説明

便座装置

【課題】便座表面から人体の皮膚を暖める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギ−効率のよい便座装置を提供することにある。
【解決手段】少なくとも一部に弾性体層13を有する便座6と、前記弾性体層13の形状変化量を感知するセンサ装置20と、制御装置9を備え、前記センサ装置20からの弾性体層13の形状変化の情報に応じて便座ヒ−タ12の通電を制御することにより、使用者の体重や着座姿勢に関わらず、便座の温度斑による不快感を感じることがなく、しかも、無駄な通電を削減することができ、快適でエネルギ効率の高い便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上面に載置した本体に、ヒンジ係合部を介して回動自在に枢着した便座の内部にヒータを備えた便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座装置の便座に使用される樹脂は一般的に硬質樹脂であるため、非常に座り心地が悪いものであった。また座面の端面は皮膚を圧迫し血流の流れを阻害するため、長時間着座した場合は、痺れや痛みが生じてしまうこともあった。特に高齢者あるいは障害者の方の中には、便意が明確でなく、用をたすまで1時間以上便座に着座される方もいるため、このような着座感の悪さは性能上の課題となっていた。
一方そのような不具合を解決するため、座面を、荷重がかかる際および荷重が開放される際に、変形する性質を有する低反発物質を用いる構成が提案されている。低反発物質は大変形が可能であるため、様々な形状の臀部に倣うことが可能であり、しかも着座時の衝撃を充分に吸収することができるので、座位を安定させながら静かに着座状態に移行できる。
また、着座状態では使用者の臀部の形状に倣って変形しているため、効率的に座圧を分散させることができるため、局部的に圧迫される点が生じず、長時間座っても痺れ、痛み等を感じることがなく、しかも内蔵した発熱体により着座面を暖房できるため、非常に良好な座り心地を実現できるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面図を示すものである。図4に示すように、使用者の皮膚に接触する便座1の表面から表皮材2、紐状発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の便座装置においては、紐状ヒータの熱は表皮材を介して使用者の臀部に伝わる構成であるが、使用者の体重や着座姿勢の差により、表皮材および紐状ヒータに加わる圧力に差が生しるのが一般であり、しかも同一使用者においても便座の部位によって圧力が異なる。上記のように部位によって圧力が異なる場合、使用者は体感温度として、強い圧力が加わる部位は熱く感じ、弱い圧力が加わる部位は温度が低く感じるため、便座全体に温度斑があるように感じて不快感を感じる。また、使用者の体型などによって実際には使用者の皮膚に触れていない部分の便座表面においても他の部分同様の均一な温度となるように通電を行っているため、省エネルギ−の観点において効率が悪いという課題を有していた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への影響度が小さい便座を有し、かつ便座表面から人体の皮膚を暖める際に無駄な熱損失が少なく、快適でエネルギ−効率のよい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は便器上に載置する本体と、少なくとも一部に弾性体層を有する便座と、前記弾性体層の形状変化量を感知するセンサ装置と、制御装置を備え、前記センサ装置からの弾性体層の形状変化の情報に応じて便座ヒ−タの通電を制御するものである。
【0006】
これにより、使用者の体重や着座姿勢に関わらず、便座の温度斑による不快感を感じることがなく、しかも、無駄な通電を削減することができ、快適でエネルギ効率の高い便座装置となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の便座装置は、適度なクッション性をもった快適な便座を備え、使用者の体重や着座姿勢などの条件にかかわらずに、温度斑がなく快適で、エネルギ−効率のよい便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、便器上面に載置する本体と、少なくとも一部に弾性体層を有する便座と、便座内に配設した便座ヒータと、前記弾性体層の形状変化量を感知するセンサ装置と、制御装置を備え、前記センサ装置からの弾性体層の形状変化量の情報に応じて便座ヒータの通電状態を制御することにより、弾性体層が備える適度なクッション性で使用者の臀部の血流を妨げることもなく、長時間着座しても疲れない便座とすることができる。さらに弾性体層の形状変化量の情報に応じて便座ヒ−タ−の通電状態を制御しているため、便座の変形量すなわち使用者の臀部と便座表面の密着度に応じて、便座表面温度の高さおよび分布を自動調整する機能を備えているため、使用者の体型などの条件にかかわらず、快適に臀部の暖房をしながら無駄な熱損失を抑えることのできる便座装置とすることができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明のセンサ装置として、圧力センサを使用することにより、使用者が便座に着座することにより弾性体層に加わる圧力のデータ基づいて、便座ヒータの通電状態を制御することとなり、使用者が快適な体感温度を感じる便座暖房を提供することができるものである。
