームには、補強部材を装着したり、補強部材を装着しなくても、別部材を溶接するなどして、充分な強度を得る必要があった。特に、上述のような別部材を溶接する方法はコストが高くなったり、溶接ひずみによる不良精度などの問題があった。
【0004】
そこで、本発明は充分な強度を有すると共に組立てを容易にできるものでありながら、コストダウンと精度の向上を図ることができる、作業車輌の安全フレームを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図7参照)、運転席(6)の後部において左右の後部フェンダ(7)に亘るように門形に形成されたフレーム本体(10)と、該フレーム本体(10)の両端部と連結されると共に機体(25)に固定される下部フレーム(11)と、を有する作業車輌(1)の安全フレーム(20)において、
前記下部フレーム(11)は、プレス加工により、板状部材の左右側端部を内方に折曲して縁部(28)を形成すると共に、その上端部を内方に折曲して折曲部(27)を形成し、かつ前記板状部材の下部内面に結合部(15)を一体に固着してなり、
前記下部フレーム(11)の板状部材は、前記縁部(28)をタイヤ側に突出して前記後部フェンダ(7)の内側面に沿って配置し、かつ前記折曲部(27)を前記後部フェンダ(7)部分にて前記フレーム本体(10)の端部に連結すると共に、前記結合部(15)を前記機体(25)に固定してなる、
ことを特徴とする作業車輌(1)の安全フレーム(20)にある。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記下部フレーム(11)の結合部(15)は、防振ゴム(14)を介して前記機体(25)に一体のブラケット(17)に固定され、
前記安全フレーム(20)を外力により機体前後方向に撓ました際、前記下部フレーム(11)の縁部(28)が前記ブラケット(17)に当接してなる、
請求項1記載の作業車輌(1)の安全フレーム(20)にある。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る本発明によると、安全フレームを、フレーム本体とプレス形成された下部フレームにより構成するので、堅牢であると共に組立てを容易にできるものでありながら、下部フレームは、板状部材の両側端部を折曲して縁部を形成したので、充分な強度を有し、かつ別部材を溶接してリブ構造としたもの等に比し、コストダウンを図ることができると共に、溶接による歪みの発生を抑えて、精度の向上を図ることができる。
【0009】
更に、下部フレームを構成する板状部材は、その両側端面全長に亘って縁部を形成し、かつ該縁部をタイヤ側に突出して配置したので、該縁部がタイヤの泥等を落すスクレーパとして機能し、かつ縁部は、プレスにより形成されてアール部分を有するので、泥の付着も少ない。
【0010】
請求項2に係る本発明によると、安全フレームは、防振ゴムを介して取付けられているので、エンジンなどの振動が直接安全フレームに伝わることがなく、安全フレームがビビリ音等の騒音を生じることを防止できると共に、安全フレームに大きな外力が生じる際、縁部によりL字状に折曲げられた下部フレームの下端がブラケットに当接して、安全フレームが大きく変形することを妨げ、安全フレームとしての機能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図7に沿って説明する。
【0012】
図1に示すように、作業車輌1は前輪2及び後輪3にて支持されている機体4を有している。機体4の前部のボンネット内にはエンジン(図示せず)が搭載されており、該ボンネットの後方には運転操作部5が配設されている。該運転操作部5には該ボンネットの後部にステアリングホイール8等の操作部が配設されており、該ステアリングホイール8の後方には座席シート6が配設されている。また、該座席シート6の両側にはフェンダ7が配設されており、該フェンダ7により該後輪3の上部が覆われている。図2に示すように、該座席シート6の下方には、機体を構成するミッションケース23が配設されており、該ミッションケース23の側方には左右それぞれにリヤアクスルケース25が配設されている。該リヤアクスルケース25は、後輪3を固定し得る車軸を回転自在に支持している。
【0013】
一方、作業車輌1の後部には、作業機(例えばロータリ耕耘ユニット)を昇降リンク機構を介して装着することが可能である。昇降リンク機構はリフトアーム9に吊り下げ支持され、リフトアーム9は、その根元側に配置されたリフトシリンダの伸長/収縮動作によって上下に回動される。したがって、リフトシリンダを油圧駆動して作業機を上昇/下降動作させることが可能である。
【0014】
図2、図3、図4に示すように、座席シート6の後部には、トラクタ転倒時に操作者を保護する安全フレーム20が配設されている。該安全フレーム20は操作者の略々頭上方の高さに亘って伸びる門形のフレーム本体10と、該フレーム本体10を機体4に支持する下部フレーム11とを有している。該フレーム本体10の左右それぞれの下端は、フェンダ7の位置でそれぞれ連結金具30,30が一体に固着されており、該連結金具30は、前記下部フレーム11に固着された支持具31に連結している。さらに、該下部フレーム11の下端は左右それぞれリヤアクスルケース25にブラケット17等を介して連結されている。また、左右の下部フレーム11,11は連結部材12で互いに連結されている。連結部材12はミッションケース23の上部とボルト13により固定され、座席シート6後方で機体とも固定されている。これにより、安全フレーム20は堅牢であると共に組立てを容易にできるものとなる。
【0015】
図3、図4、図5に示すように、連結金具30は平面視コ字形の部材からなり支持具31に固定され、フレーム本体10の下部と嵌合している。該連結金具30はボルト32とピン33によりフレーム本体10を固定し、ピン33を外すとフレーム本体10を後方へ傾倒させることが可能となり、ピン33にて傾倒した状態を維持できるようにしている。これにより格納時などにフレーム本体10を傾倒しておくことができる。
