説明

保持装置およびそれを備える輸送機器

【課題】容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる、保持装置およびそれを備える輸送機器を提供する。
【解決手段】保持装置10は、半球状の両端部を有する円筒状の燃料タンク110が配置される舟形の本体12と、燃料タンク110を本体12の一方主面12aにとどめるための第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bとを含む。一方主面12aには、樋状部16と、燃料タンク110の端部に沿うように湾曲する第1傾斜部18および第2傾斜部20とが設けられる。燃料タンク110に矢印A1方向に移動させるような衝撃が与えられた場合、第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bが伸びて第1傾斜部18に乗り上げるように燃料タンク110が移動する。その後、第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bが縮んで燃料タンク110が元の位置に戻るように移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は保持装置およびそれを備える輸送機器に関し、より特定的には、容器を保持する保持装置およびそれを備える輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料ボンベを左右のアッパフレームにばね付の結束バンドで固定する輸送機器が開示されている。特許文献1の輸送機器では、結束バンドのばねの伸縮によって燃料ボンベが受けた衝撃を吸収できると考えられる。
【特許文献1】特開2005−28987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、燃料ボンベに衝撃が与えられて結束バンドのばねが伸びれば、燃料ボンベの位置がずれるおそれがあった。燃料ボンベの位置がずれると、燃料ボンベに接続される配管等を無理に曲げた状態が維持されるおそれがあった。配管等が無理に曲げられた状態が続くと、配管等に多大な応力がかかるおそれがあった。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる、保持装置およびそれを備える輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の保持装置は、筒状の容器を保持する保持装置であって、前記容器が配置される配置部を有する本体と、伸縮可能に設けられかつ前記容器を前記配置部にとどめる第1帯状部材とを備え、前記配置部は、前記容器の軸方向に対して傾くように延びる第1傾斜部を有する。
【0006】
請求項2に記載の保持装置は、請求項1に記載の保持装置において、前記第1傾斜部は、前記配置部の一端部に設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の保持装置は、請求項2に記載の保持装置において、前記容器の一端部は半球状に形成され、前記第1傾斜部は、前記容器の一端部に沿うように湾曲することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の保持装置は、請求項2に記載の保持装置において、前記第1帯状部材は、前記本体に対して前記配置部の中央よりも前記第1傾斜部側に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の保持装置は、請求項2に記載の保持装置において、前記配置部は、前記配置部の他端部に設けられかつ前記容器の軸方向に対して傾くように延びる第2傾斜部をさらに有することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の保持装置は、請求項5に記載の保持装置において、前記容器の他端部は半球状に形成され、前記第2傾斜部は、前記容器の他端部に沿うように湾曲することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の保持装置は、請求項5に記載の保持装置において、伸縮可能に設けられかつ前記容器を前記配置部にとどめる第2帯状部材をさらに含み、前記第2帯状部材は、前記本体に対して前記配置部の中央よりも前記第2傾斜部側に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の保持装置は、請求項1に記載の保持装置において、前記配置部から液体を排出するために前記本体に接続される排出管をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の輸送機器は、請求項1に記載の保持装置を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の保持装置では、本体の配置部に配置された容器に軸方向に移動させるような衝撃が与えられれば、第1帯状部材が伸びて容器が第1傾斜部に乗り上げるように移動する。