説明

係止具

【課題】被係止体の径に関わらず係止対象を被係止体に係止し、且つ係止対象の脱落を防止すると共に係止対象の取付けを容易に行う。
【解決手段】スロットルケーブル30を送風管20に係止するために、スロットルケーブル30と送風管20との間に介在する係止具10であって、送風管20に回り付く大円弧部1を線状部材によって円弧状に形成することで、送風管20の径に関わらずスロットルケーブル30を係止し、アーム部2を送風管20から半径方向外側に膨らむように湾曲させ、スロットルケーブル30を保持する小円弧部3を、線状部材によって円弧状に形成することで、スロットルケーブル30の取付けを容易とすると共に、送風管20に当接又は近接させ送風管20との間にスロットルケーブル30が留まる領域Sを形成することで、スロットルケーブル30の脱落を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばブロア装置の送風機にスロットルワイヤを係止する部材として、例えば以下の特許文献1,2に記載の係止具が知られている。特許文献1に記載の係止具にあっては、送風管に嵌着される円形の環状部材を有し、この環状部材の外周部に円周方向に沿って複数の凹部が並設され、これらの凹部のいずれかにスロットルワイヤを入れ込み係止することによって当該スロットルワイヤを送風管に係止する構成とされている。また、特許文献2に記載の係止具にあっては、噴管を全周に亘って締め付ける締付バンド部の上部に、長孔の貫通孔を有する環状のワイヤ保持部が連設されており、このワイヤ保持部の貫通孔にスロットルワイヤを挿通することによって当該スロットルワイヤを噴管に係止する構成とされている。
【特許文献1】特許4030286号公報
【特許文献2】特開2002−86027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1,2の係止具にあっては、取り付け可能な被係止体の径に制限があり、当該径以上の被係止体には対応することができない。
【0004】
また、上記特許文献1の係止具にあっては、係止対象(スロットルワイヤ)が、径方向に開口を有する凹部によって保持されるため、当該開口から離脱し脱落する虞があった。一方、上記特許文献2に記載の係止具にあっては、ワイヤ保持部に形成された貫通孔に係止対象を保持するため、係止対象の脱落を防止することはできるが、係止対象を貫通孔に通すことが必要で取付けが面倒である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、被係止体の径に関わらず係止対象を被係止体に係止することができ、且つ係止対象の脱落を防止できると共に係止対象の取付けを容易に行うことができる係止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による係止具(10)は、係止対象(30)を被係止体(20)に係止するために、係止対象(30)と被係止体(20)との間に介在する係止具(10)であって、大円弧部(1)、アーム部(2)、及び小円弧部(3)を一体に有する線状部材であり、大円弧部(1)は、軸線方向視において円弧状に構成され、被係止体(20)に回り付き、アーム部(2)は、大円弧部(1)の一端に連設され、被係止体(20)から半径方向外側に膨らむように湾曲し、小円弧部(3)は、アーム部(2)の一端に連設され、軸線方向視において大円弧部(1)より小さい円弧状に構成されてアーム部(2)の一端より半径方向内側の被係止体(20)側に位置すると共に、被係止体(20)に当接又は近接して係止対象(30)を円弧内に通し保持することを特徴とする。
【0007】
このような係止具(10)によれば、被係止体(20)に回り付く大円弧部(1)が線状部材によって円弧状に構成されているため、大円弧部(1)を被係止体(20)の径に合わせて広げることができ、被係止体(20)の径に関わらず係止対象(30)を被係止体(20)に係止することが可能となる。また、例えば小円弧部(3)から係止対象(30)が脱落した場合であっても、小円弧部(3)が、大円弧部(1)からアーム部(2)を介して被係止体(20)に当接又は近接しているため、径方向外側に湾曲するアーム部(2)と被係止体(20)との間の領域に係止対象(30)が留まり、係止対象(30)の脱落を防止することができると共に、小円弧部(3)が線状部材によって円弧状に構成され円弧内に係止対象(30)を通して保持するため、係止対象(30)の取付けを容易に行うことができる。
【0008】
ここで、線状部材は、弾性変形可能な鋼材又は樹脂から成ることが好ましい。このような構成を採用した場合、大円弧部(1)、アーム部(2)、及び小円弧部(3)を容易に弾性変形させることができるので、様々な径の被係止体(20)及び係止対象(30)に合わせて広げることで対応することができる。また、弾性変形させた後には復元力によって元の形状に戻るため、被係止体(20)及び係止対象(30)に密着させることができる。
【0009】
