説明

保冷緩衝包装の方法および包装体

【課題】
ドライアイスを冷却剤とする保冷包装と、プラスチック気泡シートを使用した緩衝包装とを合体させ、ドライアイスによる気泡シートの性能向上という利益を得て、効果的な保冷緩衝包装を提供する。
【解決手段】
ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器(1)の内部に、被包装物品(2)、被包装物品の少なくとも一部を覆うように配置したプラスチック気泡シート緩衝材(3)およびドライアイス片(4)を収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック気泡シートを緩衝材として使用し、ドライアイスを冷却剤として使用する保冷緩衝包装に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルムを形成し、キャップの底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせて、多数の密閉された空気室を有するプラスチック気泡シート(以下「気泡シート」と略称する)が、緩衝包装の材料として、広く使用されている。
【0003】
一方、物品を冷却して温度を下げるため、または低い温度に保っておくために、ドライアイスが使用されている。ドライアイスは、周囲から熱を奪って冷却または保冷の機能を果たし、その効果は大きい。周囲の熱を受けたドライアイスは気化して消滅するので、氷のように周囲を濡らしたりすることもなく、炭酸ガスの充満により問題が生じる使用条件でなければ、使いやすい冷却剤である。しかし、ドライアイスの昇華温度は大気圧下で−78.5℃ときわめて低く、したがって通常の使用環境では速やかに昇華して消滅する。たとえば、小売りされたアイスクリームなどの保冷が可能な時間は、2時間が限度とされている。
【0004】
発明者は、気泡シートが、緩衝性能だけでなく、若干の断熱性能をも有することに着目し、ドライアイスの冷却性能を気泡シートがもつ断熱性能により補助すること、つまり周囲からの熱の侵入を緩和することにより、保冷可能な時間がもっと長くできるのではないかとの期待をもった。実験の結果、期待を超える成果が得られることが確認できた。
【0005】
期待を超える成果とは、ドライアイスと気泡シートとを共存させることにより、気泡シートのキャップが充実して張りのあるものとなり、気泡シートの緩衝性能も断熱性能も向上するということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発明者が見出した上記の新知見を活用し、ドライアイスと気泡シートとの協働効果が得られる、効果的な保冷緩衝包装の方法と、保冷緩衝包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保冷緩衝包装の方法は、ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器の内部に、被包装物品を収容し、プラスチック気泡シート緩衝材を被包装物品の表面の少なくとも一部を覆うように配置し、ドライアイス片を封入して密閉することからなる。
【0008】
本発明の保冷緩衝包装体は、図1にその断面を示すように、ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器(1)、その内部に収容された、被包装物品(2)、被包装物品の少なくとも一部を覆うように配置したプラスチック気泡シート緩衝材(3)、およびドライアイス片(4)からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って保冷緩衝包装を行なえば、ドライアイスによる冷却効果が気泡シートのもつ断熱性能によって助けられるというだけでなく、気泡シートのキャップが充実して張りのあるものになるため、気泡シートのもつ緩衝性能および断熱性能が、ともに通常の使用条件下に得られるレベルより高くなる。
【0010】
この現象は、ドライアイスの昇華によって発生した二酸化炭素ガスが気泡シートを取り巻く環境に充満すると、キャップの内部との分圧の差により、フィルムを通ってキャップ内部に移行し、一方、キャップ内部には元々空気が入っていたから、それらと合体してキャップ内部のガス量が増大することとして理解される。このように環境下では、キャップの外部は空気がかなり排除されているから、空気、つまり窒素と酸素との分圧は著しく低下しており、その差により、キャップ内部にあった空気は外部に出るが、それには時間がかかるので、一時的にはキャップが膨満して、包装時よりは張りのあるキャップができる。
【0011】