このように容器を移動させることによって、容器に与えられた衝撃が第1帯状部材に吸収される。その後、第1帯状部材が縮むことによって、第1傾斜部に乗り上げるように移動した容器が元の位置に戻るように移動する。このように第1傾斜部を設けて第1帯状部材の伸縮とともに容器を振り子のように往復移動させることによって、容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる。ひいては、容器に接続される配管等が無理に曲げられた状態が続くことを防止でき、配管等に多大な応力がかかることを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の保持装置では、配置部の一端部に第1傾斜部が設けられる。そして、容器を軸方向の一端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられれば、第1帯状部材が伸びて容器の一端部が第1傾斜部に乗り上げるように容器が移動する。その後、第1帯状部材が縮むことによって、容器が元の位置に戻るように移動する。これによって、外周面に凹凸がない簡単な形状の容器であっても、容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる。
【0016】
請求項3に記載の保持装置では、容器の半球状に形成された一端部に沿うように第1傾斜部が湾曲する。これによって、軸方向の一端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられた場合に、より確実に、容器を元の位置に戻すことができ、容器の位置ずれを抑えることができる。
【0017】
請求項4に記載の保持装置では、第1帯状部材が配置部の中央よりも第1傾斜部側に配置される。これによって、軸方向の一端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられた場合に、第1帯状部材が縮む力を効率よく容器を元の位置に戻すために作用させることができる。したがって、より確実に、容器を元の位置に戻すことができ、容器の位置ずれを抑えることができる。
【0018】
請求項5に記載の保持装置では、配置部が第2傾斜部をさらに有することによって、軸方向の他端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられても、それを吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる。したがって、より確実に、容器に接続される配管等が無理に曲げられた状態が続くことを防止できる。
【0019】
請求項6に記載の保持装置では、容器の半球状に形成された他端部に沿うように第2傾斜部が湾曲する。これによって、軸方向の他端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられた場合に、より確実に、容器を元の位置に戻すことができ、容器の位置ずれを抑えることができる。
【0020】
請求項7に記載の保持装置では、第2帯状部材が配置部の中央よりも第2傾斜部側に配置される。これによって、軸方向の他端部側に移動させるような衝撃が容器に与えられた場合に、第2帯状部材が縮む力を効率よく容器を元の位置に戻すために作用させることができる。したがって、より確実に、容器を元の位置に戻すことができ、容器の位置ずれを抑えることができる。
【0021】
たとえば容器に高圧ガスが収容される場合、ガスの消費に伴って容器の内圧が低下すれば容器内の温度が低下して容器の表面に結露が生じるおそれがある。結露によって容器の表面に生じた液体(水)が電子部品等の他の部材に付着すれば、他の部材に不具合を生じさせるおそれがある。請求項8に記載の保持装置では、容器の表面に生じた液体を本体の配置部から排出管を介して排出できる。これによって、他の部材を避けるように液体を案内でき、他の部材が濡れることを防止できる。
【0022】
輸送機器では、移動に伴う振動、転倒または軽衝突等によって容器に衝撃が与えられる機会が多い。この発明の保持装置によれば容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができるので、この発明の保持装置は請求項9に記載するように輸送機器に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、容器に与えられた衝撃を吸収できかつ容器の位置ずれを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