また、大円弧部(1)及び小円弧部(3)は、同一平面上に位置してないことが好ましい。このような構成を採用した場合、被係止体(20)の軸線方向において、大円弧部(1)と小円弧部(3)との間に離間隙間D2が形成されるため、大円弧部(1)と小円弧部(3)とが同一平面上にある場合の小円弧部(3)の円弧隙間をD1とすると、小円弧部(3)の最大円弧隙間は斜め方向の円弧隙間(D1+D21/2となって円弧隙間D1より大きくなり、従って、係止対象(30)を斜めにしながら上記円弧隙間(D1+D21/2に進入させることで容易に小円弧部(3)に係止できると共に、係止後は係止対象(30)が被係止体(20)の軸線方向と略平行になるため、この状態での円弧隙間(被係止体の軸線方向に対して係止対象を斜めにしない場合の円弧隙間)はD1であり、係止体対象(30)を斜めにしながら進入させる際の円弧隙間(D1+D21/2より小さく、従って、係止対象(30)が小円弧部(3)から離脱し難くなり、一層脱落を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、被係止体の径に関わらず係止対象を係止することができ、且つ係止対象の脱落を防止できると共に係止対象の取付けを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る係止具の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る係止具を被係止体及び係止対象と共に示す斜視図、図2(a)は、図1中の係止具を軸線方向から見た図、図2(b)は、図2(a)を上から見た図、図3は、係止具が係止対象を被係止体に係止している状態を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の係止具10は、ブロア装置(不図示)における蛇腹状の送風管20に、当該送風管20に並行して配置されるスロットルケーブル30を係止するための係止具である。
【0012】
図1及び図2に示すように、係止具10は、大円弧部1と、アーム部2と、小円弧部3とを有しており、これら各部を一体成形して成る線状部材である。この係止具10は、弾性変形可能な鋼材又は樹脂から成り、送風管20の所望の位置(図3参照)に取り付けられ、適当な締付け力をもって密着する。
【0013】
大円弧部1は、送風管20に係止具10を装着する部分であり、図2(a)に示すように、軸線方向視において大きな円弧状に形成され、送風管20に回り付く構成とされている。この大円弧部1は、直径がAとされており、この直径Aが送風管20に当接して回り付く最小径(基準径)となっている。
【0014】
アーム部2は、大円弧部1及び小円弧部3を繋ぐ部分であり、大円弧部1の一端に連設され、送風管20から半径方向外側に膨らむように湾曲する湾曲形状とされている。このアーム部2は、送風管20との間に領域Sを確保する構成とされている。
【0015】
小円弧部3は、スロットルケーブル30が通され当該スロットルケーブル30を保持するための部分であり、アーム部2の一端に連設され、軸線方向視において大円弧部1より小さい円弧状に形成され、アーム部2の一端より半径方向内側の送風管20側で領域S側に位置していると共に、その湾曲部分が送風管20に当接又は近接するように構成されている。そして、小円弧部3は、その直径がBとされている。
【0016】
また、小円弧部3には、軸線方向視において領域S側に開口する円弧隙間D1が形成されている。この円弧隙間D1は、スロットルケーブル30を進入させるための隙間であり、小円弧部3の弾性変形に伴って間隔が拡大/縮小可能とされている。
【0017】
ここで、図2(b)に示すように、係止具10は軸線方向に沿って円弧が徐々にずれるように構成されて、螺旋状を成している。すなわち、大円弧部1と小円弧部3とは同一平面にはなく、アーム部2(大円弧部1の一端)と小円弧部3との間には、離間隙間D2が形成されている。具体的に、アーム部2は、大円弧部1に対して送風管20の軸線方向の一方側に傾斜しており、小円弧部3は、アーム部2に対して送風管20の軸線方向の一方側にさらに傾斜している。この構成により、小円弧部3との間に離間隙間D2が形成されている。そのため、小円弧部3には、実質的に斜め方向にスロットルケーブル30を侵入させるための(D1+D21/2の円弧隙間が確保されている。
【0018】
このような構成を有する係止具10にあっては、円弧隙間D1よりも大きい小円弧部3の最大円弧隙間である斜め方向の円弧隙間(D1+D21/2にスロットルケーブル30を斜めにしながら進入させると共に、図1に示す状態において、送風管20の所望の位置で大円弧部1を広げて送風管20に回り付ける。
【0019】
すると、図3に示すように、スロットルケーブル30が送風管20と略平行となって、スロットルケーブル30が係止具10を介して送風管20係止される。このとき、特に蛇腹状の送風管20にあっては、大円弧部1と小円弧部3とを同一溝に進入するようにセットする。このため、送風管20の軸線方向に形成された小円弧部3の離間隙間D2が閉じることになり、大円弧部1と小円弧部3とが略同一平面状に位置することになる。
【0020】
このように、本実施形態にあっては、送風管20に回り付く大円弧部1が線状部材によって円弧状に形成されているため、大円弧部1を送風管20の径に合わせて広げることができ、送風管20の径に関わらずスロットルケーブル30を送風管20に係止することができる。また、例えば小円弧部3からスロットルケーブル30が脱落した場合であっても、小円弧部3が、大円弧部1からアーム部2を介して送風管20に当接又は近接しているため、径方向外側に湾曲するアーム部2と送風管20との間の領域Sにスロットルケーブル30が留まり、スロットルケーブル30の脱落を防止することができると共に、小円弧部3が線状部材によって円弧状に形成され円弧内にスロットルケーブル30を通して保持するため、スロットルケーブル30の取付けを容易に行うことができる。