【0010】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のセンサ装置として、歪みゲージを使用することにより、特に、便座の表面部の変形量と使用者の臀部と便座ヒータとの近接距離の相関関係のデータ基づいて、便座ヒータの通電状態を制御することとなり、使用者がより快適な体感温度を感じる便座装置を提供することができるものである。
【0011】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の便座ヒ−タを複数に分割して構成し、分割した便座ヒータごとに異なった制御を行い便座の温度および分布を自由に変化させることのできる構成とすることにより、センサ装置からの情報に応じて、便座ヒータの温度および分布を自由に変化させることのできることとなり、より快適な便座装置を提供することができるものである。
【0012】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の便座ヒータを面状ヒータとすることにより、便座の表面はほぼ全面にわたり温度斑を少なくして加熱することができるため、より快適な便座装置を提供することができるものである。
【0013】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の便座ヒータを正温度係数特性を有するPTCヒータとすることにより、正温度係数特性による抵抗値の変化によって、通電初期の温度の低いときはハイパワーで短時間に昇温することができ、温度が高くなるとローパワーになる自己温度制御機能を有しているため、通電開始から短時間で快適に使用することができるとともに安全性の高い便座装置を提供することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置全体の外観図、図2は便座の断面図、図3は便座装置の便座ヒータと制御装置の模式図である。
【0016】
図に示すように、本発明の第1の実施の形態における便座装置は着座面を暖房する暖房便座であって、便座6と、便蓋7と、本体8を主要構成部材としている。
【0017】
本体8の内部には、洗浄用の温水を作り貯湯する熱交換タンク(図示せず)、局部を洗浄する洗浄手段(図示せず)、洗浄水の噴出を制御する電磁弁(図示せず)、洗浄後の局部を乾燥する乾燥ユニット(図示せず)、排便の臭気を脱臭する脱臭ユニット(図示せず)、便座装置の各機能を制御する制御装置9等が内蔵されており、使用者は洗浄手段から吐水される温水を局部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。
【0018】
この便座装置は、便器10の上面に載置した本体8をゴムブッシュ及びボルトを介して便器10に固定し、便座6と便蓋7は本体8に回動自在に枢支している。
【0019】
図2に示すように、便座6は使用者の皮膚と接触する面であり変形自在な軟質で使用者の臀部になじむシート状の表皮材11、屈曲変形自在な面状の便座ヒーター12、弾性を備えた軟質樹脂材からなる弾性体層13、硬質樹脂成型品からなる補強部材14、硬質樹脂成型品からなる便座下部部材15を主構成部材として構成している。
【0020】
補強部材14と便座下部部材15はビス16で螺合してあり、補強部材14は真ん中をビス止めのために平面形状17とし、両側はそれぞれ凸部18として強度を上げている。そして端部19には便座下部部材15の端部と嵌合するように長手方向に一定間隔で爪を設けてある。
【0021】
本実施の形態では、表皮材11としてPPフィルムを使用している。表皮材11としては0.3mm以下の薄いフィルムで構成され、耐薬品性のある、かつ熱容量の少ないものであれば他の材質によるフィルムでもかまわない。
【0022】
伸縮性を備えた屈曲変形自在な便座ヒータ12は表皮材11に近い弾性体層13の上部に配置してあり、使用者の皮膚表面との距離が小さいため、便座ヒ−タ12で発生した熱が他の部分に逃げる余地が少なく、使用者の皮膚へ効率的に伝わる。そのために便座部の材質に厚さ3mm程度のポリプロピレンなどの硬質樹脂を用いていた従来の暖房便座に比べ、少ない通電率で同様の便座表面温度を得ることが可能となる。また、下面は発泡ポリウレタンの弾性体層13が断熱材の機能を発揮するため、周囲に無駄な熱を放出することが少ない構成となっている。
【0023】
便座ヒータ12は、通電初期のヒータ温度が低いときは抵抗値が小さく大容量の電流が流れ、ヒータ温度が高くなると抵抗値が大きくなり、電流容量小さくなる正温度係数特性を有するPTCヒータを使用しており、温度上昇が早く、かつ自己温度制御機能を備えているため省エネと安全性を確保することができる。
【0024】
弾性体層13としては高反発発泡ポリウレタンを使用している。弾性体層13の発泡ポリウレタンは、主として内部の気泡がつながった独立気泡構造をとり、ガスの出入りをなくし、空気によるクッション性を持たせているが、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。また、弾性体層13は補強部材14の周りを覆うように形成してあり、着座したときも臀部が直接、補強部材14に接しないようにしてある。
【0025】