ここでは、この発明の一実施形態の保持装置10を輸送機器の一例である自動二輪車100に用いる場合について説明する。
図1は、自動二輪車100を示す左側面図である。図1には、カウル等の外装部品が取り外された状態の自動二輪車100が示されている。
【0025】
まず、図1を参照して自動二輪車100について説明する。
自動二輪車100は、燃料電池システム102を搭載する電動式の輸送機器であり、燃料電池システム102の構成要素が取り付けられるフレーム104を含む。フレーム104は、ヘッドパイプ104a、ヘッドパイプ104aから後方へ斜め下方に延びるフロントフレーム104b、およびフロントフレーム104bに連結されかつ後方へ斜め上方に立ち上がるリアフレーム104cを含む。
【0026】
燃料電池システム102は、水素と外部からの空気とを用いて発電可能な燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという)106、およびセルスタック106に燃料ガスである水素を供給するための2つのタンクユニット108を含む。
セルスタック106は、複数の燃料電池セルを積層することによって構成され、フロントフレーム104bから吊り下げられる。
【0027】
2つのタンクユニット108はそれぞれ、セルスタック106に供給すべき燃料ガス(ここでは水素)を収容する燃料タンク110と、燃料タンク110に接続されるバルブユニット112とを含む。燃料タンク110は、略円筒状に形成され、たとえば35MPa程度の高圧水素を収容する。高圧ガスタンクである燃料タンク110の軸方向両端部は、応力の集中を防ぐために半球状に形成され、丸みを帯びている。バルブユニット112は、電磁バルブやレギュレータ等を含み、燃料タンク110からセルスタック106への水素供給量を制御する。バルブユニット112には、燃料タンク110からの水素をセルスタック106に供給するための供給管114が取り付けられる(図3参照)。
【0028】
このような2つのタンクユニット108のうち、一方はフロントフレーム104b上に設けられる保持装置10によって保持され、他方はリアフレーム104c上に設けられる保持装置10によって保持される。
【0029】
ついで、図2〜図4を参照して、この発明の一実施形態の保持装置10について詳しく説明する。
図2はこの発明の一実施形態の保持装置10を示す斜視図であり、図3はこの発明の一実施形態の保持装置10を示す側面図であり、図4はこの発明の一実施形態の保持装置10を示す平面図である。図3にはタンクユニット108を固定した状態が示されている。
図2〜図4に示すように、保持装置10は、燃料タンク110が寝るように配置される本体12と、燃料タンク110を本体12にとどめるための第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bとを含む。
【0030】
図3に示すように、本体12は、燃料タンク110の表面の3分の1程度を覆うように一方主面12a側が窪んだ舟形に形成される。このように形成される本体12の一方主面12aが、燃料タンク110を配置するための配置部として機能する。本体12の一方主面12aには、矢印A方向に延びる樋状部16と、矢印A方向一端部側の第1傾斜部18と、矢印A方向他端部側の第2傾斜部20とが設けられる。
【0031】
図2に示すように、樋状部16は、燃料タンク110の外周面の一部に沿うようにU字状に形成される。図3に示すように、第1傾斜部18は、矢印A方向(図3では燃料タンク110の軸方向)に対して燃料タンク110の一端部側に傾くように延びる。また、図2および図3に示すように、第1傾斜部18は、燃料タンク110の一端部に沿うように、燃料タンク110の一端部の半径方向外側(本体12の外側)に向けて凸状に湾曲する。第2傾斜部20についても同様であり、第2傾斜部20は、矢印A方向に対して燃料タンク110の他端部側に傾くように延び、燃料タンク110の他端部の一部に沿うように本体12の外側に向けて凸状に湾曲する。すなわち、第1傾斜部18は燃料タンク110の一端部を模るように形成され、第2傾斜部20は燃料タンク110の他端部を模るように形成される。
【0032】
また、図2に示すように、本体12の他方主面12bには、矢印A方向に直交する方向(矢印B方向)に延びる取付部22a,22bおよび固定部24a,24bが設けられる。図3に示すように、他方主面12bにおいて、取付部22aは樋状部16の長手方向(矢印A方向)中央よりも第1傾斜部18側に設けられ、取付部22bは樋状部16の矢印A方向中央よりも第2傾斜部20側に設けられる。また、他方主面12bにおいて、固定部24aは、取付部22a近傍かつ取付部22aよりも第1傾斜部18側に設けられ、固定部24bは取付部22b近傍かつ取付部22bよりも第2傾斜部20側に設けられる。
【0033】