【0016】
図5に示すように、下部フレーム11の結合部15は防振ゴム14を介してブラケット17にボルトで固定されている。なお、このとき下部フレーム11の下端とブラケット17はわずかに間隔を空け当接させずに固定されている。これにより、エンジンなどの振動が安全フレーム20に伝わることがなく、安全フレーム20がビビリ音等の騒音を生じることを防止できると共に、安全フレーム20に大きな外力が生じる際、縁部28によりL字状に折曲げられた下部フレーム11の下端がブラケット17に当接して、安全フレーム20が大きく変形することを防ぐことができる。
【0017】
図6及び図7に示すように、下部フレーム11は、長方形で板状の部材をプレス加工により構成されており、その左右両側端部には長手方向全長に亘って外側にアール部分を有するようにL字状に折り曲げられた縁部28が形成され、かつ上端部を内方に折り曲げられた折曲部27が形成されている。折曲部27には支持具31を固定するための孔35が形成され、本体部11aには連結部材12を固定するための孔36が設けられている。下部内面には結合部15となる部材が溶接により一体に固着されており、該結合部15は防振ゴム14を介してブラケット17に固定するための孔37が設けられている。これにより、下部フレーム11は、板状部材の両側端部を折曲して縁部28を形成しリブ構造となるようにしたので、充分な強度を有し、かつ別部材を溶接してリブ構造としたもの等に比し、コストダウンを図ることができると共に、溶接による歪みの発生を抑えて、精度の向上を図ることができる。また、下部フレーム11を配設するときは、上述した縁部28をタイヤ側に突出させ、フェンダ7の内側面に沿うようにしている。これにより、後輪3に付着してきた泥等を落すことが可能となり、かつアール部分を有するので泥の付着も少なくできる。
【0018】
以上のように本発明の実施の形態に係る作業車輌1によると、安全フレーム20を、フレーム本体10とプレス形成された下部フレーム11により構成するので、堅牢であると共に組立てを容易にできるものでありながら、下部フレーム11は、板状部材の両側端部を折曲して縁部28を形成したので、充分な強度を有し、かつ別部材を溶接してリブ構造としたもの等に比し、コストダウンを図ることができると共に、溶接による歪みの発生を抑えて、精度の向上を図ることができる。
【0019】
更に、下部フレーム11を構成する板状部材は、その両側端面全長に亘って縁部28を形成し、かつ該縁部28をタイヤ側に突出して配置したので、該縁部がタイヤの泥等を落すスクレーパとして機能し、かつ縁部28は、プレスにより形成されてアール部分を有するので、泥の付着も少ない。
【0020】
また、安全フレーム20は、防振ゴム14を介して取付けられているので、エンジンなどの振動が直接安全フレーム20に伝わることがなく、安全フレーム20がビビリ音等の騒音を生じることを防止できると共に、安全フレーム20に大きな外力が生じる際、縁部28によりL字状に折曲げられた下部フレーム11の下端がブラケット17に当接して、安全フレーム20が大きく変形することを妨げ、安全フレーム20としての機能を向上することができる。
【0021】
なお、本実施の形態では下部フレームをブラケット17によりリヤアクスルケース25に固定したが、ブラケットを適当な形にしてミッションケース23に固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る安全フレームを装着した作業車輌の側面図。
【図2】本発明に係る安全フレームを装着した作業車輌の背面図。
【図3】作業車輌後部の安全フレーム取付部の側面図。
【図4】本発明に係る安全フレームの背面図。
【図5】本発明に係る安全フレームの側面図。
【図6】下部フレーム単体の斜視図。
【図7】下部フレーム単体を示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は上方視図、(d)は(b)のA−A断面矢視断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 作業車輌
6 運転席(座席シート)
7 フェンダ
10 フレーム本体
11 下部フレーム
14 防振ゴム
15 結合部
17 ブラケット
20 安全フレーム
25 機体(リヤアクスルケース)
27 折曲部
28 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の後部において左右の後部フェンダに亘るように門形に形成されたフレーム本体と、該フレーム本体の両端部と連結されると共に機体に固定される下部フレームと、を有する作業車輌の安全フレームにおいて、
前記下部フレームは、プレス加工により、板状部材の左右側端部を内方に折曲して縁部を形成すると共に、その上端部を内方に折曲して折曲部を形成し、かつ前記板状部材の下部内面に結合部を一体に固着してなり、
前記下部フレームの板状部材は、前記縁部をタイヤ側に突出して前記後部フェンダの内側面に沿って配置し、かつ前記折曲部を前記後部フェンダ部分にて前記フレーム本体の端部に連結すると共に、前記結合部を前記機体に固定してなる、
ことを特徴とする作業車輌の安全フレーム。
【請求項2】
前記下部フレームの結合部は、防振ゴムを介して前記機体に一体のブラケットに固定され、
前記安全フレームを外力により機体前後方向に撓ました際、前記下部フレームの縁部が前記ブラケットに当接してなる、
請求項1記載の作業車輌の安全フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−15472(P2007−15472A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197034(P2005−197034)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】