補強部材14は便座7に弾性体層13を設けることにより、便座7全体の剛性不足で体重を支えきれないことを想定して設けたものである。通常、従来までの便座は上下樹脂部材を上下ともU字型にして上下のU字部分と逆U字部分の開放面を合わせ面として一体に構成して構造体とすることにより体重を支えるようにしているが、本実施の形態では上部の構成部材は軟質樹脂からなる弾性体層13であるため硬質樹脂同士の合わせで支えることができないことに対する対策として、便座下部部材15と補強部材14で体重を支えるように構成したものである。
【0026】
弾性体層13内の複数箇所に圧力センサ20が配設してあり、便座7に使用者が座ることで発生する荷重に応じて変化する圧力値を検知することが可能である。
【0027】
また、表皮材11の裏面の複数箇所に歪みゲージ21が取り付けてあり、便座に使用者が座ることで発生する便座表面の歪み量を検知することが可能である。
【0028】
圧力センサ20および歪みゲージ21は制御装置9と電気的に接続してあり、それらの検知した情報を制御装置9にて、あらかじめ測定しておいた測定数値と照らし合わせることにより、使用者が便座に座った場合に、便座のどの部分に皮膚が触れているかを間接的に推定することが可能な構成である。
【0029】
図3は便座7に配設した便座ヒータ12と制御装置9の模式図でであり、便座ヒ−タ12は左右それぞれ3個づつ合計6個の部分に分割した状態で構成しておりそれぞれの便座ヒータ12a、12b、12c、12d、12e、12fは制御装置9に並列接続してあり、それぞれの便座ヒータに流れる電流値を制御装置9によって、それぞれに調整することが可能である。
【0030】
上記圧力センサ20と歪みゲージ21の検知データによって推定した使用者の皮膚が触れている便座表面の範囲と強さに応じて、分割された便座ヒ−タ12a、12b、12c、12d、12e、12fの通電状態をそれぞれに調整することで、使用者が座って触れているところだけを暖め、触れていない部分の通電をカットしたり弱めたりすることで全体の通電率を下げても、使用者の暖房感を損なうことがなく、快適に臀部の暖房をしながら無駄な熱損失を抑えることのできる省エネルギ−の便座装置とすることができる。
【0031】
なお、本実施の形態においては便座ヒ−タ12は6個の部分に分割して配設したが、分割数はこれに限るものではなく、より細かく分割することにより、きめ細かい温度分布の制御が可能となる。
【0032】
また、本実施の形態においては便座ヒータとして正温度係数特性を有するPTCヒータを使用したがこれに限るものではなく、金属材料による面状ヒータやコードーヒータ等の軟質性を備えたヒータを同様に使用することが可能である。
【0033】
また、本実施の形態においてはセンサ装置として圧力センサと歪みゲージを併用したがこれに限るものではなく、圧力センサまたは歪みゲージの単独使用でも本実施の形態に近い作用効果を得ることができる。また、上記2種類以外のセンサを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明に関わる便座装置は、使用者の皮膚が触れている部分のみ暖房することで、エネルギ−損失の少ない暖房を行うことが可能となるので、人体に直接接触して使用する他の暖房装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の便座の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における便座装置の便座と制御装置の模式図
【図4】従来の便座装置の断面図
【符号の説明】
【0036】
6 便座
8 本体
9 制御装置
10 便器
12 便座ヒータ
13 弾性体層
20 圧力センサ(センサ装置)
21 歪みゲージ(センサ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置する本体と、少なくとも一部に弾性体層を有する便座と、便座内に配設した便座ヒータと、前記弾性体層の形状変化量を感知するセンサ装置と、制御装置を備え、前記センサ装置からの弾性体層の形状変化量の情報に応じて便座ヒ−タの通電状態を制御する便座装置。
【請求項2】
センサ装置として圧力センサを使用したことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
センサ装置として歪みゲージを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
便座ヒ−タは複数に分割して構成し、センサ装置からの情報に応じて、分割した便座ヒータごとに異なった制御を行い便座の温度および分布を自由に変化させることのできる構成の請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
便座ヒータは面状ヒータである請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項6】
便座ヒータは正温度係数特性を有するPTCヒータである請求項1〜5のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97937(P2007−97937A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293585(P2005−293585)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】