取付部22aはそれぞれ他方主面12bの外縁から延びる台形状の両側面を有し、取付部22aの一方側面には第1帯状部材14aの一端部が取り付けられ、取付部22aの他方側面には第1帯状部材14aの他端部が取り付けられる。これによって、第1帯状部材14aが本体12に対して一方主面12aの中央よりも第1傾斜部18側に配置される。取付部22bは取付部22aと同様に構成され、取付部22bには取付部22aと同様に第2帯状部材14bが取り付けられる。これによって、第2帯状部材14bが本体12に対して一方主面12aの中央よりも第2傾斜部20側に配置される。
【0034】
固定部24a,24bはそれぞれ、本体12をボルト等によって自動二輪車100のフレーム104(図1参照)に固定するために用いられる。
【0035】
このような取付部22a,22bおよび固定部24a,24bはそれぞれ、本体12の一方主面12aを凹ませるようにして設けられる。これによって、図2および図4に示すように、一方主面12aの樋状部16には、取付部22a,22bに対応する位置(反対側の位置)に矢印B方向に延びる凹部26a,26bが設けられる。また、樋状部16には、固定部24a,24bに対応する位置に矢印B方向に延びる凹部28a,28bが設けられる。さらに、固定部24aには、凹部28aに連通するように排出管30が接続される。
【0036】
このような本体12は、たとえばポリプロピレン等の合成樹脂を射出成形することによって得られる。燃料タンク110の大きさには、その製造段階で生じる誤差のためにばらつきがある。このばらつきを考慮して、本体12の大きさは、燃料タンク110が想定される最大の大きさであっても、一方主面12a(樋状部16、第1傾斜部18および第2傾斜部20)に燃料タンク110を配置できるように設定される。
【0037】
図2〜図4に示すように、第1帯状部材14aは、金属帯32とキャッチクリップ34とフック36とを含む。金属帯32は、たとえばステンレス等からなり、燃料タンク110の外周面に沿うようにU字状に曲げられる。金属帯32において一方主面12a側の面には、燃料タンク110の滑り止めのために図示しないゴム等が貼り付けられる。金属帯32の一端部は、取付部22aの一方側面にボルト等によって取り付けられる。キャッチクリップ34は、取付部22aの他方側面に取り付けられる。フック36は、金属帯32の他端部に取り付けられる。
【0038】
図5は第1帯状部材14aの要部を示す側面図であり、図5(a)にはキャッチクリップ34のロックを解除した状態が示され、図5(b)にはキャッチクリップ34をロックした状態が示されている。
【0039】
図3および図5に示すように、キャッチクリップ34は、取付部22aに固定されるベース38(図5参照)、シャフト38aを介してベース38に揺動可能に取り付けられるレバー40、およびそれぞれ伸縮可能に設けられる一対のアーム42a,42b(図3参照)を含む。
【0040】
レバー40は、中央部を矢印A方向に回転可能に挿通するシャフト40a、シャフト40aとの距離を変更可能に設けられるスライダ40b{図5(b)参照}、およびスライダ40bに設けられるシャフト40cを有する。スライダ40bは、図示しないばね等によってシャフト40a側に付勢されている。図5(b)には、スライダ40bをシャフト40aから離間させるように移動させた状態(スライダ40bを引いた状態)が一点鎖線で示されている。
【0041】
図3および図5に示すように、アーム42aは、コイルばねであるばね44、およびばね44に挿通される板状部材46,48を含む。板状部材46の一端部(ここでは上側端部)には、ばね44の一方の開口端に接するばね受け46aが設けられる。また、板状部材48の他端部(ここでは下側端部)には、ばね44の他方の開口端に接するばね受け48aが設けられる。すなわち、ばね44に挿通される板状部材46,48のばね受け46a,48aによってばね44が挟まれる。アーム42bについてもアーム42aと同様に構成される。
【0042】
アーム42a,42bは、レバー40を挟むように矢印A方向に並べて配置される。アーム42a,42bの板状部材46の他端部には、シャフト40aが連結される。これによって、アーム42a,42bがレバー40に揺動可能に取り付けられる。また、アーム42aの板状部材48の一端部と、アーム42bの板状部材48の一端部とは、フック36に掛けるためのシャフト50を介して連結される。
【0043】
このようなキャッチクリップ34では、レバー40から離間するようにシャフト50が引っ張られることによって、アーム42a,42bが伸びる。詳しくは、シャフト50が引っ張られることによって、ばね受け48aがばね44の弾性力に逆らってばね受け46aに近づき、ばね44が縮むとともにアーム42a,42bが伸びる。そして、シャフト50を引っ張る力がばね44の弾性力より小さくなれば、ばね44が伸びてばね受け46aが元の位置に戻り、アーム42a,42bが元の長さに縮む。このようなばね付のキャッチクリップ34を用いることによって、第1帯状部材14aが全体として伸縮可能となる。