気泡シートのキャップが張りのあるものになると、緩衝性能も断熱性能も、ともに高くなる。緩衝性能が高まることは、被包装物の保護にとって有益であり、また、気泡シートのキャップが張りをもつことは、外観上も好ましく、たとえばアイスクリームのように、需用者が包装を開いて直ちに食するというような包装物にあっては、見る者に美観を感じさせ、商品価値を高める。
【0012】
断熱性能が高まることは、ドライアイスのもちをよくする。従来の包装と同じ量を使用しても、冷却効果の持続時間が従来は2時間であったものが、3時間またはそれ以上に延びる。このようにして、より長時間の保冷緩衝包装が可能になるから、従来なら諦めていたような遠距離まで、包装物を運ぶことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する包装容器は、上記のように、「ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器」である。従来のドライアイスを使用する包装においては、被包装物は、主として、ドライアイス片との接触を通じて、ドライアイスのもつ寒冷と昇華の潜熱とで冷却されていた。昇華により発生した低温の二酸化炭素ガスが被包装物を包囲するように存在すれば、それも冷却に役立つが、在来の包装容器は、その点にはあまり関心が向けられていなかったので、低温の二酸化炭素ガスは容易に逸出してしまい、あまり有効ではなかった。
【0014】
ドライアイスと気泡シートとを併用する本発明の包装方法は、上記した機構により気泡シートのキャップを膨満させることによりその緩衝性能および断熱性能を高めるものであるから、気泡シートの周囲に、高濃度の二酸化炭素ガスを存在させる必要がある。そこで、包装容器は従来のものより密閉性が高いものが望ましい。しかし、あまりに密閉性を高くすると、容器内に二酸化炭素ガスが充満して圧力が高くなり、容器を変形させるおそれがあるから、二酸化炭素ガスの逸出を妨げない程度の通気性をもったものを使用するわけである。
【0015】
包装のあり方は、要するに上記の包装容器に、被包装物品、気泡シート緩衝材およびドライアイス片が収容され、気泡シートが被包装物品の少なくとも一部を覆うように配置されていればよい。気泡シートによる被包装物品の被覆は、必要な緩衝能力をそなえた緩衝包装を実現する、という観点からなされていればよい。
【実施例】
【0016】
薄手の段ボール紙(Bフルート)で、ケーキ包装用の手提げ付きの箱を製作した。サイズは、縦22cm、横15cm、高さ10.5cmであって、蓋の部分は、両側壁から延びてL字型に打ち合わさり、合掌する構造であって、立ち上がり部分に手掛け孔が設けてある。この箱の中に、底と両側壁および両端壁を覆うように十字に裁断した気泡シートを1枚敷き、プラスチックのカップ型の容器に入ったアイスクリームを6個配置し、上にもう1枚の、底面と同じ形に裁断した気泡シートをのせた。その上に、厚さが約5mmで縦横が約10cmのドライアイス片2個をのせて、温度が25℃前後の室内に放置した。
【0017】
3時間後に観察したところ、ドライアイス片は約四分の一に小さくなっていたが、気泡シートはキャップが膨れて、丸くなっていた。この時点では、アイスクリームはまだ冷えたままであった。4時間後にはドライアイスが消失したが、その後20分程度は溶けずにいた。気泡シートによる被覆をしなかった場合には、3時間の保冷はできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の緩衝包装体の一例を示す断面図。
【図2】本発明の緩衝包装体において、ドライアイスと共存させた気泡シートのキャップ形状が変化する様子を示す拡大断面図であって、Aは使用当初、つまり製造されたままの状態を、Bは二酸化炭素ガスにより膨張した状態を示す。
【符号の説明】
【0019】
1 包装容器
2 被包装物品
3 プラスチック気泡シート緩衝材
4 ドライアイス片



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器の内部に、被包装物品を収容し、プラスチック気泡シート緩衝材を被包装物品の表面の少なくとも一部を覆うように配置し、ドライアイス片を封入して密閉することからなる保冷緩衝包装方法。
【請求項2】
ドライアイスの昇華により発生した二酸化炭素ガスが逸出することができる程度の通気性を有する包装容器、その内部に収容された、被包装物品、被包装物品の少なくとも一部を覆うように配置したプラスチック気泡シート緩衝材、およびドライアイス片からなる保冷緩衝包装体。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−69910(P2007−69910A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255739(P2005−255739)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】