【0021】
ここで、係止具10は、弾性変形可能な鋼材又は樹脂から成るので、大円弧部1、アーム部2、及び小円弧部3を容易に弾性変形させることができ、様々な径の送風管20及びスロットルケーブル30に合わせて広げることで対応することができる。また、弾性変形させた後には復元力によって元の形状に戻るため、送風管20及びスロットルケーブル30に密着させることができる。
【0022】
また、大円弧部1及び小円弧部3は、同一平面上に位置してないので、送風管20の軸線方向において、大円弧部1と小円弧部3との間に離間隙間D2が形成されるため、大円弧部1と小円弧部2とが同一平面上にある場合の小円弧部3の円弧隙間をD1とすると、小円弧部3の最大円弧隙間は斜め方向の円弧隙間(D1+D21/2となって円弧隙間D1より大きくなり、従って、スロットルケーブル30を斜めにしながら上記円弧隙間(D1+D21/2に進入させることで容易に小円弧部3に係止できる。特に、本実施形態では、送風管20が蛇腹なので同一溝に入って大円弧部1と小円弧部3とが略同一平面上に位置するため、離間隙間D2が閉じ小さい円弧隙間D1によってスロットルケーブル30の脱落が防止されて保持されることになる。また、強く小円弧部3を送風管20に押圧するようにすれば、円弧隙間D1が小さくなり、一層脱落が防止される。
【0023】
なお、送風管20が蛇腹ではない場合には、離間隙間D2は残るが、係止後はスロットルケーブル30が送風管20の軸線方向と略平行になるため、この状態での小円弧部2の円弧隙間(送風管20の軸線方向に対してスロットルケーブル30を斜めにしない場合の円弧隙間)はD1であり、スロットルケーブル30を斜めにしながら進入させる際の円弧隙間(D1+D21/2より小さく、従って、スロットルケーブル30が小円弧部3から離脱し難く、脱落を防止できる。
【0024】
なお、本実施形態においては、アーム部2に領域Sが確保されているため、これに係止対象を通すことにより、複数本の係止対象にも対応することができる。
【0025】
また、本実施形態の係止具10は、一体成形品であり、成形において曲げ方向が同じで、且つ曲げる回数も少ないので、成形が容易であると共に安価とすることができるといった効果もある。
【0026】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、ブロア装置における送風管20及びスロットルケーブル30に係止具10を適用したが、係止具10の適用対象はそれに限定されず、その他の携帯作業機等の被係止体及び係止対象に適用することができる。また、上記実施形態では、特に好ましいとして大円弧部1と小円弧部3とが同一平面上にないようにしているが、同一平面にあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る係止具を被係止体及び係止対象と共に示す斜視図である。
【図2】図1中の係止具を示す図である。
【図3】係止具が係止対象を被係止体に係止している状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…大円弧部、2…アーム部、3…小円弧部、10…係止具、20…送風管(被係止体)、30…スロットルワイヤ(係止対象)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止対象(30)を被係止体(20)に係止するために、前記係止対象(30)と前記被係止体(20)との間に介在する係止具(10)であって、
大円弧部(1)、アーム部(2)、及び小円弧部(3)を一体に有する線状部材であり、
前記大円弧部(1)は、軸線方向視において円弧状に構成され、前記被係止体(20)に回り付き、
前記アーム部(2)は、前記大円弧部(1)の一端に連設され、前記被係止体(20)から半径方向外側に膨らむように湾曲し、
前記小円弧部(3)は、前記アーム部(2)の一端に連設され、軸線方向視において前記大円弧部(1)より小さい円弧状に構成されて前記アーム部(2)の前記一端より半径方向内側の前記被係止体(20)側に位置すると共に、前記被係止体(20)に当接又は近接して前記係止対象(30)を円弧内に通し保持することを特徴とする係止具(10)。
【請求項2】
前記線状部材は、弾性変形可能な鋼材又は樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の係止具(10)。
【請求項3】
前記大円弧部(1)及び前記小円弧部(3)は、同一平面上に位置していないことを特徴とする請求項1又は2記載の係止具(10)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−91056(P2010−91056A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263133(P2008−263133)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】