【0044】
このような第1帯状部材14aによって、以下のようにして燃料タンク110が本体12に固定される。
まず、図5(a)に示すように、レバー40およびアーム42a,42bが揺動自在な状態でシャフト50をフック36に掛ける。図5(a)にはフック36にシャフト50が掛けられた状態が一点鎖線で示されている。そして、スライダ40bを引きつつレバー40をベース38側に揺動させた後に、シャフト40a側に付勢されるスライダ40bを離す。これによって、図5(b)に示すように、ベース38に設けられるストッパ38bにスライダ40bのシャフト40cが掛かり、キャッチクリップ34がロック状態になる。
【0045】
金属帯32の長さは、燃料タンク110の外径が想定される最小の大きさであっても、図3および図5(b)の状態でアーム42a,42bがわずかに伸びるように設定されている。したがって、図3および図5(b)の状態では、ばね44の弾性力によってフック36がキャッチクリップ34側に引っ張られる。これによって、燃料タンク110が本体12の一方主面12aに押し付けられ、燃料タンク110が一方主面12aにとどまる。
【0046】
第2帯状部材14bは、第1帯状部材14aと同様に構成され、第1帯状部材14aと同様に本体12の取付部22bに取り付けられる。第2帯状部材14bについては、上述の第1帯状部材14aの説明において、「第1帯状部材14a」を「第2帯状部材14b」に読み替え、かつ「取付部22a」を「取付部22b」に読み替えることで説明を省略する。
【0047】
図1に戻って、2つの保持装置10はそれぞれ、固定部24aが固定部24bよりも下側に位置するように自動二輪車100のフレーム104に傾けて固定される。燃料タンク110のような高圧ガスタンクの場合、水素の消費による内圧の低下に伴って燃料タンク110の内側と外側との温度差が大きくなりやすく、表面に結露が生じやすい。このように保持装置10がフレーム104に取り付けられることで、結露によって燃料タンク110の表面に生じた液体(水)が凹部28a(図2参照)に集まり、排出管30から排出される。自動二輪車100において2つの保持装置10の排出管30はそれぞれ、その開口端がセルスタック106よりも低くなるようにセルスタック106の後側を下方に延びる。
【0048】
この実施形態では、燃料タンク110が容器に相当し、本体12の一方主面12aが配置部に相当する。
【0049】
ついで、燃料タンク110に衝撃が与えられた場合の燃料タンク110の移動態様について説明する。
図6は、燃料タンク110に衝撃が与えられて燃料タンク110が移動した状態を示す図解図である。図6には、本体12に横向きに配置された燃料タンク110を矢印A方向の一方向(図3に矢印A1で示す方向)に移動させるような衝撃が燃料タンク110に与えられることによって、燃料タンク110が移動した状態が示されている。
【0050】
燃料タンク110に矢印A1方向(軸方向の一方向:図3参照)に移動させるような衝撃が与えられれば、図6に示すように、第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bが伸びて第1傾斜部18に乗り上げるように矢印C1方向に燃料タンク110が移動する。このように燃料タンク110を移動させることによって、燃料タンク110に与えられた衝撃を第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bに吸収させることができる。その後、第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bが縮むことによって、第1傾斜部18に乗り上げるように移動した燃料タンク110が矢印C2方向に移動して元のように配置される(図3参照)。
【0051】
また、第2傾斜部20を有することによって、燃料タンク110に矢印A2方向(軸方向の他の方向:図3参照)に移動させるような衝撃が与えられても、同様に衝撃を吸収でき燃料タンク110を元のように配置できる。
【0052】
さらに、樋状部16、第1傾斜部18および第2傾斜部20(一方主面12a)が燃料タンク110に沿うように形成されていることによって、燃料タンク110にいずれの方向に移動させるような衝撃が与えられても、同様に衝撃を吸収でき燃料タンク110を元のように配置できる。
【0053】
このような保持装置10によれば、本体12に燃料タンク110に沿う一方主面12aが設けられることによって、燃料タンク110に衝撃が与えられた場合に第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bの伸縮に伴って燃料タンク110を振り子のように往復移動させることができる。これによって、燃料タンク110に与えられた衝撃を吸収できかつ燃料タンク110の位置ずれを抑えることができる。ひいては、燃料タンク110に接続される供給管114等が無理に曲げられた状態が続くことを防止でき、供給管114等に多大な応力がかかることを防止できる。
【0054】
第1傾斜部18が燃料タンク110の一端部に沿うように湾曲することによって、矢印A1方向に移動させるような衝撃が燃料タンク110に与えられた場合に、より確実に燃料タンク110を元の位置に戻すことができる。同様に、第2傾斜部20が燃料タンク110の他端部に沿うように湾曲することによって、矢印A2方向に移動させるような衝撃が燃料タンク110に与えられた場合に、より確実に燃料タンク110を元の位置に戻すことができる。
【0055】
第1帯状部材14aが一方主面12aの中央よりも第1傾斜部18側に設けられることによって、燃料タンク110が第1傾斜部18に乗り上げるように移動した場合に、第1帯状部材14aが縮む力を燃料タンク110を元の位置に戻すために効率よく作用させることができる。同様に、第2帯状部材14bが一方主面12aの中央よりも第2傾斜部20側に設けられることによって、燃料タンク110が第2傾斜部20に乗り上げるように移動した場合に、第2帯状部材14bが縮む力を燃料タンク110を元の位置に戻すために効率よく作用させることができる。したがって、より確実に、燃料タンク110を元の位置に戻すことができ、容器の位置ずれを抑えることができる。
【0056】
結露によって燃料タンク110の表面に生じた水を収集部として機能する凹部28aに集めて排出管30から燃料電池システム102の構成要素を避けるように水を排出できるので、燃料電池システム102の構成要素が濡れることを防止できる。
【0057】
保持装置10によれば燃料タンク110に与えられた衝撃を吸収できかつ燃料タンク110の位置ずれを抑えることができるので、保持装置10は、走行に伴う振動、転倒または軽衝突等によって燃料タンク110に衝撃が与えられる機会の多い自動二輪車100に好適に用いられる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、本体12の一方主面12aに凹部26a,26b,28aおよび28bが設けられる場合について説明したが、一方主面12aに凹部26a,26b,28aおよび28bを設けないようにしてもよい。
【0059】
上述の実施形態では、第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bを本体12に取り付ける場合について説明したが、帯状部材の取り付け態様はこれに限定されない。保持装置の帯状部材は、たとえば、当該保持装置が用いられる機器に取り付けられていてもよい。
【0060】
上述の実施形態では、ばね付のキャッチクリップ34を用いて第1帯状部材14aおよび第2帯状部材14bを伸縮させる場合について説明したが、帯状部材はこれに限定されない。たとえば、伸縮可能なゴム帯と、それを本体や保持装置が用いられる機器に取り付けるための取付具とを含む帯状部材を用いてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、樋状部16が燃料タンク110の外周面の一部に沿うようにU字状に形成される場合について説明したが、樋状部の形状はこれに限定されない。樋状部は、たとえばコ字状に形成されていてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、舟形の本体12を用いる場合について説明したが、本体の外形は任意に設定できる。本体の外形は、たとえば上面開口の直方体状(箱状)であってもよい。また、2つ以上の容器を配置できるように本体を構成してもよい。
【0063】
上述の実施形態では、燃料タンク110の半球状の一端部に沿わせるために、第1傾斜部18が本体12の外側に向けて凸状に湾曲する湾曲部として形成される場合について説明したが、これに限定されない。第1傾斜部は、たとえば上面開口の箱状の本体において容器の軸方向に直交する1つの面を滑り台のように湾曲させたものであってもよい。また、第1傾斜部は平面であってもよい。第1傾斜部の形状は、容器の一端部が第1傾斜部に乗り上げる(浮かぶ)ように容器を移動させることができる限り任意に設定できる。第2傾斜部についても同様である。
【0064】
この発明の保持装置の本体は上述の実施形態の本体12に限定されない。たとえば、本体は、本体12において第2傾斜部20側端部を切除したものであってもよいし、本体12を取付部22a,22bの間で2分割したものであってもよい。すなわち本体は少なくとも一方主面に第1傾斜部を有していればよい。
【0065】
保持装置における容器の配置態様は、上述の実施形態に限定されず、たとえば、容器の外周面に線状(帯状)に接するリブ状の接触部を配置部に設け、容器の外周面を当該接触部に接触させて容器を配置するようにしてもよい。
【0066】
上述の実施形態では、容器として外周面に凹凸等がない燃料タンク110を保持する場合について説明したが、容器の外周面には突起部や段部(減径部)が設けられていてもよい。この場合、第1傾斜部の位置は、容器の突起部や段部の位置に応じて適宜設定できる。すなわち、傾斜部の位置は配置部の端部に限定されない。
【0067】
上述の実施形態では、この発明の保持装置10によって水素を収容する燃料タンク(水素タンク)110を保持する場合について説明したが、この発明の保持装置によって保持される容器はこれに限定されない。この発明の保持装置によって、LPガスや天然ガスを収容する容器(タンク)を保持するようにしてもよいし、ガソリン等の液体燃料を収容する容器を保持するようにしてもよい。また、容器の形状は、上述実施形態に限定されず、断面多角形(たとえば四角形)の筒状であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、この発明の保持装置10を輸送機器の一例である自動二輪車100に用いる場合について説明したが、この発明の保持装置が用いられる輸送機器はこれに限定されない。この発明の保持装置は、たとえば、4輪自動車、船舶および飛行機等の自動二輪車以外の輸送機器にも用いることができる。さらに、この発明の保持装置は、据え置き型の発電器等の輸送機器以外の機器にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の一実施形態の保持装置を備える自動二輪車を示す側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の保持装置を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の保持装置を示す側面図である。
【図4】この発明の一実施形態の保持装置を示す平面図である。
【図5】帯状部材の要部を示す側面図であり、(a)はキャッチクリップのロックを解除した状態を示し、(b)はキャッチクリップをロックした状態を示す。
【図6】この発明の一実施形態の保持装置において燃料タンクが移動した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 保持装置
12 本体
12a 一方主面
12b 他方主面
14a 第1帯状部材
14b 第2帯状部材
16 樋状部
18 第1傾斜部
20 第2傾斜部
22a,22b 取付部
26a,26b,28a,28b 凹部
30 排出管
32 金属帯
34 キャッチクリップ
100 自動二輪車
108 タンクユニット
110 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器を保持する保持装置であって、
前記容器が配置される配置部を有する本体と、
伸縮可能に設けられかつ前記容器を前記配置部にとどめる第1帯状部材とを備え、
前記配置部は、前記容器の軸方向に対して傾くように延びる第1傾斜部を有する、保持装置。
【請求項2】
前記第1傾斜部は、前記配置部の一端部に設けられる、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記容器の一端部は半球状に形成され、
前記第1傾斜部は、前記容器の一端部に沿うように湾曲する、請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1帯状部材は、前記本体に対して前記配置部の中央よりも前記第1傾斜部側に配置される、請求項2に記載の保持装置。
【請求項5】
前記配置部は、前記配置部の他端部に設けられかつ前記容器の軸方向に対して傾くように延びる第2傾斜部をさらに有する、請求項2に記載の保持装置。
【請求項6】
前記容器の他端部は半球状に形成され、
前記第2傾斜部は、前記容器の他端部に沿うように湾曲する、請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
伸縮可能に設けられかつ前記容器を前記配置部にとどめる第2帯状部材をさらに含み、
前記第2帯状部材は、前記本体に対して前記配置部の中央よりも前記第2傾斜部側に配置される、請求項5に記載の保持装置。
【請求項8】
前記配置部から液体を排出するために前記本体に接続される排出管をさらに含む、請求項1に記載の保持装置。
【請求項9】
請求項1に記載の保持装置を備える、輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−132147(P2010−132147A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310146(P2008−310